(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 3/00 20060101AFI20240422BHJP
A23G 3/54 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A23G3/00
A23G3/54
(21)【出願番号】P 2023016432
(22)【出願日】2023-02-06
(62)【分割の表示】P 2019074557の分割
【原出願日】2019-04-10
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】319004032
【氏名又は名称】株式会社くるくる
(74)【代理人】
【識別番号】100142114
【氏名又は名称】小石川 由紀乃
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 遵
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-234948(JP,A)
【文献】特開平08-242768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 3/00
A23G 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の耐冷性および可撓性を有する型を連結することにより製造対象の菓子に応じた形状の空洞部と当該空洞部を取り囲む壁部と当該空洞部に連通する注入口とを有する形態となる菓子型を各型が分かれた状態にし、それらの型の少なくとも1つを対象として対象の型の内面のあらかじめ定められた一または複数の箇所にペースト状の可食材料を装填する第1の工程と、
前記可食材料の装填が完了したことに応じて各型を連結して上記の形態の菓子型を形成し、当該菓子型の前記注入口から前記空洞部へと気泡を含む網目構造と前記可食材料とは異なる色彩とを有するクリーム状物を注入することによって、当該クリーム状物と前記可食材料とを菓子型の内部で接触させる第2の工程と、
前記クリーム状物の注入を終えた菓子型を冷蔵または冷凍することにより前記クリーム状物および前記可食材料を硬化かつ両者を結合させる第3の工程と、
前記クリーム状物および可食材料の結合体を前記菓子型から取り出す第4の工程とを、実施することを特徴とする菓子の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程において、前記クリーム状物とは色彩が異なり、互いの間でも色彩が異なる複数種のペースト状の可食材料を対象の型の内面のそれぞれ異なる場所または異なる範囲に塗布することによって、前記第4の工程で菓子型から取り出される結合体の表面に各可食材料に由来する複数の色彩を出現させる、
請求項1に記載された菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡を含む網目構造を有するクリーム状物(食べられるものに限る。以下も同じ。)を用いて所定の立体形状を有する菓子を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記クリーム状物の代表例であるホイップクリームは、様々な形状に成形が可能で保形性もすぐれており、ケーキ等のデザイン性を問われる菓子の製造に欠かせない材料である。しかし、ホイップクリームによる形を綺麗に整えるには経験や技量が必要である。
【0003】
上記の問題を解決するものとして、型にホイップクリームを入れてこれを冷凍することによってデコレーションパーツを製作する、というアイデアが開示されている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、デコレーションケーキの周面を覆うサイド用パーツやケーキの上面に載せるデコレーションパーツをそれぞれ個別の型により製作し、これらを型から外した後にスポンジケーキに装着することが記載されているが、冷凍されたままのホイップクリームによるパーツがスポンジケーキにしっかりと装着できるのかどうか、甚だ疑問である。装着できるとしても、一つ一つのパーツを型から外してスポンジケーキに装着する必要があり、かなりの手間がかかる。
【0006】
本発明は、特許文献1に記載された発明とは異なる観点から案出されたものであって、クリーム状物による成形体を主要材料として様々な形状の菓子を製造すること、およびその製造のための作業を容易に実施できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、複数の耐冷性および可撓性を有する型を連結することにより製造対象の菓子に応じた形状の空洞部と当該空洞部を取り囲む壁部と当該空洞部に連通する注入口とを有する形態となる菓子型を使用する。この菓子型を構成する各型はすべてが凹型になる場合もあれば、凹型と凸型とを含む構成になる場合もある。また、3個以上の型を連結された構成になる場合もある。
【0008】
本発明では、上記の菓子型の各型をまず分かれた状態にし、それらの型の少なくとも1つを対象として対象の型の内面のあらかじめ定められた一または複数の箇所にペースト状の可食材料(たとえばチョコレート,ジャム,餡子など)を装填する。この装填が完了すると、各型を連結して上記の形態の菓子型を形成し、当該菓子型の前記注入口から前記空洞部へと気泡を含む網目構造と可食材料とは異なる色彩とを有するクリーム状物を注入することによって、当該クリーム状物を先に装填された可食材料と接触させる。そして、クリーム状物の注入を終えた菓子型を冷凍または冷蔵することにより、クリーム状物および可食材料を硬化かつ両者を結合させ、その結合体を菓子型から取り出す。この取り出しをもって菓子の完成となる。
【0009】
ペースト状の可食材料は、空洞部の適所に適量を装填することによって、その装填箇所に対応する形に成形される。空洞部の残りの部分に注入されたクリーム状物もその注入範囲に対応する形に成形される。またクリーム状物の網目構造による微小で柔らかい凹凸面を可食材料の表面にぴったり合うように変形させて可食材料に密着させ、その密着状態を保持したまま両者を硬化させることによって、両者を完全に一体化することができる。また長時間の冷凍または冷蔵の後も菓子型の可撓性が維持されるので、型内の菓子が完全に硬化した後に型を撓ませて内容物から型を引き離す方法によって、可食材料とクリーム状物との結合体による菓子を容易に取り出すことができる。
【0010】
取り出された菓子は、各材料がある程度まで溶けて柔軟性を取り戻せば、食べられる状態になる。また、硬化した状態のまま、冷凍庫または冷蔵庫で保管することもできる。菓子から取り外された菓子型は、再び使用することができる。
【0011】
本発明では、可食材料が装填された菓子型の注入口からクリーム状物を注入することによって、クリーム状物と可食材料とを容易に接触させることができる。
【0012】
上記の注入口を菓子の底部に対応する箇所に設け、当該注入口からクリーム状物を注入する処理の途中で菓子型に入る長さの固形の可食材料(たとえばカステラやロールケーキなど)をその長さ方向を上下方向に合わせて注入口から空洞部分の中央部に挿入してもよい。このようにすれば、固形の可食材料を錘および柱として機能させて菓子を安定して支持することが可能になり、人形型の立体ケーキのようなある程度の高さを有する立体菓子でも、容易に製造することができる。
【0013】
固形の可食材料が入った菓子に対し、当該可食材料に対応する長さのピンが上面に起立する姿勢で設けられた構成の支持皿を用意すれば、菓子型から取り出された菓子の中の固形の可食材料にピンを挿通させた状態として当該菓子を支持皿の上面に載せることによって、菓子の倒壊を高い確度で防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、菓子型を形成する複数の型のうちのペースト状の可食材料の装填対象となる型に当該可食材料を装填する工程と、各型を連結し、一体物となった菓子型の注入口から空洞部に可食材料とは異なる色彩のクリーム状物を注入する工程と、これらの材料が入った菓子型を一定時間冷凍または冷蔵する工程と、菓子型内で結合した可食材料とクリーム状物とを型から取り出す工程とを実行することによって、菓子を完成させることができる。これらの工程の作業は初心者でも容易に会得できるもので、その会得によって初心者でも容易に複雑な形状の菓子を製造することが可能になる。また型から取り出された菓子は、冷凍状態または冷蔵状態で長期保存することができるので、商品として流通させることも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に使用される菓子型の一構成例を表す断面図である。
【
図3】上記菓子型を構成する一対の型の内部構造を表す斜視図である。
【
図4】製造された立体ケーキの保護ケースの構成例を表す斜視図である。
【
図5】上記保存用ケースの支持皿に立体ケーキを載せた状態を表す正面図である。
【
図6】立体ケーキの一連の製造工程を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~3は、本発明を実施するために使用される菓子型1の構成例を表したものである。この菓子型1は後述する
図5に示すペンギンの形をした立体ケーキ2を製造するためのもので、立体ケーキ2の前方部分を成形するための正面型1Fと、立体ケーキ2の後方部分を成形するための背面型1Bとにより構成される。
【0017】
正面型1Fおよび背面型1Bは、耐冷性および可撓性を有する素材、たとえばゴム硬度が5~80度の範囲にあるシリコンゴムにより形成される。いずれの型も、他方の型への接合面から上面にかかる範囲が大きく開口され、その開口部分の中に立体ケーキ2の表面形状に対応する形にかたどられた凹部10F,10Bが形成される。また背面型1Bの接合面の周縁部には複数の突起13が設けられ、正面型1Fの接合面の周縁部には各突起13に対する係合穴14が設けられている。これらの型1F,1Bの接合面を合わせて各突起13を係合穴14に挿入することによって各型1F,1Bを連結すると、各々の型1F,1Bの凹部10F.10Bの組み合わせによる空洞部10を有する菓子型1が形成される。各型1F,1Bの上面の開口部分も円形状に連なって、空洞部10に連通する注入口11が形成される。また、注入口11の内周縁部には所定幅の段部12が形成される。
【0018】
この実施例の菓子型1では、注入口11が設けられた上面側を立体ケーキ2の底部(ペンギンの足の側)に対応させており、正面型1Fの上面にペンギンの足の部分を形成するための一対の小凹部15a,15bが設けられ、背面型1Bの上面側の開口部分にペンギンの尾っぽ部分を形成するための小凹部18が設けられている。これらの小凹部15a,15b,18は段部12よりやや高い位置から注入口11に連通している。
【0019】
正面型1Fの凹部10Fには、顔部分、腹部分、頭部、および両側の羽部分の各々を表す曲面(符号省略)が含まれ、背面型1Bの凹部10Bにも、後頭部、背中、および両側の羽部分の各々を表す曲面(符号省略)が含まれる。また凹部10Fの顔部分の曲面内にペンギンの両眼に対応する一対の窪み16a,16bや嘴部分に対応する小凹部17が設けられている。さらに図には反映していないが、各凹部10F,10Bの主要な曲面は、ペンギンの毛並みを表すための微細な凹凸面となっている。
【0020】
図4は、完成した立体ケーキ2を保管するための保護ケース3の一例を表すものである。この保護ケース3は、PET樹脂製のピン30が起立姿勢で配備されたプラスチック製の支持皿31と、当該支持皿31に被せられる透明のカバー32とにより構成される。なお、ピン30の周面の適所には抜け止め用の小突起30tが設けられている。
【0021】
図5は、立体ケーキ2が支持皿31の上面に載せられた状態を表すものである。この図に示すとおり、上記のピン30を立体ケーキ2の中心部に挿入して支柱として機能させることによって、立体ケーキ2の倒壊を防ぐことができる。また後述するように、この実施例の立体ケーキ2の中心部にはロールケーキ20(
図6参照。)が入っており、そのロールケーキ20に上記のピン30が挿入されることによって、立体ケーキ2をより安定して支持することができる。
【0022】
図5では、立体ケーキ2の着色状態を色毎に異なるパターンに置き換えて表している。具体的に、この実施例の立体ケーキ2(ペンギン型ケーキ)では、頭部および背部ならびに両側の羽の部分が茶色、顔および腹がクリーム色、嘴および足が黄色、両目が黒色となっている。茶色部分はチョコレートホイップクリームで出来ており、クリーム色の部分は無着色のホワイトチョコレートで出来ており、その他の部分は着色されたホワイトチョコレートで出来ている。
【0023】
チョコレートホイップクリームは、溶かしたチョコレートと生クリームとを所定の割合で混合してかき混ぜることによって、十分な量の気泡が含まれて造形の保持が可能な硬さになるように調整される。具体的に、この実施例では、オーバーランが少なくとも100%に調整されたチョコレートホイップクリーム(以下、単に「ホイップクリーム」という。)を使用する。
【0024】
ホワイトチョコレートは、所定量の食用油を加えて加熱しながらかき混ぜることによってペースト状に加工される。さらに着色部分に使用されるホワイトチョコレートには着色料が添加される。いずれの着色料も植物由来の天然着色料である。
【0025】
各種材料が調えられると、上記構成の菓子型1を用いた立体ケーキ2の製造が開始される。
図6はその製造における一連の工程を表すものである。以下、この図を参照して具体的な製造方法を説明する。
なお、
図6(a)~(g)に示す型1F,1Bは、
図1と同様の断面を表したものであるが、ケーキ2の材料を明示するため、断面を表すハッチングを省略している。
【0026】
まず、空の状態の正面型1Fに対し、凹部10Fの両目に対応する窪み16a,16bと、嘴に対応する小凹部17と、足部分に対応する小凹部15a,15bとに、それぞれの対応部位用の着色がなされたホワイトチョコレートを装填する(
図6(a)→(b))。いずれの材料もペースト状であるので、スプーンやヘラ等の道具で量が適量になるように調整し、各窪み16a,16bや小凹部15a,15b,17の全体を埋めることによって、それぞれの部位に応じた形に成形される。
【0027】
つぎに、正面型1Fの凹部10Fの顔部分および腹部分に対応する曲面全体に着色されていないホワイトチョコレートを装填する(
図6(c))。この無着色のホワイトチョコレートもペースト状であり、窪み16a,16b(目の部分)や小凹部17(嘴の部分)の上にも塗布され、さらに上面の段部12となる箇所にも小凹部15a,15b(足の部分)に連なるように塗布される。これにより、先に正面型1Fに装填された着色されたホワイトチョコレートと後から装填された無着色のホワイトチョコレートとが連なって一つの塊(成形体)となる。
【0028】
無着色のホワイトチョコレートの塗布作業では、対象範囲のすべてに開口部分に届く高さまでホワイトチョコレートを塗布するのではなく、注入口11に対応する範囲に所定大きさの溝が出来るようにする。
【0029】
ここまでの作業が終了すると、正面型1Fに背面型1Bが合わせられて両者が一体化される。そして、この一体化により形成された菓子型1の空洞部10に注入口11からホイップクリームが注入される(
図6(d))。注入されたホイップクリームは正面型1Fの凹部10Fのホワイトチョコレートが装填されていない箇所および背面型の凹部10Bに入ってゆき、それらの空洞部分の形状に応じた形に成形される。また、正面型1Fでは、先に装填されたホワイトチョコレートの成形体にホイップクリームが接触する状態となる。
【0030】
ホイップクリームの表面は多数の気泡を含む網目構造による微小凹凸面であり、この凹凸面を注入により膨らませながらホワイトチョコレートの成形体に接触させることによって、ホイップクリームのホワイトチョコレートに触れる箇所をホワイトチョコレートの面形状に合う形に変形させ、両者を密着させることができる。このときホイップクリームの注入による押圧力とペースト状のホワイトチョコレートの粘着力が相俟って密着の度合いを高めることができる。
【0031】
なお、ホワイトチョコレートは常温でも硬化するので、上記の密着作用を促進するには、ホイップクリームを、ホワイトチョコレートが硬化する温度より高くするのが望ましい。ただし、ホワイトチョコレートが液化しない程度の温度に調整する必要がある。
【0032】
この実施例では、ホイップクリームの注入を一気には進めずに途中で中断し、注入口
11から空洞部
10の中に所定サイズのロールケーキ20(空洞部
10よりやや短く、空洞部
10より小さな径のもの)を挿入する(
図6(e))。この挿入による押圧力によって、ホイップクリームの層が押し上げられてロールケーキ20の周囲に廻り込み、ロールケーキ20の周面にもホイップクリームが密着する状態になる。
【0033】
この実施例では、ロールケーキ20を型の底部まで押し込まずに、上方側の端面が上端面の付近に留まるようにしている。ロールケーキ2が適所まで挿入されると、ホイップクリームの注入が再開され、残りの空洞部分が埋まるまでホイップクリームが注入される(
図6(f))。この注入によりロールケーキ2はホイップクリームの層の中に埋設された状態になる。さらに、段部12の背面側の空間や尾っぽ部分の小凹部
18にもホイップクリームが装填される。
【0034】
かくして菓子型1の空洞部10の全体に材料が装填されると、作業者はこの菓子型1を冷凍庫に移動させる。そして、菓子型1の内部のホイップクリームとホワイトチョコレートとが完全に硬化するまで(たとえばマイナス80°Cで約2時間)、冷凍庫内での保存を続ける。
【0035】
前述したように、菓子型1の内部では、ホワイトチョコレートによる成形体とホイップクリームによる成形体とが密着した状態となっており、この密着状態が維持されたまま両成形体が冷凍されて硬化することにより、両成形体の間の繋がりがより強固になり、最終的に両成形体が完全に結合した状態になる。またホイップクリームの中に埋め込まれたロールケーキ2も、同様に硬化して動かない状態となる。
【0036】
各成形体が完全に硬化すると、作業者は菓子型1を冷凍庫から取り出し、正面型1Fを取り外す(
図6(g))。さらに背面型1Bも同様に取り外す。なお、これらの型1F,1Bの取り外しの順序は逆であってもよい。
【0037】
この実施例の型1F,1Bはいずれも0度以下の環境下でも柔軟性や可撓性が維持されるので、冷凍庫から取り出した直後でも型1F,1Bを撓ませることで、菓子型1の中の成形体から各型1F,1Bを容易に引き離すことができる。ホイップクリームの成形体もホワイトチョコレートの成形体も完全に硬化し、かつ相互に強く結合しているので、型1F,1Bを外す際にこれら成形体の一部が型1F,1Bに付着して剥がれるおそれがなく、各成形体を綺麗な状態なまま外に出すことができる。
【0038】
各成形体の結合体が取り出されたことをもって立体ケーキ2が完成したと言えるが、この実施例ではさらに、冷凍状態のケーキ2の底部(ペンギンの足がある側)から内部のロールケーキ20に通るように、ドリル4で穴をあける。そして、前述の支持皿31に対し、ピン30(
図5)が穴に入るように位置合わせをしながらケーキ2を下降させる。最後にケーキ2が支持皿31の上に載ると、支持皿31に透明カバー32が被せられる(
図6(i))。これで立体ケーキ2の製造に関する全ての作業が終了する。
【0039】
支持皿31と透明カバー32とによる保護ケース3に収容された立体ケーキ2は、販売のために陳列用の冷蔵庫または冷凍庫に入れられ、保管される。または、保護ケース3ごと化粧箱などに収容され、冷凍状態または冷蔵状態で搬送される場合もある。
【0040】
立体ケーキ2が取り出された後の菓子型1は、再び使用することができる。したがって、同形状の菓子型1を複数製作し、これらに上記
図6に示した作業を一括で実施することを繰り返すことによって、同一の形で品質が安定した立体ケーキ2を多量に製造することができる。また、菓子型1の形状を変更し、装填する材料を選定することによって、様々な形状の立体ケーキ2を製造することもできる。
【0041】
以下、本発明について考えられ得る変形例を説明する。
本発明で製造される菓子は上記実施例のような立体ケーキに限らず、カップケーキ程度の高さの菓子も本発明の対象となる。菓子本体の形状も必ずしも複雑でなくともよい。たとえば、円盤状のチョコレートの中央部にホイップクリームを詰めた構成の菓子や、チョコレートの層とホイップクリームの層とを二段重ねにした構成の菓子も、それぞれに応じた形状の菓子型を用いて上記実施例と同様の方法で製造することができる。
【0042】
菓子型の構成も、製造対象の菓子に応じて変更される。たとえば、上記実施例のような一対の凹型を組み合わせた構成の菓子型のほか、凹型と凸型との組み合わせによる菓子型を使用することもできる。また単純な形状の菓子を製造する場合には、一箇所が開口された空洞部を有する1つの型による菓子型を使用することができる。反対に、形状が複雑な菓子や大型の菓子を製造する場合には、3個以上の型を組み合わせた菓子型が使用される場合もある。
【0043】
ホイップクリームもチョコレート入りに限らず、普通の白いホイップクリームでも良いし、レアチーズや果汁などを混合したホイップクリームを使用してもよい。またホイップクリームに代えて、ムースやアイスクリーム(ソフトクリーム)等のクリーム状物を使用することもできる。
【0044】
クリーム状物と合わせられる可食材料もチョコレートに限らず、ジャム、飴,餡子など、ペースト状にできる様々な可食材料を使用することができる。選択された材料によっては、冷蔵保存で硬化させることができるものがあり、その場合は各材料の装填が完了した菓子型は冷蔵庫で一定時間保存される。
【0045】
いずれのケースにおいても、ペースト状の可食材料をクリーム状物に着実に結合させるには、クリーム状物の表面の凹凸度合いや硬さの決め手となる気泡混入量を適量に調整することや、クリーム状物の注入が完了する前にペースト状の可食材料の硬化や溶融が生じないように各材料の温度を管理する必要がある。菓子型についても、硬化した成形体から引き離すのに十分な柔軟性を有するものを選定し、適度な厚みの型を製作する必要がある。
これらの条件をあらかじめ検証により決定して整備すれば、初心者でも容易に菓子作りの作業を会得して作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 菓子型
1F 正面型
1B 背面型
10F,10B 凹部
10 空洞部
11 注入口
15a,15b,17,18 小凹部
16a,16b 窪み
2 立体ケーキ2
3 保護ケース
30 ピン
31 支持皿