(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240422BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240422BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G03G21/00 500
G03G21/00 398
G03G21/00 510
B41J29/38 102
B41J29/393 101
(21)【出願番号】P 2019201765
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019000644
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】大吉 和博
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-163674(JP,A)
【文献】特開2016-045656(JP,A)
【文献】特開2004-282893(JP,A)
【文献】特開2005-157204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0141150(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/34
15/00
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
B41J 29/00-29/70
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を生成する電源回路を有する電源基板と、
前記電源基板から供給される前記電源電圧が複数に分配され、分配された電源電圧毎に電源供給と遮断を行う複数のスイッチ素子と、複数に分配した電源電圧により画像を形成するための複数の負荷を駆動するドライバ回路とを有するドライバ基板と、
前記ドライバ基板の動作を制御するエンジン制御基板と、を備え、
前記複数のスイッチ素子は、前記電源基板から前記電源電圧が供給される第1スイッチ素子と、前記第1スイッチ素子から出力される電源電圧が分配されて供給される第2スイッチ素子とを含み、
前記エンジン制御基板は、電源スイッチの操作により画像形成装置が起動するときに、前記第1スイッチ素子がオンになるように制御されても導通状態にならないオープン故障が生じているか否かを判定する故障診断を行うが、前記第2スイッチ
素子に前記オープン故障が生じているか否かの判定を行わず、その後、前記複数の負荷のいずれかの動作に異常が生じた場合に前記第2スイッチ素子に前記オープン故障が生じているか否かを判定する故障診断を行うことを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記エンジン制御基板は、前記画像形成装置が起動するときに、前記第1スイッチ素子のオープン故障の診断として前記第1スイッチ素子を導通させ、前記第1スイッチ素子から出力される電源電圧の電圧値に基づいて前記第1スイッチ素子がオープン故障であるか否かを判定することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のいずれかが故障しているか否かを表す情報を記憶するメモリをさらに備えており、
前記エンジン制御基板は、前記画像形成装置が起動するときに前記第1スイッチ素子がオープン故障であると判定されず、且つ前記メモリに故障を表す情報が記憶されている場合に、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子がショート故障であるか否かの判定を行うことを特徴とする、
請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記エンジン制御基板は、前記画像形成装置が起動するときに、前記第1スイッチ素子の故障診断として前記第1スイッチ素子を遮断させ、前記第1スイッチ素子から出力される電源電圧の電圧値に基づいて前記第1スイッチ素子が遮断状態にならないショート故障であるか否かを判定することを特徴とする、
請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記エンジン制御基板は、前記画像形成装置が起動するときに、前記第2スイッチ素子の故障診断として前記第1スイッチ素子を導通させ、かつ前記第2スイッチ素子を遮断させて、前記第2スイッチ素子から出力される電源電圧の電圧値に基づいて前記第2スイッチ素子が故障であるか否かを判定することを特徴とする、
請求項3記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記エンジン制御基板は、前記画像形成装置が起動するときに前記メモリに故障を表す情報が記憶されていなければ、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子を導通させて前記画像形成装置の起動処理を行うことを特徴とする、
請求項3記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記エンジン制御基板は、前記負荷が画像の形成を行っているときに前記負荷の動作の異常を検知すると、前記第2スイッチ素子を導通させ、前記第2スイッチ素子から出力される電源電圧の電圧値に基づいて前記第2スイッチ素子がオープン故障であるか否かを判定することを特徴とする、
請求項1~6のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記エンジン制御基板は、前記画像形成装置の電源がオフされるときに、前記第2スイッチ素子の故障診断として前記第1スイッチ素子を導通させ、かつ前記第2スイッチ素子を遮断させて、前記第2スイッチ素子から出力される電源電圧の電圧値に基づいて前記第2スイッチ素子がショート故障であるか否かを判定することを特徴とする、
請求項1~7のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記エンジン制御基板は、前記画像形成装置の電源がオフされるときに、前記第1スイッチ素子の故障診断として前記第1スイッチ素子を遮断させ、前記第1スイッチ素子から出力される電源電圧の電圧値に基づいて前記第1スイッチ素子がショート故障であるか否かを判定することを特徴とする、
請求項1~8のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記エンジン制御基板は、前記画像形成装置の電源がオフされるときに、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子のいずれかが故障していれば、前記メモリに故障していることを表す情報を記憶することを特徴とする、
請求項3を引用する請求項8または請求項3を引用する請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記エンジン制御基板は、前記画像形成装置の電源がオフされるときに、前記第1スイッチ素子及び前記第2スイッチ素子が正常であれば、前記メモリに故障していないことを表す情報を記憶することを特徴とする、
請求項10記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、動作の異常が発生したときに異常の原因となった故障箇所を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、装置の安全性の向上のために、起動時に電源や電源の供給/遮断を切り替えるスイッチ素子の故障診断を行う。スイッチ素子には、FET(Field Effect Transistor)が用いられることが多いため、以下、スイッチ素子をFETとして説明する。FETは、画像形成装置内の各部への電源電圧の供給を制御するために、各部への電源系統毎に複数設けられる。画像形成装置は、各FETのオン/オフを制御して、各電源系統への電源電圧の供給が正常に行われていることを確認する故障診断を行う。具体的には、画像形成装置は、起動時に、FETの入力部に電源電圧が供給されているか、FETのオン時にFETの出力部に所定の電圧が出力されているか、FETのオフ時にFETの出力部への電源電圧が遮断されているか、によりFETの故障診断を行う。画像形成装置は、動作中にも電源回路及び負荷の動作状態を監視しており、動作状態に異常が生じた場合に故障診断を行って、故障箇所を特定している。
【0003】
画像形成装置は、一般的に、2種類以上の電源電圧を使用して、内部の構成部品を駆動する。例えば、画像形成装置の動作を制御するコントローラは、マイクロプロセッサや信号処理を行うIC(Integrated Circuit)等から構成されており、電源電圧として低電圧(例えば3.3[V])を必要とする。感光ドラムや給紙機構を駆動するモータ等は、電源電圧としてより高い電圧(例えば24[V])を必要とする。画像形成装置は、コントローラへは常に電源を供給する。しかし、画像形成装置は、待機電力の削減のために、感光ドラムや給紙機構等の画像形成を行うための構成部品に対しては、待機時に電源電圧を遮断する。
【0004】
特許文献1は、異常発生箇所の特定と最適な電力遮断とを行う電源装置を開示する。この電源装置は、電源回路及び負荷に、漏電、電圧、電流異常、温度異常等を検出する動作検出部を備える。電源装置は、動作検出部が異常を検出した場合に、異常判定処理を実行する。異常判定処理では、電源装置、電源回路、負荷への電圧の供給を切り替えることで、異常の発生原因となった故障箇所が特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像形成装置は、紙詰まり等の異常発生時に、ユーザにより詰まったシートが取り除かれる。その際には、構成部品への電源電圧の供給が遮断される。そのために、画像形成装置は、シートを取り除く際に開放される前ドアの開閉に連動して開閉するインターロックスイッチを備える。また、画像形成装置は、感光ドラムや給紙機構等の画像形成を行うための構成部品のそれぞれに対して、別の電源系統により電源電圧を供給する。画像形成装置は、待機時に電源電圧を電源系統毎に遮断できるように、各電源系統にFETを備える。このような構成では、故障特定のために、起動時にすべてのFETのオン/オフを制御して故障診断を行うと、起動に要する時間(起動時間)が長くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電源系統にスイッチ素子を複数設けた構成であっても、起動時間を短縮しつつ故障診断を行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、電源電圧を生成する電源回路を有する電源基板と、前記電源基板から供給される前記電源電圧が複数に分配され、分配された電源電圧毎に電源供給と遮断を行う複数のスイッチ素子と、複数に分配した電源電圧により画像を形成するための複数の負荷を駆動するドライバ回路とを有するドライバ基板と、前記ドライバ基板の動作を制御するエンジン制御基板と、を備え、前記複数のスイッチ素子は、前記電源基板から前記電源電圧が供給される第1スイッチ素子と、前記第1スイッチ素子から出力される電源電圧が分配されて供給される第2スイッチ素子とを含み、前記エンジン制御基板は、電源スイッチの操作により画像形成装置が起動するときに、前記第1スイッチ素子がオンになるように制御されても導通状態にならないオープン故障が生じているか否かを判定する故障診断を行うが、前記第2スイッチ素子に前記オープン故障が生じているか否かの判定を行わず、その後、前記複数の負荷のいずれかの動作に異常が生じた場合に前記第2スイッチ素子に前記オープン故障が生じているか否かを判定する故障診断を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電源系統にスイッチ素子を複数設けた構成であっても、起動時に第1スイッチ素子のみの故障診断を行うことで、起動時間を短縮しつつ故障診断を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図6】FETの故障特定処理を表すフローチャート。
【
図7】FETの故障特定処理を表すフローチャート。
【
図8】FETの故障特定処理を表すフローチャート。
【
図9】FETの故障特定処理を表すフローチャート。
【
図10】FETの故障特定処理を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(画像形成装置)
図1は、本実施形態の画像形成装置の構成図である。画像形成装置1は、画像読取部2、画像形成部3、及び操作部1000を備えている。画像読取部2は、原稿Dから画像を読み取る。画像形成部3は、シートSに画像を形成する。操作部1000は、キーやタッチパネル等の入力装置と、ディスプレイ等の出力装置とを備えるユーザインタフェースである。画像形成装置1は、画像読取部2で読み取った原稿画像を画像形成部3によりシートSに形成する複写機能を備える。
【0013】
画像読取部2は、上部に、透明ガラス板からなる原稿台4及び原稿圧着板5が設けられる。原稿台4は、原稿Dが、画像面を下向きにして所定の位置に載置される。原稿圧着板5は、原稿台4に載置された原稿Dを押圧固定する。原稿台4の下側には、原稿Dを照明するランプ6と、画像処理ユニット7と、照明した原稿Dからの反射光を画像処理ユニット7に導くための反射ミラー8、9、10からなる光学系と、が設けられている。ランプ6及び反射ミラー8、9、10は所定の速度で移動して原稿Dを走査する。画像処理ユニット7は、受光する原稿Dからの反射光に基づいて原稿画像を表す画像データを生成する。
【0014】
画像形成部3は、画像形成を行うために、感光ドラム11、帯電ローラ12、ロータリ現像ユニット13、中間転写ベルト14、転写ローラ15、クリーナ16、レーザユニット17、及び定着器19等の構成部品を備えている。感光ドラム11は、ドラム形状の感光体であり、帯電ローラ12により表面が一様に帯電される。レーザユニット17は、画像読取部2から画像データを取得し、この画像データに応じて発光制御されたレーザ光を、表面が帯電された感光ドラム11に照射する。これにより感光ドラムの表面に画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0015】
ロータリ現像ユニット13は、感光ドラム11の表面に形成された静電潜像にマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色のトナーを付着させて、感光ドラム11の表面にトナー像を形成する。ロータリ現像ユニット13は、回転現像方式の現像器である。ロータリ現像ユニット13は、現像器13K、現像器13Y、現像器13M、及び現像器13Cを有し、モータ(ロータリモータ)により回転される。現像器13Kは、ブラックのトナーによる現像を行う。現像器13Yは、イエローのトナーによる現像を行う。現像器13Mは、マゼンタのトナーによる現像を行う。現像器13Cは、シアンのトナーによる現像を行う。
感光ドラム11上にモノクロのトナー像を形成する場合、ロータリ現像ユニット13は、感光ドラム11に近接する現像位置に現像器13Kを回転移動させて現像を行う。フルカラーのトナー像を形成する場合、ロータリ現像ユニット13は、回転して、現像位置に各現像器13Y、13M、13C、13Kを順に配置させ、順次各色のトナーによる現像を行う。
【0016】
ロータリ現像ユニット13によって感光ドラム11に形成されたトナー像は、転写体である中間転写ベルト14に転写される。転写後に感光ドラム11に残留するトナーは、クリーナ16により除去される。フルカラーのトナー像を形成する場合、トナー像は、一色ずつ感光ドラム11から中間転写ベルト14に重畳転写される。つまりイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順に、一色ずつ中間転写ベルト14にトナー像が転写される。クリーナ16は、転写の度に感光ドラム11に残留するトナーを除去する。このように、一色ずつ順にトナー像が転写されることで、中間転写ベルト14にフルカラーのトナー像が形成される。
【0017】
中間転写ベルト14に転写されたトナー像は、転写ローラ15によりシートSに転写される。シートSは、用紙カセット18又は手差しトレイ50から転写ローラ15へ給送される。画像形成装置1は、シートSを搬送経路に給送するためのローラ等の給送機構を備える。
【0018】
定着器19は、シートSの搬送方向で転写ローラ15の下流側に設けられる。定着器19は、シートSに、転写されたトナー像を定着させる。トナー像が定着されたシートSは、定着器19から排出ローラ対21を介して画像形成装置1の機外に排出される。
【0019】
画像形成装置1は、筐体の内部にある感光ドラム11やロータリ現像ユニット13等の構成部品にアクセスするために、開閉可能な前ドア22を備える。画像形成装置1内の上記の各構成部品の修理や点検、消耗品の交換の際には、前ドア22が開放される。画像形成装置1は、前ドア22の開閉を検知するための前ドア開閉センサ801を備える。
【0020】
画像形成装置1は、各用紙カセット18の開閉を検知するための用紙カセット開閉センサ205及び用紙カセット18内のシートSのサイズを検知する不図示の用紙サイズ検知センサを備える。用紙カセット18が閉じられると、用紙カセット開閉センサ205がこれを検知する。用紙サイズ検知センサは、用紙カセット18が閉じられたことを用紙カセット開閉センサ205が検知すると、この検知結果に基づいて自動的にシートSのサイズを検知する。
【0021】
画像形成装置1は、手差しトレイ50上のシートSの有無を検知する手差し用紙センサ201を備える。手差し用紙センサ201が手差しトレイ50にシートSが載置されたことを検知すると、画像形成装置1は、載置されたシートSのサイズ設定をユーザに促す画面を操作部1000に表示する。ユーザが画面の指示に従ってシートサイズを設定することで、画像形成装置1は、手差しトレイ50上のシートSのサイズを認識することができる。
なお、画像形成装置1の構成は、上述した構成に限らず、例えば、複数の色成分に対応して、複数の感光ドラムが転写ベルトの移動方向に沿って設けられる周知の構成の画像形成装置であってもよい。
【0022】
(制御系統)
図2は、画像形成装置1の動作を制御する制御系統の説明図である。制御系統は、電源基板200、コントローラ基板210、エンジン制御基板220、及びドライバ基板230の4種類の基板を備える。
【0023】
電源基板200は、外部の商用電源から供給される電力から2種類の電源電圧(本実施形態では+12[V]、+24[V])を生成する電源回路を有し、生成した2種類の電源電圧を出力する。+12[V]の電源電圧(以下、「+12V電源電圧」という。)は、コントローラ基板210及びエンジン制御基板220へ供給される。+24[V]の電源電圧(以下、「+24V電源電圧」という。)は、ドライバ基板230へ供給される。
【0024】
コントローラ基板210は、DCDCコンバータ211、CPU(Central Processing Unit)212、及びNW通信部213を備える。DCDCコンバータ211は、電源基板200から供給される+12V電源電圧を+3.3[V]の電圧に変圧する。DCDCコンバータ211で生成された+3.3[V]の電圧は、CPU212を含むコントローラ基板210内部及び外部の構成部品の動作に用いられる。CPU212は、ROM(Read Only Memory)214及びRAM(Random Access Memory)215が接続される。CPU212は、ROM214に格納されたコンピュータプログラムを実行することで、エンジン制御基板220の動作を制御する。その際、RAM215は、ワークメモリとして用いられる。NW通信部213は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介したコールセンタ等の外部装置との通信を制御する通信インタフェースである。CPU212は、NW通信部213を介して外部装置との間で通信を行う。CPU212は、操作部1000に接続される。CPU212は、操作部1000にメッセージ等を表示させる。また、CPU212は、操作部1000から指示等の入力を受け付ける。
【0025】
エンジン制御基板220は、DCDCコンバータ221、CPU222、ROM223、及びRAM224を備える。DCDCコンバータ221は、電源基板200から供給される+12V電源電圧を+3.3[V]の電圧に変圧する。DCDCコンバータ221で生成された+3.3[V]の電圧は、CPU222及びドライバ基板230の動作に用いられる。CPU222は、ROM223に格納されたコンピュータプログラムを実行することで、各構成部品の動作を制御して、画像形成に関する様々な制御シーケンスを行う。その際、RAM224は、ワークメモリとして用いられ、一時的又は恒久的に保存することが必要な書き換え可能なデータを格納する。CPU222は、ドライバ基板230の動作を制御する。RAM224は、異常の発生時にその異常に関する情報を記憶する。
【0026】
ドライバ基板230は、電源基板200から供給される+24V電源電圧を複数の電源系統(本実施形態では3つ)に分配しているために、FET232、233、234が設けられている。ドライバ基板230は、負荷の制御を行うASIC(Application Specific Integrated Circuit)231を備える。また、ドライバ基板230は、モータ駆動部236、238、検知部237、第1高電圧駆動部240、第2高電圧駆動部239、及びヒューズFUSE1~FUSE4を備える。モータ駆動部236、238、第1高電圧駆動部240、及び第2高電圧駆動部239は、本実施形態のドライバ回路である。
【0027】
FET232、233、234は、スイッチ素子であり、電源基板200から供給される+24V電源電圧を各電源系統への供給と遮断を切り替える。FET232、234、235は、多段構成になっており、電源基板200から見てFET232を一段目とし、その後段にFET234、235が設けられる。FET232、234、235は、分配される電源電圧毎に設けられる。
【0028】
具体的には、FET232は、導通状態では、+24V電源電圧が印加されて電源電圧としての+24V_A電圧を出力する。FET233は、導通状態では、+24V_A電圧が印加されて電源電圧としての+24V_B電圧を出力する。FET234は、導通状態では、+24V_A電圧が印加されて電源電圧としての+24V_C電圧を出力する。なお、FET232とFET234との間には、インターロックスイッチ(IL-SW)235が設けられる。IL-SW235は、画像形成装置1に設けられる前ドア22が開放されたときに、即座にFET232からFET234への+24V_A電圧の供給を遮断する。
【0029】
電源基板200から電圧が正常に供給されているか否かを判定できるように、+24V電源電圧はASIC231の定格範囲に収まるように分圧される。分圧された+24V電源電圧は+24V電源検知信号としてASIC231のアナログポートに入力される。FET232から+24V_A電圧が正常に出力されているか否かを判定できるように、+24V_A電圧はASIC231の定格範囲に収まるように分圧される。分圧された+24V_A電圧は+24V_A電源検知信号としてASIC231のアナログポートに入力される。FET233から+24V_B電圧が正常に出力されているか否かを判定できるように、+24V_B電圧はASIC231の定格範囲に収まるように分圧される。分圧された+24V_B電圧は+24V_B電源検知信号としてASIC231のアナログポートに入力される。FET234から+24V_C電圧が正常に出力されているか否かを判定できるように、+24V_C電圧はASIC231の定格範囲に収まるように分圧される。分圧された+24V_C電圧は+24V_C電源検知信号としてASIC231のアナログポートに入力される。なお、+24V電源電圧が正常に供給されているか否かを判定するための構成は、これに限らない。例えば、+24V電源電圧をトランジスタ等の検知回路によりデジタル値に変換して、ASIC231のデジタルポートに入力するようにしてもよい。
【0030】
ドライバ基板230には、上述の通り、第1高電圧駆動部240、第2高電圧駆動部239、及び所定数のモータ駆動部236、238が実装される。モータ駆動部236、238は、ロータリ現像ユニット13を回転させるモータ、シート搬送に用いられるモータ等の駆動するための 第1高電圧駆動部240は静電潜像形成のための高電圧を生成する第1高電圧発生部2401を駆動する。第2高電圧駆動部239は中間転写ベルト14上のトナー像をシートSに転写するための高電圧を発生する第2高電圧発生部2391を駆動する。
【0031】
+24V_A電圧は、定着器19の定着ローラ対を回転させる定着モータ2361を駆動するためのモータ駆動部236に、ヒューズFUSE1を介して供給される。+24V_B電圧は、レーザユニット17内部に設けられる負荷であるポリゴンモータ2381を駆動するためのモータ駆動部238に、ヒューズFUSE2を介して供給される。また+24V_B電圧は、第1高電圧駆動部240に、ヒューズFUSE4を介して供給される。+24V_C電圧は、第2高電圧駆動部239に、ヒューズFUSE3を介して供給される。なお、画像形成装置1には、静電潜像をトナーで現像するための高電圧を発生する高圧発生部及びその駆動のための駆動部や上述したモータ以外の複数のモータ及びそれらの駆動部も設けられているが、
図2では省略されている。
【0032】
ヒューズFUSE1~FUSE4は、ドライバ基板230に接続された負荷が原因で+24V電源電圧の電源系統に異常が発生した場合に、上流の電源基板200まで故障を拡大させないように保護するために設けられる保護素子である。ドライバ基板230は、その他にも、
図1で述べたシートサイズを検知するためのセンサや、シートの有無を検知するためのセンサの検知結果を取得するための所定数の検知部が実装される。
図2の例では、ドライバ基板230は、検知部237を介して回転検知センサ2371の検知結果を取得できるようになっている。回転検知センサ2371は、レーザユニット17に内蔵された不図示のポリゴンミラーの回転を検知する。ポリゴンミラーは、ポリゴンモータ2381により回転駆動される。
【0033】
ドライバ基板230の各FET232、233、234のオン/オフの制御は、エンジン制御基板220のCPU222により行われる。FET232は、CPU222から送信されるRMT_A信号によりオン/オフが制御される。FET232は、RMT_A信号により、オンされることで+24V_A電圧を出力し、オフされることで+24V_A電圧の出力を遮断する。FET233、234は、CPU222から送信されるRMT_BC信号或いはメイン電源スイッチ(不図示)によりオン/オフが制御される。FET233は、RMT_BC信号或いはメイン電源スイッチにより、オンされることで+24V_B電圧を出力し、オフされることで+24V_B電圧の出力を遮断する。FET234は、RMT_BC信号或いはメイン電源スイッチにより、オンされることで+24V_C電圧を出力し、オフされることで+24V_C電圧の出力を遮断する。
【0034】
+24V電源電圧が3系統の電源系統に分配される理由は、2つある。1つは、画像形成装置1の動作状態に合わせて必要な負荷以外への電源電圧の供給を遮断して、消費電力を抑制するためである。もう1つは、電源オフ時や異常発生時に電源を遮断する場合に、各負荷に、その特性に応じた動作を行わせるためである。
【0035】
例えば、+24V_A電圧で動作される定着モータ2361は、正回転では定着ローラ対の回転駆動に用いられるが、逆回転では定着ローラ対の当接や離間の制御に用いられる。定着ローラ対が長時間当接したまま放置される場合、定着ローラ対に変形が生じ、画像にスジが発生することがある。そのためにモータ駆動部236は、電源オフ時に即座に動作を停止せず、離間動作により定着ローラ対を離間させた後に停止するようになっている。
【0036】
+24V_B電圧及び+24V_C電圧で動作される負荷は、電源オフ時に即座に動作を停止するようになっている。+24V_B電圧で動作されるポリゴンモータ2381は、制御異常等により停止しなくなった場合に、メイン電源スイッチの操作により即座に動作を停止させる必要がある。そのためにポリゴンモータ2381は、電源オフ時に即座に+24V_B電圧の供給が遮断される。同様に、+24V_B電圧で動作される第1高電圧発生部2401は、制御異常等が発生した場合には、メイン電源スイッチの操作により即座に出力を停止させる必要がある。そのために第1高電圧発生部2401は、電源オフ時に即座に+24V_B電圧の供給が遮断される。+24V_C電圧で動作される第2高電圧発生部2391を駆動する第2高電圧駆動部239は、紙詰まり等でシートSを取り除く際に、前ドア22が開放されることで即座に、IL-SW235により+24V_C電圧の供給が遮断される。
【0037】
ASIC231は、モータ駆動部236を制御することにより定着モータ2361を駆動制御する。ASIC231は、モータ駆動部238を制御することによりポリゴンモータ2381を駆動制御する。ポリゴンモータ2381により回転駆動されるポリゴンミラーの回転は、回転検知センサ2371により検知される。ASIC231は、回転検知センサ2371による検知結果を、検知部237を介して取得する。ASIC231は、第2高電圧駆動部239を制御することにより第2高電圧発生部2391を駆動制御する。第2高電圧発生部2391は、これによりトナー像転写のための高電圧の出力が制御される。
【0038】
ASIC231は、エンジン制御基板220のCPU222からの指示により、各負荷を駆動するタイミングを制御する。エンジン制御基板220のCPU222は、ASIC231が取得する信号の状態を監視する。エンジン制御基板220のCPU222は、コントローラ基板210のCPU212と通信して、CPU212と協働で制御系統の動作を制御する。
【0039】
コントローラ基板210のCPU212は、操作部1000や通信回線を介してユーザによる画像形成の開始指示を取得すると、エンジン制御基板220のCPU222に画像形成の開始指示があったことを通知する。画像形成の開始指示を受信したエンジン制御基板220のCPU222は、ドライバ基板230の動作を制御してシートSへの画像形成を行う。
【0040】
エンジン制御基板220のCPU222は、ドライバ基板230で検知された異常に関する情報をRAM224に保存する。また、CPU222は、コントローラ基板210のCPU212に異常の発生を通知する。コントローラ基板210のCPU212は、異常の発生が通知されると、操作部1000等によりユーザやサービスマンに異常の発生を報知する。また、CPU212は、NW通信部213により通信回線を介してコールセンタへ異常の発生を報知する。このように、画像形成装置1の設置場所にいるユーザやサービスマンの他に、コールセンタにいるサービスマンに対して、異常の発生が報知される。
【0041】
(画像形成処理)
図3は、画像形成装置1による画像形成時の処理(画像形成処理)を表すフローチャートである。コントローラ基板210のCPU212は、操作部1000や通信回線を介して画像形成の開始指示を取得するまで待機状態にある(S900:N)。画像形成開始の指示を受け付けると(S900:Y)、CPU212は、エンジン制御基板220のCPU222に画像形成動作の実行を指示する。エンジン制御基板220のCPU222は、この指示に応じて画像形成動作を開始する。ドライバ基板230のASIC231は、画像形成動作が終了するまでの間、各構成部品の異常によるエラーの発生を監視する(S901:N、904:N)。ここでは、ASIC231は、画像形成装置1内に設けられる各種センサの検知結果により負荷のエラーの発生を監視する。画像形成動作が終了すると(S904:Y)、CPU212は
図3に示す画像形成処理を終了する。
【0042】
画像形成動作中に負荷の動作のエラーが発生した場合(S901:Y)、ASIC231は、エンジン制御基板220のCPU222に異常の発生を通知する。本実施形態では、ポリゴンモータ2381を回転させる制御を開始した後に、所定時間経過しても回転検知センサ2371がポリゴンミラーの回転を検知しない場合に、異常(エラー)の発生が検知される。エンジン制御基板220のCPU222は、ASIC231から異常の発生の通知を取得すると、画像形成動作を中止する(S902)。エンジン制御基板220のCPU222は、異常の原因となった故障箇所の特定処理を行う(S903)。故障箇所の特定処理が終了すると、CPU212は画像形成処理を終了する。その他にも、画像形成装置1の起動時の前多回転動作(準備動作)時等に異常が発生して故障箇所の特定処理が行われる場合もあるが、ここではその説明は省略する。
【0043】
(故障特定処理)
図4は、
図3のS903の故障箇所の特定処理を表すフローチャートである。この処理は、+24V_B電圧が供給される負荷の動作に異常が発生した場合の故障箇所の特定処理を表す。この処理は、負荷の動作の異常が検知された際に、+24_V電源電圧の電源系統における異常の有無を判定し、異常が有る場合に該異常の原因となった故障箇所を特定する処理である。本実施形態では、負荷であるポリゴンモータ2381の動作の異常(エラー)に応じて、この処理が実行される場合について説明する。
【0044】
エンジン制御基板220のCPU222は、ドライバ基板230のASIC231を用いて+24V_B電圧の電圧値と所定の第1閾値th1とを比較する(S300)。ここでは、第1閾値th1を18[V]とする。+24V_B電圧の電圧値が第1閾値th1以上である場合(S300:Y)、CPU222は、+24V電源電圧の電源系統が正常であると判定する(S304)。この場合、CPU222は、該電源系統が接続されて動作する負荷に異常の原因があると判定し、故障した負荷を特定する負荷故障特定処理を実行する(S305)。負荷故障特定処理の詳細な説明は省略する。
【0045】
+24V_B電圧の電圧値が第1閾値th1未満である場合(S300:N)、CPU222は、+24V電源電圧の電源系統に異常の原因があると判定する。CPU222は、ASIC231を用いて+24V電源電圧の電圧値と所定の第2閾値th2とを比較する(S301)。ここでは、第2閾値th2を第1閾値th1と同じ18[V]とする。
【0046】
+24V電源電圧の電圧値が第2閾値th2以上である場合(S301:Y)、CPU222は、電源基板200から+24V電源電圧が正常に供給されていると判定する。これによりCPU222は、+24V電源電圧の電源系統において異常の原因がドライバ基板230に実装されるFET233から出力される+24V_B電圧であると判定する。そのためにCPU222は、ドライバ基板230が異常の原因となった故障箇所であると判定する(S303)。
【0047】
+24V電源電圧の電圧値が第2閾値th2未満である場合(S301:N)、CPU222は、電源基板200から+24V電源電圧が正常に供給されていないと判定する。これによりCPU222は、+24V電源電圧の電源系統において異常の原因が電源基板200から出力される+24V電源電圧であると判定する。そのためにCPU222は、電源基板200が異常の原因となった故障箇所であると判定する(S302)。
【0048】
CPU222は、S302、S303、S305のいずれかの処理により判定した故障箇所をコントローラ基板210のCPU212に通知する。CPU212は、該通知に応じて、故障箇所を報知する(S306)。CPU212は、例えば故障箇所を操作部1000に表示することで報知する。
図5は、操作部1000に表示される故障箇所の例示図である。
図5は、電源基板200が故障した場合の表示を例示し、電源基板200の交換を促すメッセージを表示する。また、CPU212は、NW通信部213により通信回線を介してサポートセンサへ故障箇所を報知する。故障箇所の報知により、故障箇所の特定処理が終了する。
【0049】
以上の処理において、第1閾値th1と第2閾値th2との関係は、以下のようになる。「th1
< th2」の場合、例えば、電源基板200から供給される電源電圧(+24V電源電圧)の範囲が第1閾値th1~第2閾値th2であれば、S301の処理で+24V電源電圧が第2閾値th2未満になる。そのために、電源基板200の電源供給が異常の原因であると判定されなければならない。しかし、それ以前に行われるS300の処理で+24V_B電圧が第1閾値th1以上であると判定され、電源系統が正常であると誤診断される可能性がある。そのために第1閾値th1と第2閾値th2との関係は、第1閾値th1が第2閾値th2以上(th2≦th1)であることが好ましい。また、
図2の構成において、電源の状態をトランジスタ等の検知回路で検知する場合も、第1閾値th1及び第2閾値th2の関係が上記の関係となるように設計することが好ましい。
【0050】
(FETの故障特定処理)
図6、
図7、
図8は、ドライバ基板230のFET232、233、234の故障特定処理を表すフローチャートである。この処理は、画像形成装置1の電源オン時(起動時)、動作中、電源オフ時(停止時)の各状態における装置の安全性を確保するために行われる。
【0051】
図6は、画像形成装置1の電源がオンされるときの処理である。この処理は、メイン電源スイッチが操作されて画像形成装置1が電源オンになることで実行される。
エンジン制御基板220のCPU222は、画像形成装置1の電源がオンになると、各FET232、233、234をオン(導通状態)するためのRMT_A信号及びRMT_BC信号を出力する(S400)。CPU222は、FET232、233、234の切り替えのために所定時間待機(例えば300ミリ秒待機)した後に、ASIC231により、FET232から+24V_A電圧が出力されているか否かを判定する(S401)。ASIC231は、+24V_A電圧の電圧値が所定の閾値電圧th以上であるか否かにより、+24V_A電圧が出力されているか否かを判定する。+24V_A電圧が出力されていない場合(S401:N)、CPU222は、FET232がオンになるように制御されているにもかかわらず+24V_A電圧が出力されないために、FET232がオープン故障していると判定して処理を終了する(S402)。
【0052】
+24V_A電圧が出力されている場合(S401:Y)、CPU222は、FET故障フラグを確認する(S403)。FET故障フラグは、エンジン制御基板220のRAM224に保存されており、CPU222により参照される。FET故障フラグは、FET232、233、234のいずれかが故障しているか否かを表す情報であり、FET232、233、234のいずれかが故障していればオン状態になる。なお、故障フラグはFET毎に個別に設けられてもよい。FET故障フラグは、装置の安全性を高めるために、工場出荷時の初期値がオン(FETが故障している状態)であることが好適である。初めて画像形成装置1が起動された後は、故障が検出されなければ、FET故障フラグはオフされる。FET故障フラグがオフの場合(S403:OFF)、CPU222は、画像形成装置1の起動処理を行う。これにより画像形成装置1は、メイン電源スイッチの操作に応じて高速に起動することになる。
【0053】
FET故障フラグがオンである場合(S403:ON)、CPU222は、各FET232、233、234をオフ(遮断状態)するためのRMT_A信号及びRMT_BC信号を出力する(S404)。CPU222は、FET232、233、234の切り替えのために所定時間待機(例えば500ミリ秒待機)した後に、ASIC231により、FET232から+24V_A電圧が出力されているか否かを判定する(S405)。ASIC231は、+24V_A電圧の電圧値が所定の閾値電圧th以上であるか否かにより、+24V_A電圧が出力されているか否かを判定する。+24V_A電圧が出力されている場合(S405:Y)、CPU222は、FET232がオフになるように制御されているにもかかわらず+24V_A電圧が出力されているために、FET232がショート故障していると判定して処理を終了する(S411)。
【0054】
+24V_A電圧が出力されていない場合(S405:N)、CPU222は、FET232が正常に動作していると判定する。この場合、CPU222は、FET233、234の前段に設けられるFET232をオンするためのRMT_A信号を出力する(S406)。これにより、FET232からFET233、234に+24V_A電圧が供給される。CPU222は、FET232の切り替えのために所定時間待機(例えば300ミリ秒待機)した後に、ASIC231により、FET233から+24V_B電圧が出力されているか否かを判定する(S407)。ASIC231は、+24V_B電圧の電圧値が所定の閾値電圧th以上であるか否かにより、+24V_B電圧が出力されているか否かを判定する。+24V_B電圧が出力されている場合(S407:Y)、CPU222は、FET233がオフになるように制御されているにもかかわらず+24V_B電圧が出力されているために、FET233がショート故障していると判定して処理を終了する(S411)。
【0055】
+24V_B電圧が出力されていない場合(S407:N)、CPU222は、FET233が正常に動作していると判定する。この場合、CPU222は、ASIC231により、FET234から+24V_C電圧が出力されているか否かを判定する(S408)。ASIC231は、+24V_C電圧の電圧値が所定の閾値電圧th以上であるか否かにより、+24V_C電圧が出力されているか否かを判定する。+24V_C電圧が出力されている場合(S408:Y)、CPU222は、FET234がオフになるように制御されているにもかかわらず+24V_C電圧が出力されているために、FET234がショート故障していると判定して処理を終了する(S411)。
【0056】
+24V_C電圧が出力されていない場合(S408:N)、CPU222は、FET234が正常に動作していると判定する。この場合、CPU222は、FET232の後段に設けられるFET233、234をオンするためのRMT_BC信号を出力する(S409)。これによりすべてのFET232、233、234がオンになり、+24V_A電圧、+24V_B電圧、及び+24V_C電圧がそれぞれの電源系統を介して、対応する負荷へ供給開始される。CPU222は、FET233、234の切り替えのために所定時間待機(例えば300ミリ秒待機)した後に、FET故障フラグをクリアする(S410)。即ち、CPU222は、RAM224に保存されるFET故障フラグのデータをオフに書き換える。CPU222は、FET故障フラグの書き換え後に画像形成装置1の起動処理を行う。
【0057】
以上のような起動時の処理では、CPU222は、S402の処理やS411の処理でFETの故障を判定すると、
図4のS306と同様に故障箇所を報知する。これによりユーザやサポートセンタに故障したFETが報知される。画像形成装置1は、故障したFETが交換(ドライバ基板230が交換)されるまでは、メイン電源スイッチがオン/オフされても故障を検知する。画像形成装置1は、故障したFETが交換されると、S400以降の処理を再度行い、FETに故障がなければ起動処理を行う。
【0058】
図7は、画像形成装置1の動作中の処理である。この処理は、
図4の故障箇所の特定処理でドライバ基板230が故障していると判定された場合(S303)に行われる。FET232、233、234は、すべてオンである。
【0059】
エンジン制御基板220のCPU222は、画像形成装置1が起動処理を完了して画像形成の準備が整った状態(Ready状態)のときに(S420)、ドライバ基板230が故障していると判定されると、この処理を開始する。CPU222は、ASIC231により、FET233から+24V_B電圧が出力されているか否かを判定する(S421)。ASIC231は、+24V_B電圧の電圧値が所定の閾値電圧th以上であるか否かにより、+24V_B電圧が出力されているか否かを判定する。+24V_B電圧が出力されていない場合(S421:N)、CPU222は、FET233がオンになるように制御されているにもかかわらず+24V_B電圧が出力されていないために、FET233がオープン故障していると判定する。この場合、CPU222は、第1高電圧駆動部240により駆動されて静電潜像形成のための高電圧を生成する第1高電圧発生部2401にエラーが発生していると判定する(S422)。CPU222は、
図4のS306と同様に第1高電圧発生部2401の故障を報知する。これによりユーザやサポートセンタに第1高電圧発生部2401が故障していることが報知される。サービスマンは、この報知に応じて第1高電圧発生部2401の基板を交換することになる。
【0060】
+24V_B電圧が出力されている場合(S421:N)、CPU222は、ASIC231により、FET234から+24V_C電圧が出力されているか否かを判定する(S423)。ASIC231は、+24V_C電圧の電圧値が所定の閾値電圧th以上であるか否かにより、+24V_C電圧が出力されているか否かを判定する。+24V_C電圧が出力されている場合(S423:Y)、CPU222は、FET233、234の電源系統が正常であると判定して、この処理を終了する。
【0061】
+24V_C電圧が出力されていない場合(S423:N)、CPU222は、前ドア22が開放されていると判定する(S424)。これは、FET234が起動時の処理で正常に動作していることが確認された上で、+24V_C電圧が出力されていないために、FET234に+24V_A電圧が供給されていないと推定されるためである。前ドア22が開放されていると判定した場合、CPU222は、コントローラ基板210のCPU212により操作部1000に前ドア22を閉じることを促す指示を表示する。前ドア22の開閉は、前ドア開閉センサ801により検知される。CPU222は、前ドア開閉センサ801の検知結果により、前ドア22が所定時間経過(本実施形態では10分)しても開放されたままであるか否かを確認する(S425、S427)。前ドア22が所定時間経過する前に閉じられた場合(S425:N、S427:Y)、CPU222は、この処理を終了する。
【0062】
前ドア22が所定時間経過しても開放されたままである場合(S425:Y)、CPU222は、IL-SW235が故障していると判定する(S426)。また、このときCPU222は、FET234がオンに制御されているにもかかわらず+24V_C電圧が出力されていないために、FET234がオープン故障していると判定する。CPU222は、
図4のS306と同様にIL-SW235の故障を報知する。これによりユーザやサポートセンタにIL-SW235が故障していることが報知される。サービスマンは、この報知に応じてIL-SW235の基板を交換することになる。
【0063】
図8は、画像形成装置1の電源がオフされるときの処理である。この処理は、ユーザによりメイン電源スイッチが操作されて電源オフになるときや、画像形成の指示等が所定時間以上入力されずにスリープモード(省電力モード)に移行する際に行われる。
【0064】
エンジン制御基板220のCPU222は、電源オフ時或いはスリープモード移行時に、FET232の後段のFET233、234をオフするためのRMT_BC信号を出力する(S430、S431)。CPU222は、FET233、234の切り替えのために所定時間待機(例えば300ミリ秒待機)した後に、ASIC231により、FET233から+24V_B電圧が出力されているか否かを判定する(S432)。ASIC231は、+24V_B電圧の電圧値が所定の閾値電圧th以上であるか否かにより、+24V_B電圧が出力されているか否かを判定する。
【0065】
+24V_B電圧が出力されている場合(S432:Y)、CPU222は、FET233がオフになるように制御されているにもかかわらず+24V_B電圧が出力されているために、FET233がショート故障していると判定する。この場合、CPU222は、FET故障フラグをオンに設定する(S436)。即ち、CPU222は、RAM224に保存されるFET故障フラグを、故障していることを表すオンに書き換える。CPU222は、FET故障フラグの書き換え後に画像形成装置1の終了処理或いはスリープ移行処理を行う。
【0066】
+24V_B電圧が出力されていない場合(S432:N)、CPU222は、ASIC231により、FET234から+24V_C電圧が出力されているか否かを判定する(S433)。ASIC231は、+24V_C電圧の電圧値が所定の閾値電圧th以上であるか否かにより、+24V_C電圧が出力されているか否かを判定する。+24V_C電圧が出力されている場合(S433:Y)、CPU222は、FET234がオフになるように制御されているにもかかわらず+24V_C電圧が出力されているために、FET234がショート故障していると判定する。この場合、CPU222は、FET故障フラグをオンに設定する(S436)。即ち、CPU222は、RAM224に保存されるFET故障フラグを、故障していることを表すオンに書き換える。CPU222は、FET故障フラグの書き換え後に画像形成装置1の終了処理或いはスリープ移行処理を行う。
【0067】
+24V_C電圧が出力されていない場合(S433:N)、CPU222は、FET233、234の前段のFET232をオフするためのRMT_A信号を出力する(S434)。これにより、FET232からFET233、234への+24V_A電圧の供給が遮断される。CPU222は、FET232の切り替えのために所定時間待機(例えば500ミリ秒待機)した後に、ASIC231により、FET232から+24V_A電圧が出力されているか否かを判定する(S435)。ASIC231は、+24V_A電圧の電圧値が所定の閾値電圧th以上であるか否かにより、+24V_A電圧が出力されているか否かを判定する。
【0068】
+24V_A電圧が出力されている場合(S435:Y)、CPU222は、FET232がオフになるように制御されているにもかかわらず+24V_A電圧が出力されているために、FET232がショート故障していると判定する。この場合、CPU222は、FET故障フラグをオンに設定する(S436)。即ち、CPU222は、RAM224に保存されるFET故障フラグを、故障していることを表すオンに書き換える。CPU222は、FET故障フラグの書き換え後に画像形成装置1の終了処理或いはスリープ移行処理を行う。+24V_A電圧が出力されていない場合(S435:N)、CPU222は、すべてのFET232、233、234が正常に動作していると判定して、画像形成装置1の終了処理或いはスリープ移行処理を行う。
【0069】
(FETの故障特定処理の別の例)
図9、
図10は、ドライバ基板230のFET232、233、234の別の故障特定処理を表すフローチャートである。この処理は、画像形成装置1の電源オン時(起動時)、電源オフ時(停止時)の各状態時に装置の安全性を確保するために行われる。画像形成装置1の動作中の処理は、
図7の処理と同様である。
【0070】
図9は、電源オン時の処理である。この処理は、ユーザにより画像形成装置1のメイン電源スイッチが操作されて電源オンになることで実行される。
図6のS400、401の処理と同様に、エンジン制御基板220のCPU222は、各FET232、233、234をオンして、FET232から+24V_A電圧が正常に出力されているか否かを判定する(S500、S501)。CPU222は、+24V_A電圧が正常に出力されていない場合(S501:N)、
図6のS402の処理と同様に、FET232がオープン故障していると判定して処理を終了する(S502)。
【0071】
+24V_A電圧が正常に出力されている場合(S501:Y)、CPU222は、FET故障フラグを確認する(S503)。FET故障フラグがオフの場合(S503:OFF)、CPU222は、FET故障フラグをオンにする(S510)。即ち、CPU222は、RAM224に保存されるFET故障フラグをオンに書き換える。なお、この時点でFET故障フラグがオンになっても、電源オフ時までに各FETの故障が検知されなければ、電源オフ時にFET故障フラグがオフになる。FET故障フラグを書き換えたCPU222は、画像形成装置1の起動処理を行う。
【0072】
FET故障フラグがオンである場合(S503:ON)、CPU222は、
図6のS404~S409、S411と同様の処理により、各FET232、233、234のショート故障の判定を行う(S504~S509、S511)。CPU222は、S509の処理によりFET232の後段に設けられるFET233、234をオンし、所定時間待機(例えば300ミリ秒待機)した後に、画像形成装置1の起動処理を行う。この処理では、
図6の処理のようにFET故障フラグはクリアされず、オンに設定される。
【0073】
以上のような起動時の処理では、CPU222は、S501の処理でFET故障フラグがオフの場合、S504~S509の処理を実行しない。従って、画像形成装置1は、起動時に2段目のFET233,234の診断を行う必要がなくなり、メイン電源スイッチの操作に応じて高速に起動することになる。一方、S502の処理やS511の処理でFETの故障を判定すると、
図4のS306と同様に故障箇所を報知する。これによりユーザやサポートセンタに故障したFETが報知される。画像形成装置1は、故障したFETが交換(ドライバ基板230が交換)されるまでは、メイン電源スイッチがオン/オフされても故障を検知する。画像形成装置1は、故障したFETが交換されると、S400以降の処理を再度行い、FETに故障がなければ起動処理を行う。
【0074】
図10は、画像形成装置1の電源オフ時の処理である。この処理は、
図8の処理と同様に、ユーザによりメイン電源スイッチが操作されて電源オフになるときや、画像形成の指示等が所定時間以上入力されずにスリープモードに移行する際に行われる。
【0075】
エンジン制御基板220のCPU222は、
図8のS430~S432の処理と同様に、電源オフ時或いはスリープモード移行時に、FET233、234をオフにして、+24V_B電圧が出力されているか否かを判定する(S530~S532)。+24V_B電圧が出力されている場合(S532:Y)、CPU222は、FET233がショート故障していると判定して、画像形成装置1の終了処理或いはスリープ移行処理を行う。
【0076】
+24V_B電圧が出力されていない場合(S532:N)、CPU222は、
図8のS433の処理と同様に、FET234から+24V_C電圧が出力されているか否かを判定する(S533)。+24V_C電圧が出力されている場合(S533:Y)、CPU222は、FET234がショート故障していると判定して、画像形成装置1の終了処理或いはスリープ移行処理を行う。
【0077】
+24V_C電圧が出力されていない場合(S533:N)、CPU222は、
図6のS434、S435の処理と同様に、FET232をオフにして、+24V_A電圧が出力されているか否かを判定する(S534、S535)。+24V_A電圧が出力されている場合(S535:Y)、CPU222は、FET232がショート故障していると判定して、画像形成装置1の終了処理或いはスリープ移行処理を行う。
【0078】
+24V_A電圧が出力されていない場合(S535:N)、CPU222は、FET故障フラグをクリアする(S536)。即ち、CPU222は、RAM224に保存されるFET故障フラグを、故障していないことを表すオフに書き換える。CPU222は、FET故障フラグの書き換え後に画像形成装置1の終了処理或いはスリープ移行処理を行う。
【0079】
以上のように、画像形成装置1に異常が発生した場合、画像形成装置1は、その異常の原因が電源系統であるか否かを判定する。電源系統に異常の原因がある場合、画像形成装置1は、該異常の原因となる故障している電源系統の構成部品を特定する。そのためにサービスマンによる部品交換の作業時間が低減される。
【0080】
また、本実施形態の画像形成装置1は、+24V電源電圧が複数の電源系統に分配され、各分配先に複数のFET(スイッチ素子)が接続される構成である。このような構成では、画像形成装置1は、複数の電源系統のそれぞれが対応する負荷に電源電圧を供給する。各負荷への電源電圧の供給は、複数のスイッチ素子により、電源系統毎に独立して制御される。画像形成装置1は、各電源系統の大元である一段目のスイッチ素子のオープン故障の診断を起動時に行う。他のスイッチ素子のオープン故障の診断は、ドライバ基板230に接続される負荷に異常が発生したときに行われる故障診断処理により行われる。このようにスイッチ素子の故障診断を行うことで、画像形成装置1の起動時間の短縮と、故障箇所の特定とを両立して実現することができる。