(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】炭化水素船舶用燃料油
(51)【国際特許分類】
C10L 1/188 20060101AFI20240422BHJP
C10L 1/189 20060101ALI20240422BHJP
C10L 1/24 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C10L1/188
C10L1/189
C10L1/24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019221808
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-10-03
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500010875
【氏名又は名称】インフィニューム インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】ロバート レイ
(72)【発明者】
【氏名】ポール カービー
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-111807(JP,A)
【文献】特開平01-279995(JP,A)
【文献】特開2005-082810(JP,A)
【文献】特表2010-522782(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0000156(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0158977(US,A1)
【文献】特開2014-101513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/188、1/189、1/196、1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用留出燃料または重質燃料油またはそれらのブレンドを含む液体炭化水素船舶用燃料油であって、
(A)ポリアルケニル置換カルボン酸または無水物;および
(B)ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエート金属塩またはヒドロカルビル置換スルホネート金属塩または両方の塩の混合物を含む金属洗浄剤系;
からなる添加剤の組合せを含み、
(A)対(B)の質量:質量比は、20:1~1:20の範囲内であり、該添加剤の組合せの処理割合は、5質量ppm、10質量ppm、100質量ppmまたは500質量ppmから1000質量ppm、5000質量ppmまたは10000質量ppmまでの範囲内である、前記船舶用燃料油。
【請求項2】
ISO 8217:2017、ISO 8217:2012、ISO 8217:2010およびISO 8217:2005の石油製品のための船舶用燃料規格の少なくとも1つを満たす、請求項1記載の船舶用燃料油。
【請求項3】
0.5質量%以下、0.5質量%未満、0.4質量%以下、0.4質量%未満、0.3質量%以下、0.3質量%未満、0.2質量%以下、0.2質量%未満、0.1質量%以下または0.1質量%未満の硫黄原子の硫黄含有率を有する、請求項1または請求項2記載の船舶用燃料油。
【請求項4】
原油から分別蒸留によってそれの全部または一部が生成される、請求項1~3のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
【請求項5】
(A)対(B)の質量:質量比が、1:1~1:6の範囲内である、請求項1~4のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
【請求項6】
(A)において、該ポリアルケニル置換基が、8~400個の炭素原子を有する、請求項1~5のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
【請求項7】
(A)において、該ポリアルケニル置換基が、350~2000の数平均分子量を有する、請求項1~6のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
【請求項8】
(A)が、コハク酸無水物である、請求項1~7のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
【請求項9】
(A)が、ポリイソブテンコハク酸無水物である、請求項8記載の船舶用燃料油。
【請求項10】
(B)において、該金属が、カルシウムである、請求項1~9のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
【請求項11】
(B)において、該ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエートが、サリチレートである、請求項1~10のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
【請求項12】
(B)において、該ヒドロカルビル基が、8~100個の炭素原子を有する、請求項1~11のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
【請求項13】
(B)において、ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエート金属塩またはヒドロカルビル置換スルホネート金属塩または両方の塩が、0、50、100または150の下限と300、350、400、450または500の上限の範囲内にあるTBNを有する、請求項1~12のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
【請求項14】
(B)ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエート金属塩またはヒドロカルビル置換スルホネート金属塩または両方の塩が、過塩基性洗浄剤として存在する、請求項1~13のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
【請求項15】
前記添加剤(A)および(B)が、洗浄剤、分散剤、安定剤、解乳化剤、エマルジョン防止剤、腐蝕抑制、低温流動性向上剤、流動点降下剤、CFPP変性剤、粘性改良剤、潤滑性向上剤および/または助燃剤および/または他の添加剤の1種以上
と共に使用される、請求項1~14のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
【請求項16】
船舶用留出燃料または重質燃料油またはそれらのブレンドを含む液体炭化水素船舶用燃料油において、アスファルテンアグロメレーションおよび/またはフロキュレーションを阻害するため、および/またはアスファルテンを分散させかつ/または表面上への沈着を制御するための、添加剤(A)ポリアルケニル置換カルボン酸または無水物および(B)ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエート金属塩またはヒドロカルビル置換スルホネート金属塩または両方の塩の混合物を含む金属洗浄剤系の組合せの使用であって、
(A)対(B)の質量:質量比は、20:1~1:20の範囲内であり、該添加剤の組合せの処理割合は、5質量ppm、10質量ppm、100質量ppmまたは500質量ppmから1000質量ppm、5000質量ppmまたは10000質量ppmまでの範囲内である、使用。
【請求項17】
液体炭化水素船舶用燃料油におけるアスファルテンアグロメレーションおよび/またはフロキュレーションを阻害し、かつ/またはアスファルテンを分散させかつ/または表面上への沈着を制御する方法であって、添加剤(A)ポリアルケニル置換カルボン酸または無水物および(B)ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエート金属塩またはヒドロカルビル置換スルホネート金属塩または両方の塩の混合物を含む金属洗浄剤系の組合せを該油に添加することを含み、(A)対(B)の質量:質量比は、20:1~1:20の範囲内であり、該添加剤の組合せの処理割合は、5質量ppm、10質量ppm、100質量ppmまたは500質量ppmから1000質量ppm、5000質量ppmまたは10000質量ppmまでの範囲内である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体炭化水素船舶用燃料油における添加剤の、アスファルテンアグロメレーションおよび/またはフロキュレーションを阻害するためやアスファルテンを分散させかつ/または該油と接触している表面上への沈着物を制御するためなどの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルテンには、ヘテロ原子を有する高分子量縮環芳香族化合物などの多数の構造が含まれる;アスファルテンは、主に炭素と水素の複素環式不飽和高分子であるが、硫黄、酸素、窒素および各種重金属などの少量の成分も含有する。アスファルテンは、船舶用燃料油中にかなりの量で存在し、該油の運搬、貯蔵および使用の間に不利な結果を伴って沈殿および沈着する場合がある。
当該技術は、この問題を解決するために、添加剤の使用によって多くの処理を説明している。例えば、US-A-2017/0306215号(「’215」)は、炭化水素中のアスファルテン沈殿および/または沈着を、該炭化水素にアルキル(アルケニル)置換無水コハク酸(ここで、アルキル(アルケニル)基当たりのコハク酸基の平均数は、2.0未満である)と少なくとも1種のポリオールとを反応させることによって得られる効果的な量のポリエステルアスファルテン分散剤を加えることにより阻害することを記載している。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、’215と異なる方法で上述のアスファルテン問題に対処するものである。それは、例えば、未反応無水コハク酸を使用しかつ金属洗浄剤と組合せており、それの有効性は本明細書の実施例の項で実証されている。
第1の態様において、本発明は、船舶用留出燃料または重質燃料油またはそのブレンドを含む液体炭化水素船舶用燃料油であって、下記を含む添加剤の組合せを含有する、上記燃料油を提供する:
(A)ポリアルケニル置換カルボン酸または無水物;および
(B)ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエート金属塩またはヒドロカルビル置換スルホネート金属塩または両方の塩の混合物またはその複合体を含む金属洗浄剤系;
(ここで、(A)対(B)の質量:質量比は、20:1~1:20、例えば10:1~1:10、好ましくは3:1~1:3の範囲内であり、該添加剤の組合せの処理割合(treat rate)は、5質量ppm、10質量ppm、100質量ppmまたは500質量ppmから1000質量ppm、5000質量ppmまたは10000質量ppmまで、好ましくは100~5,000質量ppm、例えば500~1,000質量ppmの範囲内である)。
【0004】
上記液体炭化水素船舶用燃料油は、ISO 8217:2017、ISO 8217:2012、ISO 8217:2010および/またはISO 8217:2005の石油製品のための船舶用燃料規格の少なくとも1つに従って定められてもよく(またはそれを満たしてもよく);0.5質量%以下の硫黄原子の硫黄含有率を有してもよく;原油から分別蒸留によって完全に(全部)または部分的に(一部)生成してもよく;該添加剤(A)および(B)が洗浄剤、分散剤、安定剤、解乳化剤、エマルジョン防止剤、腐蝕防止剤、低温流動性向上剤(流動点降下剤、CFPP変性剤など)、粘性改良剤、潤滑性向上剤および/または助燃剤および/または他の添加剤の1種以上としてまたはそれらと共に使用されるようなものであってもよく;かつ/またはそれらの任意の組合せであってもよい。
第2の態様において、本発明は、上で定義した液体炭化水素船舶用燃料油において、アスファルテンアグロメレーションおよび/またはフロキュレーションを阻害するため、および/またはアスファルテンを分散させかつ/または表面上への沈着を制御するための、上で定義した添加剤の組合せの使用を提供する。
第3の態様において、本発明は、液体炭化水素船舶用燃料油におけるアスファルテンアグロメレーションおよび/またはフロキュレーションを阻害し、かつ/またはアスファルテンを分散させかつ/または表面上への沈着を制御する方法であって、効果的な量の上記の通りの添加剤の組合せを該油に添加することを含む、上記方法を提供する。
【0005】
<定義>
下記の定義は、説明のために制限のためでなく示される。
「アルキル」は、二重結合または三重結合を含まず、分岐鎖または直鎖に配置された一価の炭化水素基を指す。
「アルキレン」は、二重結合または三重結合を含まず、分岐鎖または直鎖に配置された二価の炭化水素基を指す。
「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を含み、分岐鎖または直鎖に配置された一価の炭化水素基を指す。
「PIB」は、ポリイソブチレンを指し、通常のまたは「従来の」ポリイソブチレンおよび高反応性(HRPIB)の両方を含める。
個々のポリマー(例えば、ポリプロピレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)またはPIB)であるグループについては、ポリマー鎖に沿ってごくわずかな量の他の置換および/または中断と共に主にそれぞれのモノマーを含有するポリマーを包含する。言い換えれば、ポリプロピレングループであるグループについては、該グループが任意の結合基、置換、不純物または他の置換基(例えばアルキレンまたはアルケニレン置換基)のない100%プロピレンモノマーからなることを必要としない。そのような不純物または他の置換基は、純度100%のそれぞれのポリマー置換基を含む同じ添加剤と比較して該添加剤の工業性能に影響を及ぼさないとすれば比較的少量で存在してもよい。
【0006】
「ヒドロカルビル」は、炭素原子と水素原子を含み、炭素原子を介して分子の残部に結合される基(group or radical)を意味する。ヒドロカルビルは、本質的に炭化水素の性質および該基の特性に影響を及ぼさないとすれば、ヘテロ原子、すなわち炭素および水素以外の原子を含んでもよい。
また、下記の語および表現が使用される場合には下記に基づく意味を有する:
「有効成分」または「(a.i.)」は、希釈剤または溶媒でない添加物質を指す;
「含む」またはその同語源は、記載された特徴、工程、整数または成分の存在を特定するが、1種以上の他の特徴、工程、整数、成分またはそれらの群の存在または追加を排除しない;「~からなる」または「本質的に~からなる」という表現またはその同語源は、「含む」またはその同語源に含めることができ、「本質的に~からなる」はそれが適用する組成物の特徴に実質的に影響しない物質を含むことを許容する;
「主要な量」は、組成物の50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上を意味する;
「少量」は、組成物の50質量%未満、好ましくは40質量%未満、より好ましくは30質量%未満、さらにより好ましくは20質量%未満を意味する;
「TBN」は、ASTM D2896によって測定される全塩基価を意味する。
さらに、本明細書において使用される場合には:
「カルシウム含有率」は、ASTM 4951によって測定され;
「リン含有率」は、ASTM D5185によって測定され;
「硫酸灰分含有率」は、ASTM D874によって測定され;
「硫黄含有率」は、ASTM D2622によって測定され;
「KV100」は、ASTM D445によって測定される100℃での動粘性を意味する。
【0007】
また、使用される各種成分は、必須ならびに最適および慣用であり、配合、貯蔵または使用の条件下で反応する可能性もあり、本発明が、そのようないかなる反応の結果として得ることができるまたは得られる製品をも提供することも理解されるであろう。
さらに、本明細書に示される上限および下限の量、範囲および比率限界が独立して組合せられてもよいことが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ポリアルケニル置換カルボン酸または無水物(A)
添加剤成分(A)は、モノまたはポリカルボキシル、好ましくはジカルボキシルでもよい。そのポリアルケニル基は、8~400個、例えば12~100個の炭素原子を有することが好ましい。
(A)の中の典型的な無水物は、一般式によって示すことができる:
【化1】
(式中、R
1は、分岐鎖または直鎖C
8~C
100ポリアルケニル基を表す)。
そのポリアルケニル部分は、数平均分子量が200~10000、好ましくは350~2000、好ましくは500~1000であることができる。
【0009】
上記ポリアルケニル部分を生成するために本発明に使用される無水物の形成に使われる適切な炭化水素またはポリマーには、ホモポリマー、インターポリマーまたは低分子量炭化水素が含まれる。そのようなポリマーの一ファミリーは、エチレンおよび/または式H2C=CHR1(式中、R1は、1~26個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルキル基である)を有する少なくとも1種のC3~C28アルファオレフィンのポリマーを含み、上記ポリマーは、炭素間不飽和、好ましくは高度の末端エテニリデン不飽和を含有する。好ましくは、そのようなポリマーは、エチレンと上記の式の少なくとも1種のアルファオレフィンのインターポリマーを含み、R1は、1~18個、より好ましくは1~8個、さらにより好ましくは1~2個の炭素原子のアルキルである。従って、有用なアルファオレフィンモノマーおよびコモノマーとしては、例えば、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1,4-メチルペンテン-1、デセン-1、ドデセン-1、トリデセン-1、テトラデセン-1、ペンタデセン-1、ヘキサデセン-1、ヘプタデセン-1、オクタデセン-1、ノナデセン-1およびそれらの混合物(例えば、プロピレンとブテン-1の混合物)が挙げられる。そのようなポリマーの典型例は、プロピレンホモポリマー、ブテン-1ホモポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-ブテン-1コポリマーおよびプロピレン-ブテンコポリマーであり、該ポリマーは、少なくともいくつかの末端および/または内部不飽和を含有する。好ましいポリマーは、エチレンとプロピレンおよびエチレンとブテン-1の不飽和コポリマーである。該インターポリマーは、少量、例えば0.5~5モル%のC4~C18非共役ジオレフィンコモノマーを含有してもよい。しかしながら、該ポリマーがアルファオレフィンホモポリマー、アルファオレフィンコモノマーのインターポリマーおよびエチレンとアルファオレフィンのコモノマーのインターポリマーのみを含むことが好ましい。使われる該ポリマーのモルエチレン含有率は、好ましくは0~80%、より好ましくは0~60%の範囲内である。プロピレンまたはブテン-1がエチレンとコモノマーとして使われるときに、このようなコポリマーのエチレン含有率は、最も好ましくは15%と50%の間であるが、より高いまたはより低いエチレン含有率が存在してもよい。
【0010】
これらのポリマーは、アルファオレフィンモノマーまたはアルファオレフィンモノマーの混合物またはエチレンと少なくとも1種のC3~C28アルファオレフィンモノマーを含む混合物を、少なくとも1種のメタロセン(例えば、シクロペンタジエニル-遷移金属化合物)およびアルモキサン化合物を含む触媒系の存在下に重合させることによって調製することができる。このプロセスを使用して、該ポリマー鎖の95%以上が末端エテニリデン型不飽和を有するポリマーを得ることができる。末端エテニリデン不飽和を示しているポリマー鎖のパーセンテージは、FTIR分光分析、滴定またはC13 NMRによって定量することができる。この後者型のインターポリマーは、式POLY-C(R1)=CH2(式中、R1は、C1~C26、好ましくはC1~C18、より好ましくはC1~C8、最も好ましくはC1~C2アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり、POLYは、該ポリマー鎖を表す)に特徴を有することができる。該R1アルキル基の鎖長は、重合での使用に選択されるコモノマーによって変動する。該ポリマー鎖の少量は、末端エテニル、すなわち、ビニル不飽和、すなわちPOLY-CH=CH2を含有することができ、該ポリマーの一部は内部モノ不飽和、例えばPOLY-CH=CH(R1)(ここで、R1は上記の通りである)を含有することができる。これらの末端に不飽和のインターポリマーは、既知のメタロセン化学によって調製することができ、米国特許第5,498,809号;同第5,663,130号;同第5,705,577号;同第5,814,715号;同第6,022,929号および同第6,030,930号に説明されているように調製することもできる。
【0011】
もう1つの有用な種類のポリマーは、イソブテンとスチレンのカチオン重合によって調製されるポリマーである。この種類の一般ポリマーには、ルイス酸触媒、例えば三塩化アルミニウムまたは三フッ化ホウ素の存在下に、35~75質量%のブテン含有率および30~60質量%のイソブテン含有率を有するC4精製流の重合によって得られたポリイソブテンが含まれる。ポリ-n-ブテンを製造するための好ましいモノマー源は、ラフィネートIIなどの石油供給流である。これらの供給材料は、米国特許第4,952,739号などの従来技術において開示されている。ポリイソブチレンは、ブテン流(例えば、AlCl3またはBF3触媒を使用する)からカチオン重合によってすぐに利用できるので、最も好ましい主鎖である。このようなポリイソブチレンは、一般に、ポリマー鎖当たり1つのエチレン二重結合の量でその鎖に沿って配置された残留不飽和を含有する。好ましい実施態様は、末端ビニリデンオレフィンと反応性のイソブチレンポリマーを調製するために純粋なイソブチレンの流れまたはラフィネートIの流れから調製されるポリイソブチレンを用いる。好ましくは、高度に反応性のポリイソブチレン(HR-PIB)と呼ばれるこれらのポリマーは、少なくとも65%、例えば、70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも85%の末端のビニリデン含有率を有する。このようなポリマーの調製は、例えば、米国特許第4,152,499号に記載されている。HR-PIBは公知であり、HR-PIBは商品名GlissopalTM(BASFから)およびUltravisTM(BP-Amocoから)で市販されている。
【0012】
使うことができるポリイソブチレンポリマーは、一般的に400から3000までの炭化水素鎖をベースとしている。ポリイソブチレンの製造方法は公知である。ポリイソブチレンは、後述するように、ハロゲン化(例えば塩素化)、熱的「エン」反応によって、または触媒(例えばペルオキシド)を使用してラジカルグラフト化処理することによって官能化することができる。
上記炭化水素またはポリマー主鎖は、カルボン酸無水物生成部分によって、該ポリマーまたは炭化水素鎖上の、または鎖に沿ってランダムに位置する炭素間不飽和部位において選択的に、上述の3種の方法のいずれか、または任意の順序でのその組合せを使用して、官能化することができる。
【0013】
ポリマーの炭化水素と不飽和カルボン酸無水物とを反応させるプロセス、およびこのような化合物からの誘導体の調製は、米国特許第3,087,936号;同第3,172,892号;同第3,215,707号;同第3,231,587号;同第3,272,746号;同第3,275,554号;同第3,381,022号;同第3,442,808号;同第3,565,804号;同第3,912,764号;同第4,110,349号;同第4,234,435号;同第5,777,025号;同第5,891,953号;ならびにEP 0 382 450 B1号;CA-1,335,895号およびGB-A-1,440,219号において開示されている。該ポリマーまたは炭化水素は、該ポリマーまたは炭化水素を、官能性部分または試薬、すなわち酸無水物の、該ポリマーまたは炭化水素鎖上の主として炭素間不飽和部位(エチレン性またはオレフィン性不飽和とも呼ばれる)への付加を結果としてもたらす条件下で、ハロゲン援助官能化(例えば、塩素化)プロセスまたは該熱的「エン」反応を使用して反応させることにより、カルボン酸無水物生成部分によって、官能化することができる。
【0014】
選択的官能化は、上記不飽和α-オレフィンポリマーを、ハロゲン化、例えばポリマーまたは炭化水素の質量を基準として約1~8質量%、好ましくは3~7質量%の塩素または臭素となるまで、60~250℃、好ましくは110~160℃、例えば120~140℃の温度で約0.5~10時間、好ましくは1~7時間、該ポリマーを介して該塩素または臭素を通すことによって、塩素化または臭素化することで達成できる。次いで、該ハロゲン化されたポリマーまたは炭化水素(以下、主鎖)は、該主鎖に対して必要な数の官能性部分を付加することのできる充分なモノ不飽和反応体、例えばモノ不飽和カルボン酸反応体と、100~250℃、通常180~235℃で約0.5~10時間、例えば3~8時間反応させられ、結果として得られる該生成物は、該ハロゲン化主鎖の単位モル数当たり所望モル数の該モノ不飽和カルボン酸反応体を含むであろう。あるいは、該主鎖および該モノ不飽和カルボン酸反応体は、混合されかつ加熱され、一方該高温物質に塩素を付加する。
【0015】
塩素化は、通常出発オレフィンポリマーのモノ不飽和官能化反応体との反応性を高めるのに役立つが、それは、本発明において使用することになっているいくつかの上記ポリマーまたは炭化水素、特に高い末端結合含有率および反応性を有するそれらの好ましいポリマーまたは炭化水素については不要である。従って、好ましくは、該主鎖および該モノ不飽和官能性反応体(カルボン酸系反応体)は、高温で接触させられて、初期熱的「エン」反応を引き起こす原因となる。エン反応は公知である。
上記炭化水素またはポリマー主鎖は、様々な方法によって、そのポリマー鎖に沿って官能性部分をランダムに付加することにより官能化され得る。例えば、溶液または固体状態にある該ポリマーを、上述のように、ラジカル開始剤の存在下で、上記モノ不飽和カルボン酸系反応体によりグラフト処理することができる。溶液内で行う場合、該グラフト化は、約100~260℃、好ましくは120~240℃の範囲の高温で起こる。好ましくは、ラジカルで開始されるグラフト化は、その初期の全オイル溶液を基準として、例えば1~50質量%、好ましくは5~30質量%のポリマーを含む鉱油系潤滑油溶液内で行われるであろう。
【0016】
使用し得る上記ラジカル開始剤は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、およびアゾ化合物、好ましくは約100℃を超える沸点を有し、かつフリーラジカルを与えるべく、該グラフト化温度範囲内で熱的に分解するものである。これらのラジカル開始剤の代表例は、アゾブチロニトリル、2,5-ジメチルヘキサ-3-エン-2,5-ビス-tert-ブチルペルオキシドおよびジクメンペルオキシドである。使用する場合、該開始剤は、典型的に該反応混合物溶液の質量を基準として0.005%と1質量%との間の量で使用される。典型的に、上述のモノ不飽和カルボン酸系反応体物質およびラジカル開始剤は、約1.0:1~30:1、好ましくは3:1~6:1の質量比の範囲内で使用される。該グラフト化は、不活性雰囲気、例えば窒素ガスシールの下に行われることが好ましい。その得られるグラフト化ポリマーは、そのポリマー鎖に沿ってランダムに結合したカルボン酸(または誘導体)部分を有することに特徴を有し、該ポリマー鎖の一部がグラフト化されていないことが理解される。上述のラジカルグラフト化処理は、本発明で使用されるその他のポリマーまたは炭化水素に対しても使用することができる。
【0017】
上記主鎖を官能化するのに使用される上記の好ましいモノ不飽和反応体は、モノ-およびジ-カルボン酸物質、すなわち、酸、または酸誘導体物質を含み、これらには、(i)モノ不飽和C4~C10ジカルボン酸、ここで(a)そのカルボキシル基は、ビシナルであり(すなわち、隣接炭素原子上に位置しており)および(b)該隣接炭素原子の少なくとも一方、好ましくは両方共に、該モノ不飽和の一部である;(ii)(i)の誘導体、例えば(i)の無水物またはC1~C5アルコール由来のモノ-またはジ-エステル;(iii)モノ不飽和C3~C10モノカルボン酸、ここでその炭素-炭素二重結合は、カルボキシ基と共役し、すなわち、構造-C=C-CO-を有する;および(iv)(iii)の誘導体、例えば(iii)のC1~C5アルコール由来のモノ-またはジ-エステルが含まれる。モノ不飽和カルボン酸系物質(i)~(iv)の混合物も、使用することができる。該主鎖との反応に際して、該モノ不飽和カルボン酸系反応体のモノ不飽和は、飽和状態とされる。従って、例えば無水マレイン酸は、主鎖-置換コハク酸無水物となり、またアクリル酸は、主鎖-置換プロピオン酸となる。このようなモノ不飽和カルボン酸系反応体の典型例は、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロロマレイン酸、無水クロロマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、および上記酸の低級アルキル(例えば、C1~C4アルキル)酸エステル、例えば、メチルマレエート、エチルフマレートおよびメチルフマレートである。
必要な官能性を得るために、上記モノ不飽和カルボン酸反応物質、好ましくは無水マレイン酸、典型的には、ポリマーまたは炭化水素のモルを基準として、等モル量から100質量%過剰まで、好ましくは5~50質量%過剰の範囲の量で使用される。過剰な未反応のモノ不飽和カルボン酸反応体は、例えば、ストリッピングによって最終の分散生成物から、必要とされる場合、通常真空中で除去することができる。
【0018】
金属洗浄剤(B)
金属洗浄剤は、しばしば界面活性剤と呼ばれる、酸性有機化合物の金属塩であるいわゆる金属「石鹸」をベースとする添加剤である。使用することができる洗浄剤には、金属、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムおよびマグネシウムの油溶性の中性および過塩基性サリチレートおよびスルホネートが含まれる。最も一般に使用された金属は、カルシウムおよびマグネシウムであり、両方とも、本発明の任意の態様に従う船舶用燃料組成物に使用される洗浄剤中に存在させることができる。過塩基性または中性または両方であるにせよ、洗浄剤の組合せは使用することができる。これらは、一般に、極性頭部と長い疎水性尾部を含む。金属塩基(例えば炭酸塩)ミセルの外層として中和された金属洗浄剤を含む過塩基性金属洗浄剤は、過剰の金属塩基(酸化物または水酸化物など)と酸性ガス(二酸化炭素など)を反応させることによって多量の金属塩基を含めることによって得ることができる。
本発明において、金属洗浄剤(B)は、金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエート、より好ましくはヒドロカルビル置換サリチレート洗浄剤でもよい。該金属は、アルカリ金属(例えばLi、Na、K)またはアルカリ土類金属(例えばMg、Ca)でもよい。
【0019】
ヒドロカルビルの例として、アルキルおよびアルケニルを言及することができる。好ましい金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエートは、カルシウムアルキル置換サリチレートであり、示される構造を有する:
【化2】
(ここで、Rは、直鎖アルキル基である)。
1種を超えるR基が、ベンゼン環に結合されていてもよい。そのCOO
-基は、ヒドロキシル基に対してオルト、メタまたはパラ位にあり得る;オルト位が好ましい。該R基は、ヒドロキシル基に対してオルト、メタまたはパラ位にあることができる。
【0020】
サリチル酸は、典型的には、フェノキシドのカルボキシル化、コルベ-シュミット法により調製され、その場合においては、一般にカルボキシ化されていないフェノールとの混合として(通常は希釈液中で)得られるであろう。サリチル酸は、硫化されなくても硫化されてもよく、化学修飾されてもよくかつ/または追加の置換基を含有してもよい。アルキルサリチル酸の硫化方法は、当業者に周知であり、例えば、US 2007/0027057号に記載されている。
上記アルキル基は、8~100個、有利には8~24個、例えば14~20個の炭素原子を含有することができる。
本発明のスルホネートは、石油の分留からまたは芳香族炭化水素のアルキル化によって得られたものなどのアルキル置換芳香族炭化水素のスルホン化によって通常得られるスルホン酸から調製することができる。例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニルまたはそれらのハロゲン誘導体、クロルベンゼン、クロルトルエンおよびクロルナフタレンなどをアルキル化することによって得られるものが挙げられる。そのアルキル化は、触媒の存在下で3個から70個を超えるまでの炭素原子を有するアルキル化剤で行うことができる。該アルカリールスルホネートは、アルキル置換芳香族部分当たり、通常は9~80個以上の炭素原子、好ましくは16~60個の炭素原子を含有する。該油溶性スルホネートまたはアルカリールスルホン酸は、該金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、カルボン酸塩、スルフィド、ヒドロスルフィド、硝酸塩、ホウ酸塩およびエーテルで中和することができる。該金属化合物量は、最終生成物の望ましいTBNを考慮して選択されるが、典型的には化学量論的に必要とされるそれの100~220質量%(好ましくは少なくとも125質量%)の範囲である。
【0021】
「過塩基性」という用語は、一般に、酸性部分の当量数に対する金属部分の当量数の比が1を超える金属洗浄剤を記載するために使用される。『低塩基性』という用語は、酸性部分に対する金属部分の当量比が1を超え、約2までである金属洗浄剤を記載するために使用される。
「界面活性剤の過塩基性カルシウム塩」とは、油不溶性金属塩の金属カチオンが本質的にカルシウムカチオンである過塩基性洗浄剤を意味する。少量の他のカチオンが油不溶性金属塩に存在してもよいが、油不溶性金属塩におけるカチオンの、典型的には少なくとも80モル%、より典型的には少なくとも90モル%、例えば少なくとも95モル%がカルシウムイオンである。カルシウム以外のカチオンは、例えば、該カチオンがカルシウム以外の金属である界面活性剤塩の過塩基性洗浄剤の製造での使用から誘導されることがあり得る。好ましくは、該界面活性剤の金属塩もカルシウムである。
炭酸塩化過塩基性金属洗浄剤は、典型的にはアモルファスナノ粒子を含む。さらに、当該技術は、結晶性カルサイトおよびバテライト形において炭酸塩を含むナノ微粒子材料を開示する。
上記洗浄剤の塩基性は、しばしば塩基数(BN)と呼ばれる全塩基価(TBN)として表されることができる。全塩基価は、該過塩基性物質の塩基性の全てを中和するために必要な酸の量である。上記TBNは、ASTM規格D2896または等価な手順を使用して測定することができる。該洗浄剤は、低いTBN(すなわち50未満のTBN)、中位のTBN(すなわち50~150のTBN)または高いTBN(すなわち150超、150~500などのTBN)を有する場合がある。該塩基性は塩基度指数(BI)として表されてもよく、それは該過塩基性洗浄剤における全石鹸に対する全塩基のモル比である。
【0022】
添加剤の組合せ
本発明の船舶用燃料油は、添加剤(A)および(B)からなる(または本質的になる)ことができる添加剤の組合せを含む。従って、本明細書において言及される該添加剤組合せの処理割合は、本明細書において有効成分(A)および(B)の船舶用燃料油に対する処理割合を考慮するが、該添加剤の組合せが溶媒、希釈剤または他の添加剤、洗浄剤、分散剤、安定剤、解乳化剤、エマルジョン防止剤、腐蝕抑制剤、低温流動性向上剤(流動点降下剤、CFPP変性剤など)、粘度調整剤、潤滑性向上剤または助燃剤などと組合せて、または同時に船舶用燃料油に導入することができることは理解すべきである。上記のものなどのさらなる添加剤は、さらにまたはあるいは本明細書で言及された添加剤の組合せに別々に、例えば該添加剤の組合せの前か後に、該船舶用燃料油と添加またはブレンドされてもよい。
【0023】
船舶用燃料油
本発明の船舶用燃料油は、ISO 8217:2017、ISO 8217:2012、ISO 8217:2010および/またはISO 8217:2005の石油製品のための船舶用燃料規格に従って定められてもよい。他のISO 8217規格、領域規格および/または供給業者/運航業者規格がさらにまたはあるいは本発明に従う船舶用燃料によって満たされる場合があることが理解されるであろう。
上記油は、0.5質量%以下、例えば0.5質量%未満、0.4質量%以下、0.4質量%未満、0.3質量%以下、0.3質量%未満、0.2質量%以下、0.2質量%未満、0.1質量%以下または0.1質量%未満の硫黄原子の硫黄含有率を有してもよい。いくつかの好ましい実施態様において、該船舶用燃料油の硫黄含有率は、0.5質量%未満またはさらには0.1質量%未満の硫黄原子であってもよい。
例えば、本発明の船舶用燃料油の全部または一部は、分別蒸留によって原油から生成することができる。
本発明の船舶用燃料油において、添加剤(A)および(B)は、洗浄剤、分散剤、安定剤、解乳化剤、エマルジョン防止剤、腐蝕抑制剤、低温流動性向上剤(流動点降下剤、CFPP変性剤など)、粘度調整剤、潤滑性向上剤または助燃剤の1種以上としてまたはそれと共に使用することができる。その代わりに、(A)および(B)からなる添加剤の組合せが、1種以上の更なる添加剤、洗浄剤、分散剤、安定剤、解乳化剤、エマルジョン防止剤、腐蝕抑制剤、低温流動性向上剤(流動点降下剤、CFPP変性剤など)、粘度調整剤、潤滑性向上剤または助燃剤などと一緒に使用してもよい。
(B)において、上記洗浄剤または各洗浄剤のTBNは、0、50、100または150の下限および300、350、400、450または500の上限を有する範囲内であることができる。
洗浄剤(B)は、中性でも過塩基性でもよく、好ましくは過塩基性である。(A)対(B)の質量:質量比は、1:1~1:6、例えば1:1~1:3の範囲内であってもよい。
本発明は、この船舶用燃料油の貯蔵および/またはブレンディングを包含することができる。
【実施例】
【0024】
下記の非限定的実施例は、本発明を例示するものである。
<船舶用燃料>
下記の燃料を使用した。
・燃料R 船舶用残留燃料のために発行されたISO 8217 2017 FUEL STANDARDに従って特性評価され、標準の場合のように、RMG 380として確認された、硫黄含有率が2.4%の船舶用残留燃料。
・燃料R/D 船舶用残留燃料のために発行されたISO 8217 2017 FUEL STANDARDに従って特性評価され、標準の場合のように、RMG 380として確認された、硫黄含有率が1.5%の船舶用残留燃料と、船舶用残留燃料のために発行されたISO 8217 2017 FUEL STANDARDに従って特性評価された船舶用残留燃料のブレンド、得られた硫黄含有率は0.48%である。
下記の添加剤成分を使用した。
・成分(A)
数平均分子量が950のポリイソブテンから誘導される80%ポリイソブテン無水コハク酸(「PIBSA」)、およびSNISO、グループI油の形での20%希釈液。
・成分(B)
B1 225のTBNを有する過塩基性カルシウムサリチレート洗浄剤。
B2 302のTBNを有する過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤。
<試験>
添加剤成分を含むかまたは含まない上記燃料の試料を「光学走査装置による分離能数としてのアスファルテン含有重質燃料油のn-ヘプテン誘起相分離を測定するための標準試験法」と題するASTM D7061-17に従ってアスファルテン分散能について試験した。該分離能数の結果は、「RSN」と呼ばれる場合がある。
下記の表において結果をまとめる。
【0025】
【0026】
得られた分離能数は「燃料」欄に示され、ここではより低い値が優れた性能を示している。本発明の実施例1~7が対照よりもかつ比較例1および2よりも良好な性能を達成したことがわかる。
(Mg)は、マグネシウム塩を使用したことを意味する。
*処理割合は、R部分のみに関係する。
実施例3、5および7に関係する更なる実施例を下記の表2にまとめ、そこでは異なる船舶用残留油が使用されている。結果は、本発明の例について、対照例よりも一貫してより良好な性能を実証している。
【0027】
【表2】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕船舶用留出燃料または重質燃料油またはそれらのブレンドを含む液体炭化水素船舶用燃料油であって、
(A)ポリアルケニル置換カルボン酸または無水物;および
(B)ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエート金属塩またはヒドロカルビル置換スルホネート金属塩または両方の塩の混合物またはその複合体を含む金属洗浄剤系;
からなる添加剤の組合せを含み、
(A)対(B)の質量:質量比は、20:1~1:20、例えば10:1~1:10、好ましくは3:1~1:3の範囲内であり、該添加剤の組合せの処理割合は、5質量ppm、10質量ppm、100質量ppmまたは500質量ppmから1000質量ppm、5000質量ppmまたは10000質量ppmまで、好ましくは100~5,000質量ppm、例えば500~1,000質量ppmの範囲内である、前記船舶用燃料油。
〔2〕ISO 8217:2017、ISO 8217:2012、ISO 8217:2010および/またはISO 8217:2005の石油製品のための船舶用燃料規格に従って定められた、前記〔1〕記載の船舶用燃料油。
〔3〕0.5質量%以下、0.5質量%未満、0.4質量%以下、0.4質量%未満、0.3質量%以下、0.3質量%未満、0.2質量%以下、0.2質量%未満、0.1質量%以下または0.1質量%未満の硫黄原子の硫黄含有率を有する、前記〔1〕または前記〔2〕記載の船舶用燃料油。
〔4〕原油から分別蒸留によってそれの全部または一部が生成される、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
〔5〕(A)対(B)の質量:質量比が、1:1~1:6、例えば1:1~1:3の範囲内である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
〔6〕(A)において、該ポリアルケニル置換基が、8~400個、好ましくは12~100個、より好ましくは16~64個の炭素原子を有する、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
〔7〕(A)において、該ポリアルケニル置換基が、350~2000、好ましくは500~1000の数平均分子量を有する、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
〔8〕(A)が、コハク酸無水物である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
〔9〕(A)が、ポリイソブテンコハク酸無水物である、前記〔8〕記載の船舶用燃料油。
〔10〕(B)において、該金属が、カルシウムである、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
〔11〕(B)において、該ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエートが、サリチレートである、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
〔12〕(B)において、該ヒドロカルビル基が、8~100、例えば8~24、好ましくは14~20個の炭素原子を有する、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
〔13〕(B)において、該洗浄剤が、0、50、100または150の下限と300、350、400、450または500の上限の範囲内にあるTBNを有する、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
〔14〕(B)該洗浄剤または各々の洗浄剤が、過塩基性洗浄剤として存在する、前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
〔15〕前記添加剤(A)および(B)が、洗浄剤、分散剤、安定剤、解乳化剤、エマルジョン防止剤、腐蝕抑制、低温流動性向上剤(流動点降下剤、CFPP変性剤など)、粘性改良剤、潤滑性向上剤および/または助燃剤および/または他の添加剤の1種以上としてまたはそれらと共に使用される、前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項記載の船舶用燃料油。
〔16〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の液体炭化水素船舶用燃料油において、アスファルテンアグロメレーションおよび/またはフロキュレーションを阻害するため、および/またはアスファルテンを分散させかつ/または表面上への沈着を制御するための、前記〔1〕および〔5〕~〔15〕のいずれか1項記載の添加剤(A)および(B)の組合せの使用。
〔17〕液体炭化水素船舶用燃料油におけるアスファルテンアグロメレーションおよび/またはフロキュレーションを阻害し、かつ/またはアスファルテンを分散させかつ/または表面上への沈着を制御する方法であって、効果的な量の前記〔1〕および〔5〕~〔15〕のいずれか1項記載の添加剤(A)および(B)の組合せを該油に添加することを含む、前記方法。