(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/107 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
A61B3/107
(21)【出願番号】P 2020077703
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-04-21
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】ワング ゼングォ
(72)【発明者】
【氏名】マオ ツァイシン
(72)【発明者】
【氏名】大森 和宏
(72)【発明者】
【氏名】藤野 誠
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-173385(JP,A)
【文献】特開平06-047003(JP,A)
【文献】特開2000-216810(JP,A)
【文献】特開平02-088035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に対向するための対物レンズと、
第1の照明光源から照射される照明光を、前記被検眼の角膜に前記対物レンズの光軸中心と重なる光軸で照射するための第1の照明光学系と
、
前記照明光の角膜反射光を撮像して撮像信号を出力するための撮像素子を有する角膜測定光学系と、
前記被検眼と前記対物レンズとの相対位置を調整するためのアライメント調整系と、を備える眼科装置であって、
前記角膜測定光学系は、前記対物レンズ側に配置される第1のミラーと、前記撮像素子側に配置される第2のミラーを有し、
前記第1のミラーと前記第2のミラーは、前記第1のミラーに入射する前記角膜反射光が前記第1のミラーで反射され前記第2のミラーに入射し、さらに前記第2のミラーで反射された出射光が、前記第1のミラーの反射面に対して前記角膜反射光の入射方向側に出射する関係となるように構成され
、
前記アライメント調整系は、前記対物レンズの光軸方向に対して斜め方向からアライメント光を前記被検眼に照射するためのアライメント光源と、前記被検眼の角膜から反射された前記アライメント光であるアライメント反射光を受光するためのアライメント反射光受光部と、前記対物レンズを移動させることができるアライメント調整部とを備え、
前記照明光、前記角膜反射光、及び前記アライメント光が前記対物レンズを通過するようになっている、
眼科装置。
【請求項2】
前記第1のミラー及び前記第2のミラーは、反射面が平面である請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記第1のミラー及び/又は前記第2のミラーは、ハーフミラーである請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記角膜測定光学系は、前記第1のミラーと前記第2のミラーが互いの反射面が直角をなすように構成される請求項1から3のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記角膜測定光学系は、前記第1のミラーに入射する前記角膜反射光が、収束光又は拡散光である請求項1から4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記第1の照明光学系は、単一の光源のみを有する請求項1から5のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記単一の光源は、砲弾型LEDである請求項6に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記第1の照明光源とは異なる光源からなる固視灯
をさらに備え、
前記固視灯は、前記対物レンズを介して前記被検眼の網膜に合焦する光を照射する請求項1から7のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項9】
第2の照明光源から照射される照明光を、被検眼の角膜に前記対物レンズの光軸中心と異なる光軸中心で照射するための第2の照明光学系と、
前記第1の照明光源と前記第2の照明光源を制御する制御部と、
を更に備え、
前記制御部は、前記第1の照明光源と、前記第2の照明光源を切り替えて照明光を照射可能とする請求項1から8のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項10】
前記第2の照明光源は、前記被検眼の角膜に対して、対物レンズを介さずに照明光を照射する請求項9に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は眼科装置に係り、詳しくは被検眼の前眼部の状態と涙液層の状態を検査する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼の角膜に照明光を投光し、前眼部の状態と被検眼角膜の涙液層によって形成される干渉像を観察することで、ドライアイ等の診断を行う眼科装置が知られている。
【0003】
そして、それらの眼科装置として様々な光学系の配置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の光学系では、光学系の光量ムラまたは色収差あるいはその両方が十分に低減できずに角膜像の一部または全部をセンサが受光することにより正確な画像を撮像できず、干渉像による精密な膜厚測定が困難となる場合がある。
【0006】
本開示はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、被検眼を検査する際に光学系の光量ムラまたは色収差あるいはその両方を軽減し、精密な涙液膜の膜厚測定を可能とする眼科装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の眼科装置は、被検眼に対向するための対物レンズと、前記被検眼の角膜に照明光を照射するための第1の照明光学系と、前記対物レンズを通して前記照明光の角膜反射光を撮像して撮像信号を出力するための撮像素子を有する測定光学系と、を備える眼科装置であって、前記測定光学系は、前記対物レンズ側に配置される第1のミラーと、前記撮像素子側に配置される第2のミラーを有し、前記第1のミラーと前記第2のミラーは、前記第1のミラーに入射する前記角膜反射光が前記第1のミラーで反射され前記第2のミラーに入射し、さらに前記第2のミラーで反射された出射光が、前記第1のミラーの反射面に対して前記角膜反射光の入射方向側に出射する関係となるように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、被検眼を検査する際に光学系の光量ムラまたは色収差あるいはその両方を軽減し、精密な涙液膜の膜厚測定を可能とする眼科装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る眼科装置の光学系の概略図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る眼科装置の光学系のハーフミラーA及びハーフミラーBの構成を示す概略図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るミラーの反射特性を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るミラーの反射率の波長依存を示す図である。
【
図5】本開示の比較例に係る眼科装置の光学系のハーフミラーA及びハーフミラーBの構成を示す概略図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る眼科装置の光学系のハーフミラーA及びハーフミラーBのバリエーションの構成を示す概略図である。
【
図7】本開示のバリエーションの比較例に係る眼科装置の光学系のハーフミラーA及びハーフミラーBの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本開示の実施形態に係る眼科装置1の光学系の概略図である。眼科装置1の光学系は、前眼部観察光学系1aと、角膜測定光学系1bと、第1の照明光学系1cと、第2の照明光学系1dと、を備える。
【0011】
前眼部観察光学系1aは、本開示の第1レンズ群18を備える。また、前眼部観察光学系1aは、第1レンズ群18の光軸方向に沿って配置されたハーフミラーC17、レンズ19、及び前眼部カメラ20を備える。なお、本件においてハーフミラーとは、光を反射光・透過光に分波する反射鏡を示し、その分岐率はおおよそ1:1であってもよいが、その限りではない。
【0012】
第1レンズ群18は、所謂対物レンズである。なお、本実施形態では、対物レンズ(第1レンズ群18)が複数のレンズ(18a、18b)で構成されているが、対物レンズが1つのレンズのみで構成されていてもよい。なお、この第1レンズ群18は、第1の照明光学系1cから出射された照明光L1を、ハーフミラーC17を介して被検眼Eの角膜Eaの角膜表面に照射する。また、第1レンズ群18には、角膜表面で反射された照明光L1の角膜反射光R1が入射される。この角膜反射光は、第1レンズ群18からハーフミラーC17に入射する。
【0013】
ハーフミラーC17は、第1の照明光学系1cから入射した照明光L1の一部を第1レンズ群18に向けて反射する。また、ハーフミラーC17は、第1レンズ群18から入射した角膜反射光R1の一部の光(R3)を透過してレンズ19に向けて出射し、且つ角膜反射光R1のうち、一部の光(R2)を後述の第2レンズ群16に向けて反射する。
【0014】
レンズ19は、ハーフミラーC17から入射した角膜反射光R3を透過して前眼部カメラ20に向けて出射する。前眼部カメラ20は、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型又はCCD(Charge Coupled Device)型の撮像素子を有しており、レンズ19から入射した角膜反射光R3を撮像して被検眼Eの前眼部の観察像(以下、前眼部観察像という)の撮像信号を、制御装置(不図示)へ出力する。
【0015】
第1の照明光学系1cは、ハーフミラーC17を介して前眼部観察光学系1aから分岐した光路を形成する。
【0016】
第1の照明光学系1cは、第1の照明光源11を備える。また、第1の照明光学系1cは、第1の照明光源11から出射される照明光L1の光路上に沿って配置されたレンズ12、フィルタ13、ハーフミラーA14(第2のミラー)、ハーフミラーB15(第1のミラー)、及び第2レンズ群16を備える。また、第1の照明光学系1cは、ハーフミラーC17及び第1レンズ群18を前眼部観察光学系1aと共有する。このように、第1の照明光学系1cは、ハーフミラーC17で前眼部観察光学系1aから分岐した光路を形成する。
【0017】
第1の照明光源11は、光を出射する光源である。第1の照明光源11は、例えば、白色光を出射するLED(light emitting diode)光源及びハロゲンランプ等が用いられ、レンズ12に向けて照明光L1として白色光を出射する。あるいは、他波長のLEDやレーザー光源およびその組み合わせであってもよい。レンズ12は、第1の照明光源11から入射した照明光L1をフィルタ13に向けて出射する。フィルタ13は、レンズ12から入射した照明光L1の光量あるいは波長分布またはその両方を調整し、調整後の照明光L1をハーフミラーA14に向けて出射する。なおLEDは、砲弾型LEDを用いることができる。またLEDに変えて単一のハロゲンランプ等を用いてもかまわない。
【0018】
ハーフミラーA14は、フィルタ13から入射した照明光L1の一部を透過してハーフミラーB15に向けて出射すると共に、後述の第2レンズ群16から入射した角膜反射光R2を角膜測定光学系1bに向けて反射する。
【0019】
ハーフミラーB15及び第2レンズ群16は、ハーフミラーA14から入射した照明光L1を既述のハーフミラーC17に向けて出射する。また、ハーフミラーC17から入射した角膜反射光R2をハーフミラーA14に向けて出射する。
【0020】
このように、第1の照明光源11から出射された照明光L1は、レンズ12からハーフミラーC17を経た後、第1レンズ群18を通して角膜Eaの角膜表面に照射される。これにより、角膜表面で反射された照明光L1の角膜反射光R1が第1レンズ群18に入射する。
【0021】
角膜測定光学系1bは、ハーフミラーA14を介して第1の照明光学系1cから分岐した光路を形成する。角膜測定光学系1bは、第1レンズ群18からハーフミラーA14までを第1の照明光学系1cと共有すると共に、絞り21、レンズ22、及び干渉像撮像用カメラ23を備える。
【0022】
絞り21及びレンズ22は、ハーフミラーA14から入射した角膜反射光R2を干渉像撮像用カメラ23に向けて出射する。
【0023】
干渉像撮像用カメラ23は、CMOS型又はCCD型の撮像素子を有しており、レンズ22から入射した角膜反射光R2を撮像して、角膜反射像の撮像信号を制御部10出力する。
【0024】
固視灯24は、被験者の視線を誘導することで被検眼Eの位置を固定し、被検眼Eの状態を正確に観察撮影するための光源である。固視灯24は、LED(light emitting diode)光源又はハロゲンランプ等を用いることができる。固視灯24から出射された光L2は、ハーフミラーB15、第2レンズ群16を透過し、ハーフミラーC17で反射され、第1レンズ群18を介して被検眼Eに入射する。すなわち、後述するアライメント調整系に含まれる第1レンズ群18を介して固視灯24からの光L2を照射することができる。
【0025】
アライメント調整系は、第1レンズ群18を移動可能とするサーボモータ等のアライメント調整部40を含む機構部である。制御部10に電気的に接続されるサーボモータを駆動し第1レンズ群18を移動することで、被検眼Eと第1レンズ群18の光軸方向の相対位置の調整を行い、光学系のアライメント調整を行うことができる。すなわち、第1レンズ群18を介して照射される固視灯24の光も同時にアライメント調整を行うことができる。それにより、被検眼Eの眼底(網膜)に固視灯24からの光L2を合焦することができる。そのため、前眼部の焦点状態を維持しつつ前眼部カメラ20や、干渉像撮像用カメラ23で得られる像の眼球の動きによるボケを軽減することができる。
【0026】
アライメント調整系は、光てこ方式を用いて被検眼Eと第1レンズ群18の光軸方向のアライメント測定を行う。アライメント調整系は、アライメント測定の結果を用いて第1レンズ群18を移動することにより、被検眼Eと光学系の相対位置の調整(アライメント調整)を行う。ピント調整系は、アライメント光源4aとアライメント反射光受光部4bと、を備えている。アライメント反射光受光部4bはCCD、CMOS、PSD(Position Sensitive Detector)などのリニアセンサーであってもよい。あるいは、受光領域を複数個持ったものでもよい。
【0027】
アライメント光源4aは、第1レンズ群18の対物レンズ18aとハーフミラーC17の間に配置されている。またアライメント光源4aは、前眼部カメラ20の光軸中心から離れた位置に配置されている。アライメント光源4aは、アライメント光A1を照射する。照射されたアライメント光A1は、第1レンズ群18の対物レンズ18aを介して、角膜Eaの角膜表面に対して斜め方向から入射する。アライメント反射光受光部4bは、被検眼Eの角膜Eaに対して第1レンズ群18がアライメントされている場合に、角膜Ea表面で反射されたアライメント反射光A2を受光することができる。これにより、アライメント反射光受光部4bにアライメント反射光A2が適切な位置に受光しているか否かの判断に基づき、被検眼Eと第1レンズ群18がアライメントされているか否かを判定することができる。なお、アライメント反射光受光部4bによる反射光の受光信号は制御部10へ出力される。
【0028】
ゴースト除去光源4は、例えばLED(light emitting diode)光源やハロゲンランプ等が用いられ、被検眼Eの角膜Eaの角膜表面に向けて照明光L3を出射することができる。ゴースト除去光源4は、後述する第1レンズ群18の光軸に対してずれた光軸を有する(第2の照明光学系1d)。
【0029】
制御部10は、ゴースト除去光源4、アライメント光源4a、アライメント反射光受光部4b、第1の照明光源11、前眼部カメラ20、干渉像撮像用カメラ23、固視灯24、アライメント調整部40と電気的に接続されている。
【0030】
制御部10は、入力された角膜反射光R2の画像データ(角膜反射像)に基づき、角膜反射像の各位置の干渉像の波長特性を検出することで、角膜表面の各位置における涙液層の厚みを検出することができる。ここで涙液層とは、油層(脂質層)、水層、または、ムチン質、それぞれの層、あるいはそれら複数の層を組み合わせた層のことを示す。
【0031】
また、制御部10は、第1の照明光源11と、ゴースト除去光源4(第2の照明光源)と、を切り替えて照明光を照射することができる。そのため、検査に応じて、ゴーストを低減するモードと、被検眼Eの中心に対して光を照射するモードを切り替えることができる。
【0032】
ここで、本開示に係る第1の照明光源11は、単一のLEDからなる光源である。そのため、第1の照明光源11が出射した照明光L1は第1レンズ群18を通って角膜Eaに到達した場合でも、単一の光源の形状が投影される。
【0033】
これに対し、比較例として例えば第1の照明光源11として、3×3の9個のLEDがマトリックス配置されてなる複数の光源を用いた場合について説明する。比較例に係る第1の照明光源11が出射した照明光は第1レンズ群18を通って角膜Eaに到達した場合、複数のLED点光源からの光が第1レンズ群18で集光されることで複数のLEDに隣接する場所に発生する暗い部分、すなわち縞状の照度差が、角膜Ea上にぼんやり見える縞状として投影されることになる。そのため、角膜Eaからの角膜反射光R1にも、この縞状の照度差が生じることとなる。その結果、被検眼Eの角膜Eaの照明に濃淡が生じ、角膜表面の涙液の膜厚を正確に測定することができなくなるおそれがある。
【0034】
これに対し、本開示によれば、単一の光源による照明により角膜Eaの測定を行うことで、角膜に縞状の照度差を生じることがなく、角膜表面の涙液の膜厚を正確に測定することができる。
【0035】
また、アライメント調整系の光学系である第1レンズ群を介して固視灯24からの光を重畳して照射することにより、焦点状態を維持することで眼球の動きによるボケを軽減させ、被検眼Eの角膜Eaの涙液層によって形成される干渉縞を正確に観察することを可能とする。
【0036】
また、ゴースト除去光源4から照明光L3を照射することにより、照明光L3が前眼部で反射して生じるゴーストの位置を、前眼部カメラ20の光軸からずらすことができる。よって、ゴーストが前眼部カメラ20の視野内に入ることを抑制することができる。そのため、被検眼Eの中心付近の角膜や涙液層の正確な検査や、より正確な角膜像の取得が可能となる。
【0037】
なお、ゴースト除去光源4(第2の照明光源)を、被検眼Eの角膜Eaに対して照明光L3を下方から照射する光軸となるように配置しても構わない。また、ゴースト除去光源4(第2の照明光源)を、第1レンズ群18の中心光軸に対し、水平方向から照射する光軸を有するように構成しても構わない。
【0038】
次に、ハーフミラーB15(第1のミラー)とハーフミラーA14(第2のミラー)について説明する。ハーフミラーB15およびハーフミラーA14は、それぞれ反射面にコーティング層を有する。また、ハーフミラーB15とハーフミラーA14は、互いの反射面が直角をなすように構成されている。すなわち、ハーフミラーB15とハーフミラーA14の関係は、角膜反射光R2の入射方向側にハーフミラーA14で反射された出射光が出射する構成である。
【0039】
図2は、本開示の実施形態に係る眼科装置の光学系のハーフミラーB15及びハーフミラーA14の構成を示す概略図である。
図2は、本開示の実施形態に係る眼科装置の光学系のうち、ハーフミラーB15(第1のミラー)とハーフミラーA14(第2のミラー)とその間の光線を示す図である。第2レンズ群16を通った角膜反射光R2が、拡散光としてハーフミラーB15に入射する。当該光を光線E11と光線E21を代表的な線として説明する。
【0040】
光線E11は、ハーフミラーB15に入射角度aで入射する。光線E11は、ハーフミラーB15で反射され、光線E12として出射する。光線E12は、ハーフミラーA14に入射角度bで入射する。光線E12は、ハーフミラーA14で反射され、光線E13としてレンズ22および干渉像撮像用カメラ23に向けて出射する。次に、光線E21は、ハーフミラーB15に入射角度bで入射する。光線E21は、ハーフミラーB15で反射され、光線E22として出射する。光線E22は、ハーフミラーA14に入射角度aで入射する。光線E22は、ハーフミラーA14で反射され、光線E23としてレンズ22および干渉像撮像用カメラ23に向けて出射する。
【0041】
ここで、入射する光線E11と光線E21と、出射する光線E13と光線E23の関係を考える。入射する光線E11は、各ハーフミラーで角度aと角度bのそれぞれ1回ずつ反射され光線E13となる。同様に、入射する光線E21は、各ハーフミラーで角度bと角度aのそれぞれ1回ずつ反射され光線E23となる。各ミラーの反射率Rまたは反射率の波長依存dR/dλは、一般に、ハーフミラーへの入射角度に応じて変化する。そのため、最終的に出射する光線E13とE23は、ともに、入射する光線に対して角度a、角度bで反射されるため、これらのハーフミラーのペアを通過した場合、通過した光の光量ムラや光量の波長依存(色収差)が小さくなる。これにより、干渉像撮像用カメラ23が撮像する角膜反射光R2の像内で光量分布や波長依存性の変化量(色ムラ)を低減することができる。特に光線E13とE23は、同一の角度(a,bとb,a)の組み合わせによる反射のため、光線E13と光線E23の、総合の反射率Rまたは反射率の波長依存dR/dλの差異は相殺される。
【0042】
このように、ハーフミラーB15(第1のミラー)とハーフミラーA14(第2のミラー)が、ハーフミラーB15に入射する角膜反射光R2がハーフミラーB15で反射されハーフミラーA14に入射し、反射された出射光が、ハーフミラーB15に対して角膜反射光R2の入射方向側、すなわち第2レンズ群16が配置される方向に出射する関係となるように構成されることで、上記の効果を奏するものである。
【0043】
次に
図3、
図4は、本開示の実施形態に係る各ハーフミラーのミラー特性を示す図である。以下でミラーとは、前述のハーフミラーを含むものである。
図3は横軸に入射角度、縦軸に反射率Rを示している。ミラーは、入射角度に応じて反射率Rが変化する光学特性を有している。各ミラーで発生する反射率に応じる照度差は、ミラーへの入射角度に応じて発生する。そのため、最終的に出射する光線E13とE23、入射する光線に対して入射角度a、入射角度bで反射されるため、ミラーに入射する位置に対しその照度が均一化される。光線E11からE13系は、反射率R(a)×R(b)で出射され、光線E21からE23の系は、反射率R(b)×R(a)で出射されるから最終的な照度は同じになる。すなわち、干渉像撮像用カメラ23が撮像する角膜反射光R2から生成される像の内で光量ムラの変化を抑制することができる。
図4は横軸に入射角度、縦軸に反射率の波長依存dR/dλを示している。ミラーは、入射角度に応じて反射率の波長依存dR/dλが変化する光学特性を有している。各ミラーで発生する反射率の波長依存に応じる光量の波長依存dR/dλは、ミラーへの入射角度に応じて発生する。そのため、最終的に出射する光線E13とE23、入射する光線に対して入射角度a、入射角度bで反射されるため、ミラーに入射する位置に対しその光量の波長依存が均一化される。すなわち、干渉像撮像用カメラ23が撮像する角膜反射から生成される像の内で光量の波長依存の変化を抑制することができる。
図3、
図4において、それぞれ、縦軸の値が入射角度a、入射角度bに対し大きくなるように描いているが、本発明において、その限りではなく、縦軸の位置が相違していればよい。
【0044】
図5は、本開示の比較例に係る眼科装置の光学系のハーフミラーB15及びハーフミラーA14の構成を示す概略図である。
図5は、
図2で示す光学系に比較して、ハーフミラーA14(第2のミラー)の向きが上下反転した状態である。すなわち、角膜反射光R2の入射方向側と異なる他方側に、ハーフミラーA14で反射された出射光が出射する構成である。第2レンズ群16を通った角膜反射光R2が、拡散光としてハーフミラーB15に入射する。当該光を光線E11と光線E21を代表的な線として説明する。
【0045】
光線E11は、ハーフミラーB15に入射角度aで入射する。光線E11は、ハーフミラーB15で反射され、光線E12として出射する。光線E12は、ハーフミラーA14に入射角度aで入射する。光線E12は、ハーフミラーA14で反射され、光線E13としてレンズ22および干渉像撮像用カメラ23に向けて出射する。次に、光線E21は、ハーフミラーB15に入射角度bで入射する。光線E21は、ハーフミラーB15で反射され、光線E22として出射する。光線E22は、ハーフミラーA14に入射角度bで入射する。光線E22は、ハーフミラーA14で反射され、光線E23としてレンズ22および干渉像撮像用カメラ23に向けて出射する。
【0046】
このように、入射する光線E11と光線E21と、出射する光線E13と光線E23の関係を考える。入射する光線E11は、各ハーフミラーで入射角度aとして2回反射され光線E13となる。同様に、入射する光線E21は、各ハーフミラーで入射角度bとして2回反射され光線E23となる。各ミラーの反射面で発生する光量差や光量の波長依存性の差は、ハーフミラーへの入射角度に応じて発生する。そのため、最終的に出射する光線E13とE23は、入射する光線に対してそれぞれ角度a、角度bで2回反射されるため、ハーフミラーに入射する位置に応じた光量差や光量の波長依存性の差が大きく生じることになる。同様に、干渉像撮像用カメラ23が撮像する角膜反射光R2から生成される像の内での光量ムラや光量の波長依存性のムラが大きく生じることになる。
【0047】
以上、ハーフミラーB15とハーフミラーA14が直角をなす場合について説明したが、他の構成においても、本開示の効果を得ることができる。
図6は、本開示の実施形態のバリエーションに係る眼科装置の光学系のうち、ハーフミラーB15(第1のミラー)とハーフミラーA14(第2のミラー)とその間の光線を示す図である。なお、ハーフミラーB15とハーフミラーA14の反射面が45度の角度で向き合っている。すなわち、ハーフミラーB15とハーフミラーA14の関係は、角膜反射光R2の入射方向側にハーフミラーA14で反射された出射光が出射する構成である。なお、
図6は、第2レンズ群16を通った角膜反射光R2が、拡散光としてハーフミラーB15に入射する。当該光を光線E11と光線E21を代表的な線として説明する。
【0048】
光線E11は、ハーフミラーB15に入射角度a1で入射する。光線E11は、ハーフミラーB15で反射され、光線E12として出射する。光線E12は、ハーフミラーA14に入射角度b2で入射する。光線E12は、ハーフミラーA14で反射され、光線E13としてレンズ22および干渉像撮像用カメラ23に向けて出射する。次に、光線E21は、ハーフミラーB15に入射角度b1で入射する。光線E21は、ハーフミラーB15で反射され、光線E22として出射する。光線E22は、ハーフミラーA14に入射角度a2で入射する。光線E22は、ハーフミラーA14で反射され、光線E23としてレンズ22および干渉像撮像用カメラ23に向けて出射する。
【0049】
ここで、入射する光線E11と光線E21と、出射する光線E13と光線E23の関係を考える。入射する光線E11は、各ハーフミラーで角度a1と角度b2のそれぞれ1回ずつ反射され光線E13となる。同様に、入射する光線E21は、各ハーフミラーで角度b1と角度a2のそれぞれ1回ずつ反射され光線E23となる。前述したように、各ミラーの反射率Rまたは反射率の波長依存dR/dλは、一般に、ハーフミラーへの入射角度に応じて変化する。
図6において、角度の関係は角度a1<角度b1、角度a2<角度b2となっている。最終的に出射する光線E13は、角度a1、角度b2で反射され、光線E23は、角度b1、角度a2で反射されるため、これらのハーフミラーのペアを通過した場合、通過した光量Iまたは通過した光量の波長依存dI/dλは小さくなる。これにより、干渉像撮像用カメラ23が撮像する角膜反射光R2から生成される像の内での光量ムラや光量の波長依存性のムラを低減することができる。
【0050】
比較として、例えば
図7で示すように、角膜反射光R2の入射方向側と異なる他方側にハーフミラーA14で反射された出射光が出射する構成について検討する。この場合、入射する光線E11が各ハーフミラーで角度a1と角度a3のそれぞれ1回ずつ反射され光線E13となり、入射する光線E21が各ハーフミラーで角度b1と角度b3のそれぞれ1回ずつ反射され光線E23となる場合、角度a1<角度b1、角度a3<角度b3であるため、これらのハーフミラーのペアを通過した場合、通過した光量ムラや光量の波長依存性のムラが大きくなる。
【0051】
以上より、ハーフミラーB15(第1のミラー)とハーフミラーA14(第2のミラー)の関係は、角膜反射光R2の入射方向側にハーフミラーA14で反射された出射光が出射する構成において、角膜反射光R2から生成される像の内での光量ムラや光量の波長依存性のムラを低減することができるものである。
【0052】
以上の比較例から明らかなように、本開示の構成により、光学系による像の内での光量ムラや光量の波長依存性のムラを抑制することができる。そのため、被検眼を検査する際に角膜像の光量ムラや光量の波長依存性のムラを軽減し、精密な涙液膜の膜厚測定を可能とする眼科装置を提供することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、拡散光線を例として説明したが、収束光線でも同様の効果を有するものである。また、本実施形態では第1のミラーあるいは第2のミラーとしてハーフミラーを用いて説明したが、通常の全反射ミラーであっても構わない。また、ミラーの反射面は平面であることが望ましい。
【符号の説明】
【0054】
1 :眼科装置
1a :前眼部観察光学系
1b :角膜測定光学系
1c :第1の照明光学系
1d :第2の照明光学系
4 :ゴースト除去光源
4a :アライメント光源
4b :アライメント反射光受光部
10 :制御部
11 :第1の照明光源
12 :レンズ
13 :フィルタ
14 :ハーフミラーC
15 :ハーフミラーB
16 :第2レンズ群
17 :ハーフミラーA
18 :第1レンズ群
18a :対物レンズ
19 :レンズ
20 :前眼部カメラ
21 :絞り
22 :レンズ
23 :干渉像撮像用カメラ
24 :固視灯
40 :アライメント調整部