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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】液体補給容器
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B41J2/175 133
B41J2/175 141
B41J2/175 115
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020026970
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021130254
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】益川 竜也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 学
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144281(JP,A)
【文献】特開2007-144804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0197991(US,A1)
【文献】中国実用新案第218112123(CN,U)
【文献】特開昭47-40523(JP,A)
【文献】特開2020-168823(JP,A)
【文献】特開2019-25782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に突き出す液体供給部を有する液体タンクに液体を補給する液体補給容器であって、
液体を収容可能な容器本体と、
前記容器本体と連通する内部空間を画定する第1の側壁を備え、前記液体供給部に装着可能な液体補給ノズルと、
前記内部空間に設けられ、前記液体補給ノズルの装着時に前記液体供給部を前記内部空間と連通させる弁体と、を有し、
前記内部空間は、前記弁体と前記第1の側壁との間に形成され、前記第1の方向に断面が一定の第1の液体補給流路と、前記第1の液体補給流路の内側に形成され、前記第1の方向に連続する第2の液体補給流路と、を有し
前記弁体は、前記容器本体との対向面に開口する内側空間を形成する第2の側壁と、前記内部空間と連通し、前記第2の側壁を貫通する少なくとも一つの貫通孔と、を有し、前記第2の液体補給流路の少なくとも一部は、前記内側空間と前記少なくとも一つの貫通孔とによって形成される、液体補給容器。
【請求項2】
前記貫通孔の前記第1の方向における中心は、前記第2の側壁の前記第1の方向における中心より前記液体補給ノズルの先端側に位置する、請求項に記載の液体補給容器。
【請求項3】
前記少なくとも一つの貫通孔の開口率は10%以上、50%以下である、請求項またはに記載の液体補給容器。
【請求項4】
前記少なくとも一つの貫通孔は複数の貫通孔であり、前記複数の貫通孔は前記第2の側壁の周方向に均等に配置されている、請求項からのいずれか1項に記載の液体補給容器。
【請求項5】
前記少なくとも一つの貫通孔は前記第1の方向に細長い、請求項からのいずれか1項に記載の液体補給容器。
【請求項6】
前記弁体の外周面に設けられ、前記第1の方向に延び、前記第2の液体補給流路の一部を形成する少なくとも一つの溝を有し、前記少なくとも一つの貫通孔は前記少なくとも一つの溝に設けられている、請求項からのいずれか1項に記載の液体補給容器。
【請求項7】
前記内側空間は互いに独立した第1の領域と第2の領域とに区画され、前記少なくとも一つの貫通孔は、第1の領域に連通する第1の貫通孔と、前記第2の領域に連通する第2の貫通孔と、を含む、請求項からのいずれか1項に記載の液体補給容器。
【請求項8】
前記第1の貫通孔から液体が供給され、前記第2の貫通孔から空気が排出される、請求項に記載の液体補給容器。
【請求項9】
前記第1の貫通孔は前記第2の貫通孔より流路断面積が大きい、請求項に記載の液体補給容器。
【請求項10】
第1の方向に突き出す液体供給部を有する液体タンクに液体を補給する液体補給容器であって、
液体を収容可能な容器本体と、
前記容器本体と連通する内部空間を画定する第1の側壁を備え、前記液体供給部に装着可能な液体補給ノズルと、
前記内部空間に設けられ、前記液体補給ノズルの装着時に前記液体供給部を前記内部空間と連通させる弁体と、を有し、
前記内部空間は、前記弁体と前記第1の側壁との間に形成され、前記第1の方向に断面が一定の第1の液体補給流路と、前記第1の液体補給流路の内側に形成され、前記第1の方向に連続する第2の液体補給流路と、を有し、
前記弁体の外周面に設けられ、前記第1の方向に延び、前記第2の液体補給流路を形成する少なくとも一つの溝をさらに有する、液体補給容器。
【請求項11】
前記少なくとも一つの溝は、前記外周面の前記第1の方向における全長に渡って延びている、請求項1に記載の液体補給容器。
【請求項12】
前記少なくとも一つの溝は複数の溝であり、前記外周面の周長に対する前記複数の溝の幅の合計の比は50%以上、80%以下である、請求項1または1に記載の液体補給容器。
【請求項13】
前記弁体は、前記容器本体との対向面に開口し前記第1の液体補給流路と連通しない凹部を有する、請求項1から1のいずれか1項に記載の液体補給容器。
【請求項14】
前記弁体は前記外周面を備える第2の側壁を有し、前記第2の側壁の厚さに対する前記少なくとも一つの溝の深さの比は50%以上、70%以下である、請求項1から1のいずれか1項に記載の液体補給容器。
【請求項15】
第1の方向に突き出す液体供給部を有する液体タンクに液体を補給する液体補給容器であって、
液体を収容可能な容器本体と、
前記容器本体と連通する内部空間を画定する第1の側壁を備え、前記液体供給部に装着可能な液体補給ノズルと、
前記内部空間に設けられ、前記液体補給ノズルの装着時に前記液体供給部を前記内部空間と連通させる弁体と、を有し、
前記内部空間は、前記弁体と前記第1の側壁との間に形成され、前記第1の方向に断面が一定の第1の液体補給流路と、前記第1の液体補給流路の内側に形成され、前記第1の方向に連続する第2の液体補給流路と、を有し、
前記弁体の外周面の全周に渡って設けられ、前記第1の方向における両側端部より内側に引き込まれ、前記第2の液体補給流路を形成する周方向凹部をさらに有する、液体補給容器。
【請求項16】
前記弁体は前記容器本体と対向する円形のプレートと、前記液体補給ノズルの先端側に位置し、中央部が前記先端側に突き出す先端部と、前記プレートと前記先端部とを接続するシャフトと、を有し、前記周方向凹部は前記プレート及び前記先端部の内側且つ前記シャフトの外側に形成される空間である、請求項1に記載の液体補給容器。
【請求項17】
前記シャフトは中実である、請求項1に記載の液体補給容器。
【請求項18】
前記弁体を前記第1の方向に付勢するバネ部材を有し、前記バネ部材は、前記弁体の前記容器本体との対向面の外周部と、前記液体補給ノズルの前記外周部と対向するフランジ部とによって支持されている、請求項1から1のいずれか1項に記載の液体補給容器。
【請求項19】
前記液体補給ノズルから前記内部空間に張り出すシール材を有し、前記シール材は前記液体補給容器の前記液体タンクへの装着時に前記液体供給部に密着するとともに、非装着時には前記バネ部材に付勢された前記弁体と密着する、請求項1に記載の液体補給容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体補給容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターにインクを補強するためのインク補給容器が知られている。インク補給容器は使用時にはインク出口を下向きにしてインクタンクにインクを補給する。インク補給容器は、使用しない時に様々な姿勢をとる可能性があることから、インクのシール性が要求される。特許文献1には、弁体として機能する移動シール部材を備えたインク補給容器が開示されている。移動シール部材はインク出口部に収容されている。移動シール部材はバネ部材によってインク出口部の先端に向けて付勢され、インク出口部の内側壁面に設けられた出口シール部材と当接して、開口を封止する。インクの補給時にはプリンターの液体供給部がインク出口部に挿入され、バネ部材を押し上げる。これによって、移動シール部材が後退し、開口の封止が解除される。インクはインク出口部の内側壁面と移動シール部との間の環状の隙間を通り、開口からプリンターに補給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-144281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のインク補給容器は、インクの流路がインク出口部の内側壁面と移動シール部との間の環状の空間に限定されるため、インク補給効率の改善の余地がある。この課題はプリンターにインクを補強するためのインク補給容器だけでなく、インク以外の液体を補給する液体補給容器にも共通する。
本発明は液体補給効率が改善された液体補給容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液体補給容器は、第1の方向に突き出す液体供給部を有する液体タンクに液体を補給するものである。液体補給容器は、液体を収容可能な容器本体と、容器本体と連通する内部空間を画定する第1の側壁を備え、液体供給部に装着可能な液体補給ノズルと、内部空間に設けられ、液体補給ノズルの装着時に液体供給部を内部空間と連通させる弁体と、を有している。内部空間は、弁体と第1の側壁との間に形成され、第1の方向に断面が一定の第1の液体補給流路と、第1の液体補給流路の内側に形成され、第1の方向に連続する第2の液体補給流路と、を有している。一態様では、弁体は、容器本体との対向面に開口する内側空間を形成する第2の側壁と、内部空間と連通し、第2の側壁を貫通する少なくとも一つの貫通孔と、を有し、第2の液体補給流路の少なくとも一部は、内側空間と少なくとも一つの貫通孔とによって形成される。他の態様では、液体補給容器は、弁体の外周面に設けられ、第1の方向に延び、第2の液体補給流路を形成する少なくとも一つの溝をさらに有している。さらに別の態様では、液体補給容器は、弁体の外周面の全周に渡って設けられ、第1の方向における両側端部より内側に引き込まれ、第2の液体補給流路を形成する周方向凹部をさらに有している。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液体補給効率が改善された液体補給容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の液体補給容器と組み合わせて使用されるプリンターの外形図である。
図2】第1の実施形態に係る液体補給容器の断面図である。
図3図2に示す液体補給容器の部分拡大図である。
図4】第2の実施形態に係る液体補給容器の部分拡大図である。
図5】第2の実施形態の変形例に係る液体補給容器の部分拡大図である。
図6】第3の実施形態に係る液体補給容器の部分拡大図である。
図7】第4の実施形態に係る液体補給容器の弁体の斜視図である。
図8】第5の実施形態に係る液体補給容器の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のいくつかの実施形態を添付の図面に基づいて説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態はプリンターのインクタンクにインクを補給する液体補給容器を対象とする。しかし、以下の説明におけるインクは液体の一例であり、本発明は液体タンクに液体を補給する液体補給容器に広く適用可能である。第1の方向Xは液体補給容器1の長手方向と平行な方向であり、液体補給容器のインクタンクへの装着時には鉛直方向にほぼ一致する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の液体補給容器1と組み合わせて使用されるプリンター51の外形図であり、液体補給容器1からプリンター51のインクタンク52にインクを補給する状態を示している。プリンター51は走査方向に移動可能なキャリッジ(図示せず)を備え、キャリッジにはインクを紙などの記録媒体上に吐出する記録ヘッド(図示せず)が設けられている。キャリッジ上には小容量のタンク(図示せず)が載置され、インクタンク52からチューブ(図示せず)を介してインクが供給される。インクタンク52のインク残量が低下すると液体補給容器1からインクが補充される。このため、インクタンク52は液体補給容器1が装着可能な液体供給部53を有している。液体供給部53は、インクタンク52の上面に設けられ第1の方向Xに突き出す突起であり、内部に液体供給流路54を有している。液体補給容器1がインクタンク52に装着されたとき、液体供給部53の頂部は後述する弁体4の端面43と当接し、弁体4を押し上げることができる。
【0010】
図2は液体補給容器1の全体構成を示す断面図である。図2(a)はインクタンク52に装着されていないとき(以下、非装着時という)の液体補給容器1を、図2(b)はインクタンク52に装着されているとき(以下、装着時という)の液体補給容器1を示している。液体補給容器1はインクを収容可能な容器本体2と、容器本体2の先端に装着された液体補給ノズル3と、を有している。液体補給容器1は第1の方向Xと平行な長手軸Cを有し、液体補給ノズル3は装着時に、容器本体2の端部から第1の方向Xに延びている。
【0011】
図3(a)は図2(b)のA部拡大図、図3(b)は弁体4の斜視図である。液体補給ノズル3は、第1の側壁31と、第1の側壁31と一体形成された接合部32と、を有している。第1の側壁31は容器本体2と連通する円筒形状の内部空間33を画定する管状体である。接合部32は容器本体2の先端部の突条部21(図2(a)参照)と係合する係合部34を有している。第1の側壁31の容器本体2側の端部には内側に張り出す環状のフランジ部35が設けられている。フランジ部35の内側には、インク流路となる開口36が形成されている。第1の側壁31のインクタンク52側の端部には、液体補給ノズル3から内部空間33に張り出すシール材5が設けられている。第1の側壁31の内部空間33に面する内壁面37には、シール材5を保持する溝38が周方向に形成されている。
【0012】
内部空間33には弁体4が設けられている。弁体4は第1の方向Xに長軸を有する概ね円筒状の外形を有している。具体的には、弁体4は、概ね円筒形の第2の側壁41と、第2の側壁41のインクタンク52側の端部に接続され、先端に向けて外径が小さくなる円錐台形状の先端部42と、を有している。第2の側壁41は、容器本体2との対向面48に開口部44を有する内側空間45を形成する。先端部42の端面43はインクタンク52の液体供給部53の先端が当接する平面となっている。弁体4は、第2の側壁41を貫通し内側空間45と連通する複数の(本実施形態では4つの)貫通孔46を有する。貫通孔46は、内側空間45を後述する第1の液体補給流路R1と連通させる。
【0013】
内部空間33にはバネ部材6が設けられている。バネ部材6はコイルバネであり、弁体4を第1の方向Xに、容器本体2と反対側に付勢する。バネ部材6は、弁体4の容器本体2との対向面48に設けられた外周部47と、外周部47と対向するフランジ部35とによって支持されている。弁体4は円筒形の内部空間33とほぼ同軸に配置されている。図2(a)に示すように、非装着時には、弁体4はバネ部材6の付勢力で内部空間33の先端部まで動かされており、シール材5と密着している。これによって液体補給容器1の出口が閉止されるため、液体補給容器1が転倒したときや、横倒しで保管されたときでもインクの漏れを防止することができる。
【0014】
装着時には、図2(b)に示すように、インクタンク52の液体供給部53がバネ部材6の付勢力に打ち勝って、液体補給ノズル3の内部空間33に挿入される。バネ部材6は圧縮され、弁体4は液体供給部53によって押し上げられてシール材5から離れる。これによって、液体補給容器1の出口が開かれインクの供給が可能となる。すなわち、弁体4は装着時に第1の方向Xに動くことで液体供給部53を内部空間33と連通させる。この際、液体供給部53はシール材5と密着するため、インク充填時のインクの漏れを防止することができる。このように、シール材5は非装着時には弁体4と密着し、装着時には液体供給部53と密着して、インクの漏れを防止する。
【0015】
液体補給容器1は、第1の液体補給流路R1と第2の液体補給流路R2とを有している。第1の液体補給流路R1は、弁体4と第1の側壁31との間に形成され、第1の方向Xに断面が一定の流路である。第1の液体補給流路R1は第1の方向Xと直交する断面においてほぼ環状の流路を有し、且つこの流路は弁体4の第2の側壁41の第1の方向Xにおける全長に沿って一定である。第2の液体補給流路R2は第1の液体補給流路R1の内側に形成され、第1の方向Xに連続して延びている。なお、これは第2の液体補給流路R2の形状が第1の方向Xに連続して延びているとの意味であり、第2の液体補給流路R2のインクの流れる方向を限定するものではない。第2の液体補給流路R2は、内側空間45と少なくとも一つ(本実施形態では4つ)の貫通孔46によって形成されている。容器本体2に貯蔵されたインクは、フランジ部35の内側の開口36から内部空間33に流入する。一部のインクは弁体4と第1の側壁31との間の第1の液体補給流路R1を流れる。残りのインクは第2の液体補給流路R2、すなわち弁体4の内側空間45と貫通孔46とを通って、第1の液体補給流路R1に合流する。インクはさらに第1の液体補給流路R1を流れ、弁体4の先端部42とインクタンク52の液体供給部53との間の隙間を通って、インクタンク52に供給される。
【0016】
従来の液体補給容器(以下、比較例という)は第2の液体補給流路R2を備えていないため、インク流量を増加させることが困難であった。本実施形態では、第1の液体補給流路R1とほぼ並行して第2の液体補給流路R2が設けられているため、比較例と比べてインクタンク52に供給されるインク流量を増加することができる。従って、本実施形態によれば、インクタンク52に供給されるインクの補給効率を向上させ、インク充填時間を短縮することができる。
【0017】
内側空間45と貫通孔46の形状は、第2の液体補給流路R2が形成される限り限定されず、いかなるものであってもよい。例えば、内側空間45の第1の方向Xと垂直な断面の形状は円形だけでなく、四角形などの多角形、楕円、これらの組み合わせなど、任意の形状を使用することができる。内側空間45の断面形状は第1の方向Xに一定である必要はなく、例えば開口部44から離れるに従い断面積が減少するテーパー形状であってもよい。貫通孔46の形状も限定されない。本実施形態では、矩形断面の貫通孔46が設けられているが、貫通孔46の断面形状は円形、四角形、楕円、正方形やこれらの組み合わせであってもよい。貫通孔46の位置も限定されないが、貫通孔46がインクタンク52に近いほど、第1の液体補給流路R1と第2の液体補給流路R2の合流後のインク流路が短くなり、インク補給効率が向上する。従って、貫通孔46の第1の方向Xにおける中心は、第2の側壁41の第1の方向Xにおける中心より、液体補給ノズル3の先端側に位置することが好ましい。同様の理由から、貫通孔46の形状は第1の方向Xに細長いことが好ましく、より詳細には、第1の方向Xにおける最大長Hが第2の側壁41の周方向における最大幅Wより大きいことが好ましい。貫通孔46の数も限定されないが、弁体4の強度確保とインク流の均等化のため、複数の貫通孔46を第2の側壁41の周方向に均等に設けることが好ましい。本実施形態では、4つの貫通孔46を90度間隔で設けている。貫通孔46の数が大きいほど開口率が増加し、インク補給効率が向上する。しかし、一つの貫通孔46だけが設けられていても、本発明の効果を奏することができる。貫通孔46の開口率が大きいほどインクは流れやすくなるが、弁体4の強度が低下する。従って、貫通孔46の開口率は10%以上、50%以下とすることが好ましく、10%以上、30%以下とすることがより好ましい。なお、開口率は、第2の側壁41の外周面(貫通孔46を含む)の面積に対する貫通孔46の開口面積の合計の比である。
【0018】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態の液体補給容器1の図3と同様の図である。図3(c)は図3(a)のA-A線に沿った断面図である。本実施形態は、第2の液体補給流路R2が弁体104の外周面に設けられた複数の溝141であることを除き、第1の実施形態と同様である。第2の側壁41の外周面には、第1の方向Xに延びる複数の溝141が設けられている。溝141は外周面の第1の方向Xにおける全長に渡って延びている。第1の側壁31と弁体104との間の流路断面積が、第2の側壁41の全長に渡って増加するため、インクの補給効率を高めることができる。第1の液体補給流路R1は、弁体4の第2の側壁41の外周面の包絡円と、第1の側壁31との間に形成される。溝141は第2の液体補給流路R2を形成する。本実施形態では、第2の液体補給流路R2は第1の液体補給流路R1の内側に設けられ、第1の液体補給流路R1と一体化した流路である。第1の液体補給流路R1と第2の液体補給流路R2の境界は仮想的なものであり、インクは途中で分岐して流れることはなく、一つの経路に沿って流れる。
【0019】
溝141が深いほど溝141の断面積が増加し、インクの補給効率を高めることができるが、弁体104の強度の観点からは不利となる。第2の側壁41の厚さに対する溝141の深さの比は50%以上、70%以下であることが好ましい。溝141の数は限定されず、少なくとも一つの溝141が設けられていればよいが、溝141の数が多いほど溝141の総断面積が増加し、インクの補給効率を高めることができる。一方、溝141の形成される範囲が広くなると、実質的に第2の側壁41の厚さが減少したのと同じこととなり、強度が不足する可能性がある。第2の側壁41の外周面の包絡円の周長に対する、複数の溝141の周方向の幅の合計の比は、50%以上、80%以下であることが好ましい。本実施形態でも弁体104は内側空間45を有しているが、第1の実施形態と異なり内側空間45は第1の液体補給流路R1と連通していない。内側空間45は弁体104の軽量化のために設けることが好ましいが、省略してもよい。すなわち、弁体104を中実の筒状体としてもよい。この場合、弁体104の強度の確保が容易であるため、溝141の深さをさらに増加することができる。
【0020】
図5の変形例に示すように、弁体104を中実構造としつつ、容器本体2との対向面48に開口し、第1の液体補給流路R1と連通しない凹部148を形成してもよい。この変形例によれば、弁体104の強度を確保することが容易であるため、溝141の本数や深さを増やしつつ、弁体104を軽量化することが可能である。
【0021】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態の液体補給容器1の図3(b)と同様の図である。本実施形態の弁体204は、第1の実施形態の弁体4において第2の実施形態と同様の溝241を備える構成を有しており、この点を除き第1の実施形態と同様である。弁体204は、第2の側壁41の外周面に設けられた少なくとも一つ(本実施形態では10個)の溝241を有している。溝241は第1の方向Xに延び、第2の液体補給流路R2の一部を形成している。少なくとも一つ(本実施形態では5つ)の貫通孔246が10個の溝241に一つおきに設けられている。溝241の構成、数、配置等は第2の実施形態と同様である。本実施形態は、第1の実施形態の第2の液体補給流路R2と、第2の実施形態の第2の液体補給流路R2の両者を備えている。このため、第2の液体補給流路R2のインク補給効率がさらに向上する。
【0022】
(第4の実施形態)
図7は、第4の実施形態の液体補給容器1の図3と同様の図である。本実施形態は、弁体304の構成が異なる点を除き、第1の実施形態と同様である。弁体304は、第1の方向Xにおける中間部に、周方向凹部341ないし窪みを有している。周方向凹部341は、周方向の全周に渡り両側端部より内側に引き込まれた領域であり、第2の液体補給流路R2を形成する。弁体304は、容器本体2と対向するプレート342と、液体補給ノズル3の先端側に位置する先端部343と、プレート342と先端部343とを接続する中実のシャフト344と、を有している。プレート342は円形形状を有している。先端部343の形状は、中央部が液体補給ノズル3の先端側に突き出している限り限定されず、例えば、図示のような碗状の形状、第1の実施形態の先端部42のような円錐台形状とすることができる。先端部343の最大直径はシール材5の内径より大きい。従って、非装着時には、先端部343の周方向側面がシール材5に密着し、インクの漏れを防止する。装着時には、先端部343の周方向側面と液体供給部53との間にギャップが生じ、インク流路が確保される。プレート342と先端部343とシャフト344は一体形成される。このような構成の弁体304は形状が単純であり、製作性に優れる。第2の液体補給流路R2はプレート342の径方向内側、且つ先端部343の径方向内側、且つシャフト344の径方向外側に形成される空間である。プレート342の上面には弁体304の軽量化のため凹部345が形成されているが、凹部345は周方向凹部341と連通していない。凹部345は省略することも可能である。
【0023】
本実施形態の弁体304は、第1の実施形態のような内側空間45がなく、且つシャフト344を中実構造とすることができるため、弁体304の強度の確保が容易である。インクは第1の側壁31と上側端部(プレート342)との間の隙間を通過する。一部のインクはさらに下方に流れる(すなわち第1の液体補給流路R1を流れる)。残りのインクは周方向凹部341を下方に流れ(すなわち第2の液体補給流路R2を流れ)、下側端部(先端部343)の近傍で第1の液体補給流路R1に合流する。第2の実施形態と同様、第1の液体補給流路R1と第2の液体補給流路R2は一体化した流路である。プレート342と先端部343を接続する接続部材はシャフト344に限定されず、様々な形状のものを使用することができる。例えば、接続部材はプレート342から離れるに従い徐々に外径が減少し、先端部343に近づくに従い徐々に外径が増加するものであってもよい。あるいはシャフト344とプレート342及びシャフト344と先端部343の接続部にR形状またはC形状の肉盛り部を設けてもよい。
【0024】
(第5の実施形態)
図8は、第5の実施形態の液体補給容器1の図3と同様の図である。図8(a)において、実線はインクの流れを示しており、破線は空気の流れを示している。本実施形態は、弁体404の内部の内側空間45が2つの領域45A,45Bに区画されている点を除き、第1の実施形態と同様である。インクタンク52の液体供給流路54は、インクタンク52にインクを供給するインク供給流路54Aと、インクタンク52から空気を排出する空気排出流路54Bと、に分かれている。インク供給流路54Aはインクタンク52の底部まで延びるインク供給管(図示せず)と接続されており、空気排出流路54Bはインクタンク52の上部で終端する空気排出管(図示せず)と接続されている。空気排出管でインクタンク52の空気を排出しながらインク供給管でインクを供給することで、インクタンク52の内部での気液交換がスムーズに行われ、インク充填効率を高めることができる。
【0025】
内側空間45は仕切り板441によって、互いに独立した第1の領域45Aと第2の領域45Bとに区画されている。少なくとも一つの貫通孔46は、第1の領域45Aに連通する第1の貫通孔46Aと、第2の領域45Bに連通する第2の貫通孔46Bと、を含んでいる。第1の液体補給流路R1は、弁体404と第1の側壁31との間に設けられ、第1の方向Xに断面が一定の流路である。第2の液体補給流路R2は、第1の領域45Aと第1の貫通孔46Aとによって形成される。インクは第1の液体補給流路R1と第2の液体補給流路R2を通ってインクタンク52に供給される。弁体404と第1の側壁31との間の環状空間の一部は第1の空気排出流路R3となっている。第2の領域45Bと第2の貫通孔46Bとによって第2の空気排出流路R4が形成される。空気は第1の空気排出流路R3と第2の空気排出流路R4とを通って、インクタンク52から排出される。第1の領域45Aと第2の領域45Bは連通していない。第1の領域45Aと第2の領域45Bの形状及び個数は限定されないが、インクの補強効率を高めるためには、第1の領域45Aの流路断面積は第2の領域45Bの流路断面積より大きいことが好ましい。
【符号の説明】
【0026】
1 液体補給容器
2 容器本体
3 液体補給ノズル
4,104,204,304,404 弁体
33 内部空間
31 第1の側壁
R1 第1の液体補給流路
R2 第2の液体補給流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8