(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】振動波モータ、およびそれを備える鏡筒駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20240422BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20240422BHJP
【FI】
H02N2/04
G02B7/04 E
G02B7/04 D
(21)【出願番号】P 2020056027
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰史
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-022957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と振動板とからなる振動子と、
前記振動子と摩擦接触する摩擦部材と、
前記振動子と前記摩擦部材とを加圧する加圧手段と、
前記振動子と前記摩擦部材の相対移動を案内する案内手段とを有し、
前記案内手段は、前記加圧手段に対して相対的に移動する複数の転動部材と、前記振動子と前記摩擦部材の相対移動方向に沿って延在し、前記複数の転動部材をガイドするガイド部を含むガイド部材とを備え、
前記ガイド部材は、
前記加圧手段による加圧力の中心位置に対し最も近い転動部材の近傍に前記相対移動方向に沿って延在し、前記加圧手段及び前記転動部材から受ける力に対する曲げ剛性を補強する補強部を備え、
前記補強部の厚みは前記ガイド部材の厚みの2倍以下であることを特徴とする振動波モータ。
【請求項2】
前記補強部は、前記加圧手段による加圧力の中心位置に最も近い転動部材と前記相対移動方向に直交する方向において重なるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の振動波モータ。
【請求項3】
前記補強部は、前記加圧手段の加圧方向において、前記ガイド部と重なることを特徴とする請求項1又は2に記載の振動波モータ。
【請求項4】
前記補強部は、半抜き形状または絞り形
状で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の振動波モータ。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記加圧手段から加圧力を伝達される伝達部を備え、
前記補強部は、前記相対移動方向において、前記伝達部と重なることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の振動波モータ。
【請求項6】
前記ガイド部材は、前記振動子と前記摩擦部材の相対移動に伴って移動する被駆動部と接続される接続部を備え、
前記補強部は、前記相対移動方向において、前記接続部と重なることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の振動波モータ。
【請求項7】
前記ガイド部材は、第1端が前記振動子と前記摩擦部材の相対移動に伴って移動する被駆動部に接続された付勢部からの前記相対移動方向に直交する方向への付勢力を伝達する伝達部を備え、
前記補強部は、前記相対移動方向において、前記伝達部と重なることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の振動波モータ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の振動波モータと、
前記振動波モータにより駆動される被駆動部とを有することを特徴とする鏡筒駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動波モータ、およびそれを備える鏡筒駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動波モータでは、駆動源となる振動子が摩擦部材に対して加圧付勢され、加圧付勢により発生する摩擦力を利用して駆動力が取り出される。取り出された駆動力は案内手段により所望の案内方向へ案内され、振動子と摩擦部材は案内方向へ相対的に駆動される。案内手段は、振動子と摩擦部材の接触摩擦以外の、加圧力に起因する不要な負荷を発生させることのないように転動部材等を備え構成される。案内手段は、案内方向へ延在するガイド部が形成されたガイド部材を有する。駆動量を大きくするためには、ガイド部の案内方向への延在量を増やし、案内手段を大型化しなくてはならない。
【0003】
特許文献1には、案内手段の大型化を抑えるため、転動部材の間から加圧力の中心が外れない位置関係を保ちながら、ガイド部間の距離を近づける駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の駆動装置では、ガイド部材の案内方向への延在量が増加するため、加圧力により部材にかかる曲げモーメントが大きくなり、部材たわみも大きくなってしまう。
【0006】
また、案内構造間の距離を近づけることで、特定の転動部材が加圧中心に近い位置まで転動可能となり、その位置にて転動部材に対する反力が集中することになる。これにより、転動部材との接触位置でガイド部材が受ける力が強くなり、ガイド部材のたわみも大きくなる。一方、ガイド部材のたわみを抑制するための補強構造により、ユニットが大型化することは好ましくない。
【0007】
本発明は、駆動量が大きく、小型で剛性が確保できる振動波モータ、およびそれを備える鏡筒駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての振動波モータは、圧電素子と振動板とからなる振動子と、振動子と摩擦接触する摩擦部材と、振動子と摩擦部材とを加圧する加圧手段と、振動子と摩擦部材の相対移動を案内する案内手段とを有し、案内手段は、加圧手段に対して相対的に移動する複数の転動部材と、振動子と摩擦部材の相対移動方向に沿って延在し、複数の転動部材をガイドするガイド部を含むガイド部材とを備え、ガイド部材は、加圧手段による加圧力の中心位置に対し最も近い転動部材の近傍に相対移動方向に沿って延在し、加圧手段及び転動部材から受ける力に対する曲げ剛性を補強する補強部を備え、補強部の厚みはガイド部材の平面部内の厚みの2倍以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、駆動量が大きく、小型で剛性が確保できる振動波モータ、およびそれを備える鏡筒駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の振動波モータが搭載された撮像装置の構成図である。
【
図4】補強部による剛性の補強を説明する図である。
【
図5】補強部と被駆動部との位置関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例の振動波モータ3が搭載された駆動装置の一例であるレンズ鏡筒(鏡筒駆動装置)1を備える撮像装置の構成図である。レンズ鏡筒1は略回転対称形であるため、
図1では上側半分の構成のみを示している。
【0013】
レンズ鏡筒1は、本実施例ではカメラ本体2に着脱可能に取り付けられているが、レンズ鏡筒1は、カメラ本体2と一体的に構成されていてもよい。
【0014】
カメラ本体2内には、撮像素子2aが設けられている。カメラ本体2のマウント211は、レンズ鏡筒1をカメラ本体2に取り付けるためのバヨネット部を有する。
【0015】
レンズ鏡筒1は、マウント211のフランジ部と当接する固定筒212を有する。固定筒212とマウント211とは、不図示のビスにより固定されている。固定筒212には、レンズG1を保持する前鏡筒213とレンズG3を保持する後鏡筒214とが固定される。
【0016】
また、レンズ鏡筒1は、レンズG2を保持するフォーカスレンズ保持枠216を有する。フォーカスレンズ保持枠216は、前鏡筒213と後鏡筒214とに保持されたガイドバー217によって直進移動可能に保持されている。フォーカスレンズ保持枠216、およびレンズG2は、振動波モータ3の駆動に伴い一体となって移動する。すなわち、フォーカスレンズ保持枠216、およびレンズG2は、振動波モータ3により駆動される被駆動部である。
【0017】
図2は、本実施例の振動波モータ3の構成図である。
図2(a)は、振動波モータ3をY軸方向から見た図を示している。
図2(b)は、振動波モータ3の
図2(a)のA-A線断面図である。
図2(c)は、振動波モータ3の
図2(a)のB-B線断面図である。
【0018】
振動子104は、弾性を有する振動板102と圧電素子103とからなる。振動板102と圧電素子103とは、接着材等により固着されている。圧電素子103には、給電するための不図示のフレキシブル基板が固定されている。圧電素子103に電圧が印加されると、超音波振動が励振される。
【0019】
振動子104と振動子保持部材105とは、接着剤等により固定される。なお、振動子104と振動子保持部材105との固定方法は、本実施例の方法に限定されない。可動枠部材107は、薄板板金108を介して振動子保持部材105と連結されている。摩擦部材101と固定側ガイド部材113とは、ネジ等により固定枠部材112に固定されている。固定枠部材112には、不図示のフランジ部が形成されており、後鏡筒214にビス等で固定されている。
【0020】
バネ(加圧手段)110は、4か所において加圧プレート109と可動側ガイド部材(ガイド部材)115とを連結し、振動子104を摩擦部材101に摩擦接触させる加圧力を付与している。加圧プレート109は、弾性部材貼り付け部材116と接触し、加圧力を伝達する。弾性部材貼り付け部材116と圧電素子103との間には、弾性部材106が配置されている。弾性部材貼り付け部材116、および弾性部材106は、圧電素子103の損傷を防止するために、加圧プレート109と圧電素子103との直接接触を妨げる。
【0021】
可動枠部材107と可動側ガイド部材115とは、不図示のネジ等で固定される。なお、可動枠部材107と可動側ガイド部材115との固定方法は、本実施例の方法に限定されない。可動側ガイド部材115は、Z軸方向に沿って形成された2つのV溝の可動側ガイド部(ガイド部)115a、およびZ軸方向へ延在する補強部115bを備える。また、固定側ガイド部材113は、V溝の固定側ガイド部113aを備える。転動ボール(転動部材)114a,114bは、可動側ガイド部115aと固定側ガイド部113aとの間に挟持される。固定側ガイド部材113、転動ボール114a,114b、および可動側ガイド部材115により、振動子104を相対移動方向(本実施例ではZ軸方向)へ案内する案内手段が構成される。
【0022】
減衰部材117は、摩擦部材101と固定側ガイド部材113との間に挟持される。減衰部材117は、弾性を有し、摩擦部材101および固定側ガイド部材113に対し弾性反力による付勢力を発生する。これにより、摩擦部材101および固定側ガイド部材113の部品たわみと摩擦部材101の不要振動とを低減することができる。
【0023】
振動板102は、摩擦部材101にバネ110の加圧力により加圧付勢された状態で接触する接触部を備える。前述したように、圧電素子103に電圧が印加されると、超音波振動が励振され、振動子104に共振現象が起こる。このとき、振動子104には2種の定在波が生じ、振動板102の接触部に略楕円運動が発生する。振動板102が摩擦部材101に加圧接触した状態では、振動板102に発生した楕円運動が効率的に摩擦部材101に伝達される。その結果、振動子104に接続される構成は、Z軸方向へ摩擦部材101、固定枠部材112、および固定側ガイド部材113により構成される固定部材に対して相対移動する。また、可動側ガイド部材115に接続されるフォーカスレンズ保持枠216、およびレンズG2も一体となりZ軸方向へ移動する。相対移動の距離は、振動波モータ3の駆動距離に相当する。
【0024】
以下、補強部115bによる駆動量の大きな振動波モータ3における小型化と剛性確保の両立について説明する。
【0025】
本実施例では、振動波モータ3の駆動距離を長くするため、可動側ガイド部材115がZ軸方向へ長く延在している。また、可動側ガイド部115aは、振動波モータ3のZ軸方向の小型化のため、穴形状のV溝により構成される。そのため、穴形状もZ軸方向へ長く延在する。このような構成では、可動側ガイド部材115の部材単体としての剛性は低下しやすい。
【0026】
また、可動側ガイド部材115のZ軸方向への延在を抑えるため、2つの可動側ガイド部115aのZ軸方向の距離を、転動ボール114a,114bがバネ110の加圧力の中心位置(加圧中心)を挟む配置になる範囲で短くしている。そのため、一方の転動ボールが加圧中心近傍まで移動可能であり、その位置において加圧反力が集中する。
【0027】
上述した構成に起因する、可動側ガイド部材115の変形を抑制するため、本実施例では可動側ガイド部材115に補強部115bを設けている。
【0028】
以下、
図3を参照して、補強部115bの位置関係について説明する。
図3は、
図2(a)のA-A線断面での振動波モータ3の展開図である。
図3(a)は、振動子104が振動波モータ3の相対移動の中心位置に位置している状態を示している。
図3(b)は、振動子104が
図3(a)の状態からZ軸方向へ相対移動した状態を示している。
図3(c)は、振動子104が
図3(b)の状態からZ軸方向へ相対移動し、相対移動の移動端に到達した状態を示している。
【0029】
4個のバネ110は、前述したように、加圧プレート109と可動側ガイド部材115とを連結している。加圧プレート109に与えられる加圧力は、摩擦部材101に加圧接触するように振動子104に作用する。可動側ガイド部材115に与えられる加圧力は、転動ボール114a,114bを挟み込む形で可動側ガイド部材115を固定側ガイド部材113に付勢する。可動側ガイド部材115は、バネ110から加圧力を与えられ、転動ボール114a,114bから反力を与えられる。
【0030】
可動側ガイド部材115に与えられる加圧力は、バネ110と連結する、可動側ガイド部材115に設けられた接続部(伝達部)115cにおいてかかる4つの矢印aで示されている。4つの加圧力は、加圧中心における合力として矢印Aで示されている。
【0031】
可動側ガイド部材115に転動ボール114a,114bから与えられる矢印b1,b2で示される反力は、加圧中心からの距離に応じて決まる。
図3(a)では、転動ボール114a,114bは、加圧中心から等しい距離に位置している。このとき、転動ボール114a,114bからかかる反力は等しくなる。また、転動ボール114a,114bは、可動側ガイド部115aの相対移動方向の中心に位置する。
図3(b)では、転動ボール114aの加圧中心からの距離は、転動ボール114bの加圧中心からの距離より短くなる。このとき、転動ボール114aからかかる反力は、転動ボール114bからかかる反力より大きくなる。
図3(c)では、転動ボール114aの加圧中心からの距離に対する転動ボール114bの加圧中心からの距離の比率は、
図3(b)における比率より大きくなる。
【0032】
なお、
図3では、振動子104がZ軸の正方向へ相対移動した場合を示しているが、Z軸の負方向へ相対移動した場合も同様に加圧中心に対して近い側の転動ボールから相対的に大きな反力がかかる。
【0033】
以上説明したように、
図3(a)における転動ボール114a,114bの位置から加圧中心側に位置している転動ボールの反力が大きくなる。本実施例では、補強部115bは、反力が大きくなる転動ボールに対する剛性を補強するために、複数の転動ボールのうち相対移動方向において加圧中心に最も近い転動ボールが配置される可動側ガイド部115aの近傍に配置されている。具体的には、補強部115bは、相対移動方向において、加圧中心に最も近い転動ボールと重なるように設けられる。
【0034】
以下、
図4を参照して、補強部115bによる剛性の補強について説明する。
図4は、補強部115bによる剛性の補強を説明する図である。
図4では、可動側ガイド部材115、可動側ガイド部材115に加圧力を与えるバネ110、および転動ボール114a,114bが示されている。また、
図4では、振動子104が相対移動の移動端に到達している状態が示されている。
【0035】
図4(a)は、Y軸方向から見た図を示している。
図4(b)は、
図4(a)のA-A線断面での展開図を示している。
【0036】
ここで、
図4(b)を用いて、可動側ガイド部材115にかかる力、および発生するモーメントについて説明する。可動側ガイド部材115には、バネ110と連結する接続部115cにおいて、矢印aで示される加圧力がかかる。また、可動側ガイド部材115には、転動ボール114a,114bから矢印b1,b2で示される反力がかかる。前述したように、各転動ボールから与えられる反力は、位置に応じて異なる。
図4では、転動ボール114aが加圧中心に近いため、転動ボール114aからかかる反力が大きくなる。これにより、可動側ガイド部材115には、転動ボール114aとの接触点を支点、接続部115cを作用点とする矢印cで示されるモーメントが発生する。このとき、可動側ガイド部材115の部品剛性の低下、および転動ボール114aへの反力の集中により、従来、矢印cで示されるモーメントに沿った可動側ガイド部材115の変形が起こりやすかった。
【0037】
本実施例では、補強部115bにより矢印cで示されるモーメントに対する剛性が補強され、可動側ガイド部材115の変形を抑制することができる。補強部115bは相対移動方向において反力が大きい転動ボールと重なるように配置されるため、振動子104が相対移動のどの位置にあっても、モーメントの支点と重なる領域の剛性を補強することができる。また、補強部115bは相対移動方向においてバネ110と連結する接続部115cと重なるように配置されるため、モーメントの作用点と重なる領域の剛性を補強することができる。
【0038】
ここで、
図2に戻り、振動波モータ3の小型化について説明する。
図2(c)において、可動側ガイド部材115は、Y軸方向において部品が最も重なるユニット寸法を律速する位置に配置されている。補強部115bは半抜き形状で構成されているため、剛性補強のための構造を部品厚み内に配置できる。また、補強部115bは、バネ110の加圧方向であるY軸方向において可動側ガイド部115aと重なるように配置されている。以上の構成により、補強部115bは、可動側ガイド部材115のY軸方向の寸法を大型化せず、振動波モータ3のユニットとしてのY軸方向の寸法も大型化しない。なお、本実施例では、補強部115bは半抜き形状で構成されているが、可動側ガイド部材115の厚み内に収まり、Y軸方向の寸法を増加させなければ、どのような形状で構成されていても構わない。例えば、絞り形状やノッチ形状で構成されていてもよい。
【0039】
次に、
図5を参照して、補強部115bと、被駆動部であるフォーカスレンズ保持枠216、およびレンズG2との位置関係を説明する。
図5は、補強部115bと被駆動部との位置関係を説明する図である。
図5(a)は、振動波モータ3をY軸方向から見た図を示している。
図5(b)は、振動波モータ3の
図5(a)のB-B線断面図であり、被駆動部とともに示している。
【0040】
前述したように、振動子104は、固定側ガイド部材113、転動ボール114a,114b、および可動側ガイド部材115により構成される案内手段によって相対移動方向へ案内される。また、フォーカスレンズ保持枠216、およびレンズG2は、ガイドバー217によりZ軸方向へ案内される。ここで、振動波モータ3とフォーカスレンズ保持枠216とは、可動側ガイド部材115に設けられた接続部115dにおいてZ軸方向にガタなく一体となるように接続される。そのため、振動子104の相対移動方向への移動に伴って、フォーカスレンズ保持枠216、およびレンズG2も一体となって移動する。
【0041】
このとき、接続部115dには、フォーカスレンズ保持枠216、およびレンズG2の慣性力がZ軸方向へ働く。この慣性力により、転動ボール114a,114bとの接触位置を支点として、矢印dで示されるモーメントが働く。補強部115bは相対移動方向において接続部115dと重なるように配置されているため、矢印dで示されるモーメントに対する剛性を補強することができる。
【0042】
また、フォーカスレンズ保持枠216は、ガイドバー217との間にわずかではあるがZ軸方向に直交する方向のガタを有する。レンズ鏡筒1の姿勢が変化した場合に、このガタが原因となり、レンズG2の光軸が微小に変化することは好ましくない。そのため、ガタが常に一定方向に付勢されるように、
図5(b)に示されるように、鏡筒付勢バネ(付勢部)220をフォーカスレンズ保持枠216と振動子104との間に配置してもよい。本実施例では、可動側ガイド部材115は、伝達部115eにおいて鏡筒付勢バネ220から付勢力を受けている。これにより、鏡筒付勢バネ220による付勢力が、可動側ガイド部材115に対してY軸方向へ働く。鏡筒付勢バネ220の付勢力により、転動ボール114a,114bを支点として曲げモーメントが発生する。補強部115bは相対移動方向において接続部115eと重なるように配置されているため、曲げモーメントに対する剛性を補強することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、駆動量が大きく、小型で剛性が確保できる振動波モータを実現することができる。
【実施例2】
【0044】
図6は、本実施例の振動波モータ3の構成図である。
図6(a)は、振動波モータ3をY軸方向から見た図を示している。
図6(b)は、振動波モータ3の
図6(a)のA-A線断面図である。
図6(c)は、振動波モータ3の
図6(a)のB-B線断面図である。本実施例では実施例1との差異のみを説明し、共通する構成については説明を省く。
【0045】
本実施例では、可動側ガイド部材115は、3つのV溝の可動側ガイド部(ガイド部)115aを備える。また、固定側ガイド部材113は、1つのV溝および1つの平面からなる固定側ガイド部113aを備える。転動ボール(転動部材)114a,114b,114cは、可動側ガイド部115aと固定側ガイド部113aとの間に挟持される。固定側ガイド部材113、転動ボール114a,114b,114c、および可動側ガイド部材115により、振動子104を相対移動方向(本実施例ではZ軸方向)へ案内する案内手段が構成される。
【0046】
実施例1では、2つの転動ボール114a,114bが設けられているだけであるため、振動子104のZ軸回りの姿勢はフォーカスレンズ保持枠216と接続することで決定される。一方、本実施例では、3つの転動ボール114a,114b,114cが設けられているため、振動子104のZ軸回りの姿勢はフォーカスレンズ保持枠216と接続することなく決定される。
【0047】
本実施例では、転動ボール114aが常にバネ110による加圧力の加圧中心に最も近く、転動ボール114aからの反力が最も大きくなる。そこで、本実施例では、可動側ガイド部材115に設けられた補強部115bは、加圧中心に最も近い転動ボール114aが配置される可動側ガイド部115aの近傍に配置されている。具体的には、補強部115bは、相対移動方向において、転動ボール114aと重なるように配置されている。本実施例では、可動側ガイド部材115に設けられているバネ110と連結する接続部115cは、転動ボール114aが配置される可動側ガイド部115aより加圧中心から離れて配置される。そのため、補強部115bは、Z軸方向において接続部115cと重なるように配置されている。
【0048】
ここで、本実施例では、バネ110の加圧力の加圧中心と可動側ガイド部115aがX軸方向において等間隔で配置されている。このとき、バネ110の加圧力に対する転動ボール114aからの反力は常に、他の転動ボールからの反力に比べて大きくなる。一方、バネ110の加圧力の加圧中心と可動側ガイド部115aがX軸方向において等間隔で配置されていない場合、バネ110の加圧力の加圧中心に最も近い転動ボールは転動ボール114aではない可能性がある。この場合でも、補強部115bを最も反力が大きい転動ボールが配置される可動側ガイド部115aの近傍に、相対移動方向において最も反力が大きい転動ボールと重なるように配置すればよい。
【0049】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、駆動量が大きく、小型で剛性が確保できる振動波モータを実現することができる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
3 振動波モータ
101 摩擦部材
102 振動板
103 圧電素子
104 振動子
110 バネ(加圧手段)
113 固定側ガイド部材(案内手段)
113a 固定側ガイド部(案内手段)
114a,114b 転動ボール(案内手段,複数の転動部材)
115 可動側ガイド部材(案内手段、ガイド部材)
115a 可動側ガイド部(ガイド部)
115b 補強部