(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】積層板の表面上にコーティングを付けるための方法、装置、及びアプリケータ
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20240422BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20240422BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20240422BHJP
C23C 24/02 20060101ALI20240422BHJP
C23C 28/02 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D5/12 B
B05C1/02 101
C23C24/02
C23C28/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019043640
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コスラバニ, シャハリアル
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175634(JP,A)
【文献】特開2016-137480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/28
B05D 5/12
B05C 1/02
C23C 24/02
C23C 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチック材料の積層板の表面上にコーティングを付けるための方法(200)であって、前記積層板の前記表面が強化繊維の露出端を含み、前記方法が、
強化繊維の露出端を有する前記積層板の前記表面に対して擦り付けることによって固体の状態で摩耗可能な導電性材料を選択すること(202)、及び
導電性材料の粒子を摩耗させて前記積層板の前記表面上に付着させるために、前記導電性材料を前記積層板の前記表面に対して擦り付けること(204)
を含
み、
前記導電性材料を前記積層板の前記表面に対して擦り付けることが、
前記導電性材料を、複数の層を通って延在する孔を画定する前記積層板の表面に対して擦り付けること、及び
導電性材料の粒子を摩耗させて前記孔の周り全体において前記孔に付着させるように、前記導電性材料が、前記孔を画定する前記表面と摩擦接触している間に、前記孔を画定する前記表面によって境界付けられた空間の内側にある前記導電性材料を回転させること
を含み、
前記方法が、前記導電性材料を、前記導電性材料が回転しているときに径方向外向きに撓むように構成された可撓性要素に取り付けることを更に含む、
方法(200)。
【請求項2】
前記導電性材料が、回転中にバネ力によって径方向外向きに付勢される、請求項
1に記載の方法(200)。
【請求項3】
前記導電性材料を前記積層板の前記表面に対して擦り付けることが、前記導電性材料を、複数の層を通って切断されたエッジを画定する前記積層板の表面に対して擦り付けることを含む、請求項1に記載の方法(200)。
【請求項4】
低融点合金ではない金属合金から作られ且つ遠位端を有するシャフト(42)、
低融点合金ではない金属合金から作られたアプリケータ本体(46)であって、前記シャフト(42)の前記遠位端から距離を置いて位置付けられた前記シャフト(42)の一部分に固定的に連結された非可撓性部分(46a)と、第1の可撓性ヒンジ(46c)の撓みによって前記非可撓性部分(46a)に対して曲がるように構成された第1の可撓性要素(46b)と、を備えたアプリケータ本体(46)、及び
摩耗可能な材料から作られ且つ前記第1の可撓性要素(46b)に取り付けられた第1のパッド(54a)を備える、孔コーティングアプリケータ(40)。
【請求項5】
前記アプリケータ本体(46)が、第2の可撓性ヒンジ(46e)の撓みによって前記非可撓性部分(46a)に対して曲がるように構成された第2の可撓性要素(46d)を更に備え、前記孔コーティングアプリケータが、摩耗可能な材料から作られ且つ前記第2の可撓性要素(46d)に取り付けられた第2のパッドを更に備える、請求項
4に記載の孔コーティングアプリケータ(40)。
【請求項6】
前記第1の可撓性ヒンジ(46c)が、前記第1の可撓性要素(46b)を前記非可撓性部分(46a)に直接的に連結し、前記第2の可撓性ヒンジ(46e)が、前記第2の可撓性要素(46d)を前記非可撓性部分(46a)に直接的に連結する、請求項
5に記載の孔コーティングアプリケータ(40)。
【請求項7】
前記第1の可撓性要素(46b)の遠位端が、第1の直円錐台面の円周部分を有し、前記第2の可撓性要素(46d)の遠位端が、第2の直円錐台面の円周部分を有し、前記孔コーティングアプリケータ(40)が更に、
前記第1の可撓性要素(46b)及び前記第2の可撓性要素(46d)の遠位端の近傍で前記シャフト(42)に摺動可能に連結されたスライダー(48)であって、前記スライダーが接する位置にあるときに、前記第1の可撓性要素(46b)及び前記第2の可撓性要素(46d)の前記第1の直円錐台面及び前記第2の直円錐台面の前記円周部分に接する第3の直円錐台面(56)を有する、スライダー(48)、及び
前記スライダー(48)上にバネ力を加えることによって、前記第3の直円錐台面(56)が、前記第1の可撓性要素(46b)及び前記第2の可撓性要素(46d)の遠位端を前記シャフト(42)から離れるように撓ませる、バネ(50)を備える、請求項
5又は
6に記載の孔コーティングアプリケータ(40)。
【請求項8】
前記アプリケータ本体(46)が、第2の可撓性ヒンジ(46e)の撓みによって前記非可撓性部分(46a)に対して曲がるように構成された第2の可撓性要素(46d)を更に備え、前記第1の可撓性要素(46b)が、前記第1の可撓性ヒンジ(46c)の撓みによって前記第2の可撓性要素(46d)に対して曲がり、前記第1の可撓性ヒンジ(46c)及び前記第2の可撓性ヒンジ(46e)の撓みによって前記シャフト(42)に対して曲がるように構成されている、請求項
4に記載の孔コーティングアプリケータ(40)。
【請求項9】
孔コーティングアプリケータ(40d)であって、
低融点合金ではない金属合金から作られ且つ遠位端を有するシャフト(42)と、
低融点合金ではない金属合金から作られたアプリケータ本体(84)と、
を備え、
前記アプリケータ本体(84)が、
非可撓性部分(85)であって、前記シャフト(42)の前記遠位端から距離を置いて位置付けられた前記シャフト(42)の一部分に固定的に連結された非可撓性部分(85)と、
第1の可撓性要素(90)であって、第1の可撓性ヒンジ(86)の撓みによって、前記非可撓性部分(85)に対して曲がるように構成された第1の可撓性要素(90)と、
第2の可撓性要素(106)であって、第2の可撓性ヒンジ(92)及び第3の可撓性ヒンジ(96)の撓みによって、前記第1の可撓性要素(90)に対して曲がるように構成された第2の可撓性要素(106)と、
第3の可撓性要素(102)であって、第4の可撓性ヒンジ(94)及び第5の可撓性ヒンジ(98)の撓みによって、前記第1の可撓性要素(90)および前記第2の可撓性要素(106)に対して曲がり、前記第1の可撓性ヒンジ(86)、前記第2の可撓性ヒンジ(92)、前記第4の可撓性ヒンジ(94)及び前記第5の可撓性ヒンジ(98)の撓みによって、前記非可撓性部分(85)に対して曲がるように構成されており、前記シャフト(42)が作られている前記金属合金から作られた第3の可撓性要素(102)と、
第4の可撓性要素(104)であって、前記第4の可撓性ヒンジ(94)及び第6の可撓性ヒンジ(100)の撓みによって、前記第1の可撓性要素(90)及び前記第2の可撓性要素(106)に対して曲がるように構成された第4の可撓性要素(104)と、
を備え、
前記第5の可撓性ヒンジ(98)及び前記第6の可撓性ヒンジ(100)が、前記第1の可撓性要素(90)及び前記第2の可撓性要素(106)を互いに連結しており、
前記孔コーティングアプリケータ(40d)が、
第1のパッド(54a)であって、摩耗可能な材料から作られ且つ前記第3の可撓性要素(102)及び前記第4の可撓性要素(104)並びに交差部(1a)の外縁面に取り付けられた第1のパッド(54a)をさらに備え、
前記交差部(1a)が、前記第4の可撓性ヒンジ(94)、前記第5の可撓性ヒンジ(98)、及び前記第6の可撓性ヒンジ(100)を連結する、孔コーティングアプリケータ(40d)。
【請求項10】
凹面を有する表面を有する孔(20)又はエッジを有する複合材層(30)、及び
前記孔(20)又は前記エッジの前記表面に付着され且つ前記凹面を充填するコーティング(12)を備える構造アセンブリ(14)を製造する方法であって、
前記複合材層(30)が、導電性材料から作られた繊維を備え、前記コーティングが、低融点合金の摩耗した粒子の集合体を含み、
前記方法が、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法(200)で前記コーティングを付けることを含む、
方法。
【請求項11】
支持構造体と、
前記支持構造体によって支持されている軸受けと、
前記軸受けによって回転可能に支持されているスピンドルと、
前記スピンドルの回転を駆動するために前記スピンドルに機械的に連結されているモータと、
前記スピンドルに連結されているチャックと、
請求項
4から
9のいずれか一項に記載の孔コーティングアプリケータと、
を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、構造物内の接合孔(以下、「孔」)内でファスナの締り嵌め(interference fit)が実現され得るようなやり方で、2以上の構造物又は加工対象物(それらのうちの少なくとも一方は、繊維強化プラスチックなどの複合材料から作られている)を固定するためのファスナの使用に関する。特に、本開示は、ボルト又はピン及び嵌め合い部品(mating part)(例えば、ナット若しくは環)を有する締り嵌めファスナアセンブリを使用して、複合材料の層を材料の別の層に固定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で使用される際に、「嵌め合い部品」というカテゴリーは、雌ねじ付きナット及び環並びに加締め環を含む。本明細書で使用される際に、「ファスナ」というカテゴリーは、ボルト、ピン、リベット、及び/又は任意の他の適切なデバイスを含む。本明細書で使用される際に、「外部突起」という用語は、少なくとも以下の種類を含むように広く解釈されるべきである。すなわち、(1)雄ねじ、及び(2)外側アニュラリング(環状リング)である。本明細書で使用される際に、「孔」という用語は、部品の両面内で空間を境界付け且つ部品の両面内の開口をつなぐ表面を意味する。繊維強化プラスチック材料という文脈では、空間を境界付ける表面が樹脂及び繊維によって形成されている。
【0003】
材料の複数の層を共に固定するための少なくとも1つの方法は、層をクランプアップ(clamp up)し、穿孔し、その後、孔の中へファスナを挿入して層を共に固定することである。ファスナは、通常、ナット内に挿入されるか、又は層内の受け孔(receiving hole)内にすきま嵌め(clearance fit)される。多くの用途に対して、これは十分なものとなる。しかし、組み立てられる構造物が、繰り返し荷重に晒されるときに、それらの孔内のファスナの嵌め合いが緩いと、それらの孔内でファスナが継続的に動くであろう。
【0004】
更なる課題は、固定された層のうちの1以上が複合材料から作られているときに提示される。例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、金属よりもかなり導電性が低い。電流は、CFRP構造物内の炭素繊維を通して伝導される。炭素繊維とCFRPの孔内の金属製ファスナとの間の不連続性は望ましくない。
【0005】
孔内のファスナ(以下、「締り嵌めファスナ」)の締り嵌めは、組み立てられる構造物の繰り返し荷重による不連続性を効果的に低減させ得る。締り嵌めは、動きを低減させるより密着した接合を形成し、高められた疲労性能をもたらす。更に、締り嵌めファスナは、電流を消散させる助けとなり得る。
【0006】
複合材料(例えば、CFRP)の繊維と金属製ファスナとの間の導電性を高める一方で、複合材料の層(以下、「複合材層」)を別の材料の層(例えば、金属層又は別の複合材層)に固定するために使用されるスリーブレス・ファスナに対する締り嵌めにおけるばらつきを最小化するための1つの方法は、孔を溶融した低融点合金(molten low-melting alloy)でコーティングすることを含む。しかし、溶融した低融点合金は、溶融した低融点合金の高い表面張力を原因として繊維状CFRPの表面と混じり合わない傾向がある。これは、繊維レベルの寸法において極端な湾曲があるためであり得る。低融点合金の表面張力は、このスケール(規模)での広がりを抑制し得る。
【発明の概要】
【0007】
固体の導電性材料の摩耗によって複合材層内の接合孔をコーティングするための方法、装置、及びアプリケータの様々な実施例が、以下で幾らか詳細に説明されることとなるが、これらの実施例のうちの1以上は、以下の態様のうちの1以上によって特徴付けられ得る。
【0008】
以下で詳細に開示される主題の一態様は、繊維強化プラスチック材料のプライ(層)の積層板の表面上にコーティングを付けるための方法である。その表面は、強化繊維の露出端を有する。該方法は、強化繊維の露出端を有する積層板の表面に対して擦り付けることによって固体の状態で摩耗可能な導電性材料を選択すること、及び、導電性材料の粒子を摩耗させて積層板の表面上に付着させるために、積層板の表面に対して導電性材料を擦り付けることを含む。ある実施例によれば、その積層板の表面は、複数のプライを通って延在する孔である。他の実施例によれば、その積層板の表面は、複数のプライを通って切断されたエッジである。好適には、固体の導電性材料は、低融点合金(LMA)である。低融点合金は、一般的に、「可融合金」とも称される。本明細書で使用される際に、「低融点合金」という用語は、華氏170度よりも高く且つ華氏300度よりも低い範囲内の溶融温度(融点)を有する合金を指す。
【0009】
以下でより詳細に開示される主題の別の一態様は、支持構造体と、支持構造体によって支持された軸受けと、軸受けによって回転可能に支持されたスピンドルと、スピンドルの回転を駆動するためスピンドルに機械的に連結されたモータと、スピンドルに連結されたチャックと、LMAではない材料から作られ且つチャックによってクランプされたシャフト、及び、シャフトによって支持され且つシャフトに対して径方向に移動可能なLMAパッドを備えた、孔コーティングアプリケータとを備える、装置である。ある実施例によれば、孔コーティングアプリケータは、可撓性ヒンジの撓みによってシャフトに対して曲がるように構成された可撓性要素を更に備え、LMAパッドが、可撓性要素に取り付けられている。他の実施例によれば、孔コーティングアプリケータは、カム面、LMAパッドを支え且つカム面と接触した傾斜面を有するカムブロック、及びカムブロック上に軸方向のバネ力をかけるバネを更に備える。その場合、カム面は、軸方向のバネ力がカムブロック上にかけられたときに、カムブロックを撓ませて径方向外向きに移動させる。
【0010】
以下でより詳細に開示される主題の更なる一態様は、LMAではない金属合金から作られ且つ遠位端を有するシャフトと、LMAではない金属合金から作られたアプリケータ本体であって、シャフトの遠位端から距離を置いて位置付けられたシャフトの一部分に固定的に連結された非可撓性部分、及び、可撓性ヒンジの撓みによって非可撓性部分に対して曲がるように構成された可撓性要素を備えた、アプリケータ本体と、可撓性要素に取り付けられた摩耗可能な材料(例えば、LMA)から作られたパッドとを備える、孔コーティングアプリケータである。
【0011】
以下でより詳細に開示される主題の更なる別の一態様は、LMAではない材料から作られたシャフトと、LMAではない材料から作られ且つカム面を備えた、シャフトに連結されたアプリケータ本体と、LMAではない材料から作られ且つカム面に対峙する傾斜面を有するカムブロックと、カムブロックに取り付けられたLMAパッドであって、露出された外縁面を有するLMAパッドと、カムブロック上に軸方向のバネ力をかけるバネとを備える、孔コーティングアプリケータである。その場合、カム面は、カムブロックが軸方向のバネ力によって移動されたときに、カムブロックを撓ませて径方向外向き成分を有する方向に移動させる。
【0012】
更なる一態様は、凹面を有する表面を有する孔又はエッジを有する複合材層、及び孔又はエッジの表面に付着され且つ凹面を充填するコーティングを備える、構造アセンブリである。その場合、複合材層は、導電性材料から作られた繊維を備え、コーティングは、低温状態で付着したLMAの摩耗した粒子の集合体を含む。ある実施例によれば、コーティングは、粒子の集合体上に重なるLMAの連続した薄膜を更に備える。適切なLMAは、以下のうちの2以上のエレメントの合金を含む。すなわち、ビスマス、インジウム、すず、鉛、及びアンチモンである。好適なLMAは、(好適には50%を超える)ビスマス、インジウム、及びすずの混合物から成る三元合金である。
【0013】
固体の導電性材料の摩耗によって複合材層内の接合孔をコーティングするためのシステム、装置、及び方法の他の態様が、以下で説明される。
【0014】
前述の特徴、機能、及び利点は、様々な実施例で個別に実現することが可能であり、又は、更に別の実施例で組み合わせることが可能である。先述の態様及び他の態様を示すために、図面を参照して、様々な実施例が以下で説明される。この部分で簡略に記載された図面は、いずれも縮尺通り描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】スリーブレス締り嵌めファスナアセンブリによってグリップされた複合材構造物及び金属構造物を含むアセンブリの部分断面図を表す図である。
【
図2】第1の実施例による、孔コーティングアプリケータの部分の図を表す切り取り図である。
【
図3】第2の実施例による、孔コーティングアプリケータの部分の図を表す切り取り図である。
【
図4】第3の実施例による、孔コーティングアプリケータの部分の図を表す切り取り図である。
【
図4A】
図4と類似する切り取り図であるが、相違点は、第3の実施例による孔コーティングアプリケータの(破線で示されている)幾つかの構成要素が、更なる内部構造を明らかにするために除去されており、且つ、幾つかのハッチングが、図面中の混雑を避けるために省略されていることである。
【
図5】第3の実施例による、孔コーティングアプリケータの部分の異なる図を表す切り取り図である。
【
図6】第3の実施例による孔コーティングアプリケータの別の図を表す図であるが、相違点は、摺動するアニュラリングが、孔コーティングアプリケータのシャフト内に形成されたスロット内で摺動する横断ピンを明らかにするために除去されていることである。
【
図7】
図6の図に類似した図を表す図であるが、摺動するアニュラリングが、孔コーティングアプリケータシャフトと一体的に形成されるか又は孔コーティングアプリケータシャフトに接合されたアプリケータ本体によって形成された端止めに接して配置されている。
【
図8】第3の実施例による、アプリケータ本体及び摺動するアニュラリングの図を表す図である。
【
図9】
図9及び
図10は、第4の実施例による、孔コーティングアプリケータの異なる図を表す図である。
【
図10】
図9及び
図10は、第4の実施例による、孔コーティングアプリケータの異なる図を表す図である。
【
図10A】
図10で示されている破線の楕円10A内の孔コーティングアプリケータの部分の拡大図を表す図である。
【
図11】複合材料の層内に形成された接合孔内に付けられた導電性コーティングの厚さを測定するように設計された抵抗測定プローブの電気回路を表す回路図である。
【
図12】導電性コーティングの厚さを測定することにおいて使用されるために内部にファスナが挿入されているコーティングされた孔の周りの検知パッドの配置を示している図である。
【
図13】可変抵抗R
9が固定抵抗R
2と等しいか否かに応じて如何に
図11で描かれた回路の出力電圧V
outが変動するかを示す、V
out対時間のグラフである。
【
図14】電圧対時間の2つのグラフを含む。すなわち、上側のグラフは、孔の抵抗が所望の値に到達したときに如何に著しく出力電圧V
outが変化するかを示し、下側のグラフは、孔の抵抗が所望の値に近づく際に如何にA‐Bブリッジの出力電圧が減少するかを示す。
【
図15】孔のインターフェースにおける実効抵抗を測定することによって、CFRPを含む複合材層内の接合孔内に付着した導電性コーティングの厚さをモニタリングするためのシステムの構成要素を特定するブロック図である。
【
図16】近端ファスナを基準とした実効抵抗を測定することによって、CFRPを含む複合材層のエッジ上に付着した導電性コーティングの厚さをモニタリングするためのシステムの構成要素を特定する図である。
【
図17】繊維強化プラスチック材料のプライの積層板の表面上にコーティングを付けるための方法のステップを特定するフローチャートである。
【
図18】
図15で描かれたシステムを使用して、複合材層内の孔を画定する面上にコーティングを付けるための方法のステップを特定するフローチャートである。
【
図19】導電性コーティングと、導電性繊維を有する繊維強化プラスチックから作られた複合材層のクロスプライ面と、のインターフェースにおける接触抵抗を測定するための方法のステップを特定するフローチャートである。
【
図20】第5の実施例による、孔コーティングアプリケータの部分の図を表す図である。
【
図21】導電性コーティングと、導電性繊維を有する繊維強化プラスチックから作られた複合材層のクロスプライ面と、のインターフェースにおける接触抵抗を測定するための方法のステップを特定するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下で図面を参照するが、異なる図面の中の類似の要素には同一の参照番号が付される。
【0017】
以下で幾らか詳細に開示される主題は、低融点合金(LMA)などの固体の導電性材料の摩耗によって、複合材料内の接合孔をコーティングするための方法、装置、及びアプリケータを対象とする。低融点合金は、そのより低い分子間力のために低い硬度を有し、室温で直接的に複合材料内の接合孔に供給され得る。金属ファスナがコーティングされた孔内に挿入されてしまった後で、コーティングは、複合材料(例えば、CFRP)の繊維と金属製ファスナとの間の導電性を高めることができる。その一方で、コーティングは、複合材料の層(以下、「複合材層」)を材料の別の層(例えば、金属層又は別の複合材層)に固定するために使用されるスリーブレス・ファスナに対する締り嵌めのばらつきを最小化する。固体の導電性材料は、同様にエッジ上に付着され得る。
【0018】
より具体的には、本明細書で提案されるコーティング技術は、溶融したLMAがCFRP層の粗い表面を濡らすときに生じる分子の反発力に起因する難しい問題を回避することができる。ある実施例によれば、表面上のLMA粒子のサイズは、(例えば、室温の)低温のLMAを付けること、及び、(黒板上のチョーク効果に類似した)摩耗を通じてLMAの薄い層を付着させることによって低減される。このLMAの第1の層は、LMAによって形成されたコーティングされた孔の実際の湾曲を低減させることができ、再現可能で一貫したコーティングをCFRP表面上に生成する。提案される方法は、LMA/CFRPインターフェースの品質及び接続性を大幅に改善する、LMAの独特な微細構造をCFRP上に生成することができる。更に、該方法は、チタニウムのファスナに付けられたときに、LMAコーティングの品質及び量を改善し得る。
【0019】
任意選択的に、溶融状態のLMAの第2の付着が適用され得る。そのイベントでは、溶融したLMAが、LMAの第1の層上に容易に広がり、より完璧に近い最終コーティングを生成する。
【0020】
上述の方法を実施するために使用される装置は、摩擦を通じて固体の導電性材料(例えば、LMA)を付着させることによって、接合孔をコーティングするように構成された回転するアプリケータを含む。孔コーティングアプリケータは、固定された穿孔機械又はロボット若しくは他のオートメーション化された装置に取り付けられた穿孔ツールのスピンドルの端に取り付けられたチャックによってグリップされ得る。
【0021】
ある実施例によれば、孔コーティングアプリケータは、孔に対して擦り付けられるように構成されたLMAから作られたそれぞれのパッド(以下、「LMAパッド」)を運ぶ1以上のカムブロック、及びカムブロック上に軸方向のバネ力をかけるバネを更に含む。孔コーティングアプリケータは、軸方向のバネ力が軸方向においてカムブロック上にかけられたときに、カムブロックを径方向外向きに移動させるそれぞれのカム面を更に含む。孔コーティングアプリケータの回転中に、LMAはLMA粒子が摩耗するのに十分な力で孔に対して押し付けられて、所望のコーティング厚さが実現されるまで、接合孔を形成するCFRP上にLMA粒子を付着させる。
【0022】
他の実施例によれば、孔コーティングアプリケータは、それぞれの可撓性ヒンジにおいてシャフトに対して曲がることができる可撓性要素を更に備え、それぞれのLMAパッドが、可撓性要素に取り付けられている。各LMAパッドは、LMAから作られていない孔コーティングアプリケータの何れの部分よりもシャフトから更に径方向外向きに配置された外縁面を有する。孔コーティングアプリケータの回転中に、可撓性要素はLMA粒子が摩耗するのに十分な力でLMAを孔に対して押し付けて、所望のコーティング厚さが実現されるまで、CFRP上にLMA粒子を付着させる。
【0023】
本明細書で使用される際に、可撓性ヒンジによって別の要素に連結された可撓性要素の文脈において、「曲がる」という用語は、可撓性ヒンジの撓みによって他の要素に対して可撓性要素の角度が変更されることを意味し、可撓性要素の長さに沿って曲がることを意味しない。可撓性要素が、複数の可撓性ヒンジによって別の要素と連結されるならば、可撓性要素は、多数の可撓性ヒンジのうちの1以上における撓みによって別の要素に対して曲がるように構成されている。
【0024】
特に複合材の接合設置において十分な量のLMAを付けることを確実にするために、リアルタイム・モニタリングシステムが採用されて、接触抵抗が許容可能範囲内にあることを検証することができる。本明細書で説明される容量結合が利用されるならば、実効抵抗は、孔インターフェース抵抗のみに依存する(すなわち、実効抵抗は、LMAの品質/量に依存する)。本明細書で説明される回路は、モニタリングシステムが1つの接触点のみを有する抵抗を測定することを可能にする、容量結合セグメントを含む。LMAアプリケーション工程(アプリケータの挿入及び回転)を制御し、モニタリングシステムによる応答に基づいて、満足できる抵抗レベルが実現されたことを確認するために、フィードバックループが使用される。接合孔上にコーティングを形成するためにLMAを付着させ、同時に、直列にあるLMAと炭素繊維の実効抵抗測定し、その後、指定された実効抵抗が実現されたときに付着させることを止めることによって、最終構造アセンブリにおいて孔/ファスナ・インターフェースの少なくとも最小の許容可能な導電性が実現され得る。
【0025】
次に、固体の導電性材料の摩耗によって複合材層内の接合孔をコーティングするためのシステム、装置、及び方法の様々な実施例が、例示目的で詳細に説明されることとなる。結果としてのコーティングは、締り嵌めのばらつきを最小化し、締り嵌めファスナアセンブリ内の導電性を高めることができる。以下で開示される詳細のうちの少なくとも一部は、任意選択的な機能又は態様に関しており、ある用途では、そのうちの幾つかが本明細書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく省略され得る。
【0026】
次に、スリーブレス締り嵌めファスナアセンブリによって、複合材料(例えば、繊維強化プラスチック)から作られた第2の構造要素に取り付けられた、金属材料(例えば、金属合金)から作られた第1の構造要素を含む、構造アセンブリの1つの例示的な実施例が、
図1を参照しながら詳細に説明されることとなる。その実施例によれば、ファスナが、ピンを含み、嵌め合い部品が、ピンの嵌め合い部分の外部突起と相互に係合する加締め環を含む。しかし、本明細書で開示されるコンセプトは、更に、ファスナが、ボルトを含み、嵌め合い部品が、ボルトの嵌め合い部分の外部突起と相互に係合する雌ねじを有するナットを含む。
【0027】
図1は、割れ目(crevice)を有する表面を有する孔20を有する複合材層30を含む構造アセンブリ14の部分断面図を表す図である。構造アセンブリ14は、孔20に付着し且つ割れ目を充填するコーティング12も含む。コーティング12は、円筒形のコーティングされた孔22を画定する。複合材層30は、導電性材料から作られた繊維を有し、コーティング12は、LMAを含むか又はLMAである。LMAは、溶融状態で付けられたものである。
図1で描かれている実施例では、構造アセンブリ14が、複合材層30に隣接して且つ複合材層30に接触して配置された金属層32を更に含む。
【0028】
構造アセンブリ14は、ファスナ2及び加締め環34を有する、スリーブレス締り嵌めファスナアセンブリ28も含み得る。ファスナ2は、シャンク6、ねじ部8、及び移行部分10を含む。代替的な実施例では、ファスナ2が、雄ねじの代わりに外側アニュラリングを有してよい。
図1は、皿(すなわち、平らな)頭4を有するファスナ2を描いているが、ファスナ2は、代替的に突出した頭を有してよい。締り嵌めは、シャンク6の外径未満の内径(例えば、数インチの千分の一の差)を有するコーティングされた孔22によって実現される。
【0029】
図1で示されているファスナ2は、コーティングされた孔22の中へ挿入され、加締められていない環(
図1では示されていない)が、ファスナ2の一部分を覆って置かれる。ファスナ2の設置サイクル中に、(緩くフィットする金属リングの形態を採る)加締められていない環が、加締め環34を形成するためにファスナ2の周りで変形される。ファスナ2は、ねじ部8の上にロッキング溝を有する。ファスナ2及び加締め環34は、結合してファスナアセンブリ28を形成する。ボルト及びピンは、好適には、チタニウム合金、アルミニウム合金、インコネル、又は耐食鋼などの、金属合金から作られている。環は、好適には、チタニウム合金、アルミニウム合金、又は耐食鋼から作られている。
【0030】
本開示は、孔20を形成する複合材料の表面に、溶融したLMAを付けることによってではなく、低耐摩耗性を有する固体のLMAを付けることによって、接合孔(例えば、
図1で描かれているタイプの接合孔)の内側のコーティング/複合材層インターフェースの品質及び接続性を改善することを提案する。任意選択的に、固体のLMAのみを使用して実現可能なものよりも滑らかな表面を有するコーティングされた孔を実現するために、孔内に付着した固体のLMAを覆って溶融したLMAが付けられてもよい。
【0031】
前述の段落で短く説明された工程は、(例えば、航空機の)構造部品などの構造アセンブリ14を形成するために層のスタック内に含まれる複合材層内の全ての接合孔に適用され得る。構造アセンブリ14内に含まれる複合材料の全ての層内の全ての孔がLMAでコーティングされた後で、複合材料の層及び複合材料から作られていない任意の他の層は、それぞれの積み重ねられた層内の孔が整列するようにスタック内に置かれる。それぞれのファスナ2は、(挿入中にハイドロプレーニングを可能にするために固化された材料の表面を液化し、それによって、抵抗を低減させるために)予め加熱され、その後、締り嵌めを有する複合材層30内のコーティングされた孔22の中へ挿入される。その後、加締め環34が、それぞれのファスナ2に連結される。各事例では、ファスナ2のシャンク6の少なくとも一部分が、導電性材料から作られたコーティング12によって囲まれている。
【0032】
次に、孔20などの接合孔内に固体のLMAを付けるための装置の様々な実施例が、
図2~
図10(並びに
図4A及び
図10A)を参照しながら開示されることとなる。これらの実施例のそれぞれは、回転可能且つ垂直に移動可能なスピンドル150を有する機械のエンドエフェクタ(例えば、チャック154)に連結され得る孔コーティングアプリケータ40(
図15参照)を含む。以下で開示される実施例の共通の態様において、孔コーティングアプリケータ40は、孔コーティングアプリケータ40が回転する際に、導電性材料から作られたコーティング12を摩擦を通じて付着させることによって、孔20を画定する表面をコーティングするように構成されている。ある実施例によれば、孔コーティングアプリケータ40は、固定された穿孔機械又はロボット若しくは他のオートメーション化された装置に取り付けられた穿孔ツールのスピンドル150の端に取り付けられたチャック154によってグリップされ得るシャフト42を含む。孔コーティングアプリケータ40は、スピンドル150が回転する際に、1以上のLMAパッド58a~58cを摩耗させるのに十分な力を用いて、複合材層30内の孔20を画定する表面に接触する、1以上のLMAパッド58a~58cを更に含む。本明細書で使用される際に、「LMAパッド」という用語は、(その長さに沿って変動し得る)厚さ、及び孔コーティングアプリケータ40の回転中に孔20に対して擦り付けられるように輪郭が決められた外縁面74を有する、LMAの固体ブロック又は層を指す。
【0033】
図2は、第1の実施例による、孔コーティングアプリケータ40aの部分の図を表す切り取り図である。孔コーティングアプリケータ40aは、遠位端を有するシャフト42、及びシャフト42の中間部分に固定的に連結されたアプリケータ本体46を含む。シャフト42とアプリケータ本体46は、金属合金から作られており、それらの何れも低融点合金(LMA)ではない。
【0034】
第1の実施例によれば、アプリケータ本体46は、非可撓性部分46a、第1の可撓性要素46b、及び第2の可撓性要素46dを含む。非可撓性部分46aは、シャフト42の遠位端から距離を置いてシャフト42の中間部分に固定的に連結されている。第1の可撓性要素46bは、第1の可撓性ヒンジ46cの撓みによって非可撓性部分46aに対して曲がるように構成されている。第2の可撓性要素46dは、第2の可撓性ヒンジ46eの撓みによって非可撓性部分46aに対して曲がるように構成されている。第1の可撓性ヒンジ46cは、第1の可撓性要素46bを非可撓性部分46aに対して直接的に連結し、第2の可撓性ヒンジ46eは、第2の可撓性要素46dを非可撓性部部分46aに対して直接的に連結している。
【0035】
孔コーティングアプリケータ40aは、第1の可撓性要素46bに取り付けられた第1のLMAパッド54a、及び第2の可撓性要素46dに取り付けられた第2のLMAパッド54bを更に含む。第1のLMAパッド54aと第2のLMAパッド54bのそれぞれは、好適には、LMA粒子を用いてコーティングされる(
図1で示されている)孔20の半径と近似的に等しい半径を有する直円筒面の一セクションである外縁面58を有する。LMAパッド54a及び54bは、第1の可撓性要素46b及び第2の可撓性要素46dの外縁面を超えて延在する。それによって、孔コーティングアプリケータ40aの回転中に、第1の可撓性要素46b及び第2の可撓性要素46dは、孔20を画定する表面に接触せず、外縁面58が孔20と接触する。
【0036】
孔コーティングアプリケータ40aは、直円錐台面(truncated right circular conical surface)を有するノーズ44を更に含み得る。ノーズ44は、シャフト42の遠位端に取り付けられている。ノーズ44のテーパが付けられた円周面は、孔コーティングアプリケータ40aの挿入中に、ノーズ44が孔20を通って移動することを容易にする。ノーズのベース44aは、保持バネ50に対する端止めとして働く。保持バネ50は、
図2で見られるように、シャフト42の一部分の周りに巻き付けられている。保持バネ50の他端は、第1の可撓性要素46b及び第2の可撓性要素46dの遠位端の近傍でシャフト42に摺動可能に連結された、スライダー48と接触している。第1の可撓性要素46bの遠位端は、第1の直円錐台面52aの円周部分を有し、第2の可撓性要素46dの遠位端は、第2の直円錐台面52bの円周部分を有する。スライダー48は、シャフト42がそこを通って移動するボアを有する直円錐台の形態を採る。スライダー48の外周面は、スライダー48が接する位置にあるときに、第1の可撓性要素46b及び第2の可撓性要素46dの直円錐台面52a及び52bの円周部分に接する、直円錐台面56である。
【0037】
保持バネ50は、
図2の矢印Aによって示されている軸方向にスライダー48を摺動させるバネ力をスライダー48に加える。この摺動動作中に、第3の直円錐台面56は、第1及び第2の可撓性要素の遠位端をシャフト42から離れるように(
図2で矢印BとCによって示されている)両側の方向へ撓ませる。より具体的には、スライダー48によってかけられた接触力が、第1の可撓性要素46bに角度βだけ角偏向を受けさせる。この角偏向は、第1の可撓性ヒンジ46cにおいて生じる撓みによって可能となる。第2の可撓性要素46dは、第2の可撓性ヒンジ46eの撓みによって同様な角偏向を受ける。これらの角偏向の予想において、LMAパッド54a及び54bの外縁面58は、偏向角βを補償するために角度αだけ傾けられる。この補償は、外縁面58が、コーティングされる孔と平行に且つ傾かないようになることを確実にし得る。今度は、これにより、各外縁面58の全体が孔と接触し、各外縁面58の全体が孔の内側にあるときに孔コーティングアプリケータ40aが回転した場合、各外縁面58の全体が摩耗に晒されることが確実になり得る。好適には、シャフト42の軸が、孔コーティングアプリケータ40aの回転中に孔の軸と同軸になり得る。
【0038】
図3は、第2の実施例による、孔コーティングアプリケータ40bの部分の図を表す切り取り図である。孔コーティングアプリケータ40bは、遠位端を有するシャフト42、シャフト42の遠位端に取り付けられたノーズ44、及びノーズ44から距離を置いてシャフト42の中間部分に取り付けられた支持フランジ64を含む。孔コーティングアプリケータ40bは、シャフト42と緩く連結された、一対のカム半身60aと60bを更に含む。カム半身60aと60bのそれぞれは、それぞれのカム面62aと62bを有する。それぞれのカム面62aと62bは、互いに対峙し、一方が他方に向けて押されると接触するようになる。更に、カム半身60aと60bのそれぞれは、直円筒面の一セクションである外縁面を有する。孔コーティングアプリケータ40bは、カム半身60aと60bのそれぞれの外縁面の部分に接着されたそれぞれのLMAパッド54aと54bを更に含む。今度は、LMAパッド54aと54bが、それぞれの外縁面74を有する。それぞれの外縁面74は、前述されたように、コーティングされる孔の半径と一致する半径を有する直円筒面である。LMAパッド54aと54bのそれぞれは、一定の厚さを有し得る。
【0039】
孔コーティングアプリケータ40bは、
図3で見られるように、シャフト42の一部分の周りに巻き付けられた保持バネ50を更に含む。支持フランジ64は、保持バネ50に対する端止めとして働く。保持バネ50の他端は、カム半身60aの端面に接触する。保持バネ50は、
図3で矢印Fによって示される軸方向にカム半身60aを移動させるように付勢するバネ力を、カム半身60aに加える。この移動中に、カム半身60bのカム面62bは、(
図3の矢印Dによって示されている)カム半身60aの動きが、軸方向成分と径方向成分の両方を有するように、カム半身60aを撓ませる。更に、カム半身60aのカム面62aは、カム半身60bも、カム半身60aの径方向外向きの動きとは反対の方向の(
図3で矢印Eによって示されている)径方向外向きに移動するように、カム半身60bにカム(camming)する。カム半身60a及び60bのこの径方向の膨張の効果は、孔コーティングアプリケータ40bの回転中に、孔の両側に対してLMAパッド54aと54bの外縁面を押すことである。かけられる圧力の大きさは、孔コーティングアプリケータ40bの回転中に、LMAパッドを摩耗させるのに十分な摩擦力を生成するように設計され、LMA粒子を孔に付着させる。この付着は、孔20内のコーティング12の所望の厚さが実現されるまで継続される。
【0040】
図4は、第3の実施例による、孔コーティングアプリケータ40cの部分の図を表す切り取り図である。
図4Aは、
図4と類似する切り取り図であるが、相違点は、孔コーティングアプリケータ40cの(破線で示されている)幾つかの構成要素が、更なる内部構造を明らかにするために除去されており、且つ、幾つかのハッチングが、図面中の混雑を避けるために省略されていることである。
【0041】
図4で見られるように、孔コーティングアプリケータ40cは、シャフト42、シャフト42の遠位端と一体的に形成され又はシャフト42の遠位端に接合されたアプリケータ本体76、アプリケータ本体76の遠位端に取り付けられたノーズ44、及びアプリケータ本体76から距離を置いてシャフト42の中間部分に取り付けられた支持フランジ64を含む。孔コーティングアプリケータ40cは、3つのカムブロック78a~78cを更に含む。3つのカムブロック78a~78cは、アプリケータ本体76の内側に形成されたそれぞれのカム面62a、62bに沿って摺動するように、アプリケータ本体76と摺動可能に連結されている。3つのカム面のうちの2つのカム面62aと62bだけが、
図4A及び
図5で視認可能である。各カムブロック78a~78cは、アプリケータ本体76の内側に形成されたカム面62a、62bと対峙し且つ接触するそれぞれの傾斜面を有する。
【0042】
図8は、第3の実施例による、アプリケータ本体76の構造に対する幾らかの洞察を提供する。カムブロック78aは、3つの側部上の開口部82を境界付けるカム面62aを明らかにするために除去されてしまった。押し棒リンク70dが、開口部82を通って移動する。カムブロック78aの動きは、
図8ではそれらのうちの一方だけが視認可能である、一対の相互に対向する平坦なガイド壁80によって、横断方向において抑制されている。カムブロック78aの動きは、任意の適切な手段によって、径方向外向きの方向において抑制されている。例えば、ガイド壁80には、カムブロック78aがアプリケータ本体76から落ちることを防止するために、対応するカムブロック78a内に形成された直線的なチャネルと係合する突起が設けられてよい。
【0043】
したがって、ノーズ44に向けられたカムブロック78a~78cの任意の動きは、カムブロック78a~78cが、カム面と平行に移動することをもたらし得る。カム面は、シャフト42の軸に対して斜めの角度で傾いている。言い換えると、各カムブロック78a~78cの動きは、
図4の矢印Dで示されているように、軸方向成分と径方向外向き成分の両方を有する。3つのカムブロック78a~78cの径方向外向きの動きは、本明細書で「径方向膨張」と称されることとなる。
【0044】
更に、カムブロック78a~78cのそれぞれは、直円筒面の一セクションである外縁面を有する。孔コーティングアプリケータ40cは、それぞれ、カムブロック78a~78cの外縁面に接着されたそれぞれのLMAパッド54a~54c(
図4では、LMAパッド54a及び54bのみが視認可能である)を更に含む。今度は、LMAパッド54a~54cが、それぞれの外縁面74を有する。それぞれの外縁面74は、前述されたように、コーティングされる孔の半径と一致する半径を有する直円筒面である。LMAパッド54a~54cのそれぞれは、一定の厚さを有し得る。
【0045】
図4で最も良くみられるように、カムブロック78a~78cのトリオは、押し棒70a及び3つの押し棒リンク70b~70dを含む押し棒リンケージ70の軸方向の移動に応じて、調和して移動するように構成されている。旋回可能カップリング(例えば、回転ジョイント)は、図面では示されていないが、押し棒リンク70b~70dは、押し棒70aのうちの一端に旋回可能に連結されている。押し棒リンク70b~70dの他端は、それぞれのカムブロック78a~78cと旋回可能に連結されている。押し棒70aの端部は、押し棒70aの動きを軸方向のみに制約するために、シャフト42内に形成された(図面では示されていない)軸方向ボア内に位置していてよい。押し棒70aがノーズ44に向けて軸方向に移動される際に、押し棒リンク70b~70dは、コーティングされる孔と接触するLMAパッド54a~54c所望の径方向膨張を生成するために、それぞれの傾いたカム面(
図4A及び
図5では、カム面62a及び62bのみが視認可能である)に沿って、それぞれのカムブロック78a~78cを押す。
【0046】
孔コーティングアプリケータ40bは、
図4で見られるように、シャフト42の一部分の周りに巻き付けられた保持バネ50を更に含むことができる。支持フランジ64は、保持バネ50に対する端止めとして働く。保持バネ50の他端は、その周りにバネ50が巻き付けられているシャフト42の部分に沿って摺動可能なアニュラリング72上に接触しバネ力をかける。アニュラリング72は、(
図4、
図4A、及び
図5で描かれている)端位置と、その端位置から(すなわち、ノーズ44から離れる方向に)移動された位置と、の間で摺動可能である。端位置では、アニュラリング72の前面が、アプリケータ本体76のアニュラ端面(以下、「端止め77」)に接する(端止め77は、
図6で最も良く見られる)。移動された位置では、保持バネが、アニュラリング72が端位置にあるときの圧縮状態よりも圧縮された状態にある。
【0047】
アニュラリング72の機能は、アニュラリング72が、
図4、
図4A、及び
図5で見られる、横断ピン66を保持する正反対にある2つの径方向ボアを有するという事実から、探り出すことができる。
図4で示されているように、横断ピン66は、押し棒70aと固定的に連結されており、それによって、アニュラリング72及び押し棒70aは、連携して移動する。この配置は、アニュラリング72をその端位置に向けて押すことによって、保持バネ50のバネ力が、押し棒70aをノーズ44に向けて軸方向に移動させることを可能にし得る。今度は、アニュラリング72が、押し棒リンケージ70をノーズ44に向けて押し、それによって、LMAパッド54a~54cを、径方向に膨張させて孔と接触させる。
【0048】
アニュラリング72の開口部に及ぶ横断ピン66の部分は、その周りに保持バネ50が巻き付けられているシャフト42の部分内に形成されたスロット68内に位置している。スロット68を明らかにするために、保持バネ50は、
図5~
図7のそれぞれから省略された。スロット68は、シャフト42を径方向に横断して且つシャフト42に沿って軸方向に延在している。
図5は、スロット68の内側に位置する横断ピン66を示している。横断ピン66は、両矢印Gによって示されているように、スロット68の内側で軸方向の何れの方向にも移動可能である。
図6は、やはりアニュラリング72が省略された状態の横断ピン66を示している。
図7は、端位置にあるアニュラリング72を示している。端位置では、アニュラリング72の前面が、アプリケータ本体76の(
図7では視認可能でない)アニュラ端面と接している。
【0049】
孔コーティングアプリケータ40cの唯一の干渉セクションは、LMAパッド54a~54cであり、円錐ノーズ44ではない。ノーズ44は、孔コーティングアプリケータ40cを孔の中へ誘導する。ノーズ44のベース44aの直径は、孔の直径よりも小さい。CFRPの孔20との接触は、ノーズ挿入の後に生じる。この時点で、干渉及び摩擦のために、LMAパッド54a~54cは、LMAパッド54a~54cの外縁面74が孔20に接触するまで、傾斜した経路を下って移動し、裏側の保持バネ50を圧縮する。バネの圧縮は、LMAパッド54a~54cとCFRPの孔との間のしっかりとした接触を維持するために、安定した径方向外向きの力を提供する。圧縮力の大きさは、孔コーティングアプリケータ40cの回転中に、LMAパッド54a~54cを摩耗させるのに十分な摩擦力を生成し、LMA粒子を孔20を画定する表面上に付着させる。この付着は、コーティング12の所望の厚さが実現されるまで継続される。
【0050】
図9及び
図10は、第4の実施例による、孔コーティングアプリケータ40dの異なる図を表す図である。孔コーティングアプリケータ40dは、遠位端を有するシャフト42、及びシャフト42の遠位端と固定的に連結されるか又はシャフト42の遠位端と一体的に形成されたモノリシックなアプリケータ本体84を含む。(後者の場合、シャフト42及びアプリケータ本体84は、集合的にモノリシックな構造体を形成する。)シャフト42とアプリケータ本体84は、低融点合金(LMA)ではない金属合金から作られている。
【0051】
第4の実施例によれば、アプリケータ本体84は、非可撓性部分85、第1の可撓性要素90、及び第2の可撓性要素106を含む。非可撓性部分85は、シャフト42の遠位端と固定的に連結されている。可撓性要素90は、第1の可撓性ヒンジ86の撓みによって非可撓性部分85に対して曲がるように構成されている。可撓性要素106は、第2の可撓性ヒンジ92及び第4の可撓性ヒンジ96の撓みによって可撓性要素90に対して曲がるように構成されている。第1の可撓性ヒンジ86は、可撓性要素90を非可撓性部分85に連結し、可撓性ヒンジ92及び96は、可撓性要素90と106を互いに連結している。アプリケータ本体84は、第3の可撓性要素102を更に含む。第3の可撓性要素102は、第5の可撓性ヒンジ94及び第6の可撓性ヒンジ98の撓みによって可撓性要素90及び106に対して曲がるように構成されている。別の可撓性要素104は、可撓性ヒンジ94及び100の撓みによって可撓性要素90及び106に対して曲がるように構成されている。可撓性ヒンジ98及び100は、可撓性要素90と106を互いに連結する。
【0052】
第4の実施例によれば、アプリケータ本体84は、可撓性要素108及び可撓性要素124を更に含む。可撓性要素108は、可撓性ヒンジ88の撓みによって非可撓性部分85に対して曲がるように構成されている。可撓性要素124は、可撓性ヒンジ110及び114の撓みによって可撓性要素108に対して曲がるように構成されている。可撓性ヒンジ88は、可撓性要素108を非可撓性部分85に直接的に連結する。可撓性ヒンジ110及び114は、可撓性要素108及び124を互いに連結する。アプリケータ本体84は、可撓性要素120及び可撓性要素122を更に含む。可撓性要素120は、可撓性ヒンジ112及び116の撓みによって可撓性要素108及び124に対して曲がるように構成されている。可撓性要素122は、可撓性ヒンジ112及び118の撓みによって可撓性要素108及び124に対して曲がるように構成されている。可撓性ヒンジ116及び118は、可撓性要素120と122を互いに連結する。
【0053】
図10Aを参照すると、可撓性ヒンジ94、98、及び100を連結する交差部1aと、可撓性ヒンジ92、94、及び96を連結する交差部1bとは、可撓性ヒンジ94によって連結されている。可撓性ヒンジ112、116、及び118を連結する交差部1cと、可撓性ヒンジ110、112、及び114を連結する交差部1dとは、可撓性ヒンジ112によって連結されている。
【0054】
前述の構造は、1以上の可撓性ヒンジの撓みによって、全ての可撓性要素が、アプリケータ本体84の非可撓性部分85に対して、及び、シャフト42に対して曲がることを可能にする。例えば、可撓性要素102は、可撓性ヒンジ98、94、92、及び86の撓みによって、非可撓性部分85に対して曲がるように構成され、可撓性要素104は、可撓性ヒンジ100、94、92、及び86の撓みによって、非可撓性部分85に対して曲がるように構成され、可撓性要素120は、可撓性ヒンジ116、112、110、及び88の撓みによって非可撓性部分85に対して曲がるように構成され、可撓性要素122は、可撓性ヒンジ118、112、110、及び88の撓みによって、非可撓性部分85に対して曲がるように構成されている。モノリシックな孔コーティングアプリケータ40dは、可撓性ヒンジによる自己整合(self-aligning)及びセンタリング能力を有する。
【0055】
孔コーティングアプリケータ40dは、可撓性要素102及び104並びに交差部1aの外縁面に取り付けられた第1のLMAパッド54aを更に含む。孔コーティングアプリケータ40dは、可撓性要素120及び122並びに交差部1cの外縁面に取り付けられた第2のLMAパッド54bを含むことができる。アプリケータ本体84が孔の内側にある間で、孔コーティングアプリケータ40dの回転中に、可撓性要素は、求心力のために径方向外向きに曲がり孔と接触する。
図9及び
図10では示されていないが、非撓み状態にある可撓性要素102及び104は、孔コーティングアプリケータ40dの中心軸に向けてわずかに傾き得る。それによって、回転中の径方向外向きの曲がりが、LMAパッド54a及び54bのアラインメント(alignment)を生成する。可撓性要素120及び122に対しても同じことが言える。シャフト42の回転速度は、LMAパッド54a及び54bと孔との間のインターフェースにおいて生成される結果としての摩擦力の大きさが、LMAを摩耗させ孔に付着させるのに十分高くなっている必要がある。この付着は、孔コーティングの所望の厚さが実現されるまで継続される。
【0056】
図20は、第5の実施例による、孔コーティングアプリケータ40eの部分の図を表す図である。孔コーティングアプリケータ40eは、遠位端を有するシャフト42、及びシャフト42の遠位端と固定的に連結されるか又はシャフト42の遠位端と一体的に形成されたモノリシックなアプリケータ本体84を含む。(後者の場合、シャフト42及びアプリケータ本体84は、集合的にモノリシックな構造体を形成する。)シャフト42とアプリケータ本体84は、低融点合金(LMA)ではない金属合金から作られている。
【0057】
第5の実施例によれば、アプリケータ本体84は、非可撓性部分180、径方向可撓性要素182、及び径方向可撓性要素184を含む。非可撓性部分180は、シャフト42の遠位端と固定的に連結されている。径方向可撓性要素182は、軸方向可撓性ヒンジ186の撓みによって非可撓性部分180に対して曲がるように構成されている。径方向可撓性要素184は、軸方向可撓性ヒンジ188の撓みによって非可撓性部分180に対して曲がるように構成されている。径方向可撓性要素182は、シャフト42から間隙190だけ分離されており、非可撓性部分180から間隙192だけ分離されている。径方向可撓性要素184は、シャフト42から(
図20では、視認可能でない)間隙だけ分離されており、非可撓性部分180から間隙194だけ分離されている。
【0058】
孔コーティングアプリケータ40eは、径方向可撓性要素182の外縁面に取り付けられた第1のLMAパッド54a、及び径方向可撓性要素184の外縁面に取り付けられた第2のLMAパッド54bを更に含む。アプリケータ本体84が孔の内側にある間で、孔コーティングアプリケータ40eの回転中に、径方向可撓性要素182及び184は、求心力のために径方向外向きに曲がり孔と接触することとなる。径方向可撓性要素182及び184の使用は、より少ない回転でCFRP面に対するLMAの供給を改善し得る。更に、アプリケータの(
図20の湾曲した矢印で示されている)単方向の回転は、アプリケータとCFRP面との間の非常に安定した反応を可能にする。軸方向可撓性ヒンジ186及び188の厚さを調整することによって、及び、材料の選択によって、所望の径方向力を実現することができる。更に、移動は孔に平行である。最後に、ヒンジの方向付け及び回転方向が、CERPとLMAパッド54a及び54bとの間の滑らかな係合を提供する。
【0059】
任意選択的に、上述のアプリケータのうちの1つを使用して固体のLMAから作られた第1のコーティングが付けられた後で、溶融したLMAを使用してLMAの第2のコーティングが第1のコーティングの上に付けられてよい。この2段階のアプリケーション手順の利点は、第2のコーティングの表面が、第1のコーティングの表面よりも滑らかになるということである。
【0060】
適切なLMAは、以下のうちの2以上のエレメントの合金を含む。すなわち、ビスマス、インジウム、すず、鉛、及びアンチモンである。好適なLMAは、(好適には50%を超える)ビスマス、インジウム、及びすずの混合物から成る三元合金である。その軟らかさのために、LMAは、固体潤滑剤のように働き、締り嵌めのためにより低い挿入力でより容易にファスナを挿入できる。
【0061】
特に複合材の接合設置において十分な量のLMAを付けることを確実にするために、抵抗測定回路36を含むリアルタイム・モニタリングシステムが採用されて、接触抵抗が許容可能範囲内にあることを検証することができる。本明細書でこれ以降に幾らか詳細に開示されるモニタリングシステムは、直列にある、LMA抵抗の実効抵抗とCFRP層内の炭素繊維のランダムな並列抵抗とを測定するために、容量結合を利用する。厚みを通るLMAの抵抗は、CFRP層の抵抗よりも小さい桁である。したがって、LMAの抵抗は無視することができる。例えば、LMAの厚さのばらつきは、LMAの抵抗を数マイクロオームだけ変動させるが、一方で、インターフェースの抵抗は約数ミリオームである。正味の抵抗のばらつきは、完全に、孔のインターフェースにおける炭素繊維の連続性の関数であり、今度は、その連続性が、LMAコーティングの品質及び量にのみ依存する。本明細書で説明される容量結合のセグメントは、モニタリングシステムが、1つの接触点のみで抵抗を測定することを可能にし得る。LMAアプリケーション工程(アプリケータの挿入及び回転)を制御し、モニタリングシステムによる応答に基づいて、満足できる抵抗レベルが実現されたことを確認するために、フィードバックループが使用される。接合孔上にコーティングを形成するためにLMAを付着させ、同時に、直列にあるLMAと炭素繊維の実効抵抗測定し、その後、指定された実効抵抗が実現されたときに付着させることを止めることによって、最終構造アセンブリにおいて孔/ファスナ・インターフェースの少なくとも最小の許容可能な導電性が実現され得る。
【0062】
図11は、複合材層30内に形成された接合孔20内に付けられたコーティング12の厚さを示す抵抗を測定するように設計された、抵抗測定回路36を表す回路図である。(孔20の他方の側にある複合材料は、
図11において示されていない。)
図11で描かれているシナリオでは、抵抗測定回路36が、直列にある、LMAから作られたコーティング12の実効抵抗とCFRPから作られた複合材層30内の炭素繊維のランダムな並列抵抗とを測定している。この測定は、孔20を囲む複合材層30の表面の環状部分と接触した環形状を有する容量検知パッド38を置くことによって実現される。
図11では示されていないが、容量検知パッド38は、誘電体コーティング39(
図16参照)の一方の側に取り付けられた導電性検知要素(例えば、銅板、銅フィルム、又は銅コーティング)を有する誘電体コーティング39を含む。誘電体コーティング39は、短絡を防止するために検知要素と複合材層30との間の空間を維持することができる。結果として、検知パッド38、及び複合材層30の対峙部分は、静電容量C1を有するコンデンサを形成する。
【0063】
抵抗測定回路36は、修正された抵抗・静電容量(RC)ホイートストンブリッジ130を形成する一対の端子AとBを含む。(ホイートストンブリッジは、ブリッジ回路の2つの区間をバランスさせることによって未知の電気抵抗を測定するために使用される電気回路である。2つの区間のうちの一方の区間が、未知の構成要素を含んでいる。)検知パッド38は、端子Bと電気接続されている。端子Aは、静電容量C2を有するコンデンサ160の一方の側に接続されている。コンデンサ160の他方の側は、抵抗R2と直列に接続されている。今度は、抵抗R2が、接点170によってアプリケータ40と直列に電気接続されている。直列にあるコーティング12と複合材料層30の実効抵抗が、
図11で可変抵抗R9(以下、「実効抵抗R9」)によって表されている。実効抵抗R9は、コーティング12に対する炭素繊維の連続性の程度に応じて変動する。アプリケータ40も、接点170によって高周波数交流電源136と直列に電気接続されている。電源136は、コーティングの付着中に、高周波交流電流を供給する。その高周波交流電流は、回転するアプリケータ40を通って、コーティング12を通って、複合材料30の中へ流れ、検知パッド38内の変位電流を生成する。コーティング12の厚さが増加するので、実効抵抗R9は、抵抗R9が抵抗R2と等しくなるまで減少する。
図14で示されているように、修正されたRCホイートストンブリッジ130のAB端子間の電圧差は、実効抵抗R9が減少する際に減少する。
【0064】
未だ
図11を参照して、修正されたRCホイートストンブリッジ130のAB端子間の電圧差は、オペアンプ138へ入力される。オペアンプ138の出力端子7は、直列にある、整流器164(単一のダイオードとして表されているが、整流器164は、複数のダイオードを含み得る)と抵抗R7とによって、オペアンプ140の負の入力端子9に接続されている。オペアンプ139は、(可変可能な)実効抵抗R9を(調整可能な)抵抗R2と比較するコンパレータとして動作する。より具体的には、抵抗R2が、満足できるインターフェースと考えられ得るものの多くの個別の測定を経てヒューリスティックに(heuristically)評価され得る。抵抗R2は、用途又は設置構成に依存し、特に、異なる材料系に対して非常に異なる値であり得る。抵抗R2は、マルチメーターの範囲選択に非常に類似して、一連の予め規定された抵抗R2によって容易に調整され得る。
【0065】
図11に戻って参照すると、オペアンプ140の正の入力端子は、高周波数交流電源136と地面との間に位置付けられた接点166によって接地されている。更に、接点166は、抵抗R6を経由して(接点170と高周波数交流電源136との間に位置している)接点168と電気接続され、抵抗R4を経由して端子Aに電気接続され、抵抗R3を経由して端子Bに電気接続されている。
【0066】
オペアンプ138は、第1及び第2の入力端子3及び5を有する。第1の入力端子3は、交流電源136から交流電流を受け取る。その受け取りは、交流電流が、孔20を有する複合材層30、孔20の内側に配置され且つ交流電源136に電気接続された導電性本体(例えば、
図11のアプリケータ40又は
図12のファスナ2)、導電性本体と孔20との間に配置された導電性材料から作られたコーティング12、及び複合材層30に容量結合され且つオペアンプ138の第1の端子3に電気接続された検知パッド38を通って流れた後である。第2の入力端子5は、交流電源136から交流電流を受け取る。その受け取りは、交流電流が、固定抵抗R2及びコンデンサ160を通って流れた後である。コンデンサ160は、固定抵抗R2に電気接続された一方の側と、オペアンプ138の第2の端子5に電気接続された他方の側とを有する。
【0067】
オペアンプ140の出力端子は、並列にある、静電容量C3を有するコンデンサ162と抵抗R8とを経由して、オペアンプ140の負の入力端子9に電気接続されている。抵抗R7、オペアンプ140、コンデンサ162、及び抵抗R8は、積分器134を形成する。オペアンプ140の出力端子は、第1の出力端子142にも電気接続されている。第2の出力端子144は、接点166によって接地されている。したがって、第1の出力端子142と第2の出力端子144との間の出力電圧V
outは、オペアンプ140の出力電圧である。オペアンプ140は、時間に関して積分の数学的演算を実行する。すなわち、
図14で見られるように、出力電圧は、時間にわたり積分される入力電圧に比例する。
図14は、孔20内に付着したコーティング12の厚さが増加する際の、出力電圧V
out対時間のグラフを示している。
【0068】
図13は、可変実効抵抗R
9が固定抵抗R
2と等しいか否かに応じて如何に
図11で描かれた回路の出力電圧V
outが変動するかを示す、V
out対時間のグラフである。
図13のグラフ及び
図14の上側のグラフで見られるように、出力電圧V
outは、実効抵抗R9がR9≠R2からR9=R2へ変化したときに、突然増加する。
【0069】
実効抵抗R9は、全ての実用的な目的に対して、孔のインターフェースにおける繊維の連続性のみに依存する。これは、LMAだけの抵抗が炭素繊維の抵抗と比較して無視でき、電流がLMAの薄い層を通って垂直に流れるので、その抵抗が実際にはゼロになることを意味する。言い換えると、LMAを有するインターフェースの抵抗は、繊維の連続性のみに依存し、LMAのアプリケーションステップからは独立している。
【0070】
図11で描かれている抵抗測定回路36の1つの利点は、抵抗が1つの接点のみを用いて測定されることを可能にする、検知パッド38の複合材層30との容量結合である。抵抗測定は、導電性アプリケータ40によって付けられているコーティング12の厚さが、所望の厚さに到達した時を決定するために使用され得る。前述したように、抵抗R2は、所望の厚さを有するコーティングの抵抗に一致するように選択される。したがって、R9=R2となったときに、コーティング付着プロセスが終了され得る。
【0071】
図15は、孔のインターフェース1における実効抵抗を測定することによって、CFRPを含む複合材層30内の孔20を画定する表面上に付着した導電性材料から作られたコーティング12の厚さをモニタリングするためのシステム125の構成要素を特定するブロック図である。システム125は、制御コンピュータ128の命令の下にある装置126を含む。装置126は、支持構造体146、軸受け148、スピンドル150、モータ152、チャック154、孔コーティングアプリケータ40、及び(
図15では示されていない)低融点合金パッドを含む。軸受け148は、支持構造体146によって支持されている。スピンドル150は、軸受け148によって回転可能に支持されている。モータ152は、スピンドル150の回転を駆動するためにスピンドル150に機械的に連結されている。チャック154は、スピンドル150の遠位端に連結されている。孔コーティングアプリケータ40は、低融点合金ではない材料から作られ且つチャック154によってクランプされた、(
図15では示されていない)シャフトを含む。低融点合金パッドは、シャフトによって支持され、シャフトに対して径方向に移動可能である。支持構造体146は、(図面では示されていない)関節ロボットアームの形態を採り得る。
【0072】
スピンドル150の回転中に、アプリケータ40は、複合材層30内に形成された孔20を画定する表面上にコーティング12を付ける。検知パッド38が、複合材層30と容量結合されている。(
図11で詳細に示されている)抵抗測定回路36は、(導電性金属合金から作られている)アプリケータ40と、(導電性材料又は金属合金から作られている)検知パッド38と、に接続され得る。抵抗測定回路36からの出力電圧V
outは、制御コンピュータ128によって受け取られる。制御コンピュータ128は、出力電圧レベルに応じてモータコントローラ158に命令する。一方で、出力電圧V
outが、実効抵抗R9が抵抗R2と等しくないことを示すレベルを有するならば、制御コンピュータ128は、モータ152をオフするようにモータコントローラ158に指示命令するコマンドをモータコントローラ158に送信しない。他方で、出力電圧V
outが、実効抵抗R9が抵抗R2と等しいことを示すレベルを有するならば、制御コンピュータ128は、モータ152をオフするようにモータコントローラ158に指示命令するコマンドをモータコントローラ158に送信する。
【0073】
図17は、繊維強化プラスチック材料のプライの積層板の表面上にコーティング12を付けるための方法200のステップを特定するフローチャートである。積層板の(孔20を画定し得るか又はエッジ21を形成し得る)表面は、強化繊維の露出端を含む。方法200は、強化繊維の露出端を有する積層板の表面に対して擦り付けることによって固体の状態で摩耗可能な導電性材料を選択することを含む(ステップ202)。方法200は、導電性材料を摩耗させ積層板の表面上に付着させるために、積層板の表面に対して導電性材料を擦り付けることを更に含む(ステップ204)。
【0074】
図18は、
図15で描かれたシステム125を使用して、複合材層30の孔20を画定する面上にコーティング12を付けるための方法210のステップを特定するフローチャートである。抵抗測定回路36の検知パッド38が、複合材層30と容量結合される(ステップ212)。抵抗測定回路36の接触端子が、孔コーティングアプリケータ40と電気接続される(ステップ214)。孔コーティングアプリケータ40が、孔20内に挿入される(ステップ216)。孔コーティングアプリケータ40は、摩耗可能な導電性材料が孔20と接触している間に孔20内で回転され、導電性材料の粒子を摩耗させ孔20を画定する表面上に付着させる(ステップ218)。交流電流が、接触端子によって抵抗測定回路36から孔コーティングアプリケータ40に供給される(ステップ220)。交流電流が供給されている間に、抵抗測定回路36は、検知パッド38からの信号の振幅が、所望の量の導電性材料が、孔20を画定する表面上に付着したことを示す値に到達したときに、特性電圧信号を制御コンピュータ160に出力する(ステップ222)。特性電圧信号の受信に応答して、制御コンピュータ160は、モータコントローラ158がモータ152をオフにするように指示命令する制御信号をモータコントローラ158に送信し(ステップ224)、それは、孔コーティングアプリケータ40が回転を止めることをもたらす。その後、孔コーティングアプリケータ40は、コーティングされた孔22内から除去される(ステップ226)。
【0075】
図19は、導電性コーティングと、導電性繊維を有する繊維強化プラスチックから作られた複合材層のクロスプライ面と、のインターフェースにおける接触抵抗を測定するための方法230のステップを特定するフローチャートである。孔コーティングアプリケータ40が、孔20内に挿入される(ステップ232)。その後、孔コーティングアプリケータ40は、摩耗可能な導電性材料が孔20と接触している間に孔20内で回転され、導電性材料の粒子を摩耗させ孔20を画定する表面上に付着させる(ステップ234)。時間におけるあるポイントで、孔コーティングアプリケータ40の回転が止まる(ステップ236)。孔コーティングアプリケータ40が回転していない間に、交流電流が抵抗測定回路36から孔コーティングアプリケータ40に供給される(ステップ238)。交流電流が供給されている間に、検知パッド38からの信号の振幅が、所望の量の導電性材料が、孔20を画定する表面上に付着したことを示す値に到達したならば、特性電圧信号が抵抗測定回路36から出力される(ステップ240)。抵抗測定回路36が、特性電圧信号ではない電圧信号を出力するならば、孔コーティングアプリケータ40回転が再開される(ステップ242)。
【0076】
上述の抵抗測定技術は、コーティングされた孔22の中へファスナ2を挿入する間にコーティング12の厚さを確認するためにも使用され得る。
図12は、コーティングされた孔22の周りに置かれた(部分的にのみ示されている)検知パッド38を示している図である。検知パッド38は、アニュラリングの形状を有し、好適には、孔20と同心に置かれる。
図12は、実効抵抗R9の測定中にファスナ送入器156によって保持されているファスナ2を示している。同じ抵抗測定回路36が使用され得る。このシナリオでは、抵抗測定回路36の端子Aが、(導電性金属合金から作られている)ファスナ2に接続されており、一方で、端子Bは検知パッド38に接続されている。抵抗測定回路36が、実効抵抗R9が(所望のコーティング厚さを表す)選択された抵抗R2に少なくとも等しいことを示している電圧を出力するならば、コーティング厚さは、許容可能であると考えられ、ファスナの設置は、嵌め合い部品(図示せず)をファスナ2のねじ端部に連結し、その後にファスナ挿入器156を係合解除し且つ後退させることによって完了し得る。
【0077】
前述したように、
図11で描かれている抵抗測定回路36は、複合材層30のエッジ21上に付けられたコーティングの厚さを測定するためにも使用され得る。
図16は、近端(エッジに近い)ファスナ2を基準とした実効抵抗を測定することによって、CFRPを含む複合材層30のエッジ21上に付着した導電性コーティング12の厚さをモニタリングするためのシステムの構成要素を特定する図である。複合材層30は、プライのスタックを含み、各プライ内の炭素繊維は互いに対して相互に平行であるが、異なるプライは異なる繊維配向を有している。
図16で描かれている実施例では、あるプライは90度の角度に方向付けられた繊維を有し、あるプライは+45度の角度に方向付けられた繊維を有し、あるプライは-45度の角度に方向付けられた繊維を有する。したがって、ファスナ2において生成された電気スパーク(electric spark)は、ファスナ2からエッジ21に向けて3つの方向のうちの何れかに方向付けられた繊維に沿って移動し得る。したがって、
図16で見られる検知パッド38の位置及び検知パッドの破線の外形によって示されている2つの他の位置によって示されている、3つの好適な位置のそれぞれにおいてコーティング12の厚さを知ることは興味深いことである。
【0078】
検知パッド38は、特定の表面積(例えば、1cm2)を有する。目標とする抵抗値がとるべき値を知ることによって、LMAでコーティングされた平坦な面の任意の所与の面積に対するパッドの抵抗を測定することができる。これが意味するのは、検知パッド38の下の任意の所与の領域において、コーティング12とCFRPのエッジ21との間の接触が如何に完全であるかである。検知パッド38上に加えられる力は、測定の全体を通して(一貫性のために)同じであるべきである。何故ならば、インターフェースの接触抵抗と静電容量は、圧縮にも同様に依存するからである。
【0079】
本明細書で使用される際に「検知パッド」という用語は、
図11のCFRP表面を覆う又は
図16のコーティング12上に重なる容量性素子を指す。検知パッド38は、任意の偶発的な短絡を防止するために、誘電体コーティング39を有する。孔の抵抗測定に対して、最も単純な形状は、(本明細書で「アニュラリング」と称される)中央に孔を有する平坦な円形プレートである。この孔は、そこを通ってアプリケータがCFRPに挿入されることを可能にする。エッジの測定に対して、孔は必要ではなく、プレートのサイズはプライの厚さに基づいて変動し得る。有効表面積(effective surface area)及び合成誘電率(combined dielectric constant)は、実効静電容量を決定する重要な変数である。二次元輪郭の形状は、静電容量を変更しないが、その形状は、試験中のエリアの幾何学的形状と一致するように選択されなければならない。エッジの測定に対する最も単純な形状は、提案されている抵抗測定回路の範囲内で実効静電容量を生成するために、プライの厚さと等しい幅及び適切な長さを有する矩形状プレートであってよい。
【0080】
上述されたように、導電性コーティングと、導電性繊維を有する繊維強化プラスチックから作られた複合材層のクロスプライ面と、のインターフェースにおける接触抵抗を測定するために、抵抗測定回路36が使用され得る。クロスプライ面は、複合材層内の孔を画定し得るか又は複合材層のエッジを形成し得る。一実施例によれば、
図11で示されているように、検知パッドが、複合材層の表面上に置かれる。別の一実施例によれば、
図16で示されているように、検知パッドが、複合材層のコーティングされたエッジ上に置かれる。これらの実施例は、
図21で特定される共通のステップを共有する。
【0081】
より具体的には、
図21が、導電性コーティングと、導電性繊維を有する繊維強化プラスチックから作られた複合材層のクロスプライ面と、のインターフェースにおける接触抵抗を測定するための方法250のステップを特定するフローチャートである。方法250は、以下のステップを含む。先ず、検知パッドの誘電体コーティングが、複合材層と接触するように又は複合材層のクロスプライ面上の導電性コーティングと接触するように置かれる(ステップ252)。次に、コンパレータの第1の入力端子が、検知パッドに電気接続される(ステップ254)。そして、コンパレータの第2の入力端子が、コンデンサの一方の側に電気接続される(ステップ256)。コンデンサの他方の側は、固定抵抗に電気接続される(ステップ258)。固定抵抗は、複合材層内の孔内に挿入された導電性本体(例えば、ファスナ)に電気接続される(ステップ260)。測定を実行するために、交流電流が、導電性本体及び固定抵抗に供給される(ステップ262)。交流電流が供給されている間に、コンパレータの第1の入力端子において受信された検知パッドからの第1の入力信号の振幅が、コンパレータの第2の入力端子において受信されたコンデンサからの第2の入力信号の振幅に少なくとも等しいならば、特性電圧信号がコンパレータによって出力される(ステップ264)。前述の段落で説明された方法の一実施例によれば、複合材層のクロスプライ面は孔を画定し、導電性本体は、孔に挿入されるファスナ又は孔コーティングアプリケータである。前述の段落で説明された方法の別の一実施例によれば、導電性コーティングは、ファスナの近くの複合材層のエッジ上に配置される。該方法は、特性電圧信号が出力される時まで導電性コーティングを形成するために孔の上に導電性材料を付着させること、及び、特性電圧信号が出力された後で孔の上に導電性材料を付着させることを止めることを更に含む。
【0082】
最後に、本明細書で開示される抵抗モニタリング技術は、クロスプライ面に沿ってCFRPと相互作用する導電性コーティングの厚さを決定するための用途に限定されるものではない。(例えば、方程式によって)特定の物理パラメータがその電気抵抗に関連し得る事例では、本開示の抵抗測定方法が、間接的に、そのパラメータを正確に測定するために使用され得る。例えば、インターフェースの抵抗が湿度又は温度に非常に敏感であるならば、本明細書で開示される方法は、間接的に、関心対象のパラメータに依存する電気抵抗の変化を通じて関心対象のパラメータを正確に測定するために使用され得る。
【0083】
固体の導電性材料の摩耗によって複合材層内の接合孔をコーティングするための方法が、様々な実施例を参照して説明されてきたが、当業者には、以下に記載される特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことが可能であること及び同等物をそれらの要素に置換し得ることが理解されよう。加えて、特許請求の範囲から逸脱することなく、本明細書の教示を特定の状況に適合させるために多数の修正を行うことが可能である。
【0084】
請求項の文言が、請求項に列挙されているステップのうちの幾つか或いは全てが実施される特定の順序を示す条件を明確に特定又は宣言していない限り、これらのステップが、アルファベット順(本明細書中の任意のアルファベット順はあらかじめ列挙されているステップを参照する目的でのみ使用されている)又はこれらのステップが列挙されている順で実施されることを、本明細書に添付された方法の請求項が要求していると解釈すべきではない。また、請求項の文言が、そのような解釈を除外する条件を明確に宣言していない限り、方法の請求項は、2つ以上のステップの任意の部分が同時に又は交互に実施されることを除外すると解釈すべきでない。
【0085】
更に、本開示は以下の条項による実施例を含む。
条項1
繊維強化プラスチック材料のプライの積層板の表面上にコーティングを付けるための方法であって、前記積層板の前記表面が強化繊維の露出端を含み、前記方法が、
強化繊維の露出端を有する前記積層板の前記表面に対して擦り付けることによって固体の状態で摩耗可能な導電性材料を選択すること、及び
導電性材料の粒子を摩耗させて前記積層板の前記表面上に付着させるために、前記導電性材料を前記積層板の前記表面に対して擦り付けることを含む、方法。
条項2
前記導電性材料を前記積層板の前記表面に対して擦り付けることが、前記導電性材料を、複数のプライを通って延在する孔を画定する前記積層板の表面に対して擦り付けることを含む、条項1に記載の方法。
条項3
前記擦り付けることが、導電性材料の粒子を摩耗させて前記孔の周り全体において前記孔に付着させるように、前記導電性材料が、前記孔を画定する前記表面と摩擦接触している間に、前記孔を画定する前記表面によって境界付けられた空間の内側にある前記導電性材料を回転させることを含む、条項2に記載の方法。
条項4
前記導電性材料を、前記導電性材料が回転しているときに径方向外向きに撓むように構成された可撓性要素に取り付けることを更に含む、条項3に記載の方法。
条項5
前記導電性材料が、回転中にバネ力によって径方向外向きに付勢される、条項3に記載の方法。
条項6
前記導電性材料を前記積層板の前記表面に対して擦り付けることが、前記導電性材料を、複数のプライを通って切断されたエッジを画定する前記積層板の表面に対して擦り付けることを含む、条項1に記載の方法。
条項7
前記固体の状態で摩耗可能な導電性材料を選択することが、低融点合金を選択することを含む、条項1に記載の方法。
条項8
支持構造体、
前記支持構造体によって支持された軸受け、
前記軸受けによって回転可能に支持されたスピンドル、
前記スピンドルの回転を駆動するため前記スピンドルに機械的に連結されたモータ、
前記スピンドルに連結されたチャック、及び
シャフトと低融点合金パッドを備えた孔コーティングアプリケータであって、前記シャフトが、低融点合金ではない材料を含み且つ前記チャックによってクランプされ、前記低融点合金パッドが、前記シャフトによって支持され且つ前記シャフトに対して径方向に移動可能である、孔コーティングアプリケータを備える、装置。
条項9
前記孔コーティングアプリケータが、可撓性ヒンジの撓みによって前記シャフトに対して曲がるように構成された可撓性要素を更に備え、前記低融点合金パッドが、前記可撓性要素に取り付けられている、条項8に記載の装置。
条項10
前記孔コーティングアプリケータが、
カム面、
前記低融点合金パッドを支持し且つ前記カム面と接触した傾斜面を有するカムブロック、及び
前記カムブロック上に軸方向のバネ力をかけるバネを更に備え、
前記カム面が、前記軸方向のバネ力が前記カムブロック上にかけられたときに、前記カムブロックを撓ませて径方向外向きに移動させるように構成されている、条項8に記載の装置。
条項11
低融点合金ではない金属合金から作られ且つ遠位端を有するシャフト、
低融点合金ではない金属合金から作られたアプリケータ本体であって、前記シャフトの前記遠位端から距離を置いて位置付けられた前記シャフトの一部分に固定的に連結された非可撓性部分と、第1の可撓性ヒンジの撓みによって前記非可撓性部分に対して曲がるように構成された第1の可撓性要素と、を備えたアプリケータ本体、及び
摩耗可能な材料から作られ且つ前記第1の可撓性要素に取り付けられた第1のパッドを備える、孔コーティングアプリケータ。
条項12
前記アプリケータ本体が、第2の可撓性ヒンジの撓みによって前記非可撓性部分に対して曲がるように構成された第2の可撓性要素を更に備え、前記孔コーティングアプリケータが、摩耗可能な材料から作られ且つ前記第2の可撓性要素に取り付けられた第2のパッドを更に備える、条項11に記載の孔コーティングアプリケータ。
条項13
前記第1の可撓性ヒンジが、前記第1の可撓性要素を前記非可撓性部分に直接的に連結し、前記第2の可撓性ヒンジが、前記第2の可撓性要素を前記非可撓性部分に直接的に連結する、条項12に記載の孔コーティングアプリケータ。
条項14
前記第1の可撓性要素の遠位端が、第1の直円錐台面の円周部分を有し、前記第2の可撓性要素の遠位端が、第2の直円錐台面の円周部分を有し、前記孔コーティングアプリケータが更に、
前記第1の可撓性要素及び前記第2の可撓性要素の遠位端の近傍で前記シャフトに摺動可能に連結されたスライダーであって、前記スライダーが接する位置にあるときに、前記第1の可撓性要素及び前記第2の可撓性要素の前記第1の直円錐台面及び前記第2の直円錐台面の前記円周部分に接する第3の直円錐台面を有する、スライダー、及び
前記スライダー上にバネ力を加えることによって、前記第3の直円錐台面が、前記第1の可撓性要素及び前記第2の可撓性要素の前記端を前記シャフトから離れるように撓ませる、バネを備える、条項12に記載の孔コーティングアプリケータ。
条項15
前記アプリケータ本体が、第2の可撓性ヒンジの撓みによって前記非可撓性部分に対して曲がるように構成された第2の可撓性要素を更に備え、前記第1の可撓性要素が、前記第1の可撓性ヒンジの撓みによって前記第2の可撓性要素に対して曲がり、前記第1の可撓性ヒンジ及び前記第2の可撓性ヒンジの撓みによって前記シャフトに対して曲がるように構成されている、条項11に記載の孔コーティングアプリケータ。
条項16
前記第1の可撓性要素が、第3の可撓性ヒンジ及び第4の可撓性ヒンジの撓みによって、前記第2の可撓性要素に対して及び前記非可撓性部分に対して曲がるように構成されている、条項15に記載の孔コーティングアプリケータ。
条項17
前記第3の可撓性ヒンジ及び前記第4の可撓性ヒンジの撓みによって、並びに、第5の可撓性ヒンジの撓みによって、前記第2の可撓性要素に対して曲がり、前記第2の可撓性ヒンジ、前記第3の可撓性ヒンジ、前記第4の可撓性ヒンジ、及び前記第5の可撓性ヒンジの撓みによって前記非可撓性部分に対して曲がるように構成された第3の可撓性要素であって、前記シャフトが作られている前記金属合金から作られている第3の可撓性要素を更に備え、前記第1の可撓性要素が、前記第1の可撓性ヒンジの撓みによって前記第3の可撓性要素に対して曲がるように構成されており、前記第3の可撓性要素が、前記第5の可撓性ヒンジの撓みによって前記第1の可撓性要素に対して曲がるように構成されている、条項16に記載の孔コーティングアプリケータ。
条項18
低融点合金ではない材料から作られたシャフト、
前記シャフトに連結されたアプリケータ本体であって、低融点合金ではない材料から作られ且つ第1のカム面を備えたアプリケータ本体、
低融点合金ではない材料から作られ且つ前記第1のカム面に対峙する傾斜面を有する、第1のカムブロック、
前記第1のカムブロックに取り付けられた第1の低融点合金パッドであって、露出された外縁面を有する第1の低融点合金パッド、及び
前記第1のカムブロック上に軸方向のバネ力をかけるように構成されたバネを備え、前記第1のカム面が、前記第1のカムブロックが前記軸方向のバネ力によって移動されたときに、前記第1のカムブロックを撓ませて径方向外向き成分を有する方向に移動させるように構成されている、孔コーティングアプリケータ。
条項19
前記アプリケータ本体が、第2のカム面を更に備え、前記孔コーティングアプリケータが更に、
前記第2のカム面と対峙する傾斜面を有する第2のカムブロック、及び
前記第2のカムブロックに取り付けられた第2の低融点合金パッドであって、露出された外縁面を有する第2の低融点合金パッドを備え、
前記バネが、前記第2のカムブロック上に軸方向のバネ力をかけて、前記第2のカムブロックが前記軸方向のバネ力によって移動されたときに、前記第2のカム面に、前記第2のカムブロックを撓ませて径方向外向き成分を有する方向に移動させるように構成されている、条項18に記載の孔コーティングアプリケータ。
条項20
凹面を有する表面を有する孔又はエッジを有する複合材層、及び
前記孔又は前記エッジの前記表面に付着され且つ前記凹面を充填するコーティングを備え、
前記複合材層が、導電性材料から作られた繊維を備え、前記コーティングが、低温状態で付着した低融点合金の摩耗した粒子の集合体を含む、構造アセンブリ。
条項21
前記コーティングが、前記粒子の集合体上に重なる低融点合金の連続的な薄膜を更に備える、条項20に記載の構造アセンブリ。
【0086】
特許請求の範囲で使用される際に、「固定的に連結され」という用語は、一体的に形成され、接合され、固定され、取り付けられる、ことの何れをも含むように広義に解釈されるべきである。