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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】洗浄料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20240422BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240422BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240422BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240422BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240422BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240422BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240422BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240422BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20240422BHJP
   C11D 1/06 20060101ALI20240422BHJP
   C11D 1/10 20060101ALI20240422BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20240422BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240422BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20240422BHJP
   C11D 17/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/39
A61K8/44
A61K8/46
A61Q19/10
C11D1/04
C11D1/06
C11D1/10
C11D1/29
C11D3/20
C11D3/37
C11D17/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019214431
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2020090488
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018221518
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長崎 裕子
(72)【発明者】
【氏名】尾沢 敏明
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0051314(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0022818(US,A1)
【文献】特開2004-075791(JP,A)
【文献】特開2008-222641(JP,A)
【文献】特開2005-162666(JP,A)
【文献】特開2001-002562(JP,A)
【文献】特開2018-123342(JP,A)
【文献】特開2008-137904(JP,A)
【文献】特開2009-027500(JP,A)
【文献】特表2007-527921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0311136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
C11D1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出流路にメッシュフィルターを備えたポンプフォーマー容器と、
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)起泡性アニオン界面活性剤 1~20質量%、
(B)アクリル酸及び/又はアクリル酸アルキル由来の繰り返し単位を含む水溶性ポリマーであって、1質量%水溶液の粘度で、せん断速度1.0×10-1(s-1)での粘度v1に対する、せん断速度1.0×10-2(s-1)での粘度v2の比が、v2/v1≧5である水溶性ポリマー 0.1~2.5質量%、
(C)水、
(D)ポリオール 5~50質量%
を含有し、
30℃における粘度が、5~500mPa・sであり、
前記吐出流路にメッシュフィルターを備えたポンプフォーマー容器に充填された液体洗浄剤と
を備える洗浄料。
【請求項2】
成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、1~100である請求項1記載の洗浄料。
【請求項3】
前記液体洗浄剤が、成分(B)を0.2~2.3質量%含有する、請求項1又は2記載の洗浄料。
【請求項4】
成分(A)が、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸塩、及びアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の洗浄料。
【請求項5】
成分(B)が、ポリアクリル酸、架橋ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体、及び架橋アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体から選ばれる1種以上である、請求項1~4のいずれか1項記載の洗浄料。
【請求項6】
成分(B)の1質量%水溶液の、せん断速度1.0×10 -2 (s -1 )での粘度v2が、1Pa・s以上である、請求項1~5のいずれか1項記載の洗浄料。
【請求項7】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)起泡性アニオン界面活性剤 1~20質量%、
(B)アクリル酸及び/又はアクリル酸アルキル由来の繰り返し単位を含む水溶性ポリマーであって、1質量%水溶液の粘度で、せん断速度1.0×10-1(s-1)での粘度v1に対する、せん断速度1.0×10-2(s-1)での粘度v2の比が、v2/v1≧5である水溶性ポリマー 0.1~2.5質量%、
(C)水、
(D)ポリオール 5~50質量%
を含有し、
30℃における粘度が、5~500mPa・sであり、
吐出流路にメッシュフィルターを備えたポンプフォーマー容器に充填される、液体洗浄剤。
【請求項8】
起泡性アニオン界面活性剤 1~20質量%と、
アクリル酸及び/又はアクリル酸アルキル由来の繰り返し単位を含む水溶性ポリマーであって、1質量%水溶液の粘度で、せん断速度1.0×10-1(s-1)での粘度v1に対する、せん断速度1.0×10-2(s-1)での粘度v2の比が、v2/v1≧5である水溶性ポリマー 0.1~2.5質量%と、
水と、
ポリオール 5~50質量%
を含有し、
30℃における粘度が、5~500mPa・sである液体組成物を、吐出流路にメッシュフィルターを備えたポンプフォーマー容器に充填し、前記容器を押す圧で前記液体組成物の泡を吐出する、泡の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄料に関する。
【背景技術】
【0002】
泡吐出容器に充填され、細かい泡として吐出させて使用される皮膚又は毛髪用の液体洗浄剤は、泡立てる手間が省けるだけでなく、クリーミーな泡質となるために皮膚や毛髪・頭皮への刺激が緩和される等の利点がある。このような洗浄剤においては、容器から吐出した際に、泡に弾力や、濃密感があることが望まれる。
【0003】
一般に液体洗浄剤の組成物において、泡立て後の泡質を改善するために、水溶性ポリマー等の増粘剤を用いることが行われている。
例えば、特許文献1には、アルキルアミノ酸型界面活性剤と、水溶性高分子化合物とを含有する液体洗浄剤が、低刺激であり、皮膚や毛髪に使用したときの泡立ち性が良好であることが記載されている。このような提案は、フォーマー容器入り洗浄剤でも行われており、特許文献2には、界面活性剤と、粘度増大性重合体とを含有し、スクィーズフォーマー容器にパッケージされた液体パーソナルクレンジング組成物が、重合体の添加により粘度が上がり、これによって、泡の品質(具体的には、泡クリーム感)が高められることが記載されている。
しかし、ノンエアゾールフォーマー容器入り洗浄剤の場合には、泡状で吐出する際にメッシュを通過させやすくする必要があるため、容器内の洗浄剤の液粘度を上げる事は好まれず、液粘度を低くして、目詰まり無く、クリーミーで安定な泡を吐出する処方を検討するのが一般的となっている。例えば、特許文献3では、増粘剤ではなく、カチオン化セルロースやポリオールを用い、液粘度の低い液体洗浄剤を、泡吐出容器に充填している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-172668号公報
【文献】特表平5-506259号公報
【文献】特開2005-162666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3の洗浄剤では、吐出されるのは、クリーミーではあるものの軽やかな泡であり、泡を手のひらで塗り伸ばす際に感じる泡の濃密感や弾力感の点では未だ改良の余地があった。一方で、特許文献1や特許文献2のように、泡質向上のために増粘剤を用いると、ノンエアゾールフォーマー容器入り洗浄剤の場合、少量の増粘剤を配合しただけで、急激に洗浄剤の液粘度が上昇して、泡吐出時のフォーマーの押し圧が高くなり、吐出できなくなるか、又は、却って泡質が悪化するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、フォーマー容器からの吐出時に洗浄剤にかかるせん断力に着目し、鋭意検討を行ったところ、特定の界面活性剤と、特定の粘度特性を示す水溶性ポリマーとを組合わせて洗浄剤に用いることにより、容器の押し圧が高くならずに、弾力がある濃密な泡を吐出できることを見出した。特に、アニオン界面活性剤と、特定の粘度特性を示す水溶性ポリマーとを組合わせて洗浄剤に用いると、押し圧が高くならず、かつ、フォーマー容器から吐出した泡の濃密感や弾力感が大きく向上することを見出した。
【0007】
本発明は、ノンエアゾールフォーマー容器と、
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)アニオン界面活性剤、
(B)水溶性ポリマーであって、1質量%水溶液の粘度で、せん断速度1.0×10-1(s-1)での粘度v1に対する、せん断速度1.0×10-2(s-1)での粘度v2の比が、v2/v1≧5である水溶性ポリマー 0.1~2.5質量%、
(C)水
を含有し、前記ノンエアゾールフォーマー容器に充填された液体洗浄剤と
を備える洗浄料に関する。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態の洗浄料によれば、ノンエアゾールフォーマー容器から、押し圧が高くならずに、弾力がある濃密な泡(弾性泡)を吐出させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態の洗浄料においては、ノンエアゾールフォーマー容器に充填する液体洗浄剤中に起泡性界面活性剤を含有する。起泡性界面活性剤は、成分(A)としてのアニオン界面活性剤を含有する。
成分(A)のアニオン界面活性剤は、通常の洗浄剤に用いられるものであれば制限されず、例えば、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩のようなカルボン酸系界面活性剤;アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩のような硫酸エステル;スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩のようなスルホン酸塩;N-アシルアミノ酸塩、N-アシルアルキルタウリン塩等が挙げられる。
これらのうち、泡立ちと泡質の観点から、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アルキルエーテル硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を含むのが好ましい。特に泡質を向上させる観点からは、脂肪酸塩を含むのが好ましい。また、泡立ちと泡質に加え、洗浄力を向上し、皮膚に対する刺激性を低下させる観点からは、アルキルエーテルカルボン酸塩を含むのが好ましく、脂肪酸塩とアルキルエーテルカルボン酸塩の両方を含むのがより好ましい。
【0010】
アルキルエーテルカルボン酸塩としては、一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Rは炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基を示し、nはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、平均で0.5~10の数を示し、Xはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム(NH4 +)、有機アンモニウム又は塩基性アミノ酸を示す)
【0013】
一般式(1)中、Rとしては、洗浄力、泡立ち、すすぎ性を向上させる観点から、炭素数が10~18であるのが好ましく、12~16であるのがより好ましい。また、同様の観点から、Rは、アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。同様の観点から、エチレンオキシドの平均付加モル数nは、1~6が好ましい。
また、Xとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アンモニウム(NH4 +);モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来の有機アンモニウム;L-アルギニン等の塩基性アミノ酸が挙げられる。これらの中で、泡立ち、すすぎ性を向上させる観点から、アルカリ金属が好ましい。
【0014】
脂肪酸塩の脂肪酸としては、炭素数9~21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有するものが好ましい。泡立ち、すすぎ性を向上させる観点から、上記基の炭素数は、11~21が好ましく、11~17がより好ましく、11~15がさらに好ましい。また、同様の観点から、上記基は、アルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。
脂肪酸と反応してその塩を生成する成分としては、上記アルキルエーテルカルボン酸塩(1)のXと同様のものが挙げられる。
【0015】
N-アシルアミノ酸塩としては、泡立ち等の観点から、アシル基が、炭素数8~18の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸を由来としたものが好ましく、炭素数8~16の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸を由来としたものがより好ましく、炭素数8~14の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸を由来としたものがさらに好ましい。このような脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。これら脂肪酸のなかでも、泡質や保存安定性の観点から、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸が好ましく、ラウリン酸がより好ましい。また、N-アシルアミノ酸のアシル基は、上記の脂肪酸の混合脂肪酸を由来としたもの、例えば、ヤシ油、パーム核油などを原料にして得られたものであってもよい。なかでも、ヤシ油脂肪酸やパーム核脂肪酸を原料にして得られたものが好ましく、ヤシ油脂肪酸を原料にして得られたものがより好ましい。
【0016】
また、N-アシルアミノ酸塩のアミノ酸部分は、泡質、洗い上がりの皮膚が柔和でしっとりする良好な使用感の観点から、グリシン、アラニンから選ばれる中性アミノ酸、及びグルタミン酸、アスパラギン酸から選ばれる酸性アミノ酸が好ましく、酸性アミノ酸がより好ましく、グルタミン酸がさらに好ましい。また、これらのアミノ酸部分はD体、L体或いはD体とL体の混合物のいずれであってもよく、L体であるのが好ましい。
【0017】
N-アシルアミノ酸は、泡質等の観点から、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ミリストイルグルタミン酸、N-ココイルグルタミン酸、N-パーム脂肪酸グルタミン酸、N-ラウロイルアスパラギン酸、N-ココイルグリシン、N-ココイルアラニン又はこれらの塩が好ましく、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ミリストイルグルタミン酸、N-ココイルグルタミン酸、N-パーム脂肪酸グルタミン酸、N-ラウロイルアスパラギン酸、N-ココイルグリシン又はこれらの塩がより好ましく、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ミリストイルグルタミン酸、N-ココイルグルタミン酸、N-ラウロイルアスパラギン酸又はこれらの塩がより好ましく、N-ココイルグルタミン酸、N-ラウロイルアスパラギン酸又はこれらの塩がさらに好ましく、N-ココイルグルタミン酸又はその塩がよりさらに好ましい。
【0018】
また、N-アシルアミノ酸塩の塩としては、泡立ちや泡質を確保する観点から、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム、亜鉛等の他の無機塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール)、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等の有機アミン塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸塩等の他の有機塩が挙げられる。皮膚への刺激性の観点から、アルカリ金属塩、トリエタノールアミン塩、アルギニン塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩、アルギニン塩がより好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がさらに好ましく、ナトリウム塩がよりさらに好ましい。
【0019】
アルキルエーテル硫酸塩としては、一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、Rは炭素数8~22のアルキル基又はアルケニル基を示し、mはエチレンオキシドの平均付加モル数であり、0~20の数を示し、Yはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム(NH4 +)、又は有機アンモニウムを示す)
【0022】
一般式(2)中、Rは炭素数8~22のアルキル基又はアルケニル基であり、直鎖又は分岐鎖のいずれでも良い。Rは、アルキル基が好ましく、炭素数12~18がより好ましく、更に炭素数12~14が好ましい。mは、0~12がより好ましい。
Yとしては、上記アルキルエーテルカルボン酸塩(1)のXと同様のものが挙げられる。
【0023】
成分(A)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、泡立ち、すすぎ性、肌マイルド性の観点から、成分(A)の含有量は、液体洗浄剤中に、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。また、成分(A)の含有量は、液体洗浄剤中に、1~20質量%が好ましく、3~10質量%がより好ましい。
【0024】
成分(B)の水溶性ポリマーは、通常の洗浄剤に用いられる増粘剤であってよく、フォーマーから吐出後の泡質の確保の観点から、成分(B)の1質量%水溶液の粘度において、せん断速度1.0×10-2(s-1)での粘度v2が、1Pa・s以上であってよい。
【0025】
また、成分(B)の水溶性ポリマーは、1質量%水溶液の粘度において、せん断速度1.0×10-1(s-1)での粘度v1に対する、せん断速度1.0×10-2(s-1)での粘度v2の比が、v2/v1≧5である。
このような粘度特性を有する水溶性ポリマーを起泡性界面活性剤、特に、成分(A)と組合わせて用いることにより、フォーマーから吐出後の泡が濃密で弾力のあるものであるにも関わらず、フォーマーの押し圧の上昇を抑制することができる。しかも、成分(A)の含有量が本来であれば泡質が低下してしまうような低い濃度域の場合であっても、起泡性界面活性剤によってつくられた泡と泡の間に残る水分の粘度によって、成分(A)の含有量が高い場合と同等の良好な泡質を実現することができる。
【0026】
ここで、粘度は、成分(B)の1質量%水溶液をレオメーターにセットし、5分間静置後、せん断速度:0.0001-1,000s-1/測定時間:30-2sで、30℃にて測定して得られた値である。
より具体的には、以下の条件により測定される。
【0027】
(測定装置)
MCR 502, Modular Compact Rheometer, Anton Paar
Measuring Cell: P-PTD200
Measuring System: CP75-1/Ti, d=0.041
(測定条件)
成分(B)の1質量%水溶液をプレートにはさみ、5分間静置した後、せん断速度:0.0001-1000s-1/測定時間:30-2sで、30℃にて測定する。すなわち、せん断速度:0.0001s-1のときは測定時間:30sで測定し、せん断速度:1000s-1のときは測定時間:2sで測定する、というように、せん断速度と測定時間を変化させて、粘度を測定する。
【0028】
また、成分(B)の水溶性ポリマーは、フォーマーから吐出後の泡質を向上し、フォーマー容器の押し圧上昇を抑制する観点から、当該水溶性ポリマーが好適に増粘するpH又は中和度の条件下において、上述の粘度比であることが好ましい。水溶性ポリマーが好適に増粘する上記条件は、ポリマーが市販品である場合にはカタログに記載の条件を使用することができる。例えば、成分(B)がアニオン性のポリマーである場合には、ポリマーを中和した上で、上述の粘度比を測定するのが好ましい。
【0029】
成分(B)の水溶性ポリマーは、フォーマーから吐出後の泡質の確保の観点から、上述の粘度v2が、5Pa・s以上であることが好ましく、10Pa・s以上であることがより好ましい。
また、フォーマーから吐出した泡の濃密感と弾力を維持したまま、押し圧の上昇を抑制する観点から、上述の粘度比v2/v1が、6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。
【0030】
上述の粘度特性を持つものであれば、成分(B)はどのような水溶性ポリマーでも良いが、泡の濃密感と弾力の観点から、アクリル酸及び/又はアクリル酸アルキル由来の繰り返し単位を含むポリマーが好ましく、ポリアクリル酸、架橋ポリアクリル酸、アクリル酸共重合体、架橋アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体がより好ましい。例えば、カルボマー、アクリレーツコポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーから選ばれる1種以上が好ましく、アクリレーツコポリマーがより好ましい。
これらの水溶性ポリマーは、カルボマーとして、カーボポール910、カーボポール934、カーボポール940、カーボポール941、カーボポール980、カーボポール981、カーボポールUltrez 10、カーボポールUltrez 30、カーボポールETD2050(以上、Lubrizol社製);アクリレーツコポリマーとして、カーボポールAQUA SF-1、カーボポールAQUA SF-3(以上、Lubrizol社製);(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーとして、カーボポールUltrez 20、カーボポールUltrez 21、カーボポールETD2020(以上、Lubrizol社製)等の市販品を用いることができる。
【0031】
成分(B)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。弾力があり、濃密感が高い泡を吐出させる観点から、成分(B)の含有量は、液体洗浄剤中に、0.1質量%以上であり、0.2質量%以上が好ましく、0.4質量%以上がより好ましい。また、押し圧が高くなることを抑制し、弾力があり、濃密感が高い泡を吐出させ、さらにすすぎ性を良好にする観点から、成分(B)の含有量は、2.5質量%以下であり、2.3質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましい。なかでも、更に、吐出した泡の濃密感及び弾性をより一層向上させる観点からは、成分(B)の含有量は、1.0質量%以上が好ましく、更に、吐出した泡のすすぎ性をより一層向上させる観点からは、成分(B)の含有量は、1.0質量%以下が好ましい。
また、成分(B)の含有量は、液体洗浄剤中に、0.1~2.5質量%であり、0.2~2.3質量%が好ましく、0.4~2.0質量%がより好ましい。成分(B)の含有量は、更に吐出した泡の濃密感又は弾性をより一層向上させる観点からは、1.0~2.0質量%が好ましく、更に、吐出した泡のすすぎ性をより一層向上させる観点からは、0.4~1.0質量%が好ましい。
【0032】
本実施形態において、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、泡立ちと濃密感が高い泡を吐出させる観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、4以上がよりさらに好ましく、弾力があり、濃密感が高い泡を吐出する観点から、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、30以下がさらに好ましく、25以下がよりさらに好ましく、12以下がよりさらに好ましい。また、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、1~100が好ましく、2~50が好ましく、3~30がより好ましく、4~25がさらに好ましく、4~12がよりさらに好ましい。
【0033】
本実施形態において、成分(C)の水の含有量は、上記成分(A)及び(B)、さらに、必要に応じて含有させる他の成分の残部であり、各成分を良好に分散又は溶解させる観点から、液体洗浄剤中に40質量%以上であるのが好ましく、45質量%以上がより好ましく、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。また、成分(C)の含有量は、液体洗浄剤中に40~90質量%が好ましく、45~85質量%がより好ましい。
【0034】
本実施形態の液体洗浄剤は、さらに、成分(A)及び(B)との相乗効果によりフォーマー容器から吐出後の泡の濃密性をより一層向上させる観点から、(D)ポリオールを含有するのが好ましい。
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリントリメチルプロパノールなどが挙げられる。
これらのうち、泡立ち及び吐出した泡の濃密感の観点から、2価及び3価のアルコールが好ましく、プロピレングリコール、グリセリンがより好ましい。
【0035】
成分(D)のポリオールは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、泡の濃密感を維持したまま、押し圧の上昇を抑制する観点から、成分(D)の含有量は、液体洗浄剤中に2質量%以上であるのが好ましく、5質量%以上がより好ましく、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。また、成分(D)の含有量は、液体洗浄剤中に2~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。
【0036】
本実施形態の液体洗浄剤は、さらに、泡立ちの観点から、両性界面活性剤を含有することができる。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドアミン型ベタイン、アルキルイミダゾリン型ベタイン等が挙げられる。ここで、両性界面活性剤のアルキル基の炭素数は、8~20が好ましく、8~14がより好ましい。
これらのうち、泡質やすすぎやすさなどの観点から、両性界面活性剤は、炭素数8~14のアルキル基を有するアルキルアミドプロピルベタイン及びアルキルヒドロキシスルホベタインから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、アルキルヒドロキシスルホベタインがさらに好ましく、ラウリルヒドロキシスルホベタインがよりさらに好ましい。
【0037】
両性界面活性剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、泡立ちとすすぎ性の観点から、両性界面活性剤の含有量は、液体洗浄剤中に0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましい。両性界面活性剤の含有量は、液体洗浄剤中に0.1~5質量%が好ましく、0.5~4質量%がより好ましい。
【0038】
本実施形態の液体洗浄剤は、上記成分以外に、本実施形態の効果を損なわない範囲で通常の洗浄剤に用いられる成分を含有することができる。例えば、上記以外の界面活性剤、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等の芳香族アルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、糖(誘導体)やアミノ酸(誘導体)、動植物(タンパク質)誘導体、動植物抽出物等の保湿成分、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン誘導体、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の無機又は有機塩類、酸やアルカリ等のpH調整剤、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及びこれらの誘導体などの抗炎症剤、イソプロピルメチルフェノール等の殺菌剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、ビタミン類、クロロフィル、β-カロチン等の天然色素、タール色素等の着色剤などが挙げられる。
【0039】
本実施形態の液体洗浄剤のpHは、良好な使用感を確保し、皮膚に対する低刺激性を保持する観点から、pH5~11の範囲であるのが好ましく、pH6~10であるのがより好ましい。
本実施形態において、pHは、液体洗浄剤の原液を、pH電極を用い、30℃で測定する。
【0040】
本実施形態の液体洗浄剤は、液体状であり、泡の濃密感を維持したまま、押し圧の上昇を抑制する観点から、30℃における粘度が、5~1000mPa・sであるのが好ましく、8~800mPa・sがより好ましく、10~500mPa・sがさらに好ましい。なかでも、特に、すすぎ性を向上させる観点からは、上記粘度が、50mPa・s以下であることが好ましく、30mPa・s以下がより好ましい。また、特に、吐出泡をより一層、濃密で弾力のある泡とする観点からは、上記粘度が、30mPa・s以上であることが好ましく、50mPa・s以上がより好ましい。
本実施形態において、液体洗浄剤の粘度は、B型粘度計(TVB-10型粘度計、東機産業社製)を用い、30℃にて測定する。100mPa・s未満の粘度は、ロータNo.1(回転数)60rpmで測定し、100~199mPa・sの粘度は、ロータNo.1(回転数)30rpmで測定し、200~499mPa・sの粘度は、ロータNo.1(回転数)12rpmで測定し、1000mPa・s以上の粘度は、ロータNo.2(回転数)12rpmで、測定する。
【0041】
本実施形態の液体洗浄剤は、ノンエアゾールフォーマー容器に充填される。
ノンエアゾールフォーマー容器としては、液体洗浄剤を空気と混合して泡として吐出できるものであればいずれのものでも用いることができるが、例えば、ポンプヘッドを押すことで吐出するポンプフォーマー容器や、胴体部分を押すことで吐出するスクイズフォーマー容器が挙げられ、具体的には、吉野工業所社製、大和製罐社製のフォーマー容器等が挙げられる。また、例えば、特開平7-315463号公報、特開平8-230961号公報、特開2005-193972号公報等に記載されたフォーマー容器を使用することもできる。
なかでも、液体洗浄剤を使用する環境における利便性や、濃密で弾力のある泡を得る観点から、ポンプヘッドを押すことで吐出するポンプフォーマー容器が好ましく、泡質をさらに良好にする観点から、吐出流路に多孔質膜フィルターを備えるポンプフォーマー容器がより好ましい。このような多孔質膜フィルターは、さらにキメの細かく良好な泡質を得る観点から、90~400メッシュのフィルターが好ましく、200~400メッシュのフィルターがより好ましく、200~305メッシュのフィルターがさらに好ましい。かかる多孔質フィルターは吐出流路に1~3枚配置されていることが好ましく、2枚配置されていることがさらに好ましい。
ポンプフォーマー容器は、駆動機構が複雑で押し圧の影響を受けやすいが、本実施形態の液体洗浄剤であれば、ポンプフォーマー容器であっても、押し圧の上昇を抑制して濃密で弾力性の高い泡を吐出させることができる。
ポンプフォーマー容器における液体洗浄剤と空気の混合比については、例えば、吐出される泡の密度(液体洗浄剤の質量/空気の体積)が、良好な泡量と肌を洗いやすい泡質を得る観点から、0.03~0.14g/cm3であるのが好ましく、0.05~0.11g/cm3がより好ましい。
【0042】
本実施形態の液体洗浄剤は、ノンエアゾールフォーマー容器入り皮膚洗浄剤として用いるのが好ましく、皮膚洗浄剤のうちでも、ハンドソープ、洗顔料、又はボディーソープとして用いるのが好ましい。本実施形態の液体洗浄剤は、一般的な皮膚洗浄方法によって皮膚を洗浄するために用いることができる。例えば、ノンエアゾールフォーマー容器から吐出させた泡を手に取り、水で希釈せずにそのまま皮膚に直接適用し、泡立てて洗浄した後、シャワー等の温水を利用してすすぐことにより使用することができる。また、容器から吐出させた泡を手に取り、直接手で肌にのばして洗うことができる。
さらに、皮膚の洗浄方法としては、手で洗う方法の他、コットンやナイロン等の化学繊維から成るスポンジ、タオル、たわし等を使って洗う方法があるが、皮膚への刺激を低減する観点及び泡性能と使用感を効果的に発揮する観点からは、泡を直接手にとり、手で皮膚を洗う方法が好ましい。
【実施例
【0043】
実施例1~16、比較例1~7
表1に示す水溶性ポリマーについて、1質量%水溶液を調製し、中和条件下において、上記に記載の方法で、せん断速度1.0×10-1(s-1)での粘度v1、せん断速度1.0×10-2(s-1)での粘度v2を測定し、これらの比〔v2/v1〕を求めた。結果を表1に示す。
表2~表3に示す組成の液体洗浄剤を、水に各成分を混合し、溶解することにより製造した。得られた液体洗浄剤を、ポンプフォーマー容器(160mL〔YF-9413、吉野工業社製〕、下が200メッシュ、上が305メッシュの2枚を通すタイプの容器)に充填して、洗浄料を得た。充填前の液体洗浄剤の粘度及びpHを測定するとともに、ポンプの押しやすさ、ポンプ押し圧、吐出時の泡弾力、泡の濃密感及びすすぎのはやさを評価した。結果を表2~表3に併せて示す。
なお、実施例5は、参考例である。
【0044】
(評価方法)
(1)粘度:
各液体洗浄剤について、B型粘度計(TVB-10型粘度計、東機産業社製)を用い、30℃、測定時間1分間にて粘度を測定した。
100mPa・s未満の粘度はロータNo.1(回転数)60rpmで測定し、100~199mPa・sの粘度はロータNo.1(回転数)30rpmで測定し、200~499mPa・sの粘度はロータNo.1(回転数)12rpmで測定し、1000mPa・s以上の粘度はロータNo.2(回転数)12rpmにて測定した。
【0045】
(2)pH:
各液体洗浄剤の原液について、pH電極を用い、30℃にてpHを測定した。
【0046】
(3)ポンプの押しやすさ:
専門パネラー3名が、手のひらでポンプを押して吐出口から泡を吐出させたときのポンプの押しやすさを、下記基準にしたがって評価した。
専門パネラー3名の評価を元に、協議により決定した評価を示した。
5:非常に押しやすい。
4:押しやすい。
3:やや押しやすい。
2:やや重く押しにくい。
1:非常に重く押しにくい。
【0047】
(4)ポンプ押し圧:
押し圧試験機を用いて、50mm/sの一定速度でポンプヘッドを垂直方向から押し、その時にポンプヘッドに接触するセンサーにかかる荷重を測定した。より具体的には、押し圧試験機のセンサー部分にポンプヘッドが当接するように押し圧試験機にポンプフォーマー容器を設置し、ポンプヘッドを最下端部に至るまで押圧したときの荷重を測定した。
【0048】
(5)吐出時の泡弾力:
専門パネラー3名が、水で濡らした一方の手のひらの上に、容器の吐出口から泡を吐出させ(液量:2mL)、その後直ちに、吐出した泡の上方から他方の手を押し付け、かかる他方の手で感じた泡の弾力の程度を、下記基準にしたがって評価した。
専門パネラー3名の評価を元に、協議により決定した評価を示した。
5:非常に弾力がある。
4:弾力がある。
3:やや弾力がある。
2:やや弾力がない。
1:弾力がない。
【0049】
(6)泡の濃密感:
専門パネラー3名が、水で濡らした一方の手のひらの上に、容器の吐出口から泡を吐出させ(液量:2mL)、その後直ちに、他方の手と合わせて吐出した泡を挟み込み、両手を20往復擦りあわせ、手で感じた泡の濃密感の程度を、下記基準にしたがって評価した。
専門パネラー3名の評価を元に、協議により決定した評価を示した。
5:非常に濃密である。
4:濃密である。
3:やや濃密である。
2:やや濃密でない。
1:濃密でない。
【0050】
(7)すすぎのはやさ:
専門パネラー3名が、水で濡らした一方の前腕の上に、泡を吐出させ(液量:2mL)、その後直ちに他方の手で20往復擦り、その後、プラスチック容器に入った10mLの水道水を、繰り返しかけて、他方の手で前腕のぬるつきが感じられなくなるまでの回数を評価した。結果を、以下の基準で示した。
◎:3回以下。
○:4回又は5回。
×:6回以上。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】