IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図1
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図2A
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図2B
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図3
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図4
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図5
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図6
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図7
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図8
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図9
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図10
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図11
  • 特許-X線診断装置及び医用情報処理装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】X線診断装置及び医用情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/50 20240101AFI20240422BHJP
【FI】
A61B6/50 511A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020073301
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021168814
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊平
(72)【発明者】
【氏名】山岸 順一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直高
(72)【発明者】
【氏名】榊原 淳
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】和久 敏哉
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0242917(US,A1)
【文献】特開2012-147934(JP,A)
【文献】特開2011-139891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影画像の収集の対象となる関心領域ごとに前記造影画像において推奨されるコントラストを対応付けた第1の参照情報と、体厚ごとのX線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す第2の参照情報とに基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する決定部と、
決定された前記関心領域における造影剤濃度に基づいて、前記被検体に対して造影剤を注入するインジェクタの設定情報を算出する算出部と、
前記設定情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え
前記決定部は、前記関心領域における体厚の情報を取得し、取得した体厚に対応する第2の参照情報に基づいて前記造影剤濃度を決定する、X線診断装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記第1の参照情報から前記被検体の関心領域において推奨されるコントラストを取得し、取得したコントラストと、前記被検体に対して照射されるX線の発生条件とに基づいて、前記第2の参照情報から造影剤濃度を取得することで、前記造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する、請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記第1の参照情報は、関心領域ごとに代表的な血管径の情報をさらに有し、
前記第2の参照情報は、血管径ごとに、前記X線の発生条件と前記造影剤濃度と前記コントラストとの関係を示す情報を有し、
前記決定部は、前記第1の参照情報に基づいて前記被検体の関心領域における血管径を決定し、決定した血管径に対応する第2の参照情報に基づいて、前記造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する、請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記第1の参照情報は、関心領域ごとに代表的な体厚の情報をさらに有し、
記決定部は、前記第1の参照情報に基づいて前記被検体の関心領域における体厚を決定し、決定した体厚に対応する第2の参照情報に基づいて、前記造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する、請求項1~3のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記第2の参照情報は、さらに、血管径ごとに、前記X線の発生条件と前記造影剤濃度と前記コントラストとの関係を示す情報を有し、
前記決定部は、前記被検体の関心領域における過去画像から前記被検体の関心領域における血管径を決定し、決定した血管径に対応する第2の参照情報に基づいて、前記造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する、請求項1又は2に記載のX線診断装置。
【請求項6】
記決定部は、前記被検体の関心領域における過去画像から前記被検体の関心領域における体厚を決定し、決定した体厚に対応する第2の参照情報に基づいて、前記造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する、請求項1、2又は5に記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記設定情報は、前記被検体に対する造影剤の注入速度及び前記造影剤の希釈率のうち少なくとも1つである、請求項1~6のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記被検体の撮影プロトコルに基づいて、当該被検体における関心領域を決定する、請求項1~7のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記決定部は、撮影時の視野サイズに基づいて、当該被検体における関心領域を決定する、請求項1~7のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記算出部は、前記被検体の関心領域における過去の造影画像のコントラストと、当該造影画像の収集時におけるインジェクタの設定情報とに基づいて、前記設定情報を補正する、請求項1~9のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記算出部は、前記被検体の関心領域における過去の造影3次元画像に含まれるアーチファクトに基づいて、前記設定情報を補正する、請求項1~9のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項12】
算出された前記設定情報を前記インジェクタに送信する制御部をさらに備える、請求項1~11のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【請求項13】
前記制御部は、造影剤の総量、注入時間及び注入開始タイミングのうち少なくとも1つをさらに含む設定情報を前記インジェクタに送信する、請求項12に記載のX線診断装置。
【請求項14】
造影画像の収集の対象となる関心領域ごとに前記造影画像において推奨されるコントラストを対応付けた第1の参照情報と、体厚ごとのX線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す第2の参照情報とに基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する決定部と、
決定された前記関心領域における造影剤濃度に基づいて、前記被検体に対して造影剤を注入するインジェクタの設定情報を算出する算出部と、
前記設定情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え
前記決定部は、前記関心領域における体厚の情報を取得し、取得した体厚に対応する第2の参照情報に基づいて前記造影剤濃度を決定する、医用情報処理装置。
【請求項15】
造影画像の収集の対象となる関心領域ごとに前記造影画像において推奨されるコントラストを対応付けた第1の参照情報と、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す第2の参照情報とに基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する決定部と、
決定された前記関心領域における造影剤濃度に基づいて、前記被検体に対して造影剤を注入するインジェクタの設定情報を算出する算出部と、
前記設定情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記算出部は、前記被検体の関心領域における過去の造影画像のコントラストと、当該造影画像の収集時におけるインジェクタの設定情報とに基づいて、前記設定情報を補正する、X線診断装置。
【請求項16】
造影画像の収集の対象となる関心領域ごとに前記造影画像において推奨されるコントラストを対応付けた第1の参照情報と、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す第2の参照情報とに基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する決定部と、
決定された前記関心領域における造影剤濃度に基づいて、前記被検体に対して造影剤を注入するインジェクタの設定情報を算出する算出部と、
前記設定情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記算出部は、前記被検体の関心領域における過去の造影3次元画像に含まれるアーチファクトに基づいて、前記設定情報を補正する、X線診断装置。
【請求項17】
造影画像の収集の対象となる関心領域ごとに前記造影画像において推奨されるコントラストを対応付けた第1の参照情報と、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す第2の参照情報とに基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する決定部と、
決定された前記関心領域における造影剤濃度に基づいて、前記被検体に対して造影剤を注入するインジェクタの設定情報を算出する算出部と、
前記設定情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記算出部は、前記被検体の関心領域における過去の造影画像のコントラストと、当該造影画像の収集時におけるインジェクタの設定情報とに基づいて、前記設定情報を補正する、医用情報処理装置。
【請求項18】
造影画像の収集の対象となる関心領域ごとに前記造影画像において推奨されるコントラストを対応付けた第1の参照情報と、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す第2の参照情報とに基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する決定部と、
決定された前記関心領域における造影剤濃度に基づいて、前記被検体に対して造影剤を注入するインジェクタの設定情報を算出する算出部と、
前記設定情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記算出部は、前記被検体の関心領域における過去の造影3次元画像に含まれるアーチファクトに基づいて、前記設定情報を補正する、医用情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線診断装置及び医用情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線診断装置においては、被検体の血管にカテーテルを挿入し、インジェクタから造影剤を注入してX線画像を収集する造影撮影が行われている。かかる造影撮影では、例えば、撮影の対象部位ごとに、造影剤の希釈率や注入速度などの注入条件が経験によって定められ、インジェクタに設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-13649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、所望のコントラストを得るための造影剤の注入条件を、経験によらず容易に設定することを可能にすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るX線診断装置は、決定部と、算出部と、表示制御部とを備える。決定部は、造影画像の収集の対象となる関心領域ごとに前記造影画像において推奨されるコントラストを対応付けた第1の参照情報と、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す第2の参照情報とに基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。算出部は、決定された前記関心領域における造影剤濃度に基づいて、前記被検体に対して造影剤を注入するインジェクタの設定情報を算出する。表示制御部は、前記設定情報を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態に係る第1参照情報の一例を示す図である。
図2B図2Bは、第1の実施形態に係る第2参照情報の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る表示情報の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るX線診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、第3の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図7図7は、第3の実施形態に係るX線診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。
図8図8は、第4の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図9図9は、第4の実施形態に係るX線診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。
図10図10は、第5の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図11図11は、第5の実施形態に係るX線診断装置による処理の手順を示すフローチャートである。
図12図12は、その他の実施形態に係る医用情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、X線診断装置及び医用情報処理装置の実施形態について詳細に説明する。なお、本願に係るX線診断装置及び医用情報処理装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、実施形態は、処理内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るX線診断装置における構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、X線診断装置1は、X線高電圧装置11と、X線管12と、X線絞り器13と、天板14と、Cアーム15と、X線検出器16と、メモリ17と、ディスプレイ18と、入力インターフェース19と、処理回路20とを備える。
【0009】
X線高電圧装置11は、処理回路20による制御の下、X線管12に高電圧を供給する。例えば、X線高電圧装置11は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管12に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管12が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。なお、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0010】
X線管12は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管12は、X線高電圧装置11から供給される高電圧を用いて、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。
【0011】
X線絞り器13は、X線管12により発生されたX線の照射範囲を絞り込むX線絞りと、X線管12から曝射されたX線を調節するフィルタとを有する。
【0012】
X線絞り器13におけるX線絞りは、例えば、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。X線絞りは、絞り羽根をスライドさせることで、X線管12が発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管12のX線照射口付近に設けられる。
【0013】
X線絞り器13におけるフィルタは、被検体Pに対する被曝線量の低減とX線画像データの画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体Pに吸収されやすい軟線成分を低減したり、X線画像データのコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタは、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、X線管12から被検体Pへ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
【0014】
例えば、X線絞り器13は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路20による制御の下、駆動機構を動作させることによりX線の照射を制御する。例えば、X線絞り器13は、処理回路20から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、X線絞りの絞り羽根の開度を調整して、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、X線絞り器13は、処理回路20から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、フィルタの位置を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の線量の分布を制御する。
【0015】
天板14は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。なお、被検体Pは、X線診断装置1に含まれない。例えば、寝台は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路20による制御の下、駆動機構を動作させることにより、天板14の移動・傾斜を制御する。例えば、寝台は、処理回路20から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、天板14を移動させたり、傾斜させたりする。
【0016】
Cアーム15は、X線管12及びX線絞り器13と、X線検出器16とを、被検体Pを挟んで対向するように保持する。例えば、Cアーム15は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構を有し、後述する処理回路20による制御の下、駆動機構を動作させることにより、回転したり移動したりする。例えば、Cアーム15は、処理回路20から受け付けた制御信号に応じて駆動電圧を駆動機構に付加することにより、X線管12及びX線絞り器13と、X線検出器16とを被検体Pに対して回転・移動させ、X線の照射位置や照射角度を制御する。なお、図2では、X線診断装置1がシングルプレーンの場合を例に挙げて説明しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、バイプレーンの場合であってもよい。
【0017】
X線検出器16は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器16は、X線管12から照射されて被検体Pを透過したX線を検出して、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路20へと出力する。なお、X線検出器16は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0018】
メモリ17は、例えば、RAM等の半導体メモリ素子により実現される。メモリ17は、処理回路20による処理結果を一時的に記憶する。例えば、メモリ17は、処理回路20によって収集されたX線画像データなどの各種データを受け付けて一時記憶する。ここで、本願におけるX線画像データは、X線検出器16によって検出された検出信号、検出信号に基づいて生成された投影データ、投影データに基づいて生成されたX線画像を含む。
【0019】
また、メモリ17は、処理回路20によって用いられる種々の情報を記憶する。例えば、メモリ17は、図1にように、第1参照情報171と、第2参照情報172とを記憶する。なお、第1参照情報171及び第2参照情報172については、後に詳述する。
【0020】
また、メモリ17は、処理回路110によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。なお、メモリ17は、X線診断装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0021】
ディスプレイ18は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ18は、処理回路20による制御の下、操作者の指示を受け付けるためのGUIや、各種のX線画像を表示する。また、ディスプレイ18は、処理回路20による処理結果を表示する。例えば、ディスプレイ18は、インジェクタの設定情報を表示する。なお、インジェクタの設定情報については、後に詳述する。
【0022】
入力インターフェース19は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路20に出力する。例えば、入力インターフェース19は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース19は、装置本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース19は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路20へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース19の例に含まれる。
【0023】
処理回路20は、収集機能201、制御機能202、決定機能203及び算出機能204を実行することで、X線診断装置1全体の動作を制御する。具体的には、処理回路20は、メモリ17から各種機能に相当するプログラムを実行することで、X線診断装置1の動作を制御する。ここで、制御機能202は、表示制御部及び制御部の一例である。また、決定機能203は、決定部の一例である。また、算出機能204は、算出部の一例である。
【0024】
収集機能201は、X線画像データを収集する。例えば、収集機能201は、X線高電圧装置11を制御し、X線管12に供給する電圧を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量やオン/オフを制御する。また、収集機能201は、X線絞り器13の動作を制御し、X線絞りが有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。具体的には、収集機能201は、X線絞りにおける複数の絞り羽根をスライドさせることにより、複数の絞り羽根で形成される開口部の形状、サイズ、位置を任意に変化させることができる。例えば、収集機能201は、入力インターフェース19を介してユーザが設定したROIのみにX線が照射されるように、絞り羽根をスライド移動させる。
【0025】
また、収集機能201は、X線絞り器13の動作を制御し、フィルタの位置を調整することで、X線の線量の分布を制御する。例えば、収集機能201は、入力インターフェース19を介してユーザが設定した位置にフィルタを移動させて、X線の線量の分布を制御する。また、収集機能201は、Cアーム15の動作を制御することで、Cアーム15を回転させたり、移動させたりする。また、例えば、収集機能201は、寝台の動作を制御することで、天板14を移動させたり、傾斜させたりする。
【0026】
また、収集機能201は、X線検出器16から受信した検出信号に基づいて投影データを生成し、生成した投影データをメモリ17に格納する。また、収集機能201は、メモリ17が記憶する投影データに対して各種画像処理を行なうことで、X線画像を生成する。また、収集機能201は、X線画像に対して、例えば、画像処理フィルタによるノイズ低減処理や、散乱線補正を実行する。
【0027】
ここで、収集機能201は、回転撮影によって収集した投影データを用いて3次元画像データ(ボリュームデータ)を再構成し、再構成したボリュームデータからX線画像を生成することができる。例えば、収集機能201は、Cアーム15を回転させながら所定のフレームレートで投影データを収集する回転撮影を実行し、収集した投影データから、被検体Pの血管形状を示すボリュームデータを再構成する。
【0028】
一例を挙げると、収集機能201は、血管内に造影剤が注入されていない状態の被検体Pに対する回転撮影を実行し、所定のフレームレートでマスク画像を収集する。また、収集機能201は、血管内に造影剤が注入された状態の被検体Pに対する回転撮影を実行し、所定のフレームレートでコントラスト画像を収集する。次に、収集機能201は、マスク画像とコントラスト画像とを差分した差分画像データを用いて、被検体Pの血管形状を示すボリュームデータを再構成する。別の例を挙げると、収集機能201は、マスク画像を用いてボリュームデータを再構成する。また、収集機能201は、コントラスト画像を用いてボリュームデータを再構成する。そして、収集機能201は、再構成した2つのボリュームデータを差分することで、被検体Pの血管形状を示すボリュームデータを生成する。
【0029】
制御機能202は、ディスプレイ18にGUIやX線画像を表示させる。例えば、制御機能202は、入力インターフェース19を介した操作に応じて、X線画像をメモリ17から読み出して、ディスプレイ18に表示させる。また、制御機能202は、図示しないネットワークを介して外部装置とのデータの送受信を制御する。
【0030】
決定機能203は、被検体の関心領域に応じた造影剤濃度を決定する。具体的には、決定機能203は、関心領域におけるコントラストが最適となる造影剤濃度を決定する。算出機能204は、決定機能203によって決定された造影剤濃度に基づいて、インジェクタの設定情報を算出する。なお、決定機能203及び算出機能204による処理については、後に詳述する。
【0031】
以上、X線診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、X線診断装置1は、処理回路20による処理によって、所望のコントラストを得るための造影剤の注入条件を、経験によらず容易に設定することを可能にする。具体的には、X線診断装置1は、関心領域におけるコントラストが最適となる造影剤の注入条件を算出して表示することで、造影剤の注入条件を、経験によらず容易に設定することを可能にする。
【0032】
上述したように、X線診断装置では、造影撮影を行う際に、造影剤の注入条件が経験によって定められ、インジェクタに設定される。しかしながら、実際には、被検体の体厚やX線の発生条件によって、得られるコントラストが異なり、設定された注入条件では血管のコントラストが低すぎたり、高すぎたりする場合がある。例えば、コントラストが低すぎる場合、血管が十分に描画されず、コントラストが高すぎる場合、血管の輝度が高くなりすぎてアーチファクトが生じたり、血管を正しく描画しようとすると周辺組織が適切に描画できなかったりする。しかしながら、注入条件を変えて再撮影を行うことは、造影剤の使用量、被ばく、ワークフローの観点で望ましくない。
【0033】
そこで、本願に係るX線診断装置1では、造影撮影前に、関心領域におけるコントラストが最適となる造影剤の注入条件を算出して表示する。以下、X線診断装置1による処理の詳細について説明する。なお、以下では、3次元の造影撮影を行う場合を一例に挙げて説明する。
【0034】
決定機能203は、造影画像の収集の対象となる関心領域ごとに造影画像において推奨されるコントラストを対応付けた第1の参照情報と、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す第2の参照情報とに基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。具体的には、決定機能203は、第1の参照情報から被検体の関心領域において推奨されるコントラストを取得し、取得したコントラストと、被検体に対して照射されるX線の発生条件とに基づいて、第2の参照情報から造影剤濃度を取得することで、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。
【0035】
例えば、決定機能203は、造影剤濃度の決定に際し、まず、造影撮影の対象となる被検体の関心領域を決定する。一例を挙げると、決定機能203は、造影撮影の撮影プロトコルに付帯された対象部位の情報や、造影撮影における視野サイズに基づいて、被検体の関心領域を決定する。3次元の造影撮影においては、準備として、まず、ユーザが、入力インターフェース19を操作して、FOV(Fields of View)や、撮影プロトコルを選択する。決定機能203は、ユーザによって選択されたFOVや、撮影プロトコルの情報から、被検体における関心領域を決定する。
【0036】
なお、3次元の造影撮影における準備としては、例えば、最適なX線条件を決めるための予備撮影や透視が行われる場合でもよい。かかる場合には、決定機能203は、予備撮影又は透視によって収集されたX線画像に基づいて、X線の発生条件(例えば、管電圧など)を決定したり、被検体の体厚を推定したりすることができる。
【0037】
上述したように、被検体の関心領域を決定すると、決定機能203は、関心領域と最適コントラストとが対応付けられた第1の参照情報に基づいて、決定した関心領域における最適コントラストの情報を取得する。そして、決定機能203は、X線の発生条件と、コントラストと、血管内の造影剤濃度との関係を示した第2の参照情報を参照して、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。すなわち、決定機能203は、取得した最適コントラストの情報と、撮像プロトコルに基づく造影撮影時のX線の発生条件(或いは、予備撮影又は透視に基づく造影撮影時のX線の発生条件)とを用いて、第2の参照情報から関心領域における造影剤濃度の情報を取得する。
【0038】
算出機能204は、決定された関心領域における造影剤濃度に基づいて、被検体に対して造影剤を注入するインジェクタの設定情報を算出する。具体的には、算出機能204は、造影撮影のおけるX線の発生条件と造影剤濃度とに基づいて、造影剤の注入条件を算出する。例えば、算出機能204は、被検体に対する造影剤の注入速度及び造影剤の希釈率のうち少なくとも1つを含む注入条件を算出する。
【0039】
ここで、上述した第1の参照情報と第2の参照情報を用いた造影剤濃度の決定及び造影剤の注入条件の算出は、血管径や体厚を考慮する場合でもよい。造影画像における血管のコントラストは、血管内の造影剤濃度に応じて変化するが、血管径が異なる場合、同一の注入条件で造影剤を注入すると、血管径が大きい方が血管内の造影剤濃度が低くなり、コントラストが低下することとなる。また、体厚が異なる場合、適切なX線画像を収集するための管電圧が異なり、例えば、体厚が厚く管電圧を上げた場合、コントラストが低下することとなる。このように、血管径や体厚は、造影画像における血管のコントラストに影響を及ぼす因子である。したがって、これらの因子を考慮して、造影剤の注入条件を決定することで、より精度の高い注入条件を算出することができる。
【0040】
以下、血管径及び体厚を考慮した場合の注入条件の算出の一例について説明する。図2Aは、第1の実施形態に係る第1参照情報171の一例を示す図である。なお、第1参照情報171は、第1の参照情報の一例である。例えば、第1参照情報171は、図2Aに示すように、関心領域ごとに、代表的血管径と、最適コントラストとを対応付けた情報である。ここで、関心領域とは、造影撮影の対象となる血管を含む領域を意味する。また、代表的血管径とは、関心領域に含まれる血管(造影撮影の対象となる血管)の代表的な血管の血管径を意味する。また、最適コントラストとは、関心領域の血管を造影する際の血管と周囲の組織との最適なコントラスト(造影血管の画素値/血管周辺の画素値)を意味する。
【0041】
例えば、第1参照情報171は、「関心領域:頭部」と、「代表的血管径:1.0mm」と、「最適コントラスト:2」とを対応付けた情報が記憶される。かかる情報は、関心領域が「頭部」の場合、代表的な血管径が「1.0mm」であり、最適なコントラストが「2」であることを意味する。同様に、第1参照情報171は、「関心領域:腹部(肝臓)」と、「代表的血管径:3.0mm」と、「最適コントラスト:1.5」とを対応付けた情報などが記憶される。
【0042】
なお、図2Aで示した第1参照情報171は、あくまでも一例であり、情報の形式は、図2Aに示したテーブルに限らず、データベースでもよい。また、最適コントラストの情報は、ユーザによって任意に変更することができる。また、関心領域に対応付けて、さらに体厚の情報が記憶される場合でもよい。
【0043】
図2Bは、第1の実施形態に係る第2参照情報172の一例を示す図である。なお、第2参照情報172は、第2の参照情報の一例である。例えば、第2参照情報172は、図2Bに示すように、体厚(水換算)と、血管径と、管電圧と、コントラストと、造影剤濃度とを対応付けた情報である。ここで、体厚(水換算)とは、撮影部位の体厚を意味する。また、血管径とは、造影撮影の対象となる血管の血管径を意味する。また、管電圧とは、被検体に照射するX線の管電圧を意味する。また、コントラストとは、造影血管と周囲の組織とのコントラストを意味する。また、造影剤濃度とは、血管内の造影剤濃度を意味する。
【0044】
例えば、第2参照情報172は、図2Bに示すように、「体厚(水換算):10cm」と、「血管径:1.0mm」と、「管電圧:80kV」と、「コントラスト:0.5」と、「造影剤濃度:20mg/ml」とを対応付けた情報が記憶される。かかる情報は、水換算当量での体厚が「10cm」であり、血管径が「1.0mm」の関心領域に対して、管電圧「80kV」で造影撮影を行った場合に、コントラストが「0.5」となる血管内の造影剤濃度が「20mg/ml」であることを意味する。同様に、第2参照情報172は、「体厚(水換算):10cm」と、「血管径:1.0mm」と、「管電圧:80kV」と、「コントラスト:1」と、「造影剤濃度:30mg/ml」とを対応付けた情報などが記憶される。このように、第2参照情報172は、体厚、血管径ごとの、管電圧、コントラスト、造影剤濃度の情報が記憶される。
【0045】
なお、図2Bで示した第2参照情報172は、あくまでも一例であり、体厚、血管径、管電圧及びコントラストを入力として、造影剤濃度を出力するものであればどのような情報でもよい。例えば、第2参照情報172は、データベースや一連の関数でもよい。一連の関数としては、例えば、機械学習の手法によりパラメータが調整されたニューラルネットワークが利用可能である。
【0046】
決定機能203は、図2Aで示す第1参照情報171と第2参照情報172とを用いて、被検体の造影撮影の対象となる関心領域における造影剤濃度を決定する。例えば、決定機能203は、3次元の造影撮影の準備においてユーザによって入力された視野サイズや、撮影プロトコルの情報に基づいて関心領域を決定する。
【0047】
そして、決定機能203は、第1参照情報171を参照して、決定した関心領域における代表的血管径に対応する最適コントラストの情報を取得する。ここで、第1参照情報171にさらに関心領域における代表的な体厚の情報が対応付けられている場合には、決定機能203は、体厚の情報をさらに取得する。また、被検体の過去の画像がある場合には、決定機能203は、被検体の関心領域における過去画像から被検体の関心領域における体厚を決定し、決定した体厚に対応する第2参照情報172に基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。例えば、造影撮影におけるX線の発生条件を設定するための予備撮影或いは透視が行われている場合には、決定機能203は、予備撮影或いは透視によって収集されたX線画像に基づいて、被検体の関心領域における体厚の情報を取得する。そして、決定機能203は、取得した体厚に対応する第2参照情報172に基づいて、造影剤濃度を決定する。
【0048】
このように、関心領域における体厚、血管径及び最適コントラストの情報を取得すると、決定機能203は、次に、第2参照情報172を参照して、関心領域における造影血管のコントラストを最適コントラストとするための血管内の造影剤濃度を決定する。具体的には、決定機能203は、撮影プロトコルから取得したX線の発生条件から管電圧の情報をさらに取得し、体厚、血管径、管電圧及びコントラストに対応する造影剤濃度の情報を、第2参照情報172から取得することで、関心領域における造影血管のコントラストを最適コントラストとするための血管内の造影剤濃度を決定する。
【0049】
算出機能204は、決定機能203によって決定された造影剤濃度に基づいて、造影剤を被検体に注入するインジェクタの設定情報を算出する。具体的には、算出機能204は、インジェクタに設定する注入条件を算出する。ここで、算出機能204は、インジェクタの設定情報として、例えば、被検体に対する造影剤の注入速度及び造影剤の希釈率のうち少なくも1つを算出する。例えば、算出機能204は、以下に示す関係式に基づいて、設定情報を算出する。
【0050】
造影剤濃度(mg/ml)=C*造影剤原液濃度(mg/ml)*注入速度(ml/s)/希釈率/血管径2(mm2)/血流速(mm/s)
【0051】
ここで、Cは、無次元の係数である。血管内の造影剤濃度は、種々のパラメータが関係している。一例を挙げると、関心領域における造影対象の血管位置と、造影剤が噴出されるカテーテルの先端位置との距離に応じて、造影対象の血管位置における造影剤濃度が変化する。また、血流速は、心臓付近の動脈で拍出されてすぐの速度と、抹消側の速度とでは、大きく異なる。すなわち、関心領域における位置に応じて、血流速は異なる。そこで、C及び血流速は、例えば、血管径の関数として予め実験的に求めておくことが考えられる。
【0052】
算出機能204は、決定機能203によって決定された造影剤濃度、造影撮影に用いられる造影剤の原液濃度、血管径、C及び血流速を、上記関係式に適用することで、注入速度及び希釈率を算出する。ここで、例えば、造影撮影に用いられるインジェクタが希釈機能を有さない場合、算出機能204は、希釈率を「1.0」として、注入速度を算出する。
【0053】
一方、造影撮影に用いられるインジェクタが希釈機能を有する場合、算出機能204は、ユーザによる指定操作或いは予め設定された値に基づいて注入速度(或いは、希釈率)を固定して、希釈率(或いは、注入速度)を算出する。なお、注入速度及び希釈率を固定しない場合、算出機能204は、上記関係式に基づいて、「注入速度(ml/s)/希釈率」を算出する。
【0054】
上記したように、算出機能204によってインジェクタの設定情報が算出されると、制御機能202は、ディスプレイ18に設定情報を表示させるように制御する。図3は、第1の実施形態に係る表示情報の一例を示す図である。例えば、算出機能204が、希釈率を「1.0」或いは固定値として、注入速度を算出すると、制御機能202は、図3に示すように、インジェクタに設定する造影剤の注入速度として「造影剤推奨濃度:0.4ml/s」を表示させる。ユーザは、表示された注入速度と、注入速度の算出に用いられた希釈率をインジェクタに設定することで、最適コントラストの造影画像を収集することができる。
【0055】
なお、制御機能202は、図3に示すように、造影剤の注入速度以外にも、関心部位や、血管径、体厚、コントラスト、血管内の造影剤濃度(mg/ml)、希釈率などの情報をディスプレイ18に表示させることもできる。
【0056】
また、制御機能202は、算出機能204が「注入速度(ml/s)/希釈率」を算出した場合、注入速度及び希釈率について、それぞれ取りうる範囲を示す場合でもよい。かかる場合には、制御機能202は、インジェクタが可能な注入速度の範囲と、希釈可能な範囲とをディスプレイ18に表示させる。ユーザは、表示された範囲を参照して、注入速度又は希釈率の一方について、表示された範囲内の値を指定する。ユーザの指定に応じて、算出機能204が、注入速度又は希釈率のうち、指定されなかった方の値を算出し、制御機能202が、算出された値をディスプレイ18に表示させる。
【0057】
次に、X線診断装置による処理の手順について説明する。図4は、第1の実施形態に係るX線診断装置1による処理の手順を示すフローチャートである。ここで、図4におけるステップS101~ステップS104は、処理回路20が、決定機能203に対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。また、ステップS105は、処理回路20が、算出機能204に対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。また、ステップS106は、処理回路20が、制御機能202に対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。
【0058】
図4に示すように、処理回路20は、3次元の造影撮影の準備を受け付けると(ステップS101、肯定)、関心領域を決定して(ステップS102)、関心領域における血管径と体厚を決定する(ステップS103)。なお、処理回路20は、3次元の造影撮影の準備を受け付けるまで待機状態である(ステップS101、否定)。
【0059】
そして、処理回路20は、第1参照情報171に基づいて、関心領域における最適コントラストを決定する(ステップS104)。その後、処理回路20は、第2参照情報172に基づいて、血管内の造影剤濃度を決定し、決定した造影剤濃度に基づいて、造影剤の推奨濃度(注入速度)を算出する(ステップS105)。そして、処理回路20は、造影剤の推奨濃度をディスプレイ18に表示させる(ステップS106)。
【0060】
上述したように、第1の実施形態によれば、決定機能203は、造影画像の収集の対象となる関心領域ごとに造影画像において推奨されるコントラストを対応付けた第1参照情報171と、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す第2参照情報172とに基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。算出機能204は、決定された関心領域における造影剤濃度に基づいて、被検体に対して造影剤を注入するインジェクタの設定情報を算出する。制御機能202は、設定情報をディスプレイ18に表示させる。したがって、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、関心領域ごとに最適コントラストを得るためのインジェクタの設定情報をユーザに提示することができ、所望のコントラストを得るための造影剤の注入条件を、経験によらず容易に設定することを可能にする。
【0061】
また、第1の実施形態によれば、決定機能203は、第1参照情報171から被検体の関心領域において推奨されるコントラストを取得し、取得したコントラストと、被検体に対して照射されるX線の発生条件とに基づいて、第2参照情報172から造影剤濃度を取得することで、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。したがって、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、最適コントラストを得るための血管内の造影剤濃度を容易に決定することを可能にする。
【0062】
また、第1の実施形態によれば、第1参照情報171は、関心領域ごとに代表的な血管径の情報をさらに有する。第2参照情報172は、血管径ごとに、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す情報を有する。決定機能203は、第1参照情報171に基づいて被検体の関心領域における血管径を決定し、決定した血管径に対応する第2参照情報172に基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。したがって、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、関心領域における血管径を考慮した造影剤濃度を決定することができ、より正確な注入条件を設定することを可能にする。
【0063】
また、第1の実施形態によれば、第1参照情報171は、関心領域ごとに代表的な体厚の情報をさらに有する。第2参照情報172は、体厚ごとに、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す情報を有する。決定機能203は、第1参照情報171に基づいて被検体の関心領域における体厚を決定し、決定した体厚に対応する第2参照情報172に基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。したがって、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、関心領域の体厚を考慮した造影剤濃度を決定することができ、より正確な注入条件を設定することを可能にする。
【0064】
また、第1の実施形態によれば、第2参照情報172は、体厚ごとに、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す情報を有する。決定機能203は、被検体の関心領域における過去画像から被検体の関心領域における体厚を決定し、決定した体厚に対応する第2参照情報172に基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。したがって、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、関心領域の体厚について、被検体の情報を取得することができ、さらに正確な注入条件を設定することを可能にする。
【0065】
また、第1の実施形態によれば、設定情報は、被検体に対する造影剤の注入速度及び造影剤の希釈率のうち少なくとも1つである。したがって、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、インジェクタに設定する情報を表示することができ、注入条件を容易に設定することを可能にする。
【0066】
また、第1の実施形態によれば、決定機能203は、被検体の撮影プロトコルに基づいて、当該被検体における関心部位を決定する。また、決定機能203は、撮影時の視野サイズに基づいて、当該被検体における関心部位を決定する。したがって、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、被検体の関心領域について、精度よく特定することを可能にする。
【0067】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、第1参照情報171において関心領域ごとに対応付けられた代表的血管径を用いて造影剤の注入条件を算出する場合について説明した。第2の実施形態では、被検体の過去画像を用いて関心領域における血管の血管径を決定する場合について説明する。図5は、第2の実施形態に係るX線診断装置1aの構成の一例を示すブロック図である。なお、第2の実施形態に係るX線診断装置1aは、第1の実施形態に係るX線診断装置1と比較して、メモリ17に過去画像を記憶する点と、決定機能203aによる処理内容が異なる。以下、これらを中心に説明する。
【0068】
図5に示すように、第2の実施形態に係るメモリ17は、過去画像173を記憶する。ここで、過去画像173は、被検体の過去に撮影した造影画像を含む。具体的には、過去画像173は、被検体の現時点の造影撮影の対象となる関心領域について過去に造影撮影された造影画像を含む。
【0069】
第2の実施形態に係る決定機能203aは、被検体の関心領域における過去画像から被検体の関心領域における血管径を決定し、決定した血管径に対応する第2参照情報172に基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。例えば、決定機能203aは、被検体の現時点の造影撮影の対象となる関心領域について過去に造影撮影された造影画像をメモリ17から取得し、取得した造影画像において描出されて血管を抽出する。ここで、血管の抽出には、既存のパターン認識技術や、血管輪郭抽出技術など任意の手法を用いることができる。
【0070】
決定機能203aは、上記した技術などによって造影画像内の血管を抽出し、抽出した血管の血管径を実際の血管径に変換する。例えば、画像上の長さ測定を行う場合と同様に、事前に、天板上の長さと画像上の長さとを対応付けるキャリブレーションを行っておく。決定機能203aは、キャリブレーションの情報に基づいて、造影画像における血管の血管径を実際の血管径に変換する。
【0071】
上述したように、過去画像から血管径を取得すると、決定機能203aは、取得した血管径に対応する第2参照情報172に基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。
【0072】
上述したように、第2の実施形態によれば、第2参照情報172は、血管径ごとに、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す情報を有する。決定機能203は、被検体の関心領域における過去画像から被検体の関心領域における血管径を決定し、決定した血管径に対応する第2参照情報172に基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する。したがって、第2の実施形態に係るX線診断装置1aは、造影撮影の対象となる血管の実際の血管径を取得することができ、より正確な注入条件を設定することを可能にする。
【0073】
(第3の実施形態)
上述した第2の実施形態では、被検体の過去の造影画像を用いて実際の血管径を取得する場合について説明した。第3の実施形態では、被検体の過去画像に対してさらに造影剤の注入条件が対応付けられ、過去の造影撮影の結果を用いて設定情報を補正する場合について説明する。図6は、第3の実施形態に係るX線診断装置1bの構成の一例を示すブロック図である。なお、第3の実施形態に係るX線診断装置1bは、第2の実施形態に係るX線診断装置1aと比較して、メモリ17に記憶された情報と、算出機能204aによる処理内容が異なる。以下、これらを中心に説明する。
【0074】
第3の実施形態に係る過去画像173aは、被検体の現時点の造影撮影の対象となる関心領域について過去に造影撮影された造影画像に対して、造影剤の注入条件が対応付けられた情報である。例えば、過去画像173aは、過去の造影画像と、当該造影画像を収集した際にインジェクタに設定された造影剤の注入速度及び希釈率と、当該造影画像を収集した際のX線の発生条件とが対応付けられる。
【0075】
第3の実施形態に係る算出機能204aは、被検体の関心領域における過去の造影画像のコントラストと、当該造影画像の収集時におけるインジェクタの設定情報とに基づいて、設定情報を補正する。具体的には、まず、算出機能204aは、決定機能203aによって抽出された過去の造影画像における血管のコントラストを算出する。例えば、算出機能204aは、造影血管の画素値/血管周辺の画素値を算出することで、過去の造影画像における血管のコントラストを算出する。
【0076】
そして、算出機能204aは、決定機能203aによって決定された造影剤濃度、造影撮影に用いられる造影剤の原液濃度、血管径、C及び血流速を、上記した関係式に適用することで算出した設定情報と、過去画像における設定情報とを比較することで、補正係数を算出する。
【0077】
例えば、「体厚:20cm」、「血管径:2.0cm」の関心領域について、「管電圧:70kV」、「造影剤の注入速度:10ml/s」、「造影剤の希釈率:1.0」で造影撮影した際の過去画像における血管のコントラストが「2.0」であったとする。一方、同一の関心領域について、同一のX線の発生条件で同一のコントラストで撮像する場合の造影剤の注入速度について、決定機能203aが決定した造影剤濃度に基づいて算出した結果が「15ml/s」であったとする。
【0078】
この場合、算出機能204aは、過去画像における「造影剤の注入速度:10ml/s」と、現在の第2参照情報172における造影剤濃度に基づいて算出した「造影剤の注入速度:15ml/s」とを比較して、算出した造影剤の注入速度が実際の注入速度よりも大きな値として算出されていると推定する。
【0079】
また、「体厚:20cm」、「血管径:2.0cm」の関心領域の最適コントラストについて、第1参照情報171を参照した場合に「3.0」であり、コントラストを「3.0」とする場合の注入速度が「20ml/s」であった場合、算出機能204aは、この注入速度についても実際の注入速度よりも大きな値として算出されていると推定する。
【0080】
このように、算出した注入条件と実際の注入条件との間に乖離がある場合、算出機能204aは、実際の注入速度に基づいて、算出した注入速度を補正する補正係数を算出する。例えば、上記した乖離がある場合、算出機能204aは、補正係数「10/15」を算出し、補正後の注入速度として、「20*10/15=13.3」を算出する。
【0081】
なお、上記した例では、補正係数として、第2参照情報172に基づく注入速度と実際の注入速度との比「10/15」を用いる場合について説明した。しかしながら、補正係数はこれに限定されるものではなく、例えば、補正係数は、上記比の関数fを用いたf(10/15)とする場合でもよい。かかる場合には、補正後の注入速度は、「20*f(10/15)」となる。
【0082】
次に、第3の実施形態に係るX線診断装置による処理の手順について説明する。図7は、第3の実施形態に係るX線診断装置1bによる処理の手順を示すフローチャートである。ここで、図7におけるステップS201~ステップS204は、処理回路20が、決定機能203aに対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。また、ステップS205~ステップS210は、処理回路20が、算出機能204aに対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。また、ステップS211は、処理回路20が、制御機能202に対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。
【0083】
図7に示すように、処理回路20は、3次元の造影撮影の準備を受け付けると(ステップS201、肯定)、関心領域を決定して(ステップS202)、関心領域における血管径と体厚を決定する(ステップS203)。なお、処理回路20は、3次元の造影撮影の準備を受け付けるまで待機状態である(ステップS201、否定)。
【0084】
そして、処理回路20は、第1参照情報171に基づいて関心領域における最適コントラストを決定する(ステップS204)。その後、処理回路20は、過去画像のコントラストを算出して(ステップS205)、過去画像の収集時の条件とコントラストとの関係と、第2の参照情報に基づく条件とコントラストとの関係とを比較して(ステップS206)、乖離があるか否かを判定する(ステップS207)。
【0085】
ここで、乖離がある場合(ステップS207、肯定)、処理回路20は、第2参照情報172を補正するための補正係数を算出して(ステップS208)、補正係数を用いて造影剤の推奨濃度(注入速度)を決定する(ステップS209)。一方、ステップS207において乖離がない場合(ステップS207、否定)、処理回路20は、第2参照情報172に基づいて、造影剤の推奨濃度(注入速度)を決定する(ステップS210)。そして、処理回路20は、造影剤の推奨濃度をディスプレイ18に表示させる(ステップS211)。
【0086】
上述したように、第3の実施形態によれば、算出機能204aは、被検体の関心領域における過去の造影画像のコントラストと、当該造影画像の収集時におけるインジェクタの設定情報とに基づいて、設定情報を補正する。したがって、第3の実施形態に係るX線診断装置1bは、過去の造影撮影の結果をフィードバックすることができ、より正確な造影剤の注入条件を、経験によらず容易に設定することを可能にする。
【0087】
(第4の実施形態)
上述した第3の実施形態では、過去の造影画像における注入条件と、現時点で算出した注入条件とを比較して、補正する場合について説明した。第4の実施形態では、過去の3次元の血管画像に基づいて設定情報を補正する場合について説明する。図8は、第4の実施形態に係るX線診断装置1cの構成の一例を示すブロック図である。なお、第4の実施形態に係るX線診断装置1cは、第3の実施形態に係るX線診断装置1bと比較して、算出機能204bによる処理内容が異なる。以下、これを中心に説明する。
【0088】
第4の実施形態に係る過去画像173aは、被検体の現時点の造影撮影の対象となる関心領域について過去に造影撮影された造影画像を含む。具体的には、過去画像173aは、回転撮影によって収集された投影データに基づいて再構成された3次元の血管画像データを含む。例えば、過去画像173aは、術前に収集された3次元の血管画像データを含む。
【0089】
第4の実施形態に係る算出機能204bは、3次元の血管画像データを用いて、設定情報を補正する。具体的には、算出機能204bは、被検体の関心領域における過去の3次元の血管画像データに含まれるアーチファクトに基づいて、設定情報を補正する。
【0090】
例えば、3次元の血管画像データの再構成に用いられる血管造影画像において、血管のコントラストが高すぎる場合、再構成された3次元の血管画像データにおける血管のボクセル値(CT値)が高くなり、放射状のアーチファクトが生じる場合がある。そこで、算出機能204bは、過去の3次元の血管画像データにおける血管描出の良し悪しをもとに、設定情報を補正する。すなわち、算出機能204bは、過去の3次元の血管画像データにおいてアーチファクトが生じている場合に、以下の補正を行う。
【0091】
かかる場合には、算出機能204bは、過去の3次元の血管画像データにおける血管のボクセル値を取得し、取得したボクセル値の目標のボクセル値に対する比率を算出する。ここで、血管のボクセル値は、ユーザによって指定されたボクセル、或いは、過去の3次元の血管画像データにおいて既存のアルゴリズムに基づいて抽出した血管に対応するボクセルの値が取得される。
【0092】
また、目標のボクセル値は、例えば、過去の3次元の血管画像データを観察する際に、ユーザが設定したボクセル値を用いる場合でもよく、予め設定された値を用いる場合でもよい。なお、目標のボクセル値が予め設定される場合、第1参照情報171に対してさらに3次元の血管画像における目標のボクセル値が対応付けられる場合でもよい。
【0093】
上述したように、ボクセル値の比率を算出すると、算出機能204bは、算出した比率を補正係数として、血管の造影画像のコントラストを補正し、補正したコントラストとなるように、造影剤の注入条件を算出する。
【0094】
次に、第4の実施形態に係るX線診断装置1cによる処理の手順について説明する。図9は、第4の実施形態に係るX線診断装置1cによる処理の手順を示すフローチャートである。ここで、図9におけるステップS301~ステップS304は、処理回路20が、決定機能203aに対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。また、ステップS305~ステップS310は、処理回路20が、算出機能204bに対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。また、ステップS311は、処理回路20が、制御機能202に対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。
【0095】
図9に示すように、処理回路20は、3次元の造影撮影の準備を受け付けると(ステップS301、肯定)、関心領域を決定して(ステップS302)、関心領域における血管径と体厚を決定する(ステップS303)。なお、処理回路20は、3次元の造影撮影の準備を受け付けるまで待機状態である(ステップS301、否定)。
【0096】
そして、処理回路20は、第1参照情報171に基づいて関心領域における最適コントラストを決定する(ステップS304)。その後、処理回路20は、過去画像におけるボクセル値を算出して(ステップS305)、算出したボクセル値と目標値とを比較して(ステップS306)、乖離があるか否かを判定する(ステップS307)。
【0097】
ここで、乖離がある場合(ステップS307、肯定)、処理回路20は、第2参照情報172を補正するための補正係数を算出して(ステップS308)、補正係数を用いて造影剤の推奨濃度(注入速度)を決定する(ステップS309)。一方、ステップS307において乖離がない場合(ステップS307、否定)、処理回路20は、第2参照情報172に基づいて、造影剤の推奨濃度(注入速度)を決定する(ステップS310)。そして、処理回路20は、造影剤の推奨濃度をディスプレイ18に表示させる(ステップS311)。
【0098】
上述したように、第4の実施形態によれば、算出機能204aは、被検体の関心領域における過去の造影3次元画像に含まれるアーチファクトに基づいて、設定情報を補正する。したがって、第4の実施形態に係るX線診断装置1cは、3次元の血管画像の結果をフィードバックすることができ、より正確な造影剤の注入条件を、経験によらず容易に設定することを可能にする。
【0099】
(第5の実施形態)
上述した第1の実施形態では、算出した設定情報をディスプレイ18に表示させる場合について説明した。第5の実施形態では、算出した設定情報をインジェクタに送信して、インジェクタを制御する場合について説明する。図10は、第5の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。なお、第5の実施形態に係るX線診断装置1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1と比較して、インジェクタ30が接続される点と、制御機能202による処理内容が異なる。以下、これらを中心に説明する。
【0100】
図10に示すように、第5の実施形態に係るX線診断装置1は、インジェクタ30が接続される。インジェクタ30は、インジェクションの開始及び停止を外部からコントロールするためのインターフェースを有する。また、インジェクタ30は、造影剤の注入条件(造影剤の注入速度、希釈率など)を外部から設定するためのインターフェースを有する。インジェクタ30における処理回路は、上記したインターフェースを介してX線診断装置1から設定情報や、インジェクションの開始指示及び停止指示を受信する。そして、インジェクタ30は、受信した設定情報を自装置に設定するとともに、インジェクションの開始指示及び停止指示に応じて造影剤の注入を開始したり、停止したりする。
【0101】
第5の実施形態に係る制御機能202は、算出機能204によって算出された設定情報をインジェクタ30に送信する。具体的には、制御機能202は、算出機能204によって算出された造影剤の注入条件をインジェクタ30に送信することで、インジェクタ30に注入条件を設定させる。ここで、制御機能202は、造影剤の総量、注入時間及び注入開始タイミングのうち、少なくとも1つを含む設定情報をインジェクタ30に送信する。なお、制御機能202は、インジェクタ30に対する注入条件の送信とともに、注入条件をディスプレイ18に表示させることもできる。
【0102】
また、制御機能202は、3次元の造影撮影の開始タイミング、撮影時間、終了タイミングに基づいて、インジェクションの開始指示及び停止指示をインジェクタ30に送信する。例えば、3次元の血管画像データを収集する場合、対象血管における造影剤の注入状態が、回転撮影の各角度において同様の状態となっていることが求められる。そこで、制御機能202は、3次元の造影撮影の開始タイミング、撮影時間、終了タイミングに基づいて、インジェクションの開始タイミングと終了タイミングを決定し、決定した開始タイミングと終了タイミングをインジェクタ30に通知する。なお、インジェクションの開始タイミングは、3次元の造影撮影の開始タイミングよりも一定時間だけ前に通知される。
【0103】
なお、図10においては、第1の実施形態に係るX線診断装置1に対してインジェクタ30が接続される場合について示しているが、インジェクタ30は、第2~第4の実施形態におけるいずれのX線診断装置に接続される場合でもよい。かかる場合には、各実施形態に係るX線診断装置は、インジェクタ30に対して注入条件や、インジェクションの開始指示及び停止指示を送信する。
【0104】
また、インジェクタ30に対して注入条件を送信することで、インジェクタ30による造影剤の注入を制御する場合、造影画像を収集中にリアルタイムに注入条件を変更する場合でもよい。例えば、第3の実施形態において説明した収集済みの造影画像を用いた注入条件の補正をリアルタイムに行い、補正後の注入条件をインジェクタ30に送信することで、インジェクタ30による造影剤の注入をリアルタイムに変更する場合でもよい。
【0105】
次に、X線診断装置による処理の手順について説明する。図11は、第5の実施形態に係るX線診断装置1による処理の手順を示すフローチャートである。ここで、図11におけるステップS401~ステップS404は、処理回路20が、決定機能203に対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。また、ステップS405は、処理回路20が、算出機能204に対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。また、ステップS406~ステップS408は、処理回路20が、制御機能202に対応するプログラムをメモリ17から読みだして実行することで実現される。
【0106】
図11に示すように、処理回路20は、3次元の造影撮影の準備を受け付けると(ステップS401、肯定)、関心領域を決定して(ステップS402)、関心領域における血管径と体厚を決定する(ステップS403)。なお、処理回路20は、3次元の造影撮影の準備を受け付けるまで待機状態である(ステップS401、否定)。
【0107】
そして、処理回路20は、第1参照情報171に基づいて、関心領域における最適コントラストを決定する(ステップS404)。その後、処理回路20は、第2参照情報172に基づいて、血管内の造影剤濃度を決定し、決定した造影剤濃度に基づいて、造影剤の推奨濃度(注入速度)を算出する(ステップS405)。そして、処理回路20は、造影剤の推奨濃度をディスプレイ18に表示させ(ステップS406)、設定情報をインジェクタ30に送信する(ステップS407)。さらに、処理回路20は、インジェクションの開始指示及び終了指示をインジェクタ30に送信することで、インジェクションの開始及び終了を制御する(ステップS408)。
【0108】
上述したように、第5の実施形態によれば、制御機能202は、算出された設定情報をインジェクタ30に送信する。また、制御機能202は、造影剤の総量、注入時間及び注入開始タイミングのうち少なくとも1つをさらに含む設定情報をインジェクタ30に送信する。したがって、第5の実施形態に係るX線診断装置1は、造影剤の注入条件の設定及びインジェクタの制御を自動で行うことを可能にする。
【0109】
(その他の実施形態)
さて、これまで第1~第5の実施形態について説明したが、上述した第1~第5の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0110】
上述した実施形態では、X線診断装置によって各種処理が実行される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、上述した各処理が医用情報処理装置によって実行される場合でもよい。
【0111】
図12は、その他の実施形態に係る医用情報処理装置3の構成の一例を示すブロック図である。図12に示すように、医用情報処理装置3は、ネットワーク2を介してX線診断装置1に接続される。そして、医用情報処理装置3は、通信インターフェース31と、メモリ32と、入力インターフェース33と、ディスプレイ34と、処理回路35とを有する。なお、医用情報処理装置3は、例えば、タブレット端末や、ワークステーションなどの情報処理装置である。
【0112】
通信インターフェース31は、処理回路35に接続され、ネットワークを介して接続されたX線診断装置1等との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、通信インターフェース31は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0113】
メモリ32は、処理回路35に接続され、各種データを記憶する。例えば、メモリ32は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。本実施形態では、メモリ32は、X線診断装置から受信した医用画像(過去画像173)や、第1参照情報171、第2参照情報172を記憶する。また、メモリ32は、処理回路35の処理に用いられる種々の情報や、処理回路35による処理結果等を記憶する。
【0114】
入力インターフェース33は、種々の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース33は、処理回路35に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路35に出力する。なお、本明細書において入力インターフェース33は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0115】
ディスプレイ34は、処理回路35に接続され、処理回路35から出力される各種情報及び各種画像を表示する。例えば、ディスプレイ34は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチモニタ等によって実現される。例えば、ディスプレイ34は、操作者の指示を受け付けるためのUI(User Interface)や、種々の画像、処理回路35による種々の処理結果(設定情報)を表示する。
【0116】
処理回路35は、入力インターフェース33を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用情報処理装置3が有する各構成要素を制御する。処理回路35は、図12に示すように、例えば、制御機能351と、決定機能352と、算出機能353とを実行する。ここで、例えば、図12に示す処理回路35の構成要素である制御機能351、決定機能352、算出機能353が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ32内に記録されている。処理回路35は、例えば、プロセッサであり、メモリ32から各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路35は、図12の処理回路35内に示された各機能を有することとなる。
【0117】
制御機能351は、医用情報処理装置3の全体を制御する。また、制御機能351は、上述した制御機能202と同様の処理を実行する。決定機能352は、上述した決定機能203、203aと同様の処理を実行する。算出機能353は、上述した算出機能204、204a、204bと同様の処理を実行する。
【0118】
各実施形態において説明したX線診断装置においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ17へ記憶されている。処理回路20は、メモリ17からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路20は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。なお、上記した各実施形態においては、各処理機能が単一の処理回路20によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路20は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路20が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0119】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはストレージ111に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0120】
なお、上述した各実施形態においては、メモリ17が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、複数のメモリ17を分散して配置し、処理回路20は、個別のメモリ17から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ17にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0121】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0122】
また、上述した実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0123】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、所望のコントラストを得るための造影剤の注入条件を、経験によらず容易に設定することができる。
【0124】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0125】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
造影画像の収集の対象となる関心領域ごとに前記造影画像において推奨されるコントラストを対応付けた第1の参照情報と、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す第2の参照情報とに基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する決定部と、
決定された前記関心領域における造影剤濃度に基づいて、前記被検体に対して造影剤を注入するインジェクタの設定情報を算出する算出部と、
前記設定情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える、X線診断装置。
(付記2)
前記決定部は、前記第1の参照情報から前記被検体の関心領域において推奨されるコントラストを取得し、取得したコントラストと、前記被検体に対して照射されるX線の発生条件とに基づいて、前記第2の参照情報から造影剤濃度を取得することで、前記造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定してもよい。
(付記3)
前記第1の参照情報は、関心領域ごとに代表的な血管径の情報をさらに有し、
前記第2の参照情報は、血管径ごとに、前記X線の発生条件と前記造影剤濃度と前記コントラストとの関係を示す情報を有し、
前記決定部は、前記第1の参照情報に基づいて前記被検体の関心領域における血管径を決定し、決定した血管径に対応する第2の参照情報に基づいて、前記造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定してもよい。
(付記4)
前記第1の参照情報は、関心領域ごとに代表的な体厚の情報をさらに有し、
前記第2の参照情報は、体厚ごとに、前記X線の発生条件と前記造影剤濃度と前記コントラストとの関係を示す情報を有し、
前記決定部は、前記第1の参照情報に基づいて前記被検体の関心領域における体厚を決定し、決定した体厚に対応する第2の参照情報に基づいて、前記造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定してもよい。
(付記5)
前記第2の参照情報は、血管径ごとに、前記X線の発生条件と前記造影剤濃度と前記コントラストとの関係を示す情報を有し、
前記決定部は、前記被検体の関心領域における過去画像から前記被検体の関心領域における血管径を決定し、決定した血管径に対応する第2の参照情報に基づいて、前記造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定してもよい。
(付記6)
前記第2の参照情報は、体厚ごとに、前記X線の発生条件と前記造影剤濃度と前記コントラストとの関係を示す情報を有し、
前記決定部は、前記被検体の関心領域における過去画像から前記被検体の関心領域における体厚を決定し、決定した体厚に対応する第2の参照情報に基づいて、前記造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定してもよい。
(付記7)
前記設定情報は、前記被検体に対する造影剤の注入速度及び前記造影剤の希釈率のうち少なくとも1つでもよい。
(付記8)
前記決定部は、前記被検体の撮影プロトコルに基づいて、当該被検体における関心部位を決定してもよい。
(付記9)
前記決定部は、撮影時の視野サイズに基づいて、当該被検体における関心部位を決定してもよい。
(付記10)
前記算出部は、前記被検体の関心領域における過去の造影画像のコントラストと、当該造影画像の収集時におけるインジェクタの設定情報とに基づいて、前記設定情報を補正してもよい。
(付記11)
前記算出部は、前記被検体の関心領域における過去の造影3次元画像に含まれるアーチファクトに基づいて、前記設定情報を補正してもよい。
(付記12)
算出された前記設定情報を前記インジェクタに送信する制御部をさらに備えてもよい。
(付記13)
前記制御部は、造影剤の総量、注入時間及び注入開始タイミングのうち少なくとも1つをさらに含む設定情報を前記インジェクタに送信してもよい。
(付記14)
造影画像の収集の対象となる関心領域ごとに前記造影画像において推奨されるコントラストを対応付けた第1の参照情報と、X線の発生条件と造影剤濃度とコントラストとの関係を示す第2の参照情報とに基づいて、造影画像収集時の被検体の関心領域における造影剤濃度を決定する決定部と、
決定された前記関心領域における造影剤濃度に基づいて、前記被検体に対して造影剤を注入するインジェクタの設定情報を算出する算出部と、
前記設定情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える、医用情報処理装置。
【符号の説明】
【0126】
1、1a、1b、1c X線診断装置
3 医用情報処理装置
20、35 処理回路
171 第1参照情報
172 第2参照情報
202、351 制御機能
203、203a、352 決定機能
204、204a、204b、353 算出機能
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12