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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】検査装置、及び参照画像の生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20240422BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G01N21/956 A
H01L21/66 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020040616
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021143840
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】加賀 千翔人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘修
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲てい▼順
(72)【発明者】
【氏名】楊 佳明
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-178144(JP,A)
【文献】特開2004-317427(JP,A)
【文献】特開2019-200277(JP,A)
【文献】特開2011-163855(JP,A)
【文献】特開2007-064842(JP,A)
【文献】特開2004-212218(JP,A)
【文献】特開2009-150718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
H01L 21/00-H01L 21/66
G06T 1/00-G06T 7/90
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持するステージと、
前記試料を照明する照明光を発生する光源と、
複数の画素を備え、前記照明光で照明された検出領域からの検出光を検出する光検出器と、
前記試料に対する前記検出領域の相対位置を移動させる駆動機構と、
前記光検出器によって前記試料を撮像するために、前記駆動機構を制御する処理装置であって、前記試料に対する画像比較検査に用いられる参照画像を生成する処理装置と、を備え、
前記処理装置が、
前記画素の配列方向と前記配列方向に交差する交差方向とに前記駆動機構を交互に駆動させることで、前記交差方向を長手方向とするストライプ領域を複数含むキャプチャ画像を取得し、
前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第1の検証画像として取得し、
同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第1の検証画像とを比較して、第1の比較結果とし、
前記第1の比較結果が良好な場合、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像を前記ストライプ領域についての前記参照画像とし
前記第1の比較結果が良好でない場合に、前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで再度撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第2の検証画像として取得し、
前記同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第2の検証画像とを比較して、第2の比較結果とし、
前記第2の比較結果が良好な場合に、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像を前記ストライプ領域についての前記参照画像する検査装置。
【請求項2】
試料を保持するステージと、
前記試料を照明する照明光を発生する光源と、
複数の画素を備え、前記照明光で照明された検出領域からの検出光を検出する光検出器と、
前記試料に対する前記検出領域の相対位置を移動させる駆動機構と、
前記光検出器によって前記試料を撮像するために、前記駆動機構を制御する処理装置であって、前記試料に対する画像比較検査に用いられる参照画像を生成する処理装置と、を備え、
前記処理装置が、
前記画素の配列方向と前記配列方向に交差する交差方向とに前記駆動機構を交互に駆動させることで、前記交差方向を長手方向とするストライプ領域を複数含むキャプチャ画像を取得し、
前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第1の検証画像として取得し、
同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第1の検証画像とを比較して、第1の比較結果とし、
前記第1の比較結果が良好な場合、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像に基づいて前記参照画像を生成し、
前記第1の比較結果が良好でない場合に、前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで再度撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第2の検証画像として取得し、
前記同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第2の検証画像とを比較して、第2の比較結果とし、
前記第2の比較結果が良好な場合に、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像に基づいて、前記参照画像を生成し、
前記第2の比較結果が良好でない場合に、前記第1の検証画像と前記第2の検証画像とを比較して、第3の比較結果とし、
前記第3の比較結果が良好の場合に、前記第1の検証画像又は前記第2の検証画像に基づいて、前記参照画像を生成する、検査装置。
【請求項3】
前記第2の比較結果が良好でない場合に、前記第1の検証画像と前記第2の検証画像とを比較して、第3の比較結果とし、
前記第3の比較結果が良好の場合に、前記第1の検証画像又は前記第2の検証画像に基づいて、前記参照画像を生成する請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第3の比較結果が良好でない場合に、前記ストライプ領域に対する2つの検証画像の比較結果が良好となるまで、前記ストライプ領域の撮像を繰り返す請求項2または3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第1の比較結果、又は前記第2の比較結果が良好である場合、次のストライプ領域の検証画像を撮像するために、前記処理装置が前記駆動機構を前記配列方向に駆動させる請求項1~のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記キャプチャ画像を撮像した後、前記第1の検証画像を撮像する前に、前記駆動機構が位置合わせを行う請求項1~のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
試料を保持するステージと、
前記試料を照明する照明光を発生する光源と、
複数の画素を備え、前記照明光で照明された検出領域からの検出光を検出する光検出器と、
前記試料に対する前記検出領域の相対位置を移動させる駆動機構と、を備えた検査装置での画像比較検査に用いられる参照画像の生成方法であって、
前記画素の配列方向と前記配列方向に交差する交差方向とに前記駆動機構を交互に駆動させることで、前記交差方向を長手方向とするストライプ領域を複数含むキャプチャ画像を取得するステップと、
前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第1の検証画像として取得するステップと、
同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第1の検証画像とを比較して、第1の比較結果とするステップと、
前記第1の比較結果が良好な場合、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像を前記ストライプ領域についての参照画像とするステップと、
前記第1の比較結果が良好でない場合に、前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで再度撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第2の検証画像として取得するステップと、
前記同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第2の検証画像とを比較して、第2の比較結果とするステップと、
前記第2の比較結果が良好な場合に、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像を前記ストライプ領域についての参照画像とするステップと、を備えた参照画像の生成方法。
【請求項8】
試料を保持するステージと、
前記試料を照明する照明光を発生する光源と、
複数の画素を備え、前記照明光で照明された検出領域からの検出光を検出する光検出器と、
前記試料に対する前記検出領域の相対位置を移動させる駆動機構と、を備えた検査装置での画像比較検査に用いられる参照画像の生成方法であって、
前記画素の配列方向と前記配列方向に交差する交差方向とに前記駆動機構を交互に駆動させることで、前記交差方向を長手方向とするストライプ領域を複数含むキャプチャ画像を取得するステップと、
前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第1の検証画像として取得するステップと、
同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第1の検証画像とを比較して、第1の比較結果とするステップと、
前記第1の比較結果が良好な場合、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像に基づいて前記参照画像を生成するステップと、
前記第1の比較結果が良好でない場合に、前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで再度撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第2の検証画像として取得するステップと、
前記同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第2の検証画像とを比較して、第2の比較結果とするステップと、
前記第2の比較結果が良好な場合に、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像に基づいて、前記参照画像を生成するステップと、
前記第2の比較結果が良好でない場合に、前記第1の検証画像と前記第2の検証画像とを比較して、第3の比較結果とし、
前記第3の比較結果が良好の場合に、前記第1の検証画像又は前記第2の検証画像に基づいて、前記参照画像を生成する参照画像の生成方法。
【請求項9】
前記第2の比較結果が良好でない場合に、前記第1の検証画像と前記第2の検証画像とを比較して、第3の比較結果とし、
前記第3の比較結果が良好の場合に、前記第1の検証画像又は前記第2の検証画像に基づいて、前記参照画像を生成する請求項に記載の参照画像の生成方法。
【請求項10】
前記第3の比較結果が良好でない場合に、前記ストライプ領域に対する2つの検証画像の比較結果が良好となるまで、前記ストライプ領域の撮像を繰り返す請求項8または9に記載の参照画像の生成方法。
【請求項11】
前記第1の比較結果、又は前記第2の比較結果が良好である場合、次のストライプ領域の検証画像を撮像するために、前記駆動機構を前記配列方向に駆動させる請求項7~10のいずれか1項に記載の参照画像の生成方法。
【請求項12】
前記キャプチャ画像を撮像した後、前記第1の検証画像を撮像する前に、前記駆動機構が前記キャプチャ画像と前記第1の検証画像との位置合わせを行う請求項7~11のいずれか1項に記載の参照画像の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、及び参照画像の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程において、マスク等の検査装置にはダイツーダイ(Die To Die)検査と、ダイツーデータベース(Die To Database)検査とがある。ダイツーダイ検査では、撮像画像を参照画像として同じ比較することで、パターンの欠陥を検査している。ダイツーデータベース検査では、マスクの設計データに応じたデータベース(DB)画像から、参照画像を生成している。そして、参照画像と撮像画像とを比較することで、パターン検査を行っている。
【0003】
特許文献1には、レチクルの欠陥を検出する検査装置が開示されている。この検査装置は、実質的に欠陥がないと認められるマスターレチクルをスキャンして、スキャン画像(マスター画像)をメモリに保存している。そして、検査装置は、検査されるレチクルの画像と、マスター画像とを比較することで、欠陥を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2002―544555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、検査装置は、参照画像と撮像画像とを比較することで検査を行っている。参照画像の完全性が検査精度に大きく影響してしまう。しかしながら、撮像画像から参照画像を生成する場合、異常が発生することがある。例えば、撮像時のステージ精度のばらつき、光学系の揺らぎ、データの破損等の予期せぬ異常が生じてしまうおそれがある。このような異常が生じてしまうと、適切な参照画像を生成することができなくなってしまう。これにより、正常なパターンを欠陥として検出してしまう問題(疑似欠陥)や、欠陥の検出感度低下を引き起こすという問題点がある。
【0006】
本開示は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、より適切な参照画像を生成することができる検査装置、及び参照画像の生成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の一態様にかかる検査装置は、試料を保持するステージと、前記試料を照明する照明光を発生する光源と、複数の画素を備え、前記照明光で照明された検出領域からの検出光を検出する光検出器と、前記試料に対する前記検出領域の相対位置を移動させる駆動機構と、前記光検出器によって前記試料を撮像するために、前記駆動機構を制御する処理部であって、前記試料の撮像画像を参照画像と比較することで、検査を行う処理部と、を備え、前記処理部が、前記画素の配列方向と前記配列方向に交差する交差方向とに前記駆動機構を交互に駆動させることで、前記交差方向を長手方向とするストライプ領域を複数含むキャプチャ画像を取得し、前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第1の検証画像として取得し、同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第1の検証画像とを比較して、第1の比較結果とし、前記第1の比較結果が良好な場合、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像に基づいて前記参照画像を生成し、前記第1の比較結果が良好でない場合に、前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで再度撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第2の検証画像として取得し、前記同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第2の検証画像とを比較して、第2の比較結果とし、前記第2の比較結果が良好な場合に、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像に基づいて、前記参照画像を生成する。
【0008】
上記の検査装置において、前記第2の比較結果が良好でない場合に、前記第1の検証画像と前記第2の検証画像とを比較して、第3の比較結果とし、前記第3の比較結果が良好の場合に、前記第1の検証画像又は前記第2の検証画像に基づいて、前記参照画像を生成するようにしてもよい。
【0009】
上記の検査装置において、前記第3の比較結果が良好でない場合に、前記ストライプ領域に対する2つの検証画像の比較結果が良好となるまで、前記ストライプ領域の撮像を繰り返すようにしてもよい。
【0010】
上記の検査装置において、前記第1の比較結果、又は前記第2の比較結果が良好である場合、次のストライプ領域の検証画像を撮像するために、前記処理部が前記駆動機構を前記配列方向に駆動させるようにしてもよい。
【0011】
上記の検査装置において、前記キャプチャ画像を撮像した後、前記第1の検証画像を撮像する前に、前記駆動機構が位置合わせを行うようにしてもよい。
【0012】
本実施形態の一態様にかかる参照画像の生成方法は、試料を保持するステージと、前記試料を照明する照明光を発生する光源と、複数の画素を備え、前記照明光で照明された検出領域からの検出光を検出する光検出器と、前記試料に対する前記検出領域の相対位置を移動させる駆動機構と、を備えた検査装置での画像比較検査に用いられる参照画像の生成方法であって、前記画素の配列方向と前記配列方向に交差する交差方向とに前記駆動機構を交互に駆動させることで、前記交差方向を長手方向とするストライプ領域を複数含むキャプチャ画像を取得するステップと、前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第1の検証画像として取得するステップと、同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第1の検証画像とを比較して、第1の比較結果とするステップと、前記第1の比較結果が良好な場合、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像に基づいて前記参照画像を生成するステップと、前記第1の比較結果が良好でない場合に、前記交差方向に前記駆動機構を駆動させることで再度撮像された前記ストライプ領域の撮像画像を、第2の検証画像として取得するステップと、前記同一のストライプ領域について、前記キャプチャ画像と前記第2の検証画像とを比較して、第2の比較結果とするステップと、前記第2の比較結果が良好な場合に、前記ストライプ領域の前記キャプチャ画像に基づいて、前記参照画像を生成するステップと、を備えている。
【0013】
上記の参照画像の生成方法において、前記第2の比較結果が良好でない場合に、前記第1の検証画像と前記第2の検証画像とを比較して、第3の比較結果とし、前記第3の比較結果が良好の場合に、前記第1の検証画像又は前記第2の検証画像に基づいて、前記参照画像を生成するようにしてもよい。
【0014】
上記の参照画像の生成方法において、前記第3の比較結果が良好でない場合に、前記ストライプ領域に対する2つの検証画像の比較結果が良好となるまで、前記ストライプ領域の撮像を繰り返すようにしてもよい。
【0015】
上記の参照画像の生成方法において、前記第1の比較結果、又は前記第2の比較結果が良好である場合、次のストライプ領域の検証画像を撮像するために、前記駆動機構を前記配列方向に駆動させる請求項6~8のいずれか1項に記載の参照画像の生成方法。
ようにしてもよい。
【0016】
上記の参照画像の生成方法において、前記キャプチャ画像を撮像した後、前記第1の検証画像を撮像する前に、前記駆動機構が前記キャプチャ画像と前記第1の検証画像との位置合わせを行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、より適切な参照画像を生成することができる検査装置、及び参照画像の生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態にかかる検査装置の全体構成を示す模式図である。
図2】試料の検査領域とストライプ領域を示す模式図である。
図3】処理装置の構成を示す制御ブロック図である。
図4】参照画像の生成方法を示すフローチャートである。
図5】参照画像を生成する処理を説明するための図である。
図6】参照画像を生成する処理を説明するための図である。
図7】参照画像を生成する処理を説明するための図である。
図8】参照画像を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0020】
本実施の形態に係る検査装置は、試料を撮像した画像(以下、試料画像ともいう)に基づいて検査を行う。検査装置は、微細なパターンが形成されたフォトマスクや半導体ウェハ等の試料を検査する。つまり、検査装置は、パターン基板に付着した異物など欠陥検査を行う。
【0021】
以下の説明では、半導体装置のフォトリソグラフィ工程に用いられるフォトマスクを試料とする。例えば、検査装置は、画像比較により、マスクツーマスク検査を行う。具体的には、検査装置は、使用前のフォトマスクの検査領域全体の画像を撮像して、参照画像(リファレンス画像)を生成する。検査装置は、使用後のフォトマスクの試料画像を撮像し、参照画像と試料画像とを比較することで比較検査を行う。物理的に同じマスクの使用前に撮像された参照画像と、使用後に撮像された試料画像とを比較することで、経時的な劣化を評価することができる。また、マスクツーマスク検査は、物理的に同じマスクの撮像画像を比較するものに限らず、同じ設計パターンを有する2つのマスクの撮像画像を比較するものであってもよい。
【0022】
本実施の形態にかかる検査装置、及び参照画像の生成方法について、図1を用いて説明する。図1は、検査装置100の全体構成を模式的に示す図である。検査装置100は、ステージ10と、撮像光学系20と、処理装置50と、を備えている。処理装置50は、プロセッサ、及びメモリなどを備えたコンピュータである。
【0023】
図1では、説明の明確化のため、XYZの3次元直交座標系を示している。なお、Z方向が鉛直方向であり、試料40の厚さ方向と平行な方向である。したがって、Z方向が高さ方向となる。試料40の上面には、遮光膜などのパターン41が形成されている。Z方向は、試料40のパターン形成面(主面)の法線方向である。X方向、及びY方向が水平方向であり、試料40のパターン方向と平行な方向である。Z方向は、試料40の厚さ方向である。試料40がフォトマスクであるため、矩形状のガラス基板となっている。そして、X方向、及びY方向は試料40の端辺と平行な方向となっている。
【0024】
ステージ10には、撮像対象の試料40が載置されている。上記のように、試料40はフォトマスクであり、ステージ10上に保持されている。ステージ10上において、試料40はXY平面に平行に保持されている。ステージ10は、駆動機構11を有する3次元駆動ステージである。処理装置50が駆動機構11を制御することで、ステージ10がXYZ方向に駆動される。
【0025】
撮像光学系20は、光源21と、ビームスプリッタ22と、対物レンズ23と、光検出器24と、を備えている。なお、図1に示す撮像光学系20は、適宜、簡略されている。撮像光学系20は上記の構成以外の光学素子、レンズ、光スキャナ、ミラー、フィルタ、ビームスプリッタなどが設けられていてもよい。例えば、撮像光学系20はコンフォーカル光学系であってもよい。
【0026】
光源21は、照明光L11を発生する。光源21は、ランプ光源、LED(Light Emitting Diode)光源、レーザ光源などである。光源21からの照明光L11は、ビームスプリッタ22に入射する。ビームスプリッタ22は、例えば、ハーフミラーであり、照明光L11のほぼ半分を試料40の方向に反射する。ビームスプリッタ22で反射した照明光L11は、対物レンズ23に入射する。対物レンズ23は照明光L11を試料40に集光する。これにより、試料40の表面(パターン形成面)を照明することができる。対物レンズ23の光軸OXは、Z方向と平行となっている。また、照明光L11は、試料40において、X方向を長手方向とするライン状の照明領域を照明している。
【0027】
試料40の表面で反射した反射光L12は、対物レンズ23で集光されて、ビームスプリッタ22に入射する。ビームスプリッタ22は、反射光L12のほぼ半分を透過する。ビームスプリッタ22を透過した反射光L12は、光検出器24に入射する。これにより、光検出器24が試料40を撮像することができる。対物レンズ23により試料40の像が光検出器24に拡大投影される。また、反射光L12を光検出器24の受光面に結像するためのレンズなどを設けてもよい。
【0028】
図1では、検査装置100が明視野照明方式の顕微鏡となっているが、検査装置100の照明方式は特に限定されるものではない。例えば、透過照明方式を用いた場合、光検出器24は、試料40を透過した透過光を検出する。光検出器24が検出する検出光は、試料40で反射した反射光に限られるものではなく、試料40を透過した透過光であってもよい。
【0029】
光検出器24は、試料40を撮像するための撮像素子を有している。光検出器24は、CCD((Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどである。光検出器24は、照明光L11で照明された検出領域からの反射光L12を検出する。
【0030】
光検出器24は、X方向に配列された複数の画素を有している。ここでは、光検出器24として、TDI(Time Delay Integration)センサを用いている。光検出器24の受光面では、X方向に沿って複数の画素が配列されている。もちろん、光検出器24はTDIセンサに限られるものではない。光検出器24は、複数の画素が1列に配列されたラインセンサであってもよい。
【0031】
パターン41の有無に応じて、照明光に対する反射率が異なる。例えば、フォトマスクの場合、パターン41がある箇所では反射率が高くなり、パターン41がない箇所では反射率が低くなる。よって、パターン41の有無に応じて、光検出器24の受光量が変化する。光検出器24は、画素毎に、受光量に応じた検出信号(検出データ)を処理装置50に出力する。
【0032】
ステージ10は駆動ステージであり、試料40をXY方向に移動させることができる。処理装置50の駆動制御部56(図3参照)が、駆動機構11を制御している。駆動機構11が、試料40における検出領域を相対的に移動させる。駆動制御部56が、ステージ10をXY方向に移動させることで、試料40において、照明光L11による照明位置を変化させることができる。
【0033】
このため、試料40の任意の位置を撮像することができ、試料40のほぼ全面を検査することができる。もちろん、駆動制御部56が、ステージ10ではなく、撮像光学系20を駆動してもよい。すなわち、ステージ10に対する撮像光学系20の相対位置が移動可能になっていればよい。あるいは、光スキャナなどを用いて、照明光L11を走査してもよい。
【0034】
具体的には、ステージ10は試料40をY方向に移動させることができる。照明光L11は、試料40においてX方向に沿ったライン状の領域を照明している。また、光検出器24における画素の配列方向がX方向になっている。つまり、画素の配列方向と、ステージ10の駆動方向が互いに直交している。このようにすることで、ストライプ状の領域が撮像される。
【0035】
図2は、試料40の検査領域400の撮像画像を説明するための模式図である。検査領域400は、比較検査が行われる領域であり、試料40の有効領域に対応している。例えば、試料40において、検査領域400は、フォトリソグラフィ工程において転写されるパターンが形成された領域となっている。試料40が矩形状の場合、検査領域400は、試料40の周縁の額縁領域を除いた領域となる。もちろん、検査領域400の形状は特に限定されるものではない。
【0036】
検査領域400の撮像画像は、複数のストライプ領域71~ストライプ領域81に分けて取得される。ストライプ領域71~ストライプ領域81のそれぞれは、Y方向を長手方向とし、X方向を短手方向とする短冊状(帯状)の領域である。ストライプ領域81の短手方向は、光検出器24の画素の配列方向と平行になっている。ストライプ領域81の短手方向の大きさ(ストライプ幅ともいう)は、撮像光学系20の視野に対応している。例えば、ストライプ領域81の短手方向の大きさは、110μm程度である。X方向における光検出器24の画素数は、例えば、2560ピクセルとなっている。
【0037】
ストライプ領域71~ストライプ領域81の長手方向は、ステージ10の駆動方向となっている。例えば、ステージ10がY方向に移動することで、光検出器24がストライプ領域71を撮像する。ストライプ領域71の撮像画像が取得されると、ストライプ領域72を撮像するために、ステージ10がX方向に移動する。つまり、ステージ10がストライプ幅に対応する距離だけ、-X方向に移動する。これにより、照明位置、及び検出位置がX方向にずれる。そして、ステージ10が再度Y方向に移動することで、光検出器24がストライプ領域72を撮像する。
【0038】
上記のように、ステージ10が、Y方向の移動と、X方向の移動とを交互に繰り返している。このようにすることで、ストライプ領域71、ストライプ領域72、・・・、ストライプ領域81の順番で撮像される。処理装置50が、複数のストライプ領域の撮像画像を順次取得する。処理装置50が、ストライプ領域71~81の画像を合成することで、検査領域400の全体の撮像画像を生成することができる。なお、ストライプ領域71~81の画像はその端部が一部重複していてもよい。
【0039】
ストライプ領域71~81の長手方向(Y方向)を主走査方向とし、ストライプ領域71~81の短手方向(X方向)を副走査方向とする。図3では、検査領域400に含まれるストライプ領域の数が11となっているが、ストライプ領域の数は特に限定されるものではない。つまり、ストライプ領域の数は、検査領域400の大きさやストライプ幅に応じて決まる。また、主走査方向は、画素の配列方向と直交する方向に限らず、交差する方向であればよい。
【0040】
隣接する2つのストライプ領域において、Y方向の移動方向が反対方向になっている。つまり、隣接するストライプ領域では、主走査方向が反転する。例えば、奇数番目のストライプ領域71、73、75、77、79、81では、ステージ10が+Y方向に移動することで、それぞれの撮像画像が取得される。一方、偶数番目のストライプ領域72,74,76、78、80では、ステージ10が-Y方向荷移動することで、それぞれの撮像画像が取得される。このように、駆動機構11がステージ10をジグザグに移動することで、光検出器24が検査領域400の全体を撮像している。
【0041】
図3は、処理装置50の構成を示す制御ブロック図である。処理装置50は、第1画像取得部51と、第2画像取得部52と、比較部53と、参照画像記憶部54と、参照画像生成部55と、駆動制御部56とを備えている。駆動制御部56は、上記の通り、ステージ10を制御する。そして駆動制御部56は、ステージ10の駆動位置を比較部53に出力する。比較部53は、第1画像と第2画像とを比較することで、検査を行う。
【0042】
参照画像記憶部54はメモリなどを有しており、検査領域400全体の参照画像を格納している。参照画像記憶部54に記憶されている参照画像が第1画像取得部51によって読み出される。つまり、第1画像取得部51は、参照画像記憶部54に記憶されている参照画像を、第1画像として取得する。第2画像取得部52は、光検出器24が新たに撮像した撮像画像を第2画像として取得する。
【0043】
例えば、比較部53は、第1画像(参照画像)と第2画像(撮像画像)との階調値の差分値を求め、差分値を閾値と比較する。比較部53は、差分値と閾値との比較結果によって、パターン異常、異物などの欠陥を検出する。すなわち、異物などが付着した欠陥箇所では、差分値が閾値よりも大きくなる。比較部53は、欠陥箇所と、その位置座標を対応付けて出力する。なお、欠陥箇所の位置座標は、駆動制御部56の駆動位置などによって特定される。ステージ10の駆動位置と光検出器24における画素位置に基づいて、比較部53が検査領域400におけるXY座標を求める。
【0044】
このようにして、比較部53が画像の比較検査を行う。なお、比較部53における処理は、従来と同様に種々の処理を用いることができる。したがって、詳細な説明を省略する。比較部53は、ストライプ領域毎に画像を比較している。すなわち、比較部53での比較では、1つのストライプ領域が単位となっている。例えば、比較部53は、図2に示すように、ストライプ領域71に対応する参照画像R71と撮像画像I71を比較する。以下、参照画像と試料画像との比較検査を実検査とする。
【0045】
参照画像生成部55は、実検査に先立って、参照画像を生成する。参照画像生成部55は生成した参照画像を参照画像記憶部54に書き込む。図1図3とともに、図4図7を参照して、参照画像を生成する方法について説明する。図4は、参照画像を生成する方法を示すフローチャートである。処理装置50は、最初に撮像したキャプチャ画像に突発的な異常があるか否かを検証する処理を行う。図5図7は、参照画像を生成するための処理を示す模式図である。
【0046】
まず、処理装置50が、キャプチャ画像を取得する(S11)。具体的には、上記のように駆動機構11がステージ10をジグザクに移動させることで、光検出器24が検査領域400全体のキャプチャ画像を撮像する。駆動制御部56が駆動機構11をX方向とY方向とに交互に駆動させることで、ストライプ領域を複数含むキャプチャ画像を取得する。キャプチャ画像は、図2に示したように複数のストライプ領域71~81の撮像画像を含む画像である。また、図5等に示すように、キャプチャ画像Cにおいて、ストライプ領域71~73に対応する画像をそれぞれキャプチャ画像C71~C73とする。検査領域全体のキャプチャ画像が参照画像として参照画像記憶部54に格納される。
【0047】
次に処理装置50が、検証を実行する(S12)。そのため、光検出器24が1ストライプ目の検証画像を撮像する。具体的には、ステージ10がY方向のみに直線移動することで、光検出器24がストライプ領域71の検証画像を撮像する。図5に示すようにストライプ領域71の検証画像を検証画像V71-1とする。検証画像V71-1は、第1の検証画像ともいう。
【0048】
比較部53が、1番目のストライプ領域71の検証画像V71-1を取得する。比較部53がキャプチャ画像C71と検証画像V71-1とを比較する(第1の比較処理)。これにより、ストライプ領域71における欠陥が検出される。比較部53は、上記の通り、差分値を閾値と比較することで、欠陥を検出する。処理装置50は、第1の比較処理での結果を第1の比較結果とする。
【0049】
処理装置50が、第1の比較結果が良好である否かを判定する(S13)。参照画像生成部55は、第1の比較処理で検出された欠陥の数が所定値以上か否かを判定する。参照画像生成部55は、欠陥数が所定値未満の場合、欠陥が多数発生していないため、第1の比較結果が良好と判定する。参照画像生成部55は、欠陥数が所定値以上の場合、欠陥が多数発生しているため、第1の比較結果が良好でないと判定する。比較結果の良否判定は、欠陥の数に限らず、欠陥サイズなどを用いて行われていてもよい。
【0050】
第1の比較結果が良好である場合(S13のYES)、ストライプ領域71におけるキャプチャ画像C71に異常がないため、ステップS20に移行する。ここでは、キャプチャ画像C71が参照画像として採用される。つまり、参照画像生成部55は、キャプチャ画像C71に基づいて、ストライプ領域71の参照画像を生成する。
【0051】
第1の比較結果が良好でない場合(S13のNO)、同一ストライプの検証を実行する(S14)。そのため、まず、処理装置50が1ストライプ目の検証画像を再取得する。つまり、光検出器24が1番目のストライプ領域71の検証画像を再度撮像する。具体的には、駆動機構11がステージ10をY方向のみに直線移動させることで、光検出器24がストライプ領域71の検証画像を撮像する。
【0052】
S14で再取得された検証画像を、図6に示すように、再取得画像V71-2とする。再取得画像V71-2は、第2の検証画像ともいう。再取得画像V71-2は、検証画像V71-1と同一のストライプ領域71の画像である。比較部53がキャプチャ画像C71と再取得画像V71-2とを比較する(第2の比較処理)。これにより、ストライプ領域71における欠陥が検出される。処理装置50は、第2の比較処理の結果を第2の比較結果とする。
【0053】
処理装置50が、第2の比較処理での比較結果が良好か否かを判定する(S15)。つまり、参照画像生成部55が、第2の比較処理で検出された欠陥数等に応じて、S13と同様に第2の比較結果の良否判定を行う。第2の比較結果が良好である場合(S15ののYES)、ストライプ領域71には、キャプチャ画像C71に異常がないため、処理装置50は、ステップS20に移行する。
【0054】
参照画像生成部55は、図5に示すように、検証画像V71-1の撮像時に異常42が発生していたと推定する。参照画像生成部55は、キャプチャ画像C71を参照画像として採用する。つまり、キャプチャ画像C71に基づいて、ストライプ領域71の参照画像を生成する。なお、撮像時の突発的な異常42としては、例えば、撮像時のステージ精度のばらつき、光学系の揺らぎ、データの破損等がある。
【0055】
第2の比較結果が良好でない場合(S15のNO)、参照画像生成部55は、キャプチャ画像C71に異常があると判定する(S16)。この場合、第1及び第2の比較処理の2回とも、多数の欠陥が発生したことになる。従って、図6に示すように、参照画像生成部55は、キャプチャ画像C71の撮像時に異常42が発生していたと推定する。参照画像生成部55は、キャプチャ画像C71を参照画像として採用しない。
【0056】
参照画像生成部55が、ストライプ領域71におけるキャプチャ画像C71と再取得画像V71-2との入れ替えを実施する(S17)。図7に示すように、検査領域400の全体のキャプチャ画像Cから、ストライプ領域71に対応するキャプチャ画像C71を抜き出して、再取得画像V71-2に置き換える。参照画像生成部55は、再取得画像V71-2を用いて、参照画像記憶部54の参照画像を書き換える。これにより、ストライプ領域71の参照画像が、再取得画像V71-2となる。
【0057】
処理装置50が、同一ストライプの再検証を行う(S18)。具体的には、比較部53が再取得画像V71-2と検証画像V71-1とを比較する(第3の比較処理)。これにより、ストライプ領域71における欠陥が検出される。処理装置50は、第3の比較処理の結果を第3の比較結果とする。
【0058】
処理装置50が、第3の比較結果が良好か否かを判定する(S19)。つまり、参照画像生成部55が、第3の比較処理で検出された欠陥数等に応じて、S13と同様に第3の比較結果の良否判定を行う。第3の比較結果が良好である場合(S19のYES)、1番目のストライプ領域71には、再取得画像V71-2に異常がないため、処理装置50は、ステップS20に移行する。参照画像生成部55は、再取得画像V71-2を参照画像として採用する。つまり、参照画像生成部55は、再取得画像V71-2に基づいて、ストライプ領域71の参照画像を生成する。参照画像生成部55は、再取得画像V71-2を用いて、参照画像記憶部54の参照画像を書き換える。これにより、ストライプ領域71の参照画像が、再取得画像V71-2となる。
【0059】
第3の比較結果が良好でない場合(S19のNO)、ステップS14に戻り、処理を繰り返す。つまり、光検出器24が1番目のストライプ領域71の検証画像を新たに撮像する。参照画像生成部55が、新たに撮像されたストライプ領域71の撮像画像を第3の検証画像とする。さらに、比較部53が、再取得画像V71-2である第2の検証画像と、第3の検証画像とを比較して、その結果を第4の比較結果とする。なお、第2の検証画像は、S17の入れ替えで参照画像(キャプチャ画像C71)となっている。参照画像生成部55が第4の比較結果の良否判定を行う。
【0060】
ステップS19で比較結果が良好と判定されるまで、ステップS14~ステップS19の処理が繰り替えされる。つまり、S15又はS19での比較結果が良好と判定されるまで、ストライプ領域71の検証画像の撮像と、検証画像同士の比較処理とを繰り返すように、処理装置50が処理を行う。
【0061】
ステップS13,ステップS15、又はステップS19で比較結果が良好になった場合、参照画像生成部55が、全ストライプが終了したか否かを判定する(S20)。全ストライプ終了していない場合(S20のNO)、次のストライプを検証する(S21)。つまり、2番目のストライプ領域72についての検証を行う。
【0062】
そのため、まず、処理装置50がストライプ領域72の検証画像を取得する。ステージ10が1ストライプ目の終了位置からストライプ幅分だけX方向に移動する。さらに、駆動機構11がステージ10をY方向に移動して、光検出器24が2番目のストライプ領域72を撮像する。2番目のストライプ領域72のキャプチャ画像C72と検証画像とを比較する。そして、S13に戻り、1番目のストライプ領域71と同様の処理を行う。そして、全ストライプが終了するまで(S20のYES)、処理を繰り返す。
【0063】
上記のように、処理装置50は、ストライプ領域毎に、キャプチャ画像の検証を行っている。処理装置50は、ストライプ領域毎に画像比較を行うことで、キャプチャ画像に異常があるか否かを判定している。参照画像生成部55は、異常が生じたストライプ領域のみキャプチャ画像を検証画像に入れ替えて、参照画像を更新している。換言すると、参照画像生成部55は、異常が生じていないストライプ領域では、キャプチャ画像をそのまま用いて、参照画像を生成している。
【0064】
図8は、参照画像生成部55が生成した参照画像Rの一例を示す。ここでは、ストライプ領域71、79の2つにおいて、キャプチャ画像C71、C79に異常42が生じていた場合を示している。つまり、参照画像生成部55が、再取得画像V71-2、キャプチャ画像C72~C78、再取得画像V79-2、キャプチャ画像C80、C81に基づいて、参照画像Rを生成する。参照画像においてストライプ領域71,79の部分が、再取得画像V71-2、再取得画像V79-2に書き換えられる。参照画像生成部55が、再取得画像V71-2、キャプチャ画像C72~C78、再取得画像V79-2、キャプチャ画像C80、C81を合成することで、検査領域全体の参照画像Rを生成する。
【0065】
このようにすることで、処理装置50が、適切な参照画像を生成することができる。つまり、キャプチャ画像の撮像時に、突発的な異常42が発生した場合、異常42が発生したストライプ領域の参照画像が検証画像に置き換えられる。したがって、異常42のない、あるいは、異常42の少ない参照画像を生成することができる。これにより、実検査における疑似欠陥の発生を抑制することができ、高い検出感度で欠陥を検出することができる。よって、高い精度で実検査を行うことができる。
【0066】
また、ステップS13,ステップS15、又はステップS19で比較結果が良好になった場合、次のストライプの検証に移行している。したがって、比較結果が不良の場合、駆動機構11がY方向にステージ10を駆動することで、光検出器24が同一ストライプ領域の検証画像を再度撮像する。したがって、検査領域400の全面についての検証画像の再取得動作を省略することができる。つまり、異常42が発生したストライプ領域のみについて、検証画像を再取得すればよいため、異常42が発生していないストライプ領域の検証画像の再取得が不要となる。これにより、参照画像を生成するための処理時間を短縮することができる。例えば、検査領域400が1000個のストライプ領域を有する場合、検査領域全体を撮像するために1時間程度の長時間が必要となる。本実施の形態の方法により、このような長時間の再取得動作を省略することができる。
【0067】
また、検証処理をリアルタイムで行うようにしてもよい。例えば、n(nは1以上の整数)番目のストライプ領域の検証画像の撮像が終了する前に、n番目のストライプ領域の比較検査を行ってもよい。これにより、検証を遅延なく実行することができる。さらに、各ストライプ領域の検証が完了するまでは、X方向にステージ10が移動することがない。これにより、処理装置50は、各ストライプ領域について、適切な参照画像を速やかに生成することができる。
【0068】
ステージ10の駆動制御には、ばらつきが存在する。したがって、検証画像の撮像前に、ステージ10の位置合わせを行ってもよい。例えば、キャプチャ画像C71の撮像時と、検証画像V71-1の撮像時とで、ステージ10にわずかな位置ずれが生じることがある。具体的には、全体のキャプチャ画像Cを撮像した後、ステージ10がストライプ領域71の位置に戻るとき、ステージ10に、数ピクセル単位のずれが存在する場合がある。そのため、処理装置50が、検証画像V71-1を撮像する前に、ステージ10の位置合わせを行っている。つまり、ステージ10の位置を調整することで、キャプチャ画像C71と検証画像V71-1との位置合わせで、1ピクセル以下まで位置ずれを軽減することが可能になる。ステージ10の位置合わせは、例えば2つの画像を比較することで行われる。
【0069】
キャプチャ画像の撮像後、第1の検証画像の撮像前に、駆動機構11がキャプチャ画像と第1の検証画像との位置合わせを行っている。駆動機構11がX方向にステージ10を位置合わせした後に、Y方向の駆動を開始する。第1の検証画像の位置が、キャプチャ画像の位置と一致するように、駆動機構11がステージ10を位置合わせしている。駆動機構11がステージ10の位置合わせを行うことで、再取得画像V71-2とキャプチャ画像C71とをそのまま入れ替えることができる。本実施の形態では、各ストライプ領域の検証が完了するまでは、X方向にステージ10が移動することがない。つまり、ステップS13~ステップS19までの間、X方向におけるステージ10の位置は一定となっている。よって、検証画像V71-1の撮像時と、再取得画像V71-2の撮像時との間に、X方向においてステージ10の位置合わせを行う必要がない。よって、より簡便に再取得画像を撮像することができる。
【0070】
上記の検査装置100によって、マスクツーマスク検査を精度良く行うことができる。マスクツーマスク検査では、1つのマスクの経時的な変化をモニタすることができる。例えば、EUVフォトリソグラフィでは、現状ペリクル付きマスクが開発段階であるため、ペリクル付きマスクが実用化されるまではペリクル無しマスクが用いられる。ペリクル無しマスクでは、時間経過とともにマスク表面にゴミなどが付着してしまう。マスク全面検査を行うことで、ゴミの増加を評価することができる。もちろん、検査装置100は、マスクツーマスク検査以外の検査、例えば、ダイツーダイ検査を行ってもよい。
【0071】
なお、S17ではキャプチャ画像C71と再取得画像V71-2とを入れ替えたが、キャプチャ画像C71と検証画像V71-1を入れ替えてもよい。また、第3の比較結果が良好な場合、参照画像生成部55が検証画像V71-1を用いて、参照画像を生成してもよい。参照画像生成部55は、比較結果が良好になった時の2つの検証画像の一方を用いて、参照画像を更新すればよい。
【0072】
また、参照画像生成時の比較検査(S12、S14,S18)における閾値を実検査における閾値よりも厳しく設定してもよい。これにより、より完全性の高い参照画像を生成することができる。実検査は、上記の通り、参照画像と試料画像との比較検査である。
【0073】
処理装置50は物理的に単一の装置に限られるものではない。つまり、処理装置50における処理は、複数の装置に分散されて実施されていてもよい。例えば、光検出器24からの検出データを取得する処理装置と、参照画像を生成するための演算処理を行う処理装置が物理的に異なる装置であってもよい。また、処理装置50が生成した参照画像を他の検査装置に送信してもよい。つまり、1つの検査装置100が生成した参照画像を用いて、他の検査装置が実検査を行ってもよい。
【0074】
参照画像の生成に用いられる試料40は、パターンが形成された直後のフォトマスクとすることが好ましい。つまり、フォトマスクがフォトリソグラフィ工程に使用される前に、検査装置100がキャプチャ画像を撮像することが好ましい。このようにすることで、異物などが付着する前のクリーンな状態、又は、パターンが欠ける等の欠陥が生成される前の状態でキャプチャ画像を撮像することできる。これにより、検査精度を向上することができる。実検査により欠陥が検出された場合、フォトマスクに洗浄又は修正が施される。
【0075】
上記した処理装置50の処理のうちの一部又は全部は、コンピュータプログラムによって実行されてもよい。上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0076】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
【符号の説明】
【0077】
100 検査装置
10 ステージ
11 駆動機構
20 撮像光学系
21 光源
22 ビームスプリッタ
23 対物レンズ
24 光検出器
40 試料
41 パターン
42 異常
50 処理装置
51 第1画像取得部
52 第2画像取得部
53 比較部
54 参照画像記憶部
55 参照画像生成部
56 駆動制御部
400 検査領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8