(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】バッテリ抵抗算出装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20240422BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20240422BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20240422BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20240422BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20240422BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G01R27/02 E
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/52
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2023504608
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 KR2021010384
(87)【国際公開番号】W WO2022065676
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0122615
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ビョン・ユン
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1984326(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0110184(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0039215(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0237815(US,A1)
【文献】国際公開第2015/076075(WO,A1)
【文献】特開2014-081267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0200209(US,A1)
【文献】国際公開第2020/116133(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 27/00-27/32、
31/50-31/04、
31/36-31/44、
H01M 10/42-10/48、
H02J 7/00-7/12、
7/34-7/36、
B60L 1/00-3/12、
7/00-13/00、
15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリパックの(+)端子および(-)端子のうち一つの端子とシャーシとの間に連結される測定回路と、
前記測定回路から電圧を測定する電圧測定部と、
前記電圧測定部で測定された電圧に基づいて前記バッテリパックの絶縁抵抗を算出する絶縁抵抗算出部と、
を含み、
前記絶縁抵抗算出部は、算出された前記絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満の場合、
所定の時間における前記バッテリパック
の電圧の変化量に基づいて前記絶縁抵抗を再算出する、バッテリ抵抗算出装置。
【請求項2】
前記測定回路は、直列連結された測定抵抗及びスイッチを含み、前記測定抵抗と前記スイッチとは、前記絶縁抵抗に並列に接続している、請求項1に記載のバッテリ抵抗算出装置。
【請求項3】
前記測定回路は、前記バッテリパックの前記絶縁抵抗のうち一つに並列に接続された電圧分配用抵抗をさらに含む、請求項1又は2に記載のバッテリ抵抗算出装置。
【請求項4】
前記絶縁抵抗算出部は、算出された前記絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満の場合、
前記所定の時間における前記バッテリパックの容量の変化量
にさらに基づいて前記絶縁抵抗を再算出する、請求項1~3のいずれか一項に記載のバッテリ抵抗算出装置。
【請求項5】
前記絶縁抵抗算出部は、前記バッテリパックの容量の変化量
と前記所定の時間とに基づいてリーク電流を計算し、前記バッテリパック
の電圧の変化量と前記リーク電流とに基づいて前記絶縁抵抗を再算出する、請求項4に記載のバッテリ抵抗算出装置。
【請求項6】
前記絶縁抵抗算出部は、予め格納されたOCV-SOCテーブルに基づいて前記バッテリパックの容量の変化量を算出する、請求項4に記載のバッテリ抵抗算出装置。
【請求項7】
前記絶縁抵抗算出部は、算出された前記絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満の場合、前記バッテリパックの前の駆動完了時点の電圧と前記バッテリパックの駆動開始前の時点の電圧との差の値に基づいて前記絶縁抵抗を再算出する、請求項1~6のいずれか一項に記載のバッテリ抵抗算出装置。
【請求項8】
前記絶縁抵抗算出部は、算出された前記絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満の場合、前記バッテリパックの前の駆動完了時点の電圧と前記バッテリパックの前の駆動完了時点から予め設定された時間経過後のウェークアップされる前記バッテリパックの電圧との差の値に基づいて前記絶縁抵抗を再算出する、請求項1~6のいずれか一項に記載のバッテリ抵抗算出装置。
【請求項9】
前記バッテリパックの前の駆動完了時点からの予め設定された時間は、リアルタイムクロックにより測定される、請求項8に記載のバッテリ抵抗算出装置。
【請求項10】
バッテリパックの(+)端子および(-)端子のうち一つの端子とシャーシとの間に測定回路を連結して電圧を測定するステップと、
測定された電圧に基づいて前記バッテリパックの絶縁抵抗を算出するステップと、
を含み、
前記バッテリパックの絶縁抵抗を算出するステップは、算出された前記絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満の場合、
所定の時間における前記バッテリパック
の電圧の変化量に基づいて前記絶縁抵抗を再算出する、バッテリ抵抗算出方法。
【請求項11】
請求項10に記載のバッテリ抵抗算出方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年9月22日付けの韓国特許出願第10-2020-0122615号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、バッテリの絶縁抵抗を算出するためのバッテリ抵抗算出装置および方法を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0003】
近年、二次電池に関する研究開発が活発に行われている。ここで、二次電池は、充放電が可能な電池として、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などと、最近のリチウムイオン電池をいずれも含む意味である。二次電池のうち、リチウムイオン電池は、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などに比べて、エネルギー密度がはるかに高いという利点がある、また、リチウムイオン電池は、小型・軽量で作製することができ、移動機器の電源として使用されている。また、リチウムイオン電池は、電気自動車の電源として使用範囲が拡張し、次世代エネルギー貯蔵媒体として注目を浴びている。
【0004】
また、二次電池は、一般的に、複数個のバッテリセルが直列および/または並列に連結されているバッテリモジュールを含むバッテリパックとして用いられる。また、バッテリパックは、バッテリ管理システムにより状態および動作が管理および制御される。
【0005】
特に、エネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)、電気車などに使用される高電圧バッテリパックは、バッテリパックの放電やユーザの感電などを防止するために、バッテリパックとシャーシとの間に所程水準以上の絶縁が維持される必要がある。したがって、バッテリ管理システム(Battery Management System、BMS)では、絶縁抵抗測定回路を介してバッテリパックとシャーシとの絶縁抵抗測定機能を行う。
【0006】
従来、絶縁抵抗を測定するために、バッテリパックの両極(+、-)とシャーシとの間に測定抵抗をそれぞれ連結し、スイッチを介してバッテリパックの両極とシャーシとを順に連結した後、電圧を測定し、絶縁抵抗を計算する方法を使用していた。しかし、絶縁抵抗の測定回路に含まれる測定抵抗やスイッチング素子は、高電圧バッテリとシャーシとの間に連結されて、クリアランス(clearance)やクリページ(creepage)などを考慮する必要があるため、ほとんどの場合、体積が大きく高価な部品が使用される。特に、バッテリパックの電圧が増加するほど、高仕様の部品が必要となる。
【0007】
バッテリ管理システムの体積と値段が次第に減少する傾向を考慮すると、このような絶縁抵抗測定回路も大きさと費用を低減することができる方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するために導き出されたものであり、バッテリパックの(+)または(-)端子のうち一つの端子とシャーシとの間にのみ測定回路を連結することで、バッテリ管理システムの大きさを縮小し、費用を低減することができるバッテリ抵抗算出装置および方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明によるバッテリ抵抗算出装置および方法は、測定回路のうち一つの区間を除去しても、既存の測定回路と実質的に同等な性能を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置は、バッテリパックの(+)端子および(-)端子のうち一つの端子とシャーシとの間に連結される測定回路と、前記測定回路から電圧を測定する電圧測定部と、前記電圧測定部で測定された電圧に基づいて前記バッテリパックの絶縁抵抗を算出する絶縁抵抗算出部と、を含み、前記絶縁抵抗算出部は、算出された絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満の場合、前記バッテリパックの時間に対する電圧の変化量に基づいて前記絶縁抵抗を再算出することができる。
【0011】
本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出方法は、バッテリパックの(+)端子および(-)端子のうち一つの端子とシャーシとの間に測定回路を連結して電圧を測定するステップと、測定された電圧に基づいて前記バッテリパックの絶縁抵抗を算出するステップと、を含み、前記バッテリパックの絶縁抵抗を算出するステップは、算出された絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満の場合、前記バッテリパックの時間に対する電圧の変化量に基づいて前記絶縁抵抗を再算出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるバッテリ抵抗算出装置および方法によると、バッテリパックの(+)または(-)端子のうち一つの端子とシャーシとの間にのみ測定回路を連結することで、バッテリ管理システムの大きさを縮小し、費用を低減することができる。
【0013】
また、本発明によるバッテリ抵抗算出装置および方法によると、測定回路のうち一つの区間を除去しても、既存の測定回路と実質的に同等な性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一般的なバッテリパックの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置の構成を示すブロック図である。
【
図3a】従来のバッテリパックで絶縁抵抗を算出することを示す図である。
【
図3b】従来のバッテリパックで絶縁抵抗を算出するための等価回路を示す図である。
【
図4a】本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置を用いてバッテリパックの絶縁抵抗を算出することを示す図である。
【
図4b】本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置を用いてバッテリパックの絶縁抵抗を算出するための等価回路を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置で絶縁抵抗を算出するためのバッテリパックのOCV-SOCテーブル(グラフ)を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出方法を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して、本発明の様々な実施形態について詳細に説明する。本文において、図面上の同じ構成要素に対しては、同じ参照符号を使用し、同じ構成要素に関する重複する説明は省略する。
【0016】
本文書に開示されている本発明の様々な実施形態に対して、特定の構造的もしくは機能的な説明は、単に本発明の実施形態を説明するために例示されたものであって、本発明の様々な実施形態は、様々な形態で実施されてもよく、本文書に説明している実施形態に限定されるものと解釈してはならない。
【0017】
様々な実施形態において使用されている「第1」、「第2」、「一番目」、または「二番目」などの表現は、様々な構成要素を、順序および/または重要度に関係なく修飾することがあり、当該構成要素を限定しない。例えば、本発明の権利範囲から逸脱しないとともに、第1構成要素は第2構成要素と称され得、同様に、第2構成要素も第1構成要素に変えて称され得る。
【0018】
本文書において使用されている用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されているものであって、他の実施形態の範囲を限定することを意図しないものであり得る。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味を有していない限り、複数の表現を含み得る。
【0019】
技術的もしくは科学的な用語をはじめ、ここで使用されているすべての用語は、本発明の技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有することができる。一般的に使用されている辞書に定義された用語は、関連技術が文脈上有する意味と同一または類似する意味を有するものと解釈することができ、本文書において明白に定義されない限り、理想的もしくは過剰に形式的な意味に解釈されない。場合によっては、本文書で定義された用語であっても、本発明の実施形態を排除するように解釈されることができない。
【0020】
図1は一般的なバッテリパックの構成を示すブロック図である。
【0021】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるバッテリパック1と、上位システムに含まれている上位制御器2とを含むバッテリ制御システムを概略的に示す。
【0022】
図1に図示されているように、バッテリパック1は、一つ以上のバッテリセルからなり、充放電可能な複数のバッテリモジュール10と、複数のバッテリモジュール10の(+)端子側または(-)端子側に直列に連結されて、バッテリモジュール10の充放電電流の流れを制御するためのスイッチング部14と、バッテリパック1の電圧、電流、温度などをモニタリングして、過充電および過放電などを防止するように制御管理するバッテリ管理システム20(例えば、BMS)とを含む。
【0023】
ここで、スイッチング部14は、複数のバッテリモジュール10の充電または放電に対する電流の流れを制御するための半導体スイッチング素子であり、例えば、バッテリパック1の仕様に応じて、少なくとも一つのMOSFETやリレー、マグネチックコンタクタなどが用いられることができる。
【0024】
また、バッテリ管理システム20は、バッテリパック1の電圧、電流、温度などをモニタリングするために、半導体スイッチング素子のゲート、ソースおよびドレインなどの電圧および電流を測定または計算することができる。また、バッテリ管理システム20は、半導体スイッチング素子に隣接して設けられたセンサ12を用いて、バッテリパック1の電流を測定することができる。ここで、センサ12は、後述する電圧測定部に該当することができる。
【0025】
バッテリ管理システム20は、上述の各種のパラメータを測定した値の入力を受けるインタフェースとして、複数の端子と、これら端子と連結されて入力を受けた値の処理を行う回路などを含むことができる。また、バッテリ管理システム20は、スイッチング部14、例えば、MOSFETのON/OFFを制御することもでき、バッテリモジュール10に連結されて、バッテリモジュール10それぞれの状態を監視することができる。
【0026】
一方、本発明のバッテリ管理システム20では、以下で後述するように、バッテリパック1に連結された測定回路を用いて測定されたデータに基づいて、抵抗算出プログラムによりバッテリパック1の絶縁抵抗を算出することができる。
【0027】
上位制御器2は、バッテリ管理システム20にバッテリモジュール10に対する制御信号を伝送することができる。これにより、バッテリ管理システム20は、上位制御器から印加される信号に基づいて動作が制御されることができる。一方、本発明のバッテリセルは、車両やESS(Energy Storage System)に用いられるバッテリモジュール10に含まれた構成であることができる。例えば、上位制御器2は、ESS制御器であることができる。ただし、バッテリパック1は、このような用途に必ずしも限定されるものではない。
【0028】
このようなバッテリパック1の構成およびバッテリ管理システム20の構成は、公知の構成であるため、より具体的な説明は省略する。
【0029】
図2は本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置の構成を示すブロック図である。
【0030】
図2を参照すると、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置200は、測定回路210と、電圧測定部220と、絶縁抵抗算出部230と、格納部240とを含むことができる。例えば、
図2に示したバッテリ抵抗算出装置200は、バッテリパックのバッテリ管理システム(BMS)に含まれた構成であることができる。
【0031】
測定回路210は、バッテリパックの(+)端子および(-)端子のうち一つの端子とシャーシとの間に連結されることができる。例えば、測定回路210と連結されるシャーシは、車両に備えられたシャーシを含むことができる。
【0032】
また、測定回路210は、直列連結された測定抵抗とスイッチを含み、バッテリパックの絶縁抵抗に並列に接続されることができる。また、測定回路210は、測定抵抗とスイッチに並列に接続された電圧分配用抵抗をさらに含むことができる。例えば、電圧測定部220の測定抵抗とスイッチは、バッテリパックの絶縁抵抗とそれぞれ並列に連結されることができ、電圧分配用抵抗は、絶縁抵抗のうち一つに並列に連結されることができる。また、電圧分配用抵抗は、測定回路210の電圧を分配して、測定可能なレベルに調整する役割を果たすことができる。
【0033】
電圧測定部220は、測定回路からの電圧を測定することができる。例えば、電圧測定部220は、測定回路210の電圧分配用抵抗側に連結されるバッテリ管理システムのセンサであることができる。
【0034】
絶縁抵抗算出部230は、電圧測定部220で測定された電圧に基づいて、バッテリパックの絶縁抵抗を算出することができる。この場合、絶縁抵抗算出部230は、測定回路210に含まれたスイッチのスイッチング状態による少なくとも一つの等価回路を用いて、バッテリパックの絶縁抵抗を算出することができる。これに関しては
図4bで後述する。
【0035】
また、絶縁抵抗算出部230は、算出された絶縁抵抗が予め設定された臨界値(例えば、100kΩ)未満である場合、バッテリパックの時間に対する電圧の変化量に基づいて、絶縁抵抗を再算出することができる。本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置200のように、バッテリパックの(+)または(-)端子のうち一つの端子にのみ測定回路210が設けられた場合、非対称性によって、所定の値未満の絶縁抵抗に対しては正確度が劣り得る。したがって、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置200では、このような限界点を考慮して、臨界値未満の絶縁抵抗算出値に対しては、別の方法により絶縁抵抗を再度算出するようにしている。
【0036】
具体的には、絶縁抵抗算出部230は、算出された絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満である場合、バッテリパックの時間に対する電圧の変化量を用いてバッテリパックの容量の変化量を計算することで、絶縁抵抗を再算出することができる。ここで、絶縁抵抗算出部230は、例えば、格納部240に予め格納されたOCV-SOCテーブルに基づいて、バッテリパックの容量の変化量を算出することができる。
【0037】
また、絶縁抵抗算出部230は、バッテリパックの容量の変化量からリーク電流を計算し、バッテリパックの時間に対する電圧の変化量とリーク電流に基づいて、絶縁抵抗を再算出することができる。
【0038】
例えば、絶縁抵抗算出部230は、算出された絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満である場合、バッテリパックの前の駆動完了時点(例えば、車両の前の始動オフ時点)の電圧と、バッテリパックの駆動開始前の時点(例えば、車両の始動オンの時点)の電圧との差の値に基づいて、絶縁抵抗を再算出することができる。
【0039】
また、絶縁抵抗算出部230は、算出された絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満である場合、バッテリパックの前の駆動完了時点の電圧と、バッテリパックの前の駆動完了時点から予め設定された時間経過後、バッテリ管理システムなどによってウェークアップされるバッテリパックの電圧との差の値に基づいて、絶縁抵抗を再算出することができる。ここで、バッテリパックの前の駆動完了時点からの予め設定された時間は、RTC(real-time clock、リアルタイムクロック)により測定されることができる。
【0040】
以上で説明したように、絶縁抵抗算出部230が、絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満である場合に対して絶縁抵抗を再算出する方法は、様々であることができ、その例示的な過程については、
図5で詳細に後述する。
【0041】
格納部240は、電圧測定部220によって測定された電圧データ、これに基づいて算出された絶縁抵抗データ、バッテリパックの容量の変化量およびリーク電流値などの各種のデータを格納することができる。また、格納部240は、OCV-SOCテーブルを格納することができる。しかし、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置200が必ずしも格納部240を含まなければならないのではなく、通信部(図示せず)を含み、これにより、外部サーバのデータベースからデータを送受信するように構成されることができる。
【0042】
一方、
図2には示されていないが、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置は、アラーム部(図示せず)をさらに含むことができる。アラーム部は、絶縁抵抗算出部230によって算出された絶縁抵抗が予め設定された基準範囲から逸脱した場合、ユーザに警告アラームを提供することができる。例えば、アラーム部は、ランプにより視覚信号で警告通知を提供するか、スピーカーにより警告通知音またはメッセージを生成するなど、様々な方式でユーザに警告アラームを提供することができる。したがって、ユーザを、絶縁抵抗によって発生する感電事故などの恐れから保護することができる。
【0043】
このように、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置によると、バッテリパックの(+)または(-)端子のうち一つの端子とシャーシとの間にのみ測定回路210を連結することで、バッテリ管理システムの大きさを縮小し、費用を低減することができる。また、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置によると、測定回路210のうち一つの区間を除去しても、既存の測定回路と実質的に同等な性能を実現することができる。
【0044】
図3aは従来のバッテリパックで絶縁抵抗を算出することを示す図である。また、
図3bは従来のバッテリパックで絶縁抵抗を算出するための等価回路を示す図である。
【0045】
図3aを参照すると、R
pおよびR
n150は、バッテリパックの絶縁抵抗を示し、R
1およびR
2は、測定回路の測定抵抗およびスイッチ110aを示し、R
m1およびR
m2は、電圧分配用抵抗110bを示す。また、抵抗R
m1とR
m2との間には測定用端子110cが設けられている。
【0046】
図3aに示したように、従来、バッテリパックの(+)端子と(-)端子の両側にいずれも測定抵抗およびスイッチ110aを連結し、両端子のスイッチを交互にオン/オフ制御してR
1とR
2を順に連結することで、バッテリパックの電圧を測定した。
【0047】
具体的には、
図3bを参照すると、
図3aの測定抵抗R
1側スイッチとR
2側スイッチを交互にオンまたはオフにして電圧を測定するための等価回路を示している。このように
図3bの(a)と(b)に対して、電圧測定用端子110cで測定された値と絶縁抵抗の算出式は、以下のように整理して示すことができる。
【0048】
【0049】
【0050】
(ここで、Rp、Rnは、それぞれ、バッテリパックの(+)および(-)側の絶縁抵抗、R1、R2は、測定回路の測定抵抗、Eは、Rm1+Rm2、Cは、バッテリパック電圧、Dは、Rm2/(Rm1+Rm2)、Aは、等価回路(a)の測定用端子側の電圧、Bは、等価回路(b)の測定用端子側の電圧を示す)
【0051】
前記数学式1および数学式2を整理すると、絶縁抵抗は、以下のように算出されることができる。
【0052】
【0053】
このように、従来の絶縁抵抗算出方式によると、絶縁抵抗を比較的正確に算出することはできるが、測定抵抗とスイッチなどによって、測定回路の大きさが増加し、多額の費用が必要となる。したがって、以下で説明するように、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置では、バッテリパックの一端に設けられた測定抵抗とスイッチを省略して、絶縁抵抗を算出することができる。
【0054】
図4aは本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置を用いてバッテリパックの絶縁抵抗を算出することを示す図である。また、
図4bは本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置を用いて、バッテリパックの絶縁抵抗を算出するための等価回路を示す図である。
【0055】
図4aを参照すると、
図3aと同様、R
pおよびR
n250は、バッテリパックの絶縁抵抗を示し、R
1は、測定回路の測定抵抗およびスイッチ210aを示し、R
m1およびR
m2は、電圧分配用抵抗210bを示す。また、抵抗R
m1とR
m2との間には測定用端子210cが設けられている。
【0056】
図4aに示したように、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置では、バッテリパックの(+)端子と(-)端子のうち一つの端子にのみ測定抵抗およびスイッチ210aを連結し、このようなスイッチをオン/オフ制御して、R
1を連結または遮断することで、バッテリパックの電圧を測定することができる。
【0057】
具体的には、
図4bを参照すると、
図4aの測定抵抗R
1側のスイッチをオン/オフ制御することで電圧を測定するための等価回路を示している。このように、
図4bの(a)と(b)に対して、電圧測定用端子210cで測定された値と絶縁抵抗の算出式は、以下のように整理して示すことができる。
【0058】
【0059】
【0060】
(ここで、Rp、Rnは、それぞれ、バッテリパックの(+)および(-)側の絶縁抵抗、R1、R2は、測定回路の測定抵抗、Eは、Rm1+Rm2、Cは、バッテリパック電圧、Dは、Rm2/(Rm1+Rm2)、Aは、等価回路(a)の測定用端子側の電圧、Bは、等価回路(b)の測定用端子側の電圧を示す)
【0061】
前記数学式1および数学式2を整理すると、絶縁抵抗は、以下のように算出されることができる。
【0062】
【0063】
このように、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置によると、バッテリパックの(+)または(-)端子のうち一つの端子とシャーシとの間にのみ測定回路を連結することで、バッテリ管理システムの大きさを縮小し、費用を低減することができる。また、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出方法によると、測定回路のうち一つの区間を除去しても、既存の測定回路と実質的に同等な性能を実現することができる。
【0064】
ただし、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置は、バッテリパックの(+)または(-)端子のうち一つの測定回路を省略したため、回路の非対称性によって、従来の方式に比べて測定の正確度が劣る問題がある。このような問題は、主に算出された絶縁抵抗値が小さくなるほど顕著になるが、このように、絶縁抵抗が小さい場合に対して測定正確度を向上させるために算出された絶縁抵抗が臨界値(例えば、100kΩ)未満になる場合、バッテリパックの電圧を所定時間測定し、リーク電流を計算して、絶縁抵抗を再算出することができる。これに関しては以下で説明する。
【0065】
図5は本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置で絶縁抵抗を算出するためのバッテリパックのOCV-SOCテーブル(グラフ)を示す図である。
図5において、x軸は、SOC(State of charge)(%)を示し、y軸は、OCV(open circuit voltage)(V)を示す。
【0066】
図5では、算出された絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満の場合について説明する。例えば、車両に搭載されたバッテリパックの場合、
図5において、車両の始動をオフにした時点で測定されたバッテリパックの電圧V
1が500Vであり、車両の始動をまたオンにした時点で測定されたバッテリパックの電圧V
2が400Vであると仮定する。
【0067】
このような場合、
図5に示したOCV-SOCテーブルを参照すると、バッテリパックの容量の変化量は、総500Ahに対して100Ahであることが分かる。また、車両が駐車していた時間Δtを100時間とすると、バッテリのリーク電流iは、バッテリの容量の変化量/時間の変化量であり、100Ah/100h=1Aであることが分かる。このように、バッテリパックの電圧の変化量(V1-V2)とリーク電流iに基づいて計算すると、絶縁抵抗は、100V/1A=100Ωと算出されることができる。
【0068】
一方、
図5では、車両の始動がオフになった時点とまたオンになった時点でのバッテリパック電圧の差を算出しているが、始動がオンになる前に車両が駐車中の場合に対しても、RTCを用いて、所定時間経過後、バッテリパックをウェークアップした場合にも、以上で説明したとおりの方法で絶縁抵抗を算出することができる。
【0069】
図6は本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出方法を示すフローチャートである。
【0070】
図6を参照すると、先ず、バッテリパックの(+)端子および(-)端子のうち一つの端子とシャーシとの間に測定回路を連結して電圧を測定する(S110)。例えば、ステップS110での測定回路は、測定抵抗とスイッチを含むことができ、電圧分配用抵抗をさらに含むことができる。
【0071】
また、測定された電圧に基づいてバッテリパックの絶縁抵抗を算出する(S120)。この場合、ステップS120では、測定回路に含まれたスイッチのスイッチング状態による少なくとも一つの等価回路を用いて、バッテリパックの絶縁抵抗を算出することができる。これに関しては、
図4aおよび4bで説明したため、詳細な説明は省略する。
【0072】
次に、算出された絶縁抵抗が予め設定された臨界値(例えば、10kΩ)未満であるか判断する(S130)。仮に、絶縁抵抗が臨界値以上である場合(NO)、算出された絶縁抵抗を最終値と決定する。
【0073】
一方、算出された絶縁抵抗が予め設定された臨界値未満である場合(YES)、バッテリパックの時間に対する電圧の変化量に基づいて絶縁抵抗を再算出することができる。具体的には、先ず、バッテリパックの時間に対する電圧の変化量を測定する(S140)。ここで、バッテリパックの時間に対する電圧の変化量は、バッテリパックの前の駆動完了時点から次の駆動開始時点までの電圧の変化量またはバッテリパックの前の駆動完了時点と、所定時間後にバッテリパックがウェークアップされる時点との間の電圧の変化量などを測定することができる。
【0074】
また、バッテリパックの時間に対する電圧の変化量に基づいてバッテリパックの容量の変化量を算出する(S150)。ここで、ステップS150では予め格納されたOCV-SOCテーブルに基づいてバッテリパックの容量の変化量を算出することができる。
【0075】
また、算出されたバッテリパックの容量の変化量に基づいてリーク電流を計算する(S160)。そして、ステップS140で算出されたバッテリパックの電圧の変化量とステップS160で算出されたリーク電流に基づいて、絶縁抵抗を再算出する(S170)。
【0076】
このように、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置は、バッテリパックの(+)または(-)端子のうち一つの端子にのみ測定回路が設けられており、非対称性によって、所定の値未満の絶縁抵抗に対しては正確度が劣り得る。したがって、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出方法では、このような限界点を考慮して、臨界値未満の絶縁抵抗算出値に対しては、ステップS140~S170に示す方法によって、より正確な絶縁抵抗をまた算出することができる。
【0077】
このように、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出方法によると、バッテリパックの(+)または(-)端子のうち一つの端子とシャーシとの間にのみ測定回路を連結することで、バッテリ管理システムの大きさを縮小し、費用を低減することができる。また、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出方法によると、測定回路のうち一つの区間を除去しても、既存の測定回路と実質的に同等な性能を実現することができる。
【0078】
図7は本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0079】
図7を参照すると、本発明の一実施形態によるバッテリ抵抗算出装置300は、MCU310と、メモリ320と、入出力I/F330と、通信I/F340とを含むことができる。
【0080】
MCU310は、メモリ320に格納されている各種のプログラム(例えば、バッテリ電圧測定プログラム、バッテリ絶縁抵抗算出プログラムなど)を実行させ、このようなプログラムにより、バッテリパックの絶縁抵抗算出などのための各種のデータを処理し、上述の
図2の機能を果たすようにするプロセッサであることができる。
【0081】
メモリ320は、バッテリセルの電圧測定、絶縁抵抗算出などに関する各種のプログラムを格納することができる。また、メモリ320は、バッテリの測定電圧、絶縁抵抗データ、容量の変化量、リーク電流値、OCV-SOCテーブルなど、各種のデータを格納することができる。
【0082】
このようなメモリ320は、必要に応じて、複数個設けられてもよい。メモリ320は、揮発性メモリであっても、不揮発性メモリであってもよい。揮発性メモリとしてのメモリ320は、RAM、DRAM、SRAMなどが使用されることができる。不揮発性メモリとしてのメモリ320は、ROM、PROM、EAROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリなどが使用されることができる。前記例示したメモリ320の例は、単なる例示であって、これらの例に限定されるものではない。
【0083】
入出力I/F330は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置(図示せず)とディスプレイ(図示せず)などの出力装置とMCU310とを連結して、データを送受信できるようにするインタフェースを提供することができる。
【0084】
通信I/F340は、サーバと各種のデータを送受信することができる構成として、有線または無線通信を支援することができる各種の装置であることができる。例えば、通信I/F340を介して別に設けられた外部サーバからバッテリパックの電圧測定と絶縁抵抗算出のためのプログラムや各種のデータなどを送受信することができる。
【0085】
このように、本発明の一実施形態によるコンピュータープログラムは、メモリ320に記録され、MCU310によって処理されることで、例えば、
図2で図示した各機能ブロックを行うモジュールとして実現されることもできる。
【0086】
以上、本発明の実施形態を構成するすべての構成要素は、一つに結合するか、結合して動作するものと説明しているが、本発明は、必ずしもかかる実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的範囲内であれば、そのすべての構成要素が一つ以上に選択的に結合して動作することもある。
【0087】
また、以上に記載の「含む」、「構成する」、または「有する」などの用語は、特別に反対の意味の記載がない限り、当該構成要素が内在し得ることを意味するため、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得るものと解釈すべきである。技術的もしくは科学的な用語を含むすべての用語は、異なる意味に定義されない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。辞書に定義されている用語のように一般的に使用される用語は、関連技術の文脈上の意味と一致するものと解釈すべきであり、本発明で明白に定義しない限り、理想的もしくは過剰に形式的な意味に解釈されない。
【0088】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明しているものに過ぎず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で、様々な修正および変形が可能である。したがって、本発明に開示されている実施形態は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、かかる実施形態よって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、下記の特許請求の範囲によって解釈すべきであり、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【符号の説明】
【0089】
1 バッテリパック
2 上位制御器
10 バッテリモジュール
12 センサ
14 スイッチング部
20 バッテリ管理システム
200 バッテリ抵抗算出装置
210 測定回路
220 電圧測定部
230 絶縁抵抗算出部
240 格納部
300 バッテリ抵抗算出装置
310 MCU
320 メモリ
330 入出力I/F
340 通信I/F