IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社TOMTENの特許一覧

<>
  • 特許-農産物乾燥システム及び農産物乾燥方法 図1
  • 特許-農産物乾燥システム及び農産物乾燥方法 図2
  • 特許-農産物乾燥システム及び農産物乾燥方法 図3
  • 特許-農産物乾燥システム及び農産物乾燥方法 図4
  • 特許-農産物乾燥システム及び農産物乾燥方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】農産物乾燥システム及び農産物乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 9/06 20060101AFI20240422BHJP
   F26B 3/04 20060101ALI20240422BHJP
   A23N 12/08 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F26B9/06 E
F26B3/04
A23N12/08 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023173147
(22)【出願日】2023-10-04
【審査請求日】2023-10-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518264099
【氏名又は名称】株式会社TOMTEN
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山道 弘敬
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-038232(JP,A)
【文献】実開昭53-063773(JP,U)
【文献】特開昭58-168879(JP,A)
【文献】特開平08-140649(JP,A)
【文献】実開平06-018896(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 9/06
F26B 3/04
A23N 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に積み重ねられた、農産物を収容する複数の容器と、
前記農産物を乾燥させるための空気を下方向に吐出するファンと、
上部に前記ファンが設置され、前記ファンから吐出された前記空気を下部に導く第1チャンバと、
前記第1チャンバと前記複数の容器との間に配置され、前記第1チャンバの前記下部に連通し、前記第1チャンバから流入した前記空気を略水平方向に吐出する吐出口を前記複数の容器の各々に対応する位置に備えた第2チャンバと、
を有し、
前記容器は、
前記農産物が収容される略箱状の収容部と、
前記収容部の下部に配置され、フォークリフトのフォークが挿入されるスロット部と、
前記収容部と前記スロット部の間に配置され、前記農産物を支持しつつ前記スロット部に供給された前記空気を前記収容部に通風可能な底部と、
前記スロット部の下部に配置され、下側に配置された前記容器の前記収容部を閉塞する底板部と、を有し、
前記複数の容器の各々は、
前記スロット部が前記第2チャンバの前記吐出口に連通するように配置されており、
前記収容部は、
4つの壁部と前記底部とにより、上側が開口した略箱状に形成されており、前記4つの壁部のうち、前記スロット部が開口する方向に直交する方向に対向する一対の壁部のそれぞれの上端に、前記上端の一部を切り欠くことにより通気口が形成されている
ことを特徴とする農産物乾燥システム。
【請求項2】
前記第2チャンバは、
前記第1チャンバの前記下部に連通する連通部から上方に離れるにしたがって前記空気の流路が狭くなるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の農産物乾燥システム。
【請求項3】
前記第2チャンバは、
最も下方に配置される前記吐出口への前記空気の流れの抵抗となる絞り部材を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の農産物乾燥システム。
【請求項4】
第1チャンバにおいて、ファンから吐出された空気を下方向に流し、
前記第1チャンバと、上下方向に積み重ねられ農産物を収容する複数の容器との間に配置され、前記第1チャンバの下部に連通する第2チャンバにおいて、前記第1チャンバから流入した前記空気を前記複数の容器の各々に対応する位置に備えられた吐出口から略水平方向に吐出し、
前記容器は、
前記農産物が収容される略箱状の収容部と、
前記収容部の下部に配置され、フォークリフトのフォークが挿入されるスロット部と、
前記収容部と前記スロット部の間に配置され、前記農産物を支持しつつ前記スロット部に供給された前記空気を前記収容部に通風可能な底部と、
前記スロット部の下部に配置され、下側に配置された前記容器の前記収容部を閉塞する底板部と、を有し、
前記複数の容器の各々は、
前記スロット部が前記第2チャンバの前記吐出口に連通するように配置されており、
前記収容部は、
4つの壁部と前記底部とにより、上側が開口した略箱状に形成されており、前記4つの壁部のうち、前記スロット部が開口する方向に直交する方向に対向する一対の壁部のそれぞれの上端に、前記上端の一部を切り欠くことにより通気口が形成されており、
前記吐出口から吐出した前記空気を前記複数の容器にそれぞれ供給する
ことを特徴とする農産物乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産物を乾燥するための農産物乾燥システム及び農産物乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
収穫された農産物をコンテナに収容して貯蔵し、出荷までの間に乾燥させるシステムが知られている。例えば特許文献1には、球根を収容したコンテナと、コンテナを載置し通気空間を備えたパレットと、パレット内を通風する通風ファンを有する通気ダクトとを有し、コンテナ及びパレットを上下に積み重ね、通気ダクトから各パレットの通気空間に通風させるシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-140649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の構造では、通風ファンに近い上側のパレットにおいて、流速の速い風が下方に向けて通過するために通気空間から空気を吸い出す力が働いて通気ダクト内に渦流が生じ、良好に風を供給できない可能性がある。その場合、通風ファンから離れた下側のパレットにより多くの風が供給されてしまう。このように、供給する風に偏りが生じてしまうため、各コンテナの農作物を均一に乾燥することができないという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、上下方向に積み重ねられた複数の容器に供給する空気の偏りを抑制することで、各容器に収容された農産物を略均一に乾燥させることができる農産物乾燥システム及び農産物乾燥方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明の農産物乾燥システムは、上下方向に積み重ねられた、農産物を収容する複数の容器と、前記農産物を乾燥させるための空気を下方向に吐出するファンと、上部に前記ファンが設置され、前記ファンから吐出された前記空気を下部に導く第1チャンバと、前記第1チャンバと前記複数の容器との間に配置され、前記第1チャンバの前記下部に連通し、前記第1チャンバから流入した前記空気を略水平方向に吐出する吐出口を前記複数の容器の各々に対応する位置に備えた第2チャンバと、を有する。
【0007】
本発明の農産物システムでは、第1チャンバの上部に搭載されたファンから吐出された空気は下部に導かれ、第1チャンバの下部から第2チャンバに流入して、複数の容器の各々に対応する位置に配置された吐出口から略水平方向に吐出されて複数の容器の各々に供給される。これにより、容器に収容された農産物が乾燥される。また本発明によれば、ファンから吐出された空気を下方に流す第1チャンバと、空気を水平方向に吐出して各容器に供給する第2チャンバとを別々のチャンバとして構成する。これにより、第2チャンバにおいてファンから吐出された空気の勢いを緩衝させた上で各吐出口に供給することができるので、吐出口の近傍に渦流が生じることを抑制できる。その結果、上下方向に積み重ねられた複数の容器に供給する空気の偏りを抑制することができるので、容器に収容された農産物を略均一に乾燥させることができる。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本願発明の農産物乾燥方法は、第1チャンバにおいて、ファンから吐出された空気を下方向に流し、前記第1チャンバと、上下方向に積み重ねられ農産物を収容する複数の容器との間に配置され、前記第1チャンバの下部に連通する第2チャンバにおいて、前記第1チャンバから流入した前記空気を前記複数の容器の各々に対応する位置に備えられた吐出口から略水平方向に吐出し、前記吐出口から吐出した前記空気を前記複数の容器にそれぞれ供給する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上下方向に積み重ねられた複数の容器に供給する空気の偏りを抑制することで、各容器に収容された農産物を略均一に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る農産物乾燥システムの構成の一例を表す、図3中I-I断面に相当する断面図である。
図2】容器を配置していない状態における農産物乾燥システムの構成の一例を表す正面図である。
図3】容器を配置した状態における農産物乾燥システムの構成の一例を表す正面図である。
図4】容器の構造の一例を表す斜視図である。
図5】複数の容器を積み重ねた場合の空気の流れの一例を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<農産物乾燥システムの構成>
まず、図1乃至図3を用いて、実施形態に係る農産物乾燥システムの構成について説明する。図1は、実施形態に係る農産物乾燥システムの構成の一例を表す、図3中I-I断面に相当する断面図であり、図2は、容器を配置していない状態における農産物乾燥システムの構成の一例を表す、前側から見た正面図であり、図3は、容器を配置した状態における農産物乾燥システムの構成の一例を表す、前側から見た正面図である。なお、以下の説明において、上下、前後及び左右の方向は、図1乃至図3の各図中に示される矢印の方向に対応している。これらの方向は説明の便宜上使用するものであり、農産物乾燥システムにおける各部材の向きや配置を限定するものではない。
【0013】
実施形態に係る農産物乾燥システムは、多種多様な農産物を乾燥及び貯蔵するシステムである。乾燥させる農産物の種類は特に限定されないが、特に、粒子の細かい農産物(例えば麦や米などの穀類、大豆や小豆などの豆類等)や、入出庫の激しい農産物で出荷前の包装を控えているような農産物の乾燥に適している。
【0014】
図1及び図3に示すように、農産物乾燥システム1は、農産物を収容する複数の容器3と、ファン5と、第1チャンバ7と、第2チャンバ9とを有する。容器3は、上下方向に複数段(図1及び図3に示す例では4段)が積み重ねられる。また、容器3は、前後方向に複数列(図1に示す例では4列)が隣接するように配置されると共に、左右方向に複数列(図3に示す例では4列)が隣接するように配置される。なお、上記段数及び列数は一例であり、4段又は4列以外としてもよい。但し、前後方向の列数は10列程度までとするのが好ましい。また、容器3は左右方向又は前後方向には必ずしも複数列配置されなくてもよく、1列のみ配置されてもよい。
【0015】
ファン5は、第1チャンバ7の上部に設置されている。ファン5は、容器3に収容された農産物を乾燥させるための空気を上方から吸い込み、第1チャンバ7内において下方向に吐出する。なお、ファン5は、必要風量等に応じて左右方向に複数台設置されてもよい。
【0016】
第1チャンバ7は、ファン5から吐出された空気を下部に導く空間である。第1チャンバ7は、上下方向に沿うように立設されている。第2チャンバ9は、ファン5から吐出され第1チャンバ7により下部に導かれた空気を複数の容器3に供給する空間である。第2チャンバ9は、第1チャンバ7と、上下方向に積み重ねられた複数の容器3との間に配置されており、上下方向に沿うように立設されている。第2チャンバ9の下部は、第1チャンバ7の下部に連通している。第2チャンバ9は、第1チャンバ7から流入した空気を略水平方向に吐出する吐出口11を複数の容器3の各々に対応する位置に備えている。また、第2チャンバ9は、第1チャンバ7の下部に連通する連通部12から上方に離れるにしたがって空気の流路が狭くなるように構成されている。
【0017】
具体的には、第2チャンバ9は、複数の吐出口11が形成され、上下方向に略平行に立設された壁部13と、壁部13の後方で上下方向に対して所定の角度だけ傾斜した壁部15とを有する。壁部15の下端は開口しており、当該開口が第1チャンバ7と第2チャンバ9とを連通する連通部12を形成している。壁部13と壁部15に挟まれた空間、及び、壁部13と連通部12の間の空間が第2チャンバ9を構成する。壁部15は、壁部13との間隔が上側ほど狭くなるように傾斜している。これにより、第2チャンバ9は、連通部12から上方に離れるにしたがって空気の流路が狭くなるように構成されている。
【0018】
図2に示すように、壁部13には、複数の容器3のスロット部27(図3図4図5参照)に対応する位置に吐出口11がそれぞれ形成されている。吐出口11は、壁部13に略水平方向に貫通するように形成された穴である。吐出口11の形状及び大きさは特に限定されないが、例えば容器3のスロット部27と略同じ形状(例えば長方形)及び大きさとなるように形成されてもよい。前後方向において壁部13から1列目に積み重ねられた容器3は、スロット部27が壁部13の吐出口11に連通するように、壁部13の壁面に接触して配置される。2列目の容器3は、スロット部27が1列目の容器3のスロット部27に連通するように、1列目の容器3の壁面に接触して配置される。3列目以降も同様である。容器3の配置の順番は、まず前後方向における壁部13から1列目の位置において、1段目の容器3が左右方向に4列配置され、2段目、3段目、4段目と順に上方に積み上げられる。前後方向における1列目の積み上げが完了すると、前後方向の2列目の位置において、同様の順番で配置する。3列目以降も同様である。
【0019】
なお、壁部13の各吐出口11には上下に開閉するシャッタ(図示省略)がそれぞれ設けられており、開口の面積を調節することが可能である。これにより、吐出口11ごとに開口面積を微調整することができ、各容器3に対してより均一な量の空気を供給することが可能となっている。例えば、最上段の容器3に蓋をしない場合には、最上段の容器3はその他の容器3に比べて抵抗が少ないため、最上段の容器3に対応する吐出口11の開口面積を他の吐出口11よりも狭くなるように調整してもよい。
【0020】
図1に示すように、第2チャンバ9は、最も下方に配置される吐出口11への空気の流れの抵抗となる絞り部材17を有する。絞り部材17は、連通部12と壁部13の最下部の吐出口11との間において、底部19から所定の高さだけ上方に突出している。
【0021】
ファン5の上部には、開閉蓋21が設けられている。開閉蓋21が閉塞された場合には、ファン5により壁部23の前側の空気(例えば室内の空気)が吸引されて吐出され、開閉蓋21が開放された場合には、ファン5により壁部23の前側の空気に加えて後側の空気(例えば室外の空気)が吸引されて吐出される。開閉蓋21が中途の位置にあれば、外部からの空気と室内からの空気の両方を吸引して、その開閉度及び外気温度・湿度、循環する室内空気の温度・湿度に応じて開度を調整することで、丁度良い温度・湿度に調整して作物に供給することが可能である。室内に空気が外部より供給される場合には、その流入分だけ室内より排出する必要があり、それは例えばこのチャンバーと反対側の位置に開閉蓋のついた開口部を用意しておき、外気を流入させる入気口の開度に比例した開度で開くように連動させて、庫内の圧力が安定するように構成する。
【0022】
<容器の構造>
次に、図4及び図5を用いて、容器3の構造について説明する。図4は、容器3の構造の一例を表す斜視図であり、図5は、複数の容器3を積み重ねた場合の空気の流れの一例を表す斜視図である。なお、以下の説明において、上下、前後及び左右の方向は、図4及び図5の各図中に示される矢印の方向に対応している。これらの方向は説明の便宜上使用するものであり、容器における各部材の向きや配置を限定するものではない。なお、図4及び図5に示される矢印は、図1乃至図3に示される矢印に対応している。
【0023】
図4に示すように、容器3は、農産物24(図5参照)が収容される収容部25と、スロット部27と、底部29と、底板部31とを有する。収容部25は、4つの壁部33A,33B,33C,33Dと底部29とにより、上側が開口した略箱状に形成されている。収容部25を構成する壁部33A,33B,33C,33Dのうち、スロット部27が開口する前後方向に直交する左右方向に対向する一対の壁部33C,33Dのそれぞれの上端に、通気口35が形成されている。通気口35は、壁部33C,33Dの上端の一部を切り欠くことにより形成されている。
【0024】
スロット部27は、フォークリフトのフォークが挿入される穴であり、収容部25の下部に配置されている。図4及び図5に示す例では、2つのスロット部27が左右方向に並んで配置されており、各スロット部27は前後方向に貫通している。スロット部27により、容器3はフォークリフトを使用して運搬することが可能である。スロット部27は、第2チャンバ9の吐出口11から吐出された空気の流路としても機能する。
【0025】
底部29は、収容部25と2つのスロット部27の間に配置されている。底部29は、農産物24を支持しつつスロット部27に供給された空気を収容部25に通風可能に構成されている。底部29は、例えば複数の木材を一定の間隔を空けて配置した簀子状の板材の上にメッシュシートを敷き詰める等により構成されている。メッシュシートの目の細かさは農産物24の種類に応じて選択される。
【0026】
底板部31は、2つのスロット部27の下部に配置されている。すなわち、2つのスロット部27は下部が開放されておらず、共に下部が底板部31により閉塞されている。図5に示すように、容器3が上下に積み重ねられた際に、上側に配置された容器3の底板部31は下側に配置された容器3の収容部25を閉塞する。図5に示すように、壁部13の吐出口11から吐出された空気は容器3のスロット部27に流入して前側に流れ(矢印37)、スロット部27から底部29を通って収容部25に流入し、収容部25に収容された農産物24の隙間を上側に流れて農産物24を乾燥させる。最上部に配置された容器3では、農産物24の隙間を流れた空気は上側に流出し(矢印39)、最上部以外の容器3では、農産物24の隙間を流れた空気は左右の通気口35から左右両側に流出する(矢印41)。なお、最上部に配置された容器3の上部に空の容器3を載せて蓋をする等により、各容器3の抵抗を均一化してもよい。
【0027】
<空気の流れ>
次に、前述の図1を用いて、農産物乾燥システム1における空気の流れについて説明する。図1に示すように、農産物乾燥システム1では、ファン5から吐出された空気は第1チャンバ7を下方に流れ、第1チャンバ7の下部において前側に向きを変えて第2チャンバ9に流入する。第2チャンバ9では、絞り部材17により最下部の吐出口11へ流れる空気に対して一定の抵抗が与えられると共に、壁部15の傾斜により上方に流れる空気に対しても一定の抵抗が与えられ、且つ、前側に流れるように導かれる。これにより、第2チャンバ9に流入した空気は壁部13の複数の吐出口11から略均等な流量で前向きに吐出される。
【0028】
吐出口11から吐出された空気は、容器3のスロット部27内に流入する。容器3が前後方向に複数列配置されている場合には、連通した各容器のスロット部27内を前側に向けて流れる。図1に示すように、前後方向において壁部13から最も離れた位置に配置された容器3では、スロット部27の前側の端部に栓部材43が挿入されて閉塞される。栓部材43の材質は特に限定されないが、例えばスポンジ等である。これにより、各容器3において、スロット部27に供給された空気が底部29を通って収容部25に流入し、収容部25に収容された農産物24の隙間を上側に流れて農産物24を乾燥させる。最上部に配置された容器3では、農産物24の隙間を流れた空気は上側に流出し、最上部以外の容器3では、農産物24の隙間を流れた空気は左右の通気口35から左右両側に流出する。容器3から流出した空気は、ファン5の吸込み側に戻って循環される。
【0029】
なお、ファン5により循環される空気は、空調装置(図示省略)により湿度や温度を調整されてもよい。例えば、空気の湿度を低く調整した場合には農産物24の乾燥を促進でき、空気の温度を低く調整した場合には農産物24を冷却することができ、空気の温度を高く調整した場合には農産物24を温めることができる。
【0030】
<実施形態の効果>
以上説明した農産物乾燥システム1では、第1チャンバ7の上部に搭載されたファン5から吐出された空気は下部に導かれ、第1チャンバ7の下部から第2チャンバ9に流入して、複数の容器3の各々に対応する位置に配置された吐出口11から略水平方向に吐出されて複数の容器3の各々に供給される。これにより、容器3に収容された農産物が乾燥される。
【0031】
このとき農産物乾燥システム1では、ファン5から吐出された空気を下方に流す第1チャンバ7と、空気を水平方向に吐出して各容器3に供給する第2チャンバ9とを別々のチャンバとして構成する。仮に、ファン5から吐出された空気を下方に流す単一のチャンバ構成とした場合には、ファン5に近い上部の吐出口11の前を流速の早い空気が下方に向けて通過することによって吐出口11から空気を吸い出す力が働いてチャンバ内に渦流が生じ、上部の吐出口11に対して良好に空気を供給できない可能性がある。この場合、ファン5から離れた下部の吐出口11により多くの風が供給されてしまい、供給する空気の量に偏りが生じてしまう。これに対し、本実施形態では上記2つのチャンバ構成とすることで、第2チャンバ9においてファン5から吐出された空気の勢いを緩衝させた上で各吐出口11に供給することができるので、吐出口11の近傍に渦流が生じることを抑制できる。その結果、上下方向に積み重ねられた複数の容器3に供給する空気の偏りを抑制することができるので、容器3に収容された農産物24を略均一に乾燥させることができる。また、容器3を第2チャンバ9の壁部13に沿って積み上げるだけで乾燥を促進できるので、例えば出荷や包装を控えた農産物を短期間で調整するのに特に好適である。
【0032】
また、本実施形態では特に、第2チャンバ9は、第1チャンバ7の下部に連通する連通部12から上方に離れるにしたがって空気の流路が狭くなるように構成されている。これにより、第2チャンバ9を上方に流れる空気に対して一定の抵抗を与えることができるので、複数の吐出口11から略均等に空気を吐出することができる。また、第2チャンバ9を上方に流れる空気に対して前向きの水平方向の流れを生じさせることができるので、渦流の発生をより効果的に抑制することができる。
【0033】
また、農産物乾燥システム1では、ファン5から吐出された空気は第1チャンバ7において下方に流れ、第1チャンバ7の下部から第2チャンバ9に流入する。したがって、第2チャンバ9において最も下方に配置される吐出口11に空気が集中しやすい。そこで本実施形態では、第2チャンバ9は、最も下方に配置される吐出口11への空気の流れの抵抗となる絞り部材17を有する。これにより、当該吐出口11への空気の集中を防止して他の上方の吐出口11へ分散させることができる。したがって、複数の吐出口11から略均等に空気を吐出することができる。
【0034】
また、本実施形態では特に、第2チャンバ9の吐出口11から吐出された空気は容器3のスロット部27に供給され、容器3においてスロット部27から底部29を介して収容部25に流入し、収容部25に収容された農産物24を乾燥させる。このとき、複数の吐出口11から略均等に空気を吐出できるので、上下方向に積み重ねられた複数の容器3の農産物24を略均等に乾燥させることができる。また、積み重ねた際に上側に配置された容器3の底板部31が下側の容器3の収容部25の蓋として機能するので、容器とは別の蓋部材や、底部29を閉塞させた別種類の容器等が不要となり、1種類の容器3のみで乾燥を行うことができる。
【0035】
また、本実施形態では特に、容器3は、収容部25を構成する壁部33A~33Dのうち、スロット部27が開口する前後方向に直交する左右方向に対向する一対の壁部33C,33Dのそれぞれの上端に、通気口35が形成されている。これにより、上下方向に積み重ねた各容器3の上端において、スロット部27の通風方向に直交する左右方向の両側から空気を流出させることができる。仮に、通気口35をスロット部27が開口する前後方向と同じ方向の壁部33A,33Bに形成する場合には、容器3から流出する空気を前後方向に並べられた複数の容器3の全体で合流させて最前部の容器3から流出させる構成となるため、抵抗が増大する。これに対し、本実施形態ではスロット部27による通気方向とは直交する左右方向に空気を流出させるので、容器3から流出する空気を他の容器3と合流させることなく流出させることができる。したがって、抵抗を減少することができるので、容器3への通風量を増大できる。
【0036】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0037】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 農産物乾燥システム
3 容器
5 ファン
7 第1チャンバ
9 第2チャンバ
11 吐出口
12 連通部
17 絞り部材
24 農産物
25 収容部
27 スロット部
29 底部
31 底板部
33A 壁部
33B 壁部
33C 壁部
33D 壁部
35 通気口
【要約】
【課題】上下方向に積み重ねられた、農産物を収容した複数の容器に供給する空気の偏りを抑制する。
【解決手段】農産物乾燥システム1は、上下方向に積み重ねられた、農産物24を収容する複数の容器3と、農産物24を乾燥させるための空気を下方向に吐出するファン5と、上部にファン5が設置され、ファン5から吐出された空気を下部に導く第1チャンバ7と、第1チャンバ7と複数の容器3との間に配置され、第1チャンバ7の下部に連通し、第1チャンバ7から流入した空気を略水平方向に吐出する吐出口11を複数の容器3の各々に対応する位置に備えた第2チャンバ9と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5