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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】レンズ装置及びそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/02 20210101AFI20240422BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20240422BHJP
   G03B 9/06 20210101ALI20240422BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20240422BHJP
   H04N 23/75 20230101ALI20240422BHJP
【FI】
G03B9/02 B
G02B7/04 E
G03B9/06
H04N23/55
H04N23/75
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020011203
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2020170144
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2019071998
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】浅野 幸太
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200325(JP,A)
【文献】特開2017-194601(JP,A)
【文献】特開2017-102332(JP,A)
【文献】特開2014-017713(JP,A)
【文献】特開2013-231821(JP,A)
【文献】特開2013-148614(JP,A)
【文献】特開2012-013896(JP,A)
【文献】特開2009-063702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04-08
G03B 7/00-30
G03B 9/00-07
H04N 23/55
H04N 23/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り手段と、
前記絞り手段を駆動する駆動手段と、
前記絞り手段を駆動するための駆動指示値を記憶する記憶手段と、
前記駆動指示値に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段と、を有し、
前記駆動指示値は、
前記絞り手段の現在絞り値に対応する駆動指示値と、前記駆動手段へ出力される次の駆動指示値との差分量である駆動指示量に対応して設定された駆動指示値であって、
前記絞り手段の目標絞り値、前記絞り手段の実絞り値との差の絶対値に基づいた駆動指示値であり、
前記目標絞り値に対応した前記駆動指示値を用いて、前記絞り手段を駆動することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記駆動指示値は、前記駆動指示量ごとに設定された、複数の駆動指示値のうち前記目標絞り値と実絞り値との差の絶対値が最小となる駆動指示値であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記駆動指示値は、前記駆動指示量ごとに設定された、複数の駆動指示値のうち前記目標絞り値と実絞り値との差の絶対値が閾値以下となる駆動指示値であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記駆動指示値は、
前記目標絞り値と実絞り値との差の絶対値が最大となる駆動指示量における複数の駆動指示値のうち、前記目標絞り値と前記実絞り値との差の絶対値が最小となる駆動指示値であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記駆動指示値は、
前記駆動指示量ごとに、前記複数の駆動指示値に対して前記目標絞り値と前記実絞り値とを比較し、前記複数の駆動指示値のそれぞれに関して、前記目標絞り値と前記実絞り値との差の絶対値が最大となる駆動指示量を抽出することにより設定されていることを特徴とする請求項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記絞り手段は、開放側から小絞り側への第1駆動方向および前記小絞り側から前記開放側への第2駆動方向に駆動可能であり、
前記記憶手段は、前記駆動指示値として、前記第1駆動方向に前記絞り手段を駆動する際に用いられる第1駆動指示値、および、前記第2駆動方向に前記絞り手段を駆動する際に用いられる第2駆動指示値を記憶しており、
前記制御手段は、
前記目標絞り値が前記絞り手段の現在絞り値に対して前記第1駆動方向にある場合、前記第1駆動指示値に基づいて前記駆動手段を制御し、
前記目標絞り値が前記現在絞り値に対して前記第2駆動方向にある場合、前記第2駆動指示値に基づいて前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記駆動手段は、マイクロステップ駆動により前記絞り手段を駆動し、加速駆動および減速駆動を行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記記憶手段は、前記駆動指示値と前記絞り手段の実絞り値との関係を示すデータを記憶していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記記憶手段は、前記レンズ装置の姿勢、駆動周波数、および、温度の少なくとも一つの情報ごとに前記データを記憶していることを特徴とする請求項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記レンズ装置の姿勢、前記駆動周波数、および、前記温度の少なくとも一つの前記情報に基づく前記駆動指示値を前記駆動手段へ出力することを特徴とする請求項に記載のレンズ装置。
【請求項11】
請求項1乃至1のいずれか1項に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置を介して形成される光学像を光電変換する撮像素子と、
前記撮像素子を保持するカメラ本体と、を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り手段を搭載したレンズ装置及びそれを有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アクチュエータを有する絞り駆動部により開放方向または絞り込み方向に駆動される絞り手段(絞り羽根、絞りユニット)を有する撮像装置が開示されている。特許文献1に開示された撮像装置は、1ステップごとに実効絞り値を測定して、所定の実効絞り値における絞り羽根の駆動量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6053429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マイクロステップ駆動で絞り手段を駆動する場合、駆動速度に応じて絞り手段の駆動精度がばらつく。すなわち、絞り手段を駆動するアクチュエータ(ステッピングモータ)をマイクロステップ駆動で加速駆動または減速駆動させる場合、駆動速度に応じて、ステッピングモータ(機械)は駆動指令値(電気)に対する遅れと進みとを繰り返しながら動作する。その結果、加速駆動または減速駆動により絞り手段を駆動する場合、駆動量ごとに絞り手段の駆動精度がばらつく。
【0005】
しかし、特許文献1では、マイクロステップ駆動における加速駆動または減速駆動の際の駆動精度のばらつきについて考慮されていない。このため、特許文献1に開示された撮像装置では、高速かつ高精度に絞り手段を制御することが困難である。
【0006】
そこで本発明は、マイクロステップ駆動において、高速かつ高精度に絞り手段を制御することが可能なレンズ装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、絞り手段と、前記絞り手段を駆動する駆動手段と、前記絞り手段を駆動するための駆動指示値を記憶する記憶手段と、前記駆動指示値に基づいて前記駆動手段を制御する制御手段とを有し、前記駆動指示値は、前記絞り手段の現在絞り値に対応する駆動指示値と、前記駆動手段へ出力される次の駆動指示値との差分量である駆動指示量に対応して設定された駆動指示値であって、前記絞り手段の目標絞り値、前記絞り手段の実絞り値との差の絶対値に基づいた駆動指示値であり、前記目標絞り値に対応した前記駆動指示値を用いて、前記絞り手段を駆動する
【0009】
本発明の他の側面としての撮像装置は、前記レンズ装置と、前記レンズ装置を介して形成される光学像を光電変換する撮像素子と、前記撮像素子を保持するカメラ本体とを有する。
【0010】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マイクロステップ駆動において、高速かつ高精度に絞り手段を制御することが可能なレンズ装置および撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態における補正前後の実絞り値を示すグラフである。
図2】各実施形態における撮像装置の構成を示すブロック図である。
図3】各実施形態における駆動指示量および駆動周波数を示すグラフである。
図4】第1の実施形態における補正値の設定方法を示すグラフである。
図5】第2の実施形態における補正値の設定方法を示すグラフである。
図6】第2の実施形態における補正後の実絞り値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
まず、図2を参照して、本実施形態における撮像装置(カメラシステム)の概要について説明する。図2は、本実施形態における撮像装置10としてのレンズ交換式一眼レフカメラの構成を示すブロック図である。
【0015】
図2に示されるように、撮像装置10は、撮像手段(撮像素子、撮像ユニット)102を保持するカメラ本体100と、カメラ本体100に着脱可能な交換レンズ(レンズ装置)200とを有する。なお本実施形態において、光学機器としての撮像装置10は、交換レンズ200とカメラ本体100とを含むが、絞り機構(絞り手段、絞りユニット)204を搭載している交換レンズ単体(レンズ装置)を光学機器として扱ってもよい。また本実施形態では、撮像装置10としてレンズ交換式一眼レフカメラについて説明するが、本発明は、カメラ本体とレンズ装置とが一体的に構成されたレンズ一体型カメラにも適用可能である。
【0016】
交換レンズ200において、201は第一レンズユニット、202はフォーカスレンズユニット、203は変倍レンズユニット、204は絞り機構(絞り手段)である。第一レンズユニット201、フォーカスレンズユニット202、変倍レンズユニット203、および、絞り機構204により、撮像光学系が構成される。
【0017】
絞り機構204は、不図示の複数の絞り羽根と、複数の絞り羽根を開閉動作させる不図示の開閉機構と、開閉機構を駆動する駆動手段(駆動ユニット)としての絞り駆動手段205とを有する。絞り機構204は、光軸OAの周りに配置された複数の絞り羽根の一部同士が重なり合って、光軸OAの上に絞り開口を形成する、いわゆる光彩絞りである。絞り値(F値)は、複数の絞り羽根の位置に応じて増減し、また複数の絞り羽根の位置に応じて複数の絞り羽根の重なり量も変化し、絞り駆動手段205に加わる作動負荷も変化する。一般的に、絞り値が大きい側、すなわち複数の絞り羽根の重なり量が増える側で作動負荷が大きい。絞り駆動手段205は、ステッピングモータにより構成され、後述する制御手段(制御ユニット)としてのレンズCPU206によってその駆動が制御される。絞り機構204は、開放側から小絞り側への第1駆動方向、および、小絞り側から開放側への第2駆動方向に駆動可能である。
【0018】
207は、フォーカスレンズユニット202の位置を検出するフォーカス位置検出手段(位置検出ユニット)である。レンズCPU206は、カメラCPU106とレンズ通信手段(通信ユニット)208およびカメラ通信手段(通信ユニット)108を介して各種情報の送受信を行うとともに、カメラCPU106と一体となって交換レンズ200の動作全体の制御を司る。フォーカス駆動手段209は、ステッピングモータや振動型モータ等により構成され、不図示のフォーカス駆動機構を介してフォーカスレンズユニット202を光軸OAに沿った方向(光軸方向)に移動させる。
【0019】
レンズCPU206は、フォーカス駆動手段209の駆動を制御する。具体的にはレンズCPU206は、フォーカス駆動手段209に印加するフォーカス駆動信号の極性を変えることでフォーカス駆動手段209の駆動方向を制御し、フォーカス駆動信号のパルス数を増減させることでフォーカス駆動手段209の駆動指示値を制御する。これにより、フォーカスレンズユニット202の光軸方向の移動量を制御することができる。このときレンズCPU206は、フォーカスレンズ位置検出手段207からのフォーカス位置情報を参照する。またレンズCPU206は、絞り駆動手段205の駆動(回転方向および駆動指示値)を制御する。具体的には、絞り駆動手段205に印加する絞り駆動信号の極性を変えることで絞り駆動手段205の駆動方向を制御し、絞り駆動信号のパルス数を増減させることで絞り駆動手段205の駆動指示値を制御する。これにより、絞り機構204における複数の絞り羽根の開閉動作量を制御する。
【0020】
210は、静止画撮影モードと動画撮影モードとを切り替えるために使用者により操作される撮影モード切替手段(モード切替ユニット)である。本実施形態では、交換レンズ200に撮影モード切替手段210を設けているが、カメラ本体100に設けてもよい。211は、記憶手段(ROM等のメモリ、記憶ユニット)である。記憶手段211は、フォーカスレンズユニット202の駆動指示値を記憶している。また記憶手段211は、絞り機構204の駆動方向に応じた駆動指示値における目標絞り値と実絞り値のデータ、および駆動指示量に応じた駆動周波数の情報を記憶している。絞り機構204の駆動方向とは、開放側から小絞り側への第1駆動方向、および、小絞り側から開放側への第2駆動方向である。駆動指示値とは、第1駆動方向に駆動する際に用いられる第1駆動指示値、および、第2駆動方向に駆動する際に用いられる第2駆動指示値である。駆動指示量とは、絞り機構204の現在絞り値に対応する駆動指示値と、絞り駆動手段205へ出力される新たな駆動指示値へ駆動するための駆動指示値との差分量である。駆動指示量の最大値は、絞り機構204が開放側から小絞り側まで駆動可能な駆動量である。
【0021】
レンズCPU206は、絞り機構204を第1駆動方向に駆動する場合、目標絞り値、現在絞り値、および、第1駆動指示値に基づく駆動指令を絞り駆動手段205へ出力することにより、絞り駆動手段205を制御する。またレンズCPU206は、絞り機構204を第2駆動方向に駆動する場合、目標絞り値、現在絞り値、および、第2駆動指示値に基づく駆動指令を絞り駆動手段205へ出力することにより、絞り駆動手段205を制御する。レンズCPU206は、絞り機構204における目標絞り値と実絞り値との関係から補正値Qを求める。なお、補正値Qを用いて絞り機構204を制御する方法については後述する。
【0022】
記憶手段211に記憶された各々のデータは、レンズCPU206が随時読み出すことができる。被写体300からの光(被写体光)は、交換レンズ200内の撮像光学系を通過してカメラ本体100内に入射する。カメラ本体100では、クイックリターンミラー101が光路から退避した状態にて、被写体光により撮像手段102に被写体像が形成される。撮像手段102は、CCDセンサまたはCMOSセンサ等の光電変換素子(撮像素子)により構成され、撮像光学系を介して形成された被写体像(光学像)を光電変換する。クイックリターンミラー101が光路内に配置されている場合、被写体光は、クイックリターンミラー101により反射されてペンタプリズム103に導かれる。ペンタプリズム103にて反射した被写体光は、ファインダ光学系104を通過して使用者の眼に導かれる。これにより、使用者は、被写体像を視認することができる。
【0023】
ミラー制御手段105は、カメラCPU106からの制御信号に基づいて、クイックリターンミラー101のアップ/ダウン動作を制御する。測光手段107は、撮像手段102の出力信号または後述する不図示の画像処理回路で生成された映像信号から被写体輝度を算出し、これを測光情報としてカメラCPU106に出力する。焦点検出手段109は、静止画撮影モードにおいて、クイックリターンミラー101の背後に設けられた不図示のサブミラーで反射された被写体光を用いて位相差検出方式により撮像光学系の焦点状態を検出する。そして焦点検出手段109は、焦点状態を示す焦点情報をカメラCPU106に出力する。カメラCPU106は、焦点情報に基づいて、フォーカス駆動手段209を介してフォーカスレンズユニット202の位置を制御し、合焦状態を得る。
【0024】
またカメラCPU106は、動画撮影モードにおいて、後述する画像処理回路にて生成された映像信号から、映像のコントラスト状態を示すコントラスト情報を生成する。そしてカメラCPU106は、コントラスト情報に基づいて、フォーカスレンズユニット202の位置を制御して合焦状態を得る。またカメラCPU106は、測光状態に基づいて、絞り機構204において設定すべき絞り値や、静止画撮影モードにおいて撮像手段102の露光量を制御する不図示のシャッタの動作速度を算出する。
【0025】
レリーズスイッチ手段110は、使用者により半押し操作(SW1 ON)がなされていることによってSW1信号を出力し、全押し操作(SW2 ON)がなされることによってSW2信号を出力する。カメラCPU106は、SW1信号の入力に応じて測光および焦点検出等の静止画撮影準備動作を開始し、SW2信号の入力に応じて記録用静止画の撮影動作を開始する。動画撮影スイッチ手段111は、使用者によって操作されるごとに、動画撮影開始信号の入力に応じて記録用動画の撮影動作を開始し、動画撮影停止信号の入力に応じて撮影動作を停止する。なお本実施形態では、動画撮影スイッチ手段111をレリーズスイッチ手段110と別体に設けているが、レリーズスイッチ手段110が動画撮影スイッチ手段を兼ねてもよい。
【0026】
撮像手段102から出力された撮像信号に対して、画像処理回路にて増幅および様々な画像処理が行われることにより、デジタル映像信号が生成される。カメラCPU106は、デジタル映像信号を用いて、記録用静止画、表示用動画および記録用動画を生成する。表示用動画は、LCDパネル等の表示素子を含む表示手段112にて電子ビューファインダ画像として表示される。記録装置113は、記録用静止画および記録用動画を半導体メモリ等の記録媒体に記録する。114は、カメラ本体100の電源である。
【0027】
次に、本実施形態の絞り機構204の駆動方向に応じた駆動指示値における目標絞り値と実絞り値との関係から補正値QN1を求め、補正値QN1を用いて絞り機構204を制御する方法について説明する。記憶手段211は、レンズCPU206から絞り駆動手段205へ与えられる、絞り機構204の駆動方向ごとの駆動指示値に対応する目標絞り値を記憶している。本実施形態では、開放側から小絞り側への一方向駆動例(第1駆動方向への一方向駆動例:図1)について説明する。
【0028】
図3は、絞り機構204を加速駆動および減速駆動で駆動する際の各駆動指示量に対応する駆動周波数の例を示すグラフである。図3の横軸は駆動指示量(ステップ数)、縦軸は駆動周波数(pps)をそれぞれ示す。記憶手段211は、絞り機構204の各駆動指示量に対応する駆動周波数の情報を記憶している。図3のグラフにおいて駆動指示量Aおよび駆動指示量Bとして示されるように、絞り機構204を駆動するために使用される駆動周波数は、駆動指示量に応じて異なる。前述のように、互いに異なる駆動指示量Aと駆動指示量Bでは、絞り機構204の駆動に使用される駆動周波数が異なる。このため、絞り機構204を駆動指示量A、Bでそのまま駆動を行うと、絞り精度(実絞り値)のばらつきが発生する。
【0029】
そこで本実施形態では、レンズCPU206は、絞り機構204の開放側から小絞り側への駆動方向(第1駆動方向)における駆動指示値に応じた実絞り値FnoCLOSEを駆動指示量ごとに測定し、記憶手段211に記憶する。次に、レンズCPU206は、絞り機構204の小絞り側から開放側への駆動方向(第2駆動方向)における駆動指示値に応じた実絞り値FnoOPENを駆動指示量ごとに測定し、記憶手段211に記憶する。レンズCPU206は、これら駆動方向ごとの絞り機構204の駆動指示値に対する駆動指示量ごとの実絞り値FnoCLOSE、FnoOPENと、既に記憶手段211に記憶されている駆動方向ごとに駆動指示値に対応する目標絞り値とを比較する。そしてレンズCPU206は、双方の絞り値の差分絶対値が最小となる駆動指示値を抽出し、これを新たな駆動指示値(補正値QN1)として、記憶手段211に記憶する。
【0030】
ここで、レンズCPU206は、双方の絞り値の差分絶対値(差の絶対値)が要求精度により決められた許容範囲内、すなわち特定の閾値以下となる駆動指示値を抽出し、これを新たな駆動指示値(補正値QN1)として、記憶手段211に記憶してもよい。以降は、レンズCPU206が、双方の絞り値の差分絶対値が最小となる駆動指示値を抽出し、これを新たな駆動指示値として記憶手段211に記憶させる例について説明する。
【0031】
次に、図4を参照して、補正値QN1の元となる駆動指示値を抽出する方法について説明する。図4は、本実施形態における補正値QN1の設定方法を示すグラフである。図4において、横軸は駆動指示値、縦軸は光量をそれぞれ示す。光量は、絞り機構204を駆動した際に絞り羽根で構成される開口を通過する光量、または交換レンズ200の撮像光学系を含めて通過する光量のいずれでもよい。図4では、交換レンズ200の撮像光学系を含めて通過する光量を示している。
【0032】
図4において、実線は、各目標絞り値に相当する光量とこれに対応する駆動指示値との関係をプロットしたものである。他の線は、駆動指示量2、4、8、12のそれぞれの場合において、駆動指示値へ絞り機構204を駆動させたときの交換レンズ200の撮像光学系を含めて通過する光量(実絞り値に相当)をプロットしたものである。ここでは、目標絞り値に相当する光量の目標駆動指示値、および、実際に絞り機構204を各々の駆動指示量で駆動させた場合の光量をそれぞれ示している。前述の理由により、同じ目標絞り値に相当する光量で比較した場合、目標駆動指示値と各駆動指示量で駆動させた各駆動指示値とは互いに一致せず、ばらつきを生じる。図4に示される例では、目標絞り値に対していずれの駆動指示量で駆動させた各駆動指示値の場合にも光量が暗い傾向を持つ。よって、目標絞り値に相当する光量になるように絞り機構204を駆動させるには、補正値QN1が必要となる。
【0033】
本実施形態では、駆動指示値に応じた実絞り値FnoCLOSEを駆動指示量ごとに目標絞り値と比較し、双方の絞り値の差分絶対値が最小となる駆動指示値を抽出する。例えば、図4に示される目標絞り値に対して、駆動指示量2で各駆動指示値へ絞り機構204を駆動させたときの補正値はQN1(2)となる。この駆動指示値の抽出を駆動指示量ごとに全ての目標絞り値に対して行うことで、補正値QN1(2)の抽出が完了する。また、この抽出を駆動指示量4、8、12、および絞り機構204の駆動量に応じた残りの駆動指示量全てにおいても行い、この補正値QN1を記憶手段211に記憶する。以降、この新たな駆動指示値QN1にて絞り機構204を動作させる。
【0034】
またレンズCPU206は、目標絞り値と実絞り値とを比較する。目標絞り値が実絞り値の第1駆動方向にある場合、目標絞り値と実絞り値FnoCLOSEとの差分絶対値が最小となる実絞り値の第1駆動指示値を駆動指示量ごとに求め、目標絞り値の第1駆動指示値とする。一方、目標絞り値が実絞り値の第2駆動方向にある場合、目標絞り値と実絞り値FnoOPENとの差分絶対値が最小となる実絞り値の第2駆動指示値を駆動指示量ごとに求め、目標絞り値の第2駆動指示値とする。そして、双方の絞り値の差分絶対値が最小となる駆動指示値を抽出し、これを新たな駆動指示値QN1として、記憶手段211に記憶する。
【0035】
次に、図1を参照して、本実施形態における絞り機構204に補正値QN1を適用する前の実絞り値および補正値QN1を適用した後の実絞り値について説明する。図1は、本実施形態における補正前後(補正値QN1を適用前後)の実絞り値を示すグラフである。図1(a)は補正前(補正値QN1の適用前)のグラフ、図1(b)は補正後(補正値QN1の適用後)のグラフをそれぞれ示す。図1(a)、(b)において、横軸は駆動指示値、縦軸は実絞り値をそれぞれ示す。実絞り値は、図1(a)、(b)中のグラフの+方向への誤差が大きくなるほど絞り値が小さくなる(絞り開口を通過する光量は増える)ことを示す。また実絞り値は、-方向への誤差が大きくなるほど絞り値が大きくなる(絞り開口を通過する光量は減る)ことを示す。
【0036】
また、図1(a)の横軸は、開放側から小絞り側への第1駆動方向における駆動指示値であり、縦軸のゼロラインは目標絞り値を示す。図1の例では、駆動指示値に対して駆動指示量を1、2、4、8、12と変更させている。本実施形態の補正値QN1を適用する前の実絞り値のグラフ(図(a))では、駆動指示量によって目標絞り値に対する実絞り値のばらつきが発生している。そして図1(b)は、本実施形態の補正値QN1を適用して絞り機構204を駆動させた実絞り値のグラフで、目標絞り値に近い高精度な絞り機構を実現することができる。今回の例では、補正値QN1を適用する前時点で既に絞り精度が高いものを示したが、本実施形態の補正値QN1を用いれば、さらに絞り精度を改善することが可能である。また本実施形態では、説明を省略したが、この補正値QN1は駆動方向に応じて求めるため、小絞り側から開放側への第2駆動方向においても同様に適用可能である。
【0037】
記憶手段211は、絞り機構204の駆動方向に応じた絞り機構204の駆動指示値と実絞り値との関係において、交換レンズ200(撮像装置10)の姿勢(姿勢差)、駆動周波数、および温度の少なくとも一つの情報を記憶している。レンズCPU206は、これらの情報を随時読み出すことができる。ここで絞り駆動手段205は、記憶手段211に記憶された絞り機構204の駆動方向に応じた絞り機構204の駆動指示値と実絞り値の関係において、姿勢(姿勢差)、駆動周波数、および温度の少なくとも一つの情報に基づいて、絞り機構204の駆動制御を行う。これにより、姿勢差や様々な駆動周波数、温度環境下においても補正値QN1が適用可能となる。
【0038】
このように本実施形態において、レンズ装置(交換レンズ200)は、絞り手段(絞り機構204)、駆動手段(絞り駆動手段205)、記憶手段211、および、制御手段(レンズCPU206)を有する。駆動手段は、絞り手段を駆動する。記憶手段211は、絞り手段を現在絞り値から目標絞り値へ駆動するための駆動指示値(補正値QN1)を記憶する。制御手段は、駆動指示値に基づいて駆動手段を制御する。駆動指示値は、駆動指示量(例えば、図4中の駆動指示量2、3、8、12)ごとに設定された、複数の駆動指示値のうち目標絞り値と実絞り値との差分絶対値が最小となる駆動指示値(補正値QN1(2)、QN1(4)、QN1(8)、QN1(12))である。ここで複数の駆動指示値は、図4に示される各駆動指示量のグラフ上の複数のプロットに相当する。好ましくは、駆動指示値は、駆動指示量ごとに、複数の駆動指示値に対して目標絞り値と実絞り値とを比較する(目標絞り値と各駆動指示量のグラフ上の複数のプロットとを比較する)ことにより設定されている。
【0039】
以上により、高速性を保ちつつ、絞りをマイクロステップ駆動の加速、減速駆動で駆動させた場合にも、絞り精度の向上を実現することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の撮像装置の基本構成は、第1の実施形態において図2を参照して説明した撮像装置10と同様であるため、その説明を省略する。
【0041】
本実施形態において、レンズCPU206は、絞り機構204の駆動方向に応じた駆動指示値における目標絞り値と実絞り値との関係から補正値QN2を求め、補正値QN2を用いて絞り機構204を制御する。記憶手段211は、絞り機構204におけるレンズCPU206から絞り駆動手段205へ与えられる駆動方向ごとに駆動指示値に対応する目標絞り値を記憶している。本実施形態では、開放側から小絞り側への一方向駆動例(第1駆動方向への一方向駆動例:図6)として説明する。
【0042】
図3に示されるように、互いに異なる駆動指示量Aと駆動指示量Bでは、絞り機構204の駆動に使用される駆動周波数が異なる。このため、絞り機構204を駆動指示量A、Bでそのまま駆動を行うと、絞り精度(実絞り値)のばらつきが発生する。
【0043】
そこで本実施形態では、レンズCPU206は、絞り機構204の開放側から小絞り側への駆動方向(第1駆動方向)における駆動指示値に応じた実絞り値FnoCLOSEを駆動指示量ごとに測定し、記憶手段211に記憶する。次に、レンズCPU206は、絞り機構204の小絞り側から開放側への駆動方向(第2駆動方向)における駆動指示値に応じた実絞り値FnoOPENを駆動指示量ごとに測定し、記憶手段211に記憶する。レンズCPU206は、これら駆動方向ごとの絞り機構204の駆動指示値に対する実絞り値FnoCLOSE、FnoOPENと、既に記憶手段211に記憶されている駆動方向ごとに絞り機構204の駆動指示値に対応する目標絞り値とを比較する。そしてレンズCPU206は、双方の絞り値の差分絶対値が最大となる駆動指示量を抽出する。そしてレンズCPU206は、抽出された駆動指示量における目標絞り値に対する実絞り値の差分絶対値の中から最小となる駆動指示値を求め、これを新たな駆動指示値(補正値QN2)とし、記憶手段211に記憶する。
【0044】
ここで、レンズCPU206は、抽出された駆動指示量における目標絞り値に対する実絞り値の差分絶対値(差の絶対値)の中から要求精度によって決められた許容範囲内、すなわち特定の閾値以下となる駆動指示値を求めることができる。そしてレンズCPU206は、このように求めた駆動指示値を新たな駆動指示値(補正値QN2)として、記憶手段211に記憶してもよい。以降は、レンズCPU206が、抽出された駆動指示量における目標絞り値に対する実絞り値の差分絶対値の中から最小となる駆動指示値を求め、これを新たな駆動指示値として記憶手段211に記憶させる例について説明する。以降、レンズCPU206は、この新たな駆動指示値QN2にて絞り機構204を動作させる。
【0045】
またレンズCPU206は、目標絞り値と実絞り値とを比較する。目標絞り値が実絞り値の第1駆動方向にある場合、レンズCPU206は、目標絞り値と実絞り値FnoCLOSEとの差分絶対値が最大となる駆動指示量を抽出する。そしてレンズCPU206は、抽出された駆動指示量における目標絞り値に対する実絞り値の差分絶対値の中から最小となる実絞り値の第1駆動指示値を求め、これを目標絞り値の第1駆動指示値とする。またレンズCPU206は、目標絞り値が実絞り値の第2駆動方向にある場合についても同様に求め、これを目標絞り値の第2駆動指示値とする。
【0046】
次に、図5を参照して、補正値QN2の元となる駆動指示値を抽出する方法について説明する。図5は、本実施形態における補正値QN2の設定方法を示すグラフである。図5において、横軸は駆動指示値、縦軸は光量をそれぞれ示す。光量は、絞り機構204を駆動した際に絞り羽根で構成される開口を通過する光量、または交換レンズ200の撮像光学系を含めて通過する光量のいずれでもよい。図5では、交換レンズ200の撮像光学系を含めて通過する光量を示している。
【0047】
図5において、実線は、各目標絞り値に相当する光量とこれに対応する駆動指示値との関係をプロットしたものである。他の線は、駆動指示量2、4、8、12のそれぞれの場合において、駆動指示値へ絞り機構204を駆動させたときの交換レンズ200の撮像光学系を含めて通過する光量(実絞り値に相当)をプロットしたものである。ここでは、目標絞り値に相当する光量の目標駆動指示値、および、実際に絞り機構204を各々の駆動指示量で駆動させた場合の光量をそれぞれ示している。前述の理由により、同じ目標絞り値に相当する光量で比較した場合、目標駆動指示値と各駆動指示量で駆動させた各駆動指示値とは互いに一致せず、ばらつきを生じる。図5に示される例では、目標絞り値に対していずれの駆動指示量で駆動させた各駆動指示値の場合にも光量が暗い傾向を持つ。よって、目標絞り値に相当する光量になるように絞り機構204を駆動させるには、補正値QN2が必要となる。
【0048】
本実施形態では、駆動指示値に応じた実絞り値FnoCLOSEを駆動指示量ごとに目標絞り値と比較し、双方の絞り値の差分絶対値が最大となる駆動指示値を抽出する。そして、抽出された駆動指示量における実絞り値と目標絞り値との差分絶対値の中から最小となる駆動指示量の駆動指示値を抽出する。例えば、図5において、目標絞り値に相当する光量に対して、駆動指示量2、4、8、12で駆動させた各駆動指示値における光量との差分絶対値(差分絶対値の最大値)を太字(実線)の四角Sで示している。ここで、目標絞り値に相当する光量に対する比較は、説明を簡単にするため13個の四角Sとした。比較対象の四角Sの個数は、抽出可能であればこれに限定されるものではない。この差分絶対値(差分絶対値の最大値)は、ある駆動指示値を境に増減し、駆動指示量(当該最大値に対応する駆動指示量)は駆動指示値によって異なる(異なりうる)。
【0049】
次に、この抽出された駆動指示量における実絞り値と目標絞り値の差分絶対値の中から最小となる駆動指示量の駆動指示値(この抽出された差分絶対値の最大値の中から最小となる最大値に対応する駆動指示値)を補正値QN2として抽出する。この抽出を第1の実施形態では駆動指示量4、8、12、および絞り機構204の駆動量に応じた残りの駆動指示量の全てにおいても行っているが、本実施形態では行わず、補正値QN2を記憶手段211に記憶する。
【0050】
以降、この新たな駆動指示値QN2にて絞り機構204を動作させる。すなわちレンズCPU206は、測定手段(不図示)を用いて絞り機構204の実絞り値を測定し、駆動指令(駆動指示値)に基づいて絞り機構204を往復運動させながら絞り機構204の実絞り値を測定する。これによりレンズCPU206は、記憶手段211が記憶している第1駆動指示値および第2駆動指示値を取得する。またレンズCPU206は、目標絞り値と実絞り値とを比較する。目標絞り値が実絞り値の第1駆動方向にある場合、目標絞り値と実絞り値FnoCLOSEとの差分絶対値が最大となる駆動指示量を抽出する。そしてレンズCPU206は、抽出された駆動指示量における目標絞り値に対する実絞り値の差分絶対値の中から最小となる実絞り値の第1駆動指示値を求め、これを目標絞り値の第1駆動指示値とする。またレンズCPU206は、目標絞り値が実絞り値の第2駆動方向にある場合についても同様に求め、これを目標絞り値の第2駆動指示値とする。
【0051】
次に、図6を参照して、本実施形態における絞り機構204に補正値QN2を適用した後の実絞り値について説明する。図6は、本実施形態における補正後(補正値QN2を適用後)の実絞り値を示すグラフである。図6において、縦軸は実絞り値を示し、グラフの+方向への誤差が大きくなるほど絞り値が小さくなり(絞り開口を通過する光量は増える)、-方向への誤差が大きくなるほど絞り値が大きくなる(絞り開口を通過する光量は減る)ことを示す。また、横軸は、開放側から小絞り側への第1駆動方向における駆動指示値であり、縦軸のゼロラインは目標絞り値を示す。図6の例では、駆動指示値に対して駆動指示量を1、2、4、8、12と変更させている。本実施形態の補正値QN2を適用する前の実絞り値のグラフは、図1(a)に示されるとおりである。
【0052】
図6は、本実施形態の補正値QN2を適用して絞り機構204を駆動させた実絞り値のグラフで、図1(a)に対して目標絞り値により近い絞り機構を実現できている。本実施形態では、補正値QN2を適用することで目標絞り値により近い絞り機構を実現できているだけでなく、第1の実施形態よりも記憶手段211に記憶する情報量を少なくすることができる。
【0053】
具体的には、第1の実施形態では、絞り機構204の開放側から小絞り側への駆動方向(第1駆動方向)での駆動指示値に応じた実絞り値FnoCLOSEを駆動指示量ごとに測定し、記憶手段211に記憶する。また第1の実施形態では、予め記憶手段211に記憶された目標絞り値と実絞り値FnoCLOSEとの差分絶対値が最小となる実絞り値の第1駆動指示値を各駆動指示量において求める。そして、各々の目標絞り値の第1駆動指示値として絞り機構204の開放側から小絞り側までの駆動量に応じた複数パターンを記憶する必要がある。
【0054】
一方、本実施形態では、予め記憶手段211に記憶された目標絞り値と実絞り値とを比較するが、目標絞り値に対応する第1駆動指示値として1パターンのみを記憶すればよい。このため、記憶手段211に記憶する情報量を少なくすることができる。本実施形態では、補正値QN2を適用する前時点で既に絞り精度が高いが、補正値QN2を用いれば、さらに絞り精度を改善することが可能である。また本実施形態では、補正値QN2は駆動方向に応じて求めることができるため、小絞り側から開放側への第2駆動方向においても同様に適用可能である。また、記憶手段211は、絞り機構204の駆動方向に応じた絞り機構204の駆動指示値と実絞り値との関係において、交換レンズ200(撮像装置10)の姿勢(姿勢差)、駆動周波数、および、温度の少なくとも一つの情報を記憶している。レンズCPU206は、この情報を随時読み出すことができる。絞り駆動手段205は、記憶手段211に記憶された絞り機構204の駆動方向に応じた絞り機構204の駆動指示値と実絞り値との関係において、姿勢(姿勢差)、駆動周波数、および、温度の少なくとも一つの情報に基づいて、絞り機構204の駆動制御を行う。これにより、姿勢差や様々な駆動周波数、温度環境下においても補正値QN2が適用可能となる。
【0055】
このように本実施形態において、レンズ装置(交換レンズ200)は、絞り手段(絞り機構204)、駆動手段(絞り駆動手段205)、記憶手段211、および、制御手段(レンズCPU206)を有する。駆動手段は、絞り手段を駆動する。記憶手段211は、絞り手段を現在絞り値から目標絞り値へ駆動するための駆動指示値(補正値QN2)を記憶する。制御手段は、駆動指示値に基づいて駆動手段を制御する。駆動指示値(補正値QN2)は、目標絞り値と実絞り値との差分絶対値が最大となる駆動指示量における複数の駆動指示値のうち、目標絞り値と実絞り値との差分絶対値が最小となる駆動指示値である。ここで、目標絞り値と実絞り値との差分絶対値が最大となる駆動指示量における複数の駆動指示値は、図5に示される13個の実線の四角Sに示した絞り機構204を各々の位置に駆動するための駆動指示値に相当する。すなわち、図5中の左側の7個の四角Sに関しては、駆動指示量8で左側の7個の四角Sに示した各々の駆動指示値で絞り機構204を駆動した時の実絞り値と目標絞り値との差である。また、図5中の右側の6個の四角Sに関しては、駆動指示量12で右側の6個の四角Sに示した各々の駆動指示値で絞り機構204を駆動した時の実絞り値と目標絞り値との差である。
目標絞り値と実絞り値との差分絶対値が最小となる駆動指示値は、図5に示される13個の四角Sのうち長さが最小となる四角に対応する駆動指示量の駆動指示値である。好ましくは、駆動指示値は、駆動指示量ごとに、複数の駆動指示値に対して目標絞り値と実絞り値とを比較し、複数の駆動指示値のそれぞれに関して、目標絞り値と実絞り値との差分絶対値が最大となる駆動指示量を抽出することにより設定されている。
【0056】
以上により、高速性を保ちつつ、絞りをマイクロステップ駆動の加速、減速駆動で駆動させた場合にも、絞り精度の向上を実現することができる。
【0057】
各実施形態において、好ましくは、絞り手段は、開放側から小絞り側への第1駆動方向および小絞り側から開放側への第2駆動方向に駆動可能である。記憶手段は、駆動指示値として、第1駆動方向に絞り手段を駆動する際に用いられる第1駆動指示値、および、第2駆動方向に絞り手段を駆動する際に用いられる第2駆動指示値を記憶している。制御手段は、目標絞り値が現在絞り値に対して第1駆動方向にある場合、第1駆動指示値に基づいて駆動手段を制御する。また制御手段は、目標絞り値が現在絞り値に対して第2駆動方向にある場合、第2駆動指示値に基づいて駆動手段を制御する。
【0058】
好ましくは、駆動指示量は、絞り手段の現在絞り値に対応する駆動指示値と、駆動手段へ出力される次の駆動指示値との差分量である。また好ましくは、駆動手段は、マイクロステップ駆動(正弦波信号と余弦波信号とを用いた駆動)により絞り手段を駆動し、加速駆動および減速駆動を行う。また好ましくは、記憶手段は、駆動指示値と実絞り値との関係を示すデータを記憶している。より好ましくは、記憶手段は、レンズ装置の姿勢、駆動周波数、および、温度の少なくとも一つの情報ごとにデータを記憶している。より好ましくは、制御手段は、レンズ装置の姿勢、駆動周波数、および、温度の少なくとも一つの情報に基づく駆動指示値を駆動手段へ出力する。
【0059】
なお各実施形態では、絞り駆動手段205にステッピングモータを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。絞り駆動手段205として、例えば、DCモータやリニアモータ、超音波モータなどを用いてもよい。
【0060】
各実施形態によれば、マイクロステップ駆動において、高速かつ高精度に絞り手段を制御することが可能なレンズ装置および撮像装置を提供することができる。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
200 交換レンズ(レンズ装置)
204 絞り機構(絞り手段)
205 絞り駆動手段(駆動手段)
206 レンズCPU(制御手段)
211 メモリ(記憶手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6