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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/16 20060101AFI20240422BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240422BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240422BHJP
【FI】
H02J3/16
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J3/38 160
H02M7/48 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021043354
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143031
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】小浦 弘之
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-102105(JP,A)
【文献】特開2017-063525(JP,A)
【文献】特開2011-055705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型電源の電力を無限大母線電力系統につながる電力系統に対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を前記電力系統に供給することにより、前記分散型電源を前記電力系統と連系させる電力変換装置であって、
前記分散型電源の前記電力を、前記電力系統に対応した前記交流電力に変換する主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記主回路部の有効電力の大きさと、前記電力系統との連系点で目標の力率とするための前記主回路部の無効電力の大きさ又は力率と、の関係を表す参照データを格納する参照データ格納部と、
前記主回路部の有効電力の大きさを基に、前記参照データ格納部に格納された前記参照データを参照することにより、前記有効電力の大きさに対応する前記主回路部の無効電力の大きさ又は力率を前記参照データから求め、前記参照データから求めた無効電力の大きさ又は力率を基に、前記主回路部の無効電力の大きさを決定し、決定した大きさの無効電力を出力するように、前記主回路部を制御する出力値設定部と、
前記参照データを演算する参照データ演算部と、
を有し、
前記制御部は、前記主回路部を固定力率で運転させ、有効電力の大きさを0%と100%との間で変化させた際の、前記連系点の有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率と、前記主回路部の出力端の有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率と、を前記参照データ演算部に入力し、
前記参照データ演算部は、入力された前記連系点の有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率と、前記主回路部の出力端の有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率と、を基に、前記参照データを演算し、演算した前記参照データを前記参照データ格納部に格納させる電力変換装置。
【請求項2】
前記参照データ演算部は、前記主回路部の出力端の無効電力と前記連系点の無効電力との差分を、前記主回路部の出力端の有効電力の大きさ毎に演算し、演算した差分を前記主回路部の出力端の有効電力の大きさと紐づけてテーブル化することにより、前記参照データを演算する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記参照データ演算部は、前記主回路部の出力端の無効電力と前記連系点の無効電力との差分を、前記主回路部の出力端の有効電力の大きさ毎に演算し、演算した差分と前記主回路部の出力端の有効電力の大きさとの関係を近似式として求めることにより、前記参照データを演算する請求項1記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続された太陽光発電機、風力発電機、バッテリなどの分散型電源を用いた分散型電源システムにおいて、分散型電源の連系点の電圧変動分を補償するように、分散型電源から連系点に無効電力を注入することが行われている。無効電力の注入は、分散型電源の電力を電力系統に応じた電力に変換する電力変換装置によって制御される。
【0003】
例えば、電力変換装置の出力端での力率が一定となるように、連系点に注入する無効電力を制御することが知られている。これにより、分散型電源から注入する有効電力に起因する連系点の電圧変動を抑制することができる。
【0004】
しかしながら、電力変換装置の出力端での力率を一定にする制御では、変圧器やケーブルなどの構成要素の影響により、連系点での無効電力量が変化し、電力変換装置の出力端での力率と連系点での力率とに差異が生じてしまうことがある。こうした力率の差異は、連系点での過補償などの要因となってしまう。
【0005】
これに対して、制御コントローラを用意し、連系点の力率を常時監視することにより、連系点の力率を一定に保つ対策も提案されている。一方で、制御コントローラを用いる対策では、制御コントローラの導入コストが増加してしまう。このため、分散型電源システムにおいては、制御コントローラを用いることなく、電力変換装置での出力調整のみで、連系点の力率の変化をより抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6384426号公報
【文献】特許第6384439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、連系点の力率の変化をより抑制することができる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によれば、分散型電源の電力を無限大母線電力系統につながる電力系統に対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を前記電力系統に供給することにより、前記分散型電源を前記電力系統と連系させる電力変換装置であって、前記分散型電源の前記電力を、前記電力系統に対応した前記交流電力に変換する主回路部と、前記主回路部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記主回路部の有効電力の大きさと、前記電力系統との連系点で目標の力率とするための前記主回路部の無効電力の大きさ又は力率と、の関係を表す参照データを格納する参照データ格納部と、前記主回路部の有効電力の大きさを基に、前記参照データ格納部に格納された前記参照データを参照することにより、前記有効電力の大きさに対応する前記主回路部の無効電力の大きさ又は力率を前記参照データから求め、前記参照データから求めた無効電力の大きさ又は力率を基に、前記主回路部の無効電力の大きさを決定し、決定した大きさの無効電力を出力するように、前記主回路部を制御する出力値設定部と、前記参照データを演算する参照データ演算部と、を有し、前記制御部は、前記主回路部を固定力率で運転させ、有効電力の大きさを0%と100%との間で変化させた際の、前記連系点の有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率と、前記主回路部の出力端の有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率と、を前記参照データ演算部に入力し、前記参照データ演算部は、入力された前記連系点の有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率と、前記主回路部の出力端の有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率と、を基に、前記参照データを演算し、演算した前記参照データを前記参照データ格納部に格納させる電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
連系点の力率の変化をより抑制することができる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る分散型電源システムを模式的に表すブロック図である。
図2】実施形態に係る分散型電源システムの電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図3】参照データ取得動作における有効電力と無効電力との関係の一例を表すグラフである。
図4】制御部の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図5】制御部の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
【0011】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る分散型電源システムを模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、分散型電源システム2は、無限大母線電力系統3につながる電力系統4と、分散型電源6と、電力変換装置10と、を備える。電力系統4の電力は、交流電力である。電力系統4の電力は、例えば、三相交流電力である。
【0013】
分散型電源6は、例えば、ソーラーパネルである。分散型電源6の電力は、直流電力である。電力変換装置10は、分散型電源6と接続されるとともに、変圧器12、14などを介して電力系統4と接続される。電力変換装置10は、分散型電源6の電力を電力系統4に対応した交流電力に変換し、変換後の交流電力を電力系統4に供給することにより、分散型電源6を電力系統4と連系させる。
【0014】
分散型電源6は、ソーラーパネルに限ることなく、例えば、風力発電機やガスタービン発電機などの他の発電機でもよい。また、分散型電源6は、例えば、蓄電池やコンデンサなどの電荷蓄積素子でもよい。分散型電源6の電力は、直流電力に限ることなく、交流電力などでもよい。
【0015】
電力変換装置10は、分散型電源6の出力に基づき、有効電力を電力系統4に供給するとともに、最適な無効電力を電力系統4に供給する。これにより、電力変換装置10は、自身の有効電力の供給の影響によって、電力系統4との連系点LPの電圧が変動してしまうことを抑制する。
【0016】
図2は、実施形態に係る分散型電源システムの電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、電力変換装置10は、主回路部40と、制御部42と、出力計測部44と、を有する。主回路部40は、分散型電源6から供給された直流電力又は交流電力を、電力系統4に対応した交流電力に変換する。制御部42は、主回路部40の動作を制御する。
【0017】
主回路部40は、例えば、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のオン・オフにより、電力の変換を行う。制御部42は、主回路部40の複数のスイッチング素子のオン・オフの切り替えを制御することにより、主回路部40による電力の変換を制御する。主回路部40には、例えば、周知のインバータ回路が用いられる。主回路部40の構成は、上記の電力変換を行うことができる任意の構成でよい。
【0018】
出力計測部44は、主回路部40から出力される交流電力の有効電力値と、無効電力値と、電圧値と、主回路部40の出力端における力率と、を検出し、検出した有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率を制御部42に入力する。
【0019】
分散型電源システム2は、例えば、計測装置20、22をさらに備える。計測装置20は、分散型電源6から電力変換装置10に入力される直流電圧の電圧値Vdc、及び分散型電源6から電力変換装置10に入力される直流電流の電流値Idcを検出し、検出した電圧値Vdc及び電流値Idcを制御部42に入力する。
【0020】
制御部42は、例えば、直流電力を分散型電源6の最大電力点に追従させるMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式の制御を行う。制御部42は、例えば、計測装置20によって検出された電圧値Vdc及び電流値Idcを基に、分散型電源6の最大電力点(最適動作点)を抽出し、抽出した最大電力点に応じた有効電力を電力系統4に供給するように、主回路部40の動作を制御する。
【0021】
但し、電力変換装置10から電力系統4に供給する有効電力の決定方法は、MPPT方式に限るものではない。電力変換装置10から電力系統4に供給する有効電力は、例えば、上位のコントローラなどから入力される有効電力指令値に基づいて決定してもよい。制御部42は、入力された有効電力指令値に応じた有効電力を電力系統4に供給するように、主回路部40の動作を制御してもよい。制御部42は、例えば、分散型電源6の発電量に応じた有効電力を電力系統4に供給するように、主回路部40の動作を制御してもよい。
【0022】
計測装置22は、電力変換装置10の電力系統4との連系点LPの有効電力値Pと、連系点LPの無効電力値Qと、連系点LPの電圧値Vsと、連系点LPにおける力率と、を検出し、検出した有効電力値P、無効電力値Q、電圧値Vs、及び力率を制御部42に入力する。
【0023】
制御部42は、参照データ格納部50と、出力値設定部52と、参照データ演算部54と、を有する。
【0024】
参照データ格納部50は、参照データ60を格納する。参照データ60は、主回路部40の有効電力の大きさと、連系点LPで目標の力率とするための主回路部40の無効電力の大きさ又は力率と、の関係を表す。
【0025】
参照データ60は、主回路部40から電力系統4に所定の大きさの有効電力を出力した際に、連系点LPを目標の力率とするために必要となる主回路部40の無効電力の大きさを表す。あるいは、参照データ60は、主回路部40から電力系統4に所定の大きさの有効電力を出力した際に、連系点LPを目標の力率とするために必要となる主回路部40の力率を表す。
【0026】
参照データ60は、例えば、有効電力の大きさと、無効電力の大きさ又は力率と、の関係をテーブル又は近似式の形式で表す。これにより、制御部42では、所定の大きさの有効電力を主回路部40から電力系統4に出力する際に、参照データ60を参照することで、連系点LPを目標の力率とするために必要な主回路部40の無効電力の大きさ又は力率を把握することができる。
【0027】
出力値設定部52には、計測装置20で計測された分散型電源6の電圧値Vdc及び電流値Idcが入力される。出力値設定部52は、例えば、電圧値Vdc及び電流値Idcに基づくMPPT方式の制御によって主回路部40の有効電力の大きさを決定する。出力値設定部52は、主回路部40の有効電力の大きさを決定した後、決定した有効電力の大きさを基に、参照データ格納部50に格納された参照データ60を参照することにより、決定した有効電力の大きさに対応する主回路部40の無効電力の大きさ又は力率を参照データ60から求める。
【0028】
なお、電圧値Vdc及び電流値Idcに基づく有効電力の大きさの決定方法は、MPPT方式に限ることなく、他の方法でもよい。出力値設定部52は、例えば、外部から入力される有効電力指令値に基づいて有効電力の大きさを決定してもよいし、出力計測部44によって計測された主回路部40の現在の有効電力値に基づいて有効電力の大きさを決定してもよい。
【0029】
出力値設定部52は、例えば、有効電力の大きさを基に、テーブルデータである参照データ60を参照することにより、有効電力の大きさに対応する無効電力の大きさ又は力率を求める。あるいは、出力値設定部52は、近似式である参照データ60に有効電力の大きさを代入することにより、有効電力の大きさに対応する無効電力の大きさ又は力率を求める。
【0030】
出力値設定部52は、参照データ60から求めた無効電力の大きさ又は力率を基に、主回路部40の無効電力の大きさを決定し、決定した大きさの有効電力及び無効電力を出力するように、主回路部40を制御する。出力値設定部52は、主回路部40の複数のスイッチング素子のオン・オフを切り替えることにより、決定した大きさの有効電力及び無効電力を、主回路部40から電力系統4に供給する。
【0031】
計測装置20は、例えば、分散型電源6から電力変換装置10に入力される直流電圧の電圧値Vdc、及び分散型電源6から電力変換装置10に入力される直流電流の電流値Idcを定期的に検出し、電圧値Vdc及び電流値Idcを定期的に出力値設定部52に入力する。
【0032】
出力値設定部52は、電圧値Vdc及び電流値Idcが入力される毎に、主回路部40の有効電力及び無効電力の大きさを決定し、決定した大きさの有効電力及び無効電力を主回路部40から電力系統4に供給する。出力値設定部52は、上記の処理を繰り返すことにより、分散型電源6に応じた大きさの有効電力を電力系統4に供給するとともに、有効電力の大きさに対応した大きさの無効電力を電力系統4に随時供給する。
【0033】
このように、有効電力及び無効電力を電力系統4に供給することにより、電力変換装置10から電力系統4への有効電力の供給の影響による連系点LPの電圧の変動を抑制することができる。例えば、連系点LPの電圧値Vsの変動を±2%以内に抑えることができる。
【0034】
制御部42は、例えば、電力変換装置10が連系点LPに接続された運用開始時などの所定のタイミングにおいて、参照データ60を取得する参照データ取得動作を行う。制御部42は、例えば、図示を省略した操作部を有し、オペレータなどによる操作部の操作に基づいて、参照データ取得動作を行う。制御部42は、例えば、上位のコントローラなどの外部の機器と通信を行い、外部から入力される制御信号に基づいて、参照データ取得動作を行ってもよい。
【0035】
制御部42は、参照データ取得動作においては、例えば、主回路部40を固定力率で運転させ、有効電力の大きさを0%と100%との間で変化させる。換言すれば、制御部42は、固定力率で有効電力の大きさを0%から100%又は100%から0%に変化させる。参照データ取得動作における固定の力率は、連系点LPにおいて目標とする力率である。主回路部40の有効電力の大きさの100%は、換言すれば、主回路部40の定格出力である。
【0036】
制御部42は、固定力率で有効電力の大きさを0%と100%との間で変化させた際に、計測装置22によって検出された連系点LPの有効電力値P、無効電力値Q、電圧値Vs、及び力率と、出力計測部44によって検出された主回路部40の出力端の有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率と、を参照データ演算部54に入力する。
【0037】
参照データ演算部54は、参照データ取得動作の際に、入力された連系点LPの有効電力値P、無効電力値Q、電圧値Vs、及び力率と、主回路部40の出力端の有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率と、を基に、参照データ60を演算する。
【0038】
図3は、参照データ取得動作における有効電力と無効電力との関係の一例を表すグラフである。
図3では、固定力率を約100%とし、主回路部40の出力端の有効電力の大きさを0%から100%に変化させて参照データ取得動作を行った際の、主回路部40の出力端における無効電力の一例と、連系点LPの無効電力の一例と、を表している。
【0039】
図3に表したように、主回路部40の出力端の無効電力は、力率を約100%とするため、有効電力の大きさの0%から100%までの範囲において、約0Mvarで一定に制御されている。
【0040】
これに対し、連系点LPの無効電力は、変圧器12、14やケーブルのインピーダンスの影響などにより、主回路部40の出力端の無効電力と比べて変化している。換言すれば、主回路部40の出力端の力率が一定になるように制御した場合にも、連系点LPの力率が変化している。
【0041】
参照データ演算部54は、例えば、主回路部40の出力端の無効電力と連系点LPの無効電力との差分を、主回路部40の出力端の有効電力の大きさ毎に演算し、演算した差分を主回路部40の出力端の有効電力の大きさと紐づけてテーブル化することにより、参照データ60を演算する。
【0042】
例えば、図3の例において、有効電力の大きさが100%の時の主回路部40の出力端の無効電力と連系点LPの無効電力との差分は、約-7Mvarである。この場合には、主回路部40の出力端の無効電力の大きさを+7Mvarとすることで、連系点LPにおける無効電力の変化を抑制することができる。換言すれば、連系点LPにおける力率の変化を抑制し、連系点LPの力率を目標とする力率に近付けることができる。
【0043】
参照データ演算部54は、例えば、主回路部40の出力端の無効電力と連系点LPの無効電力との差分を、主回路部40の出力端の有効電力の大きさ毎に演算し、演算した差分と主回路部40の出力端の有効電力の大きさとの関係を近似式として求めることにより、参照データ60を演算してもよい。
【0044】
参照データ演算部54は、演算した参照データ60を参照データ格納部50に入力し、参照データ格納部50に参照データ60を格納させる。これにより、参照データ格納部50に参照データ60を格納させた後には、上記のように、所定の大きさの有効電力を主回路部40から電力系統4に出力する際に、参照データ60を参照することで、連系点LPを目標の力率とするために必要な主回路部40の無効電力の大きさ又は力率を、参照データ60から求めることができる。
【0045】
なお、連系点LPに複数台の電力変換装置10が接続されている場合には、複数台の電力変換装置10のそれぞれについて個別に参照データ取得動作を行う。1台の電力変換装置10の参照データ取得動作を行う場合には、他の電力変換装置10を停止させる。これにより、他の電力変換装置10から出力される有効電力や無効電力などの影響を抑制しつつ、連系点LPと1台の電力変換装置10との間の経路上の構成要素の影響を反映させ、参照データ60を適切に演算することができる。
【0046】
図4は、制御部の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図4は、制御部42の参照データ取得動作の一例を模式的に表す。
図4に表したように、制御部42は、参照データ取得動作においては、主回路部40を固定力率で運転させ、有効電力の大きさを0%と100%との間で変化させ、計測装置22によって検出された連系点LPの有効電力値P、無効電力値Q、電圧値Vs、及び力率と、出力計測部44によって検出された主回路部40の出力端の有効電力値、無効電力値、電圧値、及び力率と、を計測情報として取得する(図4のステップS101)。制御部42は、取得した計測情報を参照データ演算部54に入力する。
【0047】
参照データ演算部54は、例えば、主回路部40の出力端の無効電力と連系点LPの無効電力との差分を、主回路部40の出力端の有効電力の大きさ毎に演算し、演算した差分を主回路部40の出力端の有効電力の大きさと紐づけてテーブル化することにより、参照データ60を演算する。あるいは、参照データ演算部54は、主回路部40の出力端の無効電力と連系点LPの無効電力との差分を、主回路部40の出力端の有効電力の大きさ毎に演算し、演算した差分と主回路部40の出力端の有効電力の大きさとの関係を近似式として求めることにより、参照データ60を演算する(図4のステップS102)。
【0048】
参照データ演算部54は、演算した参照データ60を参照データ格納部50に入力し、参照データ格納部50に参照データ60を格納させる。
【0049】
図5は、制御部の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図5は、制御部42の通常動作の一例を模式的に表す。
図5に表したように、制御部42の出力値設定部52は、通常動作においては、まず、電圧値Vdc及び電流値Idcに基づくMPPT方式の制御などによって主回路部40の現在の有効電力の大きさを決定する。出力値設定部52は、主回路部40の有効電力の大きさを決定した後、参照データ格納部50に格納された参照データ60を参照することにより、決定した有効電力の大きさに対応する主回路部40の無効電力の大きさ又は力率を参照データ60から求める(図5のステップS201)。
【0050】
出力値設定部52は、参照データ60から求めた無効電力の大きさ又は力率を基に、主回路部40の無効電力の大きさを決定し、決定した大きさの有効電力及び無効電力を出力するように、主回路部40を制御することにより、決定した大きさの有効電力及び無効電力を、主回路部40から電力系統4に供給する(図5のステップS202)。
【0051】
出力値設定部52は、電圧値Vdc及び電流値Idcが入力される毎などにおいて、ステップS201及びステップS202の処理を繰り返す。これにより、電力変換装置10から電力系統4への有効電力の供給の影響による連系点LPの電圧の変動を抑制することができる。
【0052】
このように、本実施形態に係る電力変換装置10によれば、制御部42が、参照データ格納部50を有し、参照データ格納部50に格納された参照データ60を参照することにより、主回路部40から出力する有効電力の大きさに対応し、連系点LPを目標の力率とするために必要な主回路部40の無効電力の大きさ又は力率を参照データ60から求めることができる。
【0053】
これにより、本実施形態に係る電力変換装置10では、連系点LPの力率を常時監視する制御コントローラなどを必要とすることなく、電力変換装置10での出力調整のみで、連系点LPの力率の変化をより抑制することができる。例えば、連系点LPでの無効電力の過補償によるフリッカ発生などを抑制し、電力品質の維持に寄与することができる。また、本実施形態に係る電力変換装置10では、制御コントローラなどを必要としないため、分散型電源システム2のコストダウンを図ることもできる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
2…分散型電源システム、 3…無限大母線電力系統、 4…電力系統、 5…電源設備、 6…分散型電源、 10…電力変換装置、 12、14…変圧器、 20、22…計測装置、 40…主回路部、 42…制御部、 44…出力計測部、 50…参照データ格納部、 52…出力値設定部、 54…参照データ演算部、 60…参照データ
図1
図2
図3
図4
図5