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  • -トナー及びトナーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】トナー及びトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20240422BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240422BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G03G9/087
G03G9/087 325
G03G9/087 331
G03G9/08 381
G03G9/097 375
G03G9/097 365
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020096783
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021189367
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】満生 健太
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隆穂
(72)【発明者】
【氏名】村山 隆二
(72)【発明者】
【氏名】松尾 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】小野▲崎▼ 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】椎野 萌
(72)【発明者】
【氏名】皆川 浩範
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112688(JP,A)
【文献】特開2017-090717(JP,A)
【文献】特開2017-045048(JP,A)
【文献】特開2020-060703(JP,A)
【文献】特開2019-219640(JP,A)
【文献】特開2020-038367(JP,A)
【文献】特開2019-008145(JP,A)
【文献】特開2011-070061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子化合物A及び非晶性樹脂Bを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該高分子化合物Aが、ポリオレフィンとビニル系ポリマーとのグラフト共重合体であり、
該非晶性樹脂Bは、酸価を有し、
該高分子化合物Aの該ビニル系ポリマーが、ウレア基及びウレタン基からなる群から選択される少なくとも一を有することを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記高分子化合物Aの前記ビニル系ポリマーは、飽和脂環式炭化水素基を有するモノマーユニットを有する請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記酸価を有する非晶性樹脂Bが、ポリエステル樹脂である請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記非晶性樹脂Bの酸価が、5.0mgKOH/g以上30.0mgKOH/g以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記トナー粒子が、酸価を有する離型剤を有する請求項1~4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記離型剤の酸価が、5.0mgKOH/g以上10.0mgKOH/g以下である請求項5に記載のトナー。
【請求項7】
前記高分子化合物A中の前記ウレア基及び前記ウレタン基の合計の含有割合が、1.0質量%以上20.0質量%以下である請求項1~6のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
前記高分子化合物Aの含有量が、前記非晶性樹脂B 100質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下である請求項1~7のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項9】
ポリオレフィンとビニル系ポリマーとのグラフト共重合体である高分子化合物A及び酸価を有する非晶性樹脂Bを含む樹脂組成物を溶融混練し混練物を得る工程、
該混練物を冷却し冷却物を得る工程、
該冷却物を粉砕して樹脂粒子を得る工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該高分子化合物Aの該ビニル系ポリマーが、ウレア基及びウレタン基からなる群から選択される少なくとも一を有する
ことを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項10】
前記樹脂粒子に第一の無機微粒子を外添し、熱処理前トナー粒子を得る工程、
該熱処理前トナー粒子を熱風で処理し、熱処理トナー粒子を得る工程、及び
該熱処理トナー粒子に第二の無機微粒子を外添する工程、を有し、
該熱風の温度が110℃以上である請求項9に記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナー及びトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及するに従って、更なる高速化、高画質化、省エネルギー化、高寿命化等が要求されている。また印刷市場では同時に、幅広いメディア(紙種)対応も求められている。
例えば、厚紙から薄紙へ紙種が変更されても、紙種に合わせたプロセススピードの変更や、定着器の加熱設定温度変更を行わず、連続印刷を可能とするメディア等速性が求められている。メディア等速性に対応していくために、トナーには低温から高温まで幅広い定着温度範囲で適正に定着を完了することが求められるようになっている。
【0003】
幅広い定着可能温度で定着を完了させるために、トナーにワックスを含有させトナーに離型性を持たせて耐ホットオフセット性を良化させる方法がある。この場合、トナー中のワックスの分散状態は、トナーの性質に重大な影響を及ぼすため、微細かつ均一であることが望まれる。
例えば、特許文献1では、トナー中のワックスの分散状態を制御するために、トナー中にワックス分散剤を含有させる技術が提案されている。
さらに、特許文献2では、シャープメルト性を有する結晶性樹脂をトナーへ添加し、低温定着性能を向上させたトナーも種々提案されている。
一方、特許文献3では、コアシェル構造などを用いてコアに結晶性樹脂と非晶性樹脂を用い、シェルにガラス転移点の高い樹脂を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-013548号公報
【文献】特開2011-123352号公報
【文献】特開2018-180188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2のトナーでは、結晶性樹脂が結着樹脂と過度に相溶していると帯電安定性が低下し、濃度安定性が低下してしまうことがわかった。
また、特許文献3のような手法で、保存性、帯電安定性及び低温定着性を良化させることができるが、わずかなシェルであっても低温定着性を阻害してしまうため、さらなる改良が必要である。
本開示は、低温定着性、耐ホットオフセット性及び帯電安定性に優れたトナー及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、高分子化合物A及び非晶性樹脂Bを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該高分子化合物Aが、ポリオレフィンとビニル系ポリマーとのグラフト共重合体であり、
該非晶性樹脂Bは、酸価を有し、
該高分子化合物Aの該ビニル系ポリマーが、ウレア基及びウレタン基からなる群から選
択される少なくとも一を有するトナーに関する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、低温定着性、耐ホットオフセット性及び帯電安定性に優れたトナー及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】熱球形化処理装置の例
【発明を実施するための形態】
【0009】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。例えば、ポリマー中のビニル系モノマーが重合した主鎖中の、炭素-炭素結合1区間を1ユニットとする。ビニル系モノマーとは下記式(Z)で示すことができる。
【化1】

[式(Z)中、RZ1は、水素原子、又はアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基)を表し、RZ2は、任意の置換基を表す。]
【0010】
本開示は、高分子化合物A及び非晶性樹脂Bを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該高分子化合物Aが、ポリオレフィンとビニル系ポリマーとのグラフト共重合体であり、
該非晶性樹脂Bは、酸価を有し、
該高分子化合物Aの該ビニル系ポリマーが、ウレア基及びウレタン基からなる群から選択される少なくとも一を有するトナーに関する。
【0011】
このような構成を有するトナーを用いることによる作用効果について、本発明者らは以下のように考える。
ウレア基及びウレタン基からなる群から選択される少なくとも一を有するビニル系ポリマーは水素結合を形成しやすい。高分子化合物Aの分子内及び/又は分子間での相互作用、あるいは高分子化合物Aと酸価を有する非晶性樹脂Bとの相互作用が発生し、高分子の絡まりあいにより、耐ホットオフセット性が向上する。
さらに紙との定着時には高分子化合物Aがセルロース分子と相互作用することにより、紙との密着性が向上し、低温定着性が良化する。
また、ポリオレフィンは高電気抵抗であるため、高湿環境下における水分吸着を抑制し、トナーの帯電量の低下が抑制される。
帯電安定性の観点から、高分子化合物Aのビニル系ポリマーは、飽和脂環式炭化水素基を有するモノマーユニットを有することが好ましい。これにより水分吸着をさらに抑制することができる。
【0012】
帯電安定性、低温定着性の観点から、酸価を有する非晶性樹脂Bはポリエステル樹脂であることが好ましい。
耐ホットオフセット性の観点から、トナー粒子は、エステルワックスやオレフィン系ワ
ックスなどの離型剤を有することが好ましい。ワックスのオレフィン部位と高分子化合物Aのポリオレフィン部位の親和性が高いため、高分子化合物Aがワックス分散剤としての機能を持ち、それにより耐ホットオフセット性が向上する。
特にエステルワックスなどの場合、ワックスが酸価を持つため、その部位と高分子化合物Aのウレア基及び/又はウレタン基が水素結合を形成して分散性が向上し、耐ホットオフセット性が向上する。
離型剤の酸価は5.0mgKOH/g以上10.0mgKOH/g以下であることが好ましい。上記範囲内にあることで、離型剤としての性能を維持しつつ、高分子化合物Aとの水素結合を形成しやすくなる。
【0013】
また、高分子化合物A中のウレア基及びウレタン基の合計の含有割合が、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
当該含有割合が1.0質量%以上であると、水素結合が十分に存在し、紙との親和性が向上する。一方、当該含有割合が20.0質量%以下であると、適度に分子間架橋が進み粘度が良好になり、低温定着性が向上する。
ここで、ウレア基は、下記式(1)で示される構造を指し、ウレタン基は下記式(2)で示される構造を指す。
【化2】
【0014】
また、トナーの製造方法は、
ポリオレフィンとビニル系ポリマーとのグラフト共重合体である高分子化合物A及び酸価を有する非晶性樹脂Bを含む樹脂組成物を溶融混練し混練物を得る工程、
該混練物を冷却し冷却物を得る工程、
該冷却物を粉砕して樹脂粒子を得る工程、を有し、
該高分子化合物Aの該ビニル系ポリマーが、ウレア基及びウレタン基からなる群から選択される少なくとも一を有する。
また、トナーの製造方法は、
該樹脂粒子に第一の無機微粒子を外添し、熱処理前トナー粒子を得る工程、
該熱処理前トナー粒子を熱風で処理し、熱処理トナー粒子を得る工程、及び
該熱処理トナー粒子に第二の無機微粒子を外添しトナーを得る工程、を含み、
該熱風の温度が110℃以上であることが好ましい。
【0015】
溶融混練法により、材料を均一に分散させることができ、低温定着性、耐ホットオフセット性及び帯電安定性が向上する。
さらに熱処理を行うことで、必要に応じて添加された離型剤がトナー粒子表面に移行し、それに伴い、分散剤としても働く高分子化合物Aがトナー粒子表面に移行するため好ましい。これによりその機能を十分に発揮して、低温定着性、耐ホットオフセット性、帯電安定性が向上する。該熱風の温度が110℃以上であることが離型剤を十分に移行させるという観点で好ましい。
高分子化合物Aは、トナー中に1種又は複数種含有されていてもよい。
【0016】
また、高分子化合物Aの含有量は非晶性樹脂B 100質量部に対して1.0質量部以
上20.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましい。含有量が上記範囲である場合、好適な量の高分子化合物Aがトナー粒子表面に移行するため、低温定着性、耐ホットオフセット性及び帯電安定性が良好となる。
【0017】
以下、トナーの構成について詳細に説明する。
(高分子化合物A)
高分子化合物Aは、ポリオレフィンとビニル系ポリマーとのグラフト共重合体であり、ビニル系ポリマーがウレア基及びウレタン基からなる群から選択される少なくとも一を有する。高分子化合物Aは、好ましくはポリオレフィンにビニル系ポリマーがグラフトしたグラフト共重合体である。
グラフト共重合体に用いるポリオレフィンは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される最大級熱ピークのピーク温度が60℃以上110℃以下であることが好ましい。
また、ポリオレフィンは、重量平均分子量(Mw)が900以上50000以下であることが好ましい。
ポリオレフィンは二重結合を一つ有する不飽和炭化水素の重合体又は共重合体であれば特に限定されず、様々なポリオレフィンを用いることができる。特にポリエチレン系、ポリプロピレン系が好ましく用いられる。また、グラフト共重合体の製造時の反応性の観点から、ポリプロピレンのように枝分かれ構造を持つことがより好ましい。
【0018】
ポリオレフィンの含有割合は、高分子化合物A中の、5.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以上12.0質量%以下であることがより好ましい。
ビニル系ポリマーの含有割合は、高分子化合物A中の、80.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましく、88.0質量%以上92.0質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
ビニル系ポリマーは、ウレア基を有することが好ましい。ビニル系ポリマーが下記式(X)で表されるウレア基を有するモノマーユニットを有することがより好ましい。
式中、Rは、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基を表す。Rは、好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくはエチル基である。
【0020】
【化3】
【0021】
ビニル系ポリマーは、ウレア基を有するモノマーユニット及びウレタン基を有するモノマーユニット以外のモノマーユニットを含有してもよい。例えば以下のモノマーに由来するモノマーユニットが挙げられる。
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロルスチレン、3,4-ジクロルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレンのようなスチレン及びその誘導体などのスチレン系単位。
メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアミノ基含有α-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミドのようなアクリル酸又はメタクリル酸誘導体などのN原子を含むビニル系単位。
【0022】
マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸のような不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物のような不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルのような不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸のような不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸のようなα,β-不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物のようなα,β-不飽和酸無水物、前記α,β-不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物、及びこれらのモノエステルなどのカルボキシ基を含むビニル系単位。
2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4-(1-ヒドロキシ-1-メチルブチル)スチレン、4-(1-ヒドロキシ-1-メチルヘキシル)スチレンなどのヒドロキシ基を含むビニル系単位。
【0023】
アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸-2-クロルエチル、アクリル酸フェニルのようなアクリル酸エステル。
メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなメタクリル酸エステル。
【0024】
ビニル系ポリマーは、好ましくは飽和脂環式炭化水素基を有するモノマーユニットを有する。ビニル系ポリマーは、より好ましくは(メタ)アクリル酸シクロヘキシル由来のモノマーユニットを有する。
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル由来のモノマーユニットは、下記式(3)で表される。式(3)中、Rは、水素原子又はメチル基である。
高分子化合物A中の、飽和脂環式炭化水素基を有するモノマーユニット(好ましくは(メタ)アクリル酸シクロヘキシル由来のモノマーユニット)の含有割合は、好ましくは0.5質量%~8質量%であり、より好ましくは1質量%~5質量%である。
【0025】
【化4】
【0026】
ビニル系ポリマーは、下記式(4)で表されるスチレン由来のモノマーユニット、及び下記式(5)で表される(メタ)アクリル酸エステル由来のモノマーユニット、を有することが好ましい。
式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、炭素数1~8(好ましくは2~6)のアルキル基である。
高分子化合物A中の、式(4)で表されるモノマーユニットの含有割合は、好ましくは50質量%~85質量%であり、より好ましくは60質量%~75質量%である。
高分子化合物A中の、式(5)で表されるモノマーユニットの含有割合は、好ましくは1質量%~25質量%であり、より好ましくは2質量%~20質量%である。
【0027】
【化5】
【0028】
これらのモノマーに由来するモノマーユニットは、高分子化合物Aを製造する共重合反応の際に、上記モノマーを添加することや、高分子化合物Aを高分子反応により変性させることで導入することができる。各モノマーユニットの含有量は一般的な分析手法を用いて測定することができる。例えば、核磁気共鳴法(H-NMR)や熱分解ガスクロマトグラフィー法などの手法が適用できる。
【0029】
高分子化合物Aの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。製造の容易性から、例えば以下の方法が好ましい。アリルアミンのようなビニル基とアミノ基とを有するモノマーを用いたアミノ基を含有するビニル系ポリマー及びポリオレフィンのグラフト共重合体を形成させる。そして、該グラフト共重合体と、イソシアネート基を含有する化合物とを反応させてウレア化する。
【0030】
高分子化合物Aのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分
布において、重量平均分子量(Mw)が5000以上70000以下であることが好ましく、7000以上50000以下であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が上記範囲である場合、トナー粒子表面の機械的強度が増し、耐久使用時の外添剤の埋め込みが抑制されるため、帯電安定性の効果が得られやすく、低温定着性、耐ホットオフセット性ともに好適な範囲となる。
高分子化合物Aの軟化点は、好ましくは100℃~160℃であり、より好ましくは120℃~150℃である。
【0031】
(非晶性樹脂B)
非晶性樹脂Bは酸価を有していれば特に限定されず、公知の樹脂を用いることが可能である。
例えば、ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂などが使用できる。
【0032】
これらの中で、低温定着性の観点で、非晶性樹脂Bはポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。主成分とは、その含有量が50質量%以上であることを示す。非晶性樹脂Bはポリエステル樹脂であることがより好ましい。
【0033】
ポリエステル樹脂に用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価又は3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価又は3価以上のカルボン酸)、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとが用いられる。
ここで分岐ポリマーを作製するためには、非晶性樹脂の分子内において部分架橋することが有効である。そのためには、3価以上の多官能化合物を使用することが好ましい。従って、ポリエステル樹脂の原料モノマーは、3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステル、及び/又は3価以上のアルコールを含むことが好ましい。
【0034】
ポリエステル樹脂に用いられる多価アルコールモノマーとしては、以下のモノマーを使用することができる。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表されるビスフェノール及びその誘導体;式(B)で示されるジオール類が挙げられる。
【0035】
【化6】
【0036】
(式(A)中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
【0037】
【化7】
【0038】
(式(B)中、R’は-CHCH-、-CHCH(CH)-又は-CHC(CH-を示し、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
これらのうち、好ましくはグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが用いられる。これらの2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独で又は複数を併用して用いることができる。
【0039】
ポリエステル樹脂に用いられる多価カルボン酸モノマーとしては、以下のモノマーを使用することができる。
2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物及びこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。
これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n-ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
【0040】
3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。
これらのうち、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。
これらの2価のカルボン酸等及び3価以上のカルボン酸は、単独で又は複数を併用して用いることができる。
【0041】
ポリエステル樹脂の製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述のアルコールモノマー及びカルボン酸モノマーを同時に仕込み、エステル化反応又はエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、ポリエステル樹脂を製造する。
重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃以下の範囲が好ましい。ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の重合触媒を用いることができる。スズ系触媒を使用して重合されたポリエステル樹脂がより好ましい。
【0042】
非晶性樹脂Bのピーク分子量は4000以上13000以下であることが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
非晶性樹脂Bの酸価は5.0mgKOH/g以上30.0mgKOH/g以下であることが、高分子化合物Aとの水素結合形成と、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。さらに、非晶性樹脂Bの水酸基価は20.0mgKOH/g以上70.0mgKOH/g以下であることが、低温定着性と保存性の観点から好ましい。
非晶性樹脂Bを複数混ぜ合わせて使用する際には混合後の非晶性樹脂Bの酸価を用いる。
【0043】
また、非晶性樹脂Bは、低軟化点の非晶性樹脂B1と高軟化点の非晶性樹脂B2を混ぜ合わせて使用してもよい。低軟化点の非晶性樹脂B1と高軟化点の非晶性樹脂B2の含有比率(B1/B2)は、質量基準で60/40~90/10であることが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
低軟化点の非晶性樹脂B1の軟化点は、70℃以上100℃未満であることが好ましい。
高軟化点の非晶性樹脂B2の軟化点は、100℃以上160℃以下であることが好ましい。
低軟化点の非晶性樹脂B1のピーク分子量は4000以上7000以下であることが、低温定着性の観点から好ましい。
高軟化点の非晶性樹脂B2のピーク分子量は7000より大きく20000以下であることが、耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
【0044】
(結晶性樹脂)
トナー粒子には、結晶性樹脂を用いてもよい。結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において吸熱ピークが観測される樹脂である。
結晶性樹脂は、特に限定されないが、低温定着性の観点で、ポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数2~22の脂肪族ジオールと、炭素数2~22の脂肪族ジカルボン酸とを主成分として含む単量体組成物の重縮合物であることが好ましい。
【0045】
炭素数2~22(より好ましくは炭素数6~12)の脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが好ましい。
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタジエングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコールが挙げられる。
【0046】
これらの中でも、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオールのような直鎖脂肪族、α,ω-ジオールが好ましく例示される。
上記アルコール成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数2~22の脂肪族ジオールから選ばれるアルコールである。
【0047】
上記脂肪族ジオール以外の多価アルコール単量体を用いることもできる。該多価アルコール単量体のうち2価アルコール単量体としては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等の芳香族アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
また、該多価アルコール単量体のうち3価以上の多価アルコール単量体としては、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0048】
さらに、結晶性ポリエステルの特性を損なわない程度に1価のアルコ-ルを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、例えばn-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のモノアルコールなどが挙げられる。
【0049】
一方、炭素数2~22(より好ましくは炭素数6~12)の脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
具体例としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。
上記カルボン酸成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数2~22の脂肪族ジカルボン酸から選ばれるカルボン酸である。
【0050】
上記炭素数2~22の脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いることもできる。その他の多価カルボン酸単量体のうち、2価のカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸の脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルなども含まれる。
【0051】
また、その他のカルボン酸単量体のうち、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、等の脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステル等の誘導体等も含まれる。
【0052】
さらに、結晶性ポリエステルの特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を含有していてもよい。1価のカルボン酸としては、例えば安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン
酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸等のモノカルボン酸が挙げられる。
【0053】
また、結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数10以上20以下の脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれた一種以上の脂肪族化合物が分子鎖の末端に縮合した結晶性ポリエステル樹脂であることが、低温定着性と保存性の観点から好ましい。
【0054】
一般的に、結晶性ポリエステルの再結晶化では、結晶核を起点として、結晶が成長していく。そこで、分子鎖の末端に炭素数10以上20以下の脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれた一種以上の脂肪族化合物を縮合させることで、そこが結晶核となり再結晶化を促進することができるため、保存性が良化する。
さらに、炭素数が上記の範囲であると、分子鎖の末端に縮合させることも容易であり、遊離モノマーとして存在することはなくなるため、保存性の観点から好ましい。また、炭素数が上記の範囲であると、結晶性ポリエステルと非晶性樹脂の相溶性を損なうことがないため、低温定着性の観点から好ましい。
【0055】
さらに、炭素数10以上20以下の脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれた一種以上の脂肪族化合物の使用量は、結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマー中、1.0mol%以上10.0mol%以下であることが好ましく、4.0mol%以上8.0mol%以下であることがより好ましい。脂肪族化合物が上記範囲の量であると、低温定着性を阻害することなく、適量の結晶核を存在させることができるため好ましい。
【0056】
炭素数10以上20以下の脂肪族モノカルボン酸としては、カプリン酸(デカン酸)、ウンデシル酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、トリデシル酸、ミリスチル酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ノナデシル酸、アラキジン酸(イコサン酸)が挙げられる。
炭素数10以上20以下の脂肪族モノアルコールとしては、カプリルアルコール(デカノール)、ウンデカノール、ラウリルアルコール(ドデカノール)、トリデカノール、ミリスチルアルコール(テトラデカノール)、ペンタデカノール、パルミチルアルコール(ヘキサデカノール)、マルガリルアルコール(ヘプタデカノール)、ステアリルアルコール(オクタデカノール)、ノナデカノール、アラキジルアルコール(イコサノール)が挙げられる。
【0057】
低温定着性や高温高湿環境下における帯電性の観点から、結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、非晶性樹脂B 100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0058】
結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸単量体とアルコール単量体とをエステル化反応、又はエステル交換反応せしめた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることで結晶性ポリエステルを得ることができる。その後、必要に応じて、上記の脂肪族化合物を加え、エステル化反応を行うことで、所望の結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
上記エステル化又はエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いて行うことができる。
【0059】
また、上記重縮合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズ
オキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化若しくはエステル交換反応又は重縮合反応において、得られる結晶性ポリエステルの強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させたりする等の方法を用いてもよい。
【0060】
(離型剤[ワックス])
トナー粒子には離型剤としてワックスを用いてもよい。例えば以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸のような不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのような飽和アルコール類;ソルビトールのような多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸のような脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのようなアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムのような脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物。
【0061】
これらのワックスの中でも、高分子化合物Aのウレア基又はウレタン基との水素結合形成による分散性向上とそれによる耐ホットオフセット性の向上という観点で、カルナバワックスのような酸価を有するエステルワックスが好ましい。
トナー粒子は、酸価を有する離型剤を含有することが好ましく、酸価を有するエステルワックスを含有することがより好ましい。
【0062】
エステルワックスとしては、1分子中にエステル結合を1つ含有するモノエステル化合物、1分子中にエステル結合を2つ含有するジエステル化合物をはじめ、1分子中にエステル結合を4つ含有する4官能エステル化合物や、1分子中にエステル結合を6つ含有する6官能エステル化合物などの多官能エステル化合物を用いることができる。
エステルワックスは、モノエステル化合物及びジエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することが好ましい。
【0063】
モノエステル化合物の具体例としては、カルナウバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどのような脂肪酸エステル類から酸成分の一部又は全部を脱酸したもの、植物性油脂の水素添加などによって得られるもの、ヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニルなどの飽和脂肪酸モノエステル類が挙げられる。
また、ジエステル化合物の具体例としては、セバシン酸ジベヘニル、ノナンジオールジベヘネート、テレフタル酸ジベヘニル、テレフタル酸ジステアリルなどが挙げられる。
【0064】
ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニルなどの飽和脂肪酸モノエステルが好ましい。離型剤の酸価は5.0mgKOH/g以上10.0mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0065】
ワックスの含有量は、非晶性樹脂B 100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
また、示差走査熱量測定(DSC)装置で測定される昇温時の吸熱曲線において、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は60℃以上110℃以下であることが好ましい。ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲内であるとトナーの保存性と耐ホットオフセット性を両立できる。
【0066】
(着色剤)
トナー粒子は、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
【0067】
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
【0068】
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロ
ー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
着色剤の含有量は、非晶性樹脂B 100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下が好ましい。
【0069】
(荷電制御剤)
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。
ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
荷電制御剤はトナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。荷電制御剤の添加量は、非晶性樹脂B 100質量部に対し0.05質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0070】
(無機微粒子)
トナーは、必要に応じて無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子は、トナー粒子に内添してもよいし、外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。
外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム及びチタン酸ストロンチウムのような無機微粒子が好ましい。無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m/g以上400m/g以下の無機微粉体が好ましい。耐久性安定化のためには、比表面積が10m/g以上50m/g以下の無機微粉体が好ましい。流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粉体を併用してもよい。
外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下が好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーのような公知の混合機を用いることができる。
【0071】
(現像剤)
トナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、また、長期にわたり安定した画像を供給するために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることもできる。
磁性キャリアとしては、例えば、酸化鉄;未酸化の鉄粉;鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、それらの酸化物粒子;フェライトなどの磁性体;磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア);など、一般に公知のものを使用できる。
トナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、キャリア混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4質量%以上13質量%以下である。
【0072】
(製造方法)
トナー粒子を製造する方法は、特に限定されない。粉砕法などの乾式法、乳化凝集法、溶解懸濁法などの湿式法など、公知の方法が挙げられる。
【0073】
以下、粉砕法でのトナー製造手順の一例について説明する。
トナーの製造方法は、ポリオレフィンとビニル系ポリマーとのグラフト共重合体である高分子化合物A及び酸価を有する非晶性樹脂Bを含む樹脂組成物を溶融混練し混練物を得る工程、
該混練物を冷却し冷却物を得る工程、及び
該冷却物を粉砕して樹脂粒子を得る工程、
を有するトナーの製造方法であって、
該高分子化合物Aのビニル系ポリマーが、ウレア基及びウレタン基からなる群から選択される少なくとも一を有する。
トナーの製造方法は、好ましくは、該樹脂粒子に第一の無機微粒子を外添し、熱処理前トナー粒子を得る工程、
該熱処理前トナー粒子を熱風で処理し、熱処理トナー粒子を得る工程、及び
該熱処理トナー粒子に第二の無機微粒子を外添する工程、を有し、
該熱風の温度が110℃以上である。
【0074】
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、高分子化合物A、非晶性樹脂B、必要に応じて結晶性樹脂、離型剤(ワックス)、着色剤、及び荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合して樹脂組成物を得る。
混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
【0075】
次に、混合した樹脂組成物を溶融混練して、非晶性樹脂B中に材料を分散させる。混練吐出温度は、使用する樹脂、着色剤によって適宜調整可能であるが一般的には100~180℃が好ましい。その溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーなどのバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機を用いることが好ましい。
1軸又は2軸押出機としては、例えば、以下のものが挙げられる。KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工社製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)など。
さらに、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却されてもよい。
【0076】
ついで、得られた樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルなどの粉砕機で粗粉砕する。その後、さらに、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(フロイントターボ社製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕し、樹脂粒子を得る。
【0077】
その後、必要に応じて分級機や篩分機を用いてトナー粒子を分級する。分級機及び篩分機としては、例えば、以下のものが挙げられる。慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)。
ファカルティ(ホソカワミクロン社製)は、分級と同時にトナー粒子の球形化処理を行
うことができ、転写効率の向上という点で好ましい。
【0078】
その後、加熱によるトナー粒子の表面処理を行ってもよい。これにより、トナーの円形度を増加させることができる。例えば、図1で表される表面処理装置を用いて、熱風により表面処理を行うこともできる。トナー粒子は、熱処理トナー粒子であることが好ましい。
以下、図1に示す表面処理装置を用いた表面処理について説明する。
原料定量供給手段1により定量供給された混合物は、圧縮気体調整手段2により調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管3に導かれる。導入管を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる処理室6に導かれる。
【0079】
このとき、処理室6に供給された混合物は、処理室内に設けられた混合物の流れを規制するための規制手段9によって、その流れが規制される。このため処理室に供給された混合物は、処理室6内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
供給された混合物を熱処理するための熱風は、熱風供給手段7から供給され、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室6内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。
処理室6内に供給される熱風は、熱風供給手段7の出口部における温度が110℃以上(より好ましくは110℃~300℃)であることが好ましい。熱風供給手段の出口部における温度が上記の範囲内であれば、混合物を加熱しすぎることによるトナー粒子の融着や合一を防止しつつ、トナー粒子を均一に球形化処理することが可能となる。
【0080】
さらに熱処理された熱処理トナー粒子は冷風供給手段8から供給される冷風によって冷却される。冷風供給手段8から供給される冷風の温度は-20℃~30℃であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理トナー粒子を効率的に冷却することができ、混合物の均一な球形化処理を阻害することなく、熱処理トナー粒子の融着や合一を防止することができる。冷風の絶対水分量は、0.5g/m以上15.0g/m以下であることが好ましい。
次に、冷却された熱処理トナー粒子は、処理室6の下端にある回収手段10によって回収される。なお、回収手段10の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
【0081】
また、粉体粒子供給口14は、供給された混合物の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、表面処理装置の回収手段10は、旋回された粉体粒子の旋回方向を維持するように、処理室6の外周部に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。
粉体供給口から供給されるトナー粒子の旋回方向、冷風供給手段8から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段7から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室6内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、トナー粒子に強力な遠心力がかかり、トナー粒子の分散性がさらに向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃ったトナー粒子を得ることができる。
【0082】
トナー粒子の平均円形度は、好ましくは0.950以上0.980以下、より好ましくは0.960以上0.980以下である。上記範囲であると、転写性が向上し、かつクリーニング性を両立できるため好ましい。
トナー粒子はそのままトナーとして用いてもよいし、必要に応じて、トナー粒子の表面
に外添剤を添加してトナーとしてもよい。
【0083】
上記熱処理の前の熱処理前トナー粒子(樹脂粒子)に第一の無機微粒子を外添し、熱処理を行うことが好ましい。
さらに熱処理を行ったトナー粒子に第二の無機微粒子を外添し、トナーを得ることが好ましい。このように熱処理の前後で無機微粒子を外添することで、トナーの合一の抑制や無機微粒子の埋没抑制ができ、製造安定性や帯電安定性が向上する。
【0084】
第一の無機微粒子及び第二の無機微粒子は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
外添処理する方法としては、トナー粒子と公知の各種外添剤を所定量配合し、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
【0085】
次に、各物性の測定方法について記載する。
(GPCによる結晶性樹脂など樹脂の分子量測定)
まず、室温で24時間かけて、樹脂をo-ジクロロベンゼンに溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、o-ジクロロベンゼンに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置 :HLC-8121GPC/HT(東ソー社製)
カラム:TSKgel GMHHR-H HT 7.8cmI.D×30cm2連(東ソー社製)
検出器:高温用RI
温度 :135℃
溶媒 :o-ジクロロベンゼン(0.05%アイオノール添加)
流速 :1.0ml/min
試料 :0.1%の試料を0.4ml注入
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。さらに、Mark-Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算をすることによって算出する。
【0086】
(高分子化合物A、非晶性樹脂Bなど樹脂の軟化点の測定方法)
樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
【0087】
測定試料は、1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT-100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて10MPaで、60秒間圧縮成型し、直径8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT-500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
【0088】
(非晶性樹脂Bのガラス転移温度(Tg)の測定)
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、樹脂3mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いて、以下の条件で測定する。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:30℃
測定終了温度:180℃
測定範囲30℃~180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。一度180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30℃~100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
【0089】
(結晶性樹脂、及び離型剤の融点の測定)
融解ピーク温度(融点)は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30~200℃の間で、昇温速度10℃/分で測定を行う。
なお、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30~200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークのピーク温度を融点とする。なお、温度200℃まで昇温させてからの保持時間はなく、温度200℃まで到達したらすぐに30℃まで降温させる。
【0090】
(トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法)
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
【0091】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0092】
(トナーの平均円形度の測定方法)
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメ
ラで撮像され、撮像された画像は512×512画素の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1.000になり、粒子像外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
【0093】
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に該コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した該フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用した。該手順に従い調整した分散液を該フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子について計測する。
そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.98μm以上39.96μm以下とし、トナーの平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.98μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【0094】
(酸価の測定方法)
酸価とは、試料1gに含まれる遊離脂肪酸及び樹脂酸などの酸を中和するために必要な水酸化カリウムの質量[mg]である。
酸価は、JIS K 0070-1992に準じて測定した。具体的には以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとした。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置する。放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を得る。
得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1mol/Lの塩酸25mLを三角フラスコに取り、上記フェノー
ルフタレイン溶液を数滴加え、上記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した上記水酸化カリウム溶液の量から求める。上記0.1mol/Lの塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて調製されたものを用いる。
【0095】
(2)操作
(A)本試験
試料2.0gを200mLの三角フラスコに入れて精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて試料を溶解させる。次いで、指示薬として上記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、上記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を添加しない(すなわち、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)酸価の算出
得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
AV=[(B-A)×f×5.61]/S
上記式中、AVは酸価[mgKOH/g]を示し、Aは空試験の水酸化カリウム溶液の添加量[mL]を示し、Bは本試験の水酸化カリウム溶液の添加量[mL]を示し、fは水酸化カリウム溶液のファクターを示し、Sは試料の質量[g]を示す。
なお、実施例において、非晶性樹脂Bを複数混ぜ合わせて使用する際には混ぜ合わせた試料1gを用いて、その酸価を測定した。
【0096】
(無機微粒子のBET比表面積の測定)
無機微粒子のBET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行なう。具体的な測定方法は、以下の通りである。
測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、本装置に付属の専用ソフト「TriStar3000 Version4.00」を用いて行い、また装置には真空ポンプ、窒素ガス配管、ヘリウムガス配管が接続されている。窒素ガスを吸着ガスとして用い、BET多点法により算出した値を本発明における無機微粒子のBET比表面積とする。
なお、BET比表面積は以下のようにして算出する。
まず、無機微粒子に窒素ガスを吸着させ、その時の試料セル内の平衡圧力P(Pa)と無機微粒子の窒素吸着量Va(モル・g-1)を測定する。そして、試料セル内の平衡圧力P(Pa)を窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)で除した値である相対圧Prを横軸とし、窒素吸着量Va(モル・g-1)を縦軸とした吸着等温線を得る。
次いで、無機微粒子の表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量である単分子層吸着量Vm(モル・g-1)を、下記のBET式を適用して求める。
Pr/Va(1-Pr)=1/(Vm×C)+(C-1)×Pr/(Vm×C)
(ここで、CはBETパラメーターであり、測定サンプル種、吸着ガス種、吸着温度により変動する変数である。)
BET式は、X軸をPr、Y軸をPr/Va(1-Pr)とすると、傾きが(C-1)/(Vm×C)、切片が1/(Vm×C)の直線と解釈できる(この直線をBETプロットという)。
直線の傾き=(C-1)/(Vm×C)
直線の切片=1/(Vm×C)
Prの実測値とPr/Va(1-Pr)の実測値をグラフ上にプロットして最小二乗法により直線を引くと、その直線の傾きと切片の値が算出できる。これらの値を用いて該の傾きと切片の連立方程式を解くと、VmとCが算出できる。
さらに、該で算出したVmと窒素分子の分子占有断面積(0.162nm)から、下
記の式に基づいて、無機微粒子のBET比表面積S(m/g)を算出する。
S=Vm×N×0.162×10-18
(ここで、Nはアボガドロ数(モル-1)である。)
【0097】
本装置を用いた測定は、装置に付属の「TriStar3000 取扱説明書V4.0」に従うが、具体的には、以下の手順で測定する。
充分に洗浄、乾燥した専用のガラス製試料セル(ステム直径3/8インチ、容積約5ml)の風袋を精秤した。そして、ロートを使ってこの試料セルの中に約0.1gの無機微粒子を入れる。
無機微粒子を入れた該試料セルを真空ポンプと窒素ガス配管を接続した「前処理装置 バキュプレップ061(島津製作所社製)」にセットし、23℃にて真空脱気を約10時間継続する。なお、真空脱気の際には、無機微粒子が真空ポンプに吸引されないよう、バルブを調整しながら徐々に脱気する。セル内の圧力は脱気とともに徐々に下がり、最終的には約0.4Pa(約3ミリトール)となる。
真空脱気終了後、窒素ガスを徐々に注入して試料セル内を大気圧に戻し、試料セルを前処理装置から取り外す。そして、この試料セルの質量を精秤し、風袋との差から無機微粒子の正確な質量を算出する。なお、この際に、試料セル内の無機微粒子が大気中の水分等で汚染されないように、秤量中はゴム栓で試料セルに蓋をしておく。
次に、無機微粒子が入った該試料セルのステム部に専用の「等温ジャケット」を取り付ける。そして、この試料セル内に専用のフィラーロッドを挿入し、該装置の分析ポートに試料セルをセットする。なお、等温ジャケットとは、毛細管現象により液体窒素を一定レベルまで吸い上げることが可能な、内面が多孔性材料、外面が不浸透性材料で構成された筒状の部材である。
続いて、接続器具を含む試料セルのフリースペースの測定を行なう。フリースペースは、23℃においてヘリウムガスを用いて試料セルの容積を測定し、続いて液体窒素で試料セルを冷却した後の試料セルの容積を、同様にヘリウムガスを用いて測定して、これらの容積の差から換算して算出する。また、窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)は、装置に内蔵されたPoチューブを使用して、別途に自動で測定される。
次に、試料セル内の真空脱気を行った後、真空脱気を継続しながら試料セルを液体窒素で冷却する。その後、窒素ガスを試料セル内に段階的に導入して無機微粒子に窒素分子を吸着させる。この際、平衡圧力P(Pa)を随時計測することにより該吸着等温線が得られるので、この吸着等温線をBETプロットに変換する。
なお、データを収集する相対圧Prのポイントは、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30の合計6ポイントに設定する。
得られた測定データに対して最小二乗法により直線を引き、その直線の傾きと切片からVmを算出する。さらに、このVmの値を用いて、上述したように無機微粒子のBET比表面積を算出する。
【0098】
(トナーからの、高分子化合物A及び非晶性樹脂Bの単離)
以下の方法で単離した高分子化合物A及び非晶性樹脂Bを用いて、各物性を測定することもできる。
まず、トナーとTHFなどの溶媒を混合し、室温又は加熱下において攪拌することで高分子化合物A及び非晶性樹脂Bを溶解させる。
次いで、得られた溶液に含有される不溶分、例えば、外添剤、離型剤、帯電制御剤、着色剤(顔料等)等は、遠心分離、ろ過、洗浄等により取り除く。
その後、例えば分取機構を備えたGPCや高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等を用いることにより、高分子化合物A及び非晶性樹脂Bを単離することが可能である。
溶媒の除去方法としては、溶媒の蒸発によって行うことが好ましく、溶媒を蒸発させる方法としては、加熱、減圧、通風などの方法が挙げられる。
【0099】
(トナー中の高分子化合物Aにおけるウレア基及び/ウレタン基の確認並びにその含有割合の算出)
高分子化合物A中のウレア基及び/ウレタン基の含有量は、NMRを用い、以下の手法にて算出する。
前記の手法にて分離した高分子化合物Aを5mg秤量し、重THFを600μL加えて溶解後、H-NMR測定を行い、各ピークの積分値より組成比を算出する。具体的な装置条件については以下のとおりである。
(測定条件)
測定装置 JNM-ECA400 FT-NMR(JEOL)
測定核種:
溶媒:重THF
測定周波数:400MHz
パルス幅:3.125μs
周波数範囲:7500Hz
積算回数:64回
測定温度:室温
【実施例
【0100】
以下、実施例等により本発明を説明する。ただし、本発明の態様はこれらに限定されない。なお、実施例及び比較例の部数は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
【0101】
<ポリオレフィンとビニル系ポリマーユニットとのグラフト共重合体である高分子化合物A1の製造例>
・ポリプロピレン(融点75℃):10.0部
・キシレン:300.0部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に175℃の温度まで昇温した。
・スチレン:70.0部
・アクリル酸ブチル:12.0部
・アリルアミン:5.0部
・メタクリル酸シクロヘキシル:3.0部
・キシレン:250.0部
その後、上記材料を3時間かけて滴下し、さらに30分間撹拌した。次いで、60℃まで温度を下げ、イソシアン酸エチルを5.0部、キシレン50部を添加しのち、さらに2時間撹拌した。溶剤を留去して、ポリオレフィンとビニル系ポリマーユニットとのグラフト共重合体である高分子化合物Aを得た。得られた高分子化合物A1の組成、軟化点を表1に示す。
【0102】
<ポリオレフィンとビニル系ポリマーユニットとのグラフト共重合体である高分子化合物A2~A10>
ポリオレフィンとビニル系ポリマーユニットとのグラフト共重合体である高分子化合物A1の製造例において、使用するモノマーを表1のように変更した以外は同様にして反応を行い、高分子化合物A2~A10を得た。得られた高分子化合物A2~A10の組成、軟化点を表1に示す。
【0103】
<ポリオレフィンとビニル系ポリマーユニットとのグラフト共重合体である高分子化合物A11の製造例>
・ポリプロピレン(融点75℃):10.0部
・キシレン:300.0部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に175℃の温度まで昇温した。
・スチレン:70.0部
・アクリル酸ブチル:16部
・酢酸ビニル:4部
・キシレン:250.0部
その後、上記材料を3時間かけて滴下し、さらに30分間撹拌した。溶剤を留去し、トルエン150部、エタノール150部の混合溶媒中に75℃で溶解させた。続いて、水酸化ナトリウム20.5部を添加し、6時間還流した。その後、溶剤を留去し、得られた固体をエタノールで洗浄した。
得られた固体とイソシアン酸エチル4部をジメチルスルホキシド200部に溶解させ、60℃で二時間撹拌した。溶剤を留去して、ポリオレフィンとビニル系ポリマーユニットとのグラフト共重合体である高分子化合物A11を得た。得られた高分子化合物A11の組成、軟化点を表1に示す。
【0104】
<ポリオレフィンとビニル系ポリマーユニットとのグラフト共重合体である高分子化合物A12の製造例>
・ポリプロピレン(融点75℃):10.0部
・キシレン:300.0部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に175℃の温度まで昇温した。
・スチレン:70.0部
・アクリル酸ブチル:20.0部
・キシレン:250.0部
その後、上記材料を3時間かけて滴下し、さらに30分間撹拌した。溶剤を留去して、ポリオレフィンとビニル系ポリマーユニットとのグラフト共重合体である高分子化合物A12を得た。得られた高分子化合物A12の組成、軟化点を表1に示す。
【0105】
【表1】

表中、「U量」は、高分子化合物A中のウレア基及びウレタン基の合計の含有割合を示す。
【0106】
<非晶性樹脂B1の製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:72.9部(55.0mol%)
・テレフタル酸:25.4部(41.0mol%)
・コハク酸:1.7部(4.0mol%)
・チタンテトラブトキシド(エステル化触媒):0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、5時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、160まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が90℃の温度に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、非晶性樹脂B1を得た。非晶性樹脂B1のガラス転移温度Tgは54℃、酸価は6.0mgKOH/gであった。
【0107】
<非晶性樹脂B2~B5の製造例>
非晶性樹脂B1の製造例において、使用するモノマーを表2のように変更した以外は同様にして反応を行い、非晶性樹脂B2~B5を得た。得られた非晶性樹脂B2~B5の組成、物性を表2に示す。
【0108】
<非晶性樹脂B6の製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:71.4部(55.0mol%)
・テレフタル酸:22.4部(37.0mol%)
・チタンテトラブトキシド(エステル化触媒):0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、160まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸:6.2部(8.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、15時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が140℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、(第2反応工程)、非晶性樹脂B6を得た。得られた非晶性樹脂B6の組成、物性を表2に示す。
【0109】
<非晶性樹脂B7の製造例>
非晶性樹脂B6の製造例において、使用するモノマーを表2のように変更した以外は同様にして反応を行い、非晶性樹脂B7を得た。得られた非晶性樹脂B7の組成、物性を表2に示す。
【0110】
【表2】

表中、BPA-PO(2.2)は、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを示す。
【0111】
<非晶性樹脂B8の製造例>
キシレン100部、スチレン97.5部、アクリル酸2.5部を反応容器に仕込み、混合し、得られた混合液を75℃まで昇温した。窒素雰囲気下で、ラジカル重合開始剤であるtert-ブチルハイドロパーオキサイド5.0部をキシレン10.0部に溶解したものを該混合液に約30分かけて滴下した。
さらにその温度で該混合液を5時間保温してラジカル重合反応を終了させた。さらに該混合液を加熱しながら減圧し、60.0部のキシレンを脱溶剤し、反応溶液を得た。
一方、撹拌羽根を取り付けた容器に500.0部のメタノールを仕込み、撹拌した。そこへ上記反応溶液を1時間かけて滴下し、得られた沈殿物を濾過及び洗浄した後に乾燥し、非晶性樹脂B8を得た。ガラス転移温度Tgは55℃、軟化点は110℃、酸価は17.0mgKOH/gであった。
【0112】
<非晶性樹脂B9の製造例>
キシレン100部、スチレン97.5部、メタクリル酸メチル2.5部を反応容器に仕込み、混合し、得られた混合液を75℃まで昇温した。窒素雰囲気下で、ラジカル重合開始剤であるtert-ブチルハイドロパーオキサイド5.0部をキシレン10.0部に溶解したものを該混合液に約30分かけて滴下した。
さらにその温度で該混合液を5時間保温してラジカル重合反応を終了させた。さらに該混合液を加熱しながら減圧し、60.0部のキシレンを脱溶剤し、反応溶液を得た。
一方、撹拌羽根を取り付けた容器に500.0部のメタノールを仕込み、撹拌した。そこへ上記反応溶液を1時間かけて滴下し、得られた沈殿物を濾過及び洗浄した後に乾燥し、非晶性樹脂B9を得た。ガラス転移温度Tgは54℃、軟化点は108℃、酸価は0mgKOH/gであった。
【0113】
<結晶性樹脂の製造例>
・ヘキサンジオール:33.9部
・ドデカン二酸:66.1部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
・2-エチルヘキサン酸錫:0.5部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させることにより結晶性樹脂を得た。得られた結晶性樹脂は、重量平均分子量Mw10000、融解ピーク温度は71℃であった。
【0114】
<離型剤C1の製造例>
ジムロート還流器、Dean-Stark水分離器を備えた4つ口フラスコ反応装置にベンゼン170部、ベヘン酸130部、ベヘニルアルコール120部、さらにp-トルエンスルホン酸12部を加え十分撹拌し溶解後、5時間還流した後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥しベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄し精製して離型剤1を得た。離型剤C1の酸価は6.0mgKOH/gであった。
【0115】
<離型剤C2~C4の製造例>
離型剤C1の製造例において、使用するモノマーの数量を表3のように変更した以外は同様にして反応を行い、離型剤C2~C4を得た。得られた離型剤C2~C4の組成、物性を表3に示す。
【0116】
【表3】
【0117】
<トナーの製造例1>
・高分子化合物A1 5.0部
・非晶性樹脂B1 70.0部
・非晶性樹脂B6 30.0部
・結晶性樹脂 5.0部
・離型剤C1 4.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5.0部
・3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.5部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業株式会社製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、温度130℃に設定した二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて吐出温度140℃にて混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、フロイントターボ(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティF-300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子1を得た。運転条件は、分級ローター回転数を130s-1、分散ローター回転数を120s-1とした。
【0118】
得られたトナー粒子1: 100部に、疎水性シリカ(BET比表面積:30m/g)を4.0部添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で回転数30s-1、回転時間5min.で混合した。
その後、図1で示す熱処理装置によって熱処理を行い、熱処理トナー粒子1を得た。運転条件は、フィード量を5kg/hr、熱風温度を150℃、熱風流量を6m/min.、冷風温度を-5℃、冷風流量を4m/min.、ブロワー風量を20m/min.、インジェクションエア流量を1m/min.とした。
100部の熱処理トナー粒子1に、ヘキサメチルジシラザン4質量%で表面処理した疎水性シリカ微粒子1.0部(BET:25m/g)、疎水性シリカ(BET比表面積:200m/g)1.0部、及び、イソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET比表面積:80m/g)1.0部を、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で回転数30s-1、回転時間5min.で混合して、トナ
ー1を得た。トナー1の重量平均粒径(D4)は6.5μm、トナーの平均円形度は0.97であった。
【0119】
<トナー2~27の製造例>
トナー1の製造例において、高分子化合物A、非晶性樹脂B及び離型剤Cの種類と部数、並びに熱処理における熱風温度、熱処理の有無を表4に記載したように変更したこと以外は同様にして、トナー2~27を得た。
なお、トナー17~トナー27において用いた離型剤C5はフィッシャートロプシュワックスであり、最大吸熱ピークのピーク温度が78℃、酸価は0mgKOH/gであった。
【0120】
【表4】

表中、「U量」は、高分子化合物A中のウレア基及びウレタン基の合計の含有割合を示す。酸価の単位は、mgKOH/gである。
【0121】
<磁性コア粒子1の製造例>
・工程1(秤量・混合工程):
Fe:62.7部
MnCO:29.5部
Mg(OH):6.8部
SrCO:1.0部
上記材料を上記組成比となるように秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合した。
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した。その後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)(MgO)(SrO)(Fe2O3)
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393である。
【0122】
・工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、直径1/8インチのジルコニアビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕した。そのスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(大川原化工機社)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
【0123】
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で粒子を取り出した。
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)が37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0124】
<被覆樹脂1の調整>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー:26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー:0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー:8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン:31.3質量%
メチルエチルケトン:31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル:2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、メチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした。その後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを添加して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。
次いで、30部の被覆樹脂1を、トルエン40部及びメチルエチルケトン30部に溶解させて、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
【0125】
<被覆樹脂溶液1の調製>
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%):33.3質量%
トルエン:66.4質量%
カーボンブラック(Regal330;キャボット社製、一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m/g、DBP吸油量75ml/100g):0.3質量%
上記材料を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散した。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過し、被覆樹脂溶液1を得た。
【0126】
<磁性キャリア1の製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、磁性コア粒子1及び被覆樹脂溶液1を投入した(被覆樹脂溶液1を磁性コア粒子1の100部に対して樹脂成分として2.5部になる量)。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
【0127】
<二成分系現像剤の製造例>
トナー1~27のそれぞれと磁性キャリア1で、トナー濃度が8.0質量%になるようにV型混合機(V-10型:株式会社徳寿製作所)で0.5s-1、回転時間5minで混合し、二成分系現像剤1~27を得た。
【0128】
<評価>
上記二成分系現像剤1を用いて、下記の低温定着性評価、耐ホットオフセット性評価及び帯電保持性評価を行った。
以下の評価方法に基づいて評価し、その結果を表5に示す。
【0129】
[評価1.低温定着性評価]
キヤノン(株)製フルカラー複写機imagePress C800を、定着温度、プロセススピードを自由に設定できるように改造して、二成分系現像剤1について、定着温度領域の試験を行った。画像は単色モードで常温常湿度環境下(温度23℃、相対湿度50%以上~60%以下)において、紙上のトナー載り量が1.2mg/cmになるように調整し、印字比率25%、未定着で出力した。評価紙は、コピー用紙GF-C081(A4、坪量81.4g/m、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
その後、低温低湿度環境下(温度15℃、相対湿度10%以下)において、プロセススピードを450mm/secに設定し、定着温度を120℃から順に2.5℃ずつ上げ、オフセットが生じない下限温度を定着可能温度とした。定着可能温度に基づき下記基準で評価した。
(定着可能温度の評価基準)
A:150℃未満
B:150℃以上155℃未満
C:155℃以上160℃未満
D:160℃以上
評価結果を表5に示す。
【0130】
[評価2.耐ホットオフセット性]
評価1と同様の評価機を用いて、二成分系現像剤1について、常温常湿度環境下(温度23℃、相対湿度50%以上~60%以下)において、紙上のトナー載り量が0.08mg/cmになるように調整し、A4紙の端に2cm×28cmの単色画像を配置した未定着画像を出力した。評価紙は、コピー用紙CS-680(A4、坪量68.0g/m、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
次に、常温低湿環境下(温度23℃/相対湿度5%)において、プロセススピードを450mm/secに設定し、定着温度を160℃から順に5℃ずつ上げながら上記未定着画像を通紙し、カブリの値をホットオフセットの評価指標とした。
カブリは、リフレクトメータ((有)東京電色製の「REFLECTOMETER MODEL TC-6DS」)によって画出し前(定着試験前)の評価紙の平均反射率Dr(%)と定着試験後の白地部の反射率Ds(%)を測定する。そして、下記式を用いてカブリの値を算出した。得られたカブリの値が0.5より大きくなる時の温度をホットオフセット発生温度とし、下記の評価基準に従って評価した。
カブリ = Dr(%)-Ds(%)
(ホットオフセット発生温度の評価基準)
A:195℃以上
B:185℃以上195℃未満
C:175℃以上185℃未満
D:175℃未満
評価結果を表5に示す。
【0131】
[評価3:帯電保持性評価]
キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C9075PROを使用し、高温高湿環境下(30℃/80%Rh)及び常温常湿環境下(23℃/50%Rh)において、画像出力した。
出力画像は単色モードのシアンの4A横で10cm幅の縦帯画像で、紙上のシアンの反射濃度が1.35になるように調整した。評価紙は、コピー用紙GF-C081(A4、坪量81.4g/m、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
その後、現像器を取り出して150時間放置し、本体を立ち上げてから現像器を本体内に戻し、同じ現像条件で再度同じ画像の画像出力を行った。得られた出力画像の反射濃度を、X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を用いて9か所の平均値を測定し、放置前後の反射濃度の差を以下の基準により評価した。
(評価基準:放置前後の出力画像の反射濃度差)
A:反射濃度差0.06未満
B:反射濃度差0.06以上0.12未満
C:反射濃度差0.12以上0.18未満
D:反射濃度差0.18以上
【0132】
<実施例2~25、及び比較例1~2>
実施例1において、評価に用いる二成分系現像剤を表5に記載の二成分現像剤に変更する以外は同様にして、評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0133】
【表5】
【符号の説明】
【0134】
1.原料定量供給手段、2.圧縮気体流量調整手段、3.導入管、4.突起状部材、5.供給管、6.処理室、7.熱風供給手段、8(8-1,8-2,8-3).冷風供給手段、9.規制手段、10.回収手段、11.熱風供給手段出口、12.分配部材、13.旋回部材、14.粉体粒子供給口
図1