(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】レーザベースプレートの温度を均一化するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/04 20060101AFI20240422BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H01S3/04
H01L23/46 B
(21)【出願番号】P 2023552397
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 IB2021061557
(87)【国際公開番号】W WO2022130146
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-05-17
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LT
(73)【特許権者】
【識別番号】523183655
【氏名又は名称】リティリット、 ユーエービー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルスティーカ、ネリユス
(72)【発明者】
【氏名】ガーリン、イルダール
(72)【発明者】
【氏名】リゲルスキス、ケステュティス
(72)【発明者】
【氏名】ガヴリリナス、ニコラユス
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-115527(JP,A)
【文献】特開2018-174184(JP,A)
【文献】特開2017-069109(JP,A)
【文献】特開2006-032798(JP,A)
【文献】特開2005-317925(JP,A)
【文献】特開2002-280661(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0022754(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0092931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00- 3/30
H01S 5/00- 5/50
H01L 23/34-23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光学部品の光学部品ホルダ(5,5´)がレーザベースプレート(1)に取付けられている前記レーザベースプレート(1)の温度を均一化する方法であって、
前記レーザベースプレート(1)と前記光学部品ホルダ(5,5´)の材料を選択するステップと、
前記レーザベースプレート(1)に温度均一化手段を設けるステップと、
前記レーザベースプレート(1)へ前記光学部品ホルダ(5,5´)を取り付けて最終位置合わせするステップと、を含む、
方法において、
前記レーザベースプレート(1)及び前記光学部品ホルダ(5,5´)の製造のために選択された材料が、ステンレス鋼であり、
前記温度均一化手段が、前記レーザベースプレート(1)に作られた穴の配列に挿入された細長いヒートパイプ(2)として構成され、
前記細長いヒートパイプ(2)が、ステンレス鋼より
少なくとも10倍高い熱伝導率及びステンレス鋼の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有するように選択され、
少なくとも2つの前記光学部品ホルダ(5,5´)が、前記レーザベースプレート(1)に取付けられ、レーザスポット溶接を用いて、互いに対して調節される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記細長いヒートパイプ(2)が、金属からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザベースプレート(1)に挿入される細長いヒートパイプ(2)が、伝熱のための相転移を用いるヒートパイプである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記細長いヒートパイプ(2)が、前記レーザベースプレート(1)に対して1つまたは複数の異なる方向に配置されている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光学部品ホルダ(5)は、一体であり、前記レーザベースプレート(1)への取付けに先立ち、前記光学部品ホルダ(5)は、2つの直交座標および1つの回転座標にしたがい前記レーザベースプレート(1)の平面に位置合わせされ、その後に、レーザスポット溶接を用いて取付けられ、取付け後に、最終位置合わせがレーザスポット溶接を用いて行われる、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光学部品ホルダ(5´)は、前記レーザベースプレート(1)の平面に垂直な平面で互いに位置決めされ、組み立てられ、レーザスポット溶接(6´)により固定された2つの
ブロックである下部ブロック(7)及
び上部ブロック(8)で構成され、組み立てられた前記光学部品ホルダ(5´)は、前記レーザベースプレート(1)の平面に位置合わせされてレーザスポット溶接(6)を用いて前記レーザベースプレート(1)に固定されるか、または最初に前記レーザベースプレート(1)にレーザスポット溶接(6)を用いて前記下部ブロック(7)を位置合わせして固定し、次に前記上部ブロック(8)を前記下部ブロック(7)にレーザスポット溶接(6´)を用いて位置合わせして固定する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
レーザベースプレート(1)の温度を均一化するための装置であって、レーザ光学部品の光学部品ホルダ(5、5´)が前記レーザベースプレート(1)に取付けられ、前記レーザベースプレート(1)の温度を均一化するための手段を備える装置であって、
前記レーザベースプレート(1)及び前記光学部品ホルダ(5、5´)はステンレス鋼からなり、前記レーザベースプレート(1)の温度均一化手段が、前記レーザベースプレート(1)に作られた穴の配列に挿入される細長いヒートパイプ(2)として構成され、前記細長いヒートパイプ(2)の熱伝導率は、ステンレス鋼の熱伝導率より
10倍以上高く、前記細長いヒートパイプ(2)の熱膨張係数はステンレス鋼の熱膨張係数に近く、少なくとも2つの前記光学部品ホルダ(5、5´)が前記レーザベースプレート(1)に取付けられ、レーザスポット溶接を用いて、互いに対して最終的に調節される、
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
前記細長いヒートパイプ(2)が、金属からなる、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記レーザベースプレート(1)に挿入され
る前記細長いヒートパイプ(2)が、熱を伝える相転移を用いるヒートパイプである、ことを特徴とする請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
前記細長いヒートパイプ(2)が、前記レーザベースプレート(1)に対して1つ又は複数の異なる方向に配置されている、ことを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記細長いヒートパイプ(2)が、前記レーザベースプレート(1)に作られた穴に挿入され、互いに等間隔に一方向に配置されている、ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記細長いヒートパイプ(2)が、前記レーザベースプレート(1)の、幅と長さと高さのうち少なくとも一つに応じて、異なる方向に交差することなく配置された前記レーザベースプレート(1)に作られた穴に挿入される、ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記細長いヒートパイプ(2)の端部が、対応する追加の細長いヒートパイプ(2´)を用いて前記レーザベースプレート(1)の外側に接続されている、ことを特徴とする請求項7~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
余剰熱を放散するためのヒートシンク(3)が、前記レーザベースプレート(1)の外側で、側面で、細長いヒートパイプ(2,2´)に配置されている、ことを特徴とする請求項7~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記光学部品ホルダ(5、5´)が、埋め込まれた細長いヒートパイプ(2)を有する、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項16】
前記レーザベースプレート(1)において、選択された形状および方向のチャネル(4)が、余剰熱を放散するために追加的に形成され、中に冷却剤が流れる、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項17】
前記レーザベースプレート(1)及び前記光学部品ホルダ(5、5´)は、AISI304ステンレス鋼製である、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ技術の分野に関し、より詳細には、レーザベースプレートの温度を均一化するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、レーザベースプレート又はレーザ本体及び光学部品ホルダは、アルミニウム合金で作製される。なぜなら、アルミニウムは、良好な熱伝導率(およそ230 W/K/m
)を有し、機械的に処理するのが容易であり、強度及び重量が低く、アルミニウムは、比較的安価な金属であるからである。しかし、アルミニウムは、また、欠点を有し、アルミニウム部品は、機械的処理後の残留応力及び自然な時効のために歪む傾向があり、これにより、レーザ光学部品の一定の位置を確保し、光路の安定した配向を維持することが困難となる。アルミニウム溶接は、複雑なプロセスであり、ミラー、レンズ、光ファイバスプリッタ、偏光子等の光学機械アセンブリは、通常、ねじ又は接着でレーザベースプレートに固定され、これは、望ましくない応力を生じさせ、これも、光学部品の位置合わせ不良を招く可能性がある。また、レーザの温度変化や温度勾配が生じるときに光学部品の位置を一定にし、光路の指向性を安定に保つために、レーザベースプレートや光学部品ホルダはインバーやコバールなどの超低温膨張特性を有する合金で構成されている。また、レーザベースプレートをSiO2(二酸化シリコン)から作る試みもある。
【0003】
温度変化に弱く依存し、非常に低い熱膨張係数を有するSiO2またはインバー製のレーザ媒質、共振器および共振器支持ハウジングから構成される既知の安定化レーザ装置がある。公知のレーザ装置が日本国特許出願JPS56-45091(A)1、981に記載されている。
【0004】
公知のレーザ装置の欠点は、インバー及びSiO2からより大きなサイズのレーザベースプレートを製造し、それに光学機械アセンブリを溶接することが技術的に困難であることである。さらに、SiO2およびインバーは、比較的貧弱な熱伝導体であり、熱を放出するレーザ部品からの熱放散には不適切である。また、SiO2およびインバーは、アルミニウム合金またはステンレス鋼と比較して高価な材料である。
【0005】
インバー合金製のベースに入出力ミラーを搭載し、その間にレーザ結晶と非線形光学結晶を配置したレーザ共振器があり、非線形光学結晶とベースの間に熱交換器を取付けて、目的とする非線形光学結晶温度を維持する。公知のレーザ共振器が日本国特許出願JPH08-95104(A)、1996に記載されている。
【0006】
既知の装置の欠点は、装置のベースを作るインバー合金がアルミニウムに比べて熱伝導体が乏しく、レーザ要素を激しく加熱することからの熱放散には適さないことである。さらに、インバー合金はアルミニウム合金やステンレス鋼に比べて高価である。
【0007】
伝熱冷却器によって熱的に安定化される低温膨張ベースプレートに部品が取付けられたダイオードレーザ又はダイオードレーザのアレイによって背面から積層された公知の固体レーザがある。レーザは、ヒートシンクと、ヒートシンクに取付けられた伝熱冷却器と、伝熱冷却器に取付けられたベースプレートと、ベースプレートに取付けられたダイオードレーザ及び光学要素とを含む。光学系は、ダイオードレーザの波長が活性媒質の吸収帯に整合するある温度で動作するようになっている。サーミスタはベースプレートの温度を測定し、伝熱冷却器の電流を調整することで、雰囲気温度に関係なくベースプレートの一定の動作温度を維持する。既知のレーザは、米国特許出願US5181214(A)、1993に記載されている。
【0008】
既知のレーザの欠点は、大きなレーザベースプレートの温度を安定させるためにこの方法を適用することが複雑かつ高価であり、多数の伝熱冷却器と伝熱部品に動力を供給するための大量の電気とを必要とし、伝熱冷却器で放出される大量の熱のために、熱放散の追加手段を設ける必要があることである。さらに、垂直方向では、ベースの上部から伝熱冷却器が取付けられる底部まで、大きな温度勾配が発生し、その結果、特にベースプレートの温度膨張係数が無視できないほど低くなければ、ベースプレートが曲がることがある。
【0009】
光学部品を光学スタンドに取付けるための公知の方法及び装置があり、ここで、光学部品は光学ホルダの垂直部分に取付けられ、ホルダの垂直部分はホルダのベースプレートに取付けられている。ホルダのベースプレートは、抵抗ヒータのようなヒータを含み、このヒータは、ホルダのメインプレートを光学スタンドにはんだ付けするために用いられる。すでに光学スタンドにはんだ付けした後に光学部品実装ホルダの位置を変えるために、はんだが溶けるまでヒータをオンにした後、ホルダの位置を変えてヒータをオフにする。光学部品を光学スタンドに取付けるための公知の方法及び装置は、米国特許第6,292,499号(B1)2001号に記載されている。
【0010】
周知の方法および装置の欠点は、光学部品の取付けホルダが、はんだを加熱および溶融した後に調整されることであり、その結果、光学スタンドの広い面積が温度に曝されるだけでなく、ホルダが熱くなり、はんだが冷却および凝固するにつれて、温度変化および結果として生じる応力によって、光学部品の位置が変化する可能性がある。さらに、液体から固体状態へのはんだの変化中に、光学部品の位置が変化し、それに応じて光路の方向が変化し得る。
【0011】
有効熱伝導率が10~20,000 W/m/Kであり、薄いディスクレーザ結晶又は
セラミックの熱膨張係数と支持構造が適合されている機械的に制御された振動ヒートパイプによって、薄いディスクレーザ結晶又はセラミック全体を通してほぼ等温の温度に達することを可能にする、薄いディスクレーザシステムのための既知の熱制御装置及び方法がある。薄いディスクレーザシステムの公知の熱制御装置及び方法は、国際特許出願WO2011091381A2、2011に記載されている。
【0012】
既知の方法及び装置の欠点は、高出力薄型ディスクレーザ結晶又はセラミックマウントの問題が、温度勾配を排除し、それに対応して薄型ディスクの変形を排除することによって解決される一方で、レーザベースプレートに光学部品を取付け、光学部品の位置を安定化するという問題を解決しないことである。
【0013】
光学スタンド用の液冷システムおよび光学スタンドの熱安定性を確保する方法が知られている。光学スタンドは、チャネルのネットワークで循環する光学スタンドの液体によって冷却され、光学スタンドは、冷却プレートによって冷却することができ、場合によっては、液体は、多量の熱を放出する光学部品を追加的に冷却する。このようにして、チャネルネットワークの液体の流れを適切に制御することによって、光学スタンドの冷却と、温度分布とが保証される。光学スタンドを液体で冷却する既知のシステム及び方法は、米国特許出願US2020161825(A1)に記載されている。
【0014】
光学スタンドの温度を流動液体で安定化させる既知のシステムおよび方法の欠点は、冷却のために液体を使用し、液体がシステムに浸透しないように特別な密封手段を講じる必要があることである。さらに、冷却および温度安定化のための液体の冷却およびポンピングにはチラーが必要である。光学スタンドの液冷もまた、追加のメンテナンスおよびサービスを必要とし、これは追加のコストおよび時間である。
【0015】
ハウジング及び取付け部が銅から形成された本体を有し、鋼から構成されたシースを有する公知のレーザダイオードアセンブリがある。その結果、鋼で構成される実装面積を達成することができると同時に、銅により改善された熱伝導率が得られる。
【0016】
既知の装置の欠点は、レーザダイオードアセンブリハウジングの熱伝導率が改善される一方で、これが、レーザ温度の変化及び温度勾配が生じるとき、レーザベースプレートの変形及び光学要素の位置の互いに対する位置のずれの問題を解決しないことである。公知のレーザダイオードアセンブリが米国特許出願US20140092931A1、2014に記載されている。
【0017】
既知の水冷ブレッドボードがあり、これには2本の平行な銅管が装備されており、これを通して水が流れる。
【0018】
公知のブレッドボードの欠点は、ボードからの熱除去には銅チューブを通って流れる水が必要となることであり、従って、装置には冷却装置を設けなければならない。さらに、銅管を流れる水はブレッドボードよりも冷たく、したがってブレッドボードを曲げる温度勾配を生成してしまう。既知の水冷ブレッドボードは文書Base Lab Tools:「2015年10 月Newsletter - 液冷ブレッドボード」、2015年
10 月25 日(2015-10-25)、ページ1-4、XP55836026 に記
載されている。インターネットからの検索: https://www.baselabtools.com /10-2015-Newsletter_b_22.html[2021-08-30に検索]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、レーザベースプレートの局所的な温度差に対する抵抗を増大させ、光学部品の安定した位置決めを確保し、それに応じて光路の指向性を確保し、レーザ構成部品によって放射される熱によってレーザベースプレートに形成される温度勾配を抑制し、それに応じてレーザベースプレートの結果として生じる突出部を減少させ、レーザがオンにされたときのレーザのウォームアップ時間を減少させ、レーザベースプレート及び光学部品ホルダの自然な経年変化に対する抵抗を確保し、レーザの信頼性及び耐用年数を増加させ、またレーザの機械的部分の構成を単純化し、レーザ生産のコストを低減し、レーザアセンブリ及び調整の手順を単純化し、レーザを大量生産に適合させることを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の要旨は、請求項1~17にしたがい提案されたレーザベースプレートの温度を
均一化するための方法及び装置に開示される。
【0021】
本発明の利点は、レーザベースプレート及び光学部品ホルダが、優れた機械的特性を有するが熱伝導性に乏しいステンレス鋼で作られていることであり、その結果、レーザベースプレートは、レーザベースプレートの熱伝導性を著しく改善し、レーザ増幅媒体のような幾つかの光学部品によって放射される熱のために、レーザベースプレートの温度勾配を減少させる受動伝熱手段(「受動伝熱手段」とは、伝熱または銅ロッドへの相転移を用い
るヒートパイプを指す)を組み込んでおり、それは、レーザベースプレートの変形を著しく減少させ、それに対応して、光学部品の位置ずれ及び光路の位置ずれを減少させる。
【0022】
ステンレス鋼は、優れた加工特性を有し、フライス加工が可能であり、旋削加工が容易であり、アーク溶接やレーザ溶接が容易であり、機械的処理後の残留変形が低く、耐腐食性が高く、自然時効に対する耐性を有し、上記の特性により、長年経過しても、レーザベースプレートが歪まなく、光学部品のホルダが歪まず、レーザが歪まず、レーザパラメータが変化しない。しかし、ステンレス鋼は、アルミニウム(236 W/m/K)と比較
して十分に低い熱伝導率(15~18W/K/m)を有し、本発明によれば、ステンレス鋼で作られたレーザベースプレートの熱伝導率を改善するために、レーザベースプレートに配置されたレーザベースプレートの熱伝導率を効果的に改善するために、好ましくは対称的に等間隔に配置された受動伝熱手段、特にヒートパイプが設けられる。ヒートパイプ
で有り得る前記受動伝熱手段は、前記レーザベースプレートにフライス加工された穴に挿入された銅のロッドであってもよい。銅は極めて高い熱伝導率(400 W/K/m)を
有し、ステンレス鋼の熱膨張係数と十分によくマッチした熱膨張係数を有する。レーザベースプレートの総熱伝導率は、ステンレス鋼レーザベースプレートの銅ロッドの充填密度に依存する。例えば、等間隔の銅ロッドの体積がレーザベースプレートの体積の半分を占める場合、このような複合レーザベースプレートの熱伝導率はアルミニウムのそれに近い。このようにレーザベースプレートの全体的な熱伝導率を改善することにより、レーザベースプレートの機械的特性は、ステンレス鋼の場合と同程度に、わずかに変化し、良好である。
【0023】
さらに、レーザベースプレートの熱伝導率が改善されたため、受動伝熱手段、好ましく
はヒートパイプの挿入によって、レーザのウォームアップ時間が著しく短縮され、レーザがスイッチオンされた後、レーザの動作温度分布がずっと速く落ち着く。
【0024】
ステンレス鋼製レーザベースプレートのヒートパイプは、レーザベースプレートを横切るような任意の方向に選択的に配置し配向することができ、ヒートパイプの配向方向に応じて、熱は同じ方向に最も良く伝達されることになる。同じレーザベースプレートにおいても、ヒートパイプは、レーザベースプレートの長さ、幅及び厚さに応じて、例えば幾つかの方向に向けることができ、この場合、ヒートパイプは、二次元又は三次元の格子を形成する。
【0025】
また、ヒートパイプは、液体の相変態を伝熱に使用し、液体を蒸発させ、パイプのより冷たい場所で蒸気を凝縮させることによって、パイプのより暖かい部分から熱を伝達する金属製のヒートパイプであってもよい。ヒートパイプの有効熱伝導率は100kW/K/mに達することができるが、銅の熱伝導率は約0.4kW/K/mである。
【0026】
受動伝熱手段とレーザベースプレートとの間の熱接触は、熱ペースト、軟質はんだ又はインジウムを用いることによって改善される。
【0027】
さらに、レーザベースプレートの熱特性を改善するために、レーザベースプレートの外側のヒートパイプの端部をヒートパイプのような追加の受動伝熱手段に付加的に接続することができ、これにより、温度をより均等に分配することができる。
【0028】
レーザベースプレートは、ヒートシンクをレーザベースプレートおよびヒートパイプの
ような受動伝熱手段に取付けることによって冷却される。ヒートシンクは、空気または水によって冷却することができる。また、レーザ冷却を改善するために、水などの冷却剤が流れる冷却チャネルをレーザベースプレートに追加的に設けることもできる。
【0029】
ステンレス鋼を使用する別の利点は、同じくステンレス鋼で作られている光学部品のホルダが、レーザスポット溶接を使用してレーザベースプレートに固定されていることである。レーザスポット溶接は熱衝撃のゾーンが小さく、その結果、光学部品のホルダが溶接中に外れない。この固定方法は、ねじによる固定、接着、はんだ付けに比べて、極めて高い精度、温度変化に対する耐性、極めて低い残留応力、すなわち、レーザ温度の変化に伴う光学部品の安定した位置と光路の安定した方向性を保証するという特徴がある。
【0030】
さらに、光学部品ホルダは、一体であってもよく、ステンレス鋼で構成され、2つの直交座標および1つの回転座標に従って、レーザベースプレートの平面に位置合わせされてもよい。また、光学部品ホルダは、複合とすることができ、垂直平面に配置された2つの一体ブロックからなり、光学部品ホルダは、レーザスポット溶接を使用してレーザベースプレートに取付けられ、複合光学部品ホルダは組み立てられる。
【0031】
更に、熱性能を更に向上させるために、受動伝熱手段、好ましくはヒートパイプ光学部品ホルダに組み込むこともできる。
【0032】
さらに、レーザスポット溶接された光学部品ホルダは、レーザパルスを溶接又は光学部品ホルダの適切な位置に向けることによって、同じ溶接レーザと非常に正確に位置合わせすることができる。
【0033】
さらに、レーザスポット溶接を使用して光学部品ホルダをレーザベースプレートに取付けることは、自動化されたレーザアセンブリおよび大量生産に理想的である。
【0034】
また、レーザスポット溶接は、接着またははんだ付け技術と比較して、光学機械アセンブリを固定する技術的にクリーンな方法である。
【0035】
別の利点は、ステンレス鋼はアルミニウム合金と比較して脱ガスが著しく低く、これはUVスペクトル領域でより高い光高調波を発生するレーザにおいて特に重要であり、レーザベースプレートと機械的ユニットから放出される蒸気はUV放射の影響下で非線形結晶の表面に堆積し、それらが最終的に光学的に損傷するまでそれらの特性が劣化することである。
【0036】
発明の範囲を限定せず、以下を示す図面によって、発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、レーザベースプレートにフライス加工された穴の配列に挿入された
細長いヒートパイプまたは銅ロッドを有するレーザベースプレートを示しており、半透明画像による不等角投影が示されている。
【
図2a】
図2aは、レーザベースプレートにフライス加工された穴の配列に挿入された
細長いヒートパイプまたは銅ロッドを備えたレーザベースプレートを示しており、これらは、レーザベースプレートの端部で他の
ヒートパイプに接続されており、半透明の図を備えた不等角投影が示されている。
【
図2b】
図2bは、レーザベースプレートにフライス加工された穴の配列に挿入された
細長いヒートパイプまたは銅ロッドを備えたレーザベースプレートを示しており、これらのプレートは、レーザベースプレートの端部にある他の
ヒートパイプに接続されているが、不等角投影が示されているが、不透明な視認である。
【
図3】
図3は、レーザベースプレートにフライス加工された穴の配列に挿入された
細長いヒートパイプと、その側面に取付けられた冷却ヒートシンクとを有するレーザベースプレートの上面図を示す。
【
図4】
図4は、
細長いヒートパイプを全方向(長さ、幅、高さ)に沿って挿入したレーザベースプレートを示す。
【
図5】
図5は、
細長いヒートパイプがZ軸を介して挿入され、これらの
ヒートパイ
プがレーザベースプレートの底部で他の
ヒートパイプと相互接続されているレーザベースプレートの図を示しており、X軸の方向では、冷却液が流れる冷却チャネルが下から見て形成されている。
【
図6】
図6は、光学部品のホルダを示す。一方のホルダは一体、他方は複合材料であり、レーザスポット溶接を用いてレーザベースプレートに取付けられている。不等角投影が示され、レーザベースプレートの断片のみが示されている
。
【発明を実施するための形態】
【0038】
光学部品の位置及び光路の方位を安定させる方法は、光学部品ホルダ及びレーザベースプレートの材料を選択することを含み、この場合、選択されたステンレス鋼は、優れた機械的及びレーザスポット溶接特性を有し、レーザベースプレートの熱伝導率が増大され、同時に、細長い受動伝熱手段(「受動伝熱手段」とは、伝熱または銅ロッドへの相転移を
用いるヒートパイプを指す)をレーザベースプレートに挿入することによって温度勾配が抑制される。本発明は、本質的に、レーザベースプレート及び光学部品ホルダをステンレス鋼で製造することを可能にし、アルミニウム合金に近い、更により良好な熱特性を提供すると共に、ステンレス鋼を使用することにより、レーザスポット溶接を用いて光学部品ホルダをレーザベースプレートに取付け及び位置合わせすることを可能にする。
【0039】
図1は、細長いヒートパイプ2が、X軸方向に互いに等間隔で標準間隔に配置されているレーザベースプレート1を示しており、その結果、レーザベースプレート1を横切って、図示の場合、X方向の全熱伝導率が著しく増加する。最も単純な場合には、ヒートパイ
プ2は、レーザベースプレート1にフライス加工された穴にねじ込まれた純銅製のねじロッドとすることができ、銅とステンレス鋼の熱膨張係数は非常に類似しているので、温度に伴って有害な応力が発生することはない。さらに大きな熱伝導率のために、ヒートパイ
プ2は、熱を伝達するために相転移を用いる広範囲の市販のヒートパイプから選択することができる。ヒートパイプ2の熱膨張係数は、ステンレス鋼の熱膨張係数に類似していることが望ましい。
【0040】
図2a及び
図2bは、レーザベースプレートの外側に挿入された
ヒートパイプまたは銅
ロッド2が他の
ヒートパイプ2´に接続されているレーザベースプレート1を示しており、このため、横断方向のみならずレーザベースプレート1に沿って熱伝導率が向上している
。図2aは半透明のレーザベースプレートを示し、
図2bは透明でないレーザベースプレートを示す
。
【0041】
図3は、余剰熱を環境に放散するためのヒートシンク3がその側面に取付けられたレーザベースプレート1を示しており、ヒートシンク3は
ヒートパイプ2´に接続されており、
ヒートパイプは次にレーザベースプレート1に挿入された
ヒートパイプまたは銅ロッド2(
図3は
ヒートパイプまたは銅ロッド2を図示せず)に接続されている。ヒートシンク3は、余剰熱を放散するために、レーザベースプレート1と同様に、空気と水の両方で冷却することができ、冷却剤が流れるチャネル4を形成することができる
。
【0042】
図4は、ヒートパイプ2がX、Y及びZ方向に、好ましくは等間隔で配置され、かくして効果的に全方向の熱伝導率を増加させるレーザベースプレート1を示している。異なる落下位置に配置されたヒートパイプは、重複することがある。また、ヒートパイプ2は、追加のヒートパイプをレーザベースプレートの外側に追加的に接続することができ、従って、レーザベースプレートの熱特性を更に向上させることができる。
【0043】
図5は、レーザベースの底部にZ方向に配置されたヒートパイプ2が、追加のヒートパ
イプ2´によって相互接続されているレーザベースプレート1を示しており、従って、Z方向のみならず、X方向及びY方向におけるレーザベースプレートの熱伝導率が効果的に改善されている。あるいは、冷却チャネル4をレーザベースプレート1に形成することができ、これを介して、冷却剤、好ましくは水が流れ、レーザの余剰熱を運び去る。冷却チャネル4は、レーザベースプレート1の任意の点に形成することができ、任意の方向に向けることができ、任意の形状とすることができる。図中、レーザベースプレート1は下側から示されている。
【0044】
図6は、レーザスポット溶接6によってレーザベースプレート1に取付けられた一体及び複合光学部品ホルダ5及び5´を示す。一体光学部品ホルダ5は、ステンレス鋼の中実片から成り、レーザベースプレート1の横方向平面及び1つの角度座標に位置決めされる。複合光学部品ホルダ5´は、レーザスポット溶接6´によって2つの相互接続されたステンレス鋼のブロック7および8から構成され、複合光学部品ホルダ5´は、すべて3つの横方向調整自由度および2つの角度調整自由度を有する。光学部品9は、光学部品ホルダ5、5´にばね荷重をかけられるか、または接着もしくはプレス加工される。光学部品5、5´の前記ホルダの利点は、それらがその構造において調整可能なネジを有しておらず、レーザスポット溶接によってレーザベースプレートに固定されていることである。ヒ
ートパイプ2を光学部品ホルダ5、5´に追加的に挿入することもできる。光学部品9は、例えば、ミラー、レンズ、偏光子、位相プレート、結晶、コリメータ、ビームスプリッタ等である。
【0045】
銅製ロッドをレーザベースプレートにフライス加工された穴のアレイに挿入すると、レーザベースプレートの温度は、ヒータがオンに切り替わるときに、はるかに速く安定する。このように、レーザベースプレートにヒートパイプを挿入することによって、レーザベースプレートがあまり突出しないだけでなく、レーザの動作温度がオンにされたときにはるかに速く安定化する。
【0046】
ヒートパイプが挿入されたステンレス鋼製レーザベースプレートとステンレス鋼製光学部品ホルダは、レーザの機械的部品の優れたソリューションであり、光学部品の互いの位置の安定性を確保する。