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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20240422BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20240422BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20240422BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C08L53/00
C08F293/00
G03F7/075
H01L21/78
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020085215
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021178923
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 教一
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-226664(JP,A)
【文献】特開2007-017790(JP,A)
【文献】特開2003-025338(JP,A)
【文献】特開2009-145436(JP,A)
【文献】特開2014-095740(JP,A)
【文献】特開2012-036078(JP,A)
【文献】特開2004-163603(JP,A)
【文献】特開平09-255785(JP,A)
【文献】特開平08-295739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/00
C08F 293/00
G03F 7/075
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシラン骨格を有する第1のブロックと、ビニルモノマーの重合体である第2のブロックとを有する共重合体を含有し、
前記第2のブロックは、紫外線吸収作用を有する紫外線吸収性モノマーに由来するモノマー単位を含み、
前記紫外線吸収性モノマーは、ベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格及びトリアジン骨格のいずれかを有する、紫外線レーザ加工レジスト用の樹脂組成物。
【請求項2】
ポリシラン骨格を有する第1のブロックと、ビニルモノマーの重合体である第2のブロックとを有する共重合体を含有し、
前記第2のブロックは、紫外線吸収作用を有する紫外線吸収性モノマーに由来するモノマー単位を含み、
波長355nmにおける紫外線透過率が2%以下である、紫外線レーザ加工レジスト用の樹脂組成物。
【請求項3】
前記紫外線吸収性モノマーは、ベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格及びトリアジン骨格のいずれかを有する、請求項に記載の紫外線レーザ加工レジスト用の樹脂組成物。
【請求項4】
前記紫外線吸収性モノマーに由来するモノマー単位の、前記共重合体全体に占める割合は、3質量%以上、70質量%以下であり、
前記ポリシラン骨格の、前記共重合体全体に占める割合は、30質量%以上、97質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の紫外線レーザ加工レジスト用の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、溶媒とを含有する、レジスト剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物に関し、特に紫外線レーザ加工レジスト用の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハを個々のデバイスに分割するためにダイシングが行われる。ダイシングは、一般的にはスクライビングまたはソーイングにより行われている。近年、プラズマによりウェーハの所定部分をエッチングするプラズマダイシングが注目されている。
【0003】
プラズマダイシングの際には、ウェーハ上にレジスト膜からなるマスクを形成し、ウェーハのマスクから露出した部分をプラズマエッチングすることにより個々のデバイスに分割する。マスクには、エッチングするためのパターンを正確に形成できる機能と、ウェーハ上の素子をプラズマから保護する機能とが求められる。
【0004】
マスクは、標準的なリソグラフィーの操作によりフォトレジスト膜をパターニングして形成することができる。しかし、この手法ではマスク形成のコストが問題となる。フォトレジスト膜に変えてポリビニルアルコール(PVA)からなるレジスト膜を紫外線(UV)レーザにより直接パターニングしてマスクを形成することも検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-165963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のPVA等からなるレジスト膜は、耐熱性に乏しくUVレーザの吸収性も低いため、加工速度を上げることができず、高精度の加工も困難であるという問題を有する。レジスト膜に紫外線吸収剤を添加することも検討されているが、添加量を増やすと紫外線吸収剤の析出が生じるため、UVレーザの吸収性を十分に向上させることができない。また、紫外線吸収剤を添加してもレジスト膜の耐熱性が低いという問題は解決できない。
【0007】
本開示は、加工速度の向上と高精度の加工が可能な紫外線レーザ加工レジストを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
紫外線レーザ加工レジスト用の樹脂組成物の一態様は、ポリシラン骨格を有する第1のブロックと、ビニルモノマーの重合体である第2のブロックとを有する共重合体を含有し、第2のブロックは、紫外線吸収作用を有する紫外線吸収性モノマーに由来するモノマー単位を含む。
【0009】
樹脂組成物の一態様において、紫外線吸収性モノマーは、ベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格及びトリアジン骨格のいずれかを有するものであってもよい。
【0010】
樹脂組成物の一態様において、紫外線吸収性モノマーに由来するモノマー単位の、共重合体全体に占める割合は、3質量%以上、70質量%以下であり、ポリシラン骨格の、共重合体全体に占める割合は、30質量%以上、97質量%以下とすることができる。
【0011】
樹脂組成物の一態様において、波長355nmにおける紫外線透過率が2%以下とすることができる。
【0012】
レジスト剤の一態様は、本開示の樹脂組成物と、溶媒とを含有する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の樹脂組成物によれば、加工速度の向上と高精度の加工が可能な紫外線レーザ加工レジストを実現できる
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態のレジスト剤は、樹脂組成物と溶媒とを含有する。本実施形態のレジスト剤は、紫外線(UV)レーザにより直接パターニングすることができ、例えばプラズマダイシングのマスクの形成に用いることができる。本実施形態のレジスト剤に含まれる樹脂組成物は、ポリシラン骨格を有する第1のブロックと、ビニルモノマーの重合体からなる第2のブロックとを有する共重合体(レジストポリマー)を含む。
【0015】
第1のブロックは、ポリシランからなり、シリコン-シリコン結合により形成された主鎖を有し、側鎖に有機置換基を有する。シリコン-シリコン結合により形成された主鎖は、直鎖であっても分岐鎖を有していてもよく、環構造を有していてもよい。側鎖の有機置換基は特に限定されず、好ましくはアルキル基、アリール基、及びアラルキル基等とすることができる。アルキル基は直鎖であっても分岐鎖を有していてもよく、環構造を有していてもよい。また、ヘテロ原子を含む有機置換基であってもよい。第1ブロックであるポリシランの分子量は特に限定されないが、レジスト剤としての取り扱い性の観点から、数平均分子量(Mn)として好ましくは500以上、より好ましくは800以上で、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下である。重量平均分子量(Mw)として好ましくは800以上、より好ましくは1000以上で、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下である。
【0016】
第2のブロックは、ビニルモノマーの重合体からなり、第2のブロックを構成するモノマー単位の少なくとも一部は、紫外線吸収基を有する紫外線吸収性モノマーに由来するモノマー単位である。このため、第2のブロックは紫外線吸収作用を有する。紫外線吸収基は、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格又はトリアジン骨格とすることができる。紫外線吸収性モノマーは、ビニル基と紫外線吸収基とを有していればよいが、重合性等の観点からアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの誘導体であるアクリル系モノマーが好ましい。具体的には、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチル=メタクリラート、2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート又は2-[4-(4,6-ジフェニル)-[1,3,5]トリアジン-2-イル]-3-ヒドロキシ-フェノキシ}-エチルプロプ-2-エノエート等を用いることができる。
【0017】
本実施形態のレジストポリマーは、ポリシラン骨格を有する第1のブロックを含むため、耐熱性及び耐プラズマ性に優れている。一方、紫外線吸収作用を有する第2のブロックを含むことにより、優れた紫外線吸収性を有している。また、共重合体となっているため、低分子の紫外線吸収剤を添加した場合に生じる、紫外線吸収剤のブリードも生じない。従って、本実施形態のレジストポリマーを用いたレジスト膜は、UVレーザを用いてパターニングを高速で且つ高精度に行うことができる。
【0018】
ポリシラン骨格を有する第1のブロックと、紫外線吸収作用を有する第2のブロックとを含む共重合体(レジストポリマー)は、ポリシラン骨格を有するポリシランと、紫外線吸収性モノマーとを混合して反応させることにより調製することができる。紫外線照射等により、ポリシランにラジカルを発生させることができるので、紫外線吸収性モノマーをポリシランと共重合させることができる。
【0019】
ポリシラン骨格を有する第1のブロックの、レジストポリマー全体に占める割合は、耐熱性の観点から好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。また、紫外線吸収作用を発揮させる観点から好ましくは97質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0020】
紫外線吸収性モノマーに由来するモノマー単位の、レジストポリマー全体に占める割合は、紫外線吸収作用を発揮させる観点から好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、よりさらに好ましくは15質量%以上である。また、耐熱性の観点から好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0021】
レジストポリマーは、ベンゾトリアゾール骨格等の紫外線吸収基を有さず、紫外線吸収作用を示さない紫外線非吸収性モノマーに由来するモノマー単位を含んでいてもよい。紫外線非吸収性モノマーは、特に限定されないが(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリルアミド誘導体等のアクリル系モノマーとすることができる。アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを加えることにより、レジスト膜を柔軟にしてウェーハに対する密着性を向上させることができ、加工性をさらに向上させることができる。また、ポリシランよりもプラズマエッチング耐性が高い炭化水素系のモノマーを加えることにより、レジスト膜の耐プラズマ性を向上させることができる。
【0022】
紫外線非吸収性モノマーは、紫外線吸収性モノマーと共に共重合させて、第2のブロックの構成単位とすることができる。また、第2のブロックとは異なるブロックの構成単位としてレジストポリマーに含まれていてもよい。
【0023】
紫外線非吸収性モノマーに由来するモノマー単位の、レジストポリマー全体に占める割合は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0024】
なお、第1のブロック及び各モノマー単位の割合は、共重合体を重合する際の仕込み量に基づくものであるが、共重合体の組成分析により求めることもできる。
【0025】
本実施形態のレジスト剤は、本実施形態のレジストポリマーを含む樹脂組成物と、溶媒とを含む。樹脂組成物は、レジストポリマー以外に、未重合のポリシラン及びビニルポリマー等の残留物を含んでいてもよい。溶媒は、レジストポリマーを溶解させることができれば特に限定されないが、例えばトルエン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等とすることができる。
【0026】
レジスト剤全体に占める樹脂組成物の割合は、形成するレジスト膜の膜厚等に応じて調整することができるが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは25質量%以上、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0027】
レジスト剤は、レジストポリマーと溶媒以外の成分を含まなくてよいが、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、レベリング剤、光安定化剤、酸化防止剤等の添加剤成分や、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等のポリマー成分などが挙げられる。他の成分の割合は、レジストポリマー100質量部に対して10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0028】
本実施形態のレジスト剤は、ウェーハの表面にスピンコート等の方法によりコーティングしてレジスト膜を形成することができる。形成したレジスト膜は、UVレーザの照射によりストリート部分を除去してパターニングすることができる。パターニングしたレジスト膜をマスクとしてプラズマ照射を行いウェーハをエッチングすることにより、ウェーハのダイシングを行うことができる。ウェーハの表面に形成するレジスト膜の膜厚は、特に限定されないが、レジスト性の観点から好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、塗布面質の観点から好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。
【0029】
本実施形態のレジスト剤のパターニングに用いるUVレーザ光の波長は、特に限定されないが、波長200nm~400nm程度とすることができ、中でも波長355nmが好ましい。また、レーザ光の周波数も特に限定されないが、例えば、1kHz~300kHz程度とすることができ、高速加工を行う観点からは周波数が高いものが好ましい。
【0030】
本実施形態のレジスト剤は、ウェーハのプラズマダイシングに限らず、レーザパターニング可能なレジスト剤として、耐熱性が要求される工程などの保護膜として用いることができる。
【実施例
【0031】
以下に実施例を用いて、本開示の樹脂組成物をより詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定することを意図しない。
【0032】
<樹脂溶液の製造>
温度計、還流冷却器、及び窒素ガス供給ガラス管を取付けた、200mlの3つ口丸底フラスコに、トルエン75.0gと、所定量のポリシラン及びビニルモノマーとを投入して、60℃に昇温し、スターラーで撹拌して溶解させた。この溶解液を撹拌しながら窒素ガスを供給し、脱酸素のため30分以上窒素ガスによるバブリングを行った。続いて、窒素ガスによるバブリング、スターラー撹拌を継続しながら、溶解液の液温が60℃~70℃になるように調整し、高圧水銀ランプ(UV強度:170mW/cm2)を用いて紫外線照射を60分間行い重合させ、レジストポリマーを含む樹脂溶液を得た。
【0033】
<レジスト膜の形成>
製造したレジストポリマーを含む樹脂溶液を固形分が40質量%となるようにトルエンで希釈してレジスト剤とした。調製したレジスト剤をスピンコータを用いてシリコンウェーハ(φ8インチ、厚さ700μm)の表面に塗布し、溶剤を乾燥させてレジスト膜を形成した。スピンコータの回転数は400rpmとし、レジスト膜の厚さは10μmとした。
【0034】
<液経時安定性の評価>
製造した樹脂溶液を、透明な密閉容器に入れて室温で7日間静置した後、樹脂溶液の外観および沈殿物の有無を目視観察し、以下の評価基準に従って液経時安定性を評価した。
【0035】
(評価基準)
A:溶液の白濁および沈殿物がない。
B:軽微な白濁があるが、沈殿物はない。
C:分離もしくは沈殿物がある。
<耐熱性の評価>
製造した樹脂溶液の5gをアルミカップに取り分けて、100℃のオーブンにて180分間乾燥させ溶剤を蒸発させた。アルミカップ内に残留した不揮発成分について熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)により、10%重量減少温度を測定した。測定条件は、昇温速度20℃/min、窒素雰囲気下で30℃~600℃まで昇温とした。測定結果を以下の評価基準に従って耐熱性を評価した。
【0036】
(評価基準)
A:10%重量減少温度が250℃以上
B:10%重量減少温度が200℃以上250℃未満
C:10%重量減少温度が200℃未満
<塗布面質の評価>
形成したレジスト膜の表面状態を目視観察して、以下の評価基準に従って塗布面質を評価した。
【0037】
(評価基準)
A:凹凸がなく均一な塗膜である。
B:軽微な凹凸(ゆず肌)が見られる。
C:塗膜にひび割れ、粒状等の欠点が見られる。
<レーザ加工性の評価>
形成したレジスト膜の表面にUVレーザ加工装置(AL300P、東京精密製)を用いて、線幅15μm、線長15mmで1mmピッチの碁盤目状になるようにパターン加工をした。このときの加工条件は、レーザ波長:355nm、パルス幅:<15ns、周波数:50kHz、加工速度:600mm/secとした。このレーザ加工部分について、マイクロスコープを用いて200倍で拡大観察し、以下の評価基準に従ってレーザ加工性を評価した。
【0038】
(評価基準)
A:レーザ加工端部の塗膜の剥がれがなく、レジスト残渣もない。
B:レーザ加工端部にレジスト残渣が微量残っている。
C:レーザ照射部分にレジスト膜の一部が残っている。
<レジスト性の評価>
レーザ加工性を評価した後、プラズマエッチング装置を用いて、レジスト膜側からプラズマエッチング処理を行った。このときの処理条件は、プラズマ源:ICPプラズマパワー2200W、プロセスガス:SF6ガス、ガス圧力:2Pa、処理時間:7分間とした。プラズマエッチング処理後のレジスト膜の表面をマイクロスコープにて200倍で拡大観察し、以下の評価基準に従ってレジスト性を評価した。
【0039】
(評価基準)
A:レジスト膜にプラズマエッチングによる侵食は見られない。
B:プラズマエッチングによる侵食は見られるが、シリコンウェーハの露出はない。
C:レジスト膜がなくなり、シリコンウェーハの露出が見られる。
【0040】
<UV透過率の測定>
製造した樹脂溶液を、厚さが50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面に、スピンコータで塗布して樹脂膜を形成した。樹脂膜の乾燥後の膜厚は10μmとした。樹脂膜を形成したPETフィルムについて波長355nmの紫外光の透過率を分光光度計を用いて測定した。得られた透過率から樹脂膜を形成する前のPETフィルムの透過率をブランクとして差し引き、樹脂膜の透過率とした。
【0041】
(実施例1)
ポリシランとして数平均分子量(Mn)が1100、重量平均分子量(Mw)が1800の第1のポリシラン(オグソールSI-10-20、大阪ガスケミカル製)56.25gを用い、ビニルモノマーとしてベンゾトリアゾール骨格を有するメタクリレート系の第1の紫外線吸収性モノマー(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェネチル=メタクリラート、RUVA-93、大塚化学製)18.75gを用い樹脂溶液を製造した。
【0042】
製造した樹脂溶液からゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて分取したレジストポリマーについて赤外分光(IR)分析を行ったところ、ポリシランのスペクトルと、紫外線吸収性モノマーのスペクトルとを複合したスペクトルが得られた。また、1HNMR分光法によりケミカルシフト0.5~4.5ppmでのアクリルポリマー鎖のピークが確認できた。これらの結果から、得られたレジストポリマーは、ポリシランと紫外線吸収性モノマーとの共重合物であると判断した。得られたレジストポリマーのMwは3900であった。
【0043】
得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。UV透過率は0%であった。
【0044】
(実施例2)
ポリシランをMnが900、Mwが1200の第2のポリシラン(オグソールSI-20-10、大阪ガスケミカル製)52.5gとし、第1の紫外線吸収性モノマーを22.5gとして樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0045】
得られたレジストポリマーのMwは4300であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。UV透過率は0%であった。
【0046】
(実施例3)
第2ポリシランを30.0gとし、第1の紫外線吸収性モノマーを45.0gとして樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0047】
得られたレジストポリマーのMwは4300であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はBであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。UV透過率は0%であった。
【0048】
(実施例4)
第2のポリシランを22.5gとし、第1の紫外線吸収性モノマーを52.5gとして樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0049】
得られたレジストポリマーのMwは4600であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はBであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。UV透過率は0%であった。
【0050】
(実施例5)
第2のポリシランを67.5gとし、第1の紫外線吸収性モノマーを7.5gとして樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0051】
得られたレジストポリマーのMwは4000であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。UV透過率は0%であった。
【0052】
(実施例6)
第2のポリシランを71.25gとし、第1の紫外線吸収性モノマーを3.75gとして樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0053】
得られたレジストポリマーのMwは4000であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はB、レジスト性はBであった。UV透過率は0%であった。
【0054】
(実施例7)
第2のポリシランを52.5gとし、ビニルモノマーとして2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレートである第2の紫外線吸収性モノマーを22.5g用いて樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0055】
得られたレジストポリマーのMwは4300であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。UV透過率は0%であった。
【0056】
(実施例8)
第2のポリシランを52.5gとし、ビニルモノマーとして2-[4-(4,6-ジフェニル)-[1,3,5]トリアジン-2-イル]-3-ヒドロキシ-フェノキシ}-エチルプロプ-2-エノエートである第3の紫外線吸収性モノマーを22.5g用いて樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0057】
得られたレジストポリマーのMwは4300であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。UV透過率は0%であった。
【0058】
【表1】
【0059】
(実施例9)
第2のポリシランを45.0gとし、ビニルモノマーとして第2の紫外線吸収性モノマーを22.5g及び紫外線非吸収性モノマーである4-ヒドロキシブチルアクリレートを7.5g用いて樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0060】
得られたレジストポリマーのMwは4300であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。UV透過率は0%であった。
【0061】
(実施例10)
第2のポリシランを45.0gとし、ビニルモノマーとして第2の紫外線吸収性モノマーを22.5g及び紫外線非吸収性モノマーである2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートを7.5g用いて樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0062】
得られたレジストポリマーのMwは4400であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。UV透過率は0%であった。
【0063】
(実施例11)
第2のポリシランを45.0gとし、ビニルモノマーとして第2の紫外線吸収性モノマーを22.5g及び紫外線非吸収性モノマーであるジメチルアクリルアミドを7.5g用いて樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0064】
得られたレジストポリマーのMwは4400であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。UV透過率は0%であった。
【0065】
【表2】
【0066】
(実施例12)
実施例2において調製した樹脂溶液を固形分が25%になるようにトルエンで希釈して調製したレジスト剤を用いて塗布面質、レーザ加工性及びレジスト性を評価した。なお、レジスト膜の膜厚は5μmとした。
【0067】
得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。
【0068】
(実施例13)
実施例2において調製した樹脂溶液を固形分が14%になるようにトルエンで希釈して調製したレジスト剤を用いて塗布面質、レーザ加工性及びレジスト性を評価した。なお、レジスト膜の膜厚は2μmとした。
【0069】
得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はBであった。
【0070】
(実施例14)
実施例2において調製した樹脂溶液を希釈せずにレジスト剤として塗布面質、レーザ加工性及びレジスト性を評価した。なお、スピンコータを回転数は200rpmとし、レジスト膜の膜厚を30μmとした。
【0071】
得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。
【0072】
(実施例15)
実施例2において調製した樹脂溶液を希釈せずにレジスト剤として塗布面質、レーザ加工性及びレジスト性を評価した。なお、スピンコータを回転数は400rpmとして塗布を2回繰り返し、レジスト膜の膜厚を50μmとした。
【0073】
得られたレジスト膜の塗布面質はB、レーザ加工性はA、レジスト性はAであった。
【0074】
【表3】
【0075】
(比較例1)
温度計、還流冷却器、及び窒素ガス供給ガラス管を取付けた、200mlの3つ口丸底フラスコに、蒸留水75.0gと、ポリビニルアルコール(PVA-205、クラレ製)75.0gとを投入し、60℃にて攪拌して樹脂溶液を調製した。得られた樹脂溶液について実施例1と同様の評価を行った。
【0076】
得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はCであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はC、レジスト性はAであった。UV透過率は90%であった。
【0077】
(比較例2)
温度計、還流冷却器、及び窒素ガス供給ガラス管を取付けた、200mlの3つ口丸底フラスコに、トルエン75.0gと第2のポリシラン75.0gとを投入し、60℃にて攪拌して樹脂溶液を調製した。得られた樹脂溶液について実施例1と同様の評価を行った。
【0078】
得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はC、レジスト性はBであった。UV透過率は63%であった。
【0079】
(比較例3)
温度計、還流冷却器、及び窒素ガス供給ガラス管を取付けた、200mlの3つ口丸底フラスコに、トルエン75gと、第2のポリシラン52.5gと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、Tinuvin PS、BASFジャパン製)22.5gとを投入し、60℃にて攪拌して樹脂溶液を調製した。得られた樹脂溶液について実施例1と同様の評価を行った。
【0080】
得られた樹脂溶液は沈殿物が析出し液経時安定性はCであり、レジスト膜の塗布面質もCであったため、他の評価は行わなかった。
【0081】
【表4】
【0082】
(比較例4)
第2のポリシランを52.5gとし、ビニルモノマーとして4-ヒドロキシブチルアクリレートを22.5g用いて樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0083】
得られたレジストポリマーのMwは4300であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はC、レジスト性はAであった。UV透過率は70%であった。
【0084】
(比較例5)
第2のポリシランを52.5gとし、ビニルモノマーとして2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートを22.5g用いて樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0085】
得られたレジストポリマーのMwは4300であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はC、レジスト性はAであった。UV透過率は70%であった。
【0086】
(比較例6)
第2のポリシランを52.5gとし、ビニルモノマーとしてジメチルアクリルアミドを22.5g用いて樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0087】
得られたレジストポリマーのMwは4300であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はB、レーザ加工性はC、レジスト性はAであった。UV透過率は68%であった。
【0088】
(比較例7)
第2のポリシランを52.5gとし、イソボルニルアクリレートを22.5g用いて樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0089】
得られたレジストポリマーのMwは4300であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はC、レジスト性はAであった。UV透過率は68%であった。
【0090】
(比較例8)
第2のポリシランを52.5gとし、ヒドロキシエチルアクリルアミドを22.5g用いて樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0091】
得られたレジストポリマーのMwは4300であった。得られた樹脂溶液は沈殿物が析出し液経時安定性はCであり、レジスト膜の塗布面質もCであったため、他の評価は行わなかった。
【0092】
(比較例9)
第2のポリシランを52.5gとし、n-ブチルアクリレートを22.5g用いて樹脂溶液を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0093】
得られたレジストポリマーのMwは4300であった。得られた樹脂溶液の液経時安定性はA、耐熱性はAであった。得られたレジスト膜の塗布面質はA、レーザ加工性はC、レジスト性はAであった。UV透過率は72%であった。
【0094】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示の樹脂組成物は、耐熱性、紫外線吸収性及び耐プラズマ性に優れ、紫外線レーザ加工レジスト等として有用である。