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特許7475853水処理システム、プログラム、情報処理装置および水処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】水処理システム、プログラム、情報処理装置および水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20240422BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240422BHJP
【FI】
C02F1/00 F
G06Q50/06
C02F1/00 V
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019223033
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021090910
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 絵里
(72)【発明者】
【氏名】塩出 貞光
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 俊
(72)【発明者】
【氏名】山口 太秀
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155341(JP,A)
【文献】特開2004-113920(JP,A)
【文献】特開2015-157239(JP,A)
【文献】特開2019-058126(JP,A)
【文献】特開2018-033418(JP,A)
【文献】特開平05-050076(JP,A)
【文献】特開2008-151801(JP,A)
【文献】特開2005-052759(JP,A)
【文献】中国実用新案第219860853(CN,U)
【文献】米国特許第8041664(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中、水面または水中を移動可能な移動体を用いた測定により、貯水池における、カビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得する取得手段と、
前記情報に基づき、前記カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、該決定した対策を、空中、水面または水中を移動可能な移動体に実行させる決定手段と、
を備え、
前記移動体は、空中、水面または水中を移動しながら、水面または水中における前記カビ臭原因物質の存在を特定するための前記測定を行い、
前記取得手段は、前記情報に基づき、当該情報を取得した領域において、カビ臭が発生するか否かの判定を行うように構成されている、
水処理システム。
【請求項2】
前記移動体として、
前記カビ臭原因物質の存在を特定するためのセンサを搭載し、空中、水面または水中を移動可能な第1の移動体と、
空中、水面または水中を移動可能な第2の移動体と、
を備え、
前記取得手段が、前記情報に基づき、当該情報を取得した領域において、カビ臭が発生すると判定した場合、
前記決定手段は、前記第2の移動体に対し、前記決定した対策を実行させるために、前記情報を取得した領域に関する位置の情報を送信するように構成されている、
請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理システムにおいて、
前記取得手段は、前記移動体による前記貯水池における三次元的な移動とともに行われる測定により、前記情報を取得する水処理システム。
【請求項4】
情報処理装置を、
空中、水面または水中を移動可能な移動体を用いた測定により、貯水池における、カビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得する取得手段と、
前記情報に基づき、前記カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、該決定した対策を空中、水面または水中を移動可能な移動体に実行させる決定手段と、
として機能させ、
前記移動体は、空中、水面または水中を移動しながら、水面または水中における前記カビ臭原因物質の存在を特定するための前記測定を行い、
前記決定手段は、前記情報に基づき、当該情報を取得した領域において、カビ臭が発生するか否かの判定を行うように構成されている、
プログラム。
【請求項5】
空中、水面または水中を移動可能な移動体を用いた測定により、貯水池におけるカビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得する取得手段と、前記情報に基づき、前記カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、該決定した対策を、空中、水面または水中を移動可能な移動体に実行させる決定手段と、を備える水処理システムを構成するために、前記取得手段および前記決定手段のうち少なくとも1つを備え、
前記移動体は、空中、水面または水中を移動しながら、水面または水中における前記カビ臭原因物質の存在を特定するための前記測定を行い、
前記決定手段は、前記情報に基づき、当該情報を取得した領域において、カビ臭が発生するか否かの判定を行うように構成されている、
情報処理装置。
【請求項6】
通信可能に接続された複数の情報処理装置を含んで構成され、空中、水面または水中を移動可能な移動体を用いた測定により、貯水池におけるカビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得する取得手段と、前記情報に基づき、前記カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、該決定した対策を、空中、水面または水中を移動可能な移動体に実行させる決定手段と、を備える水処理システムにおける、前記複数の情報処理装置のうちの1つの情報処理装置を、
前記取得手段および前記決定手段のうち少なくとも1つとして機能させ、
前記移動体は、空中、水面または水中を移動しながら、水面または水中における前記カビ臭原因物質の存在を特定するための前記測定を行い、
前記決定手段は、前記情報に基づき、当該情報を取得した領域において、カビ臭が発生するか否かの判定を行うように構成されている、
プログラム。
【請求項7】
空中、水面または水中を移動可能な移動体を用いた測定により、貯水池におけるカビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得するステップと、
前記情報に基づき、前記カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、該決定した対策を、空中、水面または水中を移動可能な移動体に実行させるステップと、
を含み、
前記移動体は、空中、水面または水中を移動しながら、水面または水中における前記カビ臭原因物質の存在を特定するための前記測定を行い、
前記情報に基づき、当該情報を取得した領域において、カビ臭が発生するか否かの判定を行う、
水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム、プログラム、情報処理装置および水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水道水のカビ臭対策として活性炭等が使用されており、その膨大な費用が問題となっている。そのため、カビ臭原因物質の発生を抑制する方法として、貯水池内に硫酸銅を散布する方法、あるいは、貯水池に設置された水循環装置により水を循環させて、カビ臭原因物質である微生物の増殖を抑制する方法などが知られている。
【0003】
しかし、これらの抑制方法は、限定的な効果しか得られないとの問題がある。すなわち、硫酸銅の散布は、現場である貯水池でその要否を判断することはできず、採水して分析機関でカビ臭原因物質の発生を検知してからでなければ抑制対策ができないうえに、貯水池内に広く散布するためその対策に膨大な薬品コストがかかる。また、水の循環も、決まった部分しか循環できず、貯水池全体で循環させるには膨大なコストがかかる。
【0004】
ここで、特許文献1には、無人航空機を水質管理者が操縦して養殖池の水を採取し、養殖池の水質を検査するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-33418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術を用いて、カビ臭原因物質の発生の検知を無人航空機で行うようにしたとしても、やはり、現場から離れた分析機関でカビ臭原因物質の発生を検知してからでなければ、抑制対策ができない。
【0007】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、より簡易かつ効果的にカビ臭原因物質の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る水処理システムは、
空中、水面または水中を移動可能な移動体を用いた測定により、貯水池における、カビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得する取得手段と、
前記情報に基づき、前記カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、該決定した対策を、空中、水面または水中を移動可能な移動体に実行させる決定手段と、を備える。
【0009】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、
情報処理装置を、
空中、水面または水中を移動可能な移動体を用いた測定により、貯水池における、カビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得する取得手段と、
前記情報に基づき、前記カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、該決定した対策を、空中、水面または水中を移動可能な移動体に実行させる決定手段と、として機能させる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、
空中、水面または水中を移動可能な移動体を用いた測定により、貯水池における、カビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得する取得手段と、前記情報に基づき、前記カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、該決定した対策を、空中、水面または水中を移動可能な移動体に実行させる決定手段と、を備える水処理システムを構成するために、前記取得手段および前記決定手段のうち少なくとも1つを備える。
【0011】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、
通信可能に接続された複数の情報処理装置を含んで構成され、空中、水面または水中を移動可能な移動体を用いた測定により、貯水池における、カビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得する取得手段と、前記情報に基づき、前記カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、該決定した対策を、空中、水面または水中を移動可能な移動体に実行させる決定手段と、を備える水処理システムにおける、前記複数の情報処理装置のうちの1つの情報処理装置を、
前記取得手段および前記決定手段のうち少なくとも1つとして機能させるプログラム。
【0012】
本発明の一実施形態に係る水処理方法は、
空中、水面または水中を移動可能な移動体を用いた測定により、貯水池における、カビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得するステップと、
前記情報に基づき、前記カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、該決定した対策を、空中、水面または水中を移動可能な移動体に実行させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、より簡易かつ効果的にカビ臭原因物質の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る水処理システムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る水処理システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
図3】本発明の一実施形態に係る水処理システムの構成の別の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る水処理システムの構成のさらに別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して例示説明する。各図中、同一符号は、同一または同等の構成要素を示している。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る水処理システム1の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る水処理システム1は、貯水池の水面または水中における、カビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得し、取得した情報に基づき、カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を行うものである。
【0017】
図1に示す水処理システム1は、測定ドローン10と、対策ドローン20と、サーバ30とを備える。測定ドローン10は、第1の移動体の一例である。対策ドローン20は、第2の移動体の一例である。サーバ30は、測定ドローン10および対策ドローン20とネットワーク40を介して通信可能である。ネットワーク40は、例えば、無線通信可能なネットワークである。また、ネットワーク40は、無線通信可能なネットワークと、有線通信可能なネットワークとを含んでよい。
【0018】
測定ドローン10および対策ドローン20は、空中、水面または水中を移動可能な移動体である。より具体的には、測定ドローン10および対策ドローン20は、遠隔操作によりまたは自律的に、空中を飛行、水面を移動あるいは水中を潜航可能な移動体である。測定ドローン10および対策ドローン20は、例えば、回転翼機型飛行体、潜水型移動体、舟型移動体などである。
【0019】
測定ドローン10は、遠隔操作によりまたは自律的に、貯水池の上空、貯水池の貯留水の水面または水中を移動する。カビ臭原因物質は、浮遊性のものだけでなく、底生性あるいは着生性の原因物質、土壌中に生息する原因物質等も存在する。また、水深によって水質が異なることに伴い、同じ原因物質であっても、水深によって原因物質の濃度が異なることがある。そのため、測定用ドローン10は、貯水池内において、移動可能な位置や深さに制限を設けることなく、水面及び水中の任意の場所を自在に移動する(以下「三次元的な移動」と表現することがある)ことが好ましい。
【0020】
センサ11は、測定ドローン10に備えられ、貯水池の水面または水中における、カビ臭原因物質に関する種々の測定を行う測定装置である。センサ11として、例えば、蛍光センサを用いることができる。カビ臭原因物質である微生物は、活性時に蛍光物質を発生させることが知られている。蛍光センサによりカビ臭原因物質である微生物が発生させる蛍光物質を検出することで、カビ臭原因物質の発生位置などを特定することができる。また、センサ11として、例えば、カメラを用いることができる。カメラにより貯水池の貯留水の水面および水中を撮影し、撮影画像を解析することで、カビ臭原因物質の発生位置などを特定することができる。また、センサ11として、水温計、溶存酸素計などを用いてもよい。センサ11は、複数の測定装置を含んでよい。
【0021】
測定ドローン10は、センサ11の測定結果およびセンサ11による測定時の測定ドローン10の位置情報(例えば、緯度および経度)を、ネットワーク40を介してサーバ30に送信する。測定ドローン10の位置情報は、例えば、GPS(Global Positioning System)信号を受信することで求めることができる。測定ドローンが水中を移動する場合、位置情報には、緯度および経度に加えて、水深が含まれてよい。
【0022】
対策ドローン20は、遠隔操作によりまたは自律的に、貯水池の上空、貯水池の貯留水の水面または水中を移動し、硫酸銅の散布、超音波発生装置による超音波の照射など、カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を実行する。
【0023】
サーバ30は、ネットワーク40を介して測定ドローン10および対策ドローン20と通信可能な情報処理装置である。サーバ30は、測定ドローン10から送信されてきた、センサ11の測定結果および測定ドローン10の位置情報を受信する。サーバ30は、センサ11の測定結果および測定ドローン10の位置情報に基づき、カビ臭原因物質に関する情報を取得する。サーバ30は、取得したカビ臭原因物質に関する情報に基づき、カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、決定した対策を実行するように、対策ドローン20に出動指令を送信する。
【0024】
図1に示すように、サーバ30は、取得手段2と、決定手段3とを備える。取得手段2および決定手段3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)ならびにメモリを備えるコンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)で実現可能である。取得手段2および決定手段3がコンピュータで実現される場合、取得手段2および決定手段3は、本実施形態に係るプログラムをメモリに格納し、格納されたプログラムをCPUが読み出して実行することにより実現される。
【0025】
取得手段2は、測定ドローン10を用いた測定により、貯水池におけるカビ臭原因物質に関する情報を取得する手段である。取得手段2は、測定ドローン10から受信した、センサ11の測定結果および測定ドローン10の位置情報をメモリに格納する。そして、取得手段2は、センサ11の測定結果および測定ドローン10の位置情報を解析して、カビ臭原因物質に関する情報を取得する。例えば、取得手段2は、カビ臭原因物質の発生確率、カビ臭原因物資の濃度、カビ臭原因物質の発生領域などを、カビ臭原因物質に関する情報として取得する。
【0026】
取得手段2は、例えば、センサ11の測定結果とカビ臭原因物質の濃度(あるいはカビ臭原因物質の量)との関係式を予め保持している。取得手段2は、その関係式に基づいて、センサ11の測定結果からカビ臭原因物質の濃度(あるいはカビ臭原因物質の量)を算出し、算出値が所定の濃度(あるいは量)に達すると、カビ臭が発生すると判定する。そして、取得手段2は、カビ臭が発生すると判定すると、測定ドローン10の位置情報に基づき、カビ臭の発生領域を特定する。
【0027】
上述したように、測定ドローン10が貯水池を三次元的に移動する場合には、取得手段2は、センサ11による三次元的な測定結果(測定ドローン10による貯水池の三次元的な移動とともに取得されたセンサ11の測定結果)を取得してもよい。こうすることで、貯水池の貯留水の水面だけでなく、水中に発生したカビ臭原因物質に関するより詳細な測定が可能となり、水中におけるカビ臭原因物質の発生領域、カビ臭原因物質の濃度などのより詳細な情報を取得することができる。
【0028】
決定手段3は、取得手段2により取得されたカビ臭原因物質に関する情報に基づき、対策ドローン20によりカビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、決定した対策を対策ドローン20に実行させる手段である。
【0029】
決定手段3は、例えば、取得手段2により取得されたカビ臭原因物質の発生領域から、カビ臭原因物質の発生を抑制する対策を実行する位置を決定する。例えば、決定手段3は、カビ臭原因物質の発生領域の中心を、対策を実行する位置として決定してよい。また、決定手段3は、風向き、水流などを考慮して、対策を実行する位置を決定してよい。
【0030】
決定手段3は、カビ臭原因物質の発生を抑制するための公知のさまざまな対策の中から、貯水池の状況および各対策の利点などを考慮して、最適な対策を決定する。例えば、貯水池の貯留水が水道水以外の用途(例えば、農業用水)で使用される場合には、貯留水内に硫酸銅が残存してしまう可能性を考慮して、硫酸銅を散布する対策よりも、超音波発生装置により超音波を照射する対策、あるいはストレーナーなどによる水の回収による対策が好ましいと判断してもよい。また、カビ臭原因物質が広範囲で発生した場合には、超音波の照射による対策では、超音波発生装置の消費電力の増大を招くおそれがあり、ストレーナーなどによる水の回収による対策では、回収量に限界があるため、広範囲に迅速な対応が可能な、硫酸銅の散布による対策が好ましいと判断してもよい。
【0031】
決定手段3は、決定したカビ臭原因物質の発生を抑制する対策を実行するように、対策ドローン20に出動指令を送信する。
【0032】
このように、取得手段2は、測定ドローン10に搭載されたセンサ11の測定結果から、貯水池におけるカビ臭原因物質に関する情報を取得する。そのため、貯水池に管理者などが行くことなく、簡易にカビ臭原因物質に関する情報を取得することができる。
【0033】
また、決定手段3は、取得手段2により取得されたカビ臭原因物質に関する情報に基づき、カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、決定した対策を対策ドローン20に実行させる。そのため、貯水池に管理者などが行くことなく、簡易にカビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を実行することができる。また、対策ドローン20により対策を実行するため、カビ臭原因物質の発生の抑制に効果的な任意の場所で対策を実行することできる。そのため、より効果的にカビ臭原因物質の発生を抑制することができる。
【0034】
したがって、取得手段2および決定手段3を備える、本実施形態に係る水処理システム1によれば、より簡易かつ効率的にカビ臭原因物質の発生を抑制することができる。
【0035】
図2は、本実施形態に係る水処理システム1の動作の一例を示すシーケンス図である。図2においては、図1に示すサーバ30が、取得手段2および決定手段3を備える例を用いて説明する。
【0036】
測定ドローン10は、貯水池の上空、貯水池の貯留水の水面または水中を移動しながら、センサ11により、貯水池の水面または水中におけるカビ臭原因物質に関する種々の測定を行う(ステップS11)。
【0037】
測定ドローン10は、センサ11の測定結果および測定ドローン10の位置情報を、ネットワーク40を介してサーバ30に送信する(ステップS12)。
【0038】
サーバ30の取得手段2は、測定ドローン10から送信されてきた、センサ11の測定結果と、測定ドローン10の位置情報とを受信し、メモリに記録する(ステップS13)。そして、取得手段2は、センサ11の測定結果と、測定ドローン10の位置情報とに基づいて、カビ臭原因物質に関する情報を取得する(ステップS14)。決定手段3は、取得手段2が取得したカビ臭原因物質に関する情報が、貯水池にカビ臭原因物質が発生しているあるいはカビ臭原因物質の発生確率が高いことを示す場合(ステップS15)、カビ臭原因物質の濃度、発生領域などに応じて、カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定する。そして、決定手段3は、決定した対策を実行するように、対策ドローン20に出動指令を送信する(ステップS16)。出動指令には、対策を実行する位置に関する位置情報が含まれる。また、出動指令には、対策に関する情報が含まれる。例えば、硫酸銅の散布による対策が実行される場合、出動指令には、硫酸銅の散布量が含まれる。
【0039】
対策ドローン20は、サーバ30から送信されてきた出動指令を受信すると、その出動指令に従い出動し(ステップS17)、対策を実行する(ステップS18)。
【0040】
このように本実施形態に係る水処理システム1における水処理方法は、測定ドローン10により、貯水池におけるカビ臭発生の原因となるカビ臭原因物質に関する情報を取得するステップ(ステップS14)と、カビ臭原因物質に関する情報に基づき、対策ドローン20によりカビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、決定した対策を対策ドローン20に実行させるステップ(ステップS15)と、を含む。
【0041】
なお、本実施形態においては、カビ臭原因物質に関する情報を取得するための移動体(測定ドローン10)と、カビ臭原因物質の発生を抑制する対策を行うための移動体(対策ドローン20)とが別の移動体である例を用いて説明したが、本発明はこれに限られない。1台の移動体(ドローン)が、カビ臭原因物質に関する情報を取得する機能と、カビ臭原因物質の発生を抑制する対策を行うための機能とを備えていてもよい。1台のドローンが、カビ臭原因物質に関する情報を取得する機能と、カビ臭原因物質の発生を抑制する対策を行う機能とを備えることで、対策が必要と判定された場合に、迅速に対策を実行することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、対策ドローン20は、出動指令を受けて出動し、対策を実行する例を用いて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、対策ドローン20は、測定ドローン10に追従して移動してもよい。対策ドローン20が測定ドローン10に追従することで、対策が必要と判定された場合に、迅速に対策を実行することができる。
【0043】
また、対策ドローン20が出動指令に応じて出動するか、測定ドローン10に追従するかを選択可能であってもよい。例えば、カビ臭原因物資の発生しやすい状況(時期、天気など)では、対策ドローン20が測定ドローン10に追従することで、対策が必要と判定された場合に、迅速に対策を実行することができる。
【0044】
また、一般に、水深方向では、貯水池の底部、および、水面から水深5m程度までの領域において、カビ臭原因物質の濃度が高くなりやすいことが知られている。また、平面方向では、カビ臭原因物質の発生は、風および貯水池の地形の影響が大きいことが知られている。したがって、このようにカビ臭原因物質の濃度が高くなりやすい地点、あるいは、風および貯水池を考慮した地点を重点的に測定するのが好ましい。
【0045】
また、例えば、貯水池内の水深、地形あるいは風に関する情報がない場合には、まず貯水池全体の中で、カビ臭原因物質が発生しそうな地点、あるいは、濃度が高くなりやすい地点を特定するために、大まかな測定を行うようにしてもよい。大まかな測定の後には、その特定された地点・領域に対して、重点的な測定を行うのが好ましい。
【0046】
そして、例えば、測定ドローン10により貯水池全体を大まかに測定する場合には、対策ドローン20は、出動指令に応じて出動できるように待機しておいてよい。また、測定ドローン10により重点的に測定する場合には、迅速に対策が実行できるように、対策ドローン20が測定ドローン10に追従するようにしてよい。
【0047】
このように本実施形態においては、水処理システム1は、移動体である測定ドローン10を用いた測定により、貯水池におけるカビ臭原因物質に関する情報を取得する取得手段2と、当該情報に基づき、対策ドローン20によりカビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を決定し、決定した対策ドローン20に実行させる決定手段3と、を備える。
【0048】
カビ臭原因物質に関する情報の取得およびカビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を移動体を用いて行うことで、より簡易にカビ臭原因物質の発生を抑制することができる。また、カビ臭原因物質の発生を抑制するための対策を移動体を用いて行うことで、カビ臭原因物質の発生を抑制するのに適した任意の位置で対策を実行することができるので、より効果的にカビ臭原因物質の発生を抑制することができる。したがって、本発明によれば、より簡易かつ効果的にカビ臭原因物質の発生を抑制することができる。
【0049】
本発明を諸図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形および修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段およびステップなどを1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。前述したところは本発明の一実施形態にすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えてよいことは言うまでもない。
【0050】
また、情報処理装置としてのサーバ30の各構成または各手段が、複数の情報処理装置に分散配置された構成も可能である。当該複数の情報処理装置のうち少なくとも1つが、例えばインターネット等のネットワークに接続されたサーバとして実現される構成も可能である。
【0051】
例えば、測定ドローン10、対策ドローン20、サーバ30における各手段の配置構成の例として、以下のような配置構成とすることができる。
【0052】
例えば、図3に示すように、測定ドローン10がセンサ11と取得手段2を備え、サーバ30が対策手段3を備える配置構成とすることができる。この場合、測定ドローン10は、取得したすべての情報(センサ11の測定結果、測定ドローン10の位置情報、及び解析結果であるカビ臭原因物質に関する情報)をサーバ30に送ってもよいし、サーバ30に送る情報を、解析結果であるカビ臭原因物質に関する情報のみとするなど、取捨選択できるようにしてもよい。
【0053】
また、図4に示すように、測定ドローン10がセンサ11と取得手段2を備え、対策ドローン20が決定手段3を備え、サーバ30を設けない配置構成とすることができる。この場合、測定ドローン10と対策ドローン20とが、ネットワーク40を介して通信を行ってもよく、無線通信等により直接、通信を行ってもよい。なお、測定ドローン10から対策ドローン20に送る情報は、図3を参照して説明した構成と同様である。
【符号の説明】
【0054】
1 水処理システム
2 取得手段
3 決定手段
10 測定ドローン(第1の移動体)
11 センサ
20 対策ドローン(第2の移動体)
30 サーバ(情報処理装置)
40 ネットワーク
図1
図2
図3
図4