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特許7475940電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
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  • 特許-電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 図1
  • 特許-電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/147 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
G03G5/147 503
G03G5/147
G03G5/147 502
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020071956
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167927
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】西 将史
(72)【発明者】
【氏名】関戸 邦彦
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-214815(JP,A)
【文献】特開平07-129056(JP,A)
【文献】特開平09-288373(JP,A)
【文献】特開2009-229495(JP,A)
【文献】特開2020-020919(JP,A)
【文献】特開2001-125294(JP,A)
【文献】特開平11-065234(JP,A)
【文献】特開2004-046222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体と、感光層と、保護層とを有する電子写真感光体であって、
該保護層は導電性粒子を含有し、
該保護層における該導電性粒子の含有割合は40体積%以上70体積%以下であり、
該保護層の体積抵抗率は1.0×10Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記導電性粒子は、ニオブを含有する酸化チタン粒子である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記導電性粒子におけるニオブの含有量は、2.6質量%以上10.0質量%以下である
請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記導電性粒子の体積平均粒径が3nm以上300nm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
以下の手順1~4により決定される帯電保持性が9.5以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の電子写真感光体:
手順1:温度23℃、湿度50%RHの環境下で、前記電子写真感光体を回転速度30rpmで回転させながら、前記電子写真感光体の表面に一方向から電圧を印加する、前記電圧は、周波数1Hz、Voffset=-450V、Vpp=500Vの矩形波とする;
手順2:前記電子写真感光体の表面の前記電圧が印加された部分が、0.30秒間回転した位置において、前記電子写真感光体の表面の電位を測定間隔100μsで10秒以上20秒以下の一定の時間測定する;
手順3:測定により得られた値を、横軸の単位をμs、縦軸の単位をVとしてプロットし、各測定点について、前の25個の測定点から導かれる回帰直線および後の25個の測定点から導かれる回帰直線それぞれの傾きを決定する;
手順4:得られた傾きのうち、最大値および最小値について、それぞれの絶対値を平均して得られる値を帯電保持性とする。
【請求項6】
前記導電性粒子は、
芯材としてのアナターゼ型酸化チタン粒子と、
該芯材の表面を被覆する酸化チタンであって、ニオブを含有する酸化チタンと、
を有する粒子である請求項1~5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記保護層は、ラジカル重合性モノマーを含有する組成物の重合物を含む請求項1~のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、
を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段と、
を有する電子写真装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび該電子写真感光体を有する電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に搭載される電子写真感光体として、有機光導電性物質(電荷発生物質)を含有するものが広く使用されている。
【0003】
近年、電子写真感光体の長寿命化や繰り返し使用時の高画質化を目的として、電子写真感光体の機械的耐久性(耐摩耗性)の向上が求められている。一方で、電子写真感光体の機械的耐久性が向上すると、帯電過程で生成する放電生成物が電子写真感光体の表面に残留し、画像流れを生じることがある。
電子写真感光体の表面における放電によって生じたオゾンや窒素酸化物などの酸化性ガスにより、電子写真感光体の表面層に用いられている材料が劣化する。また、水分の吸着によって電子写真感光体の表面が低抵抗化する。これらのことが画像流れを生じる原因であると考えられている。
【0004】
そして、電子写真感光体の表面の耐摩耗性が高くなるほど、電子写真感光体の表面のリフレッシュ(劣化した材料や吸着した水分等の画像流れの原因となる物質の除去)がなされにくくなり、画像流れが発生しやすくなる。
このような、画像流れを改善する技術として、電子写真感光体の表面層に添加剤を含有させる方法が挙げられる。特許文献1には、硬化性樹脂を含有する電子写真感光体の表面層に、特定のアルキルアミン構造を有する添加剤を含有させることで、画像流れを抑制する技術が記載されている。また、特許文献2には、電子写真感光体の表面層に、特定のウレア化合物を重合させて得られる重合物を含有させて、電子写真感光体の画像流れを抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-199391号公報
【文献】特開2013-008014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2に開示された技術では、電子写真プロセスによっては、画像流れを十分に抑制できない場合があった。
したがって、本発明の目的は、画像流れの抑制に優れた電子写真感光体を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、前記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび前記電子写真感光体を有する電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。
すなわち、本発明の一態様に係る電子写真感光体は、導電性支持体と、感光層と、保護層とを有する電子写真感光体であって、該保護層は導電性粒子を含有し、該保護層における該導電性粒子の含有割合は40体積%以上70体積%以下であり、該保護層の体積抵抗率は1.0×10Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の別の態様に係るプロセスカートリッジは、前記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のさらに別の態様に係る電子写真装置は、前記電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像流れの抑制に優れた電子写真感光体、上記の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび上記の電子写真感光体を有する電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る電子写真感光体の構成の一例を示す概略図である。
図2】本発明に係る電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジ、および前記プロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体と、感光層と、保護層とを有する電子写真感光体であって、該保護層は導電性粒子を含有し、該保護層における該導電性粒子の含有割合は40体積%以上70体積%以下であり、該保護層の体積抵抗率は1.0×10Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であることを特徴とする。
【0013】
ここで、体積抵抗率は、pA(ピコアンペアー)メーターを使用して次のようにして決定することができる。
まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にくし型金電極を蒸着により作製する。くし型金電極について、電極間距離(D)は180μm、くし歯が伸びる方向に垂直な方向の電極の長さ(L)は5.9cm、くし歯の数は6対(計12本)とする。
次に、作製したくし型金電極の上に、厚さ(T)が2μmの保護層を、くし歯が伸びる方向に垂直な方向の電極の長さの範囲および電極間の間隙を覆うのに十分な大きさで設ける。その後、温度23℃、湿度50%RHの環境下にて、くし型金電極間に100Vの直流電圧(V)を印加したときの直流電流(I)を測定し、下記式によって体積抵抗率を得る。
体積抵抗率(Ω・cm)=V(V)×T(cm)×L(cm)/{I(A)×D(cm)}
【0014】
本発明者らは、本発明に係る電子写真感光体が、画像流れの抑制に優れる理由を以下のように推測している。
上述の通り、画像流れが発生する原因の一つとして、電子写真感光体表面の低抵抗化が考えられる。本発明においては、電子写真感光体が保護層(表面層)に40体積%以上70体積%以下の割合で導電性粒子を含有している一方で、保護層の体積抵抗率は1.0×10Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下と比較的高い。そのため、本発明に係る電子写真感光体は帯電保持性を有する一方で、電子写真プロセスにおいては、帯電部材から保護層中の導電性粒子に直接電荷が注入されていると考えられる。これにより、帯電部材と電子写真感光体との間での放電が抑制され、放電生成物の生成量が少ないと考えられる。その結果、放電生成物に起因する電子写真感光体表面の低抵抗化も引き起こされにくくなり、画像流れが効果的に抑制されると考えられる。
【0015】
本発明に係る電子写真感光体の注入性は0.70以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましく、0.80以上であることがさらに好ましい。
【0016】
ここで、注入性は以下のようにして評価することができる。
温度23℃、湿度50%RHの環境下にて、電子写真感光体を電子写真装置に装着し、帯電ローラーに、直流電流で1000Vを印加して、電子写真感光体を60rpmで回転させながら帯電させる。このときに電子写真感光体表面の電位を測定し、得られた値をAとしたとき、A/1000で与えられる値を注入性とする。
【0017】
以下、本発明の電子写真感光体の構成について図1を参照して説明する。
<支持体>
本発明において、支持体21は導電性を有する導電性支持体である。支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレス、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
支持体の材質が樹脂またはガラスである場合は、導電性材料を混合または被覆するなどの処理によって、導電性を付与する。
【0018】
<導電層>
本発明に係る電子写真感光体において、支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することができる。
導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0019】
導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなどの元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0020】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などをさらに含有してもよい。
【0021】
導電層は、上記の各材料および溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
導電層の膜厚は、1μm以上40μm以下であることが好ましく、3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0022】
<下引き層>
本発明において、支持体または導電層の上に、下引き層22を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0023】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
【0024】
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
【0025】
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などをさらに含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
【0026】
下引き層に含まれる金属酸化物粒子は、シランカップリング剤などの表面処理剤を用いて表面処理して用いてもよい。
金属酸化物粒子を表面処理する方法は、一般的な方法が用いられる。たとえば、乾式法や湿式法が挙げられる。
乾式法は、金属酸化物粒子をヘンシェルミキサーのような高速攪拌可能なミキサーの中で攪拌しながら、表面処理剤を含有するアルコール水溶液、有機溶媒溶液、または水溶液を添加し、均一に分散させた後に乾燥を行うものである。
また、湿式法は、金属酸化物粒子と表面処理剤とを溶剤中で攪拌、またはガラスビーズなどを用いてサンドミルなどで分散するものであり、分散後、ろ過、または減圧留去により溶剤除去が行われる。溶剤の除去後は、さらに100℃以上で焼き付けを行うことが好ましい。
【0027】
下引き層には、さらに添加剤を含有させてもよく、例えば、アルミニウムなどの金属粉体、カーボンブラックなどの導電性物質、電荷輸送物質、金属キレート化合物、有機金属化合物などの公知の材料を含有させることができる。
電荷輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電荷輸送物質として、重合性官能基を有する電荷輸送物質を用い、上記の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0028】
下引き層は、上記の各材料および溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体または導電層上に形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。
下引き層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物などの有機溶剤が挙げられる。本発明においては、アルコール系溶剤またはケトン系溶剤を用いることが好ましい。
【0029】
下引き層用塗布液を調製するための分散方法としては、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0030】
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する感光層である。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層である。
【0031】
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層23と、電荷輸送層24と、を有する。
【0032】
(1-1)電荷発生層
電荷発生層23は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0033】
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
【0035】
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤をさらに含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
【0036】
電荷発生層は、上記の各材料および溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体、導電層もしくは下引き層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0037】
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
【0038】
(1-2)電荷輸送層
電荷輸送層24は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0039】
電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
【0041】
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0042】
電荷輸送層は、上記の各材料および溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を電荷発生層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0043】
電荷輸送層の平均膜厚は、3μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0044】
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂および溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体、導電層もしくは下引き層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
【0045】
<保護層>
保護層25は、重合性官能基を有する化合物の重合物および結着樹脂を含有してもよい。
重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基、アルコキシシリル基、シラノール基などが挙げられる。重合性官能基を有する化合物として、電荷輸送能を有するモノマーを用いてもよい。特に、保護層は、ラジカル重合性モノマーを含有する組成物の重合物を含むことが好ましい。
【0046】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、アクリル樹脂が好ましい。
【0047】
保護層が含有する導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。
【0048】
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物はニオブやリン、アルミニウムなどの元素やその酸化物を含有してもよい。
【0049】
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化チタンや酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。
【0050】
導電性粒子は、特にニオブを含有する酸化チタン粒子であることが好ましい。
ニオブを含有する酸化チタン粒子としては、球体状、多面体状、楕円体状、薄片状、針状等、種々の形状のものを用いることができる。これらの中でも、黒ポチなどの画像欠陥が少ないという観点から、球体状、多面体状、楕円体状のものが好ましい。本発明において、ニオブを含有する酸化チタン粒子は、球体状または球体状に近い多面体状であることがさらに好ましい。
【0051】
ニオブを含有する酸化チタン粒子は、アナターゼ型またはルチル型の酸化チタンの粒子であることが好ましく、アナターゼ型の酸化チタンの粒子であることがさらに好ましい。アナターゼ型の酸化チタンを用いることで、注入性が良好になる。
【0052】
本発明においては特に、導電性粒子は、芯材としてのアナターゼ型酸化チタン粒子と、該芯材の表面を被覆する酸化チタンであって、ニオブを含有する酸化チタンと、を有する粒子であることが好ましい。
【0053】
導電性粒子がニオブを含有する酸化チタン粒子を有するとき、導電性粒子におけるニオブの含有量は、0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、2.6質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。導電性粒子におけるニオブの含有量が、0.5質量%以上であれば、画像流れを抑制する効果を高く得ることができ、15.0質量%以下であれば、保護層の体積抵抗率が大きくなり過ぎない。
【0054】
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、分散性および液安定性の観点から、金属酸化物の粒子の表面をシランカップリング剤などで処理することが好ましい。
【0055】
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上300nm以下であることがより好ましく、5nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。
【0056】
画像流れの抑制と保護層の強度との観点から、保護層における導電性粒子の含有割合は40体積%以上70体積%以下であり、好ましくは45体積%以上65体積%以下である。保護層における導電性粒子の含有割合が、40体積%以上であれば、画像流れを抑制する効果を十分に得ることができ、70体積%以下であれば、保護層自体が脆くなることを避けることができる。
【0057】
保護層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。添加剤としては、具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0058】
保護層は、上記の各材料および溶剤を含有する保護層用塗布液を調製し、この塗膜を感光層上に形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0059】
帯電保持性の観点から、保護層の体積抵抗率は1.0×10Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下であり、好ましくは1.0×1010Ω・cm以上1.0×1013Ω・cm以下である。
【0060】
ここで、帯電保持性は、電子写真感光体の表面に矩形波状の電圧を印加し、その矩形波の形状の時間変化から表面電荷の安定保持性、つまりは潜像の安定性を簡易的に評価するための指標である。
【0061】
帯電保持性は、以下の手順1~4により決定される。
手順1:温度23℃、湿度50%RHの環境下で、前記電子写真感光体を回転速度30rpmで回転させながら、前記電子写真感光体の表面に一方向から電圧を印加する。前記電圧は、周波数1Hz、Voffset=-450V、Vpp=500Vの矩形波とする。
手順2:前記電子写真感光体の表面の前記電圧が印加された部分が、0.30秒間回転した位置において、前記電子写真感光体の表面の電位を測定間隔100μsで10秒以上20秒以下の一定の時間測定する。
手順3:測定により得られた値を、横軸の単位をμs、縦軸の単位をVとしてプロットし、各測定点について、前の25個の測定点から導かれる回帰直線および後の25個の測定点から導かれる回帰直線それぞれの傾きを決定する。
手順4:得られた傾きの値のうち、最大値および最小値について、それぞれの絶対値を平均して算出される値を帯電保持性とする。
【0062】
なお、上記の手順3において、測定開始から得られた初めの24点および測定終了前の24点については、回帰直線を導くための測定点が25に満たないため、傾きの決定のためのデータとして使用しない。
【0063】
帯電保持性は9.5以上であることが好ましく、10.0以上であることがより好ましい。
【0064】
保護層の膜厚は、0.2μm以上5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上3μm以下であることがより好ましい。
【0065】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明に係るプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体と、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【0066】
また、本発明に係る電子写真装置は、これまで述べてきた電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段と、を有することを特徴とする。
【0067】
図2に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
円筒状(ドラム状)の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、回転過程において、帯電手段3により、正または負の所定電位に帯電される。なお、図2においては、ローラー型帯電部材によるローラー帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。
【0068】
帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。露光光4は、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して強度変調された光であり、例えば、スリット露光やレーザービーム走査露光などの像露光手段から出力される。
【0069】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像(正規現像または反転現像)され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。このとき、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が印加される。
【0070】
また、転写材7が紙である場合、転写材7は給紙部(不図示)から取り出されて、電子写真感光体1と転写手段6との間に電子写真感光体1の回転と同期して給送される。電子写真感光体1からトナー像が転写された転写材7は、電子写真感光体1の表面から分離されて、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受けることにより、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置の外へプリントアウトされる。
【0071】
電子写真装置は、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。また、クリーニング手段9を別途設けず、上記付着物を現像手段5などで除去する、いわゆる、クリーナーレスシステムを用いてもよい。
【0072】
本発明においては、上記の電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などから選択される構成要素のうち、複数の構成要素と、を容器に納め、一体に支持してプロセスカートリッジ11を形成することができる。また、これにより形成したプロセスカートリッジを電子写真装置本体に対して着脱自在に構成できる。
【0073】
例えば以下のように構成する。帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9から選択される少なくとも1つを、電子写真感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化する。これを、電子写真装置本体のレールなどの案内手段12を用いて、電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0074】
電子写真装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明のプロセスカートリッジ11を電子写真装置本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。
【0075】
本発明に係る電子写真感光体は、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機、ファクシミリ、および、これらの複合機などに用いることができる。
【実施例
【0076】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0077】
<導電性粒子の製造>
(ニオブ含有酸化チタン粒子(T1-1)の製造)
体積平均粒径150nm、ニオブ含有量0.20質量%の、略球形状のアナターゼ型二酸化チタンを芯材として用いた。この芯材100gを水に分散させ、1Lの水懸濁液とし、60℃に加温した。
【0078】
五塩化ニオブ(NbCl)3gを11.4モル/Lの濃度の塩酸100mLに溶解させたニオブ溶液と、Tiとして33.7gを含む硫酸チタン溶液600mLとを混合したチタンニオブ酸液を調製した。得られたチタンニオブ酸液と、10.7モル/Lの濃度の水酸化ナトリウム水溶液とを、上記の水懸濁液のpHが2~3となるように3時間かけて同時に滴下(並行添加)した。
【0079】
滴下終了後、懸濁液をろ過、洗浄し、110℃で8時間乾燥した。この乾燥物を大気雰囲気中、800℃にて1時間の加熱処理を行い、酸化チタンを含有する芯材と、ニオブを含有している酸化チタンを含有する被覆層と、を有するニオブ含有酸化チタン粒子(T1-1)の粉末を得た。
【0080】
(ニオブ含有酸化チタン粒子(T1-2)~(T1-10)の製造)
ニオブ含有酸化チタン粒子(T1-1)の製造において、用いる芯材の体積平均粒径を表1に示すように変更し、被覆時の条件を適宜変更した。それ以外はニオブ含有酸化チタン粒子(T1-1)の製造と同様にしてニオブ含有酸化チタン粒子(T1-2)~(T1-10)の粉末を得た。なお、表1中の含有量は、ニオブ含有酸化チタン粒子におけるニオブの含有量であり、蛍光X線による元素分析法(XRF)により測定して得た値である。
【0081】
(ニオブ含有酸化チタン粒子(T2-1)の製造)
硫酸チタニル水溶液に、硫酸ニオブ(水溶性ニオブ化合物)をチタン量(二酸化チタン換算)に対し、ニオブイオンとして1.0質量%の割合となるように添加した。この硫酸チタニル水溶液に水酸化チタンからなる微粒核を添加して、加熱沸騰することで加水分解を行い、含水二酸化チタンスラリーを得た。
【0082】
上記ニオブイオンを含有する含水二酸化チタンスラリーをろ過し、水で洗浄した後、110℃で8時間乾燥した。この乾燥物を大気雰囲気中、800℃にて1時間の加熱処理を行い、ニオブ含有酸化チタン粒子(T2-1)の粉末を得た。
【0083】
(ニオブ含有酸化チタン粒子(T2-2)~(T2-5)の製造)
ニオブ含有酸化チタン粒子(T2-1)の製造において、硫酸チタニル水溶液に添加する硫酸ニオブ量、加水分解時に添加する微粒核の大きさ、加水分解時の温度および加水分解率を適宜調整した。これにより表1に示す体積平均粒径を有するニオブ含有酸化チタン粒子(T2-2)~(T2-5)の粉末を得た。
【0084】
【表1】
【0085】
<電子写真感光体の製造>
(実施例1)
直径24mm、長さ257.5mmのアルミニウムシリンダー(JIS-A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
【0086】
次に、以下の材料を用意した。
・金属酸化物粒子としての酸素欠損型酸化スズ(SnO)で被覆されている酸化チタン(TiO)粒子(体積平均粒径230nm)214部
・結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ-325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%)132部
・溶剤としての1-メトキシ-2-プロパノール98部
これらを、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。
得られた分散液に、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、平均粒径2μm)を添加した。シリコーン樹脂粒子の添加量は、ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して10質量%となるようにした。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製)を分散液に添加した。
次に、分散液中の金属酸化物粒子と結着材料と表面粗し付与材の合計質量(すなわち、固形分の質量)が分散液の質量に対して67質量%となるように、メタノールと1-メトキシ-2-プロパノールの混合溶媒(質量比1:1)を分散液に添加した。その後、攪拌することによって、導電層用塗布液を調製した。
この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを1時間140℃で加熱することによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
【0087】
次に、以下の材料を用意した。
・下記式(E-1)で示される電子輸送物質3.11部
・ブロックイソシアネート(商品名:デュラネートSBB-70P、旭化成ケミカルズ(株)製)6.49部
・スチレン-アクリル樹脂(商品名:UC-3920、東亞合成製)0.4部
・シリカスラリー(製品名:IPA-ST-UP、日産化学工業製、固形分濃度:15質量%、粘度:9mPa・s)1.8部
これらを、1-ブタノール48部とアセトン24部の混合溶媒に溶解して下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを30分間170℃で加熱することによって、膜厚が0.7μmの下引き層を形成した。
【化1】
【0088】
次に、CuKα特性X線回折より得られるチャートにおいて、7.5°および28.4°の位置にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部とポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業社製)5部を用意した。
これらをシクロヘキサノン200部に添加し、直径0.9mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で6時間分散した。これにシクロヘキサノン150部と酢酸エチル350部をさらに加えて希釈して電荷発生層用塗布液を得た。
得られた塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、95℃で10分間乾燥することにより、膜厚が0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0089】
なお、X線回折の測定は、次の条件で行ったものである。
[粉末X線回折測定]
使用測定機:理学電気(株)製、X線回折装置RINT-TTRII
X線管球:Cu
管電圧:50KV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:4.0°/min
サンプリング間隔:0.02°
スタート角度(2θ):5.0°
ストップ角度(2θ):40.0°
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルター:不使用
インシデントモノクロ:使用
カウンターモノクロメーター:不使用
発散スリット:開放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
平板モノクロメーター:使用
カウンター:シンチレーションカウンター
【0090】
次に、以下の材料を用意した。
・下記式(C-1)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質)6部
・下記式(C-2)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質)3部
・下記式(C-3)で示される電荷輸送物質(正孔輸送性物質)1部
・ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部
・下記式(C-4)と下記式(C-5)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂(x/y=0.95/0.05:粘度平均分子量=20000)0.02部
これらを、オルトキシレン25部/安息香酸メチル25部/ジメトキシメタン25部の混合溶媒に溶解させることによって電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を30分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が12μmの電荷輸送層を形成した。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0091】
次に、以下の材料を用意した。
・ニオブ含有酸化チタン粒子(T1-1、比重:4g/cm)100部
・シランカップリング剤として下記式(S-1)で示される化合物(商品名:KBM-3033、信越化学工業(株)製)3部
【化7】
これらを、トルエン200部に混合し、攪拌装置で4時間攪拌した後、ろ過、洗浄後、さらに130℃で3時間加熱処理を行った。このようにして、表面処理を行った。
次に、以下の材料を用意した。
・結着樹脂として下記構造式(O-1)で示される化合物1部
・導電性粒子として上記の表面処理したニオブ含有酸化チタン粒子4部
これらを、1-プロパノール5部/シクロヘキサン5部の混合溶媒に混合し、攪拌装置で6時間攪拌した。このようにして、保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を6分間50℃で乾燥させた。その後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、ビーム電流5.0mAの条件で支持体(被照射体)を300rpmの速度で回転させながら、1.6秒間電子線を塗膜に照射した。保護層位置の線量は15kGyであった。
その後、窒素雰囲気下にて、塗膜の温度を117℃に昇温させた。電子線照射から、その後の加熱処理までの酸素濃度は10ppmであった。
次に、大気中において塗膜の温度が25℃になるまで自然冷却した後、塗膜の温度が120℃になる条件で1時間加熱処理を行い、膜厚2μmの保護層を形成した。このようにして、実施例1に係る電子写真感光体を製造した。
【化8】
【0092】
(実施例2~23)
ニオブ含有酸化チタン粒子の種類および保護層中の含有量(体積%)を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2~23に係る電子写真感光体を製造した。
【0093】
(実施例24)
ニオブ含有酸化チタン粒子の表面処理に用いたシランカップリング剤の種類および量を、下記式(S-2)で示される化合物(商品名:KBM-3103C、信越化学工業(株)製)4部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして実施例24に係る電子写真感光体を製造した。
【化9】
【0094】
(実施例25)
以下の材料を用意した。
・酸化スズ粒子(商品名:S-2000、三菱マテリアル(株)製)100部
・式(S-2)で示される化合物20部
これらを、トルエン200部に混合し、攪拌装置で4時間攪拌した後、ろ過、洗浄後、さらに130℃で3時間加熱処理を行った。このようにして、酸化スズ粒子の表面処理を行った。
実施例1において、保護層の形成に用いた導電性粒子の種類および量を、上記で表面処理した酸化スズ粒子7部に変更した以外は、実施例1と同様に実施例25に係る電子写真感光体を製造した。
【0095】
(実施例26)
実施例25において、酸化スズ粒子の表面処理に用いたシランカップリング剤の種類を下記式(S-3)で示される化合物(商品名:KBM-3066、信越化学工業(株)製)に変更した。それ以外は、実施例25と同様にして実施例26に係る電子写真感光体を製造した。
【化10】
【0096】
(実施例27)
実施例1において、保護層の形成に用いた結着樹脂の種類を下記構造式(O-2)で示される化合物に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして実施例27に係る電子写真感光体を製造した。
【化11】
【0097】
(実施例28)
実施例1において、保護層の形成に用いた結着樹脂の種類および量を、フェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ-325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%)1.7部に変更した。また、保護層の形成に用いた混合溶媒の種類および量を1-メトキシ-2-プロパノール5部/メタノール4部に変更して、保護層用塗布液を調製し、この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成した。その後、塗膜を30分間160℃で乾燥させることによって、膜厚が2μmの保護層を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして実施例28に係る電子写真感光体を製造した。
【0098】
(実施例29)
以下の材料を用意した。
・ブロックイソシアネート(商品名:デュラネートSBN-70D、旭化成ケミカルズ(株)製)1部
・ポリビニルアセタール樹脂(商品名:KS-5Z、積水化学工業(株)製)1部
実施例1において、保護層の形成に用いた結着樹脂の種類および量を上記の材料に変更した。また、保護層の形成に用いた混合溶媒の種類および量を1-ブタノール9部/アセトン6部に変更して、保護層用塗布液を調製し、この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成した。その後、塗膜を30分間170℃で乾燥させることによって、膜厚が2μmの保護層を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして実施例29に係る電子写真感光体を製造した。
【0099】
(実施例30)
実施例1において、保護層の形成に用いた結着樹脂の種類および量を、下記式(O-3)および(O-4)で示される構造単位を5/5の割合で有する、重量平均分子量(Mw)が100,000であるポリエステル樹脂1部に変更した。また、保護層の形成に用いた混合溶媒の種類および量をクロロベンゼン12部/ジメトキシメタン8部に変更して保護層用塗布液を調製し、この保護層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成した。その後、塗膜を30分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が2μmの保護層を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして実施例30に係る電子写真感光体を製造した。
【化12】
【化13】
【0100】
(比較例1~4)
実施例1において、保護層の形成に用いたニオブ含有酸化チタン粒子の種類および保護層中の含有量(体積%)を表3に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして比較例1~4に係る電子写真感光体を製造した。
【0101】
(比較例5)
保護層用塗布液を以下のように調製した。
まず、以下の材料を用意した。
・ラジカル重合性モノマー(製品名:TMPTA、東京化成(株)製)10部
・下記式(H-1)で示される化合物5部
・下記式(H-2)で示される化合物0.15部
・下記式(H-3)で示される化合物0.15部
・フッ素樹脂粒子(製品名:MPE-056、三井・デュポンフロロケミカル(株)製)1.5部
・光重合開始剤(製品名:イルガキュア184、BASFジャパン(株)製)0.75部
【化14】
【化15】
【化16】
これらをテトラヒドロフラン100部に混合し、攪拌装置で6時間攪拌し、これにより保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を窒素気流中でスプレー塗工法により電荷輸送層上に塗布して塗膜を形成し、10分間窒素気流中に放置して、指触乾燥した。その後、酸素濃度が2%以下となるようにブース内を窒素ガスで置換した紫外線光照射ブースにて、紫外線照射を以下の条件で行った。
メタルハライドランプ:160W/cm
照射距離:120mm
照射強度:700mW/cm
照射時間:60秒
さらに、130℃で20分間乾燥することで、膜厚が5μmの保護層を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして比較例5に係る電子写真感光体を製造した。
【0102】
(比較例6)
以下の材料を用意した。
・下記式(H-4)で示される化合物97部
・下記式(H-5)で示される化合物3部
これらをn-プロパノール100部に溶解させ、さらに1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)100部を加えて、保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例6に係る電子写真感光体を製造した。
【化17】
【化18】
【0103】
(比較例7)
以下の材料を用意した。
・アンチモンドープ酸化スズ粒子(商品名:T-1、三菱マテリアル(株)製)100質量部
・下記式(H-6)で示される化合物3部
・フッ素原子含有化合物(商品名LS-1090、信越シリコーン(株)製)10質量部
これらを、エタノール250部に混合し、攪拌装置で48時間攪拌した後、ろ過して、水で洗浄後、さらに150℃で3時間加熱処理を行った。このようにして、アンチモンドープ酸化スズ粒子の表面処理を行った。
さらに以下の材料を用意した。
・式(O-1)で示される化合物18部
・光重合開始剤として2-メチルチオキサントン6.8部
・前記表面処理酸化スズ粒子45部
・四フッ化エチレン樹脂粒子(平均粒径:0.18μm)14部
これらを、エタノール150部に混合してサンドミルで90時間分散した。このようにして、保護層用塗布液を調製した。
この保護層用塗布液を、実施例1と同様にして用意した電荷輸送層の上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を6分間50℃で乾燥させた。また、塗膜の紫外線による硬化を比較例5と同様にして行った。それ以外は実施例1と同様にして比較例7に係る電子写真感光体を製造した。
【化19】
【0104】
(比較例8)
以下の材料を用意した。
・ニオブ含有酸化チタン(体積平均粒径6nm、ニオブ含有量0.5質量%)10部
・下記式(H-7)で示される化合物10部
・重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシル(フェニル)メタノン)1部
これらを、n-プロピルアルコール40部に混合してサンドミルで2時間分散して保護層用塗布液を調製した。
比較例7において、この保護層用塗布液を用いた以外は、比較例7と同様にして、比較例8に係る電子写真感光体を製造した。
【化20】
【0105】
〈注入性の評価〉
注入性の評価には、電子写真装置(レーザービームプリンター)(商品名:HP LaserJet Enterprise Color M553dn、ヒューレットパッカード社製)の改造機を使用した。評価に使用した電子写真装置は、像露光量、帯電ローラーから電子写真感光体の支持体に流れる電流量(以降、総電流とも呼ぶ)、および、帯電ローラーへの印加電圧それぞれの調節および測定ができるように改造した。
また、電子写真装置のシアン色用のプロセスカートリッジを改造し、現像位置に電位プローブ(model6000B-8:トレック・ジャパン(株)製)を装着した。次に、電子写真感光体の中央部の電位を表面電位計(model344:トレック・ジャパン(株)製)を使用して表面電位を測定できるようにした。
温度23℃、湿度50%RHの環境下にて各実施例および比較例に係る電子写真感光体を装着し、帯電ローラーに、直流電流で1000Vを印加して、前記電子写真感光体を60rpmで回転させながら帯電させた。このときの電子写真感光体表面の電位Aを測定し、注入性=A/1000を決定した。
結果を表2および3に示す。
【0106】
〈帯電保持性評価〉
帯電保持性の測定には、感光体試験装置(商品名:CYNTHIA59、ジェンテック(株)製)を使用した。温度23℃/湿度50%RHの環境下にて、各実施例および比較例に係る電子写真感光体を感光体試験装置に設置した。また、直径8mmの導電性ゴムローラーを帯電部材として用い、周波数1Hz、Voffset=-450V、Vpp=500Vの矩形波状の電圧を電子写真感光体の表面に印加できるように帯電装置を設定した。
電位の測定においては、表面電位プローブ(model6000B-8:トレック・ジャパン(株)製)を電子写真感光体から1mm離れた位置に設置し、表面電位計(model344:トレック・ジャパン(株)製)を使用した。
以上の条件の下で、上記の手順1~4に従い、帯電保持性を決定した。
なお、以下の通りにして用意したものを、帯電保持性が高い場合の指標として測定したとき、帯電保持性は11.2であった。
直径24mm、長さ257.5mmのアルミニウムシリンダー(JIS-A3003、アルミニウム合金)上に膜厚20μmのポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)層を形成した。これにより得られたものを帯電保持性が高い場合の指標として用いた。
結果を表2および3に示す。
【0107】
〈画像流れ評価〉
電子写真装置として、レーザービームプリンター(商品名:HP LaserJet Enterprise Color M553dn、ヒューレットパッカード社製)の改造機を使用した。評価に使用した電子写真装置は、像露光量、帯電ローラーから電子写真感光体の支持体に流れる電流量(以降、総電流とも呼ぶ)、および、帯電ローラーへの印加電圧それぞれの調節および測定ができるように改造した。
最初に電子写真装置と、各実施例および比較例に係る電子写真感光体とを、温度30℃/湿度80%RHの環境下に24時間以上放置した後に、電子写真感光体を電子写真装置のシアン色のカートリッジに装着した。
次に、印加電圧を-400Vから100V間隔で-2000Vまで段階的に上げて印加し、それぞれの印加電圧における総電流を測定した。そして、横軸に印加電圧を、縦軸に総電流をとったグラフを作成し、印加電圧-400V~-800Vにおける一次近似曲線から乖離する電流値が100μAとなる印加電圧を求め、印加電圧を設定した。
次に、A4サイズ普通紙上にシアン単色にてベタ画像の出力を行い、分光濃度計(商品名:X-Rite504、X-Rite(株)製)にて紙上の濃度が1.45となるように像露光量を設定した。
次に、A4サイズ、線幅0.1mm、線間隔10mmの正方形格子画像をシアン単色にて連続で10000枚出力した。画像出力後、電子写真装置の主電源を切って温度30℃/湿度80%RHの環境下に三日間放置した。放置後、電子写真装置の主電源を入れてすぐに、上記の正方形格子画像を同様に1枚出力して、出力画像の画像流れを目視し、下記の基準で画像流れを評価した。さらに、出力枚数を20000枚にして同様に評価を行った。
評価ランクは以下の通りとした。
ランク5:格子画像に異常は認められない。
ランク4:格子画像の横線が破断しているが、縦線には異常は認められない。
ランク3:格子画像の横線が消失しているが、縦線には異常は認められない。
ランク2:格子画像の横線が消失しており、縦線が破断している。
ランク1:格子画像の横線が消失しており、縦線も消失している。
このとき、格子画像における横線とは、電子写真感光体の円筒軸方向と平行な線を指し、縦線とは電子写真感光体の円筒軸方向と垂直な線を指す。
結果を表2および3に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【符号の説明】
【0110】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
21 支持体
22 下引き層
23 電荷発生層
24 電荷輸送層
25 保護層
図1
図2