(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】電気集塵装置用槌打装置とその改修方法
(51)【国際特許分類】
B03C 3/76 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B03C3/76
(21)【出願番号】P 2020063370
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-12-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、令和元年8月16日北海道電力株式会社(北海道勇払郡厚真町字浜厚真615)苫東厚真発電所に設置
(73)【特許権者】
【識別番号】315016723
【氏名又は名称】三菱重工パワー環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】奥野 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】三輪 守
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209866335(CN,U)
【文献】特開平09-329136(JP,A)
【文献】実開昭62-187652(JP,U)
【文献】特開2006-026470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンマと、
前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフトと、
前記横シャフトに対して交差する方向に配置された駆動シャフトと、
前記駆動シャフトに生じる径方向の荷重を受けるラジアル軸受と、
前記ラジアル軸受から離隔して設けられ、前記駆動シャフトに生じる軸方向の荷重を受けるスラスト軸受と、
を備え、
前記ラジアル軸受は、前記駆動シャフトに生じる前記径方向の荷重のみを受け、
前記スラスト軸受は、
前記駆動シャフトに設置され、前記駆動シャフトから径方向外側に突出した突出部と、
前記突出部の下面側に設置され、前記突出部を介して前記軸方向の荷重を受ける板部と、
を有
し、
前記突出部は、固定ボルトによって前記駆動シャフトに固定され、
前記突出部は、二つの部品によって構成され、前記二つの部品が前記駆動シャフトを挟んで合わされて、前記駆動シャフトの全周を囲むように構成される電気集塵装置用槌打装置。
【請求項2】
前記突出部の材質は、鋼製であり、前記板部の材質は、セラミック製である請求項
1に記載の電気集塵装置用槌打装置。
【請求項3】
前記板部の外周部には、前記板部の外周端部を囲むように設置された固定部を備える請求項1
又は2に記載の電気集塵装置用槌打装置。
【請求項4】
ハンマと、
前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフトと、
前記横シャフトに対して交差する方向に配置された駆動シャフトと、
前記駆動シャフトに生じる径方向の荷重を受けるラジアル軸受と、
前記駆動シャフトに生じる軸方向の荷重を受けるスラスト軸受と、
を備え、
前記ラジアル軸受は、前記駆動シャフトに生じる前記径方向の荷重のみを受け、
前記スラスト軸受は、
前記駆動シャフトに設置され、前記駆動シャフトから径方向外側に突出した突出部と、
前記突出部の下面側に設置され、前記突出部を介して前記軸方向の荷重を受ける板部と、
を有
し、
前記突出部は、固定ボルトによって前記駆動シャフトに固定され、
前記突出部は、二つの部品によって構成され、前記二つの部品が前記駆動シャフトを挟んで合わされて、前記駆動シャフトの全周を囲むように構成される電気集塵装置用槌打装置の改修方法であって、
前記スラスト軸受を、前記ラジアル軸受から離隔して設ける電気集塵装置用槌打装置の改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気集塵装置用槌打装置とその改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気集塵装置(EP:Electrostatic Precipitator)は、排ガスや空気に含まれる煤塵粒子(ダスト、粒子状物質などとも呼ばれる。)を煙突等から大気に放出する前に除去する。電気集塵装置は、粒子を帯電させる放電電極と、放電電極に対向して配置される集塵電極などを備える。放電電極でコロナ放電が生じることによって、ガス分子がイオン化し、排ガス等に含まれる粒子は、電極間の電界中を通過すると荷電される。そして、帯電した粒子は、集塵電極に付着され捕集される。
【0003】
電気集塵装置の集塵室には、放電電極や集塵電極などが収容され、粒子を含む排ガス等が送り込まれる。集塵電極に付着した粒子は、ある程度の量に堆積すると重力で自然落下するが、粒子が部分的に容易に落下しない場合がある。そこで、ハンマを有する槌打装置を用いて、集塵電極の集塵板を間欠的に槌打(ハンマリング)することで、付着した粒子を振動によって強制的に落下させている。これにより、付着した粒子が確実に集塵板から落とされ、付着した粒子によって生じる集塵率の低下を防止している。また、放電電極のほうにも同様の理由で槌打装置が設けられている。ホッパーから払い落とされた粒子は、集塵室の下部に設置されたホッパーに一時貯留され、その後、排出装置によって電気集塵装置の外部に間欠的に排出されている。
【0004】
下記の特許文献1には、放電極又は集塵極をハンマで槌打する構成を有する電極槌打装置に関する発明が開示されている。特許文献1に記載された技術では、駆動シャフトにピン結合部を有するピン継手を形成し、ピンをスライド可能とすることによって、縦軸の上下の荷重変動を軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気集塵装置の槌打装置は、例えば、放電電極又は集塵電極の側面を槌打する複数のハンマを備え、ハンマが横シャフトに設置される。横シャフトには駆動シャフトが交差しており、駆動シャフトの軸心上部には駆動源となる電動機が接続される。また、駆動シャフトは、軸受(ベアリング)を介して支持部材に対して固定されている。
【0007】
槌打装置においても粒子が堆積し、堆積した粒子によって駆動シャフトと軸受などの各部品が摩耗している。特に、石炭焚きボイラの排ガス処理用の電気集塵装置では、集塵室内の粒子濃度が高く、摩耗の進行度が速いという課題がある。そのため、部品交換のため、電気集塵装置の点検回数の頻度が高くなり、稼働率が低下する可能性がある。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、摺動部分の部品の摩耗速度を低減させて、部品を長寿命化させることが可能な電気集塵装置用槌打装置とその改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の電気集塵装置用槌打装置とその改修方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本開示に係る電気集塵装置用槌打装置は、ハンマと、前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフトと、前記横シャフトに対して交差する方向に配置された駆動シャフトと、前記駆動シャフトに生じる径方向の荷重を受けるラジアル軸受と、前記ラジアル軸受から離隔して設けられ、前記駆動シャフトに生じる軸方向の荷重を受けるスラスト軸受とを備え、前記スラスト軸受は、前記駆動シャフトに設置され、前記駆動シャフトから径方向外側に突出した突出部と、前記突出部の下面側に設置され、前記突出部を介して前記軸方向の荷重を受ける板部とを有する。
【0010】
本開示に係る電気集塵装置用槌打装置の改修方法は、ハンマと、前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフトと、前記横シャフトに対して交差する方向に配置された駆動シャフトと、前記駆動シャフトに生じる径方向の荷重を受けるラジアル軸受とを備え、前記スラスト軸受は、前記駆動シャフトに設置され、前記駆動シャフトから径方向外側に突出した突出部と、前記突出部の下面側に設置され、前記突出部を介して前記軸方向の荷重を受ける板部とを有する電気集塵装置用槌打装置の改修方法であって、前記駆動シャフトに生じる軸方向の荷重を受けるスラスト軸受を、前記ラジアル軸受から離隔して設ける。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、摺動部分の部品の摩耗速度を低減させて、部品を長寿命化させることができ、その結果、長期にわたって槌打装置の槌打性能や電気集塵装置の集塵性能を高いまま維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る槌打装置を示す正面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る槌打装置の横シャフトと駆動シャフトの交差部を示す斜視図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る槌打装置の駆動シャフトに設けられるスラスト軸受及びラジアル軸受を示す正面図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る槌打装置の駆動シャフトに設けられるスラスト軸受及びラジアル軸受を示す縦断面図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る槌打装置の駆動シャフトに設けられるスラスト軸受を示す側面図である。
【
図6】槌打装置の駆動シャフトに設けられる従来のラジアル軸受を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の一実施形態に係る槌打装置10について、図面を参照して説明する。
槌打装置10は、
図1に示すように、ハンマ14によって放電電極12を槌打する(ハンマリングする)装置であり、ハンマ14が間欠的に槌打することによって、放電電極12に付着した粒子が払い落とされる。なお、以下では、放電電極12を槌打する槌打装置10について説明するが、本開示は、集塵電極(図示せず。)を槌打する槌打装置にも同様に適用可能である。
【0014】
槌打装置10は、ハンマ14と、横シャフト16と、駆動シャフト18と、ピン継手20などを備える。
【0015】
ハンマ14は、電気集塵装置内部に設置された放電電極12の側面を槌打する。ハンマ14は、放電電極12の側面に沿って放電電極12と離間して設置され、ハンマ14は、槌打可能に放電電極12に対応して設置される。ハンマ14は、横シャフト16上に固定されている。
【0016】
横シャフト16は、鉛直方向に対して交差する方向、例えば水平方向に設置される。横シャフト16には、ハンマ14が間隔を空けて複数設置される。
【0017】
駆動シャフト18は、駆動源である電動機22によって軸周りに回転し、後述する横シャフト回動手段30によって、横シャフト16を断続的に回動させる構成を有する。駆動シャフト18の軸線上には、分割された駆動シャフト18を連結するピン継手20が設けられる。
【0018】
放電電極12は、鉛直方向に延設されており、横シャフト16は、放電電極12と交差するように集塵室内において横方向にわたって配置される。横シャフト16は、放電電極12の延設方向に沿って、鉛直方向に多段に形成されている。
【0019】
駆動シャフト18は、鉛直方向に延設されており、駆動シャフト18に対して横シャフト16が交差している。駆動シャフト18は、例えば、放電電極12の側面において、放電電極12の長手方向に沿って配置される。
【0020】
駆動シャフト18の軸心上部には、駆動シャフト18の駆動源となる電動機22が接続される。なお、駆動源は、駆動シャフト18を軸心周りに回転させることができれば、電動機22に限定されない。なお、電動機22は、電気集塵装置の外部に設置されており、絶縁性を有するシャフト碍子24を介して駆動シャフト18に接続される。
【0021】
駆動シャフト18は、複数のピン継手20で連結されている。横シャフト16は、ピン継手20とピン継手20の間で交差している。また、駆動シャフト18は、ラジアル軸受28を介して軸支持部材26に対して固定されている。ラジアル軸受28は、回転運動する駆動シャフト18の径方向の荷重を受ける構成を有している。
【0022】
ピン継手20は、駆動シャフト18の軸方向に沿って長いピン孔と、ピン孔に嵌合するピンを有し、ピンがピン孔に沿ってスライド可能に構成されている。ピン継手20のピン孔には、例えば、駆動シャフト18の長手方向の延び代以上の長さとなるスライド代が形成される。これにより、ピン継手20よりも上部側の駆動シャフト18の荷重で上部側の駆動シャフト18が下方向に位置ズレしても、上部側の駆動シャフト18が、ピン継手20よりも下部側の駆動シャフト18を押さえつけにくくなる。
【0023】
図2に示すように、駆動シャフト18と横シャフト16との交差部分の上部には、横シャフト回動手段30が設けられる。横シャフト回動手段30は、駆動シャフト18の回転力を横シャフト16に伝達して、横シャフト16を回動させる。
【0024】
横シャフト回動手段30は、例えば、カム32と、突起部36などを有する。
【0025】
カム32は、駆動シャフト18に固定して設けられ、駆動シャフト18の軸方向に対して直交する方向、すなわち、駆動シャフト18の径方向に突出している。カム32には、駆動シャフト18の軸心から離間した端部に、スライドピース38aが形成されている。
【0026】
突起部36は、横シャフト16に固定して設けられ、横シャフト16を間に挟んでハンマ14の先端側とは反対側に設置される。突起部36には、横シャフト16の軸心から離間した端部に、スライドピース38bが形成されている。スライドピース38bは、カム32に形成されたスライドピース38aと接触可能である。
【0027】
カム32は、駆動シャフト18の軸心を中心にして水平面内で回転する。カム32の端部に設けられたスライドピース38aは、駆動シャフト18の回転に伴って回転し、同一水平面内に存在する突起部36に設けられたスライドピース38bと接触する。スライドピース38aとスライドピース38bが接触している間、駆動シャフト18の回転力が、突起部36を介して横シャフト16に伝達される。その結果、突起部36が固定された横シャフト16が回動し、ハンマ14が、突起部36とともに横シャフト16の軸心を中心にして回動する。駆動シャフト18が回転しながらスライドピース38aとスライドピース38bとが接触している間、ハンマ14は放電電極12との離間距離が大きくなっていく。その後、駆動シャフト18が回転し続けて、スライドピース38aとスライドピース38bとの接触が解除されると、放電電極12から離間したハンマ14は、重力によって横シャフト16の軸心を中心にして揺動する。揺動したハンマ14は、放電電極12を槌打する。
【0028】
駆動シャフト18には、
図3~
図5に示すように、ラジアル軸受28と、スラスト軸受11が設けられる。
【0029】
ラジアル軸受28は、駆動シャフト18に生じる径方向の荷重を受ける。ラジアル軸受28は、割りメタル27と、軸受部材29と、ケーシング31を有する。ラジアル軸受28のケーシング31は、固定ボルト43によって軸支持部材26に固定され設置される。ケーシング31は、軸心を中心にして対称な二つの部品によって構成され、二つの部品が駆動シャフト18を挟んで固定ボルト44によって合わされて、駆動シャフト18の外周を囲むように構成される。
【0030】
軸受部材29と駆動シャフト18の間には、割りメタル27が設置される。割りメタル27は、一つの部品の本体部が略半円筒形状を有し、二つの割りメタル27が駆動シャフト18を挟んで固定ボルト42によって合わされて、略円筒形状を構成する。二つの割りメタル27が合わされて、駆動シャフト18の外周が割りメタル27によって囲まれる。固定ボルト41が割りメタル27の上部にて貫通して設置され、割りメタル27は、固定ボルト41によって駆動シャフト18に対して固定される。
【0031】
ケーシング31内には、軸受部材29が駆動シャフト18の周方向に沿って複数個(例えば4個)設置される。軸受部材29は、例えば、セラミックス製の板材であり、割りメタル27との接触面が例えば割りメタル27の外周面に沿って設けられ、ケーシング31に固定される。複数の軸受部材29は、駆動シャフト18に生じる径方向の荷重を受けるため、均等な間隔で設置されることが望ましい。軸受部材29は、割りメタル27の外周面と接触する。割りメタル27は、駆動シャフト18に固定されており、駆動シャフト18の回転時、駆動シャフト18と共に回転し、割りメタル27の外周面と軸受部材29が互いに摺動する。
【0032】
スラスト軸受11は、駆動シャフト18に生じる軸方向の荷重を受ける。スラスト軸受11は、平板部1と、カラー3などを有する。スラスト軸受11は、軸受支持部材2上に設置される。軸受支持部材2は、板状部材であり、板状部材の上面が水平面を有し、ラジアル軸受28から離隔して設置される。軸受支持部材2は、固定ボルト7によって軸支持部材26に接続され設置される。
【0033】
平板部1は、例えばセラミックス製の板状部材である。平板部1の上面にはカラー3が設置される。カラー3は、突出部の一例であり、駆動シャフト18に対して径方向外側に突出している。カラー3は、固定ボルト5によって駆動シャフト18に固定され設置される。カラー3は、軸を中心にして対称な二つの部品によって構成され、二つの部品が駆動シャフト18を挟んで固定ボルト6によって合わされて、駆動シャフト18の全周を囲むように構成される。カラー3の材質は、例えば、鋼製であり、焼き入れによって硬度を向上させることが望ましい。
【0034】
平板部1は、カラー3の下面側に設置され、カラー3を介して駆動シャフト18に生じる軸方向の荷重を受ける。カラー3が鋼製であり、平板部1がセラミックス製である場合、両者がセラミックス製である場合に比べて、摩擦力が低くなり、カラー3と平板部1との間の摺動性が高い。
【0035】
平板部1の外周側には、平板部1の外周端部を囲むように固定部4が設置される。固定部4は、軸受支持部材2の上面に固定される。これにより、平板部1の位置ずれが防止される。また、平板部1と固定部4は、互いに接触していればよい。したがって、平板部1を交換する際、固定部4を取り外して平板部1のみを交換すればよく、大掛かりな取り換え作業が不要になる。
【0036】
従来、駆動シャフト18には、
図6に示すように、駆動シャフト18のラジアル荷重を受けるためのラジアル軸受28と、駆動シャフト18のラジアル荷重及びスラスト荷重を受けるための軸受51とが設けられる。ラジアル軸受28は、上述した実施形態におけるラジアル軸受28と同一の構成を有する。
【0037】
軸受51は、駆動シャフト18に生じる径方向の荷重及び軸方向の荷重を受ける。軸受51は、割りメタル52と、ケーシング53と、カラー56を有する。軸受51のケーシング53は、固定ボルト54によって軸支持部材55に固定され設置される。ケーシング53は、軸心を中心にして対称な二つの部品によって構成され、二つの部品が駆動シャフト18を挟んで固定ボルト(図示せず。)によって合わされて、駆動シャフト18の外周を囲むように構成される。
【0038】
ケーシング53と駆動シャフト18の間には、金属製(例えば鋼製)の割りメタル52が設置される。割りメタル52は、一つの部品が略半円筒形状を有し、二つの割りメタル52が駆動シャフト18を挟んで合わされて、略円筒形状を構成する。二つの割りメタル52が合わされて、駆動シャフト18の外周が割りメタル52によって囲まれる。割りメタル52は、例えばノックピンによってケーシング53に固定されており、駆動シャフト18の外周面と割りメタル52の内周面が互いに摺動する。割りメタル52の内周面は、駆動シャフト18から径方向の荷重を受ける。
【0039】
割りメタル52の上面には金属製(例えば鋼製)のカラー56が設置される。カラー56は、溶接によって駆動シャフト18に固定される。カラー56は、駆動シャフト18の外周を囲むように構成される。カラー56の下面は、割りメタル52の上面と接触する。割りメタル52の上面は、駆動シャフト18から軸方向の荷重を受ける。
【0040】
駆動シャフト18のラジアル荷重及びスラスト荷重を受けるため、
図6に示すように、軸受51のケーシング53内に割りメタル52が設置され、割りメタル52の上面に接触するようにカラー56が駆動シャフト18に対して固定されていた。割りメタル52には、一端側の上部に径方向に突出したフランジ52Aが形成されている。
【0041】
この場合、カラー56を介して割りメタル52とケーシング53がスラスト荷重を受ける。そのため、カラー56の下面と割りメタル52の上面の間が摺動し、この隙間に堆積した粒子が入り込むと摩耗の進行速度が速くなるという課題が生じていた。摩耗が進行すると、カラー56が割りメタル52の上面に食い込み、更に摩耗が進行すると、カラー56がケーシング53に到達してケーシング53が損傷してしまう。また、カラー56の割りメタル52やケーシング53への食い込みによって、カラー56及び駆動シャフト18の高さ位置が下がるため、ハンマ14の振り上げ角度が当初よりも下がり、槌打力が低下し集塵性能も低減するという問題が生じていた。
【0042】
これに対し、本実施形態では、従来の軸受51とは別に、ラジアル軸受28や軸受51から離隔した位置にスラスト軸受11が設置される。そして、スラスト軸受11が駆動シャフト18の軸方向の荷重を受ける。その結果、従来の軸受51が受けるスラスト荷重が低減される又はゼロとなるため、スラスト荷重による軸受51の損傷を低減又は防止できる。
【0043】
また、従来、割りメタル52やケーシング53が摩耗した場合、割りメタル52の交換だけでなく、ケーシング53の交換が必要であったが、ケーシング53の取り外しや取り付けは、大掛かりな作業が必要であった。これに対し、本実施形態では、スラスト荷重を受ける平板部1やカラー3は、駆動シャフト18を間に挟んで固定するだけの部材であるため、交換作業が容易である。さらに、平板部1として、強度の高いセラミックスを用いる場合、交換頻度を低減でき、摩耗による駆動シャフト18の高さ位置の低下が生じにくい。駆動シャフト18の高さ位置の低下を抑制できるため、ハンマ14の振り上げ角度が当初よりも下がることがなく、槌打力が低下しにくくなり集塵性能も低減しにくくなる。
【0044】
なお、本実施形態は、従来の軸受51をそのまま残すような、既設の電気集塵装置の槌打装置10を改修する場合にも適用可能である。スラスト軸受11が新たに設置されることによって、スラスト軸受11がスラスト荷重を受けることから、従来の軸受51が設置されたままでも、カラー56による割りメタル52やケーシング53の摩耗が低減される。
【0045】
また、本開示は、上述した既設の電気集塵装置の槌打装置10の改修例に限定されず、駆動シャフト18に対して従来の軸受51が設置されなくてもよい。すなわち、スラスト軸受11がスラスト荷重を受けることから、従来の軸受51を設置する必要がない。したがって、電気集塵装置や槌打装置10を新設する場合には、従来の軸受51を設置しない構成とすることができる。さらに、既設の電気集塵装置の槌打装置10を改修する場合において、従来の軸受51の割りメタル52及びケーシング53を軸支持部材55から取り外してもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、スラスト軸受11が集塵室内に設置される場合について説明したが、本開示はこの例に限定されない。スラスト軸受11は、駆動シャフト18の軸方向のスラスト荷重を受けることができればよく、電気集塵装置の集塵室の外部に設置されてもよい。この場合、スラスト軸受11の交換などのメンテナンスが容易になる。
【0047】
以上説明した各実施形態に記載の電気集塵装置用槌打装置とその改修方法は例えば以下のように把握される。
本開示に係る電気集塵装置用槌打装置(10)は、ハンマ(14)と、前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフト(16)と、前記横シャフトに対して交差する方向に配置された駆動シャフト(18)と、前記駆動シャフトに生じる径方向の荷重を受けるラジアル軸受(28)と、前記ラジアル軸受から離隔して設けられ、前記駆動シャフトに生じる軸方向の荷重を受けるスラスト軸受(11)とを備え、前記スラスト軸受は、前記駆動シャフトに設置され、前記駆動シャフトから径方向外側に突出した突出部(3)と、前記突出部の下面側に設置され、前記突出部を介して前記軸方向の荷重を受ける板部(1)とを有する。
【0048】
この構成によれば、ラジアル軸受が、駆動シャフトに生じる径方向の荷重を受け、スラスト軸受が、駆動シャフトに生じる軸方向の荷重を受ける。スラスト軸受は、ラジアル軸受から離隔して設けられることから、ラジアル軸受において、ラジアル軸受が受ける軸方向の荷重が低減される又はゼロとなる。また、駆動シャフトに設置された突出部が、駆動シャフトから径方向外側に突出しており、突出部の下面側に設置された板部が、突出部を介して駆動シャフトに生じる軸方向の荷重を受ける。
【0049】
上記開示に係る電気集塵装置用槌打装置において、前記ラジアル軸受は、前記駆動シャフトに生じる前記径方向の荷重のみを受けてもよい。
【0050】
この構成によれば、ラジアル軸受は、駆動シャフトに生じる径方向の荷重のみを受け、軸方向の荷重を受けないため、ラジアル軸受において、ラジアル軸受が受ける軸方向の荷重がゼロとなる。
【0051】
上記開示に係る電気集塵装置用槌打装置において、前記突出部の材質は、鋼製であり、前記板部の材質は、セラミック製でもよい。
【0052】
この構成によれば、突出部と板部の両方がセラミックス製である場合に比べて、摩擦力が低くなり、突出部と板部との間の摺動性が高い。
【0053】
上記開示に係る電気集塵装置用槌打装置において、前記板部の外周部には、前記板部の外周端部を囲むように設置された固定部を備えてもよい。
【0054】
この構成によれば、板部の外周部に設置された固定部によって、板部の外周端部が囲まれ、板部の位置ずれが防止される。
【0055】
本開示に係る電気集塵装置用槌打装置の改修方法は、ハンマと、前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフトと、前記横シャフトに対して交差する方向に配置された駆動シャフトと、前記駆動シャフトに生じる径方向の荷重を受けるラジアル軸受とを備え、前記スラスト軸受は、前記駆動シャフトに設置され、前記駆動シャフトから径方向外側に突出した突出部と、前記突出部の下面側に設置され、前記突出部を介して前記軸方向の荷重を受ける板部とを有する電気集塵装置用槌打装置の改修方法であって、前記駆動シャフトに生じる軸方向の荷重を受けるスラスト軸受を、前記ラジアル軸受から離隔して設ける。
【0056】
この構成によれば、駆動シャフトに設置された既設の軸受とは別にスラスト軸受が新たに設置される。これにより、新たに設置されたスラスト軸受がスラスト荷重を受けることから、軸方向の荷重によって生じていた既設の軸受の摩耗が防止される。
【符号の説明】
【0057】
1 :平板部(板部)
2 :軸受支持部材
3 :カラー(突出部)
4 :固定部
5,6,7 :固定ボルト
10 :槌打装置(電気集塵装置用槌打装置)
11 :スラスト軸受
12 :放電電極
14 :ハンマ
16 :横シャフト
18 :駆動シャフト
20 :ピン継手
22 :電動機
24 :シャフト碍子
26 :軸支持部材
27 :割りメタル
28 :ラジアル軸受
29 :軸受部材
30 :横シャフト回動手段
31 :ケーシング
32 :カム
36 :突起部
38a,38b :スライドピース
41,42,43,44 :固定ボルト
51 :軸受
52 :割りメタル
52A :フランジ
53 :ケーシング
54 :固定ボルト
55 :軸支持部材
56 :カラー