IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイム・イムノテック・インコーポレイテッドの特許一覧

特許7475702筋痛性脳脊髄炎患者における運動耐容能を改善する方法
<>
  • 特許-筋痛性脳脊髄炎患者における運動耐容能を改善する方法 図1
  • 特許-筋痛性脳脊髄炎患者における運動耐容能を改善する方法 図2
  • 特許-筋痛性脳脊髄炎患者における運動耐容能を改善する方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】筋痛性脳脊髄炎患者における運動耐容能を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20240422BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240422BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240422BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240422BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61K47/34
A61K47/36
A61P21/00
A61P25/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021534315
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 US2019063048
(87)【国際公開番号】W WO2020123136
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】62/778,935
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521258441
【氏名又は名称】エイム・イムノテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIM ImmunoTech Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ストレイヤー,デイビッド アール
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ダイアン エル
(72)【発明者】
【氏名】イークアルズ,トーマス ケイ
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/010022(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/042229(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/104571(WO,A2)
【文献】Fatigue: Biomedicine, Health & Behavior,2015年, Vol. 3, No. 2,pp.75-96
【文献】Plos One,2012年,Vol.7, No.3,e31334
【文献】EXPERT REVIEW OF CLINICAL PHARMACOLOGY,EXPERT REVIEWS,2016年05月25日,VOL:9, NR:6,PAGE(S):755-770
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として有効量の治療用dsRNA(tdsRNA)を含む、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群症状を有する対象を治療するための医薬組成物であって、
tdsRNAが、rI n ・r(C 12 U) n (式中、rIはリボイノシンであり、rはリボであり、nは、40~50,000の整数である)であり、
対象が、治療前に2~8年間のME/CFS症状の発症を示す標的対象である、医薬組成物。
【請求項2】
標的対象が、2~8年間のME/CFS症状の発症ならびに約24時間以上持続する運動後の倦怠感(PEM)の発症を示す、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
治療が、治療前と比較して、標的対象における治療後の少なくとも25%の臨床的に有意な量の増加によって、運動耐容能を増加させる、請求項1または2のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
標的対象の少なくとも40%~50%以上が、少なくとも25%の運動耐容能の増加を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
投与が、頬側;埋め込みによる;吸入による;点滴による;噴霧による;坐剤による;経腸的に;皮膚上;頭蓋内;皮内;筋肉内;鼻腔内;眼窩内;腹腔内;くも膜下腔内;気管内;静脈内;脳室内;膀胱内;経口;非経口;皮下;舌下;局所;経皮;経粘膜;またはそれらの組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
医薬組成物が、1週間に1~3回、1治療日あたり平均で約25~700ミリグラムのtdsRNAを提供する投薬量で、最長1ヶ月間;1ヶ月以上;最長1年;または1年以上、対象に投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物が、1週間に1~3回、1治療日あたり平均で約25~700ミリグラムのtdsRNAを継続的に提供する投薬量で、最長1ヶ月間;1ヶ月以上;最長1年;または1年以上、対象に静脈内投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
対象が、ヒトである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
治療用dsRNAが、40塩基対;50塩基対;60塩基対;70塩基対;および80塩基対からなる群から選択された大きさよりも大きいdsRNAを最低90重量パーセント含む、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
治療用dsRNAが、10,000塩基対;9000塩基対;8000塩基対;および7000塩基対からなる群から選択された大きさよりも小さいdsRNAを最低90重量パーセント含む、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
治療用dsRNAが、約4~約5000らせん回転の二本鎖RNA鎖を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
治療用dsRNAが、約10キロダルトン~約30,000キロダルトンの分子量を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
治療用dsRNAが、強固なdsRNAを含み、強固なdsRNAが、医薬組成物中の全RNAに対する重量パーセントとして、1重量パーセント;5重量パーセント;10重量パーセント;20重量パーセント;30重量パーセント;40重量パーセント;50重量パーセント;60重量パーセント;70重量パーセント;80重量パーセント;および90重量パーセントからなる群から選択された値よりも大きい、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
tdsRNAが、安定化ポリマーとの複合体として含まれる、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
安定化ポリマーが、ポリリシン;ポリリシン+カルボキシメチルセルロース;ポリアルギニン;ポリアルギニン+カルボキシメチルセルロース;ポリICLC;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は、安静によって改善されない無力な倦怠感を特徴とする衰弱性障害であり、さまざまな兆候と症状の多様な組み合わせを含む。患者の大多数は女性である。ME/CFSの病因/病原性の根拠は不明であり、さまざまな微生物、ホルモン、およびその病因に関連し、遺伝的特徴に依存する免疫学的異常を伴う多因子性である可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
簡単な説明
本開示は、治療用dsRNA(tdsRNA)に対する治療に応答する、本明細書では標的対象と呼ばれる、ME/CFS患者の亜集団を同定および治療する方法を提供する。本開示の方法および組成物はまた、臨床試験のために対象をスクリーニングし、対象の治療決定を容易にすることにおける使用を見出す。
【0003】
1つの実施態様は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群症状を有する対象を治療するための方法に関する。この方法は2つのステップを含む。第1のステップは、対象が、治療前に約2~約8年間のME/CFS症状の発症を示す標的対象であることを決定することを含む。第2のステップは、有効成分として有効量の治療用dsRNA(tdsRNA)を含む医薬組成物を標的対象に投与することを含む。この開示の洞察の1つは、約2年~約8年の間にME/CFS症状の発症を示す標的対象が、tdsRNAによる治療に対してより応答性であるということである。
【0004】
もう1つの態様は、標的対象が、約2~約8年間のME/CFS症状ならびに約24時間以上持続する運動後の倦怠感(PEM)の発症を示す、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。
【0005】
もう1つの態様は、治療が、治療前と比較して、標的対象における治療後の少なくとも25%の臨床的に有意な量の増加によって、運動耐容能を増加させる、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。
【0006】
もう1つの態様は、標的対象の少なくとも40%~50%以上が、少なくとも25%の運動耐容能の増加を示す、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。
【0007】
もう1つの態様は、投与が、頬側;埋め込みによる;吸入による;点滴による;噴霧による;坐剤による;経腸的に;皮膚上;頭蓋内;皮内;筋肉内;鼻腔内;眼窩内;腹腔内;くも膜下腔内;気管内;静脈内;脳室内;膀胱内;経口;非経口;皮下;舌下;局所;経皮;経粘膜;またはそれらの組み合わせ投与である、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。
【0008】
もう1つの態様は、医薬組成物が、1週間に1~3回、1治療日あたり平均で約25~700ミリグラムのtdsRNAを提供する投薬量で、最長1ヶ月間;1ヶ月以上;最長1年;または1年以上、対象に投与される、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。
【0009】
もう1つの態様は、医薬組成物が、1週間に1~3回、1治療日あたり平均で約25~700ミリグラムのtdsRNAを継続的に提供する投薬量で、最長1ヶ月間;1ヶ月以上;最長1年;または1年以上、対象に静脈内投与される、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。本明細書において、「1治療日あたり」は、「1日あたり」に短縮されることがある。
【0010】
もう1つの態様は、対象が、ヒトである、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。
【0011】
もう1つの態様は、治療用dsRNAが、rIn・リボ(C4U)n;rIn・リボ(C5U)n;rIn・リボ(C6U)n;rIn・リボ(C7U)n;rIn・リボ(C8U)n;rIn・リボ(C9U)n;rIn・リボ(C10U)n;rIn・リボ(C11U)n;rIn・リボ(C12U)n;rIn・リボ(C13U)n;rIn・リボ(C14U)n;rIn・リボ(C15U)n;rIn・リボ(C16U)n;rIn・リボ(C17U)n;rIn・リボ(C18U)n;rIn・リボ(C19U)n;rIn・リボ(C20U)n;rIn・リボ(C21U)n;rIn・リボ(C22U)n;rIn・リボ(C23U)n;rIn・リボ(C24U)n;rIn・リボ(C25U)n;rIn・リボ(C26U)n;rIn・リボ(C27U)n;rIn・リボ(C28U)n;rIn・リボ(C29U)n;rIn・リボ(C30U)n;rIn・リボ(C31U)n;rIn・リボ(C32U)n;rIn・リボ(C33U)n;rIn・リボ(C34U)n;rIn・リボ(C35U)n;rIn・リボ(C4-29U)n;rIn・リボ(C4-30U)n;rIn・リボ(C11-14U)n;rIn・リボ(C14-30U)n;rIn・リボ(C30-35U)n;r(I)n・r(C30-35U)n;および強固な(rugged)dsRNAからなる群から選択される少なくとも1つのdsRNAであり;nが、40~50,000の整数である、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。すなわち、たとえば、tdsRNAは、約n個の塩基対長さである。
【0012】
もう1つの態様は、治療用dsRNAが、40塩基対;50塩基対;60塩基対;70塩基対;および80塩基対からなる群から選択された大きさよりも大きいdsRNAを最低90重量パーセント含む、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。
【0013】
もう1つの態様は、治療用dsRNAが、10,000塩基対;9000塩基対;8000塩基対;および7000塩基対からなる群から選択された大きさよりも小さいdsRNAを最低90重量パーセント含む、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。
【0014】
もう1つの態様は、治療用dsRNAが、約4~約5000らせん回転の二本鎖RNA鎖を有する、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。
【0015】
もう1つの態様は、治療用dsRNAが、約10キロダルトン~約30,000キロダルトンの分子量を有する、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。
【0016】
もう1つの態様は、治療用dsRNAが、強固なdsRNAを含み、強固なdsRNAが、医薬組成物中の全RNAに対する重量パーセントとして、1重量パーセント;5重量パーセント;10重量パーセント;20重量パーセント;30重量パーセント;40重量パーセント;50重量パーセント;60重量パーセント;70重量パーセント;80重量パーセント;および90重量パーセントからなる群から選択された値よりも大きい、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。
【0017】
もう1つの態様は、tdsRNAが、安定化ポリマーと複合体を形成する、本開示の方法(たとえば、上記の方法)に関する。たとえば、ポリマーは、ポリリシン;ポリリシン+カルボキシメチルセルロース;ポリアルギニン;ポリアルギニン+カルボキシメチルセルロース;ポリICLC;およびそれらの組み合わせからなる群から選択されうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第40週の基準値から運動トレッドミル負荷(ETT)が25%以上増加したME/CFS患者を示す。カイ二乗検定から得られたp値。
図2】リンタトリモドのプラセボ調整グループ内平均運動改善を示す。
図3】動トレッドミル負荷(ETT)(25%以上 vs. 25%未満)応答によるリンタトリモド治療を受けた患者を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な記載
定義
tdsRNA
本開示は、部分的に、治療用dsRNA(tdsRNA)と称されるdsRNAに関し、その好ましい実施態様は、リンタトリモド(たとえば、AMPLIGEN(登録商標));強固なdsRNA;ミスマッチdsRNA;または本開示に記載された手順の下で生成されたdsRNAである。tdsRNAは、以下の特性を有する。
【0020】
本開示について、tdsRNAは、本開示で論じられる任意のdsRNA、特にこのセクションで開示される任意のdsRNAを称しうる。
【0021】
tdsRNAの1つの実施態様は、リンタトリモドである。リンタトリモド(たとえば、ポリI:ポリC12U)は、合成二本鎖リボ核酸であり、シチジル鎖のウリジル酸(U)置換により、分子構造に非水素結合の領域が作成される。化学名は、ポリリボイノシン酸:ポリリボシチジル(12:1)ウリジル酸である。リンタトリモドは、AMPLIGEN(登録商標)としても商標登録されており、本開示において、AMPLIGEN(登録商標)およびリンタトリモドは同じ意味を有する。
【0022】
ポリI:ポリC12Uは、ポリリボシチジル酸と水素結合したポリリボイノシン酸からなるポリリボヌクレオチド複合体ポリI:ポリCの構造類似体である。ポリC鎖において、ウリジル酸置換は、平均して12から13塩基ごとに起こり、中断されていない領域が散在する特別に構成された領域を含む、二本鎖ポリI:ポリC12Uを生成する。一本鎖RNA(ssRNA)の原材料であるポリIとポリC12Uは、制御された条件下でアニーリングされて、二本鎖RNA(dsRNA)リンタトリモド(ポリI:ポリC12U)分子を形成する。
【0023】
tdsRNAの別の実施態様は、以下に記載されるような特定のタイプのミスマッチdsRNAである:ミスマッチdsRNAは、一般式rIn・r(C11-14U)nでありえ、これは、好ましくは、rIn・r(C12U)nである。式rIn・r(C11-14U)nは二本鎖RNAを表し、一方の鎖はrInで表され、もう一方の鎖は(C11-14U)nで表され、ここで、ドット記号「・」は、2本の鎖がハイブリダイズして、二本鎖RNA構造を形成することを表す。ハイブリダイズしている2つの鎖について言及したが、ミスマッチがあるため、100%の塩基が塩基対を形成するわけではないことに留意すべきである。
【0024】
rInは、n塩基のポリリボイノシンを表す。「r」は、リボイノシンである、イノシンのRNA様形態を表す。これは、2-’デオキシイノシンとは対照的である。nは、この一本鎖イノシン分子-一本鎖RNAの全長を表す。
【0025】
たとえば、r(C11-14U)nは、C塩基対U塩基の比が、11から14Cごとに単一のUが存在する、C塩基およびU塩基を含む一本鎖RNAを表す。「n」は、この一本鎖RNAの全長(塩基単位)を表す。
【0026】
したがって、rIn・r(C11-14U)nは、rInが r(C11-14U)nにハイブリダイズした二本鎖RNAを表す。nは両方の鎖の長さを表すので、ssRNAの両方の鎖は同じ長さであり、二本鎖構造の中央または末端に有意な一本鎖領域を持たないdsRNAを生じさせる。
【0027】
本開示において、他に適応症がない場合、患者に投与されるすべてのポリヌクレオチドは、dsRNAまたはリボイノシンなどのその化学的類似体(すなわち、特に示されない限り、RNAであり、DNAではない)である。「n」は、dsRNAの長さ(塩基単位)であり、nは40~50,000;10~40,000;10~500;10~50または40~500(強固なdsRNA)の値を有する整数である。この式および次の式では、r=リボおよびrI=イノシンである。
【0028】
本発明で使用するための他のミスマッチdsRNAは、ポリ(Cm,U)またはポリ(Cm,G)などのコポリヌクレオチドに基づいており、mは4~29の値を有する整数であり、ポリリボシチジル酸(rCm)鎖内で対になっていない塩基(ウラシル(U)またはグアニン(G))を組み込むようにrIn・rCnを修飾することによって形成されるポリリボイノシン酸およびポリリボシチジル酸の複合体のミスマッチ類似体である。あるいは、dsRNAは、たとえば、2’-O-メチルリボシル残基を含むことによる、ポリリボイノシン酸(rIn)のリボシル骨格を修飾することによって、r(I)・r(C) dsRNAから誘導されうる。ミスマッチdsRNAは、次の段落で説明するように、リシンカルボキシメチルセルロース、またはポリICLCなどのRNA安定化ポリマーと複合体を形成しうる。これらのrIn・rCnのミスマッチ類似体のうち、好ましいものは一般式rIn・r(C11-14、U)nのものであり、Ts’o & Carterによって米国特許第4,024,222号および第4,130,641号に記載されている。その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。それらに記載されているdsRNAは、一般に、本発明による使用に適している。
【0029】
もう1つの態様は、たとえば、2’-0-メチルリボシル残基を含むことによる、ポリ(リボイノシン酸)リボ(In)のリボシル骨格を修飾することによって、リボ(I)・リボ(C)dsRNAに由来する特別に構成されたdsRNAに関する。特別に構成されたdsRNAは、分子の末端を修飾して、塩基対の滑りを防ぐヒンジを追加することもでき、これにより、溶媒またはヒトの体液に存在する水性環境中で特定の生物活性が付与される。米国特許第4,024,222号;第4,130,641号;および第5,258,369号(参照により組み込まれる)に記載の特別に構成されたdsRNAは、一般に、強固なdsRNAのための選択後の出発物質として適切である。本開示は強固なdsRNAを記載しているが、本開示に記載されている他のdsRNA(tdsRNAを含む)は、依然として、強固なdsRNAの製造に適切な出発物質である。任意の実施態様において、強固なdsRNAなどのtdsRNAは、ポリリシン、ポリリシン+カルボキシメチルセルロース、ポリアルギニン、ポリアルギニン+カルボキシメチルセルロース、またはそれらの任意の組み合わせなどの安定化ポリマーと複合体を形成することができる。
【0030】
tdsRNAとして使用するためのミスマッチdsRNAの他の例には、以下が含まれる:rIn・リボ(C4U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、4:1である;rIn・リボ(C5U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、5:1である;rIn・リボ(C6U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、6:1である;rIn・リボ(C7U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、7:1である;rIn・リボ(C8U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、8:1である;rIn・リボ(C9U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、9:1である;rIn・リボ(C10U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、10:1である;rIn・リボ(C11U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、11:1である;rIn・リボ(C12U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、12:1である;rIn・リボ(C13U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、13:1である;rIn・リボ(C14U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、14:1である;rIn・リボ(C15U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、15:1である;rIn・リボ(C16U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、16:1である;rIn・リボ(C17U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、17:1である;rIn・リボ(C18U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、18:1である;rIn・リボ(C19U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、19:1である;rIn・リボ(C20U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、20:1である;rIn・リボ(C21U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、21:1である;rIn・リボ(C22U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、22:1である;rIn・リボ(C23U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、23:1である;rIn・リボ(C24U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、24:1である;rIn・リボ(C25U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、25:1である;rIn・リボ(C26U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、26:1である;rIn・リボ(C27U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、27:1である;rIn・リボ(C28U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、28:1である;rIn・リボ(C29U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、29:1である;rIn・リボ(C4-29U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、4-29:1である;rIn・リボ(C4-29G)n、1本の鎖中のC:Gの比は、4-29:1である;rIn・r(C11-14U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、11-14:1である;rIn・リボ(C12U)n 1本の鎖中のC:Uの比は、12:1である;rIn・リボ(C30U)n 1本の鎖中のC:Uの比は、30:1である;およびrIn・リボ(C30-35U)n、1本の鎖中のC:Uの比は、30-35:1である。
【0031】
簡単に述べれば、tdsRNAは以下に説明するdsRNAのタイプである。記載されていなくても、一方の鎖の長さがnである場合、他方の鎖の長さもnであることが理解される。また、範囲が請求される場合、比の各中間値も請求される。
【0032】
たとえば、rIn・リボ(C4-29U)nは、以下を個別に含みうる:rIn・リボ(C4U)n、rIn・リボ(C5U)n、rIn・リボ(C6U)n、rIn・リボ(C7U)n、rIn・リボ(C8U)n、rIn・リボ(C9U)n、rIn・リボ(C10U)n、rIn・リボ(C11U)n、rIn・リボ(C12U)n、rIn・リボ(C13U)n、rIn・リボ(C14U)n、rIn・リボ(C15U)n、rIn・リボ(C16U)n、rIn・リボ(C17U)n、rIn・リボ(C18U)n、rIn・リボ(C19U)n、rIn・リボ(C20U)n、rIn・リボ(C21U)n、rIn・リボ(C22U)n、rIn・リボ(C23U)n、rIn・リボ(C24U)n、rIn・リボ(C25U)n、rIn・リボ(C26U)n、rIn・リボ(C27U)n、rIn・リボ(C28U)n、およびrIn・リボ(C29U)n
【0033】
もう1つの例として、rIn・リボ(C30-35U)nは、以下を個別に含みうる:rIn・リボ(C30U)n、rIn・リボ(C31U)n、rIn・リボ(C32U)n、rIn・リボ(C33U)n、rIn・リボ(C34U)n、およびrIn・リボ(C35U)n
【0034】
すなわち、上記の分子のそれぞれはまた、本発明の一部として個別に請求され、実施態様として個別にみなされる。
【0035】
特別に構成されたtdsRNAは、一般式:リボ(In)・リボ(C4-29U)n、リボ(In)・リボ(C11-14U)n、またはリボ(In)・リボ(C12U)nを有し、ここで、鎖は、リボヌクレオチド(リボ)で構成され、nは、約40~約40,000の整数である。たとえば、リボシトシンC4-29リボウラシル酸)、ポリ(リボシトシンC11-14リボウラシル酸)、またはポリ(リボシトシンC12リボウラシル酸)からなる鎖は、二本の鎖が、ウラシル塩基で対になっていない(すなわち、ミスマッチ)RNA二重らせん(dsRNA)を形成することができるように、ポリ(リボイノシン酸)からなる反対の鎖に部分的にハイブリダイズすることができる。
【0036】
対象(たとえば、150ポンドまたは70kgのヒト)の場合、dsRNAの用量は、0.1~1,000,000 μg、好ましくは、0.4~400,000 μgの範囲でありうる。
【0037】
ミスマッチdsRNAは、任意の既知の投与方法によって投与することができる(たとえば、より詳細なリストについては、「投与方法」の詳細な説明を参照されたい)。
【0038】
投与用製剤には、水溶液、シロップ、エリキシル、粉末、顆粒、錠剤およびカプセルが含まれ、これらは通常、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、保存剤、緩衝塩、香味剤、着色剤および/または甘味剤などの従来の賦形剤を含む。それらは、スプレーまたはネブライザーで経鼻的に適用することができる。好ましい経路は、レシピエントの状態および年齢、感染症または状態の性質、ならびに選択された有効成分によって変化することが理解されよう。
【0039】
もう1つの態様では、ミスマッチdsRNAは、強固なdsRNAでありうる(たとえば、米国特許第8,722,874号および米国特許第9,315,538号を参照のこと)。1つの態様では、強固なdsRNAは、ハイブリダイズしたポリ(リボイノシン酸)およびポリ(リボシトシン酸)鎖を分離することができる条件下での変性に耐性がある単離された二本鎖リボ核酸(dsRNA)でありえ、ここで、前記の単離されたdsRNAの一本鎖のみが、反対の鎖に対して塩基対を形成していない1つ以上のウラシルまたはグアニン塩基を含み、前記一本鎖はポリ(リボシトシンC30-35ウラシル酸)からなる。さらに、一本鎖は、ポリ(リボイノシン酸)からなる反対側の鎖に部分的にハイブリダイズすることができる。もう1つの態様では、強固なdsRNAは、ハイブリダイズしたポリ(リボイノシン酸)およびポリ(リボシトシン酸)鎖を分離することができる条件下で変性に耐性のある単離された二本鎖リボ核酸(dsRNA)でありえ、ここで、前記の単離されたdsRNAは、リボ(In)・リボ(C30-35U)nからなり、ここで、リボは、リボ核酸であり、nは、40~500または40~約40,000の整数である。もう1つの態様では、強固なdsRNAは、以下を含む、熱ストレス下で酵素的に活性な単離された二本鎖リボ核酸(dsRNA)でありうる:分子量約250 kDa~約320 kDaの各鎖、ポリ(リボシトシンC4-29ウラシル酸)からなる一本鎖とポリ(リボイノシン酸)からなる反対側の鎖、ここで、2本の鎖はウラシル塩基の位置に塩基対を有さず、2本の鎖は、シトシン塩基の位置に塩基対を有し、および該2本の鎖は部分的にハイブリダイズする。もう1つの態様では、強固なdsRNAは、以下を含む、熱ストレス下で酵素的に活性な単離された二本鎖リボ核酸(dsRNA)でありうる:約380塩基~約450塩基の長さの各鎖、ポリ(リボシトシンC4-29ウラシル酸)からなる一本鎖とポリ(リボイノシン酸)からなる反対側の鎖、ここで、2本の鎖はウラシル塩基の位置に塩基対を有さず、2本の鎖は、シトシン塩基の位置に塩基対を有し、および該2本の鎖は部分的にハイブリダイズする。もう1つの態様では、強固なdsRNAは、以下を含む、熱ストレス下で酵素的に活性な単離された二本鎖リボ核酸(dsRNA)でありうる:約30~38らせん回転の二本鎖RNA鎖(dsRNA)の各鎖、ポリ(リボシトシンC4-29ウラシル酸)からなる一本鎖とポリ(リボイノシン酸)からなる反対側の鎖、ここで、2本の鎖はウラシル塩基の位置に塩基対を有さず、2本の鎖は、シトシン塩基の位置に塩基対を有し、および該2本の鎖は部分的にハイブリダイズする。
【0040】
合成後、強固なdsRNAは、少なくとも、dsRNAの集団の部分的にハイブリダイズされた鎖を、集団中の大部分のdsRNA(10 wt%またはmol%超え、20 wt%またはmol%超え、30 wt%またはmol%超え、40 wt%またはmol%超え、50 wt%またはmol%超え、60 wt%またはmol%超え、70 wt%またはmol%超え、80 wt%またはmol%超え、90 wt%またはmol%超え、95 wt%またはmol%超え、または98 wt%またはmol%超え)を変性させる条件に付し、次に、部分的にハイブリダイズしたままのdsRNAに対してネガティブまたはポジティブ(または両方)の選択に付すことによって単離されうる。dsRNAの少なくとも部分的にハイブリダイズした鎖をアンフォールドするための変性条件は、緩衝塩、pH、溶媒、温度、またはそれらの任意の組み合わせの適切な選択を含みうる。条件は、リボ核酸の二本鎖のアンフォールディングまたは融解を観察することによって実験的に決定することができる。リボ核酸のより長い鎖を部分的に加水分解し、次に、適切なサイズおよび変性に対する耐性の(部分的に)ハイブリダイズした鎖を選択することにより、強固なdsRNAの収量を改善することができる。
【0041】
したがって、強固なdsRNAの純度は、より高い純度に合成した後の集団内のすべてのRNAと比較して、約0.1~10 mol%未満(たとえば、強固なdsRNAは、少なくとも0.1 mol%または0.1 wtパーセントであるが、約10 mol%または10 wtパーセント未満で存在する)から増加しうる。より高い純度は、20 wt%またはmol%超え;30 wt%またはmol%超え;40 wt%またはmol%超え;50 wt%またはmol%超え;60 wt%またはmol%超え;70 wt%またはmol%超え;80 wt%またはmol%超え;90 wt%またはmol%超え;および98 wt%またはmol%超えでありうる。すべてのwt%またはmol%は、同じ組成物中に存在する全RNAに相対する。
【0042】
強固なdsRNAの分子量は、約250 kDa~約320 kDa、または約270 kDa~約300 kDaでありうる。強固なdsRNAの単鎖または両鎖の長さは、約380塩基~約450塩基、または約400塩基~約430塩基でありうる。強固なdsRNAの二本鎖RNA鎖によって作られるらせん回転の数は、約30~約38、または約32~約36でありうる。
【0043】
もう1つの態様では、少なくとも1つまたは複数の異なる強固なdsRNAは、そのような治療を必要とする対象(ヒト患者または動物)に投与されうる。
【0044】
ミスマッチdsRNAの推奨投与量は、対象の臨床状態と、疾患または他の病的状態を治する医師または獣医の経験によって異なる。ミスマッチdsRNAは、投与量および/または頻度は、対象の症状に応じて医師または獣医師によって変更される場合があるが、1日1回から週7日まで、または週1回から週3回(好ましくは、週2回)のスケジュールで、約0.5 mg~約60 mg/日、約5 mg~約400 mg/日、25mg~約700 mg/日、または約10 mg~約800 mg/日で患者(たとえば、ヒト患者について、約70~80 Kgの体重)に投与されうる。すなわち、たとえば、投与量は、1日おきに50~1400ミリグラムで、1日平均投与量は25~700ミリグラム/日となる。
【0045】
固体形態の核酸は、たとえば、生理学的リン酸緩衝生理食塩水などの投与用の既知の希釈剤を使用して溶解し、次に、静脈内に注入することができる。好ましい投与量は、対象の年齢、状態、性別、または健康状態;症状の数および重症度を含む疾患または他の病的状態の性質;および選択された有効成分によって変化しうることが理解されよう。
【0046】
慢性疲労症候群の症例定義
本開示のすべての態様にも適用することができる、患者がME/CFSを有するかどうかを判断するための2つの例は、1988年の慢性疲労症候群の症例定義である表1または1994年の慢性疲労症候群の症例定義である表2に示す診断基準である。本開示の方法で治療することができる対象(患者)は、1988年の慢性疲労症候群の定義(表1)を満たすもの:1994年の慢性疲労症候群の定義(表2)を満たすもの;または1988年の定義と1994年の慢性疲労症候群の定義(表1および2)の両方を満たすもの;または他の適切な症例定義、たとえば、2003年のME/CFSのカナダのコンセンサス基準、2015年のME/CFSのIOM診断基準などを満たすもの;でありうる。
【0047】
【表1】
1 症状基準を満たすには、症状が疲労性の増加の発症時またはその後に始まり、少なくとも6か月間持続または再発する必要がある(個々の症状が同時に発生しても、しなくてもよい)。
2 注:101.5°Fを超える口腔温度は、慢性疲労症候群との適合性が低く、他の病気の原因の研究を促すべきである。
3 患者が病前の状態で持っていた可能性のある頭痛とは異なるタイプの重症度またはパターン。
4 次の1つまたは複数:羞明、一過性の視覚暗点、物忘れ、過度の過敏性、錯乱、思考困難、集中力の欠如、うつ病。
5 過眠症、不眠症、入眠困難または早朝の目覚め。
6 これは本当の症状ではありないが、症例定義の要件を満たす上で、上記の症状と同等と見なされる場合がある。
7 口腔内温度99.7~101.5°Fまたは直腸温度100.0~101.8°F
8 注:直径2cmを超えるリンパ節は他の原因を示唆する。さらなる評価が必要である。
【0048】
【表2】
1 短期記憶または集中力の自己申告による障害は、職業的、教育的、社会的、または個人的な活動の以前のレベルの実質的な低下を引き起こすのに十分なほど深刻である。
2 頭痛は、患者が病前の状態で持っていた可能性がある頭痛とは異なる新しいタイプ、重症度またはパターンでなければならない。
【0049】
運動後の倦怠感(PEM)
運動後の倦怠感は、急速な筋肉または認知の疲労感、頭痛、筋肉痛、全身の衰弱、認知障害、不眠症、およびリンパ節の腫脹などの症状の集まりである。これらの症状は、精神的または肉体的な運動に続き、約24時間以上続く
【0050】
医薬組成物
上記の1つまたは複数の活性剤を含む医薬組成物は、当技術分野で知られている任意の局所的または全身的経路によって対象に投与することができる(たとえば、より詳細なリストについては、「投与方法」の詳細な説明を参照されたい)。医薬組成物および/または活性剤は、固体材料を粉砕または粉砕することによって微粉化するか、注射または点滴注入(たとえば、スプレー)のためにビヒクル(たとえば、滅菌緩衝生理食塩水または水)に溶解するか、局所的に適用するか、またはリポソームまたは標的化された送達のための他の担体に封入することができる。好ましい経路は、対象の年齢、状態、性別、または健康状態;症状の数および重症度を含む疾患または他の病的状態の性質;および選択された有効成分によって変化しうることが理解されよう。
【0051】
製剤
投与用製剤(すなわち、医薬組成物)には、水溶液、シロップ、エリキシル、粉末、顆粒、錠剤およびカプセルが含まれ、これらは通常、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、保存剤、緩衝塩、香味剤、着色剤および/または甘味剤などの従来の賦形剤を含む。好ましい製剤は、対象の年齢、状態、性別、または健康状態;症状の数および重症度を含む疾患または他の病的状態の性質;および選択された有効成分によって変化しうることが理解されよう。
【0052】
薬剤
もう1つの態様では、免疫活性化因子を含む薬剤(たとえば、医薬組成物)が提供される。薬剤の任意の他の成分には、賦形剤、および1つまたは複数の別個の容器(たとえば、鼻腔アプリケーターまたは注射バイアル)に無菌的に包装されたビヒクル(たとえば、水性緩衝液または注射用水)が含まれる。薬剤を使用および製造するための方法も提供される。さらなる態様は、以下の記載および特許請求の範囲、ならびにそれらに対する一般化から明らかになるであろう。
【0053】
有効量および治療有効量
組成物は、有効量で送達される。「有効量」という用語は、所望の生物学的効果を実現するために必要または十分な量を示す。本明細書で提供される教示と組み合わせて、活性化合物および効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、疾患の重症度、有害な副作用、および好ましい投与様式などのさまざまな計量因子から選択することにより、効果的な予防的または治療的治療レジメンを、実質的な毒性を引き起こさず、それでも特定の対象を治療するのに効果的であるように計画することができる。また、試験に基づいて、阻害剤の毒性は低いと予想される。特定の適用の有効量は、治療される疾患または状態、投与される特定の阻害剤、対象のサイズ、または疾患または状態の重症度などの因子に応じて変化しうる。当業者は、過度の実験を必要とせずに、特定の有効成分の有効量を経験的に決定することができる。一般に、最大の用量、すなわち医学的判断による最も安全な用量を使用することが好ましい。
【0054】
本明細書に記載の任意の化合物について、治療有効量は、予備的なインビトロ研究および/または動物モデルから最初に決定することができる。治療有効はまた、ヒトで試験された阻害剤について、および他の関連する活性剤などの同様の薬理学的活性を示すことが知られている化合物についてのヒトデータから決定することができる。適用される用量は、投与された化合物の相対的なバイオアベイラビリティおよび効力に基づいて調整することができる。上記の方法および他の方法に基づいて最大の効力を達成するように用量を調整することは、当技術分野で周知であり、通常の当業者の能力の範囲内である。
【0055】
投与方法
対象を治療するための適切な投与/治療プロトコルには、たとえば、患者(対象)に有効量のtdsRNAを投与することが含まれる。
【0056】
いくつかの実施態様において、本発明の併用療法は、tdsRNAの投与を含む。本開示における任意の化合物または化学物質または製剤は、開示された投与方法のいずれかによって投与することができる。tdsRNAは、当技術分野で知られている任意の適切な方法で投与することができる。たとえば、tdsRNAは、連続して(異なる時間に)、または1回の用量で、またはボーラスで投与されうる。いくつかの実施態様では、tdsRNAは、連続的に投与される。
【0057】
投与期間
投与期間は、通常、約1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間、30日間、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月、1か月以上、1年、または1年以上である。
【0058】
特定の実施態様では、tdsRNAは、1回投与/日、2日毎に1回投与、3日毎に1回投与、4日毎に1回投与、5日毎に1回投与、1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、または1か月に1回、または記載された値の間の任意の値で投与される。
【0059】
特定の態様では、tdsRNAは、たとえば、隔週で約1 mg/kg~10 mg/kgの用量で投与される。
【0060】
投与量
特定の態様では、tdsRNAは、約0.1 mg/kg、約0.2 mg/kg、約0.3 mg/kg、約0.4 mg/kg、約0.5 mg/kg、約0.6 mg/kg、約0.7 mg/kg、約0.8 mg/kg、約1 mg/kg、約2 mg/kg、約3 mg/kg、約4 mg/kg、約5 mg/kg、約6 mg/kg、約7 mg/kg、約8 mg/kg、約9 mg/kg、約10 mg/kg、約15 mg/kg、約20 mg/kg、約25 mg/kg、約30 mg/kg、記載された値の間の任意の値、または記載された値の間の任意の範囲の用量で投与される。範囲の例は、4~20 mg/kgの間またはbetween 6~20 mg/kgの間であろう。
【0061】
上記の追加の例として、以下の範囲も適用可能であり、想定される:約0.1 mg/kg~約30 mg/kg、約0.1 mg/kg~約20 mg/kg、約0.1 mg/kg~約10 mg/kg、約0.1 mg/kg~約8 mg/kg、約0.1 mg/kg~約7 mg/kg、約0.1 mg/kg~約6 mg/kg、約0.1 mg/kg~約5 mg/kg、約0.1 mg/kg~約4 mg/kg、約0.1 mg/kg~約3 mg/kg、約0.2 mg/kg~約3 mg/kg、約0.3 mg/kg~約3 mg/kg、約0.4 mg/kg~約3 mg/kg、約0.6 mg/kg~約3 mg/kg、約0.8 mg/kg~約3 mg/kg、約0.1 mg/kg~約2 mg/kg、約0.1 mg/kg~約1 mg/kg。
【0062】
総1日用量は、約20 mg~約800 mg、好ましくは、約50 mg~約600 mg、最も好ましくは、約100 mg~約400 mgで変化しうる。
【0063】
特定の実施態様では、tdsRNAは、1日2回;毎日;1回用量/週間、2回用量/週間、3回用量/週間、4回用量/週間、5回用量/週間、または6回以上の用量/週間投与される。
【0064】
1つの実施態様では、tdsRNAは、 約0.50 mg/kg~10 mg/kgの用量で1週間に2回、毎週、隔週投与される。
【0065】
有効量のtdsRNAは、症状を軽減するため、および/または運動耐容能または運動能力を高めるために、慢性疲労症候群の予防または治療のために投与することができる。tdsRNAの適切な投与量は、治療される症状、tdsRNAのタイプ、ME/CFSの重症度および経過、対象の臨床状態、対象の病歴および治療への応答、関連する症状、対象の体重、性別、免疫状態、および主治医の裁量に基づいて決定されうる。適切なレジメンは、そのような因子を考慮することにより当業者によって選択されうる。
【0066】
したがって、1つの実施態様では、tdsRNAの用量は、mg/kg体重として計算される。しかしながら、もう1つの実施態様では、tdsRNAの用量は、患者の体重に関係なく固定される一定の固定用量である。
【0067】
tdsRNAは、同じ投与経路または異なる投与経路によって投与することができる。たとえば、いくつかの実施態様では、tdsRNAは、頬側;埋め込みにより;吸入によえい;点滴によえい;噴霧によえい;坐剤により;経腸的に;皮膚上;頭蓋内;皮内;筋肉内;鼻腔内;眼窩内;腹腔内;くも膜下腔内;気管内;静脈内;脳室内;膀胱内;経口;非経口;皮下;舌下;局所;経皮;経粘膜;またはそれらの組み合わせで投与される。
【0068】
治療
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」、「治療される」または「治療」という用語は、目的が症状を排除または軽減することである治療的処置を意味する。有利なまたは望ましい臨床結果には、症状の排除、症状の緩和、状態の程度の減少、状態の安定化(すなわち、悪化しない)状態、状態の進行の遅延または低速化が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
対象
本明細書で使用される場合、「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒトである。ヒトに加えて、本発明の範囲内の哺乳動物のカテゴリーには、たとえば、家畜(farm animals)、家畜(domestic animals)、実験動物などが含まれる。家畜(farm animals)の例としては、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギなどが挙げられる。家畜(domestic animals)の例としては、イヌ、ネコなどが挙げられる。実験動物の例としては、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウサギ、モルモットなどが挙げられる。この実施態様および他の実施態様のいくつかの態様において、対象は哺乳動物である。好ましくは、哺乳動物は、ヒト、霊長類、家畜(farm animals)、および家畜(domestic animals)である。より好ましくは、哺乳動物はヒトである。本明細書で使用される「患者」または「対象」という用語は互換的に使用され、ヒトまたはウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、またはネコなどの非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物を意味するがこれらに限定されない。好ましくは、患者はヒトである。
【0070】
軽減または阻害
「軽減または阻害」は、全体として20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはより大きい減少を引き起こす能力を意味する。減少または阻害は、治療されている障害の症状を意味することができる。
【0071】
改善
本明細書で使用される場合、「改善する」、「改善すること」という用語およびそれらの文法的変形は、対象における疾患の症状の重症度を低下させることを意味する。
【0072】
有効量または治療有効量
本発明において、本明細書に開示されるtdsRNAの「有効量」または「治療有効量」は、対象に投与されたときに本明細書に記載されるような有利なまたは所望の結果をもたらすのに十分なそのような材料の量である。有効な剤形、投与様式、および投与量は、経験的に決定することができ、そのような決定を行うことは、当技術分野の技術の範囲内である。投与量は、投与経路、排出速度、治療期間、投与されている他の薬物の性質、哺乳動物、たとえば、ヒト患者の年齢、身体の大きさ、および種、ならびに医学および獣医学の分野でよく知られている同様の因子によって変化することが当業者によって理解されている。一般に、本明細書に開示される任意の活性剤またはそれを含む組成物の適切な用量は、所望の効果を生み出すのに有効な最低用量である活性剤または組成物の量である。
【0073】
概説
序論
二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験における、選択的TLR3アゴニストであるリンタトリモドの分析は、運動トレッドミル負荷(ETT)によって測定される疲労の軽減において統計的有意性(p <0.05)を実証した。リンタトリモドは、AMPLIGEN(登録商標)としても商標登録されており、本開示では、AMPLIGEN(登録商標)とリンタトリモドは同じ意味を有する。運動トレッドミル負荷(ETT)の主要評価項目は、研究に登録する前の筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の症状の持続時間の関数として再検討されている。
【0074】
方法:
208人の対象(n=208)の治療企図(ITT)集団を、2つのサブセットに分けた。第1のサブセットには、ME/CFS症状のある対象が含まれ、これらの対象はまた、約24時間以上続くPEM、2~8年間のME/CFS症状の持続期間を有し、この第1サブセットには合計75人の対象が存在する(n=75)。第2のサブセットには、第1のサブセットに適合しない対象が含まれる。たとえば、第2のサブセットのメンバーは、ME/CFS症状の持続期間が2年未満または8年を超えるメンバーであり、この第2のセットには合計133人の対象(n=133)が存在する。
【0075】
運動トレッドミルの持続時間と、トレッドミルの傾きに基づく運動トレッドミル負荷データの垂直上昇成分を以下に対して分析した:
a:レスポンダーサブセット、n=75;
b:非レスポンダーサブセット、n=133;および
c:治療企図集団、n=75+133=208。
【0076】
結果:
208人の対象の治療企図集団では、有意に高いパーセンテージのリンタトリモドを投与された患者(39%)とプラセボ患者(23%)が、25%以上の運動トレッドミル持続時間を改善した(p= 0.013)。ベースラインの筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の症状持続期間が2~8年間の患者のサブセット(すなわち、レスポンダーサブセット)の場合、リンタトリモド対プラセボ患者の51.2%対17.6%が、それぞれ、運動持続時間25%以上改善した(p=0.003)。プラセボ調整改善は、2~8年間のサブセットの33.6%と比較して、治療企図集団では15.9%であった。2~8年間のサブセットの運動期間と垂直上昇におけるプラセボ調整改善パーセンテージは、治療企図集団で見られたものの2倍以上であった。2年未満+8年を超えるサブセット(非レスポンダーサブセット、n=133)は、プラセボと比較して、リンタトリモドに対して臨床的に有意な運動トレッドミル負荷(ETT)応答を示さなかった。
【0077】
分析:
リンタトリモドの二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験からの運動トレッドミルデータの分析により、2~8年間の症状発現ウィンドウを有し、治療企図(ITT)集団と比較して2倍以上の運動応答を示すME/CFS患者のサブセットが特定された。運動持続時間を25%以上改善したこれらの重度の衰弱した患者の大多数(51.2%)で、身体能力の実質的な改善が見られた。運動持続時間の25%以上の改善は、この試験集団の生活の質の臨床的に有意な改善と関連した。リンタトリモドは、重度のME/CFSに苦しむこの患者集団で一般的に忍容性が良好であった。
【実施例
【0078】
実施例1:dsRNAの産生
一本鎖ポリ(I)およびポリ(C12U)の合成は、それぞれのヌクレオチド出発物質(ポリ(I)の場合はイノシン;ポリ(C12U)の場合はシチジン(C)およびウリジン(U))からのポリヌクレオチドの酵素的ポリヌクレオチド合成から始まった。次に、抽出と沈殿のステップを繰り返して、残留不純物を除去した。生成物を含む反応溶液を限外濾過により濃縮し、フェノールで抽出した。濃縮および抽出された溶液を、沈殿させ、溶解し、水性エタノール(50:50)から再沈殿させた。
酵素合成:製造工程で使用される酵素合成は、ポリイノシン酸およびポリシチジル12ウリジル酸をそれぞれの出発物質(シチジン5’-二リン酸トリナトリウム塩(CDP・Na3)、ウリジン5’-二リン酸ジナトリウム塩(UDP・Na2)およびイノシン5’-二リン酸トリナトリウム塩(IDP・Na3))から合成する酵素ポリヌクレオチドホスホリラーゼに依存している。
【0079】
等モル量のssRNAをアニーリングステップで混合し、室温まで冷却した。溶液を滅菌濾過した。
【0080】
強固なdsRNAまたはdsRNAの別の画分が必要な場合は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってアニーリングされたdsRNAから生成される。強固なdsRNAの特性は、本開示の他の部分で定義される。
【0081】
実施例2:Treating ME/CFS対象の治療
序論
重度のME/CFS対象は、臨床試験において、リンタトリモドの全身投与後、主要評価項目である運動トレッドミル負荷(ETT)の有意な改善を示した。この試験では、リンタトリモドを40週間、週2回投与し、対照対象にはプラセボを40週間投与した。
【0082】
主にベースラインのME/CFS症状の持続期間に基づくサブセット(n=75)における運動トレッドミル負荷(ETT)応答のこの分析は、治療企図(ITT)集団と比較してプラセボ調整リンタトリモドの改善が2倍以上高いことを明らかにする(n=208)。
【0083】
方法
この試験は、ME/CFSにおけるリンタトリモドの安全性と有効性を評価するために実施された、同等の並行コホートによる前向き二重盲検試験であった。ME/CFS患者(本明細書では対象とも呼ばれる)の多くは、心機能の評価のために一般的に使用される標準的なブルースの最大下運動プロトコルを物理的に実行することがでなかった。患者の安全上の理由から、高齢者向けに設計されたブルースプロトコルにエネルギー要件が類似する修正ブルースME/CFSプロトコルが使用された。主要評価項目は、ベースラインから第40週までの運動トレッドミル負荷(ETT)における変化であった。
【0084】
これらの分析では、SAS(バージョン9.2)統計ソフトウェア(Cary、NC)を使用した。すべての統計分析は両側であった。運動トレッドミルの持続時間と垂直方向の上昇を、両側スチューデントT検定を使用して分析した。運動トレッドミル負荷(ETT)を少なくとも25%改善した患者の割合の比較を、カイ2乗検定を使用して分析した。試験参加者は、トレッドミルの傾斜を0%~21%に7つの3%刻みで漸進的に増加させる修正ブルースプロトコルを使用して、運動トレッドミル負荷(ETT)試験を受ける必要があった。運動トレッドミル負荷(ETT)試験プロトコルは、完了した傾斜段階ごとに計算された垂直成分を含んだ。試行された最後の段階(通常は部分的にしか完了されなかった)も、完了のパーセンテージに基づく計算に包含された。ベースラインから第40週までの垂直上昇の増加を、各患者について計算し、「登った」垂直フィートとして表した。
【0085】
結果
主にベースラインのME/CFS症状の持続期間に基づく、治療企図(ITT)集団(n=208)のコホート(レスポンダーサブセット)は、治療企図(ITT)集団全体と比較して、2倍の運動トレッドミル負荷 (ETT)応答で特定された。レスポンダーサブセットは、疾患の症状の持続期間が2~8年間のME CFS患者で構成される(n=75)。非レスポンダー集団は、レスポンダーサブセットの定義を満たさなかった治療企図(ITT)集団のサブセットで構成される。
【0086】
表3は、レスポンダーと非レスポンダーの人口統計を示す。平均年齢、年齢範囲、および性別は、両サブセットと元の治療企図(ITT)集団との間でよく一致した。しかしながら、選択基準に基づいて予想されるように、リンタトリモド/プラセボ投与の開始前のME/CFS症状の期間中、2つのサブセットで有意差が観察された(p<0.001)。
【0087】
【表3】
*非レスポンダーサブセットは、レスポンダーサブセットに含まれない、治療企図(ITT)集団の残りの部分で構成される。
【0088】
表4は、トレッドミルの持久力におけるレスポンダーサブセットと非レスポンダーサブセットの有意差を示す。レスポンダーサブセットにおけるリンタトリモドコホートとプラセボコホートの間の差は122.5秒であったが、非レスポンダーサブセットでは30.1秒であり、治療企図(ITT)集団では67.5秒であった。運動トレッドミル負荷(ETT)持続時間の差は、n=208(p=0.043)の治療企図(ITT)集団と、n=75(p=0.047)のレスポンダーサブセットについて統計的に有意であった。
【0089】
【表4】
Δ=リンタトリモドとプラセボ間の差
* スチューデントT検定(両側)
【0090】
表4は、ベースラインから第40週までのグループ内平均運動時間の増加パーセントも示す。プラセボ調整平均増加は、Δの後に示される。レスポンダーサブセット(Δ=23.6%)で見られる増加は、治療企図(ITT)集団で見られる増加(Δ=11.8%)の2倍である。
【0091】
リンタトリモドに対する応答のこれらの差は、図1に示すレスポンダー分析においてさらに説明される。図1は、第40週におけるベースラインからの運動トレッドミル負荷(ETT)の増加が25%以上であるME/CFS患者を示す。図1では、p値はカイ2乗検定から誘導される。リンタトリモド治療群(39.0%)対プラセボ(23.1%)において見られた運動トレッドミル負荷(ETT)レスポンダーのパーセンテージ(運動持続時間の25%以上の改善)は、治療企図(ITT)集団において統計的に有意であった(p=0.013)。レスポンダーサブセットにおいてリンタトリモドを投与された患者の大多数(51.2%)は、プラセボ(17.6%)に対して、運動トレッドミル負荷(ETT)レスポンダーであった(p=0.003)。下記に示すレスポンダーパーセントにおけるプラセボ調整差では、レスポンダーサブセットについての図1におけるp値(Δ=33.6%)は、治療企図(ITT)集団について見られる値(Δ=15.9%)の2倍である。非レスポンダーサブセットについて見られる差は、4.8%しかなかった(p=0.54)。25%以上の増加の値は、FDA(抗ウイルス薬製品部門)からの、患者内の運動耐容能の変動を超える、意味のあるパーセント変化を確立するという要求に基づいた。
【0092】
運動トレッドミル負荷(ETT)プロトコルは、傾斜を0%~21%に7つの3%刻みで漸進的に増加させることを含んだ。垂直上昇フィートを、各被験者について計算した。表5は、治療企図(ITT)集団(n=208)および両方のサブセットについて、ベースラインから第40週までの垂直上昇の平均変化を示す。治療企図(ITT)集団の垂直上昇の改善は、プラセボコホート(22.5フィート)と比較して、リンタトリモドコホート(56.9フィート)の方が有意に大きかった(p = 0.033)。
【0093】
【表5】
Δ=リンタトリモドとプラセボ間の差
* スチューデントT検定(両側)
【0094】
レスポンダーを(n=75)について見られた垂直上昇の増加は、リンタトリモドコホートで85.2フィートであったのに対し、プラセボコホートでは23.3フィートであった。垂直上昇の差は61.9フィートであり、統計的有意性の閾値にあった(p=0.050)。それにもかかわらず、レスポンダーサブセットについて見られた、リンタトリモドコホートとプラセボコホートの間のグループ内平均における増加パーセントの差である70.3%は、治療企図(ITT)集団で見られた28.6%の2倍以上であった。非レスポンダーサブセットにおけるリンタトリモドコホートおよびプラセボコホートについての垂直上昇の増加は、それぞれ37.3フィートおよび22.2フィートであり、統計的に有意ではなかった(p=0.401)。
【0095】
考察
Toll様受容体(TLR)は、自然免疫の誘導による微生物病原体に対する防御の第一線として機能し、さらに、炎症性サイトカインによる部分的に媒介される特定の液性および細胞性免疫を提供するための適応免疫応答の誘導のための初期細胞編成(cellular orchestration)を提供する。それらは、宿主適応免疫応答システムの中心である樹状細胞(DC)において特に見出される。MyD88に依存しないTRIF経路を使用するTLR3を除いて、すべてのTLRは、MyD88に依存するシグナル伝達経路を使用する。自然免疫応答を開始する遺伝子発現の2つの他のdsRNA活性化誘導物質は、サイトゾルヘリカーゼである、MDA5およびRIG-1である。自然免疫および獲得免疫の誘導におけるリンタトリモド (ポリI:ポリC12U)活性は、TLR3の他のdsRNAアクチベーター(たとえば、ポリI:ポリC、ウイルスdsRNA)とは対照的に、TLR-3に制限される。リンタトリモドのTLR3への制限は、ヒトを含む霊長類における全身性サイトカイン誘導の欠如に起因する。ME/CFSにおいて観察された異常な免疫応答にとって重要なことは、上記の2つの非制限dsRNA TLR3アゴニストとは対照的に、リンタトリモドがヒト微小環境におけるTeff/Treg細胞の比率を増加させるという、癌における最近の独創的な観察である。
【0096】
この分析は、驚くべき予想外の発見を提示した。すなわち、主にME/CFS症状の長さ(2~8年間)によって定義される患者のサブグループは、リンタトリモドに対する臨床的に有益な反応の可能性の増加を示した(図2)。心肺運動耐容能試験は、身体的倦怠感の有効性の客観的尺度であり、運動疲労を改善する薬剤の承認のための規制基準として受け入れられている。したがって、運動耐容能試験を使用した慢性心不全用の2つの薬剤である、フォシノプリルとカプトプリルに対する以前のFDA承認に基づいて、臨床的に有意な運動トレッドミル負荷(ETT)の改善を定義するというFDAの要請により(図2)、グループ内平均運動耐容能における6.5%以上の改善は、ME/CFSにおけるリンタトリモドの有効性を示すものとしてプロトコルにおいて事前に指定された。このプロトコルはFDAによってレビューされ、続行することが許可された。試験の完了後、うっ血性心不全、慢性狭心症、または肺高血圧症についての運動耐容能の改善のために、現在、5つの薬剤がFDAによって承認されている(図2)。図2は、リンタトリモド:治療企図(ITT)集団のプラセボ調整グループ内平均運動改善パーセントを示しており、レスポンダーサブセットは非ME/CFSの重度の労作倦怠感に対して承認された薬物を上回っている。5つのうち4つは、6.5%以下の運動耐容能の改善をもたらした。肺高血圧症に対して承認されたトラクリアは、11%の改善を示したのに対し、リンタトリモドの治療企図(ITT)集団は11.8%の改善を示した。2~8年間の症状を有する治療企図(ITT)集団内のレスポンダーサブセットは、リンタトリモドに対する反応が増加し、23.6%の改善が見られ、これは、FDAによって承認された5つの薬のいずれかの臨床的改善/生活の質の利点の2倍以上である。
【0097】
2~8年間のレスポンダーサブセット対治療企図(ITT)集団で観察された、最も重要なプラセボ調整運動耐容能反応は、以下のように要約することができる:
(a)プラセボよりも運動期間(秒)が増加する:67.5(ITT)対122.5(2~8年間のサブセット);
(b)正味グループ内平均ETT持続時間のパーセンテージが増加する:11.8(ITT)対23.6(2~8年間のサブセット);
(c)ETT持続時間の正味増加が25%以上の患者が存在する:15.9(ITT)対33.6(2~8年間のサブセット);
(d)正味グループ内平均垂直上昇(フィート)のパーセンテージが増加する:28.6(ITT)対70.3(2~8年間のサブセット)。
【0098】
リンタトリモドは、TLR3に対する活性化リガンドとして機能するdsRNA(ポリI:ポリC12U)である。イノシンと塩基対を形成しないウリジンをポリシチジン鎖に導入すると、dsRNAにミスマッチ領域が作成され、サイトゾルヘリカーゼの活性化なしにTLR3アゴニストに対するリンタトリモドの活性が制限される。制限されたTLR3アゴニストとしてのリンタトリモドのこのユニークな特性の重要性は、MDA5およびRIG-1も活性化するポリI:ポリCなどの他のTLR3活性化リガンドの臨床的有用性を制限していた全身性炎症性サイトカインの減少である。炎症性サイトカインが誘導する細胞内シグナル伝達のMyD88依存性経路を使用する他のTLR活性化アゴニストも、リンタトリモドと比較してより高いレベルの毒性を誘導する。
【0099】
リンタトリモドの臨床試験間の直接的な比較可能性を維持するために、CDCの元の1988年の基準を利用して選択基準を満たしたME/CFS被験者のみが、有効性と安全性について評価された。臨床試験に登録された患者は、CDCの1988年の診断基準とより緩和された1994年のCDC症例定義の両方を満たした。2011年に提案された国際コンソーシアムは、筋肉痛性脳脊髄炎が症候群複合体の好ましい用語であると提案した。重度の倦怠感は、すべての定義のコア記述子として残る。リンタトリモドの臨床試験は、その中核症状の緩和とその生活の質への影響に焦点を当てている。
【0100】
静脈内注入によって投与されるリンタトリモドは、一般的に忍容性が良好である。最も頻度の高い有害事象は、頭痛、悪寒、発熱、紅潮、および筋肉痛からなるインフルエンザ様症候群であり、リンタトリモド患者の約44~45%で発生するのに対し、プラセボ患者では30~33%で発生する。
【0101】
この試験では、リンタトリモドは、ME/CFS患者のサブセットの運動耐容能と生活の質の改善にとって明らかに有効である。この試験においてリンタトリモドを投与され、運動持続時間が25%以上改善した重度の衰弱したME/CFS患者は、生活の質の2つの副次的評価項目であるカルノフスキー・パフォーマンス・スコア(KPS)と活力スコア(SF-36)における対応する臨床的に有意な改善も実証した。活力スコアは、ベースラインの9.49から第40週で24.10になって、14.6ポイント増加し、臨床的に重要な変化の最小量(MCID)である5ポイントのほぼ3倍になった。活力スコアは、CFS患者に見られる機能低下を測定するための最良のSF-36サブスケールの1つである。KPSの中央値は、50から60に増加し、10ポイントの改善であった。KPSにおける10ポイントの増加は、臨床的に有意な改善として事前に指定された。KPSが50から60に増加したことは、KPSが50の患者が、必要な日常活動(すなわち、入浴、着替え、身だしなみ、食事の準備、食事など)を完了するために介護者からのかなりの支援を必要としたことを示し、現在、KPSが60の場合、これらの同じ日常の活動に対して、たまに(1週間に1回または2回)しか支援が必要ではない。KPSの10ポイントの増加と活力スコアの14.6ポイントというこれらの改善の増加は、両者とも臨床的に関連があり、生活の質の客観的な改善を表すことが重要である。
【0102】
2~8年間のレスポンダーサブセットの患者の過半数(51.2%)は、運動トレッドミル負荷(ETT)を25%以上改善した。実生活の状況に関して、運動トレッドミル負荷(ETT)持続時間の25%以上の改善は何を意味するか?たとえば、運動トレッドミル負荷(ETT)の持続時間が25%以上改善した、重度の衰弱したME/CFS被験者の場合、階段を上る能力をどのように改善することができるか?図3は、運動トレッドミル負荷(ETT)応答(25%以上対25%未満)によるリンタトリモド処置を受けた患者を示し、治療企図(ITT)集団および両方のサブセットについて、垂直上昇(フィート)におけるベースラインから第40週の変化を比較する。治療企図(ITT)集団とレスポンダーサブセット(図3)の両方において、運動トレッドミル負荷(ETT)レスポンダー(25%以上の増加)と非レスポンダー(25%未満の増加)の差は、トレッドミル負荷(ETT)レスポンダーが、非レスポンダーよりも最大19階分多い階段、または最大190垂直フィート多い高さを登る能力(階分あたり約10フィートと仮定)を有することであった。
【0103】
治療企図(ITT)集団(n=100)については、39%の患者が、運動トレッドミル負荷(ETT)を25%以上改善し、これらの患者は、第40週で、ベースラインと比較した場合、174.6垂直フィートに相当して、より高く登ることができる。この~175垂直フィートの増加は、平均して、12~21%の傾斜のトレッドミル上で約6~8分かけて達成された。25%以上改善しなかった患者は、平均して18.3フィート登る能力が低下した。同様の結果がレスポンダーサブセットについて見られ、これらの患者の51.2%が運動トレッドミル負荷(ETT)を25%以上(181.1垂直フィート)改善した。運動トレッドミル負荷(ETT)が25%以上改善した非レスポンダーサブセットの患者でさえも、約167の追加の垂直フィートを登ることができた。したがって、全体として、運動トレッドミル負荷(ETT)が25%以上改善した患者は、ベースラインと比較して平均で約17.5階分の階段を、より多く登ることができた。リンタトリモド処置は、プラセボと比較して、治療企図(ITT)集団(p=0.013)およびレスポンダーサブセット(p=0.003)において、これらのレスポンダーの数を有意に増加させた(図1)。図3に示すように、運動トレッドミル負荷(ETT)を25%以上善したレスポンダーサブセット(図1)における患者の大多数(51.2%)による、平均で約18階分の追加の階段を上る能力は、生活の質の実質的な改善を示す。
【0104】
B細胞上に発現するCD20に結合するモノクローナル抗体であるリツキシマブは、非盲検試験においてME/CFSで活性があると最初に報告された。2015年に開始されたノルウェーでの152人の患者の二重盲検プラセボ対照臨床試験は、その終点を達成できなかったと報告されている。我々の知る限り、ME/CFSのための高度な臨床開発中の他の薬剤または生物学的製剤はない。リンタトリモドは、アルゼンチンにおいてME/CFS用に承認されており、近い将来、市場への参入が見込まれている。
【0105】
ME/CFSの症状の持続期間に基づくリンタトリモドに対する異なる反応の存在は、リンタトリモドがME/CFSに苦しむ患者のサブセットにおいて明確な活性を有するコア薬剤であることを示す。
【0106】
本明細書では、数値範囲を記載しているが、その範囲内のすべての値も記載されていることを理解されたい(たとえば、1から10は、1から10までのすべての値、ならびに2から10、1から5、および3から8などのすべての中間範囲も含む)。「約」という用語は、当業者が本発明の操作またはその特許性に影響を及ぼさないことを理解するであろう測定または数値の変動性に関連する統計的不確かさを意味しうる。
【0107】
特許請求の範囲およびそれらの法的均等物の範囲の意味内にあるすべての変更および置換は、それらの範囲内に含まれるものとする。「含む」と記載されている請求項は、他の要素を含めることを請求項の範囲内に含めることを可能にする;本発明はまた、「含む」という用語の代わりに、「本質的にからなる」(すなわち、他の要素が本発明の実施に実質的に影響を及ぼさない場合、他の要素を請求項の範囲内に含めることを可能にする)、または「からなる」(すなわち、本発明に通常関連する不純物または重要ではない活性以外の、請求項に記載された要素のみを可能にする)という移行句を列挙するそのような特許請求の範囲によって説明される。これらの3つの移行句のいずれかを使用して、本発明を請求することができる。
【0108】
本明細書に記載されている要素は、特許請求の範囲に明示的に記載されていない限り、特許請求の範囲の発明の限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、登録された特許請求の範囲は、特許請求の範囲に読み込まれる明細書からの制限ではなく、法的保護の範囲を決定するための基礎となる。対照的に、従来技術は、特許請求の範囲に記載された発明を予期するか、または新規性を破壊する特定の実施態様の範囲で、本発明から明示的に除外される。
【0109】
さらに、請求項に明示的に記載されていない限り、請求項の限定の間(between)または限定の間(among)の特定の関係は意図されていない(たとえば、物のクレームの構成要素の配置または方法クレームのステップの順序は、そのように明示的に述べられていない限り、クレームの限定ではない)。本明細書に開示される個々の要素のすべての可能な組み合わせおよび順列は、本発明の態様であるとみなされる。同様に、本発明の記載の一般化は、本発明の一部であるとみなされる。
【0110】
前述のことから、本発明は、その真の趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化することができることは当業者には明らかであろう。記載された実施態様は、本発明に提供される法的保護の範囲が本明細書ではなく添付の特許請求の範囲によって示されるため、例示としてのみ、みなされるべきであり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0111】
参照による組み込み
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、および特許は、個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書に記載の定義を含めて、本出願が制御する。
図1
図2
図3