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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】摺動部品
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/04 20060101AFI20240422BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20240422BHJP
   F04C 18/02 20060101ALI20240422BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F16C17/04 Z
F16C33/20 Z
F04C18/02 311P
F04C29/00 A
F04C29/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022535277
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2021024941
(87)【国際公開番号】W WO2022009768
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020116357
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓志
(72)【発明者】
【氏名】徳永 雄一郎
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-362289(JP,A)
【文献】特開2008-51030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00
-17/26
F16C 33/00
-33/28
F04C 2/00
- 2/077
F04C 18/00
-18/077
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外に高圧と低圧の流体が面する円環形状を成し、偏心回転を伴って相対摺動する摺動面を有する摺動部品であって、
前記摺動面には、高圧の流体が存在する空間に開口する高圧溝と、低圧の流体が存在する空間に開口する低圧溝と、がそれぞれ周方向に複数設けられている摺動部品。
【請求項2】
前記低圧溝は、前記高圧溝よりも前記摺動面と平行な方向の面積が大きい請求項1に記載の摺動部品。
【請求項3】
前記高圧溝と前記低圧溝は、内外交互に配置されている請求項1または2に記載の摺動部品。
【請求項4】
前記高圧溝と前記低圧溝は、周方向にそれぞれ等配されている請求項1ないし3のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項5】
前記高圧溝と前記低圧溝は、円の一部から形成された形状である請求項1ないし4のいずれかに記載の摺動部品。
【請求項6】
前記低圧の流体が存在する空間は、前記摺動面の外径側の空間である請求項1ないし5のいずれかに記載の摺動部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心機構を含む回転機械に用いられる摺動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野で利用されている回転駆動を伴う機械は、中心軸が定位置に保持されたまま回動する回転機械だけではなく、中心軸が偏心を伴って回転する回転機械がある。偏心を伴って回転する回転機械の一つにスクロール圧縮機等があり、この種の圧縮機は、端板の表面に渦巻状のラップを備える固定スクロール、端板の表面に渦巻状のラップを備える可動スクロールからなるスクロール圧縮機構、回転軸を偏心回転させる偏心機構等を備え、可動スクロールを回転軸の回転により固定スクロールに対して偏心回転を伴わせながら相対摺動させることにより、両スクロールの外径側の低圧室から供給された流体を加圧し、固定スクロールの中央に形成される吐出孔から高圧の流体を吐出させる機構となっている。
【0003】
可動スクロールを固定スクロールに対して偏心回転を伴わせながら相対的に摺動させるメカニズムを利用したこれらスクロール圧縮機は、圧縮効率が高いだけではなく、低騒音であることから、例えば冷凍サイクル等多岐に利用されているが、両スクロール間の軸方向隙間からの流体漏れが発生するといった問題があった。特許文献1に示されるスクロール圧縮機は、可動スクロールの背面側において可動スクロールと相対摺動するスラストプレートを備え、このスラストプレートの背面側に形成される背圧室にスクロール圧縮機構により圧縮された冷媒の一部を供給し、可動スクロールを固定スクロールに向けて押圧することにより、冷媒の圧縮時において両スクロール間の軸方向隙間からの冷媒漏れを低減できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-61208号公報(第5頁~第6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるスクロール圧縮機においては、スクロール圧縮機構により圧縮される冷媒の一部を利用しスラストプレートを介して可動スクロールを背面側から固定スクロールに向けて押圧させていることから、両スクロール間の軸方向隙間からの冷媒漏れを低減できるものの、両スクロール間、特に可動スクロールとスラストプレートとの偏心回転を伴う摺動面において、軸方向両側から押圧力が作用するため摩擦抵抗が大きくなり、可動スクロールの円滑な動作が阻害され圧縮効率を高められないといった問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、偏心回転を伴う摺動面の摩擦抵抗を安定して低減することができる摺動部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の摺動部品は、
内外に高圧と低圧の流体が面する円環形状を成し、偏心回転を伴って相対摺動する摺動面を有する摺動部品であって、
前記摺動面には、高圧の流体が存在する空間に開口する高圧溝と、低圧の流体が存在する空間に開口する低圧溝と、がそれぞれ周方向に複数設けられている。
これによれば、偏心回転に伴う高圧溝および低圧溝の相対移動の方向に応じて、摺動部品の内外の空間に存在する流体を利用して周方向に設けられるいずれかの高圧溝内および低圧溝内で動圧が発生し、摺動面同士がわずかに離間し流体膜が形成される。これにより摺動時における潤滑性が向上し、摺動面の摩擦抵抗を安定して低減することが可能となる。
【0008】
前記低圧溝は、前記高圧溝よりも前記摺動面と平行な方向の面積が大きくてもよい。
これによれば、偏心回転に伴う高圧溝および低圧溝の相対移動の方向に応じて、低圧溝内で発生する動圧と、高圧溝内で発生する動圧とのバランスを取りやすい。そのため、摺動部品は動圧発生による振動や傾き等が抑制されている。
【0009】
前記高圧溝と前記低圧溝は、内外交互に配置されていてもよい。
これによれば、偏心回転に伴う高圧溝および低圧溝の相対移動の方向によらず、内外交互に配置される高圧溝内および低圧溝内のいずれかで動圧が発生するため、摺動面の周方向に亘って発生する動圧のバランスがよい。
【0010】
前記高圧溝と前記低圧溝は、周方向にそれぞれ等配されていてもよい。
これによれば、高圧溝内および低圧溝内でそれぞれ発生する動圧により、摺動面同士を周方向に略均等に離間させることができる。
【0011】
前記高圧溝と前記低圧溝は、円の一部から形成された形状でもよい。
これによれば、偏心回転に伴う高圧溝および低圧溝の相対移動の方向に応じて、高圧溝と低圧溝の円弧形状の壁面に沿ってそれぞれ安定した動圧を発生させることができる。
【0012】
前記低圧の流体が存在する空間は、前記摺動面の外径側の空間であってもよい。
これによれば、摺動面の外径側に低圧溝が形成されるため、低圧溝の開口や摺動面と平行な方向の面積を大きく確保しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施例1の摺動部品としてのサイドシールが適用されるスクロール圧縮機を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施例1のサイドシールの摺動面を示す図である。
図3】摺動面における高圧溝および低圧溝を示す一部拡大図である。
図4】本発明の実施例1のサイドシールの摺動面とスラストプレートの摺動面との相対摺動を示す図である。尚、(a)を開始位置として、(b)は90度、(c)は180度、(d)は270度まで回転軸が偏心回転したときに相対摺動するサイドシールの摺動面とスラストプレートの摺動面との位置関係を示している。
図5図4(a)に示されるサイドシールの摺動面において、回転軸の偏心回転に伴う溝の相対移動により複数の溝内に発生する圧力の分布を示す図である。
図6図4(b)に示されるサイドシールの摺動面において、回転軸の偏心回転に伴う溝の相対移動により複数の溝内に発生する圧力の分布を示す図である。
図7図4(c)に示されるサイドシールの摺動面において、回転軸の偏心回転に伴う溝の相対移動により複数の溝内に発生する圧力の分布を示す図である。
図8図4(d)に示されるサイドシールの摺動面において、回転軸の偏心回転に伴う溝の相対移動により複数の溝内に発生する圧力の分布を示す図である。
図9】本発明に係る実施例2のサイドシールの摺動面を示す図である。
図10】本発明に係る実施例3のサイドシールの摺動面を示す図である。
図11】本発明に係る実施例4のサイドシールの摺動面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る摺動部品を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1に係る摺動部品につき、図1から図8を参照して説明する。説明の便宜上、図面において、摺動部品の摺動面に形成される溝等にドットを付している。
【0016】
本発明の摺動部品は、偏心機構を含む回転機械、例えば自動車等の空調システムに用いられる流体としての冷媒を吸入、圧縮、吐出するスクロール圧縮機Cに適用される。尚、本実施例において、冷媒は気体であり、ミスト状の潤滑油が混合した状態となっている。
【0017】
先ず、スクロール圧縮機Cについて説明する。図1に示されるように、スクロール圧縮機Cは、ハウジング1と、回転軸2と、インナーケーシング3と、スクロール圧縮機構4と、摺動部品としてのサイドシール7と、スラストプレート8と、駆動モータMと、から主に構成されている。
【0018】
ハウジング1は、円筒状のケーシング11と、ケーシング11の一方の開口を閉塞するカバー12と、から構成されている。ケーシング11の内部には、低圧室20と、高圧室30と、背圧室50と、が形成されている。低圧室20には、図示しない冷媒回路から吸入口10を通して低圧の冷媒が供給されている。高圧室30には、スクロール圧縮機構4により圧縮された高圧の冷媒が吐出されている。背圧室50には、スクロール圧縮機構4により圧縮された冷媒の一部が潤滑油と共に供給されている。尚、背圧室50は、ケーシング11の内部に収容される円筒状のインナーケーシング3の内部に形成されている。
【0019】
カバー12には、吐出連通路13が形成されている。吐出連通路13は、図示しない冷媒回路と高圧室30とを連通している。また、カバー12には、高圧室30と背圧室50とを連通する背圧連通路14の一部が吐出連通路13から分岐して形成されている。尚、吐出連通路13には、冷媒から潤滑油を分離するオイルセパレータ6が設けられている。
【0020】
インナーケーシング3は、その一方の端をスクロール圧縮機構4を構成する固定スクロール41の端板41aに当接させた状態で固定されている。また、インナーケーシング3の一方の端部には、径方向に貫通する吸入連通路15が形成されている。すなわち、低圧室20は、インナーケーシング3の外部から吸入連通路15を介してインナーケーシング3の内部まで形成されている。吸入連通路15を通ってインナーケーシング3の内部まで供給された冷媒は、スクロール圧縮機構4に吸入される。
【0021】
スクロール圧縮機構4は、固定スクロール41と、可動スクロール42と、から主に構成されている。固定スクロール41は、カバー12に対して略密封状に固定されている。可動スクロール42は、インナーケーシング3の内部に収容されている。
【0022】
固定スクロール41は、金属製であり、渦巻状のラップ41bを備えている。渦巻状のラップ41bは、円板状の端板41aの表面、すなわち端板41aの一方の端面から突設されている。また、固定スクロール41には、端板41aの背面、すなわち端板41aの他方の端面の内径側に凹む凹部41cが形成されている。この凹部41cとカバー12の端面とから高圧室30が画成されている。
【0023】
可動スクロール42は、金属製であり、渦巻状のラップ42bを備えている。渦巻状のラップ42bは、円板状の端板42aの表面、すなわち端板42aの一方の端面から突設されている。また、可動スクロール42には、端板42aの背面、すなわち端板42aの他方の端面の中央から突出するボス42cが形成されている。ボス42cには、回転軸2の一方の端部に形成される偏心部2aが相対回転可能に挿嵌される。尚、本実施例においては、回転軸2の偏心部2aと、回転軸2の一方の端部から外径方向に突出するカウンタウエイト部2bとにより、回転軸2を偏心回転させる偏心機構が構成されている。
【0024】
回転軸2が駆動モータMにより回転駆動されると、偏心部2aが偏心回転し、可動スクロール42が固定スクロール41に対して姿勢を保った状態で偏心回転を伴って相対摺動する。このとき、固定スクロール41に対して可動スクロール42は偏心回転し、この回転に伴いラップ41b,42bの接触位置は回転方向に順次移動し、ラップ41b,42b間に形成される圧縮室40が中央に向かって移動しながら次第に縮小していく。これにより、スクロール圧縮機構4の外径側に形成される低圧室20から圧縮室40に吸入された冷媒が圧縮されていき、最終的に固定スクロール41の中央に設けられる吐出孔41dを通して高圧室30に高圧の冷媒が吐出される。
【0025】
次いで、本実施例における摺動部品としてのサイドシール7について説明する。図2および図3に示されるように、サイドシール7は、樹脂製であり、断面矩形状かつ軸方向視円環状を成している。また、サイドシール7は、可動スクロール42の端板42aの背面に固定されている(図1参照)。尚、図2図3では、サイドシール7の摺動面7aが図示されている。
【0026】
サイドシール7の一方の側面には、スラストプレート8の摺動面8aに当接する摺動面7aが形成されている。
【0027】
図2に示されるように、サイドシール7の摺動面7aは、ランド79と、複数の高圧溝71と、複数の低圧溝72とから構成されている。高圧溝71は、ランド79の平坦な表面79aよりも凹んで、かつ、その内径側において高圧の流体が存在する空間である背圧室50(図1参照)に開口して形成されている。低圧溝72は、ランド79の平坦な表面79aよりも凹んで、かつ摺動面7aの外径側において低圧の流体が存在する空間である低圧室20(図1参照)に開口して形成されている。高圧溝71および低圧溝72は、摺動面7aの周方向において内外交互かつそれぞれが略等配に配設されている。
【0028】
図3に示されるように、高圧溝71は、摺動面7aの最内径に中心P1を有する略半円形に形成されている。また、低圧溝72は、摺動面7aの最外径に中心P2を有する略半円形に形成されている。言い換えれば、高圧溝71および低圧溝72は、摺動面7aと平行な方向すなわち軸方向視で円の一部から形成されている。
【0029】
詳しくは、高圧溝71は、壁面71aと、底面71bから形成されている。壁面71aは、ランド79の表面79aに略直交して延設され、一定の曲率半径を有し、略半円弧形状に連続して形成されている。底面71bは、壁面71aの端部に略直交してランド79の表面79aと略平行に延設され平面状に形成されている。尚、各高圧溝71は同じ大きさであるがそれぞれの大きさが異なっていてもよい。
【0030】
低圧溝72は、壁面72aと、底面72bから形成されている。壁面72aは、ランド79の表面79aに略直交して延設され、一定の曲率半径を有し、略半円弧形状に連続して形成されている。底面72bは、壁面72aの端部に略直交してランド79の表面79aと略平行に延設され平面状に形成されている。尚、各低圧溝72は同じ大きさであるがそれぞれの大きさが異なっていてもよい。
【0031】
尚、高圧溝71の底面71bおよび低圧溝72の底面72bは、摺動面7aと略平行に延びる平面状に形成されるものに限らず、例えば傾斜面や湾曲面として形成されてもよい。
【0032】
また、ランド79の表面79aから高圧溝71の底面71bまでの寸法である高圧溝71の深さ寸法と、ランド79の表面79aから低圧溝72の底面72bまでの寸法である低圧溝72の深さ寸法は略同一寸法であり、スラストプレート8の摺動面8aとの相対摺動に伴って摺動面7a,8a同士を離間させる動圧を発生可能な深さに形成されている。尚、高圧溝71と低圧溝72の深さ寸法は略同一寸法に形成されるものに限らない。
【0033】
また、低圧溝72は、高圧溝71よりも摺動面7aと平行な方向の面積(すなわち軸方向視面積)が大きく形成されている。詳しくは、低圧溝72における中心P2から壁面72aまでの寸法である低圧溝72の半径R2は、高圧溝71における中心P1から壁面71aまでの寸法である高圧溝71の半径R1よりも長く(R1<R2)なっている。
【0034】
また、低圧溝72の周方向の寸法L2は、隣接する低圧溝72間におけるランド部分の周方向の寸法L4よりも長く(L2>L4)なっている。すなわち、摺動面7aの周方向に亘って複数の低圧溝72が密に形成されており、摺動面7aの外径側の空間から流体が流入する低圧溝72の開口面積が大きくなっている。
【0035】
また、低圧溝72は、壁面72aが摺動面7aの径方向中央よりも内径側の位置まで延びている。これにより、低圧溝72内に流体を保持するための容量が大きくなっている。
【0036】
また、低圧溝72の周方向の寸法L2は、隣接する高圧溝71間におけるランド部分の周方向の寸法L3よりも短く(L2<L3)なっており、高圧溝71の周方向の寸法L1は、隣接する低圧溝72間におけるランド部分の周方向の寸法L4よりも短く(L1<L4)なっている。
【0037】
図1を参照し、スラストプレート8は、金属製であり、円環状を成している。該スラストプレート8の一方の端面には、シールリング43が固定されている。また、シールリング43は、インナーケーシング3の内側面に当接している。これにより、スラストプレート8は、サイドシール7を介して可動スクロール42の軸方向の荷重を受けるスラスト軸受として機能している。
【0038】
また、サイドシール7とシールリング43は、インナーケーシング3の内部において、可動スクロール42の外径側に形成される低圧室20と可動スクロール42の背面側に形成される背圧室50とを区画している。背圧室50は、インナーケーシング3と回転軸2の間に形成された密閉区間である。シールリング44は、インナーケーシング3の他方の端の中央に設けられる貫通孔3aの内周に固定され、貫通孔3aに挿通される回転軸2に密封状に摺接する。また、高圧室30と背圧室50とを連通する背圧連通路14は、カバー12、固定スクロール41、インナーケーシング3に亘って形成されている。また、背圧連通路14には、図示しないオリフィスが設けられており、オリフィスにより減圧調整された高圧室30の冷媒がオイルセパレータ6で分離された潤滑油と共に背圧室50に供給されるようになっている。これにより、背圧室50内の圧力は、低圧室20内の圧力よりも高くなるように調整されている。尚、インナーケーシング3には、径方向に貫通し、低圧室20と背圧室50とを連通する圧力抜き孔16が形成されている。また、圧力抜き孔16内には圧力調整弁45が設けられている。圧力調整弁45は、背圧室50の圧力が設定値を上回ることで開放するようになっている。
【0039】
また、スラストプレート8の中央の貫通孔8bには、可動スクロール42のボス42cが挿通されている。貫通孔8bは、ボス42cに挿嵌される回転軸2の偏心部2aによる偏心回転を許容できる径の大きさに形成されている。すなわち、サイドシール7の摺動面7aは、回転軸2の偏心回転によりスラストプレート8の摺動面8aに対して偏心回転を伴って相対摺動できるようになっている(図4参照)。
【0040】
尚、図4においては、図4(a)~(d)は、固定スクロール41側(図1参照)から見た場合のボス42cの回転軌跡のうち、黒矢印で示す図4(a)を時計周り方向の基準として、ボス42cがそれぞれ90度、180度、270度回転した状態を示している。また、サイドシール7の摺動面7aとスラストプレート8の摺動面8aとの摺動領域をドットにより模式的に示している。また、説明の便宜上、回転軸2については、ボス42cに挿嵌される偏心部2aのみを図示し、偏心機構を構成するカウンタウエイト部2b等の図示を省略している。
【0041】
このように、サイドシール7は、スラストプレート8の摺動面8aに対して偏心回転を伴って相対摺動する摺動面7aを有する摺動部品である。
【0042】
次に、スラストプレート8に対するサイドシール7の相対摺動時における動圧の発生について、図5図8を参照して説明する。尚、高圧溝71内および低圧溝72内には、回転停止時であっても冷媒および潤滑油等を含む流体が流入している。また、図5図8では、駆動モータM側(図1参照)から見た場合のサイドシール7がそれぞれ図示されており、高圧溝71の壁面71aおよび低圧溝72の壁面72aに示される丸印は、各高圧溝71および各低圧溝72において圧力が最も高くなる箇所を示している。
【0043】
説明の便宜上、図示を省略するが、スラストプレート8(図1参照)に対するサイドシール7の相対摺動時には、サイドシール7が移動する場合に、高圧溝71内および低圧溝72内の流体がサイドシール7の移動方向に対して略反対方向にせん断力を受け該方向に移動する。
【0044】
これにより、高圧溝71の壁面71aおよび低圧溝72の壁面72aにおいて流体の圧力が高められ正圧の動圧が発生する。尚、以下の説明において、正圧の動圧については単に動圧と記載する場合もある。
【0045】
動圧の発生により、摺動面7a,8a同士がわずかに離間され、摺動面7a,8a間に流入する流体によって流体膜が形成される。これにより、摺動面7a,8a同士の潤滑性が良好となるため、摺動面7a,8a間の摩擦抵抗が減少する。
【0046】
次いで、サイドシール7の全体に亘る動圧の発生について説明する。図5を参照して、白矢印で示されるようにサイドシール7が図4(a)の回転状態から図4(b)の回転状態に向かって移動しようとすると、流体が白矢印に対して反対方向に向かって相対移動する。各高圧溝71内では、高圧溝71内の流体が壁面71aの右上側の領域に向かって移動し動圧が発生し、また各低圧溝72内では、低圧溝72内の流体が壁面72aの右上側の領域に向かって移動し動圧が発生する。すなわち、紙面右方から紙面上方にかけて摺動面7aの内径側において180度程度の範囲に形成される各高圧溝71内で動圧が発生するとともに、紙面左方から紙面下方にかけて摺動面7aの外径側において180度程度の範囲に形成される各低圧溝72内で動圧が発生する。
【0047】
また、図6を参照して、白矢印で示されるようにサイドシール7が図4(b)の回転状態から図4(c)の回転状態に向かって移動しようとすると、流体が白矢印に対して反対方向に向かって相対移動する。各高圧溝71内では、高圧溝71内の流体が壁面71aの左上側の領域に向かって移動し動圧が発生し、また各低圧溝72内では、低圧溝72内の流体が壁面72aの左上側の領域に向かって移動し動圧が発生する。すなわち、紙面上方から紙面左方にかけて摺動面7aの内径側において180度程度の範囲に形成される各高圧溝71内で動圧が発生するとともに、紙面下方から紙面右方にかけて摺動面7aの外径側において180度程度の範囲に形成される各低圧溝72内で動圧が発生する。
【0048】
また、図7を参照して、白矢印で示されるようにサイドシール7が図4(c)の回転状態から図4(d)の回転状態に向かって移動しようとすると、流体が白矢印に対して反対方向に向かって相対移動する。各高圧溝71内では、高圧溝71内の流体が壁面71aの左下側の領域に向かって移動し動圧が発生し、また各低圧溝72内では、低圧溝72内の流体が壁面72aの左下側の領域に向かって移動し動圧が発生する。すなわち、紙面左方から紙面下方にかけて摺動面7aの内径側において180度程度の範囲に形成される各高圧溝71内で動圧が発生するとともに、紙面右方から紙面上方にかけて摺動面7aの外径側において180度程度の範囲に形成される各低圧溝72内で動圧が発生する。
【0049】
また、図8を参照して、白矢印で示されるようにサイドシール7が図4(d)の回転状態から図4(a)の回転状態に向かって移動しようとすると、流体が白矢印に対して反対方向に向かって相対移動する。各高圧溝71内では、高圧溝71内の流体が壁面71aの右下側の領域に向かって移動し動圧が発生し、また各低圧溝72内では、低圧溝72内の流体が壁面72aの右下側の領域に向かって移動し動圧が発生する。すなわち、紙面下方から紙面右方にかけて摺動面7aの内径側において180度程度の範囲に形成される各高圧溝71内で動圧が発生するとともに、紙面上方から紙面左方にかけて摺動面7aの外径側において180度程度の範囲に形成される各低圧溝72内で動圧が発生する。
【0050】
また、摺動面7aに高圧溝71および低圧溝72が形成されるサイドシール7は、相対摺動するスラストプレート8と比べて径方向の幅が狭くなっている(図1および図4参照)。これによれば、偏心回転を伴って相対摺動する摺動面7a,8a間において、サイドシール7の摺動面7a全体が常にスラストプレート8の摺動面8aとの摺動領域内(図4参照)に位置する。これにより、高圧溝71および低圧溝72は動圧を確実に発生させることができる。
【0051】
また、高圧溝71および低圧溝72は、壁面71a,72aが軸方向視略半円弧形状に形成されているため、各高圧溝71および各低圧溝72においては、ボス42cの回転角度に応じて壁面71a,72aに生じる圧力の箇所は該壁面71a,72aに沿って180度程度の範囲で徐々に移動していく(図5図8参照)。
【0052】
また、高圧溝71および低圧溝72は、略半円弧形状の壁面71a,72aがそれぞれ同じ曲率半径で連続しているため、それぞれの高圧溝71および低圧溝72において偏心回転角度によらず、発生する圧力は略同一である。これにより、摺動面7a,8a間においてそれぞれの高圧溝71および低圧溝72で発生する動圧は急激に変化が起こり難く、該発生する動圧は安定する。
【0053】
加えて、本実施例においては、低圧溝72が高圧溝71よりも軸方向視面積が大きく形成されており、高圧溝71内で発生する圧力と低圧溝72内で発生する圧力が略同一となるようにバランスが取られている。
【0054】
また、高圧溝71および低圧溝72は、摺動面7aの周方向において内外交互かつそれぞれが略等配に配設されている。そのため、偏心回転に伴う高圧溝71および低圧溝72の相対移動の方向に応じて、摺動面7aの内径側において180度程度の範囲に形成される各高圧溝71内に動圧が発生するとともに、当該範囲から摺動面7aの外径側において周方向に半周ずれた180度程度の範囲に形成される各低圧溝72内に動圧が発生する(図5図8参照)。すなわち、摺動面7a,8a間において各高圧溝71および各低圧溝72により周方向に亘って略同一の動圧が発生する。
【0055】
以上説明したように、サイドシール7は、偏心回転に伴う高圧溝71および低圧溝72の相対移動の方向に応じて、サイドシール7の内外の空間に存在する流体を利用して周方向に設けられるいずれかの高圧溝71内および低圧溝72内で動圧を発生させることにより、摺動面7a,8a同士をわずかに離間させ流体膜を形成することで摺動面7a,8a間における潤滑性を向上させることができるため、摺動面7a,8aの摩擦抵抗を安定して低減することが可能となる。
【0056】
また、低圧溝72は、高圧溝71よりも軸方向視面積が大きく形成されることにより、偏心回転に伴う摺動面7aの相対移動の方向に応じて、低圧溝72内で発生する動圧と、高圧溝71内で発生する動圧が略同一となるようにバランスを取ることができるため、摺動面7a,8a同士を周方向に略均等に離間させることができ、動圧発生によるサイドシール7の振動や傾き等を抑制することができる。
【0057】
また、高圧溝71と低圧溝72は、摺動面7aにおいて内外交互に配置されることにより、偏心回転に伴う高圧溝71および低圧溝72の相対移動の方向によらず、高圧溝71内および低圧溝72内のいずれかで動圧が発生するため、摺動面7aの周方向に亘って発生する動圧のバランスがよい。また、摺動面7aにおける高圧溝71と低圧溝72の形成領域が互いに干渉し難いため、摺動面7aに対して高圧溝71および低圧溝72を有効に形成できる。
【0058】
また、低圧溝72が開口する低圧の流体が存在する空間である低圧室20は、摺動面7aの外径側の空間であり、摺動面7aの外径側に低圧溝72が形成されることとなるため、低圧溝72の開口や軸方向視面積を大きく確保しやすい。
【実施例2】
【0059】
次に、実施例2に係るサイドシール107の高圧溝171および低圧溝172につき、図9を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0060】
図9に示されるように、高圧溝171および低圧溝172は、略矩形に形成されている。
【0061】
詳しくは、高圧溝171は、壁面171aと、側壁面171c,171dと、底面171bから形成されている。壁面171aは、ランド179の表面179aに略直交して延設され周方向に直線状に延びている。側壁面171c,171dは、ランド179の表面179aに略直交して延設され径方向に直線状に延びている。底面171bは、壁面171aおよび側壁面171c,171dの端部にそれぞれ略直交しランド179の表面179aと略平行に延設され平面状に形成されている。
【0062】
低圧溝172は、壁面172aと、側壁面172c,172dと、底面172bから形成されている。壁面172aは、ランド179の表面179aに略直交して延設され周方向に直線状に延びている。側壁面172c,172dは、ランド179の表面179aに略直交して延設され径方向に直線状に延びている。底面172bは、壁面172aおよび側壁面172c,172dの端部にそれぞれ略直交しランド179の表面179aと略平行に延設され平面状に形成されている。
【0063】
また、低圧溝172の周方向の寸法L12は、高圧溝171の周方向の寸法L11と略同一寸法(L11=L12)になっている。これにより、摺動面107aの内外の空間から流体が流入する高圧溝171および低圧溝172の開口面積が大きくなっている。
【0064】
また、低圧溝172の径方向の寸法L14は、高圧溝171の径方向の寸法L13よりも長く(L13<L14)なっている。すなわち、低圧溝172は、高圧溝171よりも軸方向視面積が大きく形成されている。
【0065】
また、低圧溝172は、摺動面107aの径方向中央よりも内径側の位置まで延びている。これにより、低圧溝172内に流体を保持するための容量が大きくなっている。
【0066】
これにより、偏心回転に伴う高圧溝171および低圧溝172の相対移動の方向に応じて、高圧溝171内および低圧溝172内の流体は、高圧溝171を構成する壁面171aと側壁面171c,171dのいずれか一方とにより形成される角部、低圧溝172を構成する壁面172aと側壁面172c,172dのいずれか一方とにより形成される角部に集中する。そのため、高圧溝171内および低圧溝172内において高い動圧が発生する。
【実施例3】
【0067】
次に、実施例3に係るサイドシール207の高圧溝271および低圧溝272につき、図10を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0068】
図10に示されるように、高圧溝271および低圧溝272は、略矩形に形成されている。
【0069】
また、低圧溝272の周方向の寸法L22は、高圧溝271の周方向の寸法L21よりも長く(L21<L22)なっている。これにより、摺動面207aの外径側の空間から流体が流入する低圧溝172の開口面積が大きくなっている。
【0070】
また、低圧溝272の径方向の寸法L24は、高圧溝271の径方向の寸法L23よりと略同一寸法(L23=L24)になっている。すなわち、低圧溝272は、高圧溝271よりも軸方向視面積が大きく形成されている。
【0071】
また、高圧溝271は、摺動面207aの径方向中央よりも外径側の位置まで延びており、低圧溝272は、摺動面207aの径方向中央よりも内径側の位置まで延びている。すなわち、高圧溝271と低圧溝272は、周方向に大部分が重なるように形成されている。
【0072】
これにより、周方向上流の高圧溝271または低圧溝272から摺動面207a,8a間に動圧発生に伴って流出した流体は、その時点における下流側で隣接する高圧溝271または低圧溝272に流入されやすくなっている。摺動面207a,8a間の周方向に亘って流体による流体膜が形成されやすいばかりでなく、ランド279上の流体が高圧溝271または低圧溝272内に供給されやすい。
【実施例4】
【0073】
次に、実施例4に係るサイドシール307の高圧溝371および低圧溝372につき、図11を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0074】
図11に示されるように、高圧溝371および低圧溝372は、略等脚台形に形成されており、低圧溝372は、高圧溝371よりも軸方向視面積が大きく形成されている。
【0075】
詳しくは、高圧溝371および低圧溝372は、それぞれ内外の開口における周方向の寸法が最も大きい略等脚台形に形成されている。これにより周方向に隣接する高圧溝371と低圧溝372との間におけるランド部分の軸方向視面積は大きく確保されている。高圧溝371または低圧溝372から摺動面307a,8a間に動圧発生に伴って流出した流体がランド部分に留まりやすくなる。そのため、摺動時において摺動面307a,8a間における潤滑性を確保しつつ、シール性を高めることができる。
【0076】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0077】
前記実施例では、自動車等の空調システムに用いられるスクロール圧縮機に摺動部品としてのサイドシールが適用される態様について説明したが、これに限らず、偏心機構を含む回転機械であれば、例えば膨張機と圧縮機を一体に備えたスクロール膨張圧縮機等に適用されてもよい。
【0078】
また、摺動部品の摺動面の内外の空間に存在する流体は、それぞれ気体、液体または気体と液体の混合状態のいずれであってもよい。
【0079】
また、前記実施例1では、高圧溝71は、摺動面7aの最内径に中心P1を有する円形に形成され壁面71aが略半円弧形状に形成されるものとして説明したが、これに限らず、高圧溝は壁面が円弧状に連続するものであればよく、例えば高圧溝が半楕円形に形成され壁面が円弧形状を成していてもよい。尚、低圧溝72についても同様である。
【0080】
また、前記各実施例では、低圧溝は、高圧溝よりも軸方向視面積が大きく形成されるものとして説明したが、これに限らず、低圧溝は、高圧溝と軸方向視面積が同一であってもよいし、高圧溝よりも軸方向視面積が小さくてもよい。尚、この場合、低圧溝の数を高圧溝の数よりも多く形成することにより、摺動面間において周方向に亘って360度の範囲に略同一の動圧が発生するようにバランスを取ってもよい。
【0081】
また、本発明の摺動部品は、偏心回転を伴って相対摺動する摺動面を有するものであれば、摺動面の内外に圧力差がある環境に限らず、摺動面の内外の圧力が略同一である環境で使用されてもよい。また、本発明の摺動部品には、シールとしての機能は必要なく、摺動面の摩擦抵抗を安定して低減できるものであればよい。
【0082】
また、前記実施例では、相対摺動する摺動面を有するサイドシールが樹脂製、スラストプレートが金属製のものとして説明したが、摺動部品の材料は使用環境等に応じて自由に選択されてよい。
【0083】
また、前記実施例では、サイドシールの摺動面に高圧溝および低圧溝が形成される態様について説明したが、これに限らず、偏心回転を伴って相対摺動する摺動面を有する摺動部品であるスラストプレートの摺動面の摺動領域(図4参照)に溝が形成されていてもよい。また、サイドシールの摺動面とスラストプレートの摺動面の両方に溝が形成されていてもよい。
【0084】
また、前記実施例では、摺動部品としてのサイドシールの摺動面とスラストプレートの摺動面とが偏心回転を伴って相対摺動する構成について説明したが、これに限らず、サイドシールとスラストプレートのいずれか一方のみを備え、偏心回転を伴って相対摺動する摺動面に溝が形成されてもよい。例えば、スラストプレートのみを備える場合には、摺動部品としてのスラストプレートの摺動面と可動スクロールの端板の背面のいずれか一方または両方に溝が形成されてもよい。また、サイドシールのみを備える場合には、摺動部品としてサイドシールの摺動面に溝が形成されてもよい。この場合には、サイドシールがインナーケーシングの内周面に当接して可動スクロールの軸方向の荷重を受けるスラスト軸受としても機能する。
【0085】
また、サイドシールとスラストプレートを備えず、可動スクロールの端板の背面がインナーケーシングの内周面に当接して可動スクロールの軸方向の荷重を受けるスラスト軸受として機能する場合には、可動スクロールの端板の背面に形成される摺動面に溝が形成されてもよい。
【0086】
また、前記実施例では、サイドシールは軸方向視環状である構成として説明したが、これに限らず、軸方向視円板状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 ハウジング
2 回転軸
2a 偏心部
3 インナーケーシング
4 スクロール圧縮機構
6 オイルセパレータ
7 サイドシール(摺動部品)
7a 摺動面
8 スラストプレート
8a 摺動面
10 吸入口
13 吐出連通路
14 背圧連通路
15 吸入連通路
20 低圧室
30 高圧室
40 圧縮室
41 固定スクロール
42 可動スクロール
50 背圧室
71 高圧溝
72 低圧溝
79 ランド
107 サイドシール(摺動部品)
171 高圧溝
172 低圧溝
207 サイドシール(摺動部品)
271 高圧溝
272 低圧溝
307 サイドシール(摺動部品)
371 高圧溝
372 低圧溝
C スクロール圧縮機
M 駆動モータ
P1 高圧溝の中心
P2 低圧溝の中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11