(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】積層導光素子が視野の異なる部分を提供するディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2023561902
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 IL2022050714
(87)【国際公開番号】W WO2023281499
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-10-06
(32)【優先日】2021-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518105275
【氏名又は名称】ルーマス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エイタン・ロネン
(72)【発明者】
【氏名】ロネン・クリキ
(72)【発明者】
【氏名】ヨチェイ・ダンジガー
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0299678(US,A1)
【文献】特開2016-212147(JP,A)
【文献】特表2018-534597(JP,A)
【文献】特表2020-510849(JP,A)
【文献】国際公開第2022/163672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01,27/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの眼に画像を提供するためのディスプレイであって、前記ディスプレイは、
(a)複合導光配置であって、
(i)一対の相互平行主表面を有して前記主表面での内部反射によって光を誘導するための透明材料のブロックを備える第1の導光光学素子と、
(ii)一対の相互平行主表面を有して前記主表面での内部反射によって光を誘導するための透明材料のブロックを備える第2の導光光学素子であって、前記第1の導光光学素子及び前記第2の導光光学素子は、前記主表面が並置された状態で積層されている、第2の導光光学素子と、を備える複合導光配置と、
(b)視野角を有するコリメートされた画像に対応する画像照明を投影するように構成された画像プロジェクタであって、前記画像プロジェクタは、前記画像照明の第1の部分を導入して前記第1の導光光学素子内の内部反射によって伝搬させるように、かつ前記画像照明の第2の部分を導入して前記第2の導光光学素子内の内部反射によって伝搬させるように、前記複合導光配置に光学的にカップリングされている、画像プロジェクタと、を備え、
前記第1の導光光学素子は、前記第1の導光光学素子の前記主表面間に配備され、かつ前記主表面に対して斜めに角度が付けられた、第1の複数の相互平行部分反射表面を備える第1のカップリングアウト構成を含み、前記第1の複数の部分反射表面は、前記ユーザの前記眼によって視認するための前記画像照明の前記視野の第1の部分をカップリングアウトするために、前記複合導光配置の第1の領域に位置し、
前記第2の導光光学素子は、前記第2の導光光学素子の前記主表面間に配備され、かつ前記主表面に対して斜めに角度が付けられた、第2の複数の相互平行部分反射表面を備える第2のカップリングアウト構成を含み、前記第2の複数の部分反射表面は、前記ユーザの前記眼によって視認するための前記画像照明の前記視野の第2の部分をカップリングアウトするために、前記第1の複数の部分反射表面に非平行であり、かつ前記第1の領域と少なくとも部分的に重なり合わずに前記複合導光配置の第2の領域に位置し、
前記画像プロジェクタの前記複合導光配置への光学的カップリングと、前記第1複数の部分反射表面及び第2の複数の部分反射表面の配備とは、前記画像プロジェクタから平行に発生し、前記第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子にそれぞれカップリングされる第1の画像照明光線及び第2の画像照明光線が、前記第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子内で異なる角度で伝搬するが、前記第1の複数の部分反射表面及び第2の複数の部分反射表面によって平行光線としてそれぞれカップリングアウトされるようなものである、ディスプレイ。
【請求項2】
前記画像プロジェクタは、前記画像照明を、前記主表面のうちの1つを介して前記複合導光配置に注入し、前記画像照明の前記第1の部分は、第1の反射体によって前記第1の導光光学素子にカップリングされ、前記画像照明の前記第2の部分は、第2の反射体によって前記第2の導光光学素子にカップリングされている、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記第1の反射体及び前記第2の反射体は、非平行である、請求項2に記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記第1の反射体及び前記第2の反射体は、重なり合わない関係にある全反射体である、請求項2に記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記第2の反射体は、部分反射体であり、光は、前記第2の反射体を通過した後に前記第1の反射体に到達する、請求項2に記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記第2の反射体は、前記第2の導光光学素子の内部にあり、前記第1の反射体は、前記画像プロジェクタからより遠くにある、前記第1の導光光学素子の前記主表面に取り付けられたプリズムの表面に関連付けられている、請求項2に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記第1の反射体の角度の微調整を可能にするための調整機構を更に備える、請求項6に記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記第1の導光光学素子及び前記第2の導光光学素子は、空隙によって分離されている、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記並置された主表面の各々は、反射防止コーティングが施されている、請求項8に記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子の前記透明材料は、第1の屈折率を有し、前記第1の導光光学素子及び前記第2の導光光学素子は、前記第1の屈折率より低い第2の屈折率を有する材料の層によって分離されている、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項11】
前記並置された主表面の各々は、反射防止コーティングが施されている、請求項10に記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記第1の導光光学素子及び前記第2の導光光学素子の前記並置された主表面のうちの少なくとも1つは、前記主表面に対する法線に対して60度よりも大きい入射角に対して完全に反射性であり、前記法線に対して15度よりも小さい入射角に対して低い反射率を有するように構成された、角度選択的多層誘電体コーティングが施されている、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項13】
前記第1の導光光学素子は、前記第1の導光光学素子の前記主表面間に配備された第1の一組の相互平行部分反射偏向表面を含み、前記第1の一組の偏向表面は、前記第1の導光光学素子内を伝搬する前記画像照明の前記第1の部分を前記第1の複数の部分反射表面に向かって漸進的に偏向させるように配備されており、
前記第2の導光光学素子は、前記第2の導光光学素子の前記主表面間に配備された第2の一組の相互平行部分反射偏向表面を含み、前記第2の一組の偏向表面は、前記第2の導光光学素子内を伝搬する前記画像照明の前記第2の部分を前記第2の複数の部分反射表面に向かって漸進的に偏向させるように配備されている、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項14】
前記第1の一組の偏向表面と前記主表面との平面の交差線は、前記第2の一組の偏向表面と前記主表面との平面の交差線と非平行である、請求項13に記載のディスプレイ。
【請求項15】
前記第1の導光光学素子は、前記第1の一組の偏向表面に平行であり、かつ前記第1の導光光学素子内を伝搬する前記画像照明の前記第1の部分を前記第1の一組の偏向表面に向かって偏向させるように配備された、第1の内部反射表面を含み、
前記第2の導光光学素子は、前記第2の一組の偏向表面に平行であり、かつ前記第2の導光光学素子内を伝搬する前記画像照明の前記第2の部分を前記第2の一組の偏向表面に向かって偏向させるように配備された、第2の内部反射表面を含む、請求項13に記載のディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイに関し、具体的には、画像視野の異なる部分を提供する積層導光光学素子を有するディスプレイに関する。
【0002】
ある特定のヘッドアップディスプレイ、特に、ニアアイディスプレイは、内部反射によって光を誘導する平行な外部主表面と、主表面に斜めに角度を付けられた一組の部分反射内部表面と、を有する透明材料ブロックとして形成された導光光学素子(LOE)を用いる。コリメートされた画像は、画像プロジェクタによって生成され、LOE(「導波路」又は「基板」とも称される)内に注入され、部分反射内部表面によってユーザの眼に向かって漸進的にカップルアウトされるまで、内部反射によってLOE内を伝搬する。この種の導波路の実施例は、PCT特許出願公開第03/081320A1号に見出され得る。
【0003】
このような配置によって表示することができる視野の角度寸法は、内部反射によって伝搬するように導波路内に捕捉することができる角度の範囲、及び導波路内の画像とその共役体との間の重なり合いの回避などの幾何学的光学的考慮事項によって制限される。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ユーザの眼に画像を提供するためのディスプレイである。
【0005】
本発明の実施形態の教示によれば、ユーザの眼に画像を提供するためのディスプレイが提供され、本ディスプレイは、(a)複合導光配置であって、(i)一対の相互平行主表面を有して主表面での内部反射によって光を誘導するための透明材料のブロックを備える第1の導光光学素子と、(ii)一対の相互平行主表面を有して主表面での内部反射によって光を誘導するための透明材料のブロックを備える第2の導光光学素子であって、第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子は、主表面が並置された状態で積層されている、第2の複合導光配置と、を備える複合導光配置と、(b)視野角を有するコリメートされた画像に対応する画像照明を投影するように構成された画像プロジェクタであって、画像プロジェクタは、画像照明の第1の部分を導入して第1の導光光学素子内の内部反射によって伝搬させるように、かつ画像照明の第2の部分を導入して第2の導光光学素子内の内部反射によって伝搬するように、複合導光配置に光学的にカップリングされている、画像プロジェクタと、を備え、第1の導光光学素子は、第1の導光光学素子の主表面間に配備され、かつ主表面に対して斜めに角度を付けられた、第1の複数の相互平行部分反射表面を備える第1のカップリングアウト構成を含み、第1の複数の部分反射表面は、ユーザの眼によって視認するための画像照明の視野の第1の部分をカップリングアウトするために、複合導光配置の第1の領域に位置し、第2の導光光学素子は、第2の導光光学素子の主表面の間に配備され、かつ主表面に対して斜めに角度を付けられた、第2の複数の相互平行部分反射表面を備える第2のカップリングアウト構成を含み、第2の複数の部分反射表面は、ユーザの眼によって視認するための画像照明の視野の第2の部分をカップリングアウトするために、第1の複数の部分反射表面に非平行であり、かつ第1の領域と少なくとも部分的に重なり合わずに複合導光配置の第2の領域に位置し、画像プロジェクタの複合導光配置への光学的カップリングと、第1の複数の部分反射表面及び第2の複数の部分反射表面の配備とは、画像プロジェクタから平行に発生し、第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子にそれぞれカップリングされる第1の画像照明光線及び第2の画像照明光線が、第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子内で異なる角度で伝搬するが、第1の複数の部分反射表面及び第2の複数の部分反射表面によって平行光線としてそれぞれカップリングアウトされるようなものである。
【0006】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、画像プロジェクタは、画像照明を主表面のうちの1つを介して複合導光配置に注入し、画像照明の第1の部分は、第1の反射体によって第1の導光光学素子にカップリングされ、画像照明の第2の部分は、第2の反射体によって第2の導光光学素子にカップリングされている。
【0007】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、第1の反射体及び第2の反射体は、非平行である。
【0008】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、第1の反射体及び第2の反射体は、重なり合わない関係にある全反射体である。
【0009】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、第2の反射体は、部分反射体であり、光は第2の反射体を通過した後に第1の反射体に到達する。
【0010】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、第2の反射体は、第2の導光光学素子の内部にあり、第1の反射体は、画像プロジェクタからより遠くにある、第1の導光光学素子の主表面に取り付けられたプリズムの表面に関連付けられている。
【0011】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、第1の反射体の角度の微調整を可能にするための調整機構も設けられている。
【0012】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子は、空隙によって分離されている。
【0013】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子の透明材料は、第1の屈折率を有し、第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子は、第1の屈折率よりも低い第2の屈折率を有する材料の層によって分離されている。
【0014】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、並置された主表面の各々は、反射防止コーティングが施されている。
【0015】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子の並置された主表面のうちの少なくとも1つは、主表面に対する法線に対して60度よりも大きい入射角に対して完全に反射性であり、法線に対して15度よりも小さい入射角に対して低い反射率を有するように構成された、角度選択的多層誘電体コーティングが施されている。
【0016】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、第1の導光光学素子は、第1の導光光学素子の主表面間に配備された第1の一組の相互平行部分反射偏向表面を含み、第1の一組の偏向表面は、第1の導光光学素子内を伝搬する画像照明の第1の部分を第1の複数の部分反射表面に向かって漸進的に偏向させるように配備され、第2の導光光学素子は、第2の導光光学素子の主表面間に配備された第2の一組の相互平行部分反射偏向表面を含み、第2の一組の偏向表面は、第2の導光光学素子内を伝搬する画像照明の第2の部分を第2の複数の部分反射表面に向かって漸進的に偏向させるように配備されている。
【0017】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、第1の一組の偏向表面と主表面との平面の交差線は、第2の一組の偏向表面と主表面との平面の交差線と非平行である。
【0018】
本発明の実施形態の更なる形体によれば、第1の導光光学素子は、第1の一組の偏向表面に平行であり、かつ第1の導光光学素子内を伝搬する画像照明の第1の部分を第1の一組の偏向表面に向かって偏向させるように配備された、第1の内部反射表面を含み、第2の導光光学素子は、第2の一組の偏向表面に平行であり、かつ第2の導光光学素子内を伝搬する画像照明の第2の部分を第2の一組の偏向表面に向かって偏向させるように配備された、第2の内部反射表面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明を、添付の図面を参照して、実施例として本明細書に説明する。
【0020】
【
図1】本発明の実施形態の教示に従って構築され、かつ動作可能であるディスプレイの概略側面図であり、プロジェクタからユーザの眼に画像を伝達するために導光光学素子(LOE)のスタックを用い、各LOEは、視野の異なる部分を伝達する。
【
図2】カップリングインされた光線がカップリングアウトされた光線に非平行であり、投影画像の平行画像光線がカップリングアウトされた画像において平行なままである実装形態を例解する、
図1と同様の図である。
【
図3】重なり合っている部分反射カップリングイン反射体を使用することによって達成される、縮小寸法カップリングイン開口を例解する、
図1と同様の図である。
【
図4A】1つのLOE上の外部プリズム上のカップリングイン反射体の実装形態を例解する、
図3と同様の図である。
【
図4B】
図4Aと同様の図であり、外部プリズムは、外部反射表面とともに使用されている。
【
図4C】
図4Bと同様の図であり、外部反射体表面は、リスレーウェッジ-プリズム対の使用によって調整可能にされている。
【
図5A】それぞれ、二次元における開口拡大を可能にするための本発明のディスプレイの更なる実施形態による、第2のLOE、第1のLOE、並びに第1のLOE及び第2のLOEから組み立てられた積層の正面図である。
【
図5B】それぞれ、二次元における開口拡大を可能にするための本発明のディスプレイの更なる実施形態による、第2のLOE、第1のLOE、並びに第1のLOE及び第2のLOEから組み立てられた積層の正面図である。
【
図5C】それぞれ、二次元における開口拡大を可能にするための本発明のディスプレイの更なる実施形態による、第2のLOE、第1のLOE、並びに第1のLOE及び第2のLOEから組み立てられた積層の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ユーザの眼に画像を提供するためのディスプレイである。
【0022】
本発明によるディスプレイの原理及び動作は、図面及び添付の説明を参照することによって、より良好に理解され得る。
【0023】
ここで図面を参照すると、
図1~5は全て、本発明の教示に従って構築され、かつ動作可能な、ユーザの眼に画像を提供するためのディスプレイの実装形態を示しており、眼は、ディスプレイが完全な画像を提供するように設計されている眼の位置の範囲を示す101と表示された領域に位置すると想定され、「アイモーションボックス」(EMB)と称される。概して言えば、ディスプレイは、第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子(「LOE」、互換的に「導波路」と称される)10及び20を有する複合導光配置を含み、各々は、一対の相互平行主表面(LOE10の場合は13及び14、LOE20の場合は23及び24)を有する透明材料のブロックとして形成されている。
【0024】
2つのLOE10及び20は、主表面14及び23が、それらが別個の導波路としてその特性を保持するような様式で並置された状態で積層され、主表面における内部反射によって各LOE内での光の伝搬を誘導する。これは、並置された表面間に空隙を維持することによって、異なる材料シート又は低屈折率接着剤の層のいずれかとして、より低い屈折率を有する材料の介在層を提供することによって、又は典型的には、多層誘電体コーティングの形態で、TIR特性を模倣する並置された表面の一方又は両方上にコーティングを施すことによって行われ得る。「並置された」又は「隣接する」という用語は、主表面が空気空間によって分離された非接触近接状態にあるか、介在する材料層によって分離されているか、又は直接接触しているかにかかわらず、上記の選択肢の全てを包含するために使用される。全ての場合において、好ましくは、ディスプレイを通した外部シーンの視認を可能にするように、典型的には、反射防止コーティングを塗布することによって、垂直に比較的近い角度で複合導光配置を通過する光に対して比較的高い透過率が維持される。
【0025】
視野角を有するコリメートされた画像に対応する画像照明を投影するように構成された画像プロジェクタ100は、画像照明の第1の部分を導入して第1のLOE10内の内部反射によって伝搬させ、かつ画像照明の第2の部分を導入して画像照明の第2のLOE20内の内部反射によって伝搬させるように、複合導光配置に光学的にカップリングされている。画像プロジェクタ100を複合導光配置に光学的にカップリングするためのカップリングイン配置の様々な実装形態を以下で考察する。
【0026】
第1のLOE10は、主表面13及び14の間に配備され、かつ主表面13及び主表面14に対して斜めに角度を付けられた、第1の複数の相互平行部分反射表面11を有する第1のカップリングアウト構成を含む。第1の複数の部分反射表面11は、ユーザの眼によって視認するための画像照明の視野の第1の部分をカップリングアウトするために、複合導光配置の第1の領域に位置する。
【0027】
第2のLOE20は、主表面23と24との間に配備され、かつ主表面23及び主表面24に対して斜めに角度を付けられた、第2の複数の相互平行部分反射表面21を有する第2のカップリングアウト構成を含む。第2の複数の部分反射表面21は、ユーザの眼によって視認するための画像照明の視野の第2の部分をカップリングアウトするために、第1の複数の部分反射表面11に非平行であり、かつ、第1の領域と少なくとも部分的に重なり合わない複合導光配置の第2の領域に位置する。
【0028】
画像プロジェクタ100の複合導光配置への光学的カップリングと、第1の複数の部分反射表面11及び第2の複数の部分反射表面21の配備とは、画像プロジェクタ100から平行に発生し、第1の導光光学素子10及び第2の導光光学素子20にそれぞれにカップリングされる第1の画像照明光線15及び第2の画像照明光線25が、第1の導光光学素子及び第2の導光光学素子内で異なる角度で伝搬するが、第1の複数の部分反射表面11及び第2の複数の部分反射表面21によって平行光線16及び26としてそれぞれカップリングされるようなものである。
【0029】
この点で、本発明が、いくつかの有意な利点を提供することが、既に理解されるであろう。具体的には、各導波路は、視野角のサブ領域のみを伝達することが要求されるため、カップリングアウト構成の部分反射表面、及び様々な他の構成要素に用いられる角度選択的コーティングの設計要件が緩和される。具体的には、各カップリングアウト表面は、好ましくは、所望の画像に対応する角度の範囲で赤色、緑色及び青色の光に対して部分的に反射性である一方で、共役画像に対応する角度の範囲で赤色、緑色及び青色に対して高度に透過性(反射防止性)である。これらの特性が画像の視野の一部にのみ要求される場合、設計要件はかなり緩和される。追加的に、又は代替的に、ディスプレイは、TIRの角度制限、並びに/又は導波路の中心表面を交差し、かつそれ自体の上で折り畳まれる、及び/若しくは画像の一部を反射して(すなわち、伝達の画像部分の一部が部分反射カップリングアウト表面のうちの1つに平行に伝搬するときに)別の部分と重なり合うように内部表面によって反射されることによって形成されるゴーストに起因して、単一の導波路によって伝達され得るよりも大きい視野を伝達するように実装することができる。各導波路において、その導波路によって送達される必要がないFOVの部分は、アイモーションボックスにおいて可視である画像の品質に影響を及ぼすことなく、TIRから逃れることが可能であるか、又は画像の一部が画像の共役体上で折り畳まれた状態で、のいずれかで、これらの角度制限を超えることを可能にすることができる。
【0030】
同時に、画像の全ての部分が単一の画像プロジェクタから生じるという事実は、製造コストを低く保ち、表示される画像の異なる部分間の位置合わせを維持するタスクを簡素化する。本発明のこれら及び他の利点は、以下に詳述される例からより明確になるであろう。
【0031】
ここで
図1を参照すると、これは、2つのLOE10及び20を有する、上で説明されるディスプレイの実装形態を例解しており、各々は、ガラスなどの透明材料、又は導波路伝搬をサポートするのに十分な屈折率を有する他の材料のスラブ構造として形成されている。述べられるように、各LOEは、2つの主平行表面13及び14(第2のLOE20については23及び24)と、主表面に対して斜角で部分反射コーティングを有する一組の内側平行表面11(第2のLOEについては21)と、を有する。LOEはまた、任意選択的に、出力強度分布を均一化するために、部分反射を有する主表面と平行な内部表面19、29を含む。この内部表面の特に好ましい実装形態は、導波路内を伝搬する画像照明に対応する角度の範囲に対してほぼ50%の反射率を有し、導波路を通る垂直により近い視野角で低い反射率(反射防止性)を有する、導波路の中間平面における表面である。
【0032】
本発明のデバイスとともに用いられる画像プロジェクタ100(互換的に、「POD」と称される)は、好ましくは、コリメートされた画像、すなわち、各画像画素の光が、画素位置に対応する角度方向を有する、無限遠にコリメートされた平行ビームである画像を生成するように構成されている。したがって、画像照明は、二次元の視野角に対応する角範囲に及ぶ。画像プロジェクタ100は、典型的にはLCOSチップなどの空間光変調器を照明するために配備された、少なくとも1つの光源を含む。空間光変調器は、画像の各画素の投影強度を変調し、それによって、画像を生成する。代替的に、画像プロジェクタは、レーザ光源からの照明をプロジェクタの画像平面にわたって走査しながら、ビームの強度を画素ごとに運動と同期して変化させ、それによって各ピクセルに対して所望の強度を投影する、典型的には1つ以上の高速走査ミラーを用いて実装される走査配置を含み得る。どちらの場合も、無限遠にコリメートされる出力投影画像を生成するために、コリメート光学系が設けられる。上記構成要素のいくつか又は全ては、典型的には、当技術分野で周知であるように、1つ以上の偏光ビームスプリッタ(PBS)キューブ又は他のプリズム構成の表面上に配置される。
【0033】
ここに例解される特に好ましい実装形態では、画像プロジェクタ100は、主表面24のうちの1つを介して、画像照明を複合導光配置に注入する。この場合、画像照明の第1の部分は、第1の反射体12によって第1の導光光学素子10にカップリングされ、画像照明の第2の部分は、第2の反射体22によって第2の導光光学素子20にカップリングされている。
【0034】
表面11及び21は平行ではなく、カップリングイン反射体12及び22は平行ではないが、これらの表面とLOEの主表面との間の絶対角度が等しい(すなわち、表面12と14との間及び表面11と14との間の絶対角度が等しく、表面22と24との間及び表面21と24との間の角度も等しい)場合、両方のLOEに入る平行光線15及び25は、同様に平行に内側表面アレイから出射することになる(光線16及び26)。それは、各LOEによって誘導されるFOVが、傾斜した内側表面の異なる角度に起因して異なるが、起こることになる。
【0035】
更に、
図2に示されるように、入力カップリング表面及び出力カップリング表面アレイが主表面に対して平行でないか又は同じ絶対角度ではない場合でも、角度差が両方のLOEに対して同じである限り、両方のLOEに入射する平行光線15及び25は、入射した角度とは異なる角度であるが、平行に内側部分反射表面アレイからLOEを出射する(光線16及び26)(すなわち、光線15及び16は、この図では平行ではない)。
【0036】
図1及び2の例示的な実装形態では、第1の反射体12及び第2の反射体22は、重なり合わない関係にある全反射体である。この場合、2つのLOEの入力開口幅は、各入力開口の合計にほぼ等しい。
【0037】
図3によって例示される代替的な一組の実装形態では、第2の反射体22は、部分反射体であり、光は、第2の反射体22を通過した後に第1の反射体12に到達する。
図3の場合、反射体12及び22は、LOE内、すなわち、対応する主表面の平面の間に一体化された内部反射体である。入力開口の空間的重なり合いは、全体的な入力開口幅を低減させる。この実装形態の場合、カップリングイン表面反射率は、画像プロジェクタにより近いLOEに対して50%に設定されるべきである。これにより、
図3では、表面12及び22は重なり合っており、表面22は、およそ50%の反射率を有するべきである。
【0038】
図4A~4Cに例解される変形的な一組の実装形態では、第2の反射体22は、第2のLOE20の内部にある一方で、第1の反射体は、直接的又は間接的に、画像プロジェクタ100からより遠くにある、第1のLOE120の主表面13に取り付けられたプリズム120の表面に関連付けられている。
【0039】
具体的には、
図4Aの場合、プリズム120は、LOE10に糊着され、光は、プリズム120の表面121によって、反射され、LOEにカップリングされている。
【0040】
図4Bに例解される更なる選択形態では、プリズム上に直接形成される反射表面の代わりに、プリズム120は、「第1の反射体」として機能する外部反射体表面122と協働し得、その結果、
図4Bに示されるように、光は、LOEの内側に誘導されるように、プリズム120から出射し、外部表面122から反射され、プリズム120に再入射し、光線15は、プリズム120を介して外部表面122によってLOE10に反射される。この場合、表面121には、AR(反射防止)コーティングが施され得る。任意選択的に、外部反射体表面122の位置決めは、表面123及び124のようないくつかの関連付けられた表面の、光学的に活性でない(すなわち、画像プロジェクタからEMBに到達する光が、伝搬するときにこれらの表面に衝突しない)領域上のLOE10及び/又はプリズム120への接着取り付けによって固定され得る。
【0041】
ある特定の特に好ましい実装形態では、本発明のディスプレイは、第1の反射体の角度の微調整を可能にするための調整機構を備え得る。これにより、
図4Bの実装形態では、両方のLOEを出射する光線の平行性を確保するために、アクティブ位置合わせシステム及びプロセスが使用され得る。このような位置合わせ手順では、単一のコリメートされた光ビームが両方のLOEにカップリングされる。ビームはまた、部分反射内部表面11及び21のアレイによってLOEからカップリングアウトされるように、出力において測定される。21と22との間の角度差が11と12との間の角度差に等しくない場合、LOE10を離れる光線は、LOE20の光線に平行ではないことになる。
図4Bのように外部ミラーが使用される場合、光線16と26との間の平行が到達されるまで、好適な調整機構を使用して、ミラーのピッチ及びヨーを傾斜させることができ、次いで、反射体122の配向を維持するために表面123及び124を糊着することによって位置が固定される。
【0042】
更に、
図4Aに示されるように、一体化された反射表面121を有するプリズム120の場合でさえ、LOE10に一時的に糊着することができる小さな角度差を有する一組の交換可能プリズムを提供することによって、同様のアクティブ位置合わせプロセスを実装することができ、光線16と26との間の角度差が最も近いプリズムが、LOE10に永久に糊着されるように選択される。
【0043】
LOE10の第1の反射体入力カップリング表面の配向を調整するための代替的な機構及び対応する方法を、
図4Cに例解する。この場合、プリズム120の上部には、2つのウェッジ状ウィンドウ130及び140が糊着されている。これらの2つのウェッジ状ウィンドウは、リスレープリズム対として機能する。典型的なウェッジ値は、1度であり、αと示されている。図面では、説明を明確にするために角度が誇張して示されている。2つのウェッジウィンドウが、図示されるように、互いに反対に配向されたウェッジを有する場合、反射外側表面141は、プリズム120の外側表面に対して平行である。ウィンドウ130に対してウィンドウ140を回転させることによって、プリズム120の表面と反射表面141との間の角度は、2αまで変化させることができる。これにより、プリズム140を連続的に回転させることよって、この範囲内の任意の極角度が得られ得る。プリズム120の表面に対してウィンドウ130を回転させる(ウィンドウ140とともに)ことによって、方位角調整を得ることができる。これにより、第1の反射体表面141の任意の所望の配向は、2つのウェッジウィンドウの好適な回転によって得ることができ、それによって、上で説明されるようなアクティブ位置合わせプロセスを容易にする。次いで、2つのウェッジウィンドウは、任意の適切な形態の取り付けによって、典型的には、光学接着剤の使用によって、それらの最適な位置に固定される。全ての中間表面は、好ましくは、ゴースト画像につながり得る望ましくない反射を最小限に抑えるために、ARコーティングが施されている。
【0044】
ここで、
図5A~6Cを参照すると、本発明は、これまでのところ、一次元で画像プロジェクタの光学的開口の拡大を行うデバイスのコンテキストで例解してきたが、本発明は、開口拡大を二次元で行うLOEのコンテキストで有利に実装することもできる。このような実装形態の場合、第1の導光光学素子10は、好ましくは、第1の導光光学素子10の主表面13、14の間に配備された、第1の一組の相互平行部分反射偏向表面17を含む。第1の一組の偏向表面17は、第1の導光光学素子内を伝搬する画像照明を第1の複数の部分反射表面11に向かって漸進的に偏向させるように配備されている。同様に、第2の導光光学素子20は、第2の導光光学素子20の主表面23、24の間に配備された、第2の一組の相互平行部分反射偏向表面27を含む。第2の一組の偏向表面27は、第2の導光光学素子内を伝搬する画像照明の一部を第2の複数の部分反射表面21に向かって漸進的に偏向させるように配備されている。
【0045】
図5A~6Cの特に好ましいが非限定的な例示的な実装形態では、第1のLOE10は、第1の一組の偏向表面17に平行であり、かつ第1の導光光学素子内を伝搬する画像照明の一部を第1の一組の偏向表面に向かって偏向させるように配備された、第1の内部反射表面18を含む。同様に、第2のLOE20は、第2の一組の偏向表面27に平行であり、第2の導光光学素子内を伝搬する画像照明の一部を第2の一組の偏向表面に向かって偏向させるように配備された、第2の内部反射表面28を含む。
【0046】
提示の簡略化のために、
図5A及び6Aは、それぞれ、第2のLOE20の正面図及び側面図を示し、
図5B及び6Bは、第1のLOE10の同様の図を示し、
図5C及び6Cは、組み立てられたディスプレイの対応する図を示す。第2のLOE20の形体は、積層されたときの形体の区別を容易にするために、破線で示されている。
【0047】
これにより、
図1~4Cの構造によって達成されるX方向におけるLOEの開口拡大に加えて、この実施形態は、Y方向に沿った開口拡大の追加の寸法を達成する。偏向表面17及び27は、部分反射表面であり、内部反射性表面18及び28は、それぞれの偏向表面に平行であるが、好ましくは全反射体である。表面22によって画像プロジェクタ100からカップリングインされて第2のLOE20によって誘導される光は、偏向表面27に向かって偏向されるように表面28によって反射され、そこで、表面27によって漸進的に偏向され反射される。表面27及び28は全て平行であるため、アレイ27の表面から最終的に偏向された光線は、表面22によってLOEにカップリングされる光に平行であることになる。同じことが、LOE10内の表面18及び17によって偏向される光線にも当てはまる。これにより、表面27及び17は、平行でない場合があるが、第1のLOE10及び第2のLOE20にカップリングされる平行光線は、依然として平行に発生し得る。
【0048】
ある特定の実装形態では、第1の一組の偏向表面17の平面と主表面13、14との交差線は、第2の一組の偏向表面27の平面と主表面との交差線と非平行である。
【0049】
ある特定の実装形態では、第1の一組の偏向表面17及び/又は第2の一組の偏向表面27は、LOEの主表面に直交している。この場合、直接画像及びその共役体の両方が、これらの表面によって偏向され、アウトカップリング領域に向かって方向転換される。代替的な実装形態では、第1の一組の偏向表面17及び/又は第2の一組の偏向表面27は、LOEの主表面に対して斜めである。この場合、1つの画像(一次画像又はその共役体のいずれか)のみが、カップリングアウト領域に向かって漸進的に偏向される一方で、表面は、好ましくは、望ましくない画像に対応する入射角の範囲で実質的に透明になる。
【0050】
実装形態の詳細-コーティング
本明細書に説明される様々な実施形態の最適な実装形態のために、要素間の様々な表面及び界面は、最も好ましくは、角度選択特性を付与されている。これらの特性は、特定の厚さの一連の層が所望の特性を提供する多層誘電体コーティングを設計及び実装するための確立された技術を使用して好都合に生成することができる。
【0051】
既に述べたように、2つのLOEの並置された表面に関して、これは、主表面での内部反射によって各LOE内での光の伝搬を誘導する、別個の導波路としてそれらの特性を保持するように行われる。これは、並置された表面間の空隙を維持することによって、又は材料の別個のシート若しくは低屈折率接着剤の層のいずれかとして、より低い屈折率を有する材料の介在層を提供することによって行われ得る。代替的に、LOEの機能的分離は、典型的には、多層誘電体コーティングの形態で、TIR特性を模倣する、並置された表面の一方又は両方にコーティングを施すことによって確保することができる。これにより、並置された主表面のうちの少なくとも1つ、及び最も好ましくは、両方に、主表面に対する法線に対して、60度を超える、より好ましくは50度を超える、場合によっては、約40度以上の入射角に対して完全に反射性(例えば、95%以上の反射性)である一方で、法線に対して、15度未満、より好ましくは約30度までの入射角に対して好ましくは5%未満の低い反射率を有するように構成された、角度選択的多層誘電体コーティングが施されている。
【0052】
いずれの場合も、主表面に対する法線に対して比較的低い角度で複合導波路を通して見るユーザの可視性は、好ましくは、全ての表面及び界面上に反射防止コーティングを含むことによって、高度に透明に維持される。
【0053】
同様に、均質化表面19及び29は、使用される場合、好ましくは、画像照明がLOE内を伝搬する角度の範囲内で所望の(典型的には、ほぼ50%)反射率を有する一方で、小さい(垂直に近い)角度で反射防止性である。
【0054】
カップリングアウト部分反射表面はまた、好ましくは、画像の所望の部分に対応する入射角で部分反射する一方で、共役画像に対しては反射防止する。所望の画像の反射率の割合はまた、連続する表面間で連続的に増加し得る。
【0055】
上記の特性の全ては、最も好ましくは、異なる色に対して実質的に均一であり、各LOEを介したカラー画像の視野の関連部分の表示を可能にする。
【0056】
上記の説明は、実施例として機能することのみを意図しており、添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の範囲内で、他の多くの実施形態が可能であることが理解されるであろう。