(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】コリメート機能付きコンタクトレンズおよびXRグラス
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20240422BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240422BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G02C7/04
G02B27/02 Z
G02B3/00 A
(21)【出願番号】P 2023195574
(22)【出願日】2023-11-17
(62)【分割の表示】P 2023175680の分割
【原出願日】2023-10-11
【審査請求日】2023-11-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518271743
【氏名又は名称】アルディーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 元伸
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-046404(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0146854(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0393678(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113504650(CN,A)
【文献】特開2022-144598(JP,A)
【文献】特開2022-170640(JP,A)
【文献】特表2021-515280(JP,A)
【文献】特開2018-032050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
G02B 27/02
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以下である、コリメーターとなる透明柱が複数配列された透明柱集合体を有し、各透明柱を透過した光が収束点に収束
し、角膜に装着された場合、上記収束点が水晶体の中心付近に来るように構成され、全体として角膜の表面の湾曲に応じて椀状に湾曲した形状を有するコリメート機能付きコンタクトレンズ。
【請求項2】
入射する光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以下である、コリメーターとなる透明柱が複数配列された透明柱集合体を有し、各透明柱を透過した光が収束点に収束し、角膜に装着された場合、上記収束点が水晶体の中心付近に来るように構成され、全体として角膜の表面の湾曲に応じて椀状に湾曲した形状を有するコリメート機能付きコンタクトレンズを用いたXRグラス。
【請求項3】
少なくとも3つ以上の副画素により1つの画素が構成された画素アレイと、それぞれの上記副画素に含まれる1つまたは複数のマイクロ発光ダイオードとを有し、上記画素の開口率は10%以上である半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイからなる左目用ディスプレイ部および右目用ディスプレイ部を有するXRグラス本体部と、
上記左目用ディスプレイ部および上記右目用ディスプレイ部の画素から発せられて入射する光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以下である、コリメーターとなる透明柱が複数配列された透明柱集合体を有し、各透明柱を透過した光が収束点に収束し、角膜に装着された場合、上記収束点が水晶体の中心付近に来るように構成され、全体として角膜の表面の湾曲に応じて椀状に湾曲した形状を有するコリメート機能付きコンタクトレンズと、
を有するXRグラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、XR(Cross Reality)グラス用半透明マイクロ発光ダイオード(LED)ディスプレイ、XRグラス、VR(Virtual Reality)グラス用ディスプレイ、VRグラスおよびコリメート機能付きコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
ライトエンジン(画像の光源)に有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子(OLED)を用いたXRグラスは市販されている(非特許文献1参照)。しかし、これらのXRグラスは、有機EL素子の光量が不足しているため、明るい外界ではXRグラスに表示される映像を認識しづらい。光量を大きくするために有機EL素子の駆動電流密度を上げることが考えられるが、駆動電流密度は一般に数10mA/cm2 と小さく、駆動電流密度を上げると効率の低下や劣化が早まるといった問題がある。
【0003】
一方、光学系に関しては光導波路や投影光学系を使ったXRグラスが提案されている(特許文献1、2、3参照)。光導波路や投影光学系を使う光学系は、XRグラスを薄くできるという利点はあるが、部品点数の増大、光学設計の複雑さ、光学部品の製造難易度が高い等の問題がある。特に広い視野角を確保することは難しく、現状の視野角は最大で60度程度であるが、光学設計上更なる拡大は容易ではない(非特許文献2参照)。
【0004】
外界の視認に必要な周囲光透過率と、明るい日中の環境下において画像認識に必要十分な輝度と、広い視野角と広いアイボックス(=眼球の動きによる画像を見失わない範囲)を持ち、軽量で薄く嵩張らず、メガネのように常時装着可能なXRグラスの実現には至っていない。
【0005】
ディスプレイを半透明(シースルー)にすることができれば、光導波路を使わずに済むため、XRグラスの光学部品を簡略化することができる。特許文献4では、シースルーの有機EL素子を使ったARグラスが提案されている。しかし、上述のように有機EL素子では輝度が不足している。輝度を高めるために発光面積を広げることはディスプレイの半透明化の妨げとなる。また、たとえ発光面積を画素全体に広げても有機EL素子ではXRグラスとしての十分な輝度は得られない。
【0006】
光量を確保するためには、光源としてマイクロLEDを使用することが望ましい。LEDは有機EL素子に比べて1000倍以上の高い電流密度(数10A~数100A/cm2 )で駆動できるためである。XRグラスとして十分な輝度を確保することができるだけでなく、非常に小さな面積で高輝度を実現できるため、ディスプレイ自体の半透明化も容易である。マイクロLEDを光源とした半透明ディスプレイで光導波路を用いずにXRグラスを構成することができれば、軽量で薄く、メガネのように常時装着可能なXRグラスを実現することができる。
【0007】
マイクロLEDを光源として目のすぐ近くに設置された半透明ディスプレイの前にレンズ(マイクロレンズ)を設置して虚像を生成する方法が提案されている(特許文献5参照)。この方法では、一定の画素の集まりに対して1つのマイクロレンズを使用し、画素の集まりを一定の間隔で配置して開口率を確保する方法であるため、連続した状態で虚像が映し出されるわけではない。また、レンズによる虚像領域の形状は円形であるために、虚像領域の円の中に入る外界の視界はレンズによる歪の影響を受ける。原理的には、画素1つ1つにマイクロレンズを設置して1画素ずつ虚像を生成し、1画素毎の虚像の集合体として虚像を生成できれば虚像周辺の外界の視界を歪めることのない完璧な虚像を現実空間に映し出すことができるのであるが、数μmサイズの画素それぞれにマイクロレンズを設置して虚像を生成する方法は、画素とマイクロレンズとの間の距離をÅ単位で制御する必要があるため、位置精度を確保することは非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2022-517207号公報
【文献】米国特許出願公開第2020/0379214号明細書
【文献】特表2022-521974号公報
【文献】特表2020-523628号公報
【文献】米国特許第10634912号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】[令和5年9月17日検索]、インターネット〈URL:https://www.itmedia.co.jp/fav/articles/2306/10/news049.html 〉
【文献】[令和5年9月17日検索]、インターネット〈URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000030718.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、外界を明瞭に見ることができ、明るい外界でも表示された映像を明瞭に認識することができ、十分な解像度で映像を表示することができ、厚さも薄くて済むXRグラス用半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイおよびこのXRグラス半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイを用いたXRグラスを提供することである。
【0011】
この発明が解決しようとする他の課題は、十分な解像度で映像を表示することができ、厚さも薄くて済むVRグラス用ディスプレイおよびこのVRグラス用ディスプレイを用いたVRグラスを提供することである。
【0012】
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、XRグラス本体部と組み合わせて用いることにより十分な解像度で映像を認識することができるコリメート機能付きコンタクトレンズおよびこのコリメート機能付きコンタクトレンズを用いたXRグラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明は、
少なくとも3つ以上の副画素により1つの画素が構成された画素アレイと、
それぞれの上記副画素に含まれる1つまたは複数のマイクロ発光ダイオードと、
上記画素毎または上記副画素毎に設けられた、上記マイクロ発光ダイオードからの光の放射角度を5度以下に狭めるコリメーターと、
を有し、
上記画素の開口率は10%以上であるXRグラス用半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイである。
【0014】
ここで、光の放射角度とは、光の強度が最大となる出射方向から、その強度が2分の1になるまでの角度範囲を表し、光の放射角度が5度以下とは、光の強度が最大となる出射方向を基準(0度)として、光の強度が2分の1になるまでの角度範囲が±2.5度以下、レンジで5度以下であることを意味する。
【0015】
コリメーターは、マイクロレンズおよびマイクロ発光ダイオードからの光の出射範囲をマイクロレンズの焦点付近に制限する開口部(アパーチャーまたはピンホール)によって構成される場合と、マイクロ発光ダイオードからの光の放射領域に含まれる大きさの柱状体により構成され、当該柱状体は中心軸方向に延在する互いに分離した複数の光透過部を有するもの、あるいは、複数の当該柱状体が中心軸方向に複数積層された構造を有し、互いに隣接する一対の当該柱状体の光透過部は中心軸方向と垂直な方向に互いにずれているものにより構成される場合とがある。前者のコリメーターでは、開口部で制限されたマイクロ発光ダイオードからの光がマイクロレンズを通ることで平行光線束が得られる。開口部は、典型的には筒型、取り分け円筒型の形状を有する。画素毎にコリメーターが設けられる場合は、1つの画素内に含まれる全てのマイクロ発光ダイオードからの光が1つの開口部を通った後、1つのマイクロレンズを通ることで平行光線束が得られる。副画素毎にコリメーターが設けられる場合は、1つの副画素内に含まれる全てのマイクロ発光ダイオードからの光が1つの開口部を通った後、1つのマイクロレンズを通ることで平行光線束が得られる。後者のコリメーターでは、マイクロ発光ダイオードからの光が複数の光透過部を通ることで平行光線束が得られる。典型的には、光透過部の外周面は光吸収膜により覆われる。こうすることで、光透過部に入射した光のうち外周面に入射した光は吸収され、最終的に光透過部の中心軸方向に進行する光のみとなり、この光が光透過部の末端から平行光線束として出射される。
【0016】
コリメーターの設計により、マイクロ発光ダイオードからの光の放射角度を容易に5度以下に狭めることができる。コリメーターは、好適には、マイクロ発光ダイオードからの光の放射角度を0.1度以上2.0度以下に狭めるように構成される。こうすることで、表示される画像を十分に高い解像度で認識することができる。
【0017】
このXRグラス用半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイは、好適には、明るい外界でもはっきりと映像を認識できるようにするために外光に比べて十分な輝度(最大輝度5000~10000nit程度)を有する。
【0018】
画素の開口率(画素の面積に占める、外部からの可視光が透過できる面積の割合)は半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイを構成するためには最低でも10%以上とする必要があるが、好適には、40%以上とされる。こうすることで、半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイを通して外界を十分に明瞭に認識することができる。
【0019】
1つの画素は、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の3原色を実現するため、1つの例では、赤色発光のマイクロ発光ダイオード、緑色発光のマイクロ発光ダイオードおよび青色発光のマイクロ発光ダイオードを有する。1つの例では、これらのマイクロ発光ダイオードはそれぞれ可視光を透過する透明樹脂により覆われ、当該透明樹脂の表面は上記の開口部の内部に向かって光を反射するように構成された光反射膜により覆われる。他の例では、1つの画素は複数の青色発光または紫外発光のマイクロ発光ダイオードだけで構成される。典型的には、これらのマイクロ発光ダイオードはそれぞれ赤色蛍光体、緑色蛍光体または青色蛍光体により覆われ、当該赤色蛍光体、当該緑色蛍光体または当該青色蛍光体の表面は上記の開口部の内部に向かって光を反射するように構成された光反射膜により覆われる。この場合、青色発光または紫外発光のマイクロ発光ダイオードからの光が赤色蛍光体、緑色蛍光体または青色蛍光体を透過することにより波長変換が行われ、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の3原色が実現される。
【0020】
典型的には、1つの副画素に含まれるマイクロ発光ダイオードの数は3以上、または、1つのマイクロ発光ダイオードは少なくとも1つのn側電極および少なくとも3つ以上のp側電極を有する。典型的には、1つの副画素にはn側電極用幹線部配線およびp側電極用幹線部配線が存在し、当該p側電極用幹線部配線には少なくとも3つ以上の支線部配線が存在する。
【0021】
赤色発光のマイクロ発光ダイオード、緑色発光のマイクロ発光ダイオードおよび青色発光のマイクロ発光ダイオードとしては、いずれもAlGaInN系マイクロ発光ダイオードを用いてもよいし、緑色発光のマイクロ発光ダイオードおよび青色発光のマイクロ発光ダイオードとしてはAlGaInN系マイクロ発光ダイオードを用い、赤色発光のマイクロ発光ダイオードとしてはAlGaInP系マイクロ発光ダイオードを用いてもよい。これらのマイクロ発光ダイオードは横型であっても縦型であってもよい。
【0022】
このXRグラス用半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイは、典型的には、フレキシブルに構成される。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネートなどの透明プラスチックからなる基板上に配線を形成した配線基板を用い、その上に画素アレイを形成することにより、フレキシブルなXRグラス用半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイを得ることができる。
【0023】
XRグラスは、AR(Augmented Reality)、MR(Mixed Reality)、SR(Substitutional Reality) などの技術、これらの技術の中間的な技術(例えば、ARとMRとの間に位置付けられる技術)などを用いたグラスの総称であり、現実と仮想の世界とを融合して疑似体験を提供する空間を創り出す映像表示装置である。ARは現実空間に仮想世界を重ねて投影して見せる技術、MRは現実空間と仮想空間とを融合させて見せる技術、SRは過去の映像を現実空間に重ね合わせて見せることで、過去にあった出来事があたかも今目の前で行っているかのように見せる技術である。
【0024】
また、この発明は、
左目用ディスプレイ部および右目用ディスプレイ部を有し、
上記左目用ディスプレイ部および上記右目用ディスプレイ部は
少なくとも3つ以上の副画素により1つの画素が構成された画素アレイと、
それぞれの上記副画素に含まれる1つまたは複数のマイクロ発光ダイオードと、
上記画素毎または上記副画素毎に設けられた、上記マイクロ発光ダイオードからの光の放射角度を5度以下に狭めるコリメーターと、
を有し、
上記画素の開口率は10%以上である半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイ
により構成されているXRグラスである。
【0025】
このXRグラスの発明においては、上記のXRグラス用半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイの発明に関連して説明したことが成立する。
【0026】
また、この発明は、
画素アレイと、
上記画素アレイの画素毎に設けられた、上記画素からの光の放射角度を5度以下に狭めるコリメーターと、
を有する有機エレクトロルミネッセンスディスプレイまたは液晶ディスプレイからなるVRグラス用ディスプレイである。
【0027】
VRは仮想世界を現実世界のように体験することができる技術である。VRグラスは、ゴーグルタイプのものやヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display: HMD)タイプのものも含む。このVRグラス用ディスプレイの発明においては、特にその性質に反しない限り、上記のXRグラス用半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイの発明に関連して説明したことが成立する。
【0028】
また、この発明は、
左目用ディスプレイ部および右目用ディスプレイ部を有し、
上記左目用ディスプレイ部および上記右目用ディスプレイ部は
画素アレイと、
上記画素アレイの画素毎に設けられた、上記画素からの光の放射角度を5度以下に狭めるコリメーターと、
を有する有機エレクトロルミネッセンスディスプレイまたは液晶ディスプレイ
により構成されているVRグラスである。
【0029】
ここで、このVRグラスは、ゴーグルタイプのものやヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display: HMD)タイプのものも含む。
【0030】
また、この発明は、
少なくとも3つ以上の副画素により1つの画素が構成された画素アレイと、それぞれの上記副画素に含まれる1つまたは複数のマイクロ発光ダイオードとを有し、上記画素の開口率は10%以上である半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイからなる左目用ディスプレイ部および右目用ディスプレイ部を有するXRグラス本体部と、
上記左目用ディスプレイ部および上記右目用ディスプレイ部の任意の点から発せられた光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以下であるコリメート機能付きコンタクトレンズと、
を有するXRグラスである。
【0031】
コリメート機能付きコンタクトレンズは、左目用ディスプレイ部および右目用ディスプレイ部の任意の点から発せられた光に対して、透過率50%以上の放射角度を5度以下にすることができる限り、基本的にはどのように構成されてもよい。典型的には、コリメート機能付きコンタクトレンズの外周部を除く部分(中央部)は、例えば、正六角錐台状の透明柱を多数、互いに側面同士が密着するように蜂の巣状に、角膜の表面に対応した湾曲面上に配列させた透明柱集合体により構成することができる。各透明柱の側面には光吸収膜が設けられる。この場合、好適には、このコリメート機能付きコンタクトレンズを角膜に装着したとき、このコリメート機能付きコンタクトレンズの各透明柱を透過する光の収束点が水晶体の中心付近に位置するようにする。収束点を眼球中心側にするほど視界は狭くなるが、透過した光の収束点が水晶体中心付近に来るように設計、製造すれば十分広い視界を確保できる。
【0032】
このコリメート機能付きコンタクトレンズを角膜に装着し、XRグラス本体部を眼前に装着した場合、マイクロ発光ダイオードからの光がこのコリメート機能付きコンタクトレンズの透明柱の一端に入射して他端から出射されることにより、放射角度が5度以下の光が水晶体に入射するようにすることができる。
【0033】
光は、波の性質を持ち、回折現象等が存在することや、光吸収膜を透過するものもあり、幾何学的に設計された角度を超えて透過するものがある程度存在する。そのため、放射角度が5度以下とはディスプレイの任意の点から発せられた光のうち、上記のコリメート機能付きコンタクトレンズの各透明柱を透過する光の収束点に向かう光の方向を基準として、透過率が50%以上である放射角度範囲が5度以下(±2.5度以下)であることを意味する。
【0034】
このXRグラスの発明においては、その性質に反しない限り、上記以外のことは、既に説明したXRグラスの発明に関連して説明したことが成立する。
【0035】
また、この発明は、
任意の点から発せられた光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以下であるコリメート機能付きコンタクトレンズである。
【0036】
このコリメート機能付きコンタクトレンズを装着すれば、目に入る光量は低下するが、遠くから非常に近距離まではっきりと見えるようになる。遠視も近視も同時に視力矯正ができるため、通常生活におけるコンタクトレンズとしても使用可能である。
【0037】
また、ピントの合う範囲が拡大されており、虚像を生成するレンズの有無に依らず近接ディスプレイの画像を認識できるようになる。VRグラスに対しても使用可能であり、VRグラスから虚像を生成するための大型のレンズを省くことでVRグラスの薄型化を可能にする。
【0038】
このコリメート機能付きコンタクトレンズの発明においては、その性質に反しない限り、上記以外のことは、既に説明したXRグラスの発明に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0039】
この発明によるXRグラス用半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイによれば、半透明、すなわちシースルーであることにより外界を明瞭に見ることができ、マイクロ発光ダイオードディスプレイは高輝度であることにより明るい外界でも表示された映像を明瞭に認識することができ、画素毎または副画素毎に設けられたコリメーターによりマイクロ発光ダイオードからの光の放射角度を5度以下に狭めることができることにより十分な解像度で映像を表示することができ、光導波路や投影光学系が不要であるため部品点数も少なく、光学系も簡単に設計でき、薄く構成することもできる。そして、このXRグラス用半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイを用いてXRグラスを構成することにより、使用者の目の網膜に1画素単位で映像を結像することができる優れたXRグラスを実現することができる。また、この発明によるVRグラス用ディスプレイによれば、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイまたは液晶ディスプレイを用いた場合において、画素アレイの画素毎に設けられたコリメーターにより画素からの光の放射角度を5度以下に狭めることができることにより十分な解像度で映像を表示することができる。そして、このVRグラス用ディスプレイを用いてVRグラスを構成することにより、使用者の目の網膜に1画素単位で映像を結像することができる優れたVRグラスを実現することができる。また、この発明によるコリメート機能付きコンタクトレンズによれば、空間内の任意の点から反射または放出された光に対して、コンタクトレンズの各透明柱を透過する光の収束点に向かう方向から少なくとも5度(±2.5度)を超える放射角度を有する光の透過率を50%以下に減衰させることにより、角膜に装着した場合、遠距離から近接距離まで網膜上に任意の点の明瞭な映像を結像することができる。そして、このコリメート機能付きコンタクトレンズをXRグラス本体部と組み合わせることにより、XRグラス本体部にコリメーターを用いないでも、十分な解像度で映像を表示することができるXRグラスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】この発明の第1の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイを示す断面図である。
【
図2】この発明の第1の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素を示す平面図である。
【
図3】この発明の第1の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素を示す斜視図である。
【
図4】この発明の第1の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素の1副画素の部分を拡大して示す断面図である。
【
図5】この発明の第1の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいて用いられる横型のマイクロLEDを示す斜視図である。
【
図6】この発明の第1の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの動作を説明するための断面図である。
【
図7】この発明の第2の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイを示す断面図である。
【
図8】この発明の第2の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素を示す平面図である。
【
図9】この発明の第2の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素を示す斜視図である。
【
図10】この発明の第3の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイを示す断面図である。
【
図11】この発明の第3の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいて用いられるコリメーターを示す斜視図である。
【
図12】この発明の第3の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素を示す斜視図である。
【
図13】この発明の第4の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいて用いられるコリメーターを示す斜視図である。
【
図14】この発明の第5の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいて用いられるコリメーターを示す斜視図である。
【
図15】この発明の第6の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイを示す断面図である。
【
図16A】この発明の第6の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいて用いられるコリメーターの構成を説明するための略線図である。
【
図16B】この発明の第6の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいて用いられるコリメーターの構成を説明するための略線図である。
【
図16C】この発明の第6の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいて用いられるコリメーターの構成を説明するための略線図である。
【
図17】この発明の第7の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイを示す断面図である。
【
図18】この発明の第7の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素を示す斜視図である。
【
図19】この発明の第8の実施の形態によるXRグラスを示す右側面図である。
【
図20】この発明の第8の実施の形態によるXRグラスを使用者が眼前に装着した状態を示す略線図である。
【
図21】この発明の第8の実施の形態によるXRグラスにおいてコリメーターをなくした場合の問題を説明するための右側面図である。
【
図22】この発明の第9の実施の形態によるXRグラスを示す右側面図である。
【
図23】この発明の第9の実施の形態によるXRグラスを使用者が眼前に装着した状態を示す略線図である。
【
図24】この発明の第10の実施の形態によるVRグラス用ディスプレイを示す断面図である。
【
図25】この発明の第11の実施の形態によるVRグラスを示す右側面図である。
【
図26】この発明の第11の実施の形態によるVRグラスを使用者が眼前に装着した状態を示す略線図である。
【
図27】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスの本体部を示す右側面図である。
【
図28A】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスのコリメート機能付きコンタクトレンズを示す平面図である。
【
図28B】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスのコリメート機能付きコンタクトレンズを示す断面図である。
【
図28C】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスのコリメート機能付きコンタクトレンズを構成する透明柱を示す平面図である。
【
図28D】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスのコリメート機能付きコンタクトレンズを構成する透明柱を示す側面図である。
【
図29A】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスのコリメート機能付きコンタクトレンズの製造方法を説明するための断面図である。
【
図29B】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスのコリメート機能付きコンタクトレンズの製造方法を説明するための断面図である。
【
図29C】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスのコリメート機能付きコンタクトレンズの製造方法を説明するための断面図である。
【
図29D】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスのコリメート機能付きコンタクトレンズの製造方法を説明するための断面図である。
【
図29E】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスのコリメート機能付きコンタクトレンズの製造方法を説明するための断面図である。
【
図30】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスのコリメート機能付きコンタクトレンズを使用者が角膜に装着した状態を示す略線図である。
【
図31】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスを使用者が眼前に装着した状態を示す略線図である。
【
図32】この発明の第12の実施の形態によるXRグラスを使用者が眼前に装着した状態を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について説明する。
【0042】
〈第1の実施の形態〉
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ]
図1は第1の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイを示し、画素の配列を模式的に示す断面図である。
図2および
図3はそれぞれこのXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素を示す平面図および斜視図である。
図4はこのXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素の1副画素の部分の断面図である。
【0043】
図1~
図4に示すように、フレキシブルで透明な配線基板10上に二次元マトリクス状に画素20が配列されて画素アレイが設けられている。1つの画素20は3つの副画素を有し、これらの副画素はそれぞれ1つの赤色発光のマイクロLED31、緑色発光のマイクロLED32および青色発光のマイクロLED33を有する。これらのマイクロLED31~33は画素20の1つの対角線上に等間隔に設けられている。これらのマイクロLED31~33はいずれも横型であり、互いに同一の構造、形状およびサイズを有する。マイクロLED31はAlGaInN系LEDまたはAlGaInP系LED、マイクロLED32、33はAlGaInN系LEDである。画素20のサイズは例えば4~6μm□(4000~6000PPIに相当)であるが、これに限定されるものではない。
【0044】
マイクロLED31~33を
図5に示す。
図5に示すように、マイクロLED31~33においては、n型半導体層34上に一部を除いて発光層35およびp型半導体層36が順次積層され、p型半導体層36上に一列に、四つの金属からなるp側電極37が設けられ、発光層35およびp型半導体層36に隣接した部分のn型半導体層34上に金属からなるn側電極38が設けられている。マイクロLED31~33は、必要に応じて、これらのn型半導体層34、発光層35およびp型半導体層36以外の半導体層を有してもよい。マイクロLED32、33においては、n型半導体層34はn型GaN層、p型半導体層36はp型GaN層であり、発光層35は障壁層としてのIn
x Ga
1-x N層と井戸層としてのIn
y Ga
1-y N層とが交互に積層されたIn
x Ga
1-x N/In
y Ga
1-y N多重量子井戸(MQW)構造(x<y、0≦x<1、0≦y<1)を有し、In組成比x、yは緑色または青色の発光波長に応じて選ばれる。マイクロLED31がAlGaInN系LEDである場合、そのn型半導体層34、発光層35およびp型半導体層36はマイクロLED32、33と同様な構造を有する。マイクロLED31がAlGaInP系LEDである場合は、n型半導体層34はn型AlGaInP層、p型半導体層36はp型AlGaInP層であり、発光層35はIn
x Ga
1-x P/In
y Ga
1-y P MQW構造を有し、In組成比x、yは赤色の発光波長に応じて選ばれる。p側電極37とn側電極38とは互いに同じ高さになっている。図示は省略するが、p側電極37およびn側電極38上には、マイクロLEDチップ31~33を配線基板10上に実装する際に用いるSn膜が設けられている。
【0045】
図1~
図4に示すように、配線基板10上には、画素20の1つの辺の近傍にこの辺に平行に延在してn側電極用幹線部配線41が設けられている。n側電極用幹線部配線41はこのn側電極用幹線部配線41に垂直な方向にそれぞれマイクロLED31~33に対して分岐し、さらにこのn側電極用幹線部配線41に平行な方向に折れ曲がってマイクロLED31~33のn側電極38と電気的に接続されている。また、配線基板10上にはn側電極用幹線部配線41に垂直な方向にp側電極用幹線部配線42が設けられている。このp側電極用幹線部配線42からマイクロLED31~33のそれぞれに対して4本のp側電極用支線部配線43が分岐しており、それぞれ4個のp側電極37と電気的に接続されている。
【0046】
図1、
図3および
図4に示すように、マイクロLED31~33は透明樹脂層50により覆われている。透明樹脂層50は半球体の頂部を大円に平行に切除した形状を有し、側面は湾曲している。透明樹脂層50の中央部を除いた上面および側面を覆うように光反射膜60が設けられている。光反射膜60は上面の中央部に円形の開口部61を有する。開口部61はマイクロLED31~33の上方に位置する。光反射膜50の横方向の外側には、マイクロLED31~33を覆う透明樹脂層50と同じ透明樹脂層50が光反射膜60の上面と同じ高さに設けられている。光反射膜60の開口部61の周囲には内径が開口部61の内径と等しいかそれ以上の円筒70が設けられ、この円筒70の内部の側壁および開口部61がアパーチャー71となっている。開口部61の直径は例えば100~500nmである。開口部61の直径は透過した光が点光源として機能するように十分に小さく選ばれるが、開口部61の直径が小さすぎると光の回折の増大や、光の透過率の極端な低下をもたらすため100nm以上が望ましい。放射角度(θ)は、開口部61の直径(d)を後述のマイクロレンズ90の焦点距離(f)で割った値(d/f)に依存する(θ=~d/f)。そのため、マイクロレンズ90の焦点距離(f)や光の利用効率等を考慮して開口部61の直径(d)は決定されるが、開口部61の直径(d)は500nm以下が適切と考えられる。透明樹脂層50および光反射膜60上には円筒70を覆うように透明樹脂層80が設けられている。アパーチャー71にもこの透明樹脂層80が埋め込まれている。透明樹脂層80上には、この透明樹脂層80と一体に、円筒70と同軸に半球体状のマイクロレンズ90が設けられている。マイクロレンズ90の焦点は開口部61の中心またはその付近にある。円筒70の内部の側壁は光吸収膜で構成され、開口部61を透過した光のうち、マイクロレンズ90以外の領域に到達する光を遮断する役割を担う。光吸収膜としては、例えば、カラーフィルター用のブラックレジスト等を用いることができる。マイクロレンズ90と円筒70の内部の側壁および開口部61からなるアパーチャー71とによりコリメーターが構成される。副画素毎に設けられたこのコリメーターにより、マイクロLED31~33からの光の放射角度が5度以下、好適には0.1度以上2.0度以下に狭められるようになっている。マイクロレンズ90の直径は例えば1~2μmである。透明樹脂層50、透明樹脂層80およびマイクロレンズ90の屈折率は例えば1.3~1.8である。通常、透明樹脂層50には、PDMS(ポリジメチルシロキサン)等のシリコン系樹脂やアクリル系樹脂等が使われ、マイクロレンズ90が形成される透明樹脂層80には光硬化樹脂等が使われるが、これに限定されるものではない。
【0047】
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの画素20の動作]
図6に画素20の1つの副画素における発光の様子を示す。一例として、副画素がマイクロLED31を有する場合について説明する。
図6に示すように、マイクロLED31のp側電極37とn側電極38との間に順方向電圧が印加されて通電されると、マイクロLED31が発光してn型半導体層34を透過して光が外部に放出される。放出された光は様々な方向に進行するが、アパーチャー71に向かう光はそのままアパーチャー71の内部の透明樹脂層80を透過し、さらにその上の透明樹脂層80を透過してマイクロレンズ90に入射する。マイクロレンズ90の焦点はアパーチャー71の内部にあるため、マイクロレンズ90に入射した光はマイクロレンズ90の中心軸に平行な平行光としてマイクロレンズ90から放出される。円筒70のアパーチャー71に向かわない光は光反射膜60によって反射されることにより、大半は最終的にアパーチャー71に向かい、平行光として外部に放出される。
【0048】
以上のように、第1の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイによれば、シースルーであることにより外界を明瞭に見ることができ、マイクロLEDイオードディスプレイは高輝度であることにより明るい外界でも表示された映像を明瞭に認識することができ、画素20の副画素毎に設けられた、マイクロレンズ90とアパーチャー71とにより形成されたコリメーターによりマイクロLED31~33からの光の放射角度を5度以下に狭めることができることにより十分な解像度で(近接ディスプレイの)映像を網膜上に結像することができる。
【0049】
〈第2の実施の形態〉
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ]
図7は第1の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイを示し、画素の配列を模式的に示す断面図である。
図8および
図9はそれぞれこのXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素を示す平面図および斜視図である。
【0050】
図7~
図9に示すように、このXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいては、第1の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおける赤色発光のマイクロLED31、緑色発光のマイクロLED32および青色発光のマイクロLED33の代わりに、青色発光または紫外発光のマイクロLED39が用いられる。マイクロLED39はマイクロLED31~33と同様な構成を有する。そして、赤色発光領域におけるマイクロLED39を覆うように赤色蛍光体95が設けられ、緑色発光領域におけるマイクロLED39を覆うように緑色蛍光体96が設けられ、青色発光領域におけるマイクロLED39を覆うように青色蛍光体97が設けられている。これらの赤色蛍光体95、緑色蛍光体96および青色蛍光体97を覆うように光反射膜60が設けられている。透明樹脂層50、80、円筒70およびマイクロレンズ90については第1の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイと同様である。
【0051】
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの画素20の動作]
図7に示すように、マイクロLED39に通電されると、青色光または紫外光が外部に放出される。放出された青色光または紫外光により赤色蛍光体95、緑色蛍光体96および青色蛍光体97が励起されることにより、それぞれ赤色光、緑色光および青色光が生じる。こうして生じた赤色光、緑色光および青色光のうちアパーチャー71に向かう光はアパーチャー71の内部の透明樹脂層80を通り、さらにその上の透明樹脂層80を通ってマイクロレンズ90に入射する。マイクロレンズ90に入射した光はマイクロレンズ90の中心軸に平行な平行光としてマイクロレンズ90から放出される。アパーチャー71に向かわない光は光反射膜60によって反射されることにより、大半は最終的にアパーチャー71に向かい、最終的に平行光として外部に放出される。
【0052】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0053】
〈第3の実施の形態〉
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ]
図10は第3の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイを示し、画素の配列を模式的に示す断面図である。
図11はこのXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいて用いられるコリメーターを示す。
図12はこのXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素を示す斜視図である。
【0054】
図10~
図12に示すように、このXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいては、赤色発光のマイクロLED31、緑色発光のマイクロLED32および青色発光のマイクロLED33のそれぞれの上方に
図11に示すようなコリメーター100が設けられており、光反射膜60は透明樹脂層50の側面にのみ設けられ、第1の実施の形態における円筒70およびマイクロレンズ90は設けられていないことが第1の実施の形態と異なる。その他のことは第1の実施の形態と同様である。
【0055】
図11に示すように、コリメーター100は細長い正四角柱状の透明柱101を側面同士が密着するように複数束ねたものであり、全体として正四角柱状の形状を有する。各透明柱101の側面は光吸収膜102により覆われている。透明柱101の材質は例えばシリコン系樹脂やアクリル系樹脂等であり、光吸収膜はブラックカラーレジスト等であるが、これに限定されるものではない。
【0056】
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの画素20の動作]
図10に示すように、マイクロLED31~33に通電されると、マイクロLED31~33から放出された光は様々な方向に進行するが、コリメーター100のいずれかの透明柱101の下端面に入射した光のうちこの透明柱101の中心軸に平行な方向に進行する光は透明柱101の内部を進行して上端面から外部に出射される。コリメーター100のいずれかの透明柱101の下端面に入射した光のうちこの透明柱101の中心軸に平行な方向と異なる方向に進行する光は透明柱101の側面の光吸収膜102に入射して吸収される。マイクロLED31~33から放出された光のうちコリメーター100に向かわない光は光反射膜60によって反射され、最終的にコリメーター100のいずれかの透明柱101の下端面に入射した光のうちこの透明柱101の中心軸に平行な方向に進行する光は透明柱101の内部を進行して上端面から外部に出射される。こうして、コリメーター100から外部に平行光が放出される。
【0057】
第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0058】
〈第4の実施の形態〉
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ]
第4の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいては、第3の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおけるコリメーター100の代わりに、
図13に示すコリメーター100が用いられることが異なり、その他のことは第3の実施の形態と同様である。
【0059】
図13に示すように、コリメーター100は細長い円柱状の透明柱101を側面同士が密着するように複数束ねたものであ、全体として正四角柱状の形状を有する。各柱101の側面は光吸収膜102により覆われている。このコリメーター100においては、いずれかの透明柱101の下端面に入射した光のうちこの透明柱101の中心軸に平行な方向に進行する光は透明柱101の内部を進行して上端面から外部に出射され、コリメーター100のいずれかの透明柱101の下端面に入射した光のうちこの透明柱101の中心軸に平行な方向と異なる方向に進行する光は透明柱101の側面の光吸収膜102に入射して吸収される。
【0060】
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの画素20の動作]
このXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの画素20の動作は、
図11に示すコリメーター100の代わりに
図13に示すコリメーター100が用いられていることを除いて、第3の実施の形態と同様である。
【0061】
第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0062】
〈第5の実施の形態〉
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ]
第5の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいては、第3の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおけるコリメーター100の代わりに、
図14に示すコリメーター100が用いられることが異なり、その他のことは第3の実施の形態と同様である。
【0063】
図14に示すように、コリメーター100は円柱状の透明柱101の周りに同軸に複数(
図14では3つ)の円筒状の透明層103が互いに密着して設けられている。透明柱101および透明層103の側面は光吸収膜102により覆われている。このコリメーター100においては、透明柱101および透明層103のいずれかの一端面に入射した光のうちコリメーター100の中心軸に平行な方向に進行する光はその内部を進行して他端面から外部に出射され、コリメーター100の透明柱101および透明層103のいずれかの一端面に入射した光のうちコリメーター100の中心軸に平行な方向と異なる方向に進行する光は透明柱101および透明層103の側面の光吸収膜102に入射して吸収される。
【0064】
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの画素20の動作]
このXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの画素20の動作は、
図11に示すコリメーター100の代わりに
図14に示すコリメーター100用いられていることを除いて、第3の実施の形態と同様である。
【0065】
第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0066】
〈第6の実施の形態〉
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ]
図15は第6の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイを示し、画素の配列を模式的に示す断面図である。
【0067】
図15に示すように、このXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいては、第2の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイと同様に、マイクロLED31~33の代わりに青色発光または紫外発光のマイクロLED39が用いられ、赤色発光領域におけるマイクロLED39を覆うように赤色蛍光体95が設けられ、緑色発光領域におけるマイクロLED39を覆うように緑色蛍光体96が設けられ、青色発光領域におけるマイクロLED39を覆うように青色蛍光体97が設けられている。これらの赤色蛍光体95、緑色蛍光体96および青色蛍光体97の側面を覆うように光反射膜60が設けられている。これらの赤色蛍光体95、緑色蛍光体96、青色蛍光体97および透明樹脂層50上に第1コリメーター層110、第2コリメーター層120および第3コリメーター層130が設けられている。第1コリメーター層110はマイクロLED39の上方の部分に透明樹脂層111を貫通するように二次元格子状に光吸収膜112を埋め込むことにより形成され、光吸収膜102を埋め込んだ部分がコリメーターとして機能する。第2コリメーター層120はマイクロLED39の上方の部分に透明樹脂層121を貫通するように二次元格子状に光吸収膜122を埋め込むことにより形成され、光吸収膜102を埋め込んだ部分がコリメーターとして機能する。第2コリメーター層120の光吸収膜122は第1コリメーター層110の光吸収膜112に対して光吸収膜112の間隔の約半分の距離だけ横方向にずれている。第3コリメーター層130はマイクロLED39の上方の部分に透明樹脂層131を貫通するように二次元格子状に光吸収膜132を埋め込むことにより形成され、光吸収膜132を埋め込んだ部分がコリメーターとして機能する。第3コリメーター層130の光吸収膜132は第1コリメーター層110の光吸収膜112と第2コリメーター層120の光吸収膜122との間の真ん中に位置している。
図16Aは第1コリメーター層110の光吸収膜112の様子を示す。
図16Bは第1コリメーター層110の光吸収膜112と第2コリメーター層120の光吸収膜122との位置関係を示す。
図16Cは第1コリメーター層110の光吸収膜112と第2コリメーター層120の光吸収膜122と第3コリメーター層130の光吸収膜132との位置関係を示す。
【0068】
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの画素20の動作]
図15に示すように、マイクロLED39が通電されると、青色光または紫外光が外部に放出される。放出された青色光または紫外光により赤色蛍光体95、緑色蛍光体96および青色蛍光体97がそれぞれ励起されることにより、それぞれ赤色光、緑色光および青色光が生じる。こうして生じた赤色光、緑色光および青色光のうちの第1コリメーター層110の下端面に入射した光のうちコリメーター部の中心軸に平行な方向に進行する光は光吸収膜112で囲まれた正四角柱状の透明柱の内部を進行して他端面から出射され、第2コリメーター層120の下端面に入射する。第2コリメーター層120の下端面に入射した光は、光吸収膜122の位置が光吸収膜112と少し横方向にずれていることによる開口率の低下とコリメーター層の厚さの増加とにより、より狭い角度範囲にコリメートされて第2コリメーター層120の上端面から出射され、第3コリメーター層130の下端面に入射する。第3コリメーター層130の下端面に入射した光は、光吸収膜132の位置が光吸収膜122と少し横方向にずれていることによる開口率の低下とコリメーター層の厚さの増加とにより、さらに狭い角度範囲にコリメートされて第3コリメーター層130の上端面から出射される。こうして、第3コリメーター層130の上端面から出射される光は狭い角度範囲に制限された平行光として外部に放出される。このようにコリメーター層を多層にして重ねることで、アスペクト比(開口部の径と層厚の比)を低下させる効果を有し、製造上の難易度を低下させることができる。
【0069】
第6の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0070】
〈第7の実施の形態〉
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ]
図17は第7の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイを示し、画素の配列を模式的に示す断面図である。
図18はこのXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの1画素を示す斜視図である。
【0071】
図17および
図18に示すように、このXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイにおいては、1画素毎に1つのマイクロレンズ90が設けられていること、および、円筒70はマイクロLED31、32、33のそれぞれから放出される光のうち特定の方向に進行する光を集めるように設けられていることが第1の実施の形態と異なる。その他のことは第1の実施の形態と同様である。円筒70の内部のアパーチャー71とマイクロレンズ90とにより1つのコリメーターが構成されている。
【0072】
[XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイの画素20の動作]
図17に示すように、マイクロLED31、32、33に通電されると、マイクロLED31、32、33のそれぞれが発光してn型半導体層34を透過して光が外部に放出される。放出された光は様々な方向に進行するが、円筒70の内部に向かう光はそのまま円筒70の内部の透明樹脂層80を通り、さらにその上の透明樹脂層80を通ってマイクロレンズ90に入射する。マイクロレンズ90の焦点は円筒70の内部にあるため、マイクロレンズ90に入射した光はマイクロレンズ90の中心軸の平行光となってマイクロレンズ90から放出される。円筒70の内部に向かわない光は光反射膜60によって反射されることにより、大半は最終的に円筒70の内部に向かい、平行光として外部に放出される。
【0073】
第7の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0074】
〈第8の実施の形態〉
[XRグラス]
図19は第8の実施の形態によるXRグラスを示し、右側面図である。このXRグラスは左右対称に構成されているため、以下においては、左目側の構成について説明する。
【0075】
図19に示すように、このXRグラスにおいては、フレーム200に一体化された透明な左目側の風防部(図示せず)の後方に左目用ディスプレイ部として第1の実施の形態と同様な構成の半透明マイクロLEDディスプレイ300が風防部と一体に設けられている。ただし、半透明マイクロLEDディスプレイ300は、各画素からの光の放射角度が5度以下、好適には0.1~2.0度と小さいため、各画素からの光が瞳に入るように、配線基板10のフレキシブル性を利用してディスプレイ面を湾曲させている。ここで、半透明マイクロLEDディスプレイ300では、配線基板10のマイクロLED31~33を単なる四角で表し、その上のコリメーターも円筒70だけ表示し、マイクロレンズ90などの図示は省略するなど、図示を大幅に簡略化している。フレーム200の左側の耳掛け部200aには、半透明マイクロLEDディスプレイ300の動作を制御するための制御回路部210が耳掛け部200aの外周を取り囲むように設けられている。耳掛け部200aの側面にはフレキシブル配線220が設けられている。フレキシブル配線220は制御回路部211と半透明マイクロLEDディスプレイ300との間を配線している。半透明マイクロLEDディスプレイ300に対応する部分を除く風防部は配線領域として用いることができる。電源として用いられるバッテリー(リチウムイオン電池など)はフレーム200の何れかの部位(例えば耳掛け部200aなど)に取り付けられる。フレーム200の鼻側の部分には鼻パッド230が設けられている。必要に応じて、フレーム200のうちの例えば風防部の真上の部分などに左目用センサーが設けられる。左目用センサーは、例えば、左目用撮像素子(CMOSイメージセンサーやCCDなど)、LiDAR、照度センサー、加速度センサー、ジャイロセンサー、地磁気センサー、アイトラッキング用の近赤外線カメラなどのいずれか1つ以上を含む。
【0076】
図20にこのXRグラスを使用者が眼前に装着したときの左目400に対する相対的位置関係を示す。左目用ディスプレイ部および右目用ディスプレイ部をそれぞれ構成する半透明マイクロLEDディスプレイ300は使用者の視界全体をほぼ覆う面積を有している。左目400は眼球410、水晶体420、角膜430、網膜440を有する。眼球410を球体と仮定した場合の直径は~24mmである。水晶体420の直径は~9mm、厚さは~4mmである。網膜440は30~40mmの長さに亘って広がっている。
【0077】
各画素から出射されたコリメート光は、ディスプレイ面の湾曲等により、1点に収束するように設計され、収束点は水晶体420の中心と眼球410の中心の間に設定される。収束点の位置により、画像の視野角( =ディスプレイ画像が見える角度範囲) とアイボックスは変動する。視野角とアイボックスは相反する関係にあり、光の収束点を眼球410の中心側にするほどアイボックスは広くなり、視野角は狭まる。ディスプレイ面と角膜430の距離を12mmとし、光の収束点を眼球410の中心付近(=角膜430から~12mm) に設定した場合、瞳孔( 図示せず) の開き具合によるが、瞳孔径が2mmのときの視野角は~19度、瞳孔径が8mmの時の視野角は~67度程度となる。光の収束点を水晶体420の中心側にすれば視野角は広がり、アイボックスは狭まる。光の収束点を調整することで実用的な視野角とアイボックスを実現できるが、例えば、デバイスにアイトラッキング機能を付加し、ディスプレイの角度や位置を瞳孔の動きに追随させることで、より一層広いアイボックスと広い視野角を両立できる。
【0078】
[XRグラスの動作]
図20に示すように、このXRグラスでは、遠方から到達した外界の光は半透明マイクロLEDディスプレイ300を透過して眼球410に到達し、水晶体420を通って網膜440上に結像する。瞳孔が大きく開いた8mmを基準として、23cm~5mまでの距離で焦点を合わせることが可能と仮定すると、瞳孔に入る光の放射角度は23cmのときで~2.0度、5mでは~0.1度である。放射角度5度は、瞳孔の直径を8mmとしたときに約9.2cm先から目に入る光の放射角度であり、人によってはピントを合わせることが可能な範囲である。そのため、画素からの光の放射角度が5度以下、好適には0.1~2.0度の範囲であれば、通常の視力の使用者が、半透明マイクロLEDディスプレイ300に表示された画像を認識することができると考えられる。
図20中、半透明マイクロLEDディスプレイ300の1つの画素からの光と、隣接する画素からの光とは両者ともコリメーターにより放射角度が5度以下、好適には0.1~2.0度に狭められているため、遠方から到達した外界の光と同等であり、互いに混合することなく網膜440上に結像する。このため、通常の視力の人間が、半透明マイクロLEDディスプレイ300に表示された画像を認識することができると考えられる。一方、
図21に示すように、画素にコリメーターを設けない半透明マイクロLEDディスプレイでは、画素からの光の広がり(放射角度)が大きいため、隣接画素からの光を分離することができず、光は混合した状態で網膜440上に到達することから、半透明マイクロLEDディスプレイに表示される画像は不鮮明でぼやけた状態になる。
【0079】
第8の実施の形態によれば、左目用ディスプレイ部および右目用ディスプレイ部として第1の実施の形態と同様な構成の半透明マイクロLEDディスプレイ300を用いていることにより、使用者の目の網膜に1画素単位で映像を結像することができる優れたXRグラスを実現することができる。
【0080】
〈第9の実施の形態〉
[XRグラス]
図22は第9の実施の形態によるXRグラスを示し、右側面図である。このXRグラスは左右対称に構成されているため、以下においては、左目側の構成について説明する。
【0081】
図22に示すように、このXRグラスにおいては、半透明マイクロLEDディスプレイ300の内側に視力矯正用レンズ500が設けられていることが第8の実施の形態によるXRグラスと異なり、その他のことは第8の実施の形態と同様である。視力矯正用レンズ500は、遠視(老眼)矯正の場合は凸レンズ、近視矯正の場合は凹レンズであるが、
図22では一例として凹レンズである場合が示されている。視力矯正用レンズ500は半透明マイクロLEDディスプレイ300の外側に設けられてもよい。
【0082】
図23にこのXRグラスを使用者が眼前に装着したときの左目400に対する相対的位置関係を示す。
【0083】
[XRグラスの動作]
図23に示すように、このXRグラスの動作は、水晶体420と視力矯正用レンズ500との組み合わせで焦点を合わせることを除いて、第8の実施の形態によるXRグラスと同様である。
【0084】
第9の実施の形態によれば、視力矯正用レンズ500を用いた場合においても、第8の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0085】
〈第10の実施の形態〉
[VRグラス用ディスプレイ]
図24は第10の実施の形態によるVRグラス用ディスプレイを示し、画素の配列を模式的に示す断面図である。このVRグラス用ディスプレイは有機ELディスプレイまたは液晶ディスプレイ(LCD)により構成される。
【0086】
図24に示すように、このVRグラス用ディスプレイにおいては、フレキシブルで透明な配線基板10上に二次元マトリクス状に画素20が配列されて画素アレイが設けられている。配線基板10の裏面(画素20と反対側の面)には外光遮断膜600が設けられている。
【0087】
図24には、1画素を構成する3つの副画素の赤色発光の発光部位701、緑色発光の発光部位702および青色発光の発光部位703が示されている。発光部位701、702、703は、有機ELディスプレイでは有機EL素子、液晶ディスプレイではフレキシブル透明基板上に形成された透明導電膜、配向膜、液晶、カラーフィルターなどの積層構造体である。発光部位701、702、703上にはそれぞれコリメーター710が設けられている。コリメーター710は発光部位701、702、703から放出される光の放射角度を5度以下、好適には0.1~2.0度に狭めるためのものである。コリメーター710は、第1の実施の形態などで用いられた、円筒70のアパーチャー71とマイクロレンズ90とからなるものであっても、第3の実施の形態で用いられたコリメーター100などであってもよい。
【0088】
[VRグラス用ディスプレイの画素20の動作]
図24に示すように、発光部位701、702、703からそれぞれ放出された光はコリメーター710により放射角度が5度以下、好適には0.1~2.0度に狭められ、最終的にほぼ平行光として外部に放出される。
【0089】
第10の実施の形態によるVRグラス用ディスプレイによれば、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイまたは液晶ディスプレイを用いた場合において、画素アレイの画素20毎に設けられたコリメーターにより画素からの光の放射角度を5度以下に狭めることができることにより十分な解像度で映像を表示することができる。
【0090】
〈第11の実施の形態〉
[VRグラス]
図25は第11の実施の形態によるVRグラスを示し、右側面図である。このVRグラスは左右対称に構成されているため、以下においては、左目側の構成について説明する。
【0091】
図25に示すように、このVRグラスにおいては、フレーム200に一体化された透明な左目側の風防部(図示せず)の後方に左目用ディスプレイ部として第10の実施の形態と同様な構成のディスプレイ800が風防部と一体に設けられている。ただし、ディスプレイ800は、各画素からの光の放射角度が5度以下、好適には0.1~2.0度と小さいため、各画素からの光が瞳に入るようにディスプレイ面を湾曲させている。このVRグラスのその他のことは第10の実施の形態と同様である。
【0092】
図26にこのVRグラスを使用者が眼前に装着したときの左目400に対する相対的位置関係を示す。
【0093】
[VRグラスの動作]
図26に示すように、このVRグラスの動作は、外光遮断膜600により外界からの光がディスプレイ800を透過しないことを除いて、第8の実施の形態によるXRグラスと同様である。
【0094】
第11の実施の形態によれば、左目用ディスプレイ部および右目用ディスプレイ部として第10の実施の形態と同様な構成のディスプレイ800を用いていることにより、使用者の目の網膜に1画素単位で映像を結像することができる優れたVRグラスを実現することができる。
【0095】
〈第12の実施の形態〉
[XRグラス]
第12の実施の形態によるXRは、XRグラス本体部と目の角膜に装着されるコリメート機能付きコンタクトレンズとを組み合わせたものである。
【0096】
図27はXRグラス本体部900を示し、右側面図である。このXRグラス本体部900は左右対称に構成されているため、以下においては、左目側の構成について説明する。
【0097】
図27に示すように、このXRグラス本体部900は、第8の実施の形態によるXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ300におけるコリメーターをなくしたXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ910を有する。すなわち、XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ910においては、円筒70、透明樹脂層70およびマイクロLED90は設けられていない。このXRグラス本体部900のその他の構成は第8の実施の形態と同様である。
【0098】
図28A、
図28B、
図28Cおよび
図28Dはコリメート機能付きコンタクトレンズ1000を示し、
図28Aおよび
図28Bはそれぞれコリメート機能付きコンタクトレンズ1000の平面図および断面図、
図28Cおよび
図28Dはそれぞれコリメート機能付きコンタクトレンズ1000を構成する透明柱集合体の透明柱1100を示す平面図および側面図である。
【0099】
図28Aおよび
図28Bに示すように、コリメート機能付きコンタクトレンズ1000は全体として角膜の表面の湾曲に応じて椀状に湾曲した形状を有する。
【0100】
コリメート機能付きコンタクトレンズ1000の中央部には、
図28Cおよび
図28Dに示すような正六角錐台状の透明柱1100が多数、互いに側面を密着させて蜂の巣状に配列されていて透明柱集合体が形成されている。コリメート機能付きコンタクトレンズ1000の湾曲した外面および内面は滑らかに形成されている。透明柱1100の外面における対角長をD
Outer 、内面における対角長をD
Inner とすると、D
Outer >D
Inner である。
【0101】
図28Bに示すように、この透明柱集合体を構成する各透明柱1100を通り抜ける光は一点(収束点)に収束するように構成されている。各透明柱1100を透過した光が収束する収束点は、このコリメート機能付きコンタクトレンズ1000が角膜430に装着された場合、水晶体420の中心付近に来るようにする。
【0102】
コリメート機能付きコンタクトレンズ1000は各透明柱1100からの光の放射角度が5度以内になるように構成されている。
図28Cおよび
図28Dに示すように、透明柱1100の対角長をD、長さをL、放射角度の半分をθ/2とすると、例えばD=4μm、L=92μmとすれば、放射角度θが5度以内(±2.5度)の光がこのコリメート機能付きコンタクトレンズ1000を透過する。
【0103】
コリメート機能付きコンタクトレンズ1000の透明材料は例えば、熱可塑性のアクリル樹脂(PMMA)やポリカーボネート(PC)樹脂であり、透明柱1100の側面の光吸収膜にはブラックカラーレジストや熱可塑性樹脂にカーボンブラックを混合した材料などを用いることができる。
【0104】
放射角度5度以内を実現するには、コリメーターとなる透明柱1100のアスペクト比を約23以上に大きくする必要があり、一括形成は困難である。そのため、例えば、
図29Aに示すように、側壁が光吸収膜(図示せず)で形成された正六角柱状の透明柱1100からなる透明柱集合体を有する平坦で伸縮性を有する透明層1200を形成し、これを
図29Bに示すように複数層(この例では3層)重ねて、放射角度を5度以内にできる十分な厚さのコリメート機能を持った透明柱集合体の厚膜を形成する。その厚膜をコンタクトレンズとして適切な大きさの円盤型に切断し、加熱成型して湾曲させる。この状態を
図29Cに示す。この工程により、透明柱集合体の開口面積は湾曲面の外側が広く、内側が狭い形状となる。この時の湾曲の曲率半径によって、透明柱集合体を透過する光の収束点を調整できる。収束点を水晶体中心付近にする場合は、曲率半径をおおよそ角膜430の表面と水晶体420の中心との間の距離にする。厚膜の湾曲形状と角膜430の形状が異なる場合は、
図29Dに示すように、角膜430の形状に合うように厚膜の内側湾曲面の余分な部分の研削を行う。外側湾曲面の研削は曲率が角膜430と同等の場合は不要であるが、
図29Dには外側湾曲面の研削を行った場合が示されている。こうして、コリメート機能付きコンタクトレンズ1000が製造される。必要に応じて、
図29Eに示すように、コリメート機能付きコンタクトレンズ1000の外周部の面取りを行う。
図29Eに示すコリメート機能付きコンタクトレンズ1000を角膜430に装着した状態を
図30に示す。
【0105】
図31にXRグラス本体部900を使用者が眼前に装着し、コリメート機能付きコンタクトレンズ1000を角膜430に装着してXRグラスを構成した時の様子を示す。
【0106】
[XRグラスの動作]
図31に示すように、XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ910の画素からの光は、コリメーターがないため大きな放射角度を有するが、コリメート機能付きコンタクトレンズ1000に入射すると放射角度が実質的に5度以内に狭められるため、隣接画素からの光が互いに大きく混じり合うことなく網膜上で結像する。
図32に示すように、視線が下向きになって眼球410が回転しても、XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ910の画素からの光は大きな放射角度を有し、瞳孔に入射できる角度を持った光が広範囲に存在するため、広いアイボックスを維持できる。
【0107】
第12の実施の形態によるXRグラスによれば、コリメーターのないXRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ910を用いても、コリメート機能付きコンタクトレンズ1000により画素からの光の放射角度を実質的に5度以下に狭めることができることにより、十分な解像度で映像を表示することができる。
【0108】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0109】
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構成、形状、材料、方法などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、形状、材料、方法などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0110】
10…配線基板、20…画素、31…赤色発光のマイクロLED、32…緑色発光のマイクロLED、33…青色発光のマイクロLED、62…左目、200…フレーム、200a…耳掛け部、210…制御回路部、220…フレキシブル配線、300…半透明マイクロLEDディスプレイ、500…視力矯正用レンズ、600…外光遮断膜、701、702、703…発光部位、710…コリメーター、800…ディスプレイ、900…XRグラス本体部、910…XRグラス用半透明マイクロLEDディスプレイ、1000…コリメート機能付きコンタクトレンズ、1100…透明柱
【要約】
【課題】XRグラス本体部と組み合わせることで十分な解像度で映像を認識することができるコリメート機能付きコンタクトレンズおよびこれを用いたXRグラスを提供する。
【解決手段】XRグラスは、少なくとも3つ以上の副画素により1つの画素が構成された画素アレイと、それぞれの副画素に含まれる1つまたは複数のマイクロ発光ダイオード(31~33)とを有し、画素の開口率は10%以上である半透明マイクロ発光ダイオードディスプレイからなる左目用ディスプレイ部および右目用ディスプレイ部を有するXRグラス本体部と、左目用ディスプレイ部および上記右目用ディスプレイ部の任意の点から発せられた光に対して、透過率50%以上の放射角度が5度以下である、コリメーターとなる透明柱(1100)が複数配列された透明柱集合体を有し、各透明柱を透過した光が収束点に収束するコリメート機能付きコンタクトレンズ(1000)とを有する。
【選択図】
図31