IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ APB株式会社の特許一覧

特許7475825リチウムイオン電池モジュール及び電池パック
<>
  • 特許-リチウムイオン電池モジュール及び電池パック 図1
  • 特許-リチウムイオン電池モジュール及び電池パック 図2
  • 特許-リチウムイオン電池モジュール及び電池パック 図3
  • 特許-リチウムイオン電池モジュール及び電池パック 図4
  • 特許-リチウムイオン電池モジュール及び電池パック 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池モジュール及び電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/562 20210101AFI20240422BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240422BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20240422BHJP
   H01M 50/296 20210101ALI20240422BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240422BHJP
   H01M 50/545 20210101ALI20240422BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20240422BHJP
   H01M 50/555 20210101ALI20240422BHJP
   H01M 50/557 20210101ALI20240422BHJP
【FI】
H01M50/562
H01M50/105
H01M50/119
H01M50/296
H01M4/66 A
H01M50/545
H01M50/548 301
H01M50/555
H01M50/557
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019149935
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021034141
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】那須 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200856(JP,A)
【文献】特表2017-530503(JP,A)
【文献】特開2019-021382(JP,A)
【文献】特開2003-303583(JP,A)
【文献】国際公開第2012/153866(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/10-50/198
H01M50/20-50/298
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の金属シートと、蓄電素子と、第二の金属シートとをこの順に有するリチウムイオン電池モジュールであって、
前記蓄電素子を収容する電池外装容器を備え、
前記電池外装容器が、前記第一の金属シート及び前記第二の金属シートを備えており、
前記蓄電素子が、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体がこの順に積層され、前記正極集電体と前記負極集電体とを最外層に有し、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周を封止することで電解液が封入された構成であるリチウムイオン単電池を含んでおり、
前記蓄電素子の最外層の正極集電体と前記第一の金属シートとの間、及び/又は、前記蓄電素子の最外層の負極集電体と前記第二の金属シートとの間に配置された導電性の弾性部材を有し、
前記第一の金属シート及び前記第二の金属シートが、前記弾性部材と接する接触面と前記電池外装容器の外側に露出した露出面とを有し、
前記接触面と前記露出面が積層方向において重なる範囲を含み、
前記第一の金属シートと、前記第二の金属シートとが互いに絶縁されている
ことを特徴とするリチウムイオン電池モジュール。
【請求項2】
前記導電性の弾性部材が、グラファイトシートである請求項1に記載のリチウムイオン電池モジュール。
【請求項3】
前記正極集電体及び/又は前記負極集電体が、樹脂集電体である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池モジュール。
【請求項4】
前記蓄電素子の最外層の正極集電体の面積に対する前記第一の金属シートの面積の割合、前記蓄電素子の最外層の負極集電体の面積に対する前記第二の金属シートの面積の割合、及び、前記蓄電素子の最外層の正極集電体又は前記蓄電素子の最外層の負極集電体の面積に対する前記弾性部材の面積の割合が、それぞれ70%以上である請求項1~3のいずれかに記載のリチウムイオン電池モジュール。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のリチウムイオン電池モジュールを複数個含み、前記リチウムイオン電池モジュールの正極と負極とを直列に接続した電池パック。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のリチウムイオン電池モジュールを複数個含み、前記リチウムイオン電池モジュールの正極と負極とを並列に接続した電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池モジュール及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車及びハイブリッド電気自動車等の電源等に使用できる電池として高エネルギー密度のリチウムイオン電池が知られている。そして、リチウムイオン電池は、単電池を直列に接続した蓄電素子を電池外装容器に収容し、必要な電圧に調整した電池モジュールや、電池モジュールを複数組み合わせて電圧及び容量を調整した電池パックにして電源として使用される。
【0003】
なかでも、パッケージから電極端子を引き出すことなく電流を外部に取り出して接続することができる複数積層したバイポーラ電池がラミネートシートに密封された積層型電池が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005―276486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の積層型電池(電池モジュールともいう)は、蓄電素子の最外層にある集電体と、ラミネートシートが有する導電層との接触部分によって外部に電流を取り出すが、製造過程で生じた蓄電素子のゆがみ及び電極の厚さムラ等の影響により、最外層にある集電体と電池外装容器が有する金属層との間に接触不良が生じる場合や、金属層表面の平滑性が十分ではなく、電池モジュール同士を積層して接続した場合に電池モジュール間の接触不良が生じることがあった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、蓄電素子のゆがみや電極の厚さにムラがあっても接触不良を生じることなく蓄電素子の最外層にある集電体と外部に電流を取り出す部分とを接続することができるリチウムイオン電池モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第一の金属シートと、蓄電素子と、第二の金属シートとをこの順に有するリチウムイオン電池モジュールであって、上記蓄電素子が、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体がこの順に積層され、上記正極集電体と上記負極集電体とを最外層に有し、上記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周を封止することで電解液が封入された構成であるリチウムイオン単電池を含んでおり、上記蓄電素子の最外層の正極集電体と上記第一の金属シートとの間、及び/又は、上記蓄電素子の最外層の負極集電体と上記第二の金属シートとの間に配置された導電性の弾性部材を有し、上記第一の金属シートと、上記第二の金属シートとが互いに絶縁されていることを特徴とするリチウムイオン電池モジュール、上記リチウムイオン電池モジュールを複数個含み、上記リチウムイオン電池モジュールの正極と負極とを直列に接続した電池パック、及び、上記リチウムイオン電池モジュールを複数個含み、上記リチウムイオン電池モジュールの正極と負極とを並列に接続した電池パックである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリチウムイオン電池モジュールは、蓄電素子のゆがみや電極の厚さにムラがあっても接触不良を生じることなく蓄電素子の最外層にある集電体と外部に電流を取り出す部分とを接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、リチウムイオン単電池の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2(a)は、リチウムイオン電池モジュールの第一の態様の一例を模式的に示す断面図であり、図2(b)は、リチウムイオン電池モジュールの第一の態様の一例を模式的に示す斜視断面図である。
図3図3(a)は、リチウムイオン電池モジュールの第二の態様の一例を模式的に示す断面図であり、図3(b)は、リチウムイオン電池モジュールの第二の態様の一例を模式的に示す斜視断面図である。
図4図4は、電池パックの第一の態様の一例を模式的に示す断面図である。
図5図5は、電池パックの第二の態様の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のリチウムイオン電池モジュールを説明する。
なお、モジュールとは、複数の単電池を直列に接続することでひとつの電源として機能する様に組み合わせた組み合わせ単位を意味する。
【0011】
本発明のリチウムイオン電池モジュールは、第一の金属シートと、蓄電素子と、第二の金属シートとをこの順に有するリチウムイオン電池モジュールであって、上記蓄電素子が、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体がこの順に積層され、上記正極集電体と上記負極集電体とを最外層に有し、上記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周を封止することで電解液が封入された構成であるリチウムイオン単電池を含んでおり、上記蓄電素子の最外層の正極集電体と上記第一の金属シートとの間、及び/又は、上記蓄電素子の最外層の負極集電体と上記第二の金属シートとの間に配置された導電性の弾性部材を有し、上記第一の金属シートと、上記第二の金属シートとが互いに絶縁されていることを特徴とする。
まずは、リチウムイオン単電池について説明する。
【0012】
[リチウムイオン単電池]
リチウムイオン単電池は、正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体がこの順に積層され、上記正極集電体と上記負極集電体とを最外層に有し、上記正極活物質層及び上記負極活物質層の外周を封止することで電解液が封入された構成である。
【0013】
図1は、リチウムイオン単電池の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すリチウムイオン単電池100は、正極集電体11、正極活物質層13、セパレータ30、負極活物質層23及び負極集電体21がこの順に積層されており、正極集電体11と負極集電体21とを最外層に有する。正極活物質層13及び負極活物質層23の外周は、封止材40により封止され、電解液が封入された構成を有する。
以下、リチウムイオン単電池の各構成について説明する。
【0014】
(正極集電体)
正極集電体11としては、公知のリチウムイオン単電池に用いられる集電体を用いることができ、例えば公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開第2015-005116号等に記載の樹脂集電体等)を用いることができる。
正極集電体11は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0015】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0016】
樹脂集電体としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。
マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0017】
導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電性フィラーは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電性フィラーの材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0018】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましく、0.02~5μmであることがより好ましく、0.03~1μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0019】
導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている形態であってもよい。
【0020】
導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電性フィラーが導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1~20μmであることが好ましい。
【0021】
樹脂集電体中の導電性フィラーの重量割合は、5~90重量%であることが好ましく、20~80重量%であることがより好ましい。
特に、導電性フィラーがカーボンの場合、導電性フィラーの重量割合は、20~30重量%であることが好ましい。
【0022】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。また、複数の樹脂集電体を積層して用いてもよく、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0023】
正極集電体11の厚さは特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体として用いる場合には、積層後の全体の厚さが5~150μmであることが好ましい。
【0024】
正極集電体11は、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。
導電性樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法及びカレンダー法等の公知のフィルム成形法が挙げられる。なお、正極集電体11は、フィルム成形以外の成形方法によっても得ることができる。
【0025】
(正極活物質層)
正極活物質層13は、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。
ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。
正極活物質層13が非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層13に応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層13の破壊を防止することができ好ましい。
非結着体である正極活物質層13は、正極活物質層13を、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層13にする等の方法で得ることができる。
なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0026】
正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0027】
正極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~35μmであることがより好ましく、2~30μmであることがさらに好ましい。
【0028】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であってもよい。
正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0029】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015-005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0030】
被覆材には、導電剤が含まれていてもよい。
導電剤としては、正極集電体11に含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0031】
正極活物質層13には、粘着性樹脂が含まれていてもよい。
粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10-255805公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。
なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。
従って、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極バインダー)と粘着性樹脂とは異なる材料である。
【0032】
正極活物質層13には、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていてもよい。
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(FSO及びLiClO等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩等が挙げられ、LiN(FSO(LiFSIともいう)が好ましい。
【0033】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0034】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環のラクトン化合物(δ-バレロラクトン等)等を挙げることができる。
【0035】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びブチレンカーボネート等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0036】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0037】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。
非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
非水溶媒の内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、更に好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、特に好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。最も好ましいのはエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液である。
【0039】
正極活物質層13には、導電助剤が含まれていてもよい。
導電助剤としては、正極集電体11に含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0040】
正極活物質層13における導電助剤の重量割合は、3~10重量%であることが好ましい。
【0041】
正極活物質層13は、例えば、正極活物質及び電解液を含むスラリーを正極集電体11又は基材の表面に塗布し、余分な電解液を除去する方法によって作製することができる。
基材の表面に正極活物質層13を形成した場合、転写等の方法によって正極活物質層13を正極集電体11と組み合わせればよい。
上記スラリーには、必要に応じて、導電助剤や粘着性樹脂が含まれていてもよい。また、正極活物質は被覆正極活物質であってもよい。
【0042】
正極活物質層13の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0043】
(負極集電体)
負極集電体21としては、正極集電体11で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。
負極集電体21は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
負極集電体21の厚さは特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。
【0044】
(負極活物質層)
負極活物質層23は、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層23を得る方法等は、正極活物質層13が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層13を得る方法と同様である。
【0045】
負極活物質としては、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
上記負極活物質のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
【0046】
これらの中でも、電池容量等の観点から、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物が好ましく、炭素系材料としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及びアモルファス炭素がさらに好ましく、珪素系材料としては、酸化珪素及び珪素-炭素複合体がさらに好ましい。
【0047】
負極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmが好ましく、0.1~20μmであることがより好ましく、2~10μmであることがさらに好ましい。
【0048】
本明細書において、負極活物質の体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0049】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であってもよい。
負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0050】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0051】
負極活物質層23は、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。
電解液の組成は、正極活物質層13に含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0052】
負極活物質層23には、導電助剤が含まれていてもよい。
導電助剤としては、正極活物質層13に含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0053】
負極活物質層23における導電助剤の重量割合は、2~10重量%であることが好ましい。
【0054】
負極活物質層23には、粘着性樹脂が含まれていてもよい。
粘着性樹脂としては、正極活物質層13の任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0055】
負極活物質層23は、例えば、負極活物質及び電解液を含むスラリーを負極集電体21又は基材の表面に塗布し、余分な電解液を除去する方法によって作製することができる。
基材の表面に負極活物質層23を形成した場合、転写等の方法によって負極活物質層23を負極集電体21と組み合わせればよい。
上記スラリーには、必要に応じて、導電助剤や粘着性樹脂等が含まれていてもよい。また、負極活物質は被覆負極活物質であってもよい。
【0056】
負極活物質層23の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0057】
(セパレータ)
セパレータ30としては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、上記多孔性フィルムの積層フィルム(多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム等)、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン単電池に用いられるセパレータが挙げられる。
【0058】
(リチウムイオン単電池)
リチウムイオン単電池100は、正極活物質層13及び負極活物質層23の外周を封止することで電解液が封入された構成である。
正極活物質層13及び負極活物質層23の外周を封止する方法としては、例えば、封止材40を用いて封止する方法が挙げられる。
封止材40は、正極集電体11及び負極集電体21の間に配置されており、セパレータ30の外周を封止する機能を有する。
【0059】
封止材40としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。
具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0060】
リチウムイオン単電池100の製造方法としては、例えば、正極集電体11、正極活物質層13、セパレータ30、負極活物質層23及び負極集電体21をこの順に重ね合わせた後、電解液を注入し、正極活物質層13及び負極活物質層23の外周を封止材40で封止することで得ることができる。正極活物質層13及び負極活物質層23の外周を封止材40で封止する方法としては、液状の封止材を塗布し硬化して封止する方法が挙げられる。
また、封止材40は、上述した電解液に対して耐久性のある高分子材料からなり、正極活物質層13又は負極活物質層23を収容する貫通孔を有する枠体であっても良い。封止材40が枠体である場合には、正極集電体11又は負極集電体12を枠体の一方の枠面に接合して貫通孔の一端を封止し、枠体の他方の枠面上にセパレータを挿入した状態で枠体同士を接着して封止する方法でリチウムイオン単電池100を得ることができる。
【0061】
[リチウムイオン電池モジュール]
本発明のリチウムイオン電池モジュールは、上述したリチウムイオン単電池100を用いて構成される。
以下、本発明のリチウムイオン電池モジュールの第一の態様及び第二の態様について説明する。
【0062】
[リチウムイオン電池モジュールの第一の態様]
本発明のリチウムイオン電池モジュールの第一の態様では、蓄電素子を収容する電池外装容器を備え、上記電池外装容器が、上記第一の金属シート及び上記第二の金属シートを備えており、上記第一の金属シート及び上記第二の金属シートが、上記弾性部材と接する接触面と上記電池外装容器の外側に露出した露出面とを有することが好ましい。
図2(a)は、リチウムイオン電池モジュールの第一の態様の一例を模式的に示す断面図であり、図2(b)は、リチウムイオン電池モジュールの第一の態様の一例を模式的に示す斜視断面図である。
図2(a)に示すリチウムイオン電池モジュール300では、蓄電素子200を収容する電池外装容器140を備えており、蓄電素子200の最外層の正極集電体と電池外装容器140との間、及び/又は、蓄電素子200の最外層の負極集電体と電池外装容器140との間に配置された導電性の弾性部材130を備えている。
電池外装容器140は、内側から順に、樹脂層140aと、金属層140bと、樹脂層140cとを有する。
金属層140bは、弾性部材130と接する接触面と、電池外装容器140の外側に露出した露出面とを有しており、積層方向において上記接触面と露出面とが重なる範囲が、第一の金属シート110又は第二の金属シート120となる。
具体的には、図2(b)に示すように、積層方向Aにおいて、金属層140bが蓄電素子200の最外層の正極集電体と電池外装容器140との間の弾性部材130と接する接触面と、電池外装容器140の外側(正極側)に露出した露出面とが重なる範囲が第一の金属シート110である。また、積層方向Aにおいて、金属層140bが蓄電素子200の最外層の負極集電体と電池外装容器140との間の弾性部材130と接する接触面と、電池外装容器140の外側(負極側)に露出した露出面とが重なる範囲が第二の金属シート120である。
なお、樹脂層140a及び樹脂層140cは、絶縁層としての役割を有しており、第一の金属シート110及び第二の金属シート120は互いに絶縁されている。
リチウムイオン電池モジュール300は、このような構成を有するため、蓄電素子のゆがみや電極の厚さにムラがあっても接触不良を生じることなく蓄電素子の最外層にある集電体と外部に電流を取り出す部分(第一の金属シート110及び第二の金属シート120)とを接続することができ、更に、電池外装容器から電極端子を引き出すことなく電流を取り出すことができる。
以下、リチウムイオン電池モジュール300の各構成について説明する。
【0063】
(蓄電素子)
蓄電素子200は、リチウムイオン単電池100を含む。
蓄電素子200は、リチウムイオン単電池100を1つ含む構成であってもよいし、リチウムイオン単電池100を複数個直列に積層された構成であってもよい。
リチウムイオン電池モジュールの出力を向上する観点から、蓄電素子200は、リチウムイオン単電池100が複数個直列に積層された構成であることが好ましく、例えば、リチウムイオン単電池100が5個以上直列に積層された構成であることが好ましく、7個以上直列に積層された構成であることがより好ましい。
なお、蓄電素子200が、リチウムイオン単電池100が複数個直列に積層された構成である場合には、隣接する一のリチウムイオン単電池100の正極と他のリチウムイオン単電池100の負極とが接触するように、すなわち、各リチウムイオン単電池100が同じ向きとなるように積層されていることが好ましい。複数個のリチウムイオン単電池100を同じ向きとなるように積層して蓄電素子200を構成した場合、蓄電素子200に含まれるいずれかのリチウムイオン単電池200に不良があった場合には、端子の接続をやり直す等の作業をすることなく不良のリチウムイオン単電池100のみを置き換えるだけで正常な蓄電素子200にすることができるので好ましい。
【0064】
(電池外装容器)
電池外装容器140は、内側から順に、樹脂層140aと、金属層140bと、樹脂層140cとを有する。樹脂層140aは、積層方向において上側と下側とにある金属層140bを電気的に絶縁するように配置されていればよく、樹脂層140cは、積層方向において上側と下側とにある金属層140bの露出面の大きさに対応して必要に応じて配置される。
このような電池外装容器としては、例えば、金属シートと高分子シートとの複合材料及びラミネート容器等に用いられる高分子金属複合フィルムや、金属缶ケース等を用いることができる。
電池外装容器140では、金属層140bが、弾性部材130と接する接触面と、電池外装容器の外側に露出する露出面とを有しており、積層方向において上記接触面と露出面とが重なる範囲が、第一の金属シート110又は第二の金属シート120となる。
【0065】
樹脂層140aとしては、熱融着性樹脂フィルムであることが好ましい。
熱融着性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン、アイオノマー、エチレンビニルアセテート(EVA)等の熱融着性樹脂製のフィルムを用いることができる。
熱融着性樹脂フィルムは、蓄電素子200を内部に収容する際にはシール層としても作用する。また、熱融着性樹脂フィルムは、絶縁層としての役割も有するため、第一の金属シート110及び第二の金属シート120は互いに絶縁されている。
樹脂層140aの厚さとしては特に限定されないが、例えば、10μm~1000μmである。
【0066】
金属層140bとしては、例えば、金属箔及び金属シート等を用いることができ、金属としてはアルミニウム、ニッケル、ステンレス及び銅等を用いることができる。
金属層140bの厚さとしては特に限定されないが、例えば、10μm~300μmである。
【0067】
樹脂層140cとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル製フィルムや、樹脂層140aで例示した熱融着製樹脂フィルムや、ポリアミド(ナイロン(登録商標))等のポリアミド系合成繊維等の樹脂シートを用いることができる。
樹脂層140cの厚さとしては特に限定されないが、例えば、10μm~1000μmである。
金属層140bは、湿性、耐通気性、耐薬品性を電池外装容器140に付与し、樹脂層140cは金属層140bの露出面を制限してリチウムイオン単電池100の外部で短絡が生じるのを防止する層である。
【0068】
電池外装容器140の具体的な構成としては、例えば、内側から順に、ポリエチレン(PE)/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレート(PET)が積層された構成;ポリエチレン(PE)/アルミニウム箔/ナイロン(登録商標)が積層された構成;アイオノマー/ニッケル箔/ポリエチレンテレフタレート(PET)が積層された構成;エチレンビニルアセテート(EVA)/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレート(PET)が積層された構成;アイオノマー/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレート(PET)が積層された構成等が挙げられる。
【0069】
電池外装容器140では、樹脂層140a、樹脂層140cに対して、溶剤処理、熱処理、火炎処理等を施すことにより、金属層140bが、弾性部材130と接する接触面と、電池外装容器の外側に露出する露出面とを形成することができる。
例えば、上述した熱融着性樹脂に対しては、トルエン、パークロロエチレン、トリクロロエチレン、四塩化炭素などの有機溶剤を用いて高温処理をすることにより、金属層140bを露出することができる。
また、例えば、上述したポリエステル製フィルムや、ポリアミド系合成繊維等の樹脂シートに対しては、クレゾール等の有機溶剤を用いて処理することにより、金属層140bを露出することができる。
また、金属層140bとなる金属箔及び金属シートに、樹脂層140aとなる所定の配置になるように成形された熱融着性樹脂フィルムと樹脂層140cとなる樹脂シートとを積層することによっても弾性部材130と接する接触面と、電池外装容器の外側に露出する露出面とを形成した電池外装容器140を得ることができる。
電池外装容器140では、金属層140bが、弾性部材130と接する接触面と、電池外装容器の外側に露出する露出面とを有しており、積層方向において上記接触面と露出面とが重なる範囲が、第一の金属シート110又は第二の金属シート120となる。
この第一の金属シート110が正極端子の役割を果たし、第二の金属シート120が負極端子の役割を果たし、直接電流を取り出すことができる。
【0070】
リチウムイオン電池モジュール300では、蓄電素子200の最外層の正極集電体の面積に対する第一の金属シート110の面積の割合、及び、蓄電素子200の最外層の負極集電体の面積に対する第二の金属シート120の面積の割合は、それぞれ70%以上であることが好ましく、それぞれ80%以上であることがより好ましく、それぞれ85%以上であることが更に好ましく、それぞれ90%以上であることが特に好ましい。
第一の金属シート110及び第二の金属シート120がこのような面積の割合を有することにより、リチウムイオン電池モジュール300から好適に電流を取り出すことができる。
なお、第一の金属シート110の面積とは、図2(b)に示すように、積層方向Aにおいて、金属層140bが蓄電素子200の最外層の正極集電体と電池外装容器140との間の弾性部材130と接する接触面と、電池外装容器140の外側(正極側)に露出した露出面とが重なる範囲の面積を意味する。
また、第二の金属シート110の面積とは、積層方向Aにおいて、金属層140bが蓄電素子200の最外層の負極集電体と電池外装容器140との間の弾性部材130と接する接触面と、電池外装容器140の外側(負極側)に露出した露出面とが重なる範囲の面積を意味する。
【0071】
(弾性部材)
弾性部材130としては、金属シート110と蓄電素子200との間、及び第二の金属シート120と蓄電素子200との間を電気的に接続できる導電性を有し、かつ蓄電素子200を電池外装容器140に収容することで蓄電素子200にかかる応力によって変形できる柔軟性を有する弾性体であれば制限はないが、例えば、金属又は金属繊維からなる弾性体を好適に用いることができる。
弾性部材130を構成する金属としては、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、白金、鉄、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、アンチモン及びカリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属又はこれらの金属を含む合金を用いることができる。
弾性部材130としてこれらの金属を用いることにより、高い電気伝導性を得ることができる。
【0072】
弾性部材130としては、例えば、植物繊維及び/又は金属以外の繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)の織物又は不織物に対して、導電性炭素材料を混合又はコーティングして担持した弾性体を用いることもできる。
導電性炭素材料としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、リグニンブラック、グラファイト及びグラフェンからなる少なくとも1つ以上を選択することができる。
また、炭素繊維からなる織物若しくは不織物、又はシート状のグラファイト(グラファイトシートともいう)等の導電性炭素シートを用いることもできる。
なかでも、蓄電素子200のゆがみを好適に吸収することができ、かつ、高い電気伝導性を備える観点から、グラファイトシートであることが好ましい。
【0073】
また、弾性部材130としては、弾性を有する高分子材料に対して、上述の導電性炭素材料又は金属を混合した弾性体や、弾性を有する高分子材料の表面に上述の導電性炭素材料又は金属をコーティングした弾性体を用いることもできる。
このような弾性を有する高分子材料としては、例えば、シリコンゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロプレーンゴム、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)、エチレンゴム、プロピレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソブチレン、塩化ポリエチレン、イソプレンゴム、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンを用いることができる。
【0074】
蓄電素子200の最外層の正極集電体又は蓄電素子200の最外層の負極集電体の面積に対する弾性部材130の面積の割合は、70%以上であることが好ましい。
弾性部材130がこのような面積の割合を有することにより、蓄電素子200のゆがみや電極の厚さのムラに起因する接触不良を好適に防止することができる。また、リチウムイオン電池モジュール300の正極として機能する面と負極として機能する面とを平滑にすることができる。
弾性部材130の面積の割合は、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0075】
弾性部材130の厚さは特に限定されず、電池外装容器140の金属層と、蓄電素子200の最外層の正極集電体又は負極集電体との双方に接する厚さがあればよく、例えば、50μm~500μmである。
【0076】
弾性部材130の弾性率としては、例えば、25℃で0.01~50MPa/mmとすることが好ましい。
弾性部材130の弾性率は、例えば、0.01MPa/mmよりも小さい場合には、弾性部材130が変形してしまうことがあり、50MPa/mmよりも大きい場合には蓄電素子200との接触面に対する追従性が低下してしまうことがある。
弾性部材130の弾性率は、従来公知の弾性率測定方法によって求めることができ、例えば、荷重試験器(JIS K 6272の4.(試験機の等級分類)に規定する力計測系1級以上の精度を持つ試験装置を使用する。例えば、今田製作所(株)製の引張圧縮試験機SDWS)で弾性部材130に所定の荷重をかけた時の変位量から算出する方法によって求めることができる。弾性部材130がゴムの場合、JIS K 6254:2010に記載のA法によって求めることができる。また、弾性部材130の許容ひずみとしては、例えば、30~99%であることが好ましい。
【0077】
(リチウムイオン電池モジュールの第一の態様の一例の製造方法)
リチウムイオン電池モジュール300の製造方法としては、例えば、弾性部材130、蓄電素子200及び弾性部材130をこの順に重ね合わせた後、第一の金属シート110及び第二の金属シート120を備えた電池外装容器140に収容し、封止することで得ることができる。
なお、電池外装容器140は、ヒートシール、インパルスシール、超音波融着、高周波融着等の熱融着を用いて、封止することができる。
【0078】
[リチウムイオン電池モジュールの第二の態様]
本発明のリチウムイオン電池モジュールの第二の態様では、第一の金属シート、蓄電素子及び第二の金属シートを収容する電池外装容器を備え、上記第一の金属シートを構成する金属シートの一部及び上記第二の金属シートを構成する金属シートの一部が金属部材として上記電池外装容器を貫通して上記電池外装容器の外側に引き出されている、又は、上記第一の金属シート及び上記第二の金属シートに接続された金属部材が、上記電池外装容器を貫通して上記電池外装容器の外側に引き出されていることが好ましい。
【0079】
図3(a)は、リチウムイオン電池モジュールの第二の態様の一例を模式的に示す断面図であり、図3(b)は、リチウムイオン電池モジュールの第二の態様の一例を模式的に示す斜視断面図である。
図3(a)に示すリチウムイオン電池モジュール400では、第一の金属シート115、蓄電素子200及び第二の金属シート125を収容する電池外装容器145を備えている。
具体的には、図3(b)に示すように、金属シートが蓄電素子200の最外層の正極集電体と電池外装容器140との間の弾性部材130と接する接触面の範囲が第一の金属シート115であり、金属シートが蓄電素子200の最外層の負極集電体と電池外装容器140との間の弾性部材130と接する接触面の範囲が第二の金属シート125である。そして、リチウムイオン電池モジュール400では、第一の金属シート115を構成する金属シートの一部及び第二の金属シート125を構成する金属シートの一部が金属部材150として電池外装容器145を貫通して電池外装容器145の外側に引き出されている、又は、第一の金属シート115及び第二の金属シート125に接続された金属部材150が、電池外装容器145を貫通して電池外装容器145の外側に引き出されている。
なお、リチウムイオン電池モジュール400では、第一の金属シート115及び第二の金属シート125と、電池外装容器145とは、別の部材である。
また、電池外装容器145の内面には絶縁層(図示しない)が形成されており、蓄電素子200の最外層の正極集電体と(導電性の弾性部材を介して)接続された第一の金属シート115と、蓄電素子200の最外層の負極集電体と(導電性の弾性部材を介して)接続された第二の金属シート125とは互いに絶縁されている。
リチウムイオン電池モジュール400は、このような構成を有するため、蓄電素子200のゆがみや電極の厚さにムラがあっても接触不良を生じることなく蓄電素子200の最外層にある集電体と外部に電流を取り出す部分(第一の金属シート115及び第二の金属シート125)とを接続することができる。
以下、リチウムイオン電池モジュール400の各構成について説明する。
【0080】
(金属シート)
第一の金属シート115及び第二の金属シート125としては、導電性を有する材料からなるシートであれば特に限定されず、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、並びに、樹脂集電体として記載した材料からなるシートを適宜選択して用いることができる。
リチウムイオン電池モジュール400では、第一の金属シート115を構成する金属シートの一部及び第二の金属シート125を構成する金属シートの一部が、金属部材150として電池外装容器145を貫通して電池外装容器145の外側に引き出されていても良いし、第一の金属シート115及び第二の金属シート125に接続された別の金属部材150が、電池外装容器145を貫通して電池外装容器145の外側に引き出されていても良い。
リチウムイオン電池モジュール400では、第一の金属シート115を構成する金属シートの一部である金属部材150、又は、第一の金属シート115に接続された別の金属部材150が、正極端子として機能する。
また、第二の金属シート125を構成する金属シートの一部である金属部材150、又は、第二の金属シート125に接続された別の金属部材150が、負極端子として機能する。
第一の金属シート115及び第二の金属シート125に接続された別の金属部材150としては、特に限定されず、公知の導線や金属タブを適宜選択して用いることができる。
【0081】
蓄電素子200の最外層の正極集電体の面積に対する第一の金属シート115の面積の割合、及び、蓄電素子200の最外層の負極集電体の面積に対する第二の金属シート125の面積の割合は、それぞれ70%以上であることが好ましく、それぞれ80%以上であることがより好ましく、それぞれ85%以上であることが更に好ましく、それぞれ90%以上であることが特に好ましい。
第一の金属シート115及び第二の金属シート125がこのような面積の割合を有することにより、リチウムイオン電池モジュール400から好適に電流を取り出すことができる。
なお、リチウムイオン電池モジュール400において、第一の金属シート115の面積とは、図3(b)において、金属シートが蓄電素子200の最外層の正極集電体と電池外装容器140との間の弾性部材130と接する接触面の面積であり、第二の金属シート125の面積とは、金属シートが蓄電素子200の最外層の負極集電体と電池外装容器140との間の弾性部材130と接する接触面の面積である。
【0082】
第一の金属シート115及び第二の金属シート125の厚さとしては、電流を好適に取り出す観点から、20~80μmであることが好ましい。
【0083】
(電池外装容器)
電池外装容器145は、公知の金属缶ケースに用いる基材や、上述したリチウムイオン電池モジュールの第一の態様で記載した金属シートと高分子シートとの複合材料及びラミネート容器等に用いられる高分子金属複合フィルム等を所定の形状に成型等して用いることができる。
ただし、電池外装容器145では、金属シートが弾性部材130と接する接触面や、金属シートが電池外装容器145の外側に露出した露出面を設ける必要は無い。
また、電池外装容器145の内面には樹脂層からなる絶縁層(図示しない)が形成されており、電池外装容器145を貫通して外側に引き出されている正極端子又は負極端子として機能する金属部材150は、互いに絶縁されている。
【0084】
電池外装容器145では、正極端子又は負極端子として機能する金属部材150が、電池外装容器145を貫通して電池外装容器145の外側に引き出されている。
このような電池外装容器145を貫通する部位は、機械加工等を施すことにより形成することができる。また、電池外装容器145が上記基材、複合材料又は高分子金属複合フィルム等からなる複数の部材で構成されている場合、電池外装容器145を構成する部材同士の接合部分を電池外装容器145を貫通する部位とし、上記金属部材を引き出すことができる。また、電池外装容器145が蓄電素子200等を収容するための開口部を有する場合、開口部を電池外装容器145を貫通する部位とし、上記金属部材を引き出すことができる。
なお、「貫通して電池外装容器145の外側に引き出されている」とは、電池外装容器145を封止する際に、電池外装容器145の封止部から、第一の金属シート115及び第二の金属シート125、又は、第一の金属シート115に接続された金属部材及び第二の金属シート125に接続された金属部材を、電池外装容器145の外側に引き出した場合も含む。
【0085】
(その他)
リチウムイオン電池モジュールの第二の態様において、蓄電素子200や、弾性部材130は、本発明のリチウムイオン電池モジュールの第一の態様で記載したものと同様のものを適宜選択して用いることができる。
【0086】
(リチウムイオン電池モジュールの第二の態様の製造方法)
リチウムイオン電池モジュール400の製造方法としては、例えば、第一の金属シート115、弾性部材130、蓄電素子200、弾性部材130及び第二の金属シート125をこの順に重ね合わせて、必要により予め貫通部を形成した電池外装容器145に収容し、電池外装容器145の貫通部から正極端子又は負極端子として機能する金属部材150を引き出した後、封止することで得ることができる。
なお、電池外装容器145は、ヒートシール、インパルスシール、超音波融着、高周波融着等の熱融着を用いて、封止することができる。
【0087】
[電池パック]
電池パックとは、用途に合わせて電源としての容量及び電圧等を調整すること等を目的として、複数個の電池モジュールを直列又は並列に繋いで構成された電池システムを意味し、電池モジュールの他に充放電制御回路等が組み合わされていてもよい。
【0088】
(電池パックの第一の態様)
本発明の電池パックの第一の態様は、リチウムイオン電池モジュールを複数個含み、リチウムイオン電池モジュールの正極と負極とを直列に接続した構成を有する。
図4は、電池パックの第一の態様の一例を模式的に示す断面図である。
図4に示す電池パック500は、上記の第一の態様のリチウムイオン電池モジュールであるリチウムイオン電池モジュール300を複数個含み、リチウムイオン電池モジュール300の正極と負極とが直列になるように接続されている。
電池パック500において、リチウムイオン電池モジュール300は、隣接する一のリチウムイオン電池モジュール300の正極端子と他のリチウムイオン電池モジュール300の負極端子とが接触するように、すなわち、各リチウムイオン電池モジュール300内における蓄電素子200の向きが一致するように積層されている。
電池パック500は、このような構成を有するため、出力を高めることができる。
【0089】
リチウムイオン電池モジュール300は、集電体と電気的に接続された金属シートが電池外装容器の外側に露出した露出面を有するため、電池パック500では、リチウムイオン電池モジュール300を複数個積層して露出面同士を接触するだけで、特別な部材を必要とせずに容易にリチウムイオン電池モジュール300同士を直列接続して電池パックとすることができる。
電池パックの出力を向上する観点から、例えば、リチウムイオン電池モジュール300を5個以上直列に接続した構成であることが好ましく、7個以上直列に接続した構成であることがより好ましい。
また、リチウムイオン電池モジュール300は、正極として機能する露出面と負極として機能する露出面とが平滑であるため、リチウムイオン電池モジュール300同士を直列接続しても電気的接続が良好である。
【0090】
電池パック500は、複数のリチウムイオン電池モジュール300間を接続する部材を使用することなく、積層することにより形成されているので、リチウムイオン電池モジュール300の一つに不良品があった場合でも、リチウムイオン電池モジュール300間の配線をやり直すことなく不良品を取り換えるだけで、後の良品をそのまま使用できるため、メンテナンス性と経済性に優れる。
なお、図4では、リチウムイオン電池モジュール300を複数個含む構成の電池パックを記載したが、リチウムイオン電池モジュール400を複数個含み、リチウムイオン電池モジュール400の正極と負極とを直列に接続した構成であってもよい。
【0091】
(電池パックの第二の態様)
本発明の電池パックの第二の態様は、リチウムイオン電池モジュールを複数個含み、リチウムイオン電池モジュールの正極と負極とを並列に接続した構成を有する。
図5は、電池パックの第二の態様の一例を模式的に示す断面図である。
図5に示す電池パック600は、上記の第一の態様のリチウムイオン電池モジュールであるリチウムイオン電池モジュール300を複数個含み、リチウムイオン電池モジュール300の正極として機能する面が正極集電板160側となるように、負極として機能する面が負極集電板170側となるように、並列に接続されている。
電池パック600は、このような構成を有するため、高容量の電源として用いることができる。
【0092】
リチウムイオン電池モジュール300は、集電体と電気的に接続された金属シート(110及び120)が電池外装容器140の外側に露出した露出面を有するため、電池パック600では、正極集電板160及び負極集電板170を用い、その間にリチウムイオン電池モジュール300を挟むことにより、簡易な構成でリチウムイオン電池モジュール300同士を並列接続して電池パックとすることができる。
電池パックの寿命を向上する観点から、例えば、リチウムイオン電池モジュール300を5個以上並列に接続した構成であることが好ましく、7個以上並列に接続した構成であることがより好ましい。
また、リチウムイオン電池モジュール300は、正極として機能する露出面と負極として機能する露出面とが平滑であるため、リチウムイオン電池モジュール300の正極と正極集電板160との電気的接続、及び負極と負極集電板170との電気的接続が良好である。
【0093】
正極集電板160及び負極集電板170を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン電池用の集電板として公知の高導電性材料を用いることができる。
集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。
軽量、耐食性、高導電性の観点から、アルミニウム、銅であることがより好ましく、アルミニウムであることが特に好ましい。
なお、正極集電板160及び負極集電板170は、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料を用いてもよい。
【0094】
電池パック600は、複数のリチウムイオン電池モジュール300を正極集電板160と負極集電板170との間に挟むことにより形成されているので、リチウムイオン電池モジュール300の一つに不良品があった場合でも、不良品を抜き取るだけで、後の良品をそのまま使用でき、メンテナンス性と経済性に優れる。
なお、図5では、リチウムイオン電池モジュール300を複数個含む構成の電池パックを記載したが、リチウムイオン電池モジュール400を複数個含み、リチウムイオン電池モジュール400の正極と負極とを並列に接続した構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のリチウムイオン電池モジュールは、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用に用いられるリチウムイオン電池モジュールとして有用である。
【符号の説明】
【0096】
11 正極集電体
13 正極活物質層
21 負極集電体
23 負極活物質層
30 セパレータ
40 封止材
100 リチウムイオン単電池
110、115 第一の金属シート
120、125 第二の金属シート
130 弾性部材
140、145 電池外装容器
140a 樹脂層
140b 金属層
140c 樹脂層
150 金属部材
160 正極集電板
170 負極集電板
200 蓄電素子
300、400 リチウムイオン電池モジュール
500、600 電池パック
図1
図2
図3
図4
図5