(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】空気処理システム
(51)【国際特許分類】
F24F 13/10 20060101AFI20240422BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20240422BHJP
F24F 8/108 20210101ALI20240422BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F24F13/10 Z
F24F13/02 B
F24F13/02 D
F24F8/108 120
F24F13/02 A
F24F13/02 G
F24F13/06 C
(21)【出願番号】P 2023132994
(22)【出願日】2023-08-17
【審査請求日】2023-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591221134
【氏名又は名称】株式会社日本医化器械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】雉鼻 一郎
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-013770(JP,A)
【文献】中国実用新案第218269481(CN,U)
【文献】国際公開第2015/098478(WO,A1)
【文献】実開昭50-111363(JP,U)
【文献】登録実用新案第3177832(JP,U)
【文献】特開2022-117409(JP,A)
【文献】実開平05-066423(JP,U)
【文献】特開2013-044445(JP,A)
【文献】特開昭62-106246(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115342473(CN,A)
【文献】特開2016-136072(JP,A)
【文献】実公昭43-009597(JP,Y1)
【文献】特開2008-206818(JP,A)
【文献】実開平06-032948(JP,U)
【文献】実開昭61-133745(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/10
F24F 13/02
F24F 8/108
F24F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間の天井面側に配置され、前記室内空間に空気を吹き出す吹出口を有する吹出口部と、
前記室内空間の側面側に配置され、前記室内空間から空気を吸い込む吸込口を有する吸込口部と、
前記室内空間に対して前記吹出口
部を移動させて前記吹出
口の向きを変更する
吹出風向変更部と、
を備え
、
前記吹出風向変更部は、前記吸込口部が配置される前記室内空間の側面側に対向する前記吹出口部の側部を揺動可能に支持する吹出口部支軸を有し、この吹出口部支軸を支点とした前記室内空間への前記吹出口部の揺動により、前記吹出口の向きを前記吸込口へ向けた向きに変更する
ことを特徴とする空気処理システム。
【請求項2】
室内空間の天井面側に配置され、前記室内空間に空気を吹き出す吹出口を有する吹出口部と、
前記室内空間の側面側に配置され、前記室内空間から空気を吸い込む吸込口を有する吸込口部と、
前記室内空間に対して前記吸込口部を移動させて前記吸込口部の向きを変更する吸込風向変更部と、
を備え、
前記吸込風向変更部は、前記吸込口部の上部側を揺動可能に支持する吸込口部支軸を有し、この吸込口部支軸を支点とした前記室内空間への前記吸込口部の揺動により、前記吸込口の向きを前記吹出口へ向けた向きに変更する
ことを特徴とする空気処理システム。
【請求項3】
室内空間の天井面側に配置され、前記室内空間に空気を吹き出す吹出口を有する吹出口部と、
前記室内空間の側面側に配置され、前記室内空間から空気を吸い込む吸込口を有する吸込口部と、
前記室内空間に対して前記吹出口部を移動させて前記吹出口の向きを変更する吹出風向変更部と、
前記室内空間に対して前記吸込口部を移動させて前記吸込口部の向きを変更する吸込風向変更部と、
を備え、
前記吹出風向変更部は、前記吸込口部が配置される前記室内空間の側面側に対向する前記吹出口部の側部を揺動可能に支持する吹出口部支軸を有し、この吹出口部支軸を支点とした前記室内空間への前記吹出口部の揺動により、前記吹出口の向きを前記吸込口へ向けた向きに変更し、
前記吸込風向変更部は、前記吸込口部の上部側を揺動可能に支持する吸込口部支軸を有し、この吸込口部支軸を支点とした前記室内空間への前記吸込口部の揺動により、前記吸込口の向きを前記吹出口へ向けた向きに変更する
ことを特徴とする空気処理システム。
【請求項4】
前記
吹出風向変更部による前記吹出口部の移動に連動して伸縮し、空気を送風する送風経路に対して前記吹出口を接続する吹出口ダクトを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の空気処理システム。
【請求項5】
前記
吸込風向変更部による前記吸込口部の移動に連動して伸縮し、空気を吸い込む吸込経路に対して前記吸込口を接続する吸込口ダクトを備える
ことを特徴とする請求項
2に記載の空気処理システム
。
【請求項6】
前記吸込口部は、複数の異なる高さ位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一項に記載の空気処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間に対して空気を給排気する空気処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1のように、室内空間の天井面に設けられた吹出口から室内空間の直下方向に向けて空気を吹き出し、室内空間の側面に設けられた吸込口から室内空間の空気を吸い込み、室内空間の空気を清浄化する空気処理システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の空気処理システムでは、室内空間の天井面に吹出口が設けられ、室内空間の側面に吸込口が設けられ、吹出口の向きと吸込口の向きとが略直交する構造となるが、このような構造においても室内空間の空気の清浄効果を高めることが望まれる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、室内空間の空気の清浄効果を高めることができる空気処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気処理システムは、室内空間の天井面側に配置され、前記室内空間に空気を吹き出す吹出口を有する吹出口部と、前記室内空間の側面側に配置され、前記室内空間から空気を吸い込む吸込口を有する吸込口部と、前記室内空間に対して前記吹出口部を移動させて前記吹出口の向きを変更する吹出風向変更部と、を備え、前記吹出風向変更部は、前記吸込口部が配置される前記室内空間の側面側に対向する前記吹出口部の側部を揺動可能に支持する吹出口部支軸を有し、この吹出口部支軸を支点とした前記室内空間への前記吹出口部の揺動により、前記吹出口の向きを前記吸込口へ向けた向きに変更する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吹出口と吸込口との間でのプッシュプル気流の制御が可能となり、室内空間の空気の清浄効果を高めることができる空気処理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態を示す空気処理システムの正面図である。
【
図3】同上空気処理システムの吹出口および吸込口の方向を変更した正面図である。
【
図4】同上空気処理システムの吹出風向変更部および吸込風向変更部を示す概略断面図である。
【
図5】同上空気処理システムのファンフィルタユニットを示し、(a)は吹出口の向きを下方に向けた斜視図、(b)は吹出口の向きを斜め下方に変更した斜視図である。
【
図6】同上空気処理システムのダクトパネルを示し、(a)は吸込口の向きを水平方向に向けた斜視図、(b)は吸込口の向きを斜め上方に変更した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1ないし
図4に空気処理システム10を示す。空気処理システム10は、医療機関の治療室である化学療法室の室内空間11の空気を清浄に保つもので、例えば、室内空間11に配置された化学療法チェア12に座る患者13に抗がん剤治療薬を投与する化学療法中において、患者13から空気中に飛散する薬剤成分を含む粒子や塵埃等の浮遊物を捕捉および除去することで、患者13以外の医療関係者等に対する薬剤の暴露を低減するのに用いられる。なお、空気処理システム10は、化学療法室に限らず、オペ室、無菌病室、細菌検査室、病理室、ICU室、培養室等にも適用できる。
【0011】
空気処理システム10は、室内空間11の天井面側に設置されるファンフィルタユニット20と、室内空間11の側面側である壁面に設置されるダクトパネル21と、室内空間11の天井面側においてファンフィルタユニット20とダクトパネル21とを接続する接続ダクト22と、を備えている。ファンフィルタユニット20とダクトパネル21と接続ダクト22とにより、室内空間11の空気を循環させる空気循環路23が形成されている。また、ファンフィルタユニット20とダクトパネル21との間に空気調和機(冷却器、加熱器、加湿器、除湿器等)を組み込むこともある。
【0012】
室内空間11の天井面側には、室内空間11と天井裏空間24とを仕切る天井板25が設置されている。ファンフィルタユニット20が天井板25に開口形成された埋込開口26に埋め込み設置され、ダクトパネル21の上部側が天井板25を貫通して天井裏空間24に配置され、天井裏空間24において接続ダクト22によりファンフィルタユニット20とダクトパネル21とが接続されている。
【0013】
図1ないし
図5にファンフィルタユニット20を示す。ファンフィルタユニット20は、筐体30と、ファン31と、空気処理部32と、吹出口部33と、吹出口ダクト34と、風向変更部である吹出風向変更部(吹出風向変更ユニット)35と、を備えている。
【0014】
筐体30は、上下方向に薄形で、下方または上方から見て一方の対向する辺が他方の対向する辺よりも長いの直方体形状に設けられている。筐体30の内部には、ファン31が収容されるファン室37と、このファン室37の側部の送風室38と、この送風室38の下側の吹出室39と、がそれぞれ区画形成されている。ファン室37は筐体30の長手方向の一端側に形成され、送風室38と吹出室39は上下に配置されて筐体30のファン室37よりも長手方向の他端側に形成されている。送風室38と吹出室39は、筐体30の長手方向に交差する短手方向の両側面よりも内側の中央領域に形成されている。ダクトパネル21に対向する筐体30の一端面には、ファン室37に連通し、接続ダクト22が接続される複数のダクト接続口40が設けられている。筐体30の下面には吹出室39の下面側に連通する開口部41が設けられ、この開口部41に吹出口部33および吹出口ダクト34が配置されている。
【0015】
ファン31は、例えば羽根車とこの羽根車を回転させるモータを備えた遠心ファンが用いられ、ファン室37内にダクト接続口40から空気を吸い込み、吸い込んだ空気を送風室38内に送り込む。
【0016】
空気処理部32は、空気中の塵埃や粒子を捕獲して除去するフィルタ43が用いられている。フィルタ43には、例えば空気中の0.3μm以上の粒子を捕獲するHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)等が用いられる。フィルタ43は、送風室38と吹出室39とを連通する連通開口を覆うように配置され、送風室38から吹出室39に送り込まれる空気を濾過する。
【0017】
吹出口部33は、筐体30の下面の開口部41を閉塞可能な吹出口枠45と、この吹出口枠45の中央に設けられた吹出口46と、を備えている。吹出口部33は、ダクトパネル21に対向する一端側の一辺が水平な軸である吹出口部支軸47によって筐体30に取り付けられ、この吹出口部支軸47を支点として上下方向に揺動可能(角度調整可能)に支持されている。吹出口46には、吹き出す空気を整流する整流枠48が配置されている。整流枠48は、複数の整流板が格子状に設けられて構成されており、吹出口46に垂直な方向に空気が吹き出すように整流する。
【0018】
吹出口ダクト34は、空気を送風する送風経路49である吹出室39に対して吹出口部33を気密状態で移動可能に接続するもので、筒状の伸縮可能な蛇腹ダクト50が用いられている。蛇腹ダクト50の上端側は、吹出室39内で開口部41の周囲に設けられた取付枠51に気密に取り付けられ、一方、蛇腹ダクト50の下端側は、吹出口枠45の上面側で吹出口46の周囲に気密に取り付けられている。吹出口ダクト34(蛇腹ダクト50)は、吹出口部33の移動(揺動)に連動して伸縮し、吹出口部33の移動位置(揺動位置)にかかわらず、送風経路49に対して吹出口46を接続し、フィルタ43を通過した空気を吹出口46に導いて吹き出させる。
【0019】
なお、吹出口ダクト34は、蛇腹ダクト50に限らず、例えば、大きさが少しずつ異なる扇形のダクト枠が吹出口部支軸47を中心として組み合わせ、吹出口部33の移動に連動して複数の扇形のダクト枠が伸縮する構成でもよい。
【0020】
図4に示すように、吹出風向変更部35は、吹出口部33の一端側を筐体30に対して揺動可能に支持する吹出口部支軸47と、筐体30内に設置され吹出口部33を揺動させる駆動部53と、この駆動部53と吹出口部33とを連動させるリンク54と、を備えている。
【0021】
駆動部53は、筐体30の開口部41の上方で、吹出口部支軸47が配置される一端側に対して交差する両側の内側面にそれぞれ配置されている(
図2参照)。駆動部53は、筐体30の開口部41と略平行に配置され、ボールねじを回転可能に内蔵した長尺なシリンダ部55と、このシリンダ部55内のボールねじを回転駆動する正逆回転可能なモータ56と、ボールねじに螺合する螺合部材を介してシリンダ部55の長手方向に沿って移動する移動部57と、を有している。また、リンク54の一端が駆動部53の移動部57に回動可能に連結され、リンク54の他端が吹出口部33の裏面側で吹出口部支軸47とは反対側となる他端側に立設された連結部58に回動可能に連結されている。そして、駆動部53の移動部57が一端側(
図4右側)に移動することで、吹出口部33が筐体30の開口部41内へ向けて揺動し、一方、駆動部53の移動部57が他端側(
図4左側)に移動することで、吹出口部33が下方の室内空間11へ向けて進出するように揺動する。
【0022】
また、
図1ないし
図4、および
図6にダクトパネル21を示す。ダクトパネル21は、筐体60と、吸込口部61と、吸込口ダクト62と、風向変更部である吸込風向変更部(吸込風向変更ユニット)63と、を備えている。
【0023】
筐体60は、奥行き寸法が小さく上下方向に長い中空状のダクト構造に形成されており、例えば室内空間11の壁面に沿って配置され、上部側が天井板25を貫通して天井裏空間24に配置されている。室内空間11に配置される筐体60の下部側の側面には、上下方向の異なる高さ位置に2つの開口部66が設けられ、各開口部66に吸込口部61および吸込口ダクト62がそれぞれ配置されている。なお、開口部66、吸込口部61および吸込口ダクト62は、3つ以上の異なる高さ位置に設けられてもよい。天井裏空間24に配置される筐体60の上部側の側面には、筐体60内に連通し、接続ダクト22が接続される複数のダクト接続口67が設けられている。
【0024】
吸込口部61は、筐体60の側面の開口部66を閉塞可能な吸込口枠70と、この吸込口枠70の中央に設けられた吸込口71と、を備えている。吸込口部61は、上側の一辺が水平な軸である吸込口部支軸72によって筐体60に取り付けられ、この吸込口部支軸72を支点として上下方向に揺動可能(角度調整可能)に支持されている。吸込口71には、吸い込む空気中の塵埃を捕獲して除去するプレフィルタ73が着脱可能に配置されている。
【0025】
吸込口ダクト62は、空気を吸い込む吸込経路59である筐体60内に対して吸込口部61を気密状態で移動可能に接続するもので、筒状の伸縮可能な蛇腹ダクト75が用いられている。蛇腹ダクト75の一端側は、筐体60内で開口部66の周囲に設けられた取付枠76に気密に取り付けられ、一方、蛇腹ダクト75の他端側は、吸込口枠70の背面側で吸込口71の周囲に気密に取り付けられている。吸込口ダクト62は、吸込口部61の移動(揺動)に連動して伸縮し、吸込口部61の移動位置(揺動位置)にかかわらず、吸込経路59に対して吸込口71を接続し、筐体60内に吸込口71から空気を吸い込みさせる。なお、吸込口ダクト62は、蛇腹ダクト75に限らず、例えば、吸込口部支軸72を中心とする扇形のダクト枠等でもよい。
【0026】
図4に示すように、吸込風向変更部63は、吸込口部61の上端側を筐体60に対して揺動可能に支持する吸込口部支軸72と、筐体60内に設置され吸込口部61を揺動させる駆動部78と、この駆動部78と吸込口部61とを連動させるリンク79と、を備えている。
【0027】
駆動部78は、筐体60の開口部66の内側で、吸込口部支軸72が配置される上端側に対して交差する両側の内側面にそれぞれ配置されている。駆動部78は、筐体60の開口部66と略平行に配置され、ボールねじを回転可能に内蔵した長尺なシリンダ部80と、このシリンダ部80内のボールねじを回転駆動する正逆回転可能なモータ81と、ボールねじに螺合する螺合部材を介してシリンダ部80の長手方向に沿って移動する移動部82と、を有している。また、リンク79の一端が駆動部78の移動部82に回動可能に連結され、リンク79の他端が吸込口部61の裏面側で吸込口部支軸72とは反対側となる下端側に立設された連結部83に回動可能に連結されている。そして、駆動部78の移動部82が下側に移動することで、吸込口部61が筐体60の開口部66内へ向けて揺動し、一方、駆動部78の移動部82が上側に移動することで、吸込口部61が室内空間11へ向けて進出するように揺動する。
【0028】
また、空気処理システム10は、ファン31のオンオフ、吹出口46および吸込口71の向き(各駆動部53,78のモータ56,81の正逆回転)を操作する図示しないシステム操作部を備えている。
【0029】
また、室内空間11で化学療法チェア12に座る患者13の位置(少なくとも頭部の位置)は、水平方向において、ファンフィルタユニット20の吹出口46と、ダクトパネル21の吸込口71との間で、かつ、鉛直方向において、ファンフィルタユニット20の吹出口46よりも下方で、ダクトパネル21の少なくとも下側の吸込口71よりも上方の位置とされる。言い換えれば、ファンフィルタユニット20の吹出口46と、ダクトパネル21の吸込口71とは、化学療法チェア12に座る患者13の少なくとも頭部を間に置いて対向可能な位置に配置される。
【0030】
さらに、化学療法チェア12に座る患者13の向きは、患者13の顔面がダクトパネル21に対して反対向きで、吹出口46に対向可能な向きとされている。
【0031】
次に、空気処理システム10の動作を説明する。
【0032】
図1、
図2、
図5(a)および
図6(a)に示すように、化学療法の開始前および完了後や、化学療法中以外の場合には、吹出口部33が筐体30の開口部41内に移動した格納状態とされるとともに、吸込口部61が筐体60の開口部66内に移動した格納状態とすることができる。この格納状態では、吹出口部33および吸込口部61が室内空間11に出っ張らず、患者13や医療従事者等が吹出口部33や吸込口部61にぶつかったり、移動や作業の邪魔になるのを防止できる。
【0033】
また、
図3、
図5(b)および
図6(b)に示すように、患者13が化学療法チェア12に座り、化学療法を施す場合には、プッシュプル気流の効果を高めるために吹出口46の向きおよび吸込口71の向きが変更される。
【0034】
吹出風向変更部35により吹出口部33が吹出口部支軸47を支点として下方の室内空間11に突出するように揺動され、吹出口46の向きが化学療法チェア12に座る患者13や吸込口71へ向けた向きに変更される。このとき、蛇腹ダクト50が伸長し、吹出室39と吹出口46との間の気密接続状態を保ったまま吹出口部33が揺動される。
【0035】
吸込風向変更部63により、吸込口部61が吸込口部支軸72を支点とした室内空間11に突出するように揺動され、吸込口71の向きが化学療法チェア12に座る患者13や吹出口46へ向けた向きに変更される。このとき、蛇腹ダクト75が伸長し、筐体60内と吸込口71との間の気密接続状態を保ったまま吸込口部61が揺動される。また、異なる高さ位置に位置する上下の各吸込口部61の揺動角度は、同じでもよいし、異なっていてもよい。例えば、吹出口46に対向するように、下側の吸込口部61の揺動角度を大きく、上側の吸込口部61の揺動角度を小さくしてもよい。
【0036】
そして、ファン31の動作により、ファン31で吸い込んだ空気が送風室38からフィルタ43を通過して吹出室39に送られ、吹出室39および蛇腹ダクト50内を通じて吹出口46から室内空間11に吹き出す。室内空間11の空気が吸込口71から蛇腹ダクト75内を通じてダクトパネル21の筐体60内に吸い込まれ、この筐体60内および接続ダクト22を通じてファン31に吸い込まれる。
【0037】
吹出口46から室内空間11に空気が吹き出して発生するプッシュ気流P1と、吸込口71に室内空間11の空気が吸い込まれて発生するプル気流P2とにより、吹出口46と吸込口71との間でプッシュプル気流の流れが発生する。
【0038】
化学療法中において、化学療法チェア12に座る化学療法中の患者13から空気中に飛散された薬剤成分を含む粒子や塵埃が吹出口46からのプッシュ気流P1で捕捉され、吸込口71へのプル気流P2で吸込口71に吸い込まれて室内空間11内から除去される。吸込口71に吸い込また粒子や塵埃は、空気循環路23を流れてフィルタ43に捕獲される。そのため、フィルタ43で清浄化された空気が吹出口46から吹き出される。
【0039】
吹出口部33が吹出口部支軸47を支点として下方の室内空間11に突出するように揺動され、吹出口46の向きが化学療法チェア12に座る患者13や吸込口71へ向けた向きに変更されていること、吸込口部61が吸込口部支軸72を支点とした室内空間11に突出するように揺動され、吸込口71の向きが化学療法チェア12に座る患者13や吹出口46へ向けた向きに変更されていることにより、吹出口46と吸込口71との間でのプッシュプル気流が略直線状または直線状に近い流れに制御され、プッシュプル気流による空気中の粒子や塵埃等の捕捉効果を高めることができる。
【0040】
このように、空気処理システム10では、室内空間11に対して、吹出口部33を移動させて吹出口46の向きを変更し、吸込口部61を移動させて吸込口71の向きを変更するため、吹出口46と吸込口71との間でのプッシュプル気流を制御することができ、室内空間11の空気の清浄効果を高めることができる。
【0041】
吹出口ダクト34により空気を送風する送風経路49である吹出室39に対して吹出口部33を移動可能に接続しているため、吹出口部33を移動させても吹出口46から空気を吹き出すことができる。同様に、吸込口ダクト62により空気を吸い込む吸込経路59である筐体60内に対して吸込口部61を移動可能に接続しているため、吸込口部61を移動させても吸込口71から空気を吸い込むことができる。
【0042】
これら吹出口ダクト34および吸込口ダクト62として伸縮可能な蛇腹ダクト50,75を用いることで、送風経路49である吹出室39と吹出口部33との間、および吸込経路59である筐体60内と吸込口部61との間の気密性を保ちながら吹出口部33および吸込口部61を移動させることができる。
【0043】
また、吸込口部61側に位置する吹出口部33の側部が吹出口部支軸47で揺動可能に支持され、この吹出口部支軸47を支点とした室内空間11への吹出口部33の揺動により、吹出口46の向きが吸込口71へ向けた向きに変更され、また、吸込口部61の上側が吸込口部支軸72で揺動可能に支持され、この吸込口部支軸72を支点とした室内空間11への吸込口部61の揺動により、吸込口71の向きが吹出口46へ向けた向きに変更されるため、吹出口46と吸込口71との間での略直線状または直線に近いプッシュプル気流を制御することができる。
【0044】
また、複数の吸込口部61が異なる高さ位置に設けられているため、高さ方向の広い範囲で空気を吸い込むことができるとともに、1つの場合に比べて室内空間11への突出寸法を小さくできる。
【0045】
なお、空気処理システム10は、化学療法チェア12に代えて、ベッドを用いて化学療法を行う場合にも対応でき、この場合も、ベッドに横たわる患者13の位置に対応して吹出口46および吸込口71の向きを変更し、吹出口46と吸込口71との間でのプッシュプル気流を制御すればよい。
【0046】
また、空気処理システム10は、温度調節可能な空調ユニットと組み合わせ、少なくとも温度調節した空気を吹出口46から吹き出すようにしてもよい。この場合、上述のようにプッシュプル気流を制御できるため、空調効果を高め、省エネルギ性を向上できる。
【0047】
また、吹出風向変更部35による吹出口部33の移動は、吹出口部支軸47を中心とする揺動に限らず、例えば、ファンフィルタユニット20に対して室内空間11を上下方向に移動とし、任意の高さ位置で吹出口46の向きを変更するように移動させてもよい。同様に、吸込風向変更部63による吸込口部61の移動は、吸込口部支軸72を中心とする揺動に限らず、例えば、ダクトパネル21から室内空間11に突出するように移動とし、任意の突出位置で吸込口71の向きを変更するように移動させてもよい。
【0048】
また、吹出口部33および吸込口部61の両方をそれぞれ風向変更部35,63によって移動させて風向を変更することで、プッシュプル気流を適切に制御しやすいが、吹出口部33および吸込口部61のいずれか一方のみを移動させて風向を変更するだけでもよく、この場合にもプッシュプル気流を制御できる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態およびその変形例について説明したが、種々の構成の組み合わせ、一部の省略、置き換えおよび変更も可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 空気処理システム
11 室内空間
33 吹出口部
34 吹出口ダクト
35 吹出風向変更部
46 吹出口
47 吹出口部支軸
49 送風経路
59 吸込経路
61 吸込口部
62 吸込口ダクト
63 吸込風向変更部
71 吸込口
72 吸込口部支軸
【要約】
【課題】室内空間の空気の清浄効果を高めるときができる空気処理システムを提供する。
【解決手段】空気処理システム10は、吹出口部33と、吸込口部61と、風向変更部と、を備える。吹出口部33は、室内空間11の天井面側に配置され、室内空間11に空気を吹き出す吹出口46を有する。吸込口部61は、室内空間11の側面側に配置され、室内空間11から空気を吸い込む吸込口71を有する。風向変更部は、室内空間11に対して吹出口部33を移動させて吹出口46の向きを変更し、室内空間11に対して吸込口部61を移動させて吸込口71の向きを変更する。
【選択図】
図3