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特許7475927電気集塵装置用槌打装置及びその改修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】電気集塵装置用槌打装置及びその改修方法
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/76 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B03C3/76
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020063371
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021159848
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、令和元年8月16日北海道電力株式会社(北海道勇払郡厚真町字浜厚真615)苫東厚真発電所に設置
(73)【特許権者】
【識別番号】315016723
【氏名又は名称】三菱重工パワー環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】奥野 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】三輪 守
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-044244(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンマと、
前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフトと、
前記横シャフトに対して交差する方向に配置された駆動シャフトと、
前記横シャフトの外周面に固定され、外周面が円筒形状を有するスリーブと、
前記スリーブが内部に設置され、前記横シャフトに生じる径方向の荷重を受ける軸受と、
前記横シャフトに設けられた突起部に形成された第1スライドピースと、
前記駆動シャフトに設けられたカムに形成された第2スライドピースと、
を備え
前記第1スライドピースと前記第2スライドピースが接触して、前記駆動シャフトの回転力が前記横シャフトに伝達されて前記横シャフトが回動し、
前記軸受は、
前記横シャフトの外周を全周にわたって囲むように構成されたケーシングと、
前記ケーシングの内部において前記ケーシングと前記スリーブの間に設置され、円筒形状である割りメタルと、
を有する電気集塵装置用槌打装置。
【請求項2】
ハンマと、
前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフトと、
前記横シャフトに対して交差する方向に配置された駆動シャフトと、
前記横シャフトに設けられた突起部に形成された第1スライドピースと、
前記駆動シャフトに設けられたカムに形成された第2スライドピースと、
を備え
前記第1スライドピースと前記第2スライドピースが接触して、前記駆動シャフトの回転力が前記横シャフトに伝達されて前記横シャフトが回動する電気集塵装置用槌打装置の改修方法であって、
前記横シャフトの外周面に対して、外周面が円筒形状を有するスリーブを固定するステップと、
前記横シャフトに生じる径方向の荷重を受ける軸受を、前記スリーブが内部に設置されるように設けるステップと、
を有し、
前記軸受は、
前記横シャフトの外周を全周にわたって囲むように構成されたケーシングと、
前記ケーシングの内部において前記ケーシングと前記スリーブの間に設置され、円筒形状である割りメタルと、
を有する電気集塵装置用槌打装置の改修方法。
【請求項3】
前記軸受は、前記軸受を固定するための複数の貫通孔が設けられ、前記複数の貫通孔は、既設の軸受を固定するための複数の貫通孔と同一位置に形成される請求項に記載の電気集塵装置用槌打装置の改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気集塵装置用槌打装置及びその改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気集塵装置(EP:Electrostatic Precipitator)は、排ガスや空気に含まれる煤塵粒子(ダスト、粒子状物質などとも呼ばれる。)を煙突等から大気に放出する前に除去する。電気集塵装置は、粒子を帯電させる放電電極と、放電電極に対向して配置される集塵電極などを備える。放電電極でコロナ放電が生じることによって、ガス分子がイオン化し、排ガス等に含まれる粒子は、電極間の電界中を通過すると荷電される。そして、帯電した粒子は、集塵電極に捕集される。
【0003】
電気集塵装置の集塵室には、放電電極や集塵電極などが収容され、粒子を含む排ガス等が送り込まれる。集塵電極に付着した粒子は、ある程度の量に堆積すると重力で自然落下するが、粒子が部分的に容易に落下しない場合がある。そこで、ハンマを有する槌打装置を用いて、集塵電極の集塵板を間欠的に槌打(ハンマリング)することで、付着した粒子を振動によって強制的に落下させている。これにより、付着した粒子が確実に集塵板から落とされ、付着した粒子によって生じる集塵率の低下を防止している。また、放電電極のほうにも同様の理由で槌打装置が設けられている。ホッパーから払い落とされた粒子は、集塵室の下部に設置されたホッパーに一時貯留され、その後、排出装置によって電気集塵装置の外部に間欠的に排出されている。
【0004】
下記の特許文献1には、放電極又は集塵極をハンマで槌打する構成を有する電極槌打装置に関する発明が開示されている。特許文献1に記載された技術では、駆動シャフトにピン結合部を有するピン継手を形成し、ピンをスライド可能とすることによって、縦軸の上下の荷重変動を軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-26470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気集塵装置の槌打装置は、例えば、放電電極又は集塵電極の側面を槌打する複数のハンマを備え、ハンマが横シャフトに設置される。横シャフトには駆動シャフトが交差しており、駆動シャフトの軸心上部には駆動源となる電動機が接続される。また、駆動シャフトや横シャフトは、支持部材に軸受(ベアリング)を介して固定されている。
【0007】
槌打装置においても粒子が堆積し、堆積した粒子によって駆動シャフトと軸受などの各部品が摩耗している。特に、石炭焚きボイラの排ガス処理用の電気集塵装置では、集塵室内の粒子濃度が高く、摩耗の進行度が速いという課題がある。そのため、部品交換のため、電気集塵装置の点検回数の頻度が高くなり、稼働率が低下する可能性がある。また、長期間の使用によって、横シャフトが軸受において摩耗して減肉するという問題があった。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、横シャフトの摩耗を防止し、かつ、摺動部分の部品を容易に交換することが可能な電気集塵装置用槌打装置及びその改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の電気集塵装置用槌打装置及びその改修方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本開示に係る電気集塵装置用槌打装置は、ハンマと、前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフトと、前記横シャフトの外周面に固定され、外周面が円筒形状を有するスリーブと、前記スリーブが内部に設置され、前記横シャフトに生じる径方向の荷重を受ける軸受とを備える。
【0010】
本開示に係る電気集塵装置用槌打装置の改修方法は、ハンマと、前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフトとを備える電気集塵装置用槌打装置の改修方法であって、前記横シャフトの外周面に対して、外周面が円筒形状を有するスリーブを固定するステップと、前記横シャフトに生じる径方向の荷重を受ける軸受を、前記スリーブが内部に設置されるように設けるステップとを有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、横シャフトの摩耗を防止し、かつ、摺動部分の部品を容易に交換することができ、その結果、長期にわたって槌打装置の槌打性能や電気集塵装置の集塵性能を高いまま維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る槌打装置を示す正面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る槌打装置の横シャフトと駆動シャフトの交差部を示す斜視図である。
図3】本開示の一実施形態に係る槌打装置の横シャフトに設けられる軸受を示す縦断面図である。
図4】本開示の一実施形態に係る槌打装置の横シャフトに設けられる軸受を示す側面図である。
図5】槌打装置の横シャフトに設けられる従来の軸受を示す縦断面図である。
図6】槌打装置の横シャフトに設けられる従来の軸受を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の一実施形態に係る槌打装置10について、図面を参照して説明する。
槌打装置10は、図1に示すように、ハンマ14によって放電電極12を槌打する(ハンマリングする)装置であり、ハンマ14が間欠的に槌打することによって、放電電極12に付着した粒子が払い落とされる。なお、以下では、放電電極12を槌打する槌打装置10について説明するが、本開示は、集塵電極(図示せず。)を槌打する槌打装置にも同様に適用可能である。
【0014】
槌打装置10は、ハンマ14と、横シャフト16と、駆動シャフト18と、ピン継手20などを備える。
【0015】
ハンマ14は、電気集塵装置内部に設置された放電電極12の側面を槌打する。ハンマ14は、放電電極12の側面に沿って放電電極12と離間して設置され、ハンマ14は、槌打可能に放電電極12に対応して設置される。ハンマ14は、横シャフト16上に固定されている。
【0016】
横シャフト16は、鉛直方向に対して交差する方向、例えば水平方向に設置される。横シャフト16には、ハンマ14が間隔を空けて複数設置される。
【0017】
駆動シャフト18は、駆動源である電動機22によって軸周りに回転し、後述する横シャフト回動手段30によって、横シャフト16を断続的に回動させる構成を有する。駆動シャフト18の軸線上には、分割された駆動シャフト18を連結するピン継手20が設けられる。
【0018】
放電電極12は、鉛直方向に延設されており、横シャフト16は、放電電極12と交差するように集塵室内において横方向にわたって配置される。横シャフト16は、放電電極12の延設方向に沿って、鉛直方向に多段に形成されている。
【0019】
駆動シャフト18は、鉛直方向に延設されており、駆動シャフト18に対して横シャフト16が交差している。駆動シャフト18は、例えば、放電電極12の側面において、放電電極12の長手方向に沿って配置される。
【0020】
駆動シャフト18の軸心上部には、駆動シャフト18の駆動源となる電動機22が接続される。なお、駆動源は、駆動シャフト18を軸心周りに回転させることができれば、電動機22に限定されない。なお、電動機22は、電気集塵装置の外部に設置されており、絶縁性を有するシャフト碍子24を介して駆動シャフト18に接続される。
【0021】
駆動シャフト18は、複数のピン継手20で連結されている。横シャフト16は、ピン継手20とピン継手20の間で交差している。また、駆動シャフト18は、軸受28を介して軸支持部材26に対して固定されている。軸受28は、回転運動する駆動シャフト18の径方向の荷重を受ける構成を有している。
【0022】
ピン継手20は、駆動シャフト18の軸方向に沿って長いピン孔と、ピン孔に嵌合するピンを有し、ピンがピン孔に沿ってスライド可能に構成されている。ピン継手20のピン孔には、例えば、駆動シャフト18の長手方向の延び代以上の長さとなるスライド代が形成される。これにより、ピン継手20よりも上部側の駆動シャフト18の荷重で上部側の駆動シャフト18が下方向に位置ズレしても、上部側の駆動シャフト18が、ピン継手20よりも下部側の駆動シャフト18を押さえつけにくくなる。
【0023】
図2に示すように、駆動シャフト18と横シャフト16との交差部分の上部には、横シャフト回動手段30が設けられる。横シャフト回動手段30は、駆動シャフト18の回転力を横シャフト16に伝達して、横シャフト16を回動させる。
【0024】
横シャフト回動手段30は、例えば、カム32と、突起部36などを有する。
【0025】
カム32は、駆動シャフト18に固定して設けられ、駆動シャフト18の軸方向に対して直交する方向、すなわち、駆動シャフト18の径方向に突出している。カム32には、駆動シャフト18の軸心から離間した端部に、スライドピース38aが形成されている。
【0026】
突起部36は、横シャフト16に固定して設けられ、横シャフト16を間に挟んでハンマ14の先端側とは反対側に設置される。突起部36には、横シャフト16の軸心から離間した端部に、スライドピース38bが形成されている。スライドピース38bは、カム32に形成されたスライドピース38aと接触可能である。
【0027】
カム32は、駆動シャフト18の軸心を中心にして水平面内で回転する。カム32の端部に設けられたスライドピース38aは、駆動シャフト18の回転に伴って回転し、同一水平面内に存在する突起部36に設けられたスライドピース38bと接触する。スライドピース38aとスライドピース38bが接触している間、駆動シャフト18の回転力が、突起部36を介して横シャフト16に伝達される。その結果、突起部36が固定された横シャフト16が回動し、ハンマ14が、突起部36と共に横シャフト16の軸心を中心にして回動する。駆動シャフト18が回転しながらスライドピース38aとスライドピース38bとが接触している間、ハンマ14は放電電極12との離間距離が大きくなっていく。その後、駆動シャフト18が回転し続けて、スライドピース38aとスライドピース38bとの接触が解除されると、放電電極12から離間したハンマ14は、重力によって横シャフト16の軸心を中心にして揺動する。揺動したハンマ14は、放電電極12を槌打する。
【0028】
横シャフト16には、図3及び図4に示すように、軸受11が設けられる。軸受11は、ケーシング4と、割りメタル5などを有する。軸受11は、横シャフト16に生じる径方向のラジアル荷重を受ける。また、軸受11が1本の横シャフト16に対して向きが対称となるように二以上設置されることによって、二つの軸受11が横シャフト16の軸方向の移動を妨げるため、軸受11は、横シャフト16に生じる軸方向のスラスト荷重を受ける。
【0029】
軸受11のケーシング4は、固定ボルト6によって軸受支持部材41に固定され設置される。軸受支持部材41は、板状部材であり、板状部材の側面が鉛直面を有する。軸受支持部材41は、2本の軸支持部材26間に亘って設けられた支持材40に設置される。
【0030】
ケーシング4は、軸心を中心にして対称な二つの部品によって構成され、二つの部品が横シャフト16を挟んで固定ボルト7によって合わされて、横シャフト16の外周を囲むように構成される。ケーシング4は、例えば、鋳鉄製又は鋼鉄製である。
【0031】
ケーシング4の内部において、ケーシング4とスリーブ1の間には、割りメタル5が設置される。割りメタル5は、一つの部品が半円筒形状を有し、二つの割りメタル5が横シャフト16を挟んで合わされて、円筒形状を構成する。二つの割りメタル5が合わされて、横シャフト16の外周が割りメタル5によって囲まれる。割りメタル5は、ケーシング4に固定されており、スリーブ1の外周面と割りメタル5の内周面が互いに摺動する。割りメタル5は、例えば、鋼鉄製である。
【0032】
割りメタル5の内部において、割りメタル5と横シャフト16の間にはスリーブ1が設置される。スリーブ1は、固定ボルト2によって横シャフト16の外周面に固定される。スリーブ1は、軸を中心にして対称な二つの部品によって構成され、二つの部品が横シャフト16を挟んで、ボルト接続部1Bにおいて固定ボルト3によって合わされて、横シャフト16の外周を囲むように構成される。スリーブ1の外周面は、円筒形状を有する。ボルト接続部1Bは、スリーブ1において径方向外側に突出して設けられている。スリーブ1は、例えば、鋼鉄製である。
【0033】
割りメタル5には、一端側に径方向に突出したフランジ5Aが形成されている。また、スリーブ1には、一端側に径方向に突出したフランジ1Aが形成されている。ケーシング4は、割りメタル5のフランジ5A及びスリーブ1のフランジ1Aを介して、横シャフト16の軸方向のスラスト荷重を受ける。
【0034】
従来、横シャフト16のスラスト荷重とラジアル荷重を受けるため、図5及び図6に示すように、軸受21のケーシング13内に割りメタル15が設置され、割りメタル15の一端側にカラー17が横シャフト16に対して固定されていた。割りメタル15には、一端側に径方向に突出したフランジ15Aが形成されている。カラー17は、横シャフト16の軸方向の移動を抑制する。
【0035】
ケーシング13は、固定ボルト42によって軸受支持部材41に固定され設置される。ケーシング4は、二つの部品によって構成され、二つの部品が横シャフト16を挟んで固定ボルト43によって合わされて、横シャフト16の外周を囲むように構成される。
【0036】
この場合、割りメタル15がラジアル荷重を受けていた。そのため、割りメタル15と横シャフト16の間が摺動し、長期にわたって割りメタル15と横シャフト16の摩耗が進行するという課題が生じていた。割りメタル15は交換容易な構造を有しているが、横シャフト16は交換作業を考慮した構造となっていない。また、ハンマ14が横シャフト16と一体的に設けられているため、横シャフト16を交換する際には、ハンマ14も一緒に交換しなければならず、交換作業に費用と時間がかかっていた。
【0037】
さらに、横シャフト16が摩耗によって減肉した場合、割りメタル15のみを交換しても、横シャフト16と割りメタル15の間の隙間に粒子が入り込みやすいため、摩耗の進行速度が速くなり、その結果、割りメタル15の交換時期が早くなるという問題が生じていた。またさらに、摩耗によって割りメタル15と横シャフト16の間に隙間が生じた場合、横シャフト16の芯ずれが生じ、駆動シャフト18に設けられたカム32との距離が遠くなる。そのため、ハンマ14の振り上げ角度が当初よりも下がり、槌打力が低下し集塵性能も低減するという問題が生じていた。
【0038】
これに対し、本実施形態では、横シャフト16を保護するため、横シャフト16にスリーブ1が固定設置される。これにより、スリーブ1と割りメタル5との間が接触し摺動する。横シャフト16にスリーブ1が固定され、横シャフト16の摩耗がなくなる。したがって、保守点検では、交換が困難な横シャフト16ではなく、スリーブ1と割りメタル5を交換すればよく、長期にわたって槌打装置10の機能を確保できる。
【0039】
また、横シャフト16の外周の周方向に横シャフト16と共に回転するスリーブ1が設けられるため、割りメタル15の内径が横シャフト16と接触する場合と比べて大きくなる。その結果、本実施形態では、部材間の接触面積が従来に比べて増加するため、耐久性が向上する。
【0040】
さらに、摩耗が生じるスリーブ1と割りメタル5は、横シャフト16を間に挟んで固定するだけの部材であるため、交換作業が容易であり、工期を短くできる。そして、横シャフト16が摩耗する場合と異なり、摩耗した部品の交換が容易であるため、摺動部分において隙間が生じた状態が放置されることがない。したがって、隙間への粒子の侵入がなくなり、割りメタル5の寿命を長期化させることができる。
【0041】
またさらに、摩耗を原因とした横シャフト16の交換が不要であるため、ハンマ14をハンマ14の摩耗限界まで継続して使用できるようになり、不要な費用の増加がなくなる。また、横シャフト16の芯ずれが生じないため、ハンマ14の振り上げ角度が当初よりも下がることがなく、槌打力が低下しにくくなり集塵性能も低減しにくくなる。
【0042】
なお、本開示は、既設の電気集塵装置の槌打装置10を改修する場合に適用可能である。上述した実施形態において、軸受11のケーシング4は、固定ボルト6によって固定される。したがって、図5及び図6に示すような従来のケーシング13を固定する固定ボルト42間の距離と等しくなるように、本実施形態に係るケーシング4において固定ボルト6の貫通孔を設ける。これにより、既設の軸受21を取り外したのち、既設の軸受支持部材41に設けられた貫通孔を利用して、新たに設置される軸受11を容易に設置できる。本実施形態では、ケーシング4の内部には、割りメタル5だけでなく、スリーブ1が内部に配置されることから、従来の軸受21の内部に設置される割りメタル15と比べて、割りメタル5の外径が大きい。したがって、ケーシング4の筒部の内径は、従来のケーシング13の筒部の内径よりも大きくなる。
【0043】
また、本実施形態では、スリーブ1が横シャフト16に設置されることから、既設の横シャフト16に対してスリーブ1を設置することによって、既設の電気集塵装置の槌打装置10を改修する場合に適用できる。この場合、既設の横シャフト16が摩耗している場合でも、摩耗部分を覆うようにスリーブ1を設置すれば、緩みなくスリーブ1を横シャフト16に設置でき、軸受11とスリーブ1によって横シャフト16を安定的に保持できる。
【0044】
以上説明した各実施形態に記載の電気集塵装置用槌打装置及びその改修方法は例えば以下のように把握される。
本開示に係る電気集塵装置用槌打装置(10)は、ハンマ(14)と、前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフト(16)と、前記横シャフトの外周面に固定され、外周面が円筒形状を有するスリーブ(1)と、前記スリーブが内部に設置され、前記横シャフトに生じる径方向の荷重を受ける軸受(11)とを備える。
【0045】
この構成によれば、軸受には、横シャフトの外周面に固定されたスリーブが設置される。軸受は、スリーブを介して横シャフトに生じる径方向の荷重を受けるため、軸受とスリーブとの間で摺動が発生する。したがって、軸受との接触による横シャフトの摩耗がなくなる。
【0046】
上記開示に係る電気集塵装置用槌打装置において、前記軸受は、前記スリーブが内部に設置され、円筒形状である割りメタル(5)を有してもよい。
【0047】
この構成によれば、軸受は円筒形状である割りメタルを有し、割りメタルは、スリーブが内部に設置される。横シャフトに固定されたスリーブは、軸受の割りメタルとの間で摺動する。長期間の使用によって摩耗が生じた場合、スリーブと割りメタルが交換される。
【0048】
本開示に係る電気集塵装置用槌打装置の改修方法は、ハンマと、前記ハンマが設置され、鉛直方向に対して交差する方向に配置された横シャフトとを備える電気集塵装置用槌打装置の改修方法であって、前記横シャフトの外周面に対して、外周面が円筒形状を有するスリーブを固定するステップと、前記横シャフトに生じる径方向の荷重を受ける軸受を、前記スリーブが内部に設置されるように設けるステップとを有する。
【0049】
この構成によれば、横シャフトの外周面に対してスリーブが固定され、スリーブが内部に設置されるように軸受が設置される。この場合、横シャフトが摩耗している既設のものであっても、軸受とスリーブによって横シャフトを安定的に保持できる。
【0050】
上記開示に係る電気集塵装置用槌打装置の改修方法は、前記軸受は、前記軸受を固定するための複数の貫通孔が設けられ、前記複数の貫通孔は、既設の軸受を固定するための複数の貫通孔と同一位置に形成されてもよい。
【0051】
この構成によれば、既設の軸受を取り外したのち、軸受を支持していた部材に設けられた貫通孔を利用して、新たに設置される軸受を容易に設置できる。
【符号の説明】
【0052】
1 :スリーブ
1A :フランジ
1B :ボルト接続部
2 :固定ボルト
3 :固定ボルト
4 :ケーシング
5 :割りメタル
5A :フランジ
6 :固定ボルト
7 :固定ボルト
10 :槌打装置(電気集塵装置用槌打装置)
11 :軸受
12 :放電電極
13 :ケーシング
14 :ハンマ
15 :割りメタル
15A :フランジ
16 :横シャフト
17 :カラー
18 :駆動シャフト
20 :ピン継手
21 :軸受
22 :電動機
24 :シャフト碍子
26 :軸支持部材
28 :軸受
30 :横シャフト回動手段
32 :カム
36 :突起部
38a :スライドピース
38b :スライドピース
40 :支持材
41 :軸受支持部材
42 :固定ボルト
43 :固定ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6