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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】手持式作業機
(51)【国際特許分類】
   B27B 17/00 20060101AFI20240422BHJP
   A01G 3/08 20060101ALI20240422BHJP
   B27G 19/04 20060101ALI20240422BHJP
   B23D 57/02 20060101ALI20240422BHJP
   B25F 5/02 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B27B17/00 Z
A01G3/08 503Z
B27G19/04 Z
B27B17/00 H
B23D57/02
B25F5/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019214312
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021084302
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】大澤 久人
(72)【発明者】
【氏名】前野 武士
(72)【発明者】
【氏名】西村 篤
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-117854(JP,A)
【文献】特開2009-279884(JP,A)
【文献】特開2002-113704(JP,A)
【文献】特開2002-172568(JP,A)
【文献】特開2003-251574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 17/00
A01G 3/08
B27G 19/04
B23D 57/02
B25F 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と作業者とを連結する繋留索を前記機体に接続するための接続受部を備え、前記繋留索が前記接続受部に取り付けられ、前記接続受部は、作業者が前記機体を保持するためのハンドルの一部で構成され、前記ハンドルの把持部と前記接続受部との間に、前記ハンドルの表面から突出する突起が設けられ、該突起によって前記ハンドルが前記把持部と前記接続受部とに区画され、前記突起によって前記繋留索の位置ずれが防止されて前記繋留索が前記接続受部に保持される、手持式作業機。
【請求項2】
前記機体の前部に作業工具が配設され、該作業工具は刃を有し、前記突起が、手持式作業機全体としての前後重量バランスの中心より後側に位置する、請求項1に記載の手持式作業機。
【請求項3】
記突起が、前記ハンドルを握る作業者の手に対して邪魔にならない位置及び/又は形状に配設される、請求項1又は2に記載の手持式作業機。
【請求項4】
前記ハンドルが閉じている、請求項1,2又は3に記載の手持式作業機。
【請求項5】
前記突起が前記機体の内側に向けて形成される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の手持式作業機。
【請求項6】
前記突起が、前記ハンドルの内部に開口して形成される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の手持式作業機。
【請求項7】
前記ハンドルが前記機体の側部に備わっている横ハンドルである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の手持式作業機。
【請求項8】
前記突起の先端が前記接続受部の入口の開口幅を狭める方向に湾曲している、請求項6に記載の手持式作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持式作業機に関し、詳しくは、高所での作業に適する手持式作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手持式作業機を使用して行う高所での作業の一例として、樹木の枝打ちがある。枝打ちは、手持式作業機の一例として、トップハンドルソーと称される小型のチェーンソーを用いて行われることがある。この場合、作業者は、チェーンソーを携えて木に登り、木の上でチェーンソーを手に持って枝打ちを行う。
【0003】
作業者が木を上り下りしたり、木の上で作業場所を変更したりする場合には、両手が自由に使える必要がある。このため、チェーンソーを必要に応じて作業者の体に係止し、吊り下げ支持できることが好ましい。そこで、作業者が身に着けたベルトのカラビナ等に係脱自在なフックを有するチェーンソーが提案されている(特許文献1,2参照)。
【0004】
作業者は、体に吊り下げ支持したチェーンソーを木の上で手に持ち替える必要がある。その際、フックを外した後に誤ってチェーンソーを落としてしまう心配がある。そこで、その場合でもチェーンソーが大きくは落下しないように、枝打ち作業の妨げにならない適宜の長さの繋留索で、チェーンソーと作業者とを作業中は常に繋げておくことが好ましい。このようにすれば、作業者が高所で誤ってチェーンソーを落としてしまった場合でも、チェーンソーの落下を食い止めることができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5272813号公報
【文献】特開2016-199005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のチェーンソーには、繋留索の接続に適する接続受部が設けられていない。繋留索は高所での作業のような特定の場所での作業に使用されるものなので、チェーンソーへの接続受部の配設は、簡易な構成且つ低コストで実施可能な態様であることが好ましい。また、チェーンソーにおける好適な接続受部の配設要件として、繋留索が作業の邪魔にならないことや、繋留索を着脱しやすい構成であることや、繋留索を着脱しやすい場所であることや、繋留索で吊り下げ支持された時にチェーンソーの刃により作業者に危害が及びにくいこと等も満たされることが好ましい。
【0007】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、前記配設要件の少なくとも一つを満たす態様で繋留索の接続受部を備える手持式作業機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る手持式作業機は、機体と作業者とを連結する繋留索を前記機体に接続するための接続受部を備え、前記繋留索が前記接続受部に取り付けられ、前記接続受部は、作業者が前記機体を保持するためのハンドルの一部で構成され、前記ハンドルの把持部と前記接続受部との間に、前記ハンドルの表面から突出する突起が設けられ、該突起によって前記ハンドルが前記把持部と前記接続受部とに区画され、前記突起によって前記繋留索の位置ずれが防止されて前記繋留索が前記接続受部に保持されることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本発明によれば、ハンドルの一部が繋留索の接続受部となるので、専用の接続受部を新たに設ける場合に比べて構成が簡潔であり、コスト上も有利である。ハンドルは作業者が握ることができる程度の径であるので、繋留索を着脱しやすく、しかも丈夫である。また、突起によって繋留索が接続受部に保持されるので、繋留索がむやみに動くことが防止される。よって、繋留索が作業の妨げになることがない。さらに、把持部を握る作業者の手の動きを突起が抑制するので、作業中に、作業者の手が接続受部の繋留索に当接することが防止される。
【0010】
好適な実施の一形態として、前記機体の前部に作業工具が配設され、該作業工具は刃を有し、前記突起が、手持式作業機全体としての前後重量バランスの中心より後側に位置する態様とすることもできる(請求項2)。この場合、繋留索による手持式作業機の吊り下げ状態において、刃を有する作業工具が下向きとなるので、作業者に危害が及びにくい。
【0011】
好適な実施の一形態として、前記突起が、前記ハンドルを握る作業者の手に対して邪魔にならない位置及び/又は形状に配設される態様とすることもできる(請求項3)
【0012】
好適な実施の一形態として、前記ハンドルが閉じている態様とすることもできる(請求項4)。この場合、ハンドルが閉じているので、繋留索が不意に外れることがない。なお、ハンドルが閉じているとは、ハンドルがそれ単体としてループ状である場合、または、ハンドルが機体と一体になることでループ状となる場合を含む。
【0013】
好適な実施の一形態として、前記突起が前記機体の内側に向けて形成される態様とすることもできる(請求項5)。この場合、作業機の大型化が防止されるとともに、突起が作業の邪魔になることもない。
【0014】
好適な実施の一形態として、前記突起が、前記ハンドルの内部に開口して形成される態様とすることもできる(請求項6)。この場合、開口を利用して繋留索を移動させることで、接続受部への繋留索の着脱作業が容易に行える。すなわち、接続受部への繋留索の取り付け時には、ハンドルにおける繋留索を接続し易い位置に繋留索をひとまず接続し、この繋留索を、開口を通して突起を乗り越えさせて接続受部へと移動させる。これにより、接続受部への繋留索の取り付け作業が容易に行える。また、接続受部からの繋留索の取り外し時には、前記とは逆の作業工程を実施することにより、繋留索の取り外し作業が容易に行える。
【0015】
好適な実施の一形態として、前記ハンドルが前記機体の側部に備わっている横ハンドルである態様とすることもできる(請求項7)。また、前記突起の先端が前記接続受部の入口の開口幅を狭める方向に湾曲している態様とすることもできる(請求項8)。この場合、突起を乗り越えさせて繋留索を接続受部へと移動させる作業がスムーズに行えるほか、繋留索が接続受部からハンドルの把持部側へと移動し難くて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の一形態に係る手持式作業機の一例としてのチェーンソーの斜視図である。
図2図1のチェーンソーの左側面図である。
図3図1のチェーンソーの機体部分の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。添付図面には、本発明の実施の一形態に係る手持式作業機の具体例として、トップハンドルソーと称される小型のチェーンソーが図示されている。このチェーンソーは、作業者が片手で取り扱うこともできるので、木に登って枝打ち作業を行うのにも適している。なお、本明細書においては、図面に記載した方向表示にしたがって、前後左右及び上下を特定する。
【0018】
図1及び図2を参照して、本発明の実施の一形態に係るチェーンソー1は、機体2と、機体2の前部に位置する作業工具3と、を備える。機体2は本体ケース4を備え、この本体ケース4には、原動機としてのモータ5(図にのみ図示)と、着脱自在なバッテリ6と、が搭載されている。バッテリ6からモータ5に電力が供給されることで作業工具3が駆動される。なお、モータ5に代えて、小型軽量の内燃エンジンを原動機として搭載することもでき、この場合には、バッテリ6に代えて燃料タンクが搭載される。
【0019】
図示例では、作業工具3がチェーン式カッターである。チェーン式カッター3は、機体2の前部右側から前方へ延びるガイドバー7と、ガイドバー7の外周に沿って摺走するループ状のソーチェーン8と、を備える。ソーチェーン8は刃を有し、モータ5で駆動されてガイドバー7の外周に沿って回転し、木の幹や枝等の切断対象物を切断する。
【0020】
本体ケース4は樹脂製の箱体である。本体ケース4の後部には、バッテリケース9が一体に形成されている。バッテリケース9は上向きに開口しており、バッテリ6を着脱自在に保持する。
【0021】
本体ケース4の上部にはトップハンドル10が一体に形成されている。また、本体ケース4の左側面には、横ハンドル11が取り付けられている。作業者は、トップハンドル10と横ハンドル11とをそれぞれの手で握って作業を行うことができるほか、トップハンドル10のみを握って片手で作業を行うこともある。
【0022】
図2に示すように、トップハンドル10は、本体ケース4の上面4aに連続して形成されており、本体ケース4の上方で前後方向に延びている。トップハンドル10の前部12は下向きに屈曲し、本体ケース4の前部の上面4aに連続している。一方、トップハンドル10の後部14は、バッテリケース9の前部を構成するバッテリ保持部13の上端に連結されている。
【0023】
トップハンドル10の前部12と後部14との間には、上側把持部15が延在している。上側把持部15は、作業者がチェーンソー1を持つときに把持する部分である。上側把持部15は、トップハンドル10の前部12から後部14に向けて僅かに斜め下向きに傾斜している。上側把持部15と本体ケース4の上面4aとの間には、作業者の手を受け入れる空間S1がある。
【0024】
また、上側把持部15の前部の下面には、モータ5の回転数を増減させるための操作手段として、トリガレバー16が配設されている。作業者は、上側把持部15を把持した状態で、トリガレバー16を操作することができる。上側把持部15の上面には、安全レバー17が出没自在に配設されている。作業者が上側把持部15を把持することで、掌に押されて安全レバー17が上側把持部15内に没入する。これにより初めてトリガレバー16の操作が可能となるように、安全レバー17とトリガレバー16とが上側把持部15内で作動上連結されている。
【0025】
引き続き図2を参照して、横ハンドル11は、本体ケース4の左側面4bの前部から後部に亘って、前後方向に延びている。横ハンドル11は、樹脂製でも良いし、軽量な金属製のパイプを折り曲げて形成してもよい。横ハンドル11の前端18は、トップハンドル10の前部12の上部に固着されている。一方、横ハンドル11の後端19は、バッテリケース9の左側の側壁に固着されている。横ハンドル11の後端19は前端18よりも下方に位置する。横ハンドル11は、本体ケース4の前部の上部から本体ケース4の後部の下部へ向けて、傾斜して延びている。
【0026】
図1及び図3に示すように、横ハンドル11の前端18と後端19との間の部位は、本体ケース4の左側面4bに対して外側へ膨らむように湾曲している。したがって、横ハンドル11は、本体ケース4と一体となることで、大径のリング状部分となっている。
【0027】
横ハンドル11の前端18と後端19との間には、横側把持部20が延在している。横側把持部20は、作業者がチェーンソー1を持つときに把持する部分であり、本体ケース4の左側方に位置している。横側把持部20と本体ケース4の左側面4bとの間には、作業者の手を受け入れる大きな空間S2がある(図3参照)。横側把持部20は、図2に示すように、本体ケース4の左側面視において、前から後に向かうにつれて徐々に低くなるように傾斜している。
【0028】
図1図3に示すように、本体ケース4の後端にはフック21が配設されている。このフック21は、作業者が身に着けるベルトの、カラビナ等の係止具に係脱自在なものである。作業者は、フック21を利用して、必要時にチェーンソー1の機体2を自分の体に連結することができる。例えば、チェーンソー1により樹木の枝打ちを行う場合、作業者が木を上り下りしたり、木の上で作業場所を変更したりする際には、フック21を用いてチェーンソー1を作業者に連結し、作業者の体からチェーンソー1を作業工具3が下向きとなるように吊り下げ支持することができる。これにより、作業者の両手が自由に使えて好適である。なお、フック21は、不使用時には本体ケース4に沿って収納できる構成としておくと、不使用時の破損が防止されるほか、作業の邪魔にもならず、好適である。フック21は、本体ケース4と一体になることでループ状となる態様の他、フック21がそれ単体としてループ状である態様でもよい。
【0029】
図1及び図3に示すように、チェーンソー1は、フック21とは別に、繋留索Rの接続受部22を備えている。繋留索Rは、例えば樹木の枝打ち等の高所での作業にあたって、チェーンソー1と作業者の体とを連結しておくことで、チェーンソー1の落下を食い止めるためのものである。繋留索Rは、例えば、作業者が木に登る前にチェーンソー1に接続し、枝打ち作業が終わって作業者が地上に降りるまで接続しておく。
【0030】
具体的には、作業者は、木の上で枝打ち作業を開始するに当たり、それまでフック21で体に吊り下げていたチェーンソー1を木の上で手に持ち替える必要がある。その際、フック21を外した後に誤ってチェーンソー1を落としてしまう心配がある。そこで、その場合でもチェーンソー1が大きくは落下しないように、枝打ち作業の妨げにならない適宜の長さの繋留索Rで、木に登る前にチェーンソー1を作業者の体に繋げておく。このようにすれば、作業者が高所で誤ってチェーンソー1を落としてしまった場合でも、チェーンソー1の落下を食い止めることができる。
【0031】
繋留索Rは、枝打ち等の高所での作業時のほか、傾斜地での作業時にも使用することができる。この場合、伐採作業中に傾斜地に一時的に置いたチェーンソーが転がり落ちてしまうことを防止できる。
【0032】
本実施の一形態では、繋留索Rの接続受部22が、チェーンソー1の機体2に他の機能又は用途を有するものとして備わっている他機能部分Fの一部で構成される。そして、他機能部分Fには、繋留索Rを接続受部22に保持するための突起23が設けられる。
【0033】
このようにすれば、他機能部分Fの一部が接続受部22となるので、専用の接続受部を新たに設ける場合に比べて構成が簡潔であり、コスト上も有利である。また、突起23によって繋留索Rが接続受部22に保持されるので、繋留索Rがむやみに動くことが防止される。よって、繋留索Rが作業の妨げになることがない。
【0034】
他機能部分Fの好適な一例として、図示例では、横ハンドル11を利用した態様とされている。すなわち、横ハンドル11の一部(後部)を接続受部22とし、横ハンドル11の横側把持部20と接続受部22との間に突起23を設け、この突起23によって横ハンドル11が横側把持部20と接続受部22とに区画されている。突起23は、横ハンドル11を握る作業者の手に対して邪魔にならない位置及び/又は形状に配設される。そして、突起23は、横ハンドル11の、作業に邪魔にならない接続受部22に繋留索Rを保持させる。突起23は、横ハンドル11の製造時に予め一体に形成することもできるし、横ハンドル11に後付けすることもできる。
【0035】
この場合、横ハンドル11の一部を接続受部22として利用することになる。これにより、次のような作用効果が奏される。横ハンドル11は作業者が握ることができる程度の径であるので、繋留索Rを着脱しやすく、しかも丈夫である。また、横ハンドル11を握る作業者の手の動きを突起23が抑制するので、作業中に、作業者の手が繋留索Rに当接することが防止され、また、繋留索Rが作業者の手の方へ移動することも防止される。さらに、横ハンドルは、本体ケース4と一体になってループ状に閉じているので、繋留索Rが不意に外れる虞もない。
【0036】
横ハンドル11上における突起23の好適な配設態様について説明する。図2及び図3に示すように、突起23は、横ハンドル11の後端19に近い位置であって、横ハンドル11の内側(本体ケース4側)に形成され、本体ケース4に近づく方向に延びている。好ましくは、突起23は、横ハンドル11の内部に開口して形成される。すなわち、突起23の先端23aと本体ケース4との間に隙間C(図3参照)がある態様が好ましい。
【0037】
突起23は、チェーンソー全体としての前後重量バランスの中心O(図3参照)より後側に配設するのが好ましい。このようにすれば、繋留索Rによるチェーンソー1の吊り下げ状態において、刃を有するチェーン式カッター3が下向きとなり、作業者に危害が及びにくいからである。図2及び図3の例では、機体2の後部にまで延びる横ハンドル11の後端19付近に突起23が形成されるので、チェーンソー全体の後部に突起23が位置することになり、最良の形態となっている。横ハンドル11を握る作業者の手に対して突起23が邪魔になることもない。
【0038】
図3に示すように、突起23を機体3の内側に向けて形成することで、チェーンソー1の大型化が防止されるとともに、突起23が作業の邪魔になることもない。
【0039】
図3に示すように、突起23を横ハンドル11の内部に開口させて形成すれば、すなわち、突起23の先端23aと本体ケース4との間に隙間Cを設けておけば、この隙間Cを利用して繋留索Rを移動させることで、接続受部22への繋留索Rの着脱作業が容易に行える。すなわち、接続受部22への繋留索Rの取り付け時には、横ハンドル11における繋留索Rを接続し易い位置(例えば、本体ケース4からの離隔量が大きい横把持部20の上部等)に繋留索Rをひとまず大きめのループ状にして接続する。次いで、繋留索Rのループ状の接続部Raを、隙間Cを通して突起23を乗り越えさせて接続受部22へと移動させる。最後に、繋留索Rのループ状の接続部Raを縮小させる。これにより、接続受部22への繋留索Rの取り付け作業が容易に行える。また、接続受部22からの繋留索Rの取り外し時には、前記とは逆の作業工程を実施することにより、繋留索Rの取り外し作業が容易に行える。
【0040】
なお、図3に示すように、突起23の先端23aを、接続受部22の入口の開口幅(隙間Cの幅)を狭める方向に湾曲させておけば、繋留索Rのループ状の接続部Raを、突起23を乗り越えさせて接続受部22へと移動させる作業がスムーズに行えるほか、繋留索Rの接続部Raが接続受部22から逆方向へと移動し難くて、好適である。
【0041】
また、図3に示すように、バッテリ6の近傍に突起23を形成して、比較的重いバッテリ6の近傍に繋留索Rの接続部Raを配置することで、手持式作業機が吊り下げられた状態で重量バランスが良くなり作業機が安定し易い。
【0042】
他機能部分Fの他の例として、トップハンドル10を挙げることもできる。この場合も、トップハンドル10を握る作業者の手の邪魔にならない位置であって、チェーンソー全体としての前後重量バランスの中心Oよりも後側に突起23を配設するのが好ましいことは勿論である。一例として、図2に仮想線で示すように、トップハンドル10の後部14の下面から下向きに突起24を形成する態様を例示する。トップハンドル10を他機能部分Fとして利用する場合も、横ハンドル11の場合と同様の種々の作用効果が奏される。
【0043】
他機能部分Fの更に他の例として、本体ケース4の後端に配設されているフック21を挙げることもできる。フック21は元々、チェーンソー1を作業工具3が下向きになるように吊り下げ支持するための構成部品である。このため、フック21は、強度上も吊り下げ時のバランス上も、繋留索Rの接続受部として適している。一例として、図1及び図3に仮想線で示すように、フック21の左右方向の中央部から本体ケース4側へと延びるように突起25を形成する態様を例示する。この場合、フック21の内部空間の後部が突起25によって左右二つに区分される。そこで、一方の内部空間を繋留索Rの接続受部22として利用できる。フック21を他機能部分Fとして利用する場合も、前記と同様の種々の作用効果が奏される。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 手持式作業機(チェーンソー)
2 機体
3 作業工具
10 トップハンドル(ハンドル)
11 横ハンドル(ハンドル)
20 横側把持部(把持部)
21 フック
22 接続受部
23,24,25 突起
F 他機能部分
O 作業機全体としての前後重量バランスの中心
R 繋留索
図1
図2
図3