(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ケーブル結線構造及びコネクタ付ケーブル
(51)【国際特許分類】
H02G 15/08 20060101AFI20240422BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20240422BHJP
H01R 4/58 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H02G15/08
H02G1/14
H01R4/58 Z
(21)【出願番号】P 2023029025
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2019202394の分割
【原出願日】2019-11-07
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石黒 真
(72)【発明者】
【氏名】藤田 公輔
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186051(JP,A)
【文献】特開2001-68227(JP,A)
【文献】特開2013-175282(JP,A)
【文献】特開平10-233264(JP,A)
【文献】特開平8-84428(JP,A)
【文献】特開2016-39040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0365673(US,A1)
【文献】特開2019-29055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/08
H02G 1/14
H01R 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル及びコネクタを接続するためのケーブル結線構造であって、
前記ケーブルを構成する導体端部と前記コネクタは、接続用部材を介して電気的に接続され、
前記接続用部材は、導電線または前記導電線が絶縁層で被覆される電線構造であって、
前記接続用部材のうち、ケーブルに接続される側の端部は変形部を有し、
前記接続用部材の片端はケーブルに直接接続され、他の片端はコネクタ内の導電部に接続されることを特徴とするケーブル結線構造。
【請求項2】
ケーブル及びコネクタを接続するためのケーブル結線構造であって、
前記ケーブルを構成する導体端部と前記コネクタは、接続用部材を介して電気的に接続され、
前記接続用部材は、導電線または前記導電線が絶縁層で被覆される電線構造であって、
前記接続用部材のうち、ケーブルに接続される側の端部は平板状の変形部を有し、
前記接続用部材の片端はケーブルに直接接続され、他の片端はコネクタ内の導電部に接続されることを特徴とするケーブル結線構造。
【請求項3】
前記変形部の径方向における断面形状は、V字状またはU字状の溝を有することを特徴とする、
請求項1に記載のケーブル結線構造。
【請求項4】
前記コネクタはRJ45であることを特徴とする、
請求項1または2に記載のケーブル結線構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のケーブル結線構造を使用するコネクタ付ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信用ケーブルと各種コネクタ間の接続に適用され、USB規格やLANケーブル用規格CAT5e、6、6a等の通信規格に適合する、ケーブル結線構造、及び、それを使用するコネクタ付ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動化が著しい産業機器業界においては、マシンビジョン用デジタルカメラやセンサ、ロボット、PCなど制御機器等を接続する様々なインターフェースケーブルが使用されている。機器間の通信用ケーブルとしては、所謂LANケーブルが一般的に使用されているが、需要増加に伴い、更なる高速化や細線化が求められ、ケーブルの仕様が多様化している。
【0003】
一方、これらの通信用ケーブルに使用されるコネクタとしては、従来からRJ45、丸形防水コネクタ(M12)等が知られている。例えば、RJ45に適用可能なケーブルは、主に8芯のツイストペアケーブルであり、ケーブルのサイズは最外層外径が約5~8mm、内部導体はAWG24~26が主流である。しかし、高速化や細径化の要求に伴い、ケーブルサイズを変更すると、RJ45と不適合となる問題が生じる。
【0004】
ケーブルサイズを変更しても、従来のコネクタを使用する結線方法としては、特許文献1で、ケーブルの導体を結線用部材に固定し、結線部材を介してケーブルとコネクタとを導通する構造が示されている。この構造では、コネクタの仕様を変更せずに、本来コネクタに適合しないケーブルとの導通が可能となる一方、結線用部材は安価な物が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、各種コネクタに適用される、ケーブル結線構造及びコネクタ付ケーブルに関し、ケーブル仕様が多様化しても、既存のコネクタの仕様を変更せずとも、USB規格やLANケーブル用規格CAT5e、6、6a等の通信規格を満たす、ケーブル結線構造及びコネクタ付ケーブルを安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)ケーブル及びコネクタを接続するためのケーブル結線構造であって、ケーブルを構成する導体端部とコネクタは、接続用部材を介して電気的に接続され、接続用部材は、導電線または導電線が絶縁層で被覆される電線構造であって、接続用部材のうち、ケーブルに接続される側の端部は変形部を有し、接続用部材の片端はケーブルに直接接続され、他の片端はコネクタ内の導電部に接続されることを特徴とする。
(2)ケーブル及びコネクタを接続するためのケーブル結線構造であって、ケーブルを構成する導体端部とコネクタは、接続用部材を介して電気的に接続され、接続用部材は、導電線または導電線が絶縁層で被覆される電線構造であって、接続用部材のうち、ケーブルに接続される側の端部は平板状の変形部を有し、接続用部材の片端はケーブルに直接接続され、他の片端はコネクタ内の導電部に接続されることを特徴とする。
(3)(1)の場合、変形部の径方向における断面形状は、V字状またはU字状の溝を有することが好ましい。
(4)コネクタはRJ45であることが好ましい。
(5)(1)~(4)に記載のケーブル結線構造を使用するコネクタ付ケーブルが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のケーブル結線構造及びコネクタ付ケーブルは、ケーブルとコネクタの不整合を解消し、様々なケーブル仕様が、従来からのコネクタへ適合可能となり、高速化等の伝送特性改善や、ケーブルの細線化等の様々な要求に対して、安価に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のケーブル結線構造の一例を示す図である。
【
図2】本発明のケーブル結線構造の他の一例を示す図である。
【
図3】本発明の接続用部材における変形部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のケーブル結線構造について、実施例を挙げ、さらに具体的に説明するが、本発明の範囲について、これらに限定されるものではない。
【0012】
図1において、1はケーブル結線構造、2は接続用部材、3は絶縁性部材、4は導体端部、5はケーブル、6は電気接続部である。ここで電気接続部6は、○印付近で接続用部材2とケーブル5の導体端部4が、電気的に接続されることを示す略図である。また、図示しないが、
図1の接続用部材2の左端は、コネクタ内の導電部に接続される。
図1(a)において、接続用部材2は、導電線2(21)であり、
図1(b)は、これに絶縁性部材3を被覆する構造である。
【0013】
本発明では、ケーブル5を構成する導体端部4とコネクタ(図示せず)は、接続用部材2を介して電気的に直接接続されていることを特徴とする。接続用部材2を介して、ケーブル5の導体端部4とコネクタとが電気的に接続されるため、本来、コネクタに適合しないサイズのケーブル5との導通が可能となる。そのため、更なる高速化や細線化に対応しケーブル5仕様の多様化が可能となる。
【0014】
図1(a)において、接続用部材2は、導電線21であるが、これに限定されない。導電線21の材質は、導電性を有する材質であれば特に限定されない。例えば、銅、アルミ等の金属線、あるいは、それらに錫、鉄、亜鉛、ニッケル等を添加した合金線等が用いられる。導電線21の表面には、適宜、銀、錫等のメッキが施されてもよい。導電線21の外径、軸方向の長さは、特に限定されない。
【0015】
接続用部材2の周囲には、絶縁性部材3が施されることが好ましい。
図1(b)は、導電線21の周囲に絶縁性部材3を施している。各電気接続部6間の干渉を防止することができる。絶縁性部材3の材質は、絶縁性を有する材料であれば、特に限定されない。例えば、ふっ素樹脂やポリオレフィン等の熱可塑性樹脂や、シリコーンゴム、ふっ素ゴム、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン等のチューブ、シート等が挙げられる。
【0016】
絶縁性部材3の配置方法は、特に限定されない。例えば、チューブ状の絶縁性部材3を接続用部材2や電気接続部6の外周に設ける方法や、シート状の絶縁性部材3により接続用部材2を挟持する方法、あるいは、絶縁性部材3として絶縁性の塗料を接続用部材2の周囲にコーティングする方法等が挙げられる。
【0017】
接続用部材2は、例えば
図2のように、導電線21が絶縁層で被覆される電線22であることを特徴とする。電線22の絶縁層の材質は特に限定されないが、例えば、ふっ素樹脂やポリオレフィン等の熱可塑性樹脂や、シリコーンゴム、ふっ素ゴム、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン等が好ましい。絶縁層の肉厚は、特に限定されない。
【0018】
導体端部4との接続が容易となるように、導電線21等の接続用部材2の端部は、径方向における断面を変形させた、変形部7を有することを特徴とする。変形部7の径方向における断面形状は、特に限定されないが、例えば、
図3(a)のような平板状、
図3(b)のようなV字状の溝を有する構造、または
図3(c)のようなU字状の溝を有する構造が好ましい。平板状である場合、断面が円形状である場合と比較して、接続時の作業が容易となり、電気接続部6の保持強度等の機械的強度を確保できる。V字状、またはU字状の溝を有する構造の場合、溝に導体端部4を安定して配置できるため、接続時の作業が容易となり、電気接続部6の保持強度も確保できる。変形部7の作製方法は、特に限定されないが、例えば潰し加工が挙げられる。変形部7は、
図3(a)のように接続用部材2の端部のみに設ければよいが、特に限定されない。接続用部材2の構造は、特に限定されないが、単線構造が好ましい。
【0019】
導電線21等の接続用部材2とケーブルの導体端部4との結線方法は、特に限定されない。例えば、はんだにより接続する方法や、スポット溶接や高周波誘導加熱を用いて溶融接合する方法等が挙げられる。電気接続部6の保持強度、作業の簡易性等の観点においては、接続用部材2と、ケーブル5を構成する導体端部4とを、はんだにより接続する方法が好ましい。
【0020】
はんだの材質については特に限定されないが、鉛及び錫の共晶はんだ、錫、銀及び銅からなる鉛フリーはんだ、その他、亜鉛、ビスマス、インジウムを含むはんだ等が挙げられる。環境に配慮し鉛フリーはんだが好ましいが、融点が高い問題がある。絶縁性部材3、及び、ケーブル5の絶縁層にふっ素樹脂を用いる場合、鉛フリーはんだを用いることが可能となり、さらに好ましい。はんだの量については特に限定されないが、隙間なく密に充填されることが好ましい。接合部に隙間がないと、局所的に電気的な不整合部分が生じず、伝送信号の反射損失を低く抑えられ、高周波特性に優位である。
【0021】
コネクタの種類は、特に限定されない。例えば、RJ45、丸形防水コネクタ(M12)、D-SUBコネクタ、各種角型コネクタ、各種パワーコネクタ等が挙げられる。
【0022】
本発明のケーブル結線構造及びコネクタ付ケーブルであれば、特許文献1の結線用部材のように新たな部材を設計、手配する必要がなく、汎用性がある材料にて、安価かつ容易に結線できる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明のケーブル結線構造及びコネクタ付ケーブルについて、実施例を挙げさらに具体的に説明するが、本発明の範囲等について、これらに限定されるものではない。
【0024】
実施例1は、接続用部材が、導電線である。導電線は単線構造であり、外径は0.5mm、材質は錫メッキ軟銅線である。導電線の端部の断面を、平板状に加工する(
図1(a)、
図3(a)参照)。ケーブルの導体は、外径がAWG30、材質が錫メッキ銅合金線である。接続用部材の端部と、ケーブルの導体端部とを、はんだにより接続する。ケーブルは、外径がAWG30、材質が錫メッキ銅合金線である導体を用いた、8芯のツイストペアケーブルである。コネクタは、汎用のRJ45である。
【0025】
実施例2は、実施例1のうち、接続用部材の導電線が、絶縁層で被覆される電線構造である。絶縁層の肉厚は0.2mm、材質はETFEである。接続用部材の端部には絶縁層を設けずに、導電線のみとして、導電線の端部の断面を、平板状に加工する(
図2、
図3(a)参照)。
【0026】
比較例では従来技術であって、接続用部材は用いず、RJ45の圧接部に、ケーブルの導体端部を直接接続する。ケーブルは、導体外径がAWG26の8芯のツイストペアケーブルである。
【0027】
実施例と比較例について、電気特性、保持強度、耐振動性の評価を行い、表1に示す。
【0028】
(電気特性の評価方法)
TIA/EIA-568-B.2-2に準拠した方法にて、LANケーブル用規格CAT5eについて評価する。測定する項目は、NEXT(近端漏話減衰量)、RL(反射減衰量)、ACR-F(遠端減衰対漏話比)、ACR-N(減衰端クロストーク比)である。
【0029】
(保持強度の評価方法)
実施例は、接続用部材とケーブルの導体端部との接続部における引張強度、比較例は、RJ45とケーブルの導体端部との圧接接続部における保持強度を測定する。引張試験機を用いて、測定速度100mm/分にて引張り、接続部が破断した際の最大強度[N]を測定し、保持強度とする。
【0030】
(耐振動性の評価方法)
振動を与えて、電気接続部においてケーブルの導体端部が外れる等の異常が無いか確認する。振動の周波数は10~55Hz、レートは1.0Hz/秒、振れ幅は0.75mm、振動方向はXYZ方向、時間は各方向で2時間である。さらに振動を与えた後、TIA/EIA-568-B.2-2に準拠した方法にて、LANケーブル用規格CAT5eについて評価する。測定する項目は、NEXT(近端漏話減衰量)、RL(反射減衰量)、ACR-F(遠端減衰対漏話比)、ACR-N(減衰端クロストーク比)である。
【0031】
【0032】
実施例は、いずれもLANケーブル用規格CAT5eを満足しており、本発明におけるケーブル結線構造は、既存のコネクタの仕様を変更せずとも、LANケーブル用規格CAT5e等の通信規格を満たしている。
【0033】
実施例はいずれも保持強度が30N以上であり、比較例と比べて優れている。また、振動を与えた後も、電気接続部においてケーブルの導体端部が外れる等の異常が無く、LANケーブル用規格CAT5eを満足する。以上より、既存のRJ45コネクタに適合するケーブル導体のサイズ(AWG24~27)より、細いサイズ(AWG30)であっても、接続用部材を用いることで、比較例(従来技術)と同じくRJ45との適合性を確認できる。
【符号の説明】
【0034】
1 ケーブル結線構造
2 接続用部材
21 導電線
22 電線
3 絶縁性部材
4 導体端部
5 ケーブル
6 電気接続部
7 変形部