(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】除湿装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20240422BHJP
F24F 3/147 20060101ALI20240422BHJP
F24F 11/84 20180101ALI20240422BHJP
F24F 11/52 20180101ALI20240422BHJP
F16J 15/16 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B01D53/26 220
F24F3/147
F24F11/84
F24F11/52
F16J15/16 B
(21)【出願番号】P 2019220907
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-09-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108890
【氏名又は名称】株式会社ダイキンアプライドシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弓削 秀樹
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-148997(JP,A)
【文献】特開2012-250208(JP,A)
【文献】特開2016-077990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
F24F 3/147
F24F 11/84
F24F 11/52
F16J 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を吸着および脱着できる回転式の吸着ロータ(22)と、
上記吸着ロータ(22)を収容するケーシング(21)と、
上記吸着ロータ(22)を通るように設けられ、内部を流れる空気の水分を上記吸着ロータ(22)に吸着させた後に対象空間(11)へ供給するための供給通路(24)と、
上記吸着ロータ(22)を通るように設けられ、内部を流れる空気へ上記吸着ロータ(22)が脱着した水分を付与させて上記吸着ロータ(22)を再生するための再生通路(25)と、
上記ケーシング(21)と上記吸着ロータ(22)との間の空間であるケーシング空間(21a)と、上記供給通路(24)および上記再生通路(25)との間をシールする少なくとも1つのシール部材(32)と、
上記ケーシング空間(21a)と連通し、上記ケーシング空間(21a)の空気を上記ケーシング(21)外へ排気するための排気通路(27)と
、
上記排気通路(27)の空気の流量を調節するための流量調節弁(28)と、
上記流量調節弁(28)の開度を制御する制御部(60)と、を備え、
上記再生通路(25)における上記吸着ロータ(22)の下流に設けられ、上記再生通路(25)の空気流れを生成する再生ファン(62)をさらに備え、
上記排気通路(27)は、上記ケーシング空間(21a)と、上記再生ファン(62)の上流の上記再生通路(25)とを連通させ
、
上記制御部(60)は、上記ケーシング空間(21a)の圧力が、上記供給通路(24)のうち上記吸着ロータ(22)と交差する部分の圧力よりも低くなるように、上記流量調節弁(28)の開度を制御する
ことを特徴とする除湿装置。
【請求項2】
請求項
1において、
上記制御部(60)は、上記ケーシング空間(21a)の圧力が所定圧力に近づくように、上記流量調節弁(28)の開度を制御する
ことを特徴とする除湿装置。
【請求項3】
請求項
1または2において、
上記制御部(60)は、上記流量調節弁(28)の開度が所定開度以上になると、そのことを人に知らせるための信号を発する
ことを特徴とする除湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、除湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水分を吸着および脱着できる回転式の吸着ロータと、これを収容するケーシングとを備えた除湿装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の除湿装置は、吸着ロータを通るように設けられた除湿用の通路と、吸着ロータを通るように設けられた再生用の通路と、両通路とケーシングの内部空間との間をシールするシール部材とをさらに備える。シール部材は、回転式の吸着ロータに対して圧接する弾性体を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸着ロータとシール部材との間には、製造誤差や経年劣化などに起因してわずかな隙間が生じることがある。このような隙間が生じると、除湿用の通路を流れる低湿空気(給気として対象空間に供給される)に、再生用の通路を流れる高湿空気や処理用の通路を流れる吸着ロータを通過していない低湿でない空気が混ざり込み、給気の露点温度が不安定になるおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、給気の露点温度を安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、除湿装置(20)を対象とする。除湿装置(20)は、水分を吸着および脱着できる回転式の吸着ロータ(22)と、上記吸着ロータ(22)を収容するケーシング(21)と、上記吸着ロータ(22)を通るように設けられ、内部を流れる空気の水分を上記吸着ロータ(22)に吸着させた後に対象空間(11)へ供給するための供給通路(24)と、上記吸着ロータ(22)を通るように設けられ、内部を流れる空気へ上記吸着ロータ(22)が脱着した水分を付与させて上記吸着ロータ(22)を再生するための再生通路(25)と、上記ケーシング(21)と上記吸着ロータ(22)との間の空間であるケーシング空間(21a)と、上記供給通路(24)および上記再生通路(25)との間をシールする少なくとも1つのシール部材(32)と、上記ケーシング空間(21a)と連通し、上記ケーシング空間(21a)の空気を上記ケーシング(21)外へ排気するための排気通路(27)とを備える。
【0007】
第1の態様では、再生通路(25)からケーシング空間(21a)へ空気が流れ出ることがあっても、その空気は排気通路(27)を介して排気され、供給通路(24)には実質的に流入しない。これにより、給気(SA)の露点温度を安定させることができる。
【0008】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、上記再生通路(25)における上記吸着ロータ(22)の下流に設けられ、上記再生通路(25)の空気流れを生成する再生ファン(62)をさらに備え、上記排気通路(27)は、上記ケーシング空間(21a)と、上記再生ファン(62)の上流の上記再生通路(25)とを連通させることを特徴とする。
【0009】
第2の態様では、再生ファン(62)が生成する空気流れによって、ケーシング空間(21a)の空気が排気通路(27)へ吸引される。これにより、給気(SA)の露点温度をより一層安定させることができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、上記第1または第2の態様において、上記排気通路(27)の空気の流量を調節するための流量調節弁(28)をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
第3の態様では、ケーシング空間(21a)の空気の排気通路(27)を介した排気量を適宜調節できる。
【0012】
本開示の第4の態様は、上記第3の態様において、上記流量調節弁(28)の開度を制御する制御部(60)をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
第4の態様では、制御部(60)により、ケーシング空間(21a)の空気の排気通路(27)を介した排気量が適宜調節される。
【0014】
本開示の第5の態様は、上記第4の態様において、上記制御部(60)は、上記ケーシング空間(21a)の圧力が、上記供給通路(24)のうち上記吸着ロータ(22)と交差する部分の圧力よりも低くなるように、上記流量調節弁(28)の開度を制御することを特徴とする。
【0015】
第5の態様では、ケーシング空間(21a)から供給通路(24)に空気が流入しにくくなる。よって、給気(SA)の露点温度をより一層安定させることができる。
【0016】
本開示の第6の態様は、上記第4または第5の態様において、上記制御部(60)は、上記ケーシング空間(21a)の圧力が所定圧力に近づくように、上記流量調節弁(28)の開度を制御することを特徴とする。
【0017】
第6の態様では、ケーシング空間(21a)の圧力を所望の圧力に調節することができる。
【0018】
本開示の第7の態様は、上記第5または第6の態様において、上記制御部(60)は、上記流量調節弁(28)の開度が所定開度以上になると、そのことを人に知らせるための信号を発することを特徴とする。
【0019】
第7の態様では、シール部材(32)のシール機能が損なわれていることを、人に知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態1の除湿システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の除湿システムが備える冷凍装置の冷媒回路図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の除湿装置のケーシングを示す正面断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の除湿装置の吸着ロータとシール部材を示す側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態2の除湿システムの概略構成図である。
【
図6】
図6は、実施形態2の除湿装置の吸着ロータとシール部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本実施形態の除湿システム(10)は、低露点空気を供給することにより対象空間(11)を除湿するためのものである。除湿システム(10)は、室外空気(OA)を除湿し、除湿後の空気を給気(SA)として対象空間(11)へ供給する。除湿対象となる対象空間(11)は、例えば、低露点空気が求められるリチウム電池の製造ラインのドライクリーンエリアである。
【0022】
対象空間(11)には、給気口(12)、還気口(13)、および排気口(14)が設けられる。給気口(12)は、対象空間(11)に給気(SA)を供給するためのものである。還気口(13)は、対象空間(11)の空気(室内空気(RA))を除湿システム(10)に還気するためのものである。排気口(14)は、室内空気(RA)を室外空間へ排気するためのものである。
【0023】
図1~
図4の除湿システム(10)は、リチウム電池の製造ラインの一部を構成する。
図1および
図2に示すように、除湿システム(10)は、除湿装置(20)と、冷凍装置(40)とを備える。
【0024】
〈除湿装置〉
図1に示すように、除湿装置(20)は、1つの(より具体的には、1つだけの)吸着ロータ(22)と、ケーシング(21)と、第1~第5シール部材(31~35)と、送気通路(23)と、供給通路(24)と、再生通路(25)と、還気通路(26)と、排気通路(27)と、制御部(60)とを備える。
【0025】
吸着ロータ(22)は、水分を吸着および脱着できる回転式の吸着ロータである。吸着ロータ(22)は、実質的に円板状に形成される。吸着ロータ(22)は、送気通路(23)、供給通路(24)、および再生通路(25)にまたがって設けられる。吸着ロータ(22)は、吸着ロータ(22)を回転駆動するためのモータ(29)と共にケーシング(21)に収容される。
【0026】
ケーシング(21)は、実質的に直方体状に形成された箱状部材である。ケーシング(21)は、吸着ロータ(22)、モータ(29)、および第1~第5シール部材(31~35)を収容する(
図3および
図4を参照)。ケーシング(21)の内壁は、吸着ロータ(22)から離間している。ケーシング(21)の内壁と吸着ロータ(22)との間の空間は、ケーシング空間(21a)になっている。より具体的に、ケーシング空間(21a)は、ケーシング(21)の内壁と吸着ロータ(22)との間の空間のうち、第2シール部材(32)により仕切られかつ当該吸着ロータ(22)の外周部を囲む空間である(
図3および
図4を参照)。
【0027】
第1~第5シール部材(31~35)は、ケーシング空間(21a)と、送気通路(23)、供給通路(24)、および再生通路(25)との間、または送気通路(23)、供給通路(24)、および再生通路(25)の間をシールするための部材である。第1~第5シール部材(31~35)は、シリコンなどの弾性体で構成され、ケーシング(21)内で基端部が固定されている。
図3および
図4に示すように、第1~第5シール部材(31~35)は、吸着ロータ(22)に対して突端部が接触するように設けられる。なお、
図4では、各シール部材(31~35)と吸着ロータ(22)との間の接触領域を二点鎖線で示してある。第1~第5シール部材(31~35)は、一対ずつ設けられ、その一方が吸着ロータ(22)の一方側に、他方が吸着ロータ(22)の他方側に配置される。第1~第5シール部材(31~35)は、それぞれシール部材に対応する。
【0028】
第1シール部材(31)は、吸着ロータ(22)の内周に沿って配置される。第2シール部材(32)は、吸着ロータ(22)の外周に沿って配置される。第3~第5シール部材(33~35)の各々は、吸着ロータ(22)の径方向に沿って配置される。第1および第2シール部材(31,32)により、ケーシング空間(21a)と、それぞれ後述する第1除湿部(23c)、第2除湿部(24a)、および再生部(25a)との間がシールされる。第3~第5シール部材(33~35)により、第1除湿部(23c)、第2除湿部(24a)、および再生部(25a)の間がシールされる。
【0029】
送気通路(23)は、流入端が室外空間に連通し、かつ流出端が供給通路(24)および再生通路(25)に連通する。送気通路(23)は、室外空気(OA)が流れる第1区間(23a)と、室外空気(OA)と対象空間(11)からの還気との混合空気が流れる第2区間(23b)とを有する。
【0030】
第1区間(23a)には、後述する第1蒸発器(54)が設けられる。第2区間(23b)における吸着ロータ(22)よりも上流には、後述する第2蒸発器(55)が設けられる。第2区間(23b)における吸着ロータ(22)と交差する部分は、第1除湿部(23c)になっている。第1除湿部(23c)は、所定の周方向範囲に広がっている(
図4を参照)。第2区間(23b)における吸着ロータ(22)よりも下流には、送気通路(23)における空気流れを生成する送気ファン(61)が設けられる。
【0031】
供給通路(24)は、流入端が送気通路(23)に連通し、かつ流出端が給気口(12)を介して対象空間(11)に連通する。供給通路(24)における吸着ロータ(22)よりも上流には、後述する第3蒸発器(56)が設けられる。供給通路(24)における吸着ロータ(22)と交差する部分は、第2除湿部(24a)になっている。第2除湿部(24a)は、所定の周方向範囲に広がっている(
図4を参照)。供給通路(24)における吸着ロータ(22)よりも下流には、後述する第1放熱器(45)が設けられる。
【0032】
再生通路(25)は、流入端が送気通路(23)に連通し、かつ流出端が室外空間に連通する。再生通路(25)における吸着ロータ(22)よりも上流には、後述する第2放熱器(46)が設けられる。再生通路(25)における吸着ロータ(22)と交差する部分は、再生部(25a)になっている。再生部(25a)は、所定の周方向範囲に広がっている(
図4を参照)。再生通路(25)における吸着ロータ(22)よりも下流には、再生通路(25)における空気流れを生成する再生ファン(62)が設けられる。
【0033】
還気通路(26)は、流入端が還気口(13)を介して対象空間(11)に連通し、かつ流出端が送気通路(23)における第1区間(23a)と第2区間(23b)との間に連通する。
【0034】
排気通路(27)は、流入端がケーシング空間(21a)に連通し、かつ流出端が再生通路(25)における吸着ロータ(22)と再生ファン(62)との間に連通する。排気通路(27)には、この排気通路(27)を流れる空気の流量を調節するための流量調節弁(28)が設けられる。
【0035】
図4に二点鎖線で示すように、排気通路(27)の流入端は、側面視で吸着ロータ(22)とケーシング(21)の内壁との間に開口している。この例では、排気通路(27)の流入端と再生部(25a)との間の最短距離は、排気通路(27)の流入端と第1除湿部(23c)との間の最短距離よりも短く、かつ排気通路(27)の流入端と第2除湿部(24a)との間の最短距離よりも短い。なお、排気通路(27)の流入端は、ケーシング空間(21a)に連通していれば、その他の任意の位置に開口していてもよい。
【0036】
制御部(60)は、流量調節弁(28)の開度を調節するためのものである。制御部(60)は、CPUと、CPUによって実行可能なプログラムが格納されたメモリなどによって構成される。制御部(60)には、ケーシング空間(21a)、第1除湿部(23c)、および第2除湿部(24a)の各々の圧力を検出する複数の圧力センサ(図示せず)の検出値が入力される。制御部(60)は、入力された検出値に基づいて、流量調節弁(28)の開度を調節する。
【0037】
〈冷凍装置〉
図1および
図2に示すように、冷凍装置(40)は、冷媒回路(41)を備える。冷媒回路(41)は、圧縮機(42)と、インタークーラ(43)と、オイルセパレータ(44)と、第1および第2放熱器(45,46)と、ガスクーラ(47)と、中間冷却器(48)と、第1~第3膨張弁(51~53)と、第1~第3蒸発器(54~56)とを有する。これらの構成機器は、冷媒配管によって互いに接続される。
【0038】
圧縮機(42)は、二段圧縮式の回転式圧縮機である。圧縮機(42)は、吸入した低圧のガス冷媒を圧縮して中間圧のガス冷媒を吐出すると共に、吸入した中間圧のガス冷媒を圧縮して高圧のガス冷媒を吐出する。
【0039】
インタークーラ(43)は、圧縮機(42)が吐出した中間圧のガス冷媒を、ファン(図示せず)によって搬送される室外空気と熱交換させて冷却する。インタークーラ(43)から流出した中間圧のガス冷媒は、圧縮機(42)へ送られる。
【0040】
オイルセパレータ(44)は、圧縮機(42)が吐出した高圧のガス冷媒から冷凍機油を分離する。オイルセパレータ(44)で分離された冷凍機油は、油戻し管(41a)を介して圧縮機(42)に戻される。オイルセパレータ(44)から流出した高圧のガス冷媒は、第1および第2放熱器(45,46)に送られる。
【0041】
第1放熱器(45)は、上記供給通路(24)における吸着ロータ(22)よりも下流に設けられる。第1放熱器(45)は、供給通路(24)を流れる空気を、オイルセパレータ(44)から流出した高圧のガス冷媒と熱交換させて加熱する。この際、第1放熱器(45)の内部では、高圧のガス冷媒が放熱する。
【0042】
第2放熱器(46)は、上記再生通路(25)における吸着ロータ(22)よりも上流に設けられる。第2放熱器(46)は、再生通路(25)を流れる空気を、オイルセパレータ(44)から流出した高圧のガス冷媒と熱交換させて加熱する。この際、第2放熱器(46)の内部では、高圧のガス冷媒が放熱する。
【0043】
ガスクーラ(47)は、第1および第2放熱器(45,46)から流出した高圧冷媒を、ファン(図示せず)によって搬送される室外空気と熱交換させて冷却する。ガスクーラ(47)から流出した高圧冷媒は、第1電動弁(57)で減圧されて中間冷却器(48)へ送られる。
【0044】
中間冷却器(48)は、流入する中間圧の冷媒を分流させ、一方に分岐した冷媒を減圧手段(図示せず)で減圧させ、この減圧された冷媒により他方に分岐した冷媒を冷却する。冷却された冷媒は、第1~第3膨張弁(51~53)へ送られる。減圧された冷媒は、第2電動弁(58)でさらに減圧され、インタークーラ(43)から流出した冷媒と合流して圧縮機(42)へ送られる。
【0045】
第1膨張弁(51)は、中間冷却器(48)から送られてきた冷媒を減圧する。第1膨張弁(51)で減圧された冷媒は、第1蒸発器(54)へ送られる。第1膨張弁(51)は、例えば開度可変の電子膨張弁で構成される。
【0046】
第2膨張弁(52)は、中間冷却器(48)から送られてきた冷媒を減圧する。第2膨張弁(52)で減圧された冷媒は、第2蒸発器(55)へ送られる。第2膨張弁(52)は、例えば開度可変の電子膨張弁で構成される。
【0047】
第3膨張弁(53)は、中間冷却器(48)から送られてきた冷媒を減圧する。第3膨張弁(53)で減圧された冷媒は、第3蒸発器(56)へ送られる。第3膨張弁(53)は、例えば開度可変の電子膨張弁で構成される。
【0048】
第1蒸発器(54)は、上記送気通路(23)の第1区間(23a)に設けられる。第1蒸発器(54)は、第1区間(23a)を流れる空気を、内部を流れる冷媒と熱交換させて冷却する。この際、第1蒸発器(54)の内部では、冷媒が蒸発する。第1蒸発器(54)から流出した低圧のガス冷媒は、圧縮機(42)へ送られる。
【0049】
第2蒸発器(55)は、上記送気通路(23)の第2区間(23b)における吸着ロータ(22)よりも上流に設けられる。第2蒸発器(55)は、第2区間(23b)を流れる空気を、内部を流れる冷媒と熱交換させて冷却する。この際、第2蒸発器(55)の内部では、冷媒が蒸発する。第2蒸発器(55)から流出した低圧のガス冷媒は、圧縮機(42)へ送られる。
【0050】
第3蒸発器(56)は、上記供給通路(24)における吸着ロータ(22)よりも上流に設けられる。第3蒸発器(56)は、供給通路(24)を流れる空気を、内部を流れる冷媒と熱交換させて冷却する。この際、第3蒸発器(56)の内部では、冷媒が蒸発する。第3蒸発器(56)から流出した低圧のガス冷媒は、圧縮機(42)へ送られる。
【0051】
-運転動作-
除湿システム(10)の運転時には、除湿装置(20)において、送気ファン(61)および再生ファン(62)が駆動され、かつ吸着ロータ(22)が回転駆動される。除湿システム(10)の運転時には、冷凍装置(40)において、圧縮機(42)が駆動され、それにより冷媒回路(41)で蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。以下、特に除湿装置(20)の運転動作について説明する。
【0052】
除湿装置(20)では、送気通路(23)に室外空気(OA)が流入する。送気通路(23)の第1区間(23a)を流れる室外空気(OA)は、第1蒸発器(54)を通過する際に冷却される。室外空気(OA)は、第1区間(23a)から流出する際に、還気通路(26)を流れてきた対象空間(11)からの還気と合流して混合空気となって第2区間(23b)へ流入する。第2区間(23b)を流れる混合空気は、第2蒸発器(55)を通過する際に冷却された後、第1除湿部(23c)で吸着ロータ(22)に水分を吸着されて除湿される(以下、第1除湿部(23c)で除湿された後の空気を、第1除湿空気ともいう)。
【0053】
第1除湿空気は、第2区間(23b)から供給通路(24)と再生通路(25)とに分かれて流入する。供給通路(24)を流れる空気は、第3蒸発器(56)を通過する際に冷却された後、第2除湿部(24a)で吸着ロータ(22)に水分を吸着されてさらに除湿される(以下、第2除湿部(24a)で除湿された後の空気を、第2除湿空気ともいう)。一方、再生通路(25)を流れる空気は、第2放熱器(46)を通過する際に加熱された後、再生部(25a)で吸着ロータ(22)から水分を付与され、それにより吸着ロータ(22)が再生される(以下、再生部(25a)で加湿された後の空気を、加湿空気ともいう)。
【0054】
第2除湿空気は、第1放熱器(45)を通過する際に加熱された後、給気(SA)として対象空間(11)へ供給され、これにより対象空間(11)が除湿される。対象空間(11)の空気の一部は、排気口(14)から排気(EA)として室外空間へ排気される。対象空間(11)の空気の別の一部は、還気口(13)から還気通路(26)に流入する。加湿空気は、再生通路(25)を流れて排気(EA)として室外空間へ排気される。
【0055】
このような一連の動作の中で、制御部(60)は、排気通路(27)の流量調節弁(28)の開度を適宜調節する。具体的に、制御部(60)は、ケーシング空間(21a)の圧力が、第1除湿部(23c)および第2除湿部(24a)の圧力よりも低くなるように、流量調節弁(28)の開度を制御する。この場合、制御部(60)は、ケーシング空間(21a)の圧力が第1除湿部(23c)または第2除湿部(24a)の圧力に近づいたとき(具体的には、両圧力の差が所定の閾値を下回ったとき)、流量調節弁(28)の開度を大きくする。
【0056】
制御部(60)は、ケーシング空間(21a)の圧力が、所定圧力に近づくように、流量調節弁(28)の開度を制御する。この場合、制御部(60)は、ケーシング空間(21a)の圧力が所定圧力よりも高いとき、流量調節弁(28)の開度を大きくする一方、ケーシング空間(21a)の圧力が所定圧力よりも低いとき、流量調節弁(28)の開度を小さくする。
【0057】
さらに、制御部(60)は、流量調節弁(28)の開度が所定開度以上になると、そのことを人に知らせるための信号を発する。流量調節弁(28)の開度が所定開度以上になることは、第2シール部材(32)のシール機能が損なわれていることを意味するためである。制御部(60)が発した信号は、不図示の報知手段(例えば、画像表示装置、音発生装置、発光装置、または外部発信装置など)に伝達され、それにより報知手段が作動する。
【0058】
-実施形態1の効果-
本実施形態の除湿装置(20)は、水分を吸着および脱着できる回転式の吸着ロータ(22)と、上記吸着ロータ(22)を収容するケーシング(21)と、上記吸着ロータ(22)を通るように設けられ、内部を流れる空気の水分を上記吸着ロータ(22)に吸着させた後に対象空間(11)へ供給するための供給通路(24)と、上記吸着ロータ(22)を通るように設けられ、内部を流れる空気へ上記吸着ロータ(22)が脱着した水分を付与させて上記吸着ロータ(22)を再生するための再生通路(25)と、上記ケーシング(21)と上記吸着ロータ(22)との間の空間であるケーシング空間(21a)と、上記供給通路(24)および上記再生通路(25)との間をシールする第2シール部材(32)と、上記ケーシング空間(21a)と連通し、上記ケーシング空間(21a)の空気を上記ケーシング(21)外へ排気するための排気通路(27)とを備える。第2シール部材(32)が十分に機能しない場合、ケーシング空間(21a)を介して供給通路(24)と再生通路(25)とが、または送気通路(23)と供給通路(24)とが連通するおそれがある。ここで、再生通路(25)、ケーシング空間(21a)、および供給通路(24)の順に、または送気通路(23)、ケーシング空間(21a)、および供給通路(24)の順に空気が流れ込むと、給気の露点温度が不安定になる。これに対し、本実施形態では、再生通路(25)または送気通路(23)からケーシング空間(21a)に流れ出た空気は、排気通路(27)を介して排気され、供給通路(24)には実質的に流入しない。これにより、給気(SA)の露点温度を安定させることができる。
【0059】
また、本実施形態の除湿装置(20)は、上記再生通路(25)における上記吸着ロータ(22)の下流に設けられ、上記再生通路(25)の空気流れを生成する再生ファン(62)をさらに備え、上記排気通路(27)が、上記ケーシング空間(21a)と、上記再生ファン(62)の上流の上記再生通路(25)とを連通させる。この構成によると、再生ファン(62)が生成する空気流れによって、ケーシング空間(21a)の空気が排気通路(27)へ吸引される。これにより、再生通路(25)または送気通路(23)からケーシング空間(21a)に流れ出た空気の排気が促進され、給気(SA)の露点温度をより一層安定させることができる。
【0060】
また、本実施形態の除湿装置(20)は、上記排気通路(27)の空気の流量を調節するための流量調節弁(28)をさらに備える。この構成によると、ケーシング空間(21a)の空気の排気通路(27)を介した排気量を適宜調節できる。
【0061】
また、本実施形態の除湿装置(20)は、上記流量調節弁(28)の開度を制御する制御部(60)をさらに備える。この構成によると、制御部(60)により、ケーシング空間(21a)の空気の排気通路(27)を介した排気量が適宜調節される。
【0062】
また、本実施形態の除湿装置(20)は、上記制御部(60)が、上記ケーシング空間(21a)の圧力が、上記供給通路(24)のうち上記吸着ロータ(22)と交差する部分の圧力よりも低くなるように、上記流量調節弁(28)の開度を制御する。この構成によると、ケーシング空間(21a)の圧力が供給通路(24)の所定部分よりも低いため、ケーシング空間(21a)から供給通路(24)へ空気が流入しにくくなる。つまり、再生通路(25)または送気通路(23)からケーシング空間(21a)に空気が流出することがあっても、その空気が供給通路(24)に流入しにくい。よって、給気(SA)の露点温度をより一層安定させることができる。
【0063】
また、本実施形態の除湿装置(20)は、上記制御部(60)が、上記ケーシング空間(21a)の圧力が所定圧力に近づくように、上記流量調節弁(28)の開度を制御する。この構成によると、ケーシング空間(21a)の圧力を所望の圧力に調節することができる。例えば、ケーシング空間(21a)の圧力を、第1除湿部(23c)および第2除湿部(24a)の圧力以下かつ再生部(25a)の圧力以上に調節することが考えられる。
【0064】
また、本実施形態の除湿装置(20)は、上記制御部(60)が、上記流量調節弁(28)の開度が所定開度以上になると、そのことを人に知らせるための信号を発する。ここで、ケーシング空間(21a)の圧力を調節するときに、流量調節弁(28)の開度が所定開度以上になることは、ケーシング空間(21a)に存在する空気の量が多いことを示す。ケーシング空間(21a)の空気量が多いのは、第2シール部材(32)のシール機能が損なわれているためである。よって、この構成によると、第2シール部材(32)のシール機能が損なわれていることを人に知らせることができる。
【0065】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態の除湿システム(10)は、除湿装置(20)の構成が上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0066】
図5および
図6に示すように、除湿装置(20)は、送気通路(23)と、供給通路(24)および再生通路(25)との間の接続点が、吸着ロータ(22)よりも上流にある。送気ファン(61)は、送気通路(23)の第2区間(23b)における第2蒸発器(55)よりも上流に設けられる。
【0067】
供給通路(24)における吸着ロータ(22)と交差する部分は、除湿部(24a)になっている。除湿部(24a)は、所定の周方向範囲に広がっている(
図6を参照)。供給通路(24)における吸着ロータ(22)よりも下流には、冷凍装置(40)の第1放熱器(45)が設けられる。
【0068】
再生通路(25)は、2つの箇所で吸着ロータ(22)と交差している。再生通路(25)における吸着ロータ(22)と交差する部分は、上流側から順に、熱回収部(25b)および再生部(25a)になっている。再生通路(25)における熱回収部(25b)と再生部(25a)との間には、冷凍装置(40)の第2放熱器(46)が設けられる。
【0069】
図6に示すように、第1シール部材(31)は、吸着ロータ(22)の内周に沿って配置される。第2シール部材(32)は、吸着ロータ(22)の外周に沿って配置される。第3~第5シール部材(33~35)の各々は、吸着ロータ(22)の径方向に沿って配置される。第2シール部材(32)により、ケーシング空間(21a)と、除湿部(24a)、熱回収部(25b)、および再生部(25a)との間がシールされる。第1シール部材(31)および第3~第5シール部材(33~35)により、除湿部(24a)、熱回収部(25b)、および再生部(25a)の間がシールされる。
【0070】
-運転動作-
特に除湿装置(20)の運転動作について説明する。除湿装置(20)では、送気通路(23)に室外空気(OA)が流入する。送気通路(23)の第1区間(23a)を流れる室外空気(OA)は、第1蒸発器(54)を通過する際に冷却される。室外空気(OA)は、第1区間(23a)から流出する際に、還気通路(26)を流れてきた対象空間(11)からの還気と合流して混合空気となって第2区間(23b)へ流入する。第2区間(23b)を流れる混合空気は、第2蒸発器(55)を通過する際に冷却された後、供給通路(24)と再生通路(25)とに分かれて流入する。
【0071】
供給通路(24)を流れる空気は、除湿部(24a)で吸着ロータ(22)に水分を吸着されて除湿される(以下、除湿部(24a)で除湿された後の空気を、除湿空気ともいう)。一方、再生通路(25)を流れる空気は、熱回収部(25b)で吸着ロータ(22)から熱を付与されて加熱される。熱回収部(25b)から流出した空気は、第2放熱器(46)を通過する際にさらに加熱された後、再生部(25a)で吸着ロータ(22)から水分を付与され、それにより吸着ロータ(22)が再生される(以下、再生部(25a)で加湿された後の空気を、加湿空気ともいう)。
【0072】
除湿空気は、第1放熱器(45)を通過する際に加熱された後、給気(SA)として対象空間(11)へ供給され、これにより対象空間(11)が除湿される。対象空間(11)の空気の一部は、排気口(14)から排気(EA)として室外空間へ排気される。対象空間(11)の空気の別の一部は、還気口(13)から還気通路(26)に流入する。加湿空気は、再生通路(25)を流れて排気(EA)として室外空間へ排気される。
【0073】
-実施形態2の効果-
本実施形態の除湿装置(20)によっても、上記実施形態1と同様の効果が得られる。
【0074】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0075】
例えば、除湿装置(20)は、上記実施形態の第2除湿部(24a)または熱回収部(25b)を備えず、1つの除湿部と1つの再生部のみを備えるものであってもよい。この場合、第3~第5シール部材(33~35)のうち1つを省略することができる。
【0076】
また、例えば、上記実施形態1において、還気通路(26)の流出端は、送気通路(23)における第1除湿部(23c)と送気ファン(61)との間に連通していてもよい。
【0077】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本開示は、除湿装置について有用である。
【符号の説明】
【0079】
11 対象空間
20 除湿装置
21 ケーシング
21a ケーシング空間
22 吸着ロータ
24 供給通路
25 再生通路
27 排気通路
28 流量調節弁
32 第2シール部材(シール部材)
60 制御部
62 再生ファン