(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】印刷システム、印刷システムの制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20240422BHJP
【FI】
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2019088596
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】阿武 純
(72)【発明者】
【氏名】藤田 諒
(72)【発明者】
【氏名】田中 大智
(72)【発明者】
【氏名】辻田 孝介
(72)【発明者】
【氏名】菊池 翔
(72)【発明者】
【氏名】前田 優樹
(72)【発明者】
【氏名】矢野 孝明
(72)【発明者】
【氏名】鳥谷部 洋之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智史
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-246722(JP,A)
【文献】特開2016-096381(JP,A)
【文献】特開2017-016315(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0180729(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0085665(US,A1)
【文献】特開2017-204786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データと品質要求データを外部装置から受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信した品質要求データを解釈する解釈手段と、
前記印刷データに基づいて印刷される印刷物を検品するための検品設定を、前記解釈手段による解釈結果に基づいて行う設定手段と、
前記受信手段によって受信した印刷データの処理を、前記解釈手段による解釈結果に基づいて実行する処理手段と、
前記処理手段による前記処理が実行された前記印刷データに基づいて印刷された印刷物を前記検品設定によって検品して得た第1の検品結果と、前記印刷物を前記検品設定とは異なる項目について検品して得た第2の検品結果とに基づいて品質レポートを生成する生成手段とを有することを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記品質要求データは、基準値に対する印刷物の画像の色値の色差の許容範囲を示す色品質要求を含むことを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記品質要求データは、基準位置に対する画像の位置ずれの許容範囲を示すレジ品質要求を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記品質要求データは、画像不良の許容範囲を示す画像不良の品質要求を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記品質要求データは、印刷物に印刷されるバーコードの品質の許容範囲を示すバーコード品質要求を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記品質要求データは、前記
印刷システムにキャリブレーションを実行
させる指示を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記受信手段は、PRXに適したデータフォーマットで前記品質要求データを受信することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記処理は画像処理であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記処理は前記印刷データの余白にカラーパッチを付加する処理であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項10】
印刷データと品質要求データを外部装置から、コンピュータが受信する受信工程と、
前記受信工程で受信した品質要求データを、コンピュータが解釈する解釈工程と、
前記印刷データに基づいて印刷される印刷物を検品するための検品設定を、前記解釈
工程における解釈結果に基づいて、コンピュータが行う設定工程と、
前記受信工程で受信した印刷データの処理を、前記解釈工程における解釈結果に基づいて、コンピュータが実行する処理工程と、
前記処理工程における前記処理が実行された前記印刷データに基づいて印刷された印刷物を前記検品設定によって検品して得た第1の検品結果と、前記印刷物を前記検品設定とは異なる項目について検品して得た第2の検品結果とに基づいて品質レポートを、コンピュータが生成する生成工程とを有することを特徴とする印刷システムの制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載された印刷システムの制御方法を、コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質要求データを受信する印刷システム、印刷システムの制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリントオンデマンド(POD)やプロダクションプリンティング、商業印刷と呼ばれる印刷サービス形態がある。このようなサービス形態では、印刷を注文・依頼する顧客(エンドユーザとも呼ぶ)と、印刷成果物を提供する印刷会社とが存在し、顧客は印刷会社に対して依頼する印刷成果物の仕様と、必要に応じて印刷に用いる画像データの提供を行い印刷物の注文を行う。印刷成果物の仕様とは、例えば使用する用紙種類、製本やステイプルといった仕上げ設定、印刷枚数や部数といった、印刷成果物の内容を決定する要素である。印刷会社は依頼された内容と画像データを用いて印刷成果物を作成して顧客に対して納品する。
【0003】
このような商業印刷サービスにおいて、印刷会社は印刷成果物の受注から納品までを行うために多様な機器やソフトウェアを用いる。商業印刷サービスを提供するための構成として、用紙への印刷を行うための印刷装置や製本・ステイプルを行うためのフィニッシャや、印刷物の検査・検品を行うための検品装置等がある。また商業印刷サービスにおいて、顧客から印刷成果物の受注を受け付けるためのWebサーバや、印刷成果物の生産を管理するための端末やソフトウェアも用いられる。また、これらの機器やソフトウェアの使用者も複数存在する。例えば、受注案件の管理や顧客との連絡を行う受注担当者、印刷成果物を完成させるまでの作業工程を設計する工程設計者、印刷装置や検品装置の操作を行うオペレータ、最終印刷成果物の品質確認を行う確認者である。複数の生産拠点を備える印刷会社も存在し、このような場合、印刷会社は受注内容をもとに、どの生産拠点で印刷成果物の生産を行うか決定する。
【0004】
商業印刷サービスにおいては、印刷会社は顧客から印刷成果物に対して品質条件を指定されることが多い。品質条件とは、印刷成果物の仕様とは異なり、用紙の表裏における画像の位置ずれ量や、複数部数あるいは複数ページ間での画像の色値の変動量といった、印刷成果物の品質に関する条件を指す。印刷成果物はチラシやパンフレットのような配布物、写真集や書籍、名刺、展示パネルなど多岐にわたり、それらの用途や価格も様々であるため、品質条件もまた、求められる条件や水準は多種多様である。後述するように品質条件に対して、印刷会社ではそれらを満たすための作業工程と、印刷成果物の品質確認工程が必要となるため、品質条件の水準が高いほど印刷成果物のコストも増加することが一般的である。印刷会社は、これらの品質条件を満たすような各種調整作業を行いながら、印刷成果物の作成を行う。例えば、顧客と合意を得たサンプル印刷の結果に基づいて、印刷装置の特定の用紙における特定の色に合わせるための各種調整や、印刷後の検品により品質条件を満たさない印刷成果物を不良品として除外することが行われる。印刷会社はこれらの作業により達成された印刷成果物の品質が顧客の求める品質条件に達しているかを確認し、必要に応じて顧客に対して品質レポートを提出する。
【0005】
特に、多くの顧客から様々な仕様・品質条件の印刷成果物を受注する場合、各印刷成果物に対して顧客の品質条件を満たすための作業もまた多種類となり、かかる時間も長時間となる。例えば、印刷成果物Aでは表裏の印刷ずれが、印刷成果物Bでは顧客から提示された色見本との整合性が、それぞれ品質条件として求められているとする。この場合、受注担当者は工程設計者にそれぞれの印刷成果物の品質条件を、印刷会社で用いるデータフォーマットを用いて伝送する必要がある。工程設計者は印刷会社で用いることができる印刷装置およびソフトウェアの種類、状態をもとに、それぞれの印刷成果物の生産において、品質条件を満足するための作業工程を決定する。例えば、印刷成果物Aでは後処理装置の機器調整、印刷成果物Bでは印刷装置の色較正、のように作業を決定し、さらに色較正後の測色作業など、各作業における結果確認作業を決定する。また、例えば表裏の印刷ずれの確認箇所と許容されるずれ量の最大値のように、生産された印刷成果物が品質条件を満足していることをどのように確認すればよいかを示す品質確認手段を決定する。印刷会社では複数の印刷装置が用いられていることが一般的であり、工程設計者は、それら複数の印刷装置から受注した印刷成果物の品質条件を満足するために最適な装置を選ぶ必要がある。このように、品質条件を満たす印刷成果物の生産と、生産された印刷成果物の品質確認をそれぞれ行うためのワークフローの定義が印刷会社においては必要である。オペレータはこのようにして決定された作業工程を受け取り、印刷装置およびソフトウェアの操作を行う。確認者は生産された印刷成果物と、品質確認手段とをもとに印刷成果物が品質条件を満足していることを確認する。このように、印刷会社は品質条件とそれを満足するための作業工程、また確認された印刷成果物の品質を示す品質レポートを伝送するために多くの作業工数を費やしている。
【0006】
従来、顧客と印刷会社とがこれらの品質条件、品質レポートの受け渡しを行う際に、統一された情報フォーマットは定義されておらず、用いられてこなかった。そのため、印刷会社は複数の顧客から異なる情報フォーマットで品質条件を受領することになり、品質条件から、それらを満たすための作業工程を設計する際に不便が生じていた。顧客側から見ても、複数の印刷会社に対して印刷成果物の発注を行う際に、品質条件と品質レポートの受け渡しを異なる情報フォーマットで行う煩雑さが存在していた。
【0007】
そこで、品質条件と品質レポートを伝送するための情報フォーマットの統一手段として、非特許文献1、2にそれぞれ記載のPRX,PQXが検討されている。PRXとは、Print Requirement eXchange formatの略であり、印刷に要求する品質条件の標準データフォーマットを指す。PRXを用いることで、異なる顧客あるいは異なる受注に対する品質条件を統一的な標準データフォーマットで記述できるようになる。PQXとは、Print Quality eXchange formatの略であり、印刷品質レポートの標準データフォーマットを指す。PQXは印刷成果物の品質データを標準データフォーマットで伝送することを可能にする。このようにPRX, PQXを用いて従来統一されていなかった品質条件と品質レポートとを統一された情報フォーマットで伝送できるようになる。
【0008】
また、印刷成果物の受注に関するワークフロー構築に関する技術として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1は、印刷成果物の仕様を満たすためのワークフローを構成する個々の工程の工程定義が登録されたデータベースから工程を検索して、それらを組み合わせることで、印刷成果物の受注条件を生産できるワークフローを構築する。このとき、特許文献1に記載の技術では、受注条件が異なるワークフローを必要コストとともに顧客に提示することで、顧客に対してディスカウント情報を提示することを可能にしている。これにより、顧客はコストが異なる複数のワークフローから、仕様とコストの比較を行ったうえで所望のワークフローを選択することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】ISO/AWI 20616-1,Graphic technology File format for quality control and metadata Part 1:Print requirements exchange(PRX) https://www.iso.org/standard/68565.html
【文献】ISO/CD 20616-2,Graphic technology File format for quality control and metadata Part 2:Print quality exchange(PQX), https://www.iso.org/standard/69572.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
品質条件や品質レポートを伝送するための情報フォーマットは提案されているものの、これらの情報フォーマットを、特許文献1に記載のような印刷システムにどのように適用すべきかについては、従来検討されていなかった。
【0012】
本発明は、外部装置から受信した品質要求データの解釈結果に基づいて行われた検品設定に基づいて印刷物を検品して得た第1の検品結果と、当該印刷物を当該検品設定とは異なる項目について検品して得た第2の検品結果とに基づいて品質レポートを生成する仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る情報処理装置は、印刷データと品質要求データを外部装置から受信する受信手段と、前記受信手段によって受信した品質要求データを解釈する解釈手段と、前記印刷データに基づいて印刷される印刷物を検品するための検品設定を、前記解釈手段による解釈結果に基づいて行う設定手段と、前記受信手段によって受信した印刷データの処理を、前記解釈手段による解釈結果に基づいて実行する処理手段と、前記処理手段による前記処理が実行された前記印刷データに基づいて印刷された印刷物を前記検品設定によって検品して得た第1の検品結果と、前記印刷物を前記検品設定とは異なる項目について検品して得た第2の検品結果とに基づいて品質レポートを生成する生成手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
外部装置から受信した品質要求データの解釈結果に基づいて行われた検品設定に基づいて印刷物を検品して得た第1の検品結果と、当該印刷物を当該検品設定とは異なる項目について検品して得た第2の検品結果とに基づいて品質レポートを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】実施形態1に係るシステムの全体構成を説明する概念図
【
図3】実施形態1に係るワークフロー管理システムのハードウェア構成を説明するブロック図
【
図4】実施形態1に係る生産システムのハードウェア構成を説明するブロック図
【
図5】実施形態1に係るソフトウェア構成を説明するブロック図
【
図6】実施形態1に係るソフトウェア処理を説明するシーケンス図
【
図9】実施形態2に係る生産システムのハードウェア構成を説明するブロック図
【
図10】実施形態2に係るソフトウェア処理を説明するシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0018】
(実施形態1)
印刷成果物の品質条件は顧客あるいは印刷成果物によって様々であり、それらを達成するための手段もまた多数ありうる。たとえば品質条件として、企業のロゴマークに用いるコーポレートカラーについて、顧客から色の再現性と安定性を高い水準で求められたとする。色の再現性とは、顧客が提供した印刷データにおいてRGBやCMYKといった定義で表現される色が、印刷成果物において同じ色で印刷されているかを示す尺度である。安定性とは、複数ページあるいは複数部の印刷において、同じ色の印刷データが印刷成果物においても変わらない色で印刷されているかを示す尺度である。コーポレートカラーは企業・団体を象徴する色であるから、顧客は高い色再現性と安定性、すなわち顧客が提供した印刷データと同じ色で印刷され、かつどのページでも結果が変わらないことを品質条件として求めることが多い。一方、品質条件を満たすための印刷装置の有無や作業工程は顧客から提供された印刷データと、印刷成果物の仕様とに依存する。コーポレートカラーの例では、顧客が指定した色値が使用する印刷装置やインクの選定に影響する。また、色の安定性についても仕様として指定された用紙や、使用する印刷装置やインクによって、作業工程として印刷装置の色較正やサンプル印刷の確認頻度が変わってくる。
【0019】
このように、顧客が求める品質条件を満足するための作業工程は印刷成果物の仕様と顧客が求める品質条件によって様々である。前述したPRXのフォーマットを用いて、顧客から受注した印刷成果物に対する品質要求データを、デジタルフォーマットで受注した印刷ジョブごとに入力することが可能となる。またPQXを用いて、品質レポートをデジタルフォーマットで印刷ジョブごとに記載できる。したがって、PRXを解釈して、品質要求を満たすために必要な印刷装置の調整や、品質要求を満たせているかを確認するために必要なサンプル印刷ジョブの生成を行うための品質管理を行うことがジョブごとに可能な印刷システムが必要となる。
【0020】
本実施形態では、顧客が要求する品質条件を満足する印刷成果物を作成し、また印刷成果物の品質レポートを作成するための印刷システムを提案する。本印刷システムは、顧客が求める品質条件を解析して印刷会社における印刷装置、ソフトウェアの作業工程を策定する。また、本印刷システムは、生産された印刷成果物の品質確認工程を策定する。そして、本印刷システムは、印刷装置とソフトウェアの事前設定を自動実行する。これにより、印刷会社において品質条件を満足するための作業工数を削減し、より簡便に作業工程の決定、伝送と実施を行える印刷システムを提供する。
【0021】
本実施形態では、品質条件と品質レポートのデータフォーマットとして前述したPRXとPQXを用いる。このような標準フォーマットを用いることで、複数の異なる顧客、あるいは印刷会社間において品質条件と品質レポートの伝送を容易に行える。また、異なる印刷成果物の品質条件や品質レポートの比較も可能となる。
【0022】
本実施形態では、PRXのフォーマットで記述された印刷品質要求を、ワークフロー管理サーバ100が解釈し、要求内容に応じて生産システム120に対する印刷品質設定を行う例について説明する。ワークフロー管理サーバ100は、受注システムサーバ110から受注データを取得し、取得した受注データを解釈して、解釈結果に基づいて生産システム120に印刷品質設定を行う情報処理装置である。
【0023】
図1は、本実施形態における印刷システムの全体像を示す全体概要図である。各装置の役割と印刷システムの動作詳細は
図2以降で詳述する。
図1において、菱形の項目はデータである。本実施形態では、ワークフロー管理サーバ100と、生産システム120がともにPRX解析部を備える。これにより、ワークフロー管理サーバ100だけでなく、生産システム120内の印刷制御部541、検品制御部543、後処理加工制御部542がそれぞれPRXを解析でき、生産システム120において適切な動作制御を行うことができる。
【0024】
図2は、本実施形態に係る商業印刷システムの構成を説明する図である。ワークフロー管理サーバ100は、商業印刷の商品に関して、ワークフロー全体を管理する装置である。
【0025】
ワークフロー管理サーバ100は、受注システムサーバ110から、印刷データや品質条件情報を含む受注データ(PRXデータ)を受信する。
【0026】
そして、ワークフロー管理サーバ100は、受注システムサーバ110から受信したPRXデータを解釈して、受注ジョブ毎に、生産システム120の決定や、印刷データのプリプレス処理などを実行する。
【0027】
また、生産システム120での処理対象となるデータ(
図1に記載の印刷データ、ジョブチケット、動作設定情報、制御指示)を生成し、生産システム120を構成する各デバイスに送信する。生産システム120を構成するデバイスについては、後述する。さらに、各デバイスから取得した情報(
図1に記載の制御結果)をもとに、PQXデータを生成し、受注システムサーバ110に送信する。
【0028】
また、ワークフロー管理サーバ100は、生産システム120の色管理を行う。例えば、既知の色調整や色品位確認などの機能などを実行する。ワークフロー管理サーバ100は、これら色管理制御に必要となる情報を生産システム120から取得する。
【0029】
なお、本実施形態は、ワークフロー管理サーバ100は、ワークフロー管理を行う拠点に設置されるオンプレミスサーバであるものとして説明するが、その限りではない。別の実施形態として、ワークフロー管理サーバ100をクラウドサーバとして構築し、後述のワークフロー管理端末101からは、インターネットを介して接続する構成としてもよい。後述の、受注システムサーバ110も同様である。
【0030】
ワークフロー管理端末101は、ワークフロー管理者が操作する端末であって、ワークフロー管理サーバ100にネットワークを介して接続し、各種機能を実行する。具体的には、ワークフロー管理機能の設定変更や、生産システム120のデバイスの状態確認などである。
【0031】
受注システムサーバ110は、商業印刷の商品に関して、エンドユーザから注文を受けるためのシステムを管理する装置である。受注した商品、また、エンドユーザからの注文内容に応じて、印刷用データ、及び、PRXデータを生成し、ワークフロー管理サーバ100へと送信する。
【0032】
受注システム管理端末111は、受注システム管理者が操作する端末であって、ネットワークを介して受注システムサーバ110に接続し、各種機能を実行する。具体的には、商品別の要求品質設定、受注ジョブごとのステータス確認、受注ジョブごとの成果物の品位情報の閲覧などの機能である。
【0033】
エンドユーザ端末112は、エンドユーザが操作する端末であって、ネットワークを介して受注システムサーバ110に接続する。そして、ウェブブラウザなどのUIから商品の選択、原稿データの送信、発注などの指示をエンドユーザから受け付け、受注システムサーバ110に送信する。
【0034】
生産システム120は、エンドユーザから受注した商業印刷における商品(成果物)を、生産するためのシステムである。詳細には、印刷装置121、印刷装置121を制御するプリントサーバ122、後処理加工装置123、検品装置124などの装置により構成される。
【0035】
印刷装置121とプリントサーバ122は、ネットワーク、または、専用のインターフェースにより接続される。
【0036】
本実施形態では、後処理加工装置123、検品装置124は、他のデバイスとネットワークで接続されるニアライン構成であるものとして説明する。ただし、その限りではなく、単独で稼働するオフライン構成でもよい。オフライン構成の場合は、ネットワークと接続可能な不図示の操作端末と接続し、操作端末を介してネットワークと接続する。いずれの場合も、ネットワーク経由で、ワークフロー管理サーバ100と接続し、各種情報の送受信を行う。
【0037】
なお、生産システム120は、プリントサーバ122、後処理加工装置123、検品装置124のいずれか、または全てを含まない構成の場合もある。
【0038】
印刷装置121は、ワークフロー管理サーバ100からのデータと指示に基づき、印刷処理を実行する装置である。印刷方式は特に限定されることはなく、電子写真方式、インクジェット方式、その他の方式のいずれでもよい。
【0039】
生産システム120の管理者、あるいは、オペレータは、印刷装置121のUIを介して、印刷に関する制御を指示することが可能である。
【0040】
また、印刷装置121は、ワークフロー管理サーバ100から受信したPRXを解釈し、各種制御へ反映する。さらに、印刷装置121は、各種制御実行された結果からPQXを生成しワークフロー管理サーバ100へ送信する。詳細は後述する。
【0041】
プリントサーバ122は、印刷装置121を制御するサーバである。一般的な印刷システムと同様に、生産システム120の管理者、あるいは、オペレータは、プリントサーバ122のUIを介して、印刷に関する制御を指示することが可能である。さらに、プリントサーバ122は、ワークフロー管理サーバ100から受信したPRXを解釈し、各種制御へ反映する。詳細は後述する。
【0042】
なお、本実施形態では、後述する色管理部545は、プリントサーバ122が有するものとして説明するが、その限りではない。例えば、プリントサーバ122、印刷装置121とネットワークを介して接続可能な、色管理サーバ(不図示)を別途設置し、色管理に関する処理を色管理サーバが実施する形態でもよい。
【0043】
後処理加工装置123は、印刷済みの用紙、用紙束に対して、後処理加工を施すための装置である。例えば、用紙への筋付け(クリース)や折り、あるいは、用紙束に対する断裁、製本処理などである。また、後処理加工装置123は、ワークフロー管理サーバ100から受信したPRXを解釈し、各種制御へ反映する。さらに、後処理加工装置123は、各種制御実行された結果からPQXを生成しワークフロー管理サーバ100へ送信する。詳細は後述する。
【0044】
検品装置124は、最終成果物、あるいは、中間成果物に対して、品質要求を満たしていない成果物を検知し、ユーザへの通知や、生産ラインからの除外などの処理を実行する装置である。また、検品装置124は、ワークフロー管理サーバ100から受信したPRXを解釈し、各種制御へ反映する。さらに、検品装置124は、各種制御実行された結果からPQXを生成しワークフロー管理サーバ100へ送信する。詳細は後述する。
【0045】
生産オペレータ端末125は、生産システム管理者が操作する端末であって、ネットワークを介して生産システム120に接続し、生産システムの状態監視や管理を行うことができる。
【0046】
次に、本実施形態に関わる各種装置のハードウェア構成を説明する。
図3は、本実施形態に係るワークフロー管理サーバ100とワークフロー管理端末101とを含む、ワークフロー管理システムのハードウェア構成を説明するブロック図である。
【0047】
まず、ワークフロー管理サーバ100のハードウェア構成を説明する。
【0048】
CPU201は、ROM202又はハードディスク(HDD)204に記憶された制御プログラムをRAM203に展開し、その展開したプログラムを実行してシステムバス206に接続される各種のデバイスとのアクセスを総括的に制御する。ROM202は、CPU201が実行可能な制御プログラム等を記憶している。RAM203は、主としてCPU201の主メモリ、ワークエリア等として機能し、不図示の増設ポートに接続されるオプションRAM203によりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。ハードディスク(HDD)204は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル等を記憶する。尚、本実施形態1ではHDD204を用いたが、HDDの他にSDカードや、フラッシュメモリなどを外部記憶装置として利用してもよい。これは、以降に説明するHDDを有する装置も同様である。ネットワークI/F205は、ネットワークを経由して、各種装置とデータ通信を行う。
【0049】
なお、受注システムサーバ110の場合も、そのハードウェア構成はワークフロー管理サーバ100と同様であるため、その説明は省略する。
【0050】
まず、ワークフロー管理サーバ100のハードウェア構成を説明する。CPU201は、ROM202又はハードディスク(HDD)204に記憶された制御プログラムをRAM203に展開し、その展開したプログラムを実行してシステムバス206に接続される各種のデバイスとのアクセスを総括的に制御する。ROM202は、CPU201が実行可能な制御プログラム等を記憶している。RAM203は、主としてCPU201の主メモリ、ワークエリア等として機能し、不図示の増設ポートに接続されるオプションRAM203によりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。ハードディスク(HDD)204は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル等を記憶する。尚、本実施形態1ではHDD204を用いたが、HDDの他にSDカードや、フラッシュメモリなどを外部記憶装置として利用してもよい。これは、以降に説明するHDDを有する装置も同様である。ネットワークI/F205は、ネットワークを経由して、各種装置とデータ通信を行う。
【0051】
なお、受注システムサーバ110の場合も、そのハードウェア構成はワークフロー管理サーバ100と同様であるため、その説明は省略する。
【0052】
次に、ワークフロー管理端末101のハードウェア構成を説明する。CPU221は、ROM222又はハードディスク(HDD)224に記憶された制御プログラムをRAM223に展開し、その展開したプログラムを実行してシステムバス226に接続される各種のデバイスとのアクセスを総括的に制御する。ROM222は、CPU221が実行可能な制御プログラム等を記憶している。RAM223は、主としてCPU221の主メモリ、ワークエリア等として機能し、不図示の増設ポートに接続されるオプションRAM223によりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。ハードディスク(HDD)224は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル等を記憶する。ネットワークI/F225は、ネットワークを経由して、その他の装置とデータ通信を行う。
【0053】
なお、受注システム管理端末111、エンドユーザ端末112、そして、生産オペレータ端末などの、その他の端末装置も、そのハードウェア構成はワークフロー管理端末101と同様であるため、説明は省略する。
【0054】
図4は、本実施形態に係る生産システム120のハードウェア構成を説明するブロック図である。
【0055】
CPU301は、ROM302又はハードディスク(HDD)304に記憶された制御プログラムをRAM303に展開し、その展開したプログラムを実行してシステムバス306に接続される各種のデバイスとのアクセスを総括的に制御する。ROM302は、CPU301が実行可能な制御プログラム等を記憶している。RAM303は、主としてCPU301の主メモリ、ワークエリア等として機能し、不図示の増設ポートに接続されるオプションRAMによりメモリ容量を拡張することができるように構成されている。ハードディスク(HDD)304は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザファイル、編集ファイル等を記憶する。ネットワークI/F305は、ネットワークを経由して、その他の装置とデータ通信を行う。
【0056】
プリンタI/F307は、印刷装置121の画像形成部321への画像出力を制御する。またプリンタI/F307は、印刷装置121内部に備わる測定部322を制御し、測定結果を受信する。
【0057】
印刷装置121は、少なくとも印刷動作を担う画像形成部321と、後述する測定部322を有している。他にも、不図示の給紙装置や、インラインの後処理装置が接続された構成でも構わない。
【0058】
画像形成部321は、印刷用データを用紙に出力する。そのハードウェア構成は、一般的な印刷装置121と同じである。
【0059】
測定部322は、プリントサーバ122、あるいは、印刷装置121自体の指示に従い、画像形成部321が生成する印刷物を測定する。測定形式は、分光測色、濃度測定、CCSスキャン、CISスキャンなどの既知の測定形式である。
【0060】
なお、本実施形態では、測定部322は、印刷装置121内に設けられるものとして説明するが、その限りではない。
【0061】
印刷装置121とは独立して、測定部322単体でネットワークに接続する構成でもよい。あるいは、ネットワークに接続可能な不図示の操作端末と接続し、操作端末を介してネットワークに接続する。いずれの場合も、ネットワーク経由で、ワークフロー管理サーバ100と接続し、各種情報の送受信を行う。
【0062】
次に、本実施形態に係る各種装置のソフトウェア構成を説明する。
【0063】
図5(a)は、本実施形態に係る受注システムサーバ110のソフトウェア構成を説明するブロック図である。これらのソフトウェアモジュールは、HDD(不図示)にプログラムとして格納され、CPU(不図示)が、そのプログラムをRAM(不図示)に展開して実行することにより実現される。
【0064】
受注部501は、ネットワークを介して、エンドユーザ端末112から商品の注文情報を受信する。注文情報とは、商品種別の情報、入稿された画像データ、品質に係る要求情報などが含まれる。なお、本実施形態では、入稿データとして、PDF形式データを例に説明するがその限りではない。生産システム120が解釈可能な、その他の一般的な形式の画像データを扱う形態でもよい。
【0065】
PQX制御部502は、ワークフロー管理サーバ100からPQXデータを受け取り、所定の制御を行う。例えば、データベースへの記録、エンドユーザへ提示する情報への変換処理、などである。
【0066】
PRX生成部503は、受注部501から受信した注文情報を解析し、PRXデータを生成する。また、生成したPRXデータを、ワークフロー管理サーバ100へと送信する。
【0067】
データ管理部504は、注文情報、PRXデータ、PQXデータなどの情報を記録する。また、データ管理部504は、入稿された画像データ、商品種別情報、及び、PRXデータをワークフロー管理サーバ100へと送信する。さらにデータ管理部504は、各種装置との間の、その他のデータ送受信を実行する。
【0068】
図5(b)は、本実施形態に係るワークフロー管理サーバ100のソフトウェア構成を説明するブロック図である。これらのソフトウェアモジュールは、HDD204にプログラムとして格納され、CPU201が、そのプログラムをRAM203に展開して実行することにより実現される。
【0069】
PRX解析部521は、受注システムサーバ110から受信したPRXデータを解析し、印刷品質要件や必要とされるプリプレス処理の一部を特定する。例えば、印刷品質要件とは、所定の色パッチの測定結果から得られる平均色差が、特定の基準内に収まっていることである。また、プリプレス処理とは、例えば、画像データの余白部に、色品位確認処理で測色対象となる、前記色パッチ画像を追加する、などの処理である。
【0070】
工程管理部522は、受注システムサーバ110から受信した商品種別情報、及び、PRX解析部521の解析結果情報を用いて、生産システム120の決定や、プリプレス制御部524への命令を実行する。商品種別によっては、商品が複数種のパーツから構成される場合がある。この場合、工程管理部522は、1つの注文から、パーツ単位でジョブを生成する必要がある。
【0071】
また、工程管理部522は、生産システム120での各デバイスが参照するジョブチケットデータを生成する。本実施形態では、ジョブチケットデータとして、既知のJDFデータを用いて説明するが、その限りではない。生産システム120が解釈可能な、その他の既知のジョブチケットデータ形式を用いる構成でもよい。また、工程管理部522は、印刷品質要件から色管理部526で必要な処理を特定し、色管理部526へ制御指示を送信する。
【0072】
さらに、工程管理部522は、後述のプリプレス処理後のPDFデータ、JDFデータ、および、各デバイスの動作設定情報を、生産システム120へ送信する。
【0073】
PQX生成部523は、生産システム120から受信した各種情報を参照し、PQXデータを生成し、これを、受注システムサーバ110へと送信する。詳細は後述する。
【0074】
プリプレス制御部524は、工程管理部522からの指示に基づき、入稿画像データに対してプリプレス処理を実行し、処理後のPDFデータを工程管理部522へと送信する。
【0075】
データ管理部525は、受注システムサーバ110へPQXデータを送信する。また、データ管理部525は生産システム120へPDFデータ、JDFデータ、そして、生産システム120を構成する各種装置に対する指示情報を送信する。さらに、データ管理部525は各種装置との間のその他のデータ送受信を実行する。
【0076】
色管理部526は、印刷装置121とプリントサーバ122による出力物の色品質を管理する。具体的には、既知の色調整処理や色品位確認処理の制御を行う。色調整処理や色品位確認処理の実行のためには、専用のパッチ画像データの印字と測定処理が必要となる。そのため、色管理部526は、印刷装置121の測定部322の能力情報を取得する。性能情報とは、例えば、測定可能なデータ形式や、単位出力あたりの測定可能サンプル数などである。
【0077】
これらのデータを用いて、色管理部526は、パッチ画像データの生成を行う。例えば、プリプレス制御部524に対して、受注したPDFデータの余白部に測定パッチ画像データを追加するように指示する。あるいは、プリントサーバ122、または、印刷装置121に対し、測定パッチの信号値情報を送信し、生産システム120側でパッチ画像データを生成するように指示を送信する。さらに、パッチ画像データの印字、測定を生産システム120に対し指示をした後に、必要に応じて、測定結果を受信し、例えば、色品位確認処理に用いる。
【0078】
図5(c)は、本実施形態に係る生産システム120のソフトウェア構成を説明するブロック図である。これらのソフトウェアモジュールは、生産システム120を構成する各種デバイスにおいて、HDD304にプログラムとして格納され、CPU301が、そのプログラムをRAM303に展開して実行することにより実現される。なお、生産システム120は印刷装置121、プリントサーバ122、後処理加工装置123、検品装置124を含むが、本実施例では前記4つのハードウェアを、生産システム120とみなして説明する。
【0079】
印刷制御部541は、ワークフロー管理サーバ100から受信した情報(PDF,JDF)を用いて、印刷制御を実行する。また、印刷制御部541は、印刷品位を調整する調整機能も有しており、ワークフロー管理サーバ100、プリントサーバ122、あるいは、オペレータ端末のいずれかから受信した制御指示に応じて、調整機能を実行する。
【0080】
また、印刷制御部541は、測定制御部5411を有する。測定制御部5411は、ワークフロー管理サーバ100、プリントサーバ122、あるいは、オペレータ端末のいずれかから受信した制御指示に応じて、測定部322による測定制御を実行する。
【0081】
さらに、印刷制御部541は、PRX解析部(印刷)5412を有する。PRX解析部(印刷)5412は、ワークフロー管理サーバ100から受信したPQXデータを解析し、品質条件を満たすために必要な印刷制御、測定制御、または、印刷装置121、測定部322の機器設定を指示する。
【0082】
後処理加工制御部542は、ワークフロー管理サーバ100から受信した制御指示に応じて、後処理加工制御を実行する。さらに、後処理加工制御部542は、PRX解析部(後処理)5421を有する。PRX解析部(後処理)5421は、ワークフロー管理サーバ100から受信したPQXデータを解析し、品質条件を満たすために必要な後処理加工制御や後処理加工装置123の機器設定を指示する。
【0083】
検品制御部543は、ワークフロー管理サーバ100から受信した制御指示に応じて、検品装置124による検品制御を実行する。
【0084】
検品制御部543は、検品装置124内のセンサで読み取った画像データと、基準となる画像データとを比較する。比較の結果、所定の許容範囲を超える差分が検知された場合は、品質要求を満たさない検品対象物として特定し、例えば、ユーザへの通知などの、所定の制御を行う。
【0085】
さらに、検品制御部543は、PRX解析部(検品)5431を有する。PRX解析部(検品)5431は、ワークフロー管理サーバ100から受信したPQXデータを解析し、品質条件を満たすために必要な検品制御や検品装置124の機器設定を指示する。
【0086】
データ管理部544は、ワークフロー管理サーバ100へ、生産システム120の各種デバイスの制御結果などの情報を送信する。さらにデータ管理部544は、各種装置との間の、その他のデータ送受信を実行する。なお、データ管理部544は、各デバイスに個別に備わる形態でもよい。
【0087】
図6は、実施形態に係るソフトウェア処理を説明するシーケンス図である。
【0088】
601にて、受注部501は、エンドユーザからの注文を受注する。注文の内容としては、印刷データとしてのPDFと、成果物に関する商品種別が含まれる。商品種別とは、受注システムサーバ110があらかじめ定義している成果物の種類を表す情報である。例えば、「フォトブック」と「名刺」という2つの商品種別を受注システムサーバ110が定義しているとする。「フォトブック」という商品種別は、仕上がりサイズ「A5」、製本種類「無線綴じ」、本文の用紙種類「光沢紙」、本文仕上げ「ラミネート加工」という成果物の種類を表す。「名刺」という商品種別は、仕上がりサイズ「名刺」、製本種類「なし」、用紙種類「上質紙」という成果物の種類を表す。このような商品種別を設けることで、受注システム、ワークフロー管理サーバ100、生産システム120にて生産する商品の種類を定義する。なお、本実施例では、エンドユーザが「フォトブック」を選択したとして説明する。また、本実施例では受注システムサーバ110が商品種別を定義している構成として説明するが、その限りではなく、エンドユーザからの注文を営業が手動で入力するような構成にしてもよい。
【0089】
602にて、受注部501は、601でエンドユーザから受注した商品種別をPRX生成部503へ送信する。エンドユーザが商品種別から「フォトブック」を選択した場合は、エンドユーザの選択が「フォトブック」であることをPRX生成部503へ送信する。
【0090】
603にて、PRX生成部503は、602にて受注部501から受信した商品種別からPRXを生成する。まず、本処理で生成するPRXについて概要を説明する。
【0091】
図7に例示されるように、PRXはMessageInfo、BusinessInfo、QualitySpecなどの品質に対する要求から構成されている。QualitySpecは品質仕様および評価基準を含むフィールドから構成されている。BasisOfCalculationは印刷品質のスコアやグレードを特定するためのバイヤーが指定した計算式の情報を表す。ここでバイヤーとは、エンドユーザあるいはエンドユーザの要望を確認してシステムへの情報の入力を行う仲介者などである。BasisOfCalculationは、バイヤーが入力した情報に基づいて、受注システムサーバ110が自動的に設定することとしてもよい。OverallGradingScaleは全体的なスコアやグレードの意味や範囲を表す。MinimumAcceptableRankは許容可能な最低品質レベルを表す。QualityParameterSetは色・レジ・画像不良・バーコードごとのスコア基準等を表す。QualityParameterSetTypeは色・レジ・画像不良・バーコードなどの品質仕様の種類を表す。ParameterSetNameは品質仕様の名称を表す。ParameterSetScoringScaleはバイヤーのスコア基準定義を表す。
【0092】
色品質要求とは、例えば、基準となる色値と実際の印刷結果の色値の差である色差の許容範囲を指定する要求である。色差は、例えば、JapanColor等の基準値に対応する所定のパッチを印刷した結果を測定し、基準値と測定結果を比較することにより特定することができる。上述の通り、PRXでは、色品質要求を指定する場合、QualityParameterSetTypeに「Color」が記載される。さらに、ParameterSetScoringScaleに、品質ランクや品質ランクに応じた色差の程度が記載される。
【0093】
レジ品質要求とは、用紙に対して画像を描画する位置のずれの許容範囲を指定する要求である。例えば、描画する位置のずれとは、用紙の表面に描画される画像と裏面に描画される画像のずれなどがある。あるいは、位置のずれとして、片面に描画される画像でも、描画内容と用紙上の基準位置との相対関係についての基準とのずれや、色版ごとの描画位置のずれなどがある。PRXでは、レジ品質要求を指定する場合、QualityParameterSetTypeに「Registration」が記載される。さらに、ParameterSetScoringScaleに、品質ランクや品質ランクに応じたずれの程度が記載される。
【0094】
画像不良の品質要求とは、例えば、濃度ムラの発生やトナーの飛び散り等の画像不良の許容範囲を指定する要求である。ParameterSetScoringScaleに以下を記載する。PRXでは、画像不良の品質要求を指定する場合、QualityParameterSetTypeに「Defects」が記載される。さらに、ParameterSetScoringScaleに、品質ランクや品質ランクに応じた画像不良の程度(トナー飛び散り範囲等)が記載される。
【0095】
バーコード品質要求とは、例えば、成果物に印刷されるバーコードの印刷品質あるいは印刷種別を示す。バーコードの印刷品質とは、例えば、バーコードの読み取りやすさの程度を表す。例えば、階調補正において生じる階調段差の変化がバーコードの読み取り品質に影響を与えてバーコード読み取りエラーが発生することが想定される。そこで、バーコードの品質を定義することで、階調補正の内容を制御することができる。
【0096】
本実施例ではQualitySpecの一部分を使用する構成として説明するが、その限りでなく、PRXの他のフィールドを使用するような構成にしてもよい。第一のQualityParameterSetの例として、印刷制御部541による色変動検査がある。
【0097】
印刷制御部541は測定制御部5411を有しており、生産しながら生産システム120の色変動を監視することができる。印刷色基準の一例としてJapanColorがある。この基準を満たしている生産システム120は、印刷物の品質が一定以上であることが証明できる。本実施例では、ジョブ毎にJapanColorの基準を満たしていることを確認することで、色変動検査を行う。
【0098】
生産システム120が生産した印刷物の測色値と、JapanColor規定値との色差ΔE00(CIE DE2000)の平均値によって、色変動を検査する。この場合、ParameterSetNameに「色変動検査」を記載する。QualityParameterSetTypeに「Color」を記載する。ParameterSetScoringScaleに以下を記載する。「DisplayLabe:RankColor1、Rank:1、ValueRange:ΔE00平均値が4以上」。「DisplayLabe:RankColor2、Rank:2、ValueRange:ΔE00平均値が4未満かつ3以上」。「DisplayLabe:RankColor3、Rank:3、ValueRange:ΔE00平均値が3未満」。本実施形態では、Rankの数値が高いほど、品質が高いことを表す。また、本QualityParameterSet内のMinimumAcceptableRankに「Rank:2」とすることで、最低品質レベルを記載することができる。
【0099】
第二のQualityParameterSetの例として、検品装置によるトナー飛び散りの外観検査がある。生産システム120による生産が始まる前に、検品装置に付随しているカメラによって正解画像を取得し、検品装置に登録する。生産中は、検品装置がカメラによって印刷結果画像を取得し、正解画像と比較することで、トナーの飛び散りを検査する。この場合、ParameterSetNameに「飛び散り検査」を記載する。QualityParameterSetTypeに「Defects」を記載する。ParameterSetScoringScaleに以下を記載する。「DisplayLabe:RankDefects1、Rank:1、ValueRange:飛び散り直径3mm以上」。「DisplayLabe:RankDefects2、Rank:2、ValueRange:飛び散り直径3mm未満かつ2mm以上」。「DisplayLabe:RankDefects3、Rank:3、ValueRange:飛び散り直径2mm未満」。Rankの数値が高いほど、品質が高いことを表す。また、本QualityParameterSet内のMinimumAcceptableRankに「Rank:2」とすることで、最低品質レベルを記載することができる。
【0100】
上記のようなQualityParameterSetを利用して、BasisOfCalculationによって品質のランクを計算する。例えば、BasisOfCalculationに色変動検査及び飛び散り検査のRankによる全体品質の計算式を記載する。例えば、「TotalRank=Rank(色変動検査)*0.6+Rank(飛び散り検査)*0.3」のような計算式を記載する。
【0101】
TotalRankは全体品質を表し、Rank(ParameterSetName)はParameterSetNameに対応するRankを表すこととする。上記のBasisOfCalculationを使用して計算された品質のランクの意味を、OverallGradingScaleによって表す。「DisplayLabe:Poor、Rank:1」「DisplayLabe:Good、Rank:2」「DisplayLabe:Excellent、Rank:3」のように記載する。ここまでで説明した品質基準を表すようなPRXは、PRX生成部503が固定的な基準値として保持していることとして説明する。
【0102】
PRX生成部503は、602にて受信した商品種別から、MessageInfo、BusinessInfo、QualitySpecなどを決定して、PRXを生成する。本実施例では、PRX生成部503は、商品種別によってMinimumAcceptableRankを決定する。QualitySpec内のMinimumAcceptableRankは、OverallGradingScaleによって定義された品質のランクで表すこととする。例えば、「フォトブック」という商品種別の場合は、MinimumAcceptableRankを「Good」に決定する。また、QualityParameterSet内に存在するMinimumAcceptableRankも商品種別によって決定する。ParameterSetNameが「色変動検査」のMinimumAcceptableRankは「RankColor3」のように記載する。ParameterSetNameが「飛び散り検査」のMinimumAcceptableRankは「RankDefects2」のように記載する。そうすることで、PRXを受けた各モジュールは、印刷の品質要求を解釈できるようになり、品質要求に応じた処理が可能となる。
【0103】
604にて、PRX生成部503は、603で生成したPRXをデータ管理部504へ送信する。
【0104】
605にて、受注部501は、601でエンドユーザから受注したPDFと商品種別をデータ管理部504へ送信する。
【0105】
606にて、受注システムサーバ110のデータ管理部504は、エンドユーザから受注したPDF及び商品種別と、PRX生成部503が生成したPRXを、ワークフロー管理サーバ100のデータ管理部525へ送信する。
【0106】
607にて、ワークフロー管理サーバ100のデータ管理部525は、受注システムサーバ110のデータ管理部504から受信したPDFと商品種別とPRXを工程管理部522へ送信する。
【0107】
608にて、工程管理部522は、PRX解析部521に対してPRX解析を指示する。その際に607にて受信したPRXをPRX解析部521に送信する。
【0108】
6082にて、工程管理部522は、色管理部526に対してPRX解析を指示する。その際に607にて受信したPRXを色管理部526に送信する。
【0109】
609にて、PRX解析部521は、工程管理部522から受信したPRXをもとに、プリプレス処理と印刷品質要件の内容を決定する。
【0110】
6092にて、色管理部526は、工程管理部522から受信したPRXをもとに、印刷品質要件の内容を決定する。
【0111】
6102にて、色管理部526は、6092にてPRXから解析した結果である印刷品質要件を工程管理部522へ送信する。
【0112】
6086にて、工程管理部522は、後処理加工制御部542に対してPRX解析を指示する。その際に607にて受信したPRXを後処理加工制御部542に送信する。
【0113】
6096にて、後処理加工制御部542は、工程管理部522から受信したPRXをもとに、印刷品質要件の内容を決定する。
【0114】
6174にて、後処理加工制御部542は、6096にて決定した印刷品質要件をもとに後処理加工を作成する。例えばフォトブックの場合、製本方法として無線綴じ、本文仕上げとしてラミネート加工が指示される。
【0115】
これらの後処理加工設定は、生産システム120の後処理制御部にて実行される後処理の種類を表す。例えばフォトブックの場合、製本方法として無線綴じ、本文仕上げとしてラミネート加工の指示が作成される。
【0116】
6088にて、工程管理部522は、検品制御部543に対してPRX解析を指示する。その際に607にて受信したPRXを検品制御部543に送信する。
【0117】
6098にて、検品制御部543は、工程管理部522から受信したPRXをもとに、印刷品質要件の内容を決定する。
【0118】
6184にて、検品制御部543は、6098にて決定した印刷品質要件をもとに、検品設定を作成する。
【0119】
これらの検品設定は、生産システム120の検品制御部543にて実行される検品の種類や基準を表す。本実施例の場合、609にてPRX解析部521によって解析された「検品装置にて、飛び散り幅の検査が必要。最低品質基準は飛び散り直径3mm未満かつ2mm以上。」という印刷品質要件を、検品設定として作成する。ただし、検品の品質基準は飛び散りに限らず、最大濃度や印字位置ずれ、フィニッシング処理の精度など、他の品質基準を含めても良い。
【0120】
ワークフロー管理サーバにおけるPRX解析部521と色管理部526、及び生産システムにおける後処理加工制御部542、検品制御部543のそれぞれにおいてPRXの解析を行う。これらは自らの機能部での処理可能な部分のみを解析し、他の機能部での処理は他の機能部に任せる。それにより、各機能部がそれぞれの機能部での処理を自ら決定し、分散協調型のシステムを構成することができる。
【0121】
本実施例の場合、QualityParameterSetTypeによって、QualitySpecがどのモジュールで実行されるかを判断する。QualityParameterSetTypeが「Color」の場合は測定制御部5411によって実行される。「Defects」の場合は検品制御部543によって実行されるとする。603にていかが解析される。PRXに記載されたParameterSetNameの「色変動検査」。QualityParameterSetTypeの「Color」。MinimumAcceptableRankの「RankColor3」。そして、印刷制御部541にて、ΔE00の検査を行う。最低品質基準はΔE00平均値が3未満、という印刷品質要件が解析される。また、603にて以下が解析される。すなわち、別途PRXに記載されたQualitySpecNameの「飛び散り検査」。QualityParameterSetTypeの「Defects」。MinimumAcceptableRankの「RankDefects2」。そして、「検品装置にて、飛び散り幅の検査が必要。最低品質基準は飛び散り直径3mm未満かつ2mm以上。」という印刷品質要件が解析される。さらに、PRX解析部521は、印刷品質要件に応じて、プリプレス処理の有無を判断する。
【0122】
前述の「印刷制御部541にて、ΔE00の検査を行う。最低品質基準はΔE00平均値が3未満。」という印刷品質要件を実施するためには、生産システム120による指定チャートの印刷と、チャートの測色が必要となる。本実施例では、用紙の端にパッチを差し込み、生産システム120に内蔵されている測定制御部5411によってパッチを測色することで色変動検査を行う。具体的には、PDFに対してJapanColor認証用のチャート(例えば54個のパッチ)を埋め込む処理が必要となる。そのため、PRX解析部521は、このパッチ埋め込み処理を、プリプレス処理実行時に必要な追加処理として、処理の内容を保持する。
【0123】
本実施形態では、パッチを差し込む処理が必要な場合を例に説明したが、その限りでなく、パッチのみを配置したパッチチャートを生成して測色するような形態であっても良い。この場合、プリプレス処理実行時に追加で実行させるよう構成する必要はなく、生産システムが備える色管理部においてパッチチャートを生成してパッチ読み取りを実行する形態であっても良い。この時、PRX解析部521は、工程管理部522に対し、生産システム側でパッチチャートを生成して読み取りを行わせるような指示が出せるよう、工程管理部522に対する指示の内容を保存する。
【0124】
610にて、PRX解析部521は、609にてPRXから解析した印刷品質要件とプリプレス処理の情報を、工程管理部522へ送信する。
【0125】
611にて、工程管理部522は、607にて受信した商品種別と、609にて決定した印刷品質要件をもとに、ワークフロー管理サーバ100に接続されている複数の生産システム120の中から、実際に生産を行う生産システム120を決定する。例えば、フォトブックの場合、生産システム120による印刷、製本後に綴じ辺以外の断裁が行われる。また、無線綴じが行われるフォトブックの場合、表紙の用紙の大きさは、本文の用紙の2倍の大きさが必要となる。したがって、仕上がりサイズにA5、本文の用紙種類に光沢紙が指定されているようなフォトブックの場合、印刷後の断裁と、表紙用のA4サイズ用紙への印刷を考慮する必要がある。このときは、A4サイズ以上の光沢紙への印刷に対応できる生産システム120が工程管理部522によって選択される。また、フォトブックの表紙としてハードカバーが設定されており、前述で選択された生産システム120で印刷できない場合がある。その場合は、PDFを表紙と本文に分割し、表紙用のジョブと本文用のジョブを複数の生産システム120で印刷するようにしてもよい。なお、ワークフロー管理サーバ100の管理下にある生産システム120の印刷能力は、データ管理部525が保持しており、工程管理部522は必要に応じてデータ管理部525から印刷能力を取得できるものとする。
【0126】
また、本実施形態では、使用可能な用紙と品質要求を満たすことが可能かどうか、という観点で生産システムを決定しているがこの限りではない。例えば、印刷ジョブの出力枚数(部数)と、生産システムの生産性から決定するよう構成してもよい。
【0127】
612にて、工程管理部522は、606にて受信したPDFと商品種別、及び、611にて決定した生産システム120をプリプレス制御部524へ送信し、プリプレス処理を指示する。プリプレス処理の指示には、609にてPRX解析部521がPRXから決定したプリプレス処理の内容も含まれる。
【0128】
613にて、プリプレス制御部524は、612にて受信したプリプレス指示から、プリプレス処理を行う。プリプレス処理の内容には大きく二種類ある。第一の処理は、商品種別、生産システム120、PDFから決まるプリプレス処理である。具体的には、面付処理などがあげられる。例えば、仕上がりサイズA5の商品種別を含むフォトブックの場合、表紙はA4、本文はA5の用紙に対して印刷位置を指定する。表紙に関しては、PDFの中で表紙に指定されているページをA4用紙の両面に面付を行う。本文に関しては、PDFの中で本文に指定されているページをA5用紙に指定されたページ順となるように両面に面付する。
【0129】
他の例として、中綴じ製本が指定された場合には、指定されたページ順となるように、面付が行われる。第二の処理は、609にてPRXから決定したプリプレス処理である。第二のプリプレス処理の具体的内容については、609にて説明済なのでここでの説明は省略する。
【0130】
614にて、プリプレス処理部は、613にて生成したプリプレス処理後のPDFを工程管理部522へ送信する。
【0131】
615にて、工程管理部522は、JDFを作成する。例えばフォトブックの場合は、仕上がりサイズ「A5」、製本種類「無線綴じ」、本文の用紙種類「光沢紙」、本文仕上げ「ラミネート加工」を意味するジョブ情報を、JDFに対して設定する。また、609にてPRX解析部521が解析し、610にて受け取った印刷品質要件の中に、印刷制御部541による測定検査がある場合は、その測定指示をJDFに対して設定する。本実施例では印刷品質要件として「印刷制御部541にて、ΔE00の検査を行う。最低品質基準はΔE00平均値が3未満。」があるため、JDFにてジョブ中に測定制御部5411で測定を行うように指示する。
【0132】
616にて、色管理部526は、6092にて決定した印刷品質要件をもとに、事前調整指示を作成する。調整指示には、生産システム120が生産を始める前に行う必要がある事前調整が記載されている。事前調整の例として、生産システム120における表裏レジの調整や、キャリブレーションの実行指示などがある。レジの調整の品質要件とは、画像の位置ずれの許容範囲を示す品質要求である。本実施例では、フォトブックの印刷品質要件として「印刷制御部541にて、ΔE00の検査を行う。最低品質基準はΔE00平均値が3未満。」というものが設定されている。そのため、例えば、この品質要求を満たせるような事前調整として、そのジョブが使う用紙(光沢紙)でのキャリブレーション指示を、ジョブ開始前の調整指示として作成する。なお、調整指示は、調整指示書として作成することで生産システム120を管理しているオペレータに実行させてもよいし、ジョブの中に調整指示の内容を表す情報を埋め込むことで生産システム120に実行させてもよい。
【0133】
また、本実施形態では、品質要求を満たすための調整処理として、表裏レジ調整やキャリブレーションを例に説明しているがこの限りでなく、階調補正や濃度補正、用紙ごとに保持している印刷装置特有の調整(光沢度補正や転写電圧の調整など)であっても良い。
【0134】
617にて、工程管理部522は、609にて決定した印刷品質要件をもとに、後処理加工設定を作成する。この後処理加工設定は、生産システム120の後処理制御部にて実行される後処理の種類を表す。例えばフォトブックの場合、製本方法として無線綴じ、本文仕上げとしてラミネート加工の指示が作成される。
【0135】
618にて、工程管理部522は、609にて決定した印刷品質要件をもとに、検品設定を作成する。この検品設定は、生産システム120の検品制御部543にて実行される検品の種類や基準を表す。本実施例の場合、609にてPRX解析部521によって解析された「検品装置にて、飛び散り幅の検査が必要。最低品質基準は飛び散り直径3mm未満かつ2mm以上。」という印刷品質要件を、検品設定として作成する。ただし、検品の品質基準は飛び散りに限らず、最大濃度や印字位置ずれ、フィニッシング処理の精度など、他の品質基準を含めても良い。
【0136】
619にて、工程管理部522は、PDF、JDF,調整指示、後処理加工設定、検品設定を生産システム120へ送信するために、データ管理部525へ送信する。
【0137】
620にて、データ管理部525は、613にて作成したプリプレス処理後のPDF、615にて作成したJDF、616にて作成した調整指示を、印刷制御部541へ送信する。
【0138】
6202にて、色管理部526は、616にて作成した事前調整指示を、印刷制御部541へ送信する。
【0139】
621にて、印刷制御部541は、620にて受信したPDF、JDFを、616にて作成した事前調整指示を実行する。前述の通り、事前調整指示は、事前調整指示書として作成することで生産システム120を管理しているオペレータに実行させてもよいし、ジョブの中に事前調整指示の内容を表す情報を含めることで生産システム120に実行させてもよい。
【0140】
622にて、印刷制御部541は、620にて受信したJDFから、測定設定とジョブ設定を解析する。測定設定とジョブ設定は、615にて工程管理部522によって生成されたものが呼び出される。
【0141】
623にて、印刷制御部541は、620にて受信したPDFとJDFから印刷処理を実行する。このとき、622にて解析した測定設定に基づき、測定制御部5411によって測定が行われる。
【0142】
6244にて、印刷制御部541は、623にて測定した測定結果をワークフロー管理サーバ100の色管理部526へ送信する。
【0143】
6324にて、色管理部526は、6244にて受信した測定結果からPQXを作成する。ここで作成されるPQXは、ワークフローサーバの色管理部526が作成した事前調整指示に基づき生産システムの印刷制御部541が測定した結果を用いて作成される。従って、PQXの全項目が作成されるのではなく、色に関する事前調整の機能に関する項目のみが作成される。なお、PQXの作成の詳細は、632にて説明する。
【0144】
6242にて、色管理部526は、6244にて受信した測定結果と6324にて作成されたPQXをワークフロー管理サーバ100のデータ管理部525へ送信する。この測定結果は後述するPQX生成部523において、PQXを生成するために使用される。このとき、測色が行われた箇所も送信する。
【0145】
626にて、後処理加工制御部542は、印刷が終了し印刷物が後処理加工装置123にセットされたことを検知すると、6174にて作成した後処理加工設定に基づいて後処理加工を実行する。例えばフォトブックの場合、623にて印刷された印刷物に対して、無線綴じ、ラミネート加工の後処理を実行する。
【0146】
6326にて、後処理加工制御部542は、626にて実行した後処理加工の結果からPQXを作成する。ここで作成されるPQXは、生産システムの後処理加工制御部542が実行した結果を用いて作成するので、PQXの全項目が作成されるのではなく、後処理加工の機能に関する項目のみが作成される。なお、PQXの作成の詳細は、632にて説明する。
【0147】
627にて、後処理加工制御部542は、後処理加工の結果をワークフロー管理サーバ100のデータ管理部525へ送信する。結果には、後処理加工を実行したジョブのIDや、後処理加工が終了したことを示す情報が含まれる。
【0148】
629にて、検品制御部543は、628にて受信した検品設定をもとに、検品を実行する。本実施例の場合、検品設定にて設定された「検品装置にて、飛び散り幅の検査が必要。最低品質基準は飛び散り直径3mm未満かつ2mm以上。」を実施する。検品結果は、OK(良品)もしくは、NG(不良品)で判定される。検品結果は、後述の630にて、ワークフロー管理サーバ100のデータ管理部525へ送信する。
【0149】
6328にて、検品制御部543は、629にて実行した検品の結果からPQXを作成する。ここで作成されるPQXは、生産システムの検品制御部543が実行した結果を用いて作成するので、PQXの全項目が作成されるのではなく、検品の機能に関する項目のみが作成される。なお、PQXの作成の詳細は、632にて説明する。
【0150】
630にて、検品制御部543は、629にて実行された検品結果とPQXを、ワークフロー管理サーバ100のデータ管理部525へ送信する。なお、公知であるため説明を省略するが、もし検品制御部543によって検品設定の基準値を満たさない成果物(不良品)が発生し、NGと判断された場合、ワークフロー管理サーバ100は、不良品を補うための再生産を生産システム120へ指示する。
【0151】
631にて、データ管理部525は、6242にて受信した測定結果とPQX、627にて受信した後処理加工結果とPQX、630にて受信した検品結果とPQXを、PQX生成部523へ送信する。
【0152】
632にて、PQX生成部523は、631にて受信した測定結果とPQX、後処理加工結果とPQX、検品結果とPQXから、印刷ジョブ関する全項目を含むPQXを作成する。
【0153】
まず、本処理で生成するPQXについて概要を説明する。
図8に例示されるように、PQXはMessageInfo、PrinterInfo、InkCollection、SampleCollectionなどの生産に関する情報から構成されている。PQXにおける代表的なフィールドについて説明する。SampleCollectionは生産のレポート情報に関するフィールドであるSampleの集合から構成されている。ColorReportは色に関するレポート情報を表す。DefectReportは画像不良に関するレポート情報を示す。本実施例ではSampleCollectionの一部分を使用する構成として説明するが、その限りでなく、PQXの他のフィールドを使用するような構成にしてもよい。
【0154】
第一のSampleの例として、ColorReportがある。本実施例では623にて、印刷制御部541がジョブ中で印刷物の測色を行っている。その測色結果と測色箇所が631にてデータ管理部525を経て受信され、色に関するレポート情報を作成する。例えば、PositionOnSampleは印刷制御部541によって測色が行われた箇所が記載される。具体的な測色結果はCxF形式で保存され、CxFSampleObjectIdLinkによって、ColorReportと測色結果が紐づけられる。
【0155】
第二のSampleの例として、DefectReportがある。本実施例では629にて、検品制御部543がジョブ中で成果物の検品を行っている。その検品結果と検品箇所が631にてデータ管理部525を経て受信され、画像不良に関するレポート情報を作成する。例えば、PositionOnSampleは検品制御部543によって画像不良が検出された箇所が記載される。画像不良の大きさはDefectXMeasure、DefectYMeasure、DefectUoMに記載される。また、画像不良数はDefectCountに記載される。
【0156】
633にて、PQX生成部523は、632にて作成したPQXをデータ管理部525へ送信する。
【0157】
634にて、データ管理部525は、633にて受信したPQXを受注システムサーバ110のデータ管理部504へ送信する。
【0158】
635にて、データ管理部504は、634にて受信したPQXをデータ管理部504内に保存する。ここで保存されたPQXは、必要に応じて受注システムサーバ110の管理者が閲覧したり、他のシステムを経由してエンドユーザへ公開したりすることなどが可能となる。
【0159】
本実施形態では、ワークフロー管理サーバ100が、受注システムサーバ110から受信したPRXを解析することで印刷品質要件を作成して、生産システム120に送信する。生産システム120は、受信した印刷品質要件に基づいて、各制御部において必要な調整、後加工や検品の指示を行う。生産システム120は、指示された各制御部での処理の結果をワークフロー管理サーバ100に送信する。この処理の結果は、PQXのフォーマットに則って生成され、送信される。このPQXは、PRXで要求された品質要件に対する、実際の印刷成果物の品質の程度を示す情報である。
【0160】
以上の構成によれば、品質条件や品質レポートを伝送するための情報フォーマットを活用し、顧客が求める品質条件を満足する印刷成果物を生産するための作業を自動化することができる。従って、要求された品質条件が満たされるように人手によって印刷ジョブの設定を行う必要を提言することができ、作業工程の効率化を実現することができる。
【0161】
また以上の構成によれば、受注ジョブごとに多岐に渡るエンドユーザごとの品質要求に対して、品質確認を行いながら、必要となる品質調整を実施することが可能となり、ジョブごとの品質満足度を効率的に高めることが可能となる。
【0162】
また以上の構成によれば、ワークフロー管理サーバ100は、PRXなど共通の情報フォーマットに従った品質要求を生産システム110に出力する。従って、生産システム110のベンダーや機種などの違いに影響されずに、一定の品質要求を行うことができる。
【0163】
ここで、本実施例では、生産システム120として印刷装置121を例にとって説明してきたが、この限りでなく、受注から生産まで行う生産システム全てに対しても適用可能である。
【0164】
(実施形態2)
顧客が意識しないためにPRXとしては要求されないが、印刷品質を判断するために重要な項目も存在する。また、印刷会社が自社で定めた運用基準に則って行っている印刷品質保証に係る調整や検品項目など、PRXで要求されてくる要件以外にも存在するケースが多い。
【0165】
例えば、一般的に、成果物中に含まれる色味や、製本した際の位置ずれといった項目に関しては、顧客が意識しやすく品質要件としてPRXに含まれる可能性が高い。一方で、例えば、トナーの最大濃度や、印刷物のガサツキ感を表すトナーの粒状性といった画像品質項目は、顧客が指示できるものではなく、印刷会社が自社で品質管理のために検品作業の対象項目の一部として実施されることがある。
【0166】
また、将来の再印刷依頼などを想定して、顧客ではなく印刷会社が利用するために、検品中に発見された画像不良や落丁などの情報を記録する目的でPQXを生成するケースもある。
【0167】
例に挙げたように、PRXで要求された品質要件に対しての結果情報のみをPQXとして生成するだけでなく、生産システムの各制御部において実施される調整や検品項目の情報をPQXに追加する。従って、顧客や印刷会社にとって品質満足度を効率的に高めることが可能となる。
【0168】
そこで本実施形態では、PRXとして要求された品質項目とは異なる品質項目についても、印刷成果物の品質を示すレポートをPQX形式で生産システム120がワークフロー管理サーバ100へ送信する形態について説明する。
【0169】
本実施形態に係るシステム構成は、実施形態1において説明した内容と同様であるため、説明を省略する。
【0170】
図9は、本実施形態に係る生産システム120のソフトウェア構成を示す図である。受注システムサーバ110およびワークフロー管理サーバ100は、実施形態1と同じため図を省略する。ここでは、実施形態1で
図5を用いて説明した構成との差分のみ説明する。実施形態1との主な違いは、生産システム120の各制御部における、各種制御実行された結果からPQX生成するためのPQX生成部の存在である。
【0171】
印刷制御部541は、PQX生成部513を有する。PRX解析部(印刷)5412において設定された事前調整指示に基づき実行される制御結果、およびオペレータが印刷工場の運用規定に従って実施する制御結果からPQXデータを作成する。
【0172】
後加工制御部542は、PQX生成部5422を有する。PRX解析部(後加工)5421において設定された後加工処理設定指示に基づき実行される制御結果、およびオペレータが印刷工場の運用規定に従って実施する制御結果からPQXデータを作成する。
【0173】
検品制御部543は、PQX生成部5432を有する。PRX解析部(検品)5431において設定された検品設定指示に基づき実行される制御結果、およびオペレータが印刷工場の運用規定に従って実施する制御結果からPQXデータを作成する。
【0174】
図10は、本実施形態に係るソフトウェア処理を説明するシーケンス図である。ここでは、実施形態1で
図6を用いて説明したシーケンスとの差分のみ説明する。
【0175】
実施形態1との主な違いは、生産システム120の各制御部において、印刷品質要求から各制御の設定を作成した後に、印刷工場の運用規定に従って実施する設定を加えるように編集する点である。また、編集された設定を基に各種制御を実行しPQXを生成する点である。
【0176】
後処理加工制御部542は、6174において後処理加工設定を作成した後、6175において、印刷工場運用規定に従ってその他の必要な後処理加工設定を加える。その他必要な設定とは、例えば、複数ページを1枚の用紙に面付けされた状態で印刷された出力用紙をどのように断裁するかといった設定である。それらは印刷会社の持つ印刷システム120の構成に依存するため、印刷会社の都合で定められるケースが多い。そういったケースにおいて、断裁の設定は6174で作成される後処理加工設定には含まれていない。6175で設定する、断裁可能な後処理加工装置123を使用して適切な断裁を実行するための制御設定は、例えば、事前にオペレータによって後処理加工装置123の不図示の入力部から設定登録されている。
【0177】
6175において編集された後処理加工設定に基づき、後処理加工制御部542は、626にて後処理加工を実施する。
【0178】
続く6326において、PQX生成部5422は、626で実施された後処理加工の結果からPQXデータを生成する。ここで生成するPQXデータは、例えば、SampleCollectionのRegistrationReportフィールドを利用する。
【0179】
検品制御部543は、6184において検品設定を作成した後、6185において、印刷工場運用規定に従ってその他の必要な検品設定を加える。その他必要な設定とは、例えば、印刷に使用するトナーの最大濃度や粒状性を検査するための設定である。印刷装置121で使用されるトナーの特性や印刷に使用する用紙の種類に応じて、最大濃度や粒状感のターゲットは様々に変化する。そのため、6184で生成される検品設定には含まれていないケースがある。6185で設定する検品設定は、例えば、事前にオペレータによって検品装置124の不図示の入力部から設定登録されている。また、検品を実施する確認者によって、目視で確認を行う検品対象項目の一つとして設定登録されていても良い。
【0180】
6185において編集された検品設定に基づき、検品制御部543は、629にて検品処理を実施する。実施する検品処理は、確認者によって目視で確認を行う手段として実施しても良い。
【0181】
続く6328において、PQX生成部5432は、629で実施された検品処理の結果からPQXデータを生成する。ここで生成するPQXデータは、例えば、SampleCollectionのDefectReportフィールドを利用する。
【0182】
このような構成によれば、印刷品質要求を入力する顧客だけでなく、印刷処理を管理する印刷管理者(例えば、印刷会社の担当者)が必要とする印刷品質レポートを生成することができる。従って、受注システム、ワークフロー管理システム、および、生産システムを含む印刷システムに携わる各ユーザにとって利便性の高い品質管理を行うことができる。
【0183】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0184】
110 受注システムサーバ
100 ワークフロー管理サーバ
120 生産システム
201 CPU
521 PRX解析部
523 PQX解析部
525 データ管理部
5412 PRX解析部
5421 PRX解析部
5431 PRX解析部