(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】光学ユニット
(51)【国際特許分類】
F21S 41/20 20180101AFI20240422BHJP
F21S 41/675 20180101ALI20240422BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240422BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20240422BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20240422BHJP
F21V 13/12 20060101ALI20240422BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240422BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240422BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240422BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20240422BHJP
F21W 102/10 20180101ALN20240422BHJP
【FI】
F21S41/20
F21S41/675
F21S2/00 340
F21S2/00 355
F21V9/30
F21V14/04
F21V13/12 100
G02B5/20
F21Y115:30
F21Y115:10
F21Y115:15
F21W102:10
(21)【出願番号】P 2019205238
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】本橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】村上 一臣
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/164327(WO,A1)
【文献】特開2017-204453(JP,A)
【文献】特開2018-008660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/20
F21S 41/675
F21S 2/00
F21V 9/30
F21V 14/04
F21V 13/12
G02B 5/20
F21Y 115/30
F21Y 115/10
F21Y 115/15
F21W 102/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出射する光源と、
前記励起光で励起される蛍光体を含む光波長変換部材と、
前記光源から出射した励起光を反射する反射面の向きを周期的に動かすことで、該反射面で反射された励起光で前記光波長変換部材の入射面を走査する走査機構と、
前記光波長変換部材を透過した励起光と、前記蛍光体で波長変換された蛍光と、を配光パターンとして前方へ投影する投影レンズと、
前記走査機構で反射された励起光のうち前記入射面の周縁部に向かう励起光の光路を、前記入射面の中心側に変化させる光路補正部材と、
を備え、
前記投影レンズは、前記光波長変換部材
の前記励起光の波長変換を担う領域よりも小径であることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
励起光を出射する光源と、
前記励起光で励起される蛍光体を含む光波長変換部材と、
前記光源から出射した励起光を反射する反射面の向きを周期的に動かすことで、該反射面で反射された励起光で前記光波長変換部材の入射面を走査する走査機構と、
前記光波長変換部材を透過した励起光と、前記蛍光体で波長変換された蛍光と、を配光パターンとして前方へ投影する投影レンズと、
前記光波長変換部材を透過した励起光のうち前記投影レンズの有効領域に向かわない励起光の光路を、前記投影レンズの有効領域側に変化させる光路補正部材と、
を備え、
前記投影レンズは、前記光波長変換部材
の前記励起光の波長変換を担う領域よりも小径であることを特徴とする光学ユニット。
【請求項3】
前記光路補正部材は、レンズであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記光路補正部材は、前記光波長変換部材の中心部と対向する部分に開口がある環状レンズであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記光路補正部材は、プリズムであり、
前記プリズムは、前記光波長変換部材の周縁部のうち前記励起光で走査される方向の両端と対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニットに関し、特に車両用灯具に用いられる光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、励起光源と、蛍光体板と、励起光源から出射した光を揺動可能に形成された反射鏡の反射面で受け、反射光を蛍光体板に向けて走査する走査機構と、蛍光体板からの出射光を透過させて配光パターンを形成する投影レンズと、を有する車両用前照灯が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の車両用前照灯は、励起光源が青色である場合、蛍光体として黄色蛍光体を用いることで、車両前方に所定の白色配光パターンを形成する。しかしながら、励起光源が発する青色光は、揺動する反射鏡で反射されて蛍光体板に向けて走査されるため、蛍光体板の中央部では蛍光体板に垂直に入射するが、蛍光体板の周辺部では外向きに広がるように斜めに入射する。一方、励起光である青色光が黄色蛍光体に入射し、波長変換されて出射した黄色光は、等方的な配光であるランバーシアンな蛍光である。
【0005】
しかしながら、投影レンズに入射する黄色光は、蛍光体板の全面から出射した蛍光である一方、蛍光体板の周辺部を透過した青色光は、投影レンズにほとんど入射しない。そのため、車両前方に形成される所定の配光パターンの周縁部と中央部とで色味が異なることがある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、配光パターンの中央部と周縁部とで色味の差が少ない新たな光学ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光学ユニットは、励起光を出射する光源と、励起光で励起される蛍光体を含む光波長変換部材と、光源から出射した励起光を反射する反射面の向きを周期的に動かすことで、該反射面で反射された励起光で光波長変換部材の入射面を走査する走査機構と、光波長変換部材を透過した励起光と、蛍光体で波長変換された蛍光と、を配光パターンとして前方へ投影する投影レンズと、走査機構で反射された励起光のうち入射面の周縁部に向かう励起光の光路を、入射面の中心側に変化させる光路補正部材と、を備える。
【0008】
光源から出射した励起光のうち、光波長変換部材の入射面の周縁部に斜めに入射して蛍光体を励起しないで通過した通過光は、そのままであれば投影レンズにほとんど入射しない。仮に、ほとんどの通過光を投影レンズに入射させようとすると、投影レンズを大径にする必要がある。そこで、この態様によると、光路補正部材を用いて、走査機構で反射された励起光のうち入射面の周縁部に向かう励起光の光路を、入射面の中心側に変化させることができる。これにより、配光パターンの周縁部と中央部とにおける色味の差を抑えることができる。
【0009】
本発明の別の態様もまた、光学ユニットである。この光学ユニットは、励起光を出射する光源と、励起光で励起される蛍光体を含む光波長変換部材と、光源から出射した励起光を反射する反射面の向きを周期的に動かすことで、該反射面で反射された励起光で光波長変換部材の入射面を走査する走査機構と、光波長変換部材を透過した励起光と、蛍光体で波長変換された蛍光と、を配光パターンとして前方へ投影する投影レンズと、光波長変換部材を透過した励起光のうち投影レンズの有効領域に向かわない励起光の光路を、投影レンズの有効領域側に変化させる光路補正部材と、を備える。
【0010】
この態様によると、光路補正部材を用いて、光波長変換部材を透過した励起光のうち投影レンズの有効領域に向かわない励起光の光路を、投影レンズの有効領域側に変化させることができる。これにより、配光パターンの周縁部と中央部とにおける色味の差を抑えることができる。また、光波長変換部材と投影レンズとの間に光路補正部材が配置されているため、光波長変換部材の蛍光体で波長変換されたランバーシアンな蛍光のうち、そのままでは投影レンズの外側または外縁といった有効領域以外の領域に向かう光の向きを、投影レンズの有効領域に向けて変化させることができる。
【0011】
光路補正部材は、レンズであってもよい。
【0012】
光路補正部材は、光波長変換部材の中心部と対向する部分に開口がある環状レンズであってもよい。光波長変換部材の中心部を通過して出射されてきた通過光は、光路を変化させなくても概ね投影レンズの中心部に入射する。そこで、光路補正部材として、光波長変換部材の中心部と対向する部分に開口がある環状レンズを用いることで、励起光が光路補正部材を通過する際の光の減衰を低減できる。
【0013】
光路補正部材は、プリズムであり、プリズムは、光波長変換部材の周縁部のうち励起光で走査される方向の両端と対向する位置に配置されていてもよい。これにより、投影レンズや光波長変換部材の全面と対向するように光路補正部材を設ける場合と比較して、小型の光路補正部材を適切に配置することで、配光パターンの周縁部と中央部とにおける色味の差を抑えることができる。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配光パターンの中央部と周縁部とで色味の差が少ない新たな光学ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施の形態に係る光学ユニットの概略構成を示す上面図である。
【
図2】第2の実施の形態に係る光学ユニットの概略構成を示す上面図である。
【
図3】第3の実施の形態に係る灯具ユニットの要部を示す上面図である。
【
図4】第3の実施の形態に係る灯具ユニットの要部を示す正面図である。
【
図5】第4の実施の形態に係る灯具ユニットの要部を示す上面図である。
【
図6】第4の実施の形態に係る灯具ユニットの要部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
本実施の形態に係る光学ユニットを搭載する車両用前照灯(灯具ユニット)は、ADB(Adaptive Driving Beam)などの可変配光機能を実現する方式の一つとして、ミラースキャン型の走査機構を採用している。走査機構は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、ポリゴンミラー、ガルバノミラー、ブレードを有する回転リフレクタ等が用いられる。これら走査機構により、LD(Laser Diode)、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic Light Emitting Diode)といった半導体発光素子を含む光源から出射した青色光などの励起光で、蛍光体を含む光波長変換部材をスキャンし、光波長変換部材上の像(発光領域)が投影レンズを介して投影される。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る光学ユニットの概略構成を示す上面図である。
図1に示す光学ユニット10は、励起光L1(例えば青色光)を出射する光源12と、励起光L1で励起される蛍光体を含む円板状の光波長変換部材14と、光源12から出射した励起光L1を反射する反射面16aの向きを周期的に動かすことで、反射面16aで反射された励起光L1’で光波長変換部材18の入射面18aを走査する走査機構16と、光波長変換部材18を透過した励起光L1’と、光波長変換部材14に含まれる蛍光体で波長変換された蛍光L2と、を配光パターンとして前方へ投影する投影レンズ20と、を備える。
【0020】
この際、反射面16aの振幅および振れ角と、光源12の点消灯のタイミングとを適切に設定することで、任意の配光パターンを形成できる。このような構成を備えた光学ユニットにおいては、光波長変換部材18の中央部(中心部)Rcをスキャンする際には、励起光L1’が光波長変換部材18にほぼ垂直に入射する。一方、光波長変換部材18の周辺部Reをスキャンする際には、励起光L1’が光波長変換部材18に斜め外向きに入射し、そのまま透過光L1”として外向きに出射する。
【0021】
一方、蛍光体から発する蛍光L2は、光波長変換部材18に入射する入射角度に依存せずランバーシアン拡散とみなしてよい。したがって、周辺部Reの像に寄与する光は、ほとんどが蛍光L2によるものであり、青色光(透過光L1”)は投影レンズ20にほとんど入らないため、周辺部Reの像に寄与しない。そのため、例えば、青色光と、青色光によって励起される黄色の蛍光と、によって白色を得る光学系では、周辺部Reの黄色味が強いという問題がある。
【0022】
そこで、本実施の形態に係る光学ユニット10は、走査機構16で反射された励起光のうち入射面18aの周辺部Reに向かう励起光L1’の光路を、入射面18aの中央部Rc側に変化させる光路補正部材22を備える。
【0023】
前述のように、光源12から出射して走査機構16で反射された励起光L1’のうち、光波長変換部材18の入射面18aの周縁部Reに斜めに入射して蛍光体を励起しないで通過した透過光L1”は、そのままであれば光波長変換部材18より小径の投影レンズ20にほとんど入射しない。仮に、ほとんどの透過光L1”を投影レンズ20に入射させようとすると、投影レンズ20を大径にする必要がある。そこで、本実施の形態に係る光学ユニット10は、光路補正部材22を用いて、走査機構16で反射された励起光L1’のうち入射面18aの周縁部Reに向かう励起光の光路を、入射面18aの中央部Rc側に変化させることができる。これにより、光波長変換部材18の周縁部Reを通って投影レンズ20に入射する励起光が多くなり、配光パターンの周縁部Rcと中央部Rcとにおける色味の差を抑えることができる。
【0024】
本実施の形態に係る光路補正部材22は、例えば、リング状の凸レンズである。励起光と蛍光とが混色して発光する光波長変換部材18の像面(表面)近傍に置かれた光路補正部材22は、像質にはほとんど影響を与えずに励起光からなるビームの角度を変更できる。また、光路補正部材22は、励起光L1’の光路のみを変化させるため、色収差が発生しない。
【0025】
(第2の実施の形態)
図2は、第2の実施の形態に係る光学ユニットの概略構成を示す上面図である。本実施の形態に係る光学ユニット30は、第1の実施の形態に係る光学ユニット10と比較して、光波長変換部材18と投影レンズ20との間に光路補正部材24が配置されていることが主な相違点である。
【0026】
光学ユニット30は、光波長変換部材18を透過した励起光L1’のうち投影レンズ20の有効領域Sに向かわない励起光(透過光L”)の光路を、投影レンズ20の有効領域S側に変化させる
【0027】
これにより、配光パターンの周辺部と中央部とにおける色味の差を抑えることができる。また、光波長変換部材18と投影レンズ20との間に光路補正部材24が配置されているため、光波長変換部材18の蛍光体で波長変換されたランバーシアンな蛍光L2のうち、そのままでは投影レンズ20の外側または外縁といった有効領域S以外の領域に向かう光の向きを、投影レンズ20の有効領域Sに向けて変化させることができる。その結果、より明るい配光パターンが得られる。
【0028】
(第3の実施の形態)
図3は、第3の実施の形態に係る灯具ユニットの要部を示す上面図である。
図4は、第3の実施の形態に係る灯具ユニットの要部を示す正面図である。本実施の形態に係る光学ユニット40は、第1の実施の形態に係る光学ユニット10と比較して、光路補正部材26が中央に開口26aが形成されている点が主な相違点である。
【0029】
光路補正部材26は、光波長変換部材18の中央部Rcと対向する部分に開口26aがある環状レンズである。光路補正部材26の中央部Rcを通過して出射されてきた通過光(透過光L1”)は、光路を変化させなくても概ね投影レンズ20の中心部に入射する。そこで、光路補正部材26として、光波長変換部材18の中央部Rcと対向する部分に開口26aがある環状レンズを用いることで、励起光L1’が光路補正部材26を通過する際の光の減衰を部分的に低減できる。
【0030】
(第4の実施の形態)
図5は、第4の実施の形態に係る灯具ユニットの要部を示す上面図である。
図6は、第4の実施の形態に係る灯具ユニットの要部を示す正面図である。本実施の形態に係る光学ユニット50は、第1の実施の形態に係る光学ユニット10と比較して、一対の光路補正部材28がプリズムである点が主な相違点である。
【0031】
光路補正部材28は、三角柱形状のプリズムである。また、光路補正部材28は、矩形の光波長変換部材18の上下左右の周縁部Reのうち励起光で走査される左右方向Yの両端Eと対向する位置に配置されている。これにより、投影レンズ20や光波長変換部材18の全面と対向するように光路補正部材28を設ける場合と比較して、小型の光路補正部材を適切に配置することで、配光パターンの周縁部と中央部とにおける色味の差を抑えることができる。
【0032】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態や変形例に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0033】
10 光学ユニット、 12 光源、 14 光波長変換部材、 16 走査機構、 16a 反射面、 18 光波長変換部材、 18a 入射面、 20 投影レンズ、 22,24,26 光路補正部材、 26a 開口、 28 光路補正部材、 30,40,50 光学ユニット。