(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】耐油剤組成物及び耐油製品
(51)【国際特許分類】
D21H 21/14 20060101AFI20240422BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20240422BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240422BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20240422BHJP
C09D 133/02 20060101ALI20240422BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20240422BHJP
C09D 133/24 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
D21H21/14 Z
D21H19/20 A
C09K3/00 112Z
C09D133/04
C09D133/02
C09D133/14
C09D133/24
(21)【出願番号】P 2023564081
(86)(22)【出願日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2023018639
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2022090335
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591018051
【氏名又は名称】明成化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】古澤 浩基
(72)【発明者】
【氏名】大久保 和紀
(72)【発明者】
【氏名】松村 達也
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/094437(WO,A1)
【文献】特開平01-148550(JP,A)
【文献】特開平11-247099(JP,A)
【文献】国際公開第2023/182272(WO,A1)
【文献】特開2019-99953(JP,A)
【文献】特開2010-13792(JP,A)
【文献】特開2019-99950(JP,A)
【文献】特開2003-55152(JP,A)
【文献】特開2000-345097(JP,A)
【文献】特表2023-501677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/00
C09K 3/00
C09K 3/20- 3/22
D21B 1/00~D21J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1~60の炭化水素基と、中和された酸性官能基とを、少なくとも構成単位中に有する非フッ素系化合物を含み、かつ、
非フッ素系化合物は、前記中和された酸性官能基の占める割合が0.4~21質量%であり、
前記非フッ素系化合物が
、下記高分子化合物1、高分子化合物2、高分子化合物3及び高分子化合物4から選択される少なくとも1種であ
る高分子化合物を含有し、
前記高分子化合物1、前記高分子化合物2、前記高分子化合物3及び前記高分子化合物4から選択される少なくとも1種の前記高分子化合物が、ノニオン性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む共重合体であって、前記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体が、ノニオン性官能基としての水酸基を有する不飽和単量体である場合には、前記酸性官能基を有する不飽和単量体に対する前記水酸基を有する不飽和単量体の質量比(水酸基を有する不飽和単量体/酸性官能基を有する不飽和単量体)が、2.6以下であり、
食品接触用途かつ紙用途で使用される、非フッ素系耐油剤組成物。
高分子化合物1:
下記一般式(1-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体、及び酸性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む共重合体であって、
CH
2=C(-X)-C(=O)-Y-R
A ・・・(1-1)
[式中、Xは、水素原子、メチル基及びエチル基から選ばれる1価の有機基、ハロゲン原子(フッ素原子を除く)、シアノ基または基-CH
2-C(=O)-Y-R
Aであり、Yは、-O-及び-NH-から選択された少なくとも1つの基を有する2価~4価の連結基または-NR
A-であり、R
Aは、不飽和結合を1つ以上有してもよい炭素数4~50の脂肪族炭化水素基である。なお、YおよびR
Aが、それぞれ分子中に複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていてもよい。]
前記共重合体を構成する単量体成分の全量(中和剤の質量は含まない)を基準として、前記一般式(1-1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有割合が、30~99.5質量%である。
高分子化合物2:
下記一般式(1-2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体、及び酸性官能基を有する不飽和単量体及びノニオン性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む共重合体である。
CH
2=C(-X)-C(=O)-Y-R
B ・・・(1-2)
[式中、Xは、水素原子、メチル基及びエチル基から選ばれる1価の有機基、ハロゲン原子(フッ素原子を除く)、シアノ基または基-CH
2-C(=O)-Y-R
Bであり、Yは、-O-及び-NH-から選択された少なくとも1つの基を有する2価~4価の連結基または-NR
B-であり、R
Bは、炭素数1~60の炭化水素基である。なお、YおよびR
Bが、それぞれ分子中に複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていてもよい。]
高分子化合物3:
ソルビタントリステアレートメタクリレート、ソルビタントリステアレートウレタンメタクリレート、ソルビタントリステアレートウレタンスチレンモノマー及びソルビタントリオレエートメタクリレートから選択される単量体、及び酸性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む共重合体である。
高分子化合物4:
下記一般式(2)で表されるスルホンアミド基含有単量体、及び酸性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む共重合体である。
CH
2=CA
1-C(=O)-O-R
1-A
2-R
2 ・・・(2)
[式中、A
1は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、A
2は、-NH-SO
2-または-SO
2-NH-であり、R
1は炭素数1~5の炭化水素基であり、R
2は炭素数1~60の炭化水素基である。]
【請求項2】
前記非フッ素系化合物が、前記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体に由来する構造を含む、請求項
1に記載の非フッ素系耐油剤組成物。
【請求項3】
前記ノニオン性官能基が、水酸基、フェノール性水酸基、ニトリル基、アミド基、(チオ)ウレタン基、(チオ)ウレア基、(チオ)カーボネート基、及びエステル基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項
2に記載の非フッ素系耐油剤組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の非フッ素系化合物が、基材の表面及び内部の少なくとも一方に存在する、耐油製品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の非フッ素系化合物を含む耐油紙であって、
TAPPI UM-557の規定に準じて測定された前記耐油紙の平面部のキット値が、1~6である耐油紙。
【請求項6】
JIS P 8117:2009の規定に準じて測定された前記耐油紙のガーレー透気度が1000秒以下である、請求項
5に記載の耐油紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐油剤組成物及びそれを用いて得られる耐油製品(特に耐油紙)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維分野、紙分野などの様々な分野において、基材に防汚機能を付与するための検討が行われている。防汚機能としては、撥水性による水性汚れの付着防止(浸透防止)、撥油性又は耐油性による油性汚れの付着防止(浸透防止)、洗濯等による付着した汚れの除去などが挙げられる。
【0003】
従来、優れた撥水性や撥油性、耐油性を付与できることから、パーフルオロアルキル基を有する化合物が使用されてきた。しかしながら、近年、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)の毒性や環境残留性が問題視され、これらを含む薬剤、及び環境放出後に分解生成する可能性のある薬剤の使用が避けられるようになってきている。さらには、フッ素系化合物自体を使用しない非フッ素系化合物から構成される薬剤への代替が進められている。
【0004】
前記防汚機能のうち、撥油性及び耐油性についてはパーフルオロアルキル基の特性に依存する面が大きく、非フッ素系薬剤への切り替えは難航している。
【0005】
このような薬剤が使用される耐油製品としては、例えば、耐油紙が挙げられ、洗剤、菓子、乾燥食品等の包装容器用素材として広く使用されている。その用途としては様々なものがあるが、耐油性を付与した板紙については菓子等の食品用の箱、とりわけ油脂分を大量に含むチョコレート菓子等の箱、薄葉紙に耐油性を付与したものについてはファーストフードなどの揚げ物を包装する容器、デパート、コンビニエンスストアなどでのテイクアウト食材の包装容器等に多く使用されている。
【0006】
紙に耐油性を付与する手段としては、例えば、紙、板紙の表面にフッ素系耐油剤を塗工して耐油層を設けたクッキングシートまたは紙層間にフッ素系耐油剤層を設けた菓子箱用の耐油板紙等が挙げられる。しかしながら、フッ素系耐油剤を使用した紙は、100~180℃の食品調理温度で加熱した場合、フッ素テロマーアルコール等が生成することが確認されており、より一層、フッ素系耐油剤を使用しない耐油紙が求められている。
【0007】
フッ素系耐油剤代替の耐油紙としては、紙基材に非フッ素系アクリル系樹脂耐油剤を塗布したもの、ポリエチレンフィルム貼合紙、ポリエチレン樹脂を塗布したもの、シリコーン系、ワックス系耐油剤を使用したもの等々の耐油紙ならびに該耐油紙の製造技術が開示されているが、それぞれ長短所があるため一部実用化されてはいるものの依然として、使用者からの改善要望は根強い。
【0008】
ところで、フッ素系耐油剤を用いた耐油紙は少量の耐油剤使用量で耐油性が得られるため、製紙工程中のパルプスラリー内部に添加、もしくは製紙後にサイズプレスで表面に塗布させる方法が主に採用されている。
【0009】
一方、非フッ素系化合物を用いる場合、フッ素系化合物と比較して撥油性に乏しく、紙の表層に厚みのある耐油層を設けて、油脂成分等の浸透を防止する手段が一般的である。例えば、非フッ素系アクリル系樹脂エマルションの塗工により、ピンホールなく成膜させた耐油層を得る方法、ポリエチレンフィルムをラミネートする方法などが挙げられる。
【0010】
しかしながら、前記方法で得られる耐油紙は、フッ素系耐油剤と同等の耐油性を発現させるためには、多量の耐油剤を用いて耐油層を形成する必要があり、それに伴い、透気度が全く得られない、もしくは大きく低下するという問題点があった。十分な透気性のない包装材料に熱い食品を入れた場合や電子レンジ等で再加熱した場合、発生する水蒸気が外部へ放出されにくく、作りたての食感を重視する、例えばフライドポテトやコロッケ、天ぷら等の食品の食感が悪化する等の問題が生じる。
【0011】
ここで、例えば、特許文献1には、紙基材と、前記紙基材の両面に耐油層とを有する耐油紙であって、前記紙基材は、パルプとして広葉樹晒クラフトパルプ及び針葉樹晒クラフトパルプを含有し、当該パルプの配合比が0/100~70/30(質量比)の範囲であり、ショッパーリグラー法に基づく叩解度が45°SR以上であり、緊度が0.45g/cm3以上0.75g/cm3以下であり、かつ、ステキヒトサイズ度が5秒以上であり、前記耐油層は、耐油剤として少なくともスチレン-アクリル共重合樹脂及びパラフィンワックスを含有し、スチレン-アクリル共重合樹脂及びパラフィンワックスの配合比が90:10~10:90(質量比)である耐油紙(王研式透気度が10000秒以下)が提案されている。
【0012】
また、例えば、特許文献2には、紙支持体の少なくとも片面に耐油剤層を形成した耐油紙であって、前記耐油剤層が疎水基を含有する澱粉とワックスを含有したものであり、かつ前記耐油紙のJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5-2:2000の規定に準じて測定した王研式透気度が2000秒以下である耐油紙が提案されている。
【0013】
また、紙に対して耐油性と耐水性を付与できる耐油剤として、例えば、特許文献3には、a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位、および(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位を有する非フッ素共重合体を含んでなる紙用耐油剤が提案されている。
【0014】
また、例えば、特許文献4には、非フッ素系材料を用いて得られる耐油紙及びその製造方法について開示されており、耐油剤として、(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマー:5~80質量%、(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー:10~95質量%、(c)これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーから選択される少なくとも1種のモノマー:0~80質量%のモノマー混合物を乳化重合して得られるアクリル系共重合体を使用することが提案されている。
【0015】
しかしながら、特許文献1~4に開示された耐油剤の塗工によって得られた耐油紙は、耐油性は得られるものの、透気性は依然として不十分であり、食品に対する食感悪化等の問題を有している。
【0016】
また、耐油性に関しても、紙基材の製法などの影響により十分な性能が発現しない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2020-122250号公報
【文献】特開2013-237941号公報
【文献】国際公開2020/054856号公報
【文献】特開2014-025163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、フッ素系化合物を用いずに、基材に対して優れた耐油性を付与でき、特に紙基材に対して処理した場合、優れた耐油性と透気性を両立した耐油紙が得られる、非フッ素系耐油剤組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、炭素数1~60の炭化水素基と、中和された酸性官能基とを、少なくとも構造中に有する非フッ素系化合物を含み、かつ該中和された酸性官能基の占める割合(中和剤の質量は含まない)を、所定の範囲内に制御することで、フッ素系化合物を含まないにも拘わらず、紙に対して優れた耐油性と優れた透気性とを付与できることを見出した。本発明は、このような知見に基づき、さらに鋭意検討を重ねて完成した発明である。
【0020】
すなわち、本発明は、下記の構成を備える発明を提供する。
項1. 炭素数1~60の炭化水素基と、中和された酸性官能基とを、少なくとも構成単位中に有する非フッ素系化合物を含み、かつ、
非フッ素系化合物は、前記中和された酸性官能基の占める割合が0.4~21質量%であり、
前記非フッ素系化合物が、炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体、酸性官能基を有する不飽和単量体及びノニオン性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む共重合体であって、前記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体が、ノニオン性官能基としての水酸基を有する不飽和単量体である場合には、前記酸性官能基を有する不飽和単量体に対する前記水酸基を有する不飽和単量体の質量比(水酸基を有する不飽和単量体/酸性官能基を有する不飽和単量体)が、2.6以下である、非フッ素系耐油剤組成物。
項2. 前記非フッ素系化合物が、前記炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体及び前記酸性官能基を有する不飽和単量体に由来する構造を含む、項1に記載の非フッ素系耐油剤組成物。
項3. 前記非フッ素系化合物が、さらに、前記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体に由来する構造を含む、項1又は2に記載の非フッ素系耐油剤組成物。
項4. 前記ノニオン性官能基が、水酸基、フェノール性水酸基、ニトリル基、アミド基、(チオ)ウレタン基、(チオ)ウレア基、(チオ)カーボネート基、及びエステル基からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~3のいずれか1項に記載の非フッ素系耐油剤組成物。
項5. 紙用途で使用される、項1~4のいずれか1項に記載の非フッ素系耐油剤組成物。
項6. 食品接触用途で使用される、項1~5のいずれか1項に記載の非フッ素系耐油剤組成物。
項7. 項1~6のいずれか1項に記載の非フッ素系化合物が、基材の表面及び内部の少なくとも一方に存在する、耐油製品。
項8. 項1~6のいずれか1項に記載の非フッ素系化合物を含む耐油紙であって、
TAPPI UM-557の規定に準じて測定された前記耐油紙の平面部のキット値が、1~6である耐油紙。
項9. JIS P 8117:2009の規定に準じて測定された前記耐油紙のガーレー透気度が1000秒以下である、項8に記載の耐油紙。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非フッ素系耐油剤組成物を用いて基材を処理することで、フッ素系化合物を用いずに基材に対して優れた耐油性を付与することができる。特に、本発明の非フッ素系耐油剤組成物を用いて紙を処理して得られる耐油紙は、耐油性(キット法)に優れるとともに、透気性にも優れる。このため、本発明の非フッ素系耐油剤組成物を用いて耐油紙を製造した場合、食品の食感悪化等を効果的に抑制することができる。
【0022】
また、本発明の非フッ素系耐油剤組成物は、親水疎水性バランスの調節が容易であり、印刷適性などの要求に合わせて耐水性を調節することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の非フッ素系耐油剤組成物は、炭素数1~60の炭化水素基と、中和された酸性官能基とを、少なくとも構成中に有する非フッ素系化合物を含み、かつ、非フッ素系化合物における該中和された酸性官能基の占める割合(中和剤の質量は含まない)が、0.4~21質量%である、非フッ素系耐油剤組成物である。ただし、本発明の非フッ素系耐油剤組成物において、非フッ素系化合物が、炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体、酸性官能基を有する不飽和単量体及びノニオン性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む共重合体であって、前記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体が、ノニオン性官能基としての水酸基を有する不飽和単量体である場合には、前記酸性官能基を有する不飽和単量体に対する前記水酸基を有する不飽和単量体の質量比(水酸基を有する不飽和単量体/酸性官能基を有する不飽和単量体)が、2.6以下である。なお、本発明において、当該質量比は、酸性官能基の中和の有無に拘わらず、「酸性官能基を有する不飽和単量体の質量」は、中和されていない酸性官能基を有する不飽和単量体の質量として算出する。
【0024】
本発明の非フッ素系耐油剤組成物は、当該構成を備えていることにより、フッ素系化合物を用いずに、基材に優れた耐油性を付与することができる。特に、本発明の非フッ素系耐油剤組成物を用いて紙を処理して得られる耐油紙は、耐油性(キット法)に優れるとともに、透気性にも優れる。以下、本発明の非フッ素系耐油剤組成物について詳述する。
【0025】
<非フッ素系化合物>
本発明の非フッ素系耐油剤組成物に含まれる非フッ素系化合物は、少なくとも、炭素数1~60の炭化水素基と、中和された酸性官能基とを構成中に有する。さらに、非フッ素系化合物は、該中和された酸性官能基の占める割合(中和剤の質量は含まない)が、0.4~21質量%である。したがって、非フッ素系化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。
【0026】
ただし、非フッ素系化合物が、炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体、酸性官能基を有する不飽和単量体、及びノニオン性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む共重合体であって、ノニオン性官能基が水酸基である場合については、共重合体を形成する単量体中の質量比(すなわち、酸性官能基を有する不飽和単量体に対する、ノニオン性官能基としての水酸基を有する不飽和単量体の質量比(水酸基を有する不飽和単量体/酸性官能基を有する不飽和単量体)は、2.6以下である。
【0027】
前記炭素数1~60の炭化水素基としては、特に限定されないが、1価の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。また、これらの官能基は、炭素数1~60の範囲から外れない範囲で、さらに、1価以上の脂肪族炭化水素基及び脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基から選択される1種以上を含む官能基であってもよい。なお、前記炭化水素基は一部または全部がハロゲン化(フッ素を除く)されていてもよい。
【0028】
炭素数1~60の炭化水素基は、要求性能に合わせて適宜選択できるが、例えば、耐水性を高める観点から、任意で不飽和結合を1つ以上有してもよい脂肪族炭化水素基を含むことが好ましく、直鎖または分岐のアルキル基を含むことが好ましく、直鎖のアルキル基を含むことが最も好ましい。
【0029】
また、炭化水素基としては炭素数4以上のものを含むことが好ましく、8以上がより好ましく、12以上がさらに好ましく、16以上が最も好ましい。上限としては、50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下がさらに好ましく、28以下が最も好ましい。特に、炭素数16~24の炭化水素基を含むことが好ましい。
【0030】
前記酸性官能基としては、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、硫酸エステル基(-OSO3H)、リン酸エステル基(-OPO3H)、リン酸エステル基のモノエステル体(-OP(=O)(OH)O-)、ホスホン酸基(-P(=O)(OH)2)、ホスホン酸基のモノエステル体(-P(=O)(OH)O-)、ホスフィン酸基(-P(=O)(OH)-)等の酸性を示す官能基が挙げられる。
【0031】
前記酸性官能基の中和剤としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物が好ましく使用でき、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが特に好ましい。また、アンモニアや有機アミン類も好ましく使用できる。有機アミンとしては、第1級、第2級、第3級アミン化合物が使用でき、例えば、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等のアミノアルコール類、モルホリン、ピペラジン等の複素環式アミン類が挙げられる。アンモニア、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールが好ましく使用できる。前記中和剤の中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
本発明の非フッ素系化合物は、少なくとも、炭素数1~60の炭化水素基と中和された酸性官能基とを構造中に有し、かつ該中和された酸性官能基の占める割合(中和剤の質量は含まない)が0.4~21質量%であればよいが、耐油性の観点からは、下限としては0.6質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく、1.5質量%以上が特に好ましく、2.0質量%以上が最も好ましい。また、上限としては、20質量%以下が好ましく、19質量%以下がより好ましく、18質量%以下がさらに好ましく、17質量%以下が特に好ましく、16質量%以下が最も好ましい。
【0033】
上記非フッ素系化合物のうち、低分子化合物としては、具体的には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、モンタン酸等の中和塩、スルホこはく酸ジステアリル等のスルホこはく酸ジアルキル類の中和塩、ジドデシルナフタレンスルホン酸等のジアルキルナフタレンスルホン酸類の中和塩、リン酸ジミリスチル、リン酸ジセチル、リン酸ジステアリル等のリン酸ジアルキル類の中和塩が挙げられる。
【0034】
一方、非フッ素系化合物が高分子化合物である場合、炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体及び酸性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む、共重合体が挙げられる。
【0035】
炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体としては、重合性不飽和結合と炭素数1~60の炭化水素基を構造中に有する単量体であれば特に制限されない。例えば、重合性不飽和結合と炭素数1~60の炭化水素基は直接結合してもよいし、2価以上の原子団を介して結合してもよい。
【0036】
炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体としては、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物である。
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-R ・・・(1)
[式中、Xは、水素原子、1価の有機基(例えば、メチル基、エチル基など)、ハロゲン原子(フッ素原子を除く)、シアノ基または基-CH2-C(=O)-Y-Rであり、Yは、-O-及び-NH-から選択された少なくとも1つの基を有する2価~4価の連結基または-NR-であり、Rは、炭素数1~60の炭化水素基である。なお、YおよびRが、それぞれ分子中に複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていてもよい。]
【0037】
前記一般式(1)において、好ましくは、Yは、-Y’-、-Y’-C(=O)-、-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-、-Y’-R’-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-、-Y’-R’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-Y’-、または-Y’-R’-Y’-R’-であり、Y’は、直接結合、-O-または-NH-であり、R’は、-(CH2)m-(mは1~5の整数である)または-C6H6-(フェニレン基)である。
【0038】
上記一般式(1)で表されるような単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどを好ましく使用でき、特開2019-26746号公報の段落[0027]から段落[0030]に記載されるような環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレートも使用でき、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0039】
また、特開2017-66325号公報に開示されるような「α置換アクリレート」が好ましく使用できる。例えば、ブチルα-クロロアクリレート、ラウリルα-クロロアクリレート、ステアリルα-クロロアクリレート、イコシルα-クロロアクリレート、ベヘニルα-クロロアクリレート、メチルα-シアノアクリレート、エチルα-シアノアクリレート、ブチルα-シアノアクリレート、オクチルα-シアノアクリレート、ラウリルα-シアノアクリレート、ステアリルα-シアノアクリレート、イコシルα-シアノアクリレート、ベヘニルα-シアノアクリレートなどを好ましく使用することができる。
【0040】
さらに、国際公開第2019/026593号や特開2019-26747号公報に開示されるような「アミド基含有単量体」のうち、アクリル系のものを使用することができる。例えば、ラウリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ミリスチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、パルミチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ベヘニン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリルアミド、セチル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミドなどを好ましく使用できる。
【0041】
また、特開2019-26746号公報や特表2018-506657号公報に開示されるような「ウレタン基またはウレア基含有単量体」を使用することができる。例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとアルキルイソシアネート(例えば、ブチルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、ミリスチルイソシアネート、セチルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、ベヘニルイソシアネートなど)を反応させて得られる化合物、あるいは、側鎖にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート(例えば、2-メタクリロイルオキシエチルメタクリレートなど)とアルキルアミン(例えば、ブチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミンなど)またはアルキルアルコール(例えば、ブチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなど)を反応させて得られる化合物が好ましく使用できる。
【0042】
また、一般式(1)で表される単量体が、国際公開第2016/178429号に開示されるような「イタコン酸由来単量体」を使用することができ、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジステアリルなどを好ましく使用できる。
【0043】
上記一般式(1)以外の単量体としては、特表2017-538793号公報の段落[0016]から段落[0034]に記載されるような単量体を使用することができ、例えば、ソルビタントリステアレートメタクリレート(段落[0077]記載)、ソルビタントリステアレートウレタンメタクリレート(段落[0078]記載)、ソルビタントリステアレートウレタンスチレンモノマー(段落[0079]記載)、ソルビタントリオレエートメタクリレート(段落[0080]記載)などを好ましく使用することができる。
【0044】
また、上記一般式(1)以外の単量体としては、特開2021-014482号公報に開示されるような「スルホンアミド基含有単量体」を使用でき、下記一般式(2)で表される化合物が好ましく使用できる。
CH2=CA1-C(=O)-O-R1-A2-R2 ・・・(2)
[式中、
A1は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、
A2は、-NH-SO2-または-SO2-NH-であり、
R1は炭素数1~5の炭化水素基であり、
R2は炭素数1~60の炭化水素基である。]
例えば、下記一般式(3)で表される化合物が好ましく使用できる。
CH2=CHC(=O)OC2H4NHSO2C18H37 ・・・(3)
【0045】
また、一般式(1)~(2)以外の単量体としては、国際公開第2019/026593号に開示されるような「アミド基含有単量体」のうち、アクリル系以外のものを使用することができる。例えば、パルミチン酸アミドエチルビニルエーテル、ステアリン酸アミドエチルビニルエーテル、パルミチン酸アミドエチルアリルエーテル、ステアリン酸アミドエチルアリルエーテルが好ましく使用できる。
【0046】
また、一般式(1)~(2)以外の単量体としては、「カーボネート基含有単量体」が使用でき、例えば、炭酸アリルメチル、炭酸アリルエチル、炭酸アリルフェニル等が好ましく使用できる。
【0047】
また、一般式(1)~(2)以外の単量体としては、「ビニルエステル単量体」が使用でき、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、クロロ酢酸ビニルが挙げられる。
【0048】
また、一般式(1)~(2)以外の単量体としては、「オレフィン系単量体」が使用でき、例えば、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-オクタデセン、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
【0049】
また、一般式(1)~(2)以外の単量体としては、「シリコーン系単量体」が使用でき、例えば、炭素数1~60の炭化水素基を有し、末端および/または側鎖にビニル基や(メタ)アクリル基などの不飽和基を有すものが使用でき、具体的には片末端(メタ)アクリル変性シリコーンや両末端(メタ)アクリル変性シリコーン等が挙げられる。
【0050】
前記炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
本発明の非フッ素系化合物において、該非フッ素系化合物を構成する単量体成分の全量(中和剤の質量は含まない)を基準として、炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体の含有割合は、30質量%以上であればよいが、本発明の効果をより好適に奏する観点から、好ましくは30~99.5質量%、より好ましくは40~99質量%、さらに好ましくは45~97質量%であり、50~96質量%が最も好ましい。
【0052】
本発明において使用できる酸性官能基を有する不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-エチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドブタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0053】
本発明の非フッ素系化合物において、該非フッ素系化合物を構成する単量体成分の全量(中和剤の質量は含まない)を基準として、酸性官能基を有する不飽和単量体の含有割合は、0.5質量%以上であればよいが、本発明の効果をより好適に奏する観点から、好ましくは1~60質量%、より好ましくは3~55質量%、さらに好ましくは4~50質量%である。
【0054】
本発明の非フッ素系化合物には、炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体、酸性官能基を有する不飽和単量体以外に、ノニオン性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0055】
具体的には、該ノニオン性官能基としては、水酸基、フェノール性水酸基、ニトリル基、アミド基、(チオ)ウレタン基、(チオ)ウレア基、(チオ)カーボネート基、エステル基が挙げられる。
【0056】
上記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体のうち、水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等のアクリル系単量体;アリルアルコール、3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオール、エチレングリコールモノアリルエーテル、クエン酸トリアリル等のアリル系単量体;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニル系単量体などが挙げられる。
【0057】
上記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体のうち、フェノール性水酸基を有する単量体の具体例としては、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、N-(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、2-(2,3-ジヒドロキシ-フェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、ω-(2,3-ジヒドロキシ-フェノキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-(2,3-ジヒドロキシ-フェノキシカルボニルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ω-(2,3-ジヒドロキシ-フェノキシカルボニルアミノ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
上記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体のうち、ニトリル基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリロニトリル、2-エチルプロペンニトリル、2-プロピルプロペンニトリル、2-クロロプロペンニトリル、2-ブテンニトリル等が挙げられる。
【0059】
上記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体のうち、アミド基を有する単量体は、構造中にアミド基を有していれば、特に制限されないが、炭素数1~60の一価の炭化水素基は有さないものである。具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドや、環状構造を有するN-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0060】
上記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体のうち、(チオ)ウレタン基を有する単量体は、構造中に(チオ)ウレタン基を有していれば、特に制限されないが、炭素数1~60の一価の炭化水素基は有さないものである。例えば、市販品として、ウレタンアクリレートAH-600(共栄社化学社製:フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー)、ウレタンアクリレートUA-306H(共栄社化学社製:ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー)、ウレタンアクリレートUA-306T(共栄社化学社製:ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー)、ウレタンアクリレートUA-306I(共栄社化学社製:ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー)、ウレタンアクリレートUA-510H(共栄社化学社製:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー)等が挙げられる。
【0061】
上記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体のうち、(チオ)ウレア基を有する単量体は、構造中に(チオ)ウレア基を有していれば、特に制限されないが、炭素数1~60の一価の炭化水素基は有さないものである。例えば、(メタ)アクリル酸2-(2-オキソイミダゾリジン-1-イル)エチルなどが挙げられる。
【0062】
上記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体のうち、(チオ)カーボネート基を有する単量体は、構造中に(チオ)カーボネートを有していれば、特に制限されないが、炭素数1~60の一価の炭化水素基は有さないものである。例えば、メタクリル酸(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルなどが挙げられる。
【0063】
上記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体のうち、エステル基を有する単量体は、構造中にエステル基を有していれば、特に制限されないが、炭素数1~60の一価の炭化水素基は有さないものである。例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、環状構造を有するものとしてγ-ブチロラクトン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0064】
また、構造中にこれらのノニオン性官能基を2種以上有する単量体であってもよく、例えば、ポリカーボネートジオールおよびジイソシアネート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させて得られるカーボネート基およびウレタン基、エステル基を有する単量体等が挙げられる。
【0065】
非フッ素系化合物を構成する単量体成分の全量(中和剤の質量は含まない)を基準として、分子中にノニオン性官能基を有する不飽和単量体の含有割合は、好ましくは0.1~69.5質量%、より好ましくは1~60質量%、さらに好ましくは3~50質量%である。この範囲で使用すると、より耐油性を高めることができる。
【0066】
なお、本発明の非フッ素系耐油剤組成物において、耐油性の観点から、非フッ素系化合物が、炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体、酸性官能基を有する不飽和単量体及びノニオン性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む共重合体であって、前記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体が、ノニオン性官能基としての水酸基を有する不飽和単量体である場合には、酸性官能基を有する不飽和単量体に対する水酸基を有する不飽和単量体の質量比(水酸基を有する不飽和単量体/酸性官能基を有する不飽和単量体)は、2.6以下とする。前記の通り、本発明において、当該質量比は、酸性官能基の中和の有無に拘わらず、「酸性官能基を有する不飽和単量体の質量」は、中和されていない酸性官能基を有する不飽和単量体の質量として算出する。
【0067】
本発明の非フッ素系化合物には、炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体、酸性官能基を有する不飽和単量体、ノニオン性官能基を有する不飽和単量体以外の他の不飽和単量体を含有させることもできる。
【0068】
このような他の不飽和単量体としては、例えば、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニル変性シリカ、(メタ)アクリル変性シリカ等が挙げられる。これら単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
前記非フッ素系化合物は、基材への処理が容易であることから、水や有機溶媒等の媒体に溶解または分散させる形態とすることが好ましい。なお、分散質である前記非フッ素系化合物の物性(溶解度や融点など)の影響で、耐油剤組成物の温度(製造温度や保管温度)によって分散質の状態(固体、液体)が異なる場合や特定が困難な場合があるため、本明細書中の「分散」や「乳化」、もしくはこれらに類する表現については、特に断りがない限り、乳化状態や懸濁状態などを明確に区別しない。
【0070】
前記媒体としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール等の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジオキサン、メチルtert-ブチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル,3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類;ホルムアミド、アセトアミド、ベンズアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアニリド等のアミド類が挙げられ、これらの中から1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に制限されないが、基材への処理時の作業安全性や環境負荷の観点からは水を主体とすることが好ましい。製造装置のスペックや基剤へのダメージの観点などから、十分な乾燥温度や時間を設けることができない場合は、エタノールなど揮発性の高い有機溶剤を主体とすることもできる。
【0071】
非フッ素系化合物は、公知の方法で媒体に溶解又は分散させることができる。例えば、ホモミキサーやホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等の装置を使用することができる。また、非フッ素系化合物は自己分散させることもできるが、分散剤として界面活性剤を添加してもよい。
【0072】
分散剤の含有量としては、耐油性や耐油剤組成物の分散安定性を考慮して適宜選択できるが、例えば、非フッ素系化合物100質量部に対して、固形分換算で0.01~40質量部であることが好ましく、0.1~30質量部であることがより好ましく、0.3~20質量部であることがさらに好ましく、0.5~15質量部であることが最も好ましい。
【0073】
分散剤としては、公知のものが使用でき、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、各種の脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレン置換フェニルエーテルサルフェート、ポリカルボン酸塩等を使用することができ、対イオンはナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限ったものではない。
【0075】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、各種の高級脂肪酸グリセリン等の脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグルコシド、高級アルコール、プルロニック型乳化剤、アルキルジメチルアミン-N-オキシド等が挙げられるが、これらに限ったものではない。
【0076】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、各種のアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウムクロライド塩、ポリオキシエチレンアルキルアミンの四級化物等の四級塩のほか、アルキルアミン塩、アルキルジメチルアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩等の様なアミンを適当な酸で中和したアミン塩を使用することができる。対イオンとしては塩素イオン、臭素イオン、硫酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等が挙げられるが、これらに限ったものではない。
【0077】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン型両性界面活性剤、アミドベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、ホスホベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン型両性界面活性剤、アルキルアミンオキサイド型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤等が挙げられる、これらに限ったものではない。
【0078】
高分子化合物タイプの非フッ素系化合物は、前述の単量体を、公知の塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、放射線重合等の種々の重合方法(ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合)を用いて共重合させることにより製造することができる。乳化重合法としては、例えば、単量体を一括して仕込む単量体一括仕込み法や、単量体を連続的に滴下する単量体滴下法などが挙げられる。また、高圧ホモジナイザー等で機械的処理を行った後に重合を行うこともできる。また、溶液重合を採用した場合、例えば、重合後、水を加えてから脱溶剤して、共重合体を水に分散させることができる。必ずしも分散剤を加える必要がなく、自己分散液を製造することができる。
【0079】
重合時に使用できる分散剤としては、特に限定はなく、前記アニオン性界面活性剤、前記ノニオン性界面活性剤、前記カチオン性界面活性剤、前記両性界面活性剤、さらには、反応性界面活性剤(前記の単量体との反応性を備える、反応性アニオン性界面活性剤、反応性ノニオン性界面活性剤、反応性カチオン性界面活性剤、反応性両性界面活性剤)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
反応性界面活性剤としては、種々の分子量(EO付加モル数の異なる)のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸アンモニウム、ポリエチレングリコールのモノマレイン酸エステルおよびその誘導体、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルの他、特開2017-155095号公報の段落[0074]から段落[0094]に記載されるような反応性界面活性剤等が挙げられる。
【0081】
重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系、又はレドックス系等の公知の重合開始剤を適宜使用できる。重合開始剤の含有量は、例えば、前記非フッ素系化合物を構成する全単量体100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましく、2質量部以下であることが特に好ましい。また、過硫酸アンモニウムや過硫酸ナトリウムなどを用いることで、重合体に酸性官能基を導入することもできる。
【0082】
重合反応において、分子量調整を目的として、ドデシルメルカプタン、t-ブチルアルコール、チオグリコール酸等の連鎖移動剤や重合禁止剤を使用してもよい。
【0083】
また、メルカプト基を有する高分子化合物(オリゴマーを含む)を用いることで、非フッ素化合物に前記高分子化合物に由来する構造を導入し、ブロック共重合体やグラフト共重合体を製造することができる。このような高分子化合物としては、例えば、メルカプト変性シリコーンやメルカプト・アミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0084】
重合反応の温度としては、適宜選択できるが、例えば、20℃~150℃が好ましい。
【0085】
重合反応において、得られる非フッ素系化合物の重量平均分子量は、上述した重合開始剤、連鎖移動剤、重合禁止剤の使用量の増減や重合温度により調整することができる。
【0086】
重合時の単量体濃度としては、反応制御やハンドリング性の観点から、10~70質量%とすることが好ましく、15~60質量%とすることがより好ましい。
【0087】
また、耐油剤組成物の製造に際して有機溶媒を使用した場合、必要に応じて、除去工程を設けてもよく、例えば、常圧もしくは減圧下において加熱する方法などが挙げられる。
【0088】
本発明において用いられる非フッ素系耐油剤組成物の分散液について未反応の単量体、未反応の重合開始剤等を減少させるため、必要に応じて残留単量体、残留重合開始剤等を除去する操作を施すことが好ましい。
【0089】
具体的には、重合系から残留単量体を除去する方法としては、例えば、アクリル系樹脂エマルションが収容されているタンク内にスチームを通過させる方法;多段塔内でアクリル系樹脂エマルションとスチームを向流接触させるいわゆるスチームストリッピング法等が挙げられる。
【0090】
本発明の非フッ素系耐油剤組成物は、そのままの状態を処理液としてもよいし、原液としてもよく、固形分濃度としては、処理方法やハンドリング性等に応じて、適宜選択できる。例えば、固形分濃度としては、0.01~70質量%程度が好ましく、0.5~60質量%程度がより好ましく、0.7~50質量%程度が特に好ましく、0.9~40質量%程度が最も好ましい。
【0091】
本発明の非フッ素系耐油剤組成物には、必要に応じて添加剤等を加えることも可能である。添加剤としては、他の耐油剤、撥水剤、紙力剤、サイズ剤、顔料、浸透剤、消泡剤、pH調整剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤、酸化防止剤、消臭剤、各種有機溶剤、キレート剤、帯電防止剤、触媒、架橋剤、抗菌防臭剤、難燃剤、柔軟剤、防皺剤等が挙げられる。
【0092】
消泡剤としては、例えば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油などの油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール3-ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3-ヘプチルカルビトールなどのエーテル系消泡剤;トリブチルフォスフェート、トリス(ブトキシエチル)フォスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミンなどのアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウムなどの硫酸エステル系消泡剤;鉱物油等が挙げられる。消泡剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
帯電防止剤としては、耐油性を阻害しにくいものを使用するのがよい。帯電防止剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩、硫酸化油、スルホン酸塩などのアニオン性帯電防止剤、第4級アンモニウム塩、イミダゾリン型4級塩などのカチオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール型、多価アルコールエステル型などの非イオン性帯電防止剤、イミダゾリン型4級塩、アラニン型、ベタイン型などの両性帯電防止剤、高分子化合物タイプの制電性重合体、ポリアルキルアミンなどが挙げられる。帯電防止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
本発明の非フッ素系耐油剤組成物を、基材に付着させ乾燥させることで優れた耐油性を付与することができる。基材が紙の場合、耐油性に加え、極めて優れた透気性を発揮する。すなわち、本発明の耐油製品は、前述した非フッ素系化合物が、基材の表面及び内部の少なくとも一方に存在するものである。また、後述の通り、本発明の耐油紙は、前述した非フッ素系化合物を含む耐油紙であり、好ましくは、TAPPI UM-557の規定に準じて測定された前記耐油紙の平面部のキット値が、1~6の耐油紙である。
【0095】
<耐油紙>
(紙基材)
本発明の耐油紙に用いられる紙基材としては、特に制限されず、公知の耐油紙に用いられる紙基材を用いることができる。該紙基材としては、非塗工紙、塗工紙が挙げられる。
【0096】
非塗工紙としては、パルプの1種を単独で、または2種以上を任意の配合率で混合して抄紙したものが挙げられる。
【0097】
パルプとしては、針葉樹の晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹の晒しクラフトパルプ(LBKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)等が挙げられる。
【0098】
パルプとしては、カナダ標準濾水度(CSF)が350~550mLに調整されたものが好ましい。パルプのCSFが350mL以上であれば、耐油性が発現しやすい。パルプのCSFが550mL以下であれば、紙力が充分となる。パルプのCSFは、パルプを叩解することによって調整できる。2種以上のパルプを用いる場合、別々に叩解したパルプを混合してCSFを調整してもよく、あらかじめ混合したパルプを叩解してCSFを調整してもよい。
【0099】
紙基材は、填料を含んでいてもよい。填料としては、通常の抄紙に用いられる填料が挙げられる。填料としては、カオリン、焼成カオリン、デラミネーティッドカオリン、イライト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機填料等が挙げられる。填料は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0100】
紙基材は、無サイズ紙であってもよいし、サイズ剤が内添されていてもよく、また、サイズ剤が外添されていてもよい。
【0101】
サイズ剤としては、酸性抄きの場合、ロジン系サイズ剤、ロジンエマルジョン系サイズ剤、α-カルボキシメチル飽和脂肪酸等が挙げられる。中性抄きの場合、中性抄紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、カチオンポリマー系サイズ剤等が挙げられる。サイズ剤の添加量は、特に限定されない。サイズプレス等を用いた外添において、表面サイズ剤(ロジン系サイズ剤、合成樹脂系サイズ剤等)を用いてもよい。
【0102】
また、本発明の耐油紙の耐油性を向上させる観点から、紙基材は、カチオン性高分子を含むことが好ましい。
【0103】
カチオン性高分子としては、通常の抄紙において用いられるカチオン性紙力増強剤等が挙げられる。カチオン性高分子としては、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、カチオン化澱粉、カチオン性ポリアクリルアミド(アクリルアミド-アリルアミン共重合体、アクリルアミド-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリルアミド-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリルアミド-4級化ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリルアミド-4級化ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート共重合体等)、カチオン変性ポリビニルアルコール、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、N-ビニルホルムアミド-ビニルアミン共重合体、メラミン樹脂、ポリアミドエポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0104】
カチオン性高分子としては、得られる耐油紙の耐油性に優れる点から、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、カチオン化澱粉、カチオン性ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミンなどが好ましい。カチオン性高分子は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0105】
紙基材に含まれるカチオン性高分子の含有量は、下式(I)の関係を満足することが好ましく、下式(II)の関係を満足することがより好ましい。
1≦D×(C/100)≦120 ・・・(I)
3≦D×(C/100)≦60 ・・・(II)
ただし、Dは、カチオン性高分子のカチオン電荷密度(μeq/g)であり、Cは、紙基材を構成するパルプ(100質量%)に対するカチオン性高分子の含有割合(質量%)である。
【0106】
D×(C/100)(μeq/g)は、紙基材のカチオン化の指標となる。D×(C/100)が前記範囲の下限値以上であれば、紙基材のカチオン性が充分に高くなり、紙基材の表面に非フッ素系化合物がより充分に定着する。そのため、得られる耐油紙は、耐油性にさらに優れる。D×(C/100)が前記範囲の上限値以下であれば、非フッ素系化合物の定着性は充分であり、かつ多量のカチオン性高分子を必要としないため耐油紙の製造コストを抑えることができる。
【0107】
紙基材は、本発明の効果を損なわない範囲内で填料、サイズ剤、カチオン性高分子以外の他の併用剤を含んでいてもよい。他の併用剤としては、定着剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、染料、顔料等が挙げられる。他の併用剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0108】
紙基材は、公知の抄紙機によって適宜製造できる。抄紙条件は、特に限定されない。抄紙機としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機等が挙げられる。
【0109】
本発明においては、上記紙基材の少なくとも片面に顔料塗工層を設けた塗工紙も紙基材として使用することができる。
【0110】
上記紙基材としては、カレンダー処理が施されたものを使用することもできる。
【0111】
<耐油紙の製造方法>
本発明の非フッ素系耐油剤組成物を紙基材に処理する方法としては、コーティングやサイズプレス、パルプスラリーに内添するなどの公知の方法が採用でき、コーティングやサイズプレスに類する方法が特に好ましい。
【0112】
本発明の非フッ素系耐油剤組成物の処理量としては、特に限定されないが、耐油性の観点から、例えば、紙基材に対する前記非フッ素系化合物の存在量(付着量)が0.5~30g/m2程度であることが好ましく、1~20g/m2程度であることがより好ましく、1.5~15g/m2程度であることがさらに好ましく、2~10g/m2程度であることが特に好ましい。透気性や処理後の乾燥負荷、コストの観点から、15g/m2以下とすることが好ましい。
【0113】
本発明の耐油紙は、TAPPI UM-557の規定に準じて測定した耐油紙の平面部のキット値が、1以上であれば耐油性を備えるといえる。使用用途での要求性能にもよるが、例えば、食品を耐油紙で包装した際、反対側への油の浸透を低減する目的から、キット値は1以上であることが好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは4以上である。
【0114】
本発明の耐油紙は、印刷適性などの要求性能に応じて、耐水性を有してもよく、JIS P-8122:2004に準拠して測定したステキヒトサイズ度が2秒以上であれば耐水性を有するといえる。5秒以上であることが好ましく、より好ましくは10~500秒である。
【0115】
本発明の耐油紙は、JIS P-8117:2009に準拠して測定したガーレー透気度が1000秒以下であることが好ましく、より好ましくは500秒以下、特に好ましくは100秒以下である。耐油紙のガーレー透気度が1000秒を超えると、食品を耐油紙で包装した際の風味や保存性が低下してしまうおそれがある。
【0116】
紙基材への非フッ素系耐油剤組成物の処理方法としては、公知の塗工機を用いた方法により実施することができる。塗工機としては、サイズプレス、コータ、印刷機等が挙げられる。サイズプレスとしては、ツーロールサイズプレス、フィルムトランスファーサイズプレス、キャレンダーサイズプレス等が挙げられる。コータとしては、ロールコータ、エアナイフコータ、スロットダイコータ、ギアインダイコータ、ブレードコータ、ロッドブレードコータ、ビルブレードコータ、ショ-トドエルブレードコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイレクトグラビアコータ、オフセットグラビアコータ等が挙げられる。印刷機としては、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機等が挙げられる。
【0117】
紙基材へ非フッ素系耐油剤組成物を付着処理させた後に乾燥工程を設けてもよい。自然乾燥によって行ってもよいが、加熱して乾燥させることが好ましい。例えば、前記した公知の塗工機を使用する場合の一般的な乾燥温度としては、120℃未満が好ましく、80~110℃がより好ましく、90~110℃がさらに好ましい。
【0118】
紙基材へ非フッ素系耐油剤組成物を付着処理させた後にカレンダー工程を設けてもよい。カレンダーとしてはスーパーカレンダーやソフトカレンダー等が挙げられる。
【0119】
以上の製造方法によって、本発明の耐油紙を好適に製造することができる。
【0120】
なお、本発明においては、基材として紙以外の、フィルム、繊維、織編物、不織布、等に本発明の非フッ素系耐油剤組成物を処理することで、耐油性製品を製造することもできる。
【実施例】
【0121】
以下、本発明の非フッ素系耐油剤組成物を用いた耐油紙を中心にして具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「部」及び「%」は特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0122】
〔耐油性試験〕
<TAPPI KIT法>
TAPPI UM-557の規定に従い、ひまし油、トルエン、n-ヘプタンの混合比が異なる試験液(下記表1のキット番号の混合比)の1滴を、耐油紙の表面に滴下し、15秒後に、試験液の浸透による耐油紙の表面の色の変化を目視にて評価した。試験の結果は、表面の色が濃くならない試験液のうち、数字が最も大きい試験液の番号(キット値)で表す。数字が大きい方が、耐油性に優れることを意味する。
【0123】
【0124】
耐油紙から紙試料(2.5cm×3.5cm)を裁断し、耐油紙の耐油剤塗工平面部の耐油度を上記基準によって測定した。
【0125】
<耐水性試験法>
耐油紙の耐水性は、JIS P 8122:2004の規定に準じてステキヒトサイズ度を評価した。
【0126】
<耐油紙の製造>
以下の紙基材に耐油剤組成物を処理し、実施例1~37及び比較例1~14の耐油紙を製造した。その後、各耐油紙について、前述の耐油性試験を行った。
【0127】
(紙基材)
・原紙A(薬剤の添加無し)
原料パルプとして、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)およびNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)を用いた。LBKPとNBKPとを70:30(質量比)で混合し、叩解機によってCSFが440mLとなるように叩解し、パルプスラリーを得た後、坪量が40g/m2となるように抄紙し、坪量が40g/m2の紙基材を得た。得られた紙基材のステキヒトサイズは0秒であった。また、透気度は2秒だった。
・原紙B(湿潤紙力増強剤の添加あり)
原料パルプとして、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)およびNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)を用いた。LBKPとNBKPとを70:30(質量比)で混合し、叩解機によってCSFが440mLとなるように叩解し、パルプスラリーを得た。当該パルプスラリーに、湿潤紙力増強剤(商品名:「FW-7281」星光PMC社製、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の水溶液;固形分濃度25%)を対パルプ(固形分量)で0.4質量%添加した後、坪量が40g/m2となるように抄紙し、坪量が40g/m2の紙基材を得た。得られた紙基材のステキヒトサイズは0秒であった。また、透気度は2秒だった。
・原紙C(湿潤紙力増強剤及びサイズ剤の添加あり)
原料パルプとして、LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)およびNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)を用いた。LBKPとNBKPとを70:30(質量比)で混合し、叩解機によってCSFが440mLとなるように叩解し、パルプスラリーを得た。当該パルプスラリーに、ロジンサイズ剤を対パルプで1.0質量%添加し、硫酸バンドでパルプスラリーpHを5.0に調整し、さらに湿潤紙力増強剤(商品名:「FW-7281」星光PMC社製、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂の水溶液;固形分濃度25%)を対パルプ(固形分量)で0.4質量%添加した後、坪量が40g/m2となるように抄紙し、坪量が40g/m2の紙基材を得た。得られた紙基材のステキヒトサイズは10秒であった。また、透気度は2秒だった。
【0128】
(処理方法)
・サイズプレス
塗工機として、ツーロールサイズプレス機を使用し、紙基材に耐油剤組成物を付着させ、回転型乾燥機を用いて105℃で1分間乾燥させた。なお、表中に記載の「dry処理量」は、紙基材の耐油剤組成物の付着前後の質量変化量(wetピックアップ)と組成物中の非フッ素系化合物含有率を用いて算出した。
・バーコート
メイヤーバーを用いて、紙基材に耐油剤組成物を塗布し、熱風乾燥機にて110℃で5分間乾燥させた。また、必要に応じて同様の処理を繰り返し、表中記載の「dry処理量」になるように処理を行った。なお、表中に記載の「dry処理量」は、紙基材の耐油剤組成物の付着前後の質量変化量(wetピックアップ)と組成物中の非フッ素系化合物含有率を用いて算出した。
【0129】
・非フッ素系耐油剤組成物の製造方法
製造例1~23、比較製造例1~2について、表中記載の条件において、下記いずれかの方法にて耐油剤組成物を製造した。
【0130】
(方法A)
反応容器に、各単量体及び重合開始剤、連鎖移動剤、界面活性剤、重合媒体を加え、窒素雰囲気下にて撹拌および昇温しラジカル重合を行った。その後、イオン交換水を用いて表中記載の重合体含有率になるように濃度調製を行い、水系耐油剤組成物を得た。
【0131】
(方法B)
反応容器に、各単量体及び界面活性剤、重合媒体を混合し、得られた混合液を高圧ホモジナイザー(400bar)にて処理を行った。その後、重合開始剤、連鎖移動剤を添加し、窒素雰囲気下にて、撹拌および昇温しラジカル重合を行った。その後、イオン交換水を用いて表中記載の重合体含有率になるように濃度調製を行い、水系耐油剤組成物を得た。
【0132】
(方法C)
反応容器に、各単量体及び重合開始剤、連鎖移動剤、重合媒体を加え、窒素雰囲気下にて撹拌および昇温しラジカル重合を行った。その後、内温を維持しながら、4.8%水酸化ナトリウム水溶液を表中記載の中和度になるように添加し、その後、イオン交換水を適宜添加して粘度調節し、有機溶剤を留去した。その後、イオン交換水を用いて表中記載の重合体含有率になるように濃度調製を行い、水系耐油剤組成物を得た。
【0133】
(製造例15)
反応容器に、各単量体及び重合開始剤、重合媒体、トリエタノールアミン(10.8部)を加え、窒素雰囲気下にて撹拌および昇温しラジカル重合を行った。その後、イオン交換水を適宜添加して粘度調節し、有機溶剤を留去した。その後、イオン交換水を用いて表中記載の重合体含有率になるように濃度調製を行い、水系耐油剤組成物を得た。
【0134】
<表中略称>
MMA:メチルメタクリレート
EA:エチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
BI-HEA:2-[(ブチルカルバモイル)オキシ]エチル=アクリラート
※ブチルイソシアネートと2-ヒドロキシエチルアクリレートの反応物
EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
LA:ラウリルアクリレート
SA:ステアリルアクリレート
SMA:ステアリルメタクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
AAMPS:2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸
AN:アクリロニトリル
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
VP:N-ビニル-2-ピロリドン
APS:過硫酸アンモニウム
V-601:2,2’-アゾビス(イソ酪酸ジメチル)(富士フィルム和光純薬社製)
LSH:ラウリルメルカプタン
ABS:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ソフト型)
(ネオぺレックスG-15、花王社製、固形分濃度16%)
AES:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム
(エレミノールCLS-20、三洋化成工業社製、固形分濃度100%)
MEK:メチルエチルケトン
IPA:イソプロピルアルコール
TEA:トリエタノールアミン
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
<実施例1~33、比較例1~9>
必要に応じて中和剤を耐油剤組成物に追加し、表中記載の中和度に調製し、サイズプレスにて処理を行った。
【0139】
【0140】
重合体中の中和された酸性官能基の含有率を本発明の規定の範囲とすることで、優れた耐油性および透気性を得られた。さらに、カチオン性の湿潤紙力増強剤が原紙に添加されている場合、おそらくイオン性による吸着により、耐油性が未添加の原紙と比較して向上する傾向が見られた。また、驚くべきことに、薬剤が添加されていない原紙は、一般にアニオン性を帯びていると考えられており、イオン性による吸着の観点からはカチオン性の耐油剤が好ましいが、重合体中の中和された酸性官能基の含有率を本発明の規定の範囲とすることで、このような原紙においても耐油性が向上することが判明した。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
本発明の規定の範囲とすることで、優れた耐油性および透気性を得られた。また、実施例33および比較例9の結果から、特許文献3に開示される発明では十分な耐油性が得られず、炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体、酸性官能基を有する不飽和単量体及びノニオン性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む共重合体のノニオン性官能基が水酸基の場合には、酸性官能基を有する不飽和単量体に対する、ノニオン性官能基としての水酸基を有する不飽和単量体の質量比(水酸基を有する不飽和単量体/酸性官能基を有する不飽和単量体)が、2.6以下に制御することが重要であることが明らかとなった。なお、前記質量比について、実施例33は2.6であり、比較例9は3.0である。また、特許文献3に開示される実施例は2.67以上である。
【0145】
実施例8と18の耐水性を評価したところ、原紙Bのステキヒトサイズ度はそれぞれ2秒と11秒であり、炭化水素基の鎖長をコントロールすることで、耐油性及び透気性を維持したまま、耐水性を調節することが可能であった。
【0146】
・非フッ素系耐油剤組成物の製造方法
<製造例24>
反応容器に、ステアリン酸(1.0部)及び48%水酸化ナトリウム水溶液(0.3部)、エタノール(50.0部)、イオン交換水(48.7部)を加え、固体が目視確認できなくなるまで加熱還流し、40℃まで冷却して分散液を得た。
【0147】
<製造例25>
Phoslex A-18(1.0部、SC有機化学社製、ステアリルアシッドホスフェイト:Mw437(平均値))及び4.8%水酸化ナトリウム水溶液(3.2部)、イオン交換水(75.8部)を加え、固体が目視確認できなくなるまで加熱還流した。その後、40℃まで冷却し、エタノール(20部)を加えて分散液を得た。なお、ステアリルアシッドホスフェイトはモノエステル体(Mw350.47)とジエステル体(Mw602.95)の混合物であり、ジエステル体が本発明の規定の範囲に該当する。
【0148】
<実施例34及び35>
低分子化合物を含む耐油剤組成物として製造例24及び25を紙基材にバーコートして得られた結果を表9に示した。
【0149】
【0150】
特許文献4に開示されている「Joncryl PDX-7326(BASF社製、不揮発分38.5%)」と本願発明の比較を行った。
【0151】
【0152】
本願発明は耐油性及び透気性に優れるが、特許文献4に記載の耐油剤において両立は困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の非フッ素系耐油剤組成物を用いることで、耐油性物品を提供できる。
本発明の耐油紙は、食品包装容器、食品包装紙、食品用敷紙等として有用である。
【要約】
フッ素系化合物を用いずに、基材に対して優れた耐油性を付与でき、特に紙基材に対して処理した場合、優れた耐油性と透気性を両立した耐油紙が得られる、非フッ素系耐油剤組成物を提供する。
炭素数1~60の炭化水素基と、中和された酸性官能基とを、少なくとも構成単位中に有する非フッ素系化合物を含み、かつ、
非フッ素系化合物は、前記中和された酸性官能基の占める割合が0.4~21質量%であり、
前記非フッ素系化合物が、炭素数1~60の炭化水素基を有する不飽和単量体、酸性官能基を有する不飽和単量体及びノニオン性官能基を有する不飽和単量体に由来する構成単位を含む共重合体であって、前記ノニオン性官能基を有する不飽和単量体が、ノニオン性官能基としての水酸基を有する不飽和単量体である場合には、前記酸性官能基を有する不飽和単量体に対する前記水酸基を有する不飽和単量体の質量比(水酸基を有する不飽和単量体/酸性官能基を有する不飽和単量体)が、2.6以下である、非フッ素系耐油剤組成物。