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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】光学式エンコーダ及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20240422BHJP
   G01D 5/36 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G01D5/347 110B
G01D5/36 U
G01D5/36 X
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020099491
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193354
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】名倉 千裕
(72)【発明者】
【氏名】植村 卓典
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187605(JP,A)
【文献】特開2016-8965(JP,A)
【文献】特表2004-520591(JP,A)
【文献】特開2016-102708(JP,A)
【文献】特開2004-212243(JP,A)
【文献】特開昭57-178101(JP,A)
【文献】特開2002-48602(JP,A)
【文献】実開平5-8427(JP,U)
【文献】特開2016-136131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、スケールと、前記スケールからの光を受光する受光素子と、前記受光素子からの信号を処理する処理部と、を有する光学式エンコーダにおいて、
前記スケールは、基準位置を検出するための、格子の周期方向に回折光を集光する回折格子を有し、
前記受光素子は、前記回折格子からの光を受光する受光素子アレイを有し、
前記受光素子アレイは、位相が互いに異なる信号を出力する、第1受光素子と第2受光素子と第3受光素子と第4受光素子を有し、
前記第1受光素子と前記第2受光素子が隣接し、前記第3受光素子と前記第4受光素子の間に前記第1受光素子と前記第2受光素子が配置され、
前記処理部は、前記第1受光素子からの信号と前記第3受光素子からの信号の差分である第1差分信号、及び、前記第2受光素子からの信号と前記第4光素子からの信号の差分である第2差分信号を取得し、前記第1差分信号と前記第2差分信号の差分の信号と加算の信号、に基づいて、前記基準位置を表す信号を生成
前記回折格子は、中心から離れるほど格子周期が小さくなる第1回折格子と、前記第1回折格子の周辺に形成された、前記第1回折格子とは異なる第2回折格子と、を有することを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
前記回折格子は、前記第1回折格子の周辺に形成された反射部を有することを特徴とする請求項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項3】
前記反射部には回折格子が形成されていないことを特徴とする請求項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項4】
前記受光素子アレイは、前記第1受光素子の出力と足し合わされる第5受光素子を有し、
前記第1受光素子と前記第2受光素子との隣接部からの距離が、前記第3受光素子よりも遠い位置に前記第5受光素子が配置されていることを特徴とする請求項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項5】
前記回折格子は、前記第1回折格子の周辺において、前記第2回折格子が複数、所定の間隔で形成されていることを特徴とする請求項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項6】
光源と、スケールと、前記スケールからの光を受光する受光素子と、前記受光素子からの信号を処理する処理部と、を有する光学式エンコーダにおいて、
前記スケールは、基準位置を検出するための、格子の周期方向に回折光を集光する回折格子を有し、
前記受光素子は、前記回折格子からの光を受光する受光素子アレイを有し、
前記受光素子アレイは、位相が互いに異なる信号を出力する、第1受光素子と第2受光素子と第3受光素子と第4受光素子を有し、
前記第1受光素子と前記第2受光素子が隣接し、前記第3受光素子と前記第4受光素子の間に前記第1受光素子と前記第2受光素子が配置され、
前記処理部は、前記第1受光素子からの信号と前記第3受光素子からの信号の差分である第1差分信号、及び、前記第2受光素子からの信号と前記第4受光素子からの信号の差分である第2差分信号を取得し、前記第1差分信号と前記第2差分信号の差分の信号と加算の信号、に基づいて、前記基準位置を表す信号を生成し、
前記回折格子は、中心から離れるほど格子周期が小さくなる第1回折格子を有し、
前記光源から前記スケールまでの距離をZ1、前記スケールから前記受光素子アレイの面までの距離をZ2、前記第1回折格子の幅をw、とし、
前記第3受光素子及び前記第4受光素子は、前記受光素子アレイの中心からの距離Xが、X<(Z1+Z2)/Z1×(w/2)を満たす位置に配置されていることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項7】
前記光源から前記スケールまでの距離をZ1、前記スケールから前記受光素子アレイの面までの距離Z2、前記光源の波長をλ、前記第2回折格子の周期をd、
前記回折格子の幅をw、とし、
前記第3受光素子及び前記第4受光素子は、前記受光素子アレイの中心からの距離Xが、X<(Z1+Z2)/Z1×(w/2+Z2×tan(arcsin(λ/d)))を満たす位置に配置されていることを特徴とする請求項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項8】
光源と、スケールと、前記スケールからの光を受光する受光素子と、前記受光素子からの信号を処理する処理部と、を有する光学式エンコーダにおいて、
前記スケールは、基準位置を検出するための、格子の周期方向に回折光を集光する回折格子を有し、
前記受光素子は、前記回折格子からの光を受光する受光素子アレイを有し、
前記受光素子アレイは、位相が互いに異なる信号を出力する、第1受光素子と第2受光素子と第3受光素子と第4受光素子を有し、
前記第1受光素子と前記第2受光素子が隣接し、前記第3受光素子と前記第4受光素子の間に前記第1受光素子と前記第2受光素子が配置され、
前記処理部は、前記第1受光素子からの信号と前記第3受光素子からの信号の差分である第1差分信号、及び、前記第2受光素子からの信号と前記第4受光素子からの信号の差分である第2差分信号を取得し、前記第1差分信号と前記第2差分信号の差分の信号と加算の信号、に基づいて、前記基準位置を表す信号を生成し、
前記光源と前記スケールの間に配置された回折格子を有し、前記光源からの発散光束が前記受光素子アレイの面より遠い側に収束することを特徴とする光学式エンコーダ
【請求項9】
前記スケールと前記受光素子アレイの間に配置された回折格子を有する請求項1乃至の何れか1項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項10】
前記第1受光素子からの信号と前記第3受光素子からの信号との位相は180度異なり、前記第2受光素子からの信号と前記第4受光素子からの信号との位相は180度異なることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項11】
互いに隣接する複数の前記第1受光素子と、互いに隣接する複数の前記第2受光素子と、互いに隣接する複数の前記第3受光素子と、互いに隣接する複数の前記第4受光素子を有することを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の光学式エンコーダ。
【請求項12】
光源と、スケールと、前記スケールからの光を受光する受光素子と、前記受光素子からの信号を処理する処理部と、を有する光学式エンコーダにおいて、
前記スケールは、基準位置を検出するための、格子の周期方向に回折光を集光する回折格子を有し、
前記受光素子は、前記回折格子からの光を受光する受光素子アレイを有し、
前記受光素子アレイは、位相が互いに異なる信号を出力する、第1受光素子と第2受光素子と第3受光素子と第4受光素子を有し、
前記第1受光素子と前記第2受光素子が隣接し、前記第3受光素子と前記第4受光素子の間に前記第1受光素子と前記第2受光素子が配置され、
前記処理部は、前記第1受光素子からの信号と前記第3受光素子からの信号の差分である第1差分信号、及び、前記第2受光素子からの信号と前記第4受光素子からの信号の差分である第2差分信号を取得し、前記第1差分信号と前記第2差分信号の差分の信号と加算の信号、に基づいて、前記基準位置を表す信号を生成し、
前記回折格子は、中心から離れるほど格子周期が小さくなる第1回折格子と、前記第1回折格子の隣に、所定の間隔をおいて形成された複数の第2回折格子と、を有し、
前記複数の第2回折格子の間は回折格子の無い領域であることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の光学式エンコーダと、
前記光学式エンコーダによる検出結果に基づいて物体の変位を制御する制御部と、を有することを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式エンコーダ及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工作機やFA装置などにおける位置検出装置として、エンコーダが用いられている。インクリメント方式のエンコーダでは、スケール上の特定位置に設けられた基準マークを利用して、原点などの基準位置を検出し、その基準位置からの相対移動量に基づいてストローク内の位置を検出する。
【0003】
特許文献1には、スケール上の基準位置を検出するエンコーダが開示されている。当該エンコーダでは、回折レンズ構造を用い、分割フォトダイオードで差動信号を得ることで、ノイズに強く、再現性の高いエッジ検出を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-304574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のエンコーダでは、回折レンズ構造によって集光するスポット位置に光量が集中することで、その周辺は逆に光量が低下する。スポット位置付近の光強度分布から基準位置を検出する場合、周辺の光量低下により検出精度が低下する問題がある。
【0006】
そこで本発明は、高精度に基準位置を検出する光学式エンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の一側面としての光学式エンコーダは、光源と、スケールと
、前記スケールからの光を受光する受光素子と、前記受光素子からの信号を処理する処理
部と、を有する光学式エンコーダにおいて、前記スケールは、基準位置を検出するための
、格子の周期方向に回折光を集光する回折格子を有し、前記受光素子は、前記回折格子か
らの光を受光する受光素子アレイを有し、前記受光素子アレイは、位相が互いに異なる信
号を出力する、第1受光素子と第2受光素子と第3受光素子と第4受光素子を有し、前記
第1受光素子と前記第2受光素子が隣接し、前記第3受光素子と前記第4受光素子の間に
前記第1受光素子と前記第2受光素子が配置され、前記処理部は、前記第1受光素子から
の信号と前記第3受光素子からの信号の差分である第1差分信号、及び、前記第2受光素
子からの信号と前記第4光素子からの信号の差分である第2差分信号を取得し、前記第1
差分信号と前記第2差分信号の差分の信号と加算の信号、に基づいて、前記基準位置を表す信号を生成前記回折格子は、中心から離れるほど格子周期が小さくなる第1回折格子と、前記第1回折格子の周辺に形成された、前記第1回折格子とは異なる第2回折格子と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高精度に基準位置を検出する光学式エンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態における位置検出装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態におけるスケールの平面図である。
図3】第1施形態におけるセンサユニットの平面図である。
図4】第1実施形態における光路の展開図である。
図5】第1実施形態における受光素子アレイ12aの平面図である。
図6】第1実施形態における受光素子アレイ12bの平面図である。
図7】第1実施形態における信号処理部と受光ICを含むブロック図である。
図8】第1実施形態における基準マーク近傍の信号波形図である。
図9】比較例における基準マーク近傍の信号波形図である。
図10】第2実施形態における位置検出装置の概略構成図である。
図11】第2実施形態における光路の展開図である。
図12】第3実施形態における位置検出装置の概略構成図である。
図13】第3実施形態におけるスケールの平面図である。
図14】第3実施形態におけるセンサユニットの平面図である。
図15】第3実施形態における受光素子アレイ12aの平面図である。
図16】第3実施形態における受光素子アレイ12bの平面図である。
図17】第3実施形態における基準マーク近傍の信号波形図である。
図18】第4実施形態におけるスケールの平面図である。
図19】第4実施形態における基準マーク近傍の信号波形図である。
図20】第5実施形態における露光装置の構成図である。
図21】第6実施形態におけるレーザー加工装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における光学式位置検出装置(光学式エンコーダ)100の概略構成図である。位置検出装置100は、可動部(被測定物)に取り付けられるスケール20、固定部に取り付けられる検出器としてのセンサユニット10(検出器)、および、信号処理回路101(信号処理部)を有する。本実施形態では、スケール20がX方向に直線移動するリニアエンコーダを例に説明する。なお、固定部と可動部の関係は逆でもよく、センサユニット10を可動部に取り付け、スケール20を固定部に取り付けることができる。すなわち、センサユニット10とスケール20とが相対的に移動可能であればよい。
【0012】
信号処理回路101は、インクリメント処理部102、基準位置検出処理部103を有し、センサユニット10から出力される信号を処理する。インクリメント処理部102は、センサユニット10から得られたエンコーダ信号(位置検出信号)の内挿処理、累積処理を行う。基準位置検出処理部103は、スケール20上における基準位置の検出処理を行う。また信号処理回路101は、後述のように、基準マーク22を介して得られた光強度分布(エネルギー分布)を利用して、スケール20とセンサユニット10との間の相対的な基準位置を取得する。
【0013】
センサユニット10は、例えばLED(発光素子)を有する光源11と、受光素子アレイ12aを有する受光IC13aと、受光素子アレイ12bを有する受光IC13bと、が同一パッケージ内に実装された受発光一体型のセンサユニットである。スケール20は、石英基板上に加工された段差部がスケールトラック21a、21bとしてパターニングされている。段差部は、エッチングによって光源波長の1/4程度の深さで形成され、表面には反射膜としてのアルミ膜と誘電体膜が積層されている。
【0014】
センサユニット10内の光源11からスケールトラック21aに向かう光路中には、X方向に交互に配列された透過部と遮光部とにより構成された透過型回折格子としての光源格子14が設けられている。スケールトラック21aから受光素子アレイ12aに向かう光路中には、インクリメント検出格子15が設けられている。インクリメント検出格子15は、X方向に交互に配列された透過部と遮光部とにより構成された透過型回折格子である。
【0015】
センサユニット10内の光源11から、スケールトラック21bに向かう光束は、スケールトラック21bで反射され、受光素子アレイ12bによって受光される。
【0016】
光源格子14、インクリメント検出格子15は、それぞれ、カバーガラス16の一方の面上に透過部となるクロム膜を形成することにより設けられている。カバーガラス16は、光源11および受光IC13a、13bを封止する透光性樹脂17に貼り合わされており、光源11および受光IC13a、13bと一体化されて固定されている。
【0017】
次に、図2を参照して、スケール20におけるスケールトラック21a、21bの構成について説明する。図2は、スケール20(スケールトラック21a、21b)の一部を拡大した平面図である。図2において、ドットで塗られた部分は段差(凹凸)パターンの凹部を示す。スケールトラック21aは、移動方向(X方向)において、周期すなわちピッチ4μmごとに、周期方向2μm幅の凹部が配置されたパターン列からなる。また、スケールトラック21aと並行して配置されているスケールトラック21bには、スケール20上の特定の位置(基準位置)において、凹部がX方向(周期方向)において不等間隔で配置された基準マーク22(基準格子、第1回折格子)が形成されている。凹部同士の間隔は基準マーク22の中心から離れるに従って小さくなっており、凹部の幅は中心から離れるに従って小さくなっている。そのため、光源11からの発散光束が、格子の周期方向において、回折によって所定の距離で線状に収束(集光)する回折レンズ構造となっている。基準マーク22は、基準位置、例えば原点を検出するための回折格子である。なお、スケールトラック21bの基準マーク22以外の領域には、一様な反射膜を用いて反射部23が形成されている。
【0018】
次に、図3を参照して、センサユニット10の構成について説明する。図3は、センサユニット10の平面図であり、センサユニット10をスケール20側から見た図を示している。光源格子14の格子パターン14aのピッチ(パターン周期)は、4μmである。インクリメント検出格子15には、X方向において所定のピッチ(=4.069952μm)を有する格子パターン15が設けられている。
【0019】
次に、図4を参照して、位置検出装置100における光路について説明する。図4は、位置検出装置100における光路の展開図であり、反射を透過のように展開した光路を示している。光源11から基準マーク22までの実効光路長としての距離L1は、1mm±0.3mmの範囲に設定される。実効光路長とは、物理長を屈折率で除した値(またはその近似値)である。基準マーク22から受光素子アレイ12bまでの実効光路長としての距離L2は、L2=L1に設定される。
【0020】
基準マーク22には、基準マーク22の中心から数えてn番目の境界位置が、以下の式(1)で表されるXnの位置に形成されている。
【0021】
【数1】
ここで、fは回折レンズの焦点距離、λは光源11の中心波長である。
【0022】
本実施形態では、f=0.5mm、λ=650nmである。また、基準マーク22の幅は、中心から±128μmの領域である。
【0023】
或いは、別の設計例として以下の式のようにしても効果は同様である。
【0024】
【数2】
次に、図5を参照して、受光IC13aにおける受光素子アレイ12a(受光部)の配列について説明する。図5は、受光素子アレイ12aの平面図であり、受光素子アレイ12aの受光面の配列をそれぞれ示している。受光素子アレイ12aにおいて、複数(32個)の受光素子がX方向に沿って一列に配列されている。1個の受光素子に関し、X方向の幅Xpdは64μm、X方向に対して直交する方向(Y方向)の幅Ypdは450μmである。受光素子アレイ12aのX方向の全体幅Wpdは2048μmである。
【0025】
32個の受光素子は、A+相、B+相、A-相、および、B-相の順に循環的に割り当てられており、これら4つの相における各相に割り当てられた8個の受光素子が1つの受光素子群を構成する。A+相の受光素子(第1受光素子)が8個あり、これらが1つの群を構成する。B+相の受光素子(第2受光素子)が8個あり、これらが1つの群を構成する。A-相の受光素子(第3受光素子)が8個あり、これらが1つの群を構成する。B-相の受光素子(第4受光素子)が8個あり、これらが1つの群を構成する。A+相の受光素子(第1受光素子)とB+相の受光素子(第2受光素子)が互いに隣接している。A-相の受光素子(第3受光素子)とB-相の受光素子(第4受光素子)の間に、A+相の受光素子(第1受光素子)とB+相の受光素子(第2受光素子)が配置されている。同一相における受光素子の周期Ppd(循環周期)は、受光素子4個分の幅に相当する256μmであり、受光素子面上の光強度分布の検出周期に相当する。
【0026】
各受光素子群を構成する8つの受光素子は、互いに電気的に接続されており、これらの出力(電流)は互いに足し合わされて後段に相ごとに設けられたIV変換アンプ(不図示)に入力される。4つのIV変換アンプは、互いに位相が異なる4相の信号S1(A+)、S1(B+)、S1(A-)、および、S1(B-)をそれぞれ出力する。信号S1(A+)、S1(B+)、S1(A-)、S1(B-)は、スケール20の移動に応じてその値が正弦波状に変化する電圧信号(正弦波信号)となる。4つの相に対して設けられた4つのIVアンプの出力信号は、信号位相の0度、90度、180度、および、270度にそれぞれ対応している。つまり、第1受光素子からの信号と第3受光素子からの信号との位相は180度異なり、第2の受光素子からの信号と第4光素子からの信号との位相は180度異なる。
【0027】
さらに、4相の信号S1(A+)、S1(B+)、S1(A-)、S1(B-)に対して、以下の式(3)、(4)で表される演算を行い、4相の信号から直流成分が除去された2相の正弦波信号S1(A)、S1(B)に変換する。
【0028】
S1(A)=S1(A+)-S1(A-) …(3)
S1(B)=S1(B+)-S1(B-) …(4)
受光IC13aから出力された2相の正弦波信号S1(A)、S1(B)は、信号処理回路101に送られる。信号処理回路101のインクリメント処理部102は、以下の式(5)で表される演算により、位置信号の元となる位相信号Φ1を取得する。
【0029】
Φ1=ATAN2[S1(A),S1(B)] …(5)
式(5)において、ATAN2[Y,X]は、象限を判別して0~2π位相に変換する逆正接演算関数である。さらに、インクリメント処理部102は位相信号Φ1の変化量を累積することで位置情報を生成する。
【0030】
次に、図6を参照して、受光IC13bにおける受光素子アレイ12b(受光部)の配列について説明する。図6は、受光素子アレイ12bの平面図であり、受光素子アレイ12bの受光面の配列をそれぞれ示している。受光素子アレイ12bにおいて、複数(32個)の受光素子がX方向に沿って一列に配列されている。受光素子アレイ12bは、B-相の信号を出力する第1受光素子と、A+相の信号を出力する第2受光素子と、B+相の信号を出力する第3受光素子と、A-相の信号を出力する第4受光素子と、を有する。受光素子アレイ12bでは、第1受光素子、第2受光素子、第3受光素子、第4受光素子の順に配列されている。1個の受光素子に関し、X方向の幅Xpdは64μm、X方向に対して直交する方向(Y方向)の幅Ypdは450μmである。受光素子アレイ12bのX方向の全体幅Wpdは2048μmである。
【0031】
32個の受光素子のうち、中央の8つの受光素子がB-相、B-相、A+相、A+相、B+相、B+相、A-相、A-相の順に割り当てられている。互いに隣接する2つの同一相の受光素子が1つの受光素子群を構成する。各受光素子群を構成する2つの受光素子は、互いに電気的に接続されており、これらの出力(電流)は互いに足し合わされて後段に相ごとに設けられたIV変換アンプ(不図示)に入力される。4つのIV変換アンプは、互いに位相が異なる4相の信号S2(A+)、S2(B+)、S2(A-)、および、S2(B-)をそれぞれ出力する。
【0032】
さらに、受光IC13bでは、4相の信号S2(A+)、S2(B+)、S2(A-)、S2(B-)に対して、以下の式(6)、(7)で表される減算を行い、2相の、差分の信号S2(A)、S2(B)に変換する。受光IC13bから出力された2相の信号S2(A)、S2(B)は、信号処理回路101の基準位置検出処理部103に送られる。
【0033】
S2(A)=S2(A+)-S2(A-) …(6)
S2(B)=S2(B+)-S2(B-) …(7)
基準位置マーク22の回折によって生じる影の中心からの距離Dは、以下の式8で計算できる。ここで、距離Z1は光源11から前記スケール20までの距離(本実施例ではL1)、距離Z2はスケール20から受光素子アレイ12bの面までの距離(本実施形態ではL2)である。wは基準位置マーク22の幅、である。
【0034】
D=(Z1+Z2)/Z1×(w/2) …(8)
本実施例における、基準マーク22の回折によって生じる影の幅は、基準マーク22の2倍拡大像となり、中心から±256μmとなる。一方、減算に用いられる受光素子(図6のA-およびB-)は、中心から-256~-128μmの範囲と+128~+256μmとなる。つまり、A-相の受光素子とB-相の受光素子は、受光素子の中心からの距離Xが、X<(Z1+Z2)/Z1×(w/2)を満たす位置に配置されている。このように、回折レンズ構造の影となる領域を含む位置に配置された受光素子を減算に用いることで、基準マーク22付近の信号振幅を増大させることが可能となる。それにより、誤検出しにくい基準位置検出が実現できる。
【0035】
次に、図7を参照して、信号処理回路101の基準位置検出処理部103を説明する。図7は、基準位置検出処理部103と受光IC13bのブロック図である。基準位置検出処理部103は、2相の信号S2(A)、S2(B)に対して、以下の式(9)、(10)で表される演算を行い、差動信号Zsubと加算信号Zaddを取得する。
【0036】
Zsub=S2(A)-S2(B) …(9)
Zadd=S2(A)+S2(B) …(10)
差動信号Zsub、加算信号Zaddは、ともに基準電圧Vrefを基準に出力するようにオフセットを加えている。加算信号Zaddは、比較器に入力され、下記式(11)の条件にてハイレベルとなる2値化出力をゲート信号Zgateとして生成する。
【0037】
Zadd>Th2 …(11)
ここでTh2は、比較器の2値化閾値レベルであり、基準マーク22の近傍でのみハイレベルを出力するように、あらかじめ設定されている。Zsubは、比較器に入力され、下記式(12)の条件にてハイレベルとなる2値化出力をエッジ信号として生成する。
【0038】
Zsub>Th1 …(12)
ここで、Th1は、比較器の2値化閾値レベルであり、例えば基準電圧Vrefと同じ値を用いることができる。エッジ信号はさらに微分回路に入力し、エッジ信号の立ち上がりで所定の時間幅を持つパルス信号として、立ち上がりエッジ信号Priseを出力させる。さらに、ゲート信号Zgateと立ち上がりエッジ信号Priseを論理積回路(AND回路)に入力し、原点信号Zpulseとして出力する。
【0039】
次に、図8を参照して、基準マーク22近傍での各信号波形について説明する。図8は、基準マーク22からの光を受光素子アレイ12bで検出した場合の基準マーク22近傍における信号波形図である。図8(a)は、基準マーク22の近傍での2相の信号S2(A)、S2(B)の波形を示している。図8(b)は、基準マーク22の近傍での加算信号Zaddおよび閾値Th2の波形を示している。
【0040】
図8(c)は、基準マーク22の近傍での差動信号Zsub、閾値Th1の波形を示している。閾値Th1はヒステリシスを持たせてあり、比較器出力がハイになったら閾値Th1がマイナス側にオフセットするようになっている。このようにすることで、信号変化が急峻な基準マーク22の中心付近でのエッジ検出を行うとともに、それ以外の場所での不要なエッジ検出を抑えることができる。不要なエッジ検出を抑えることで、インクリメント信号へのクロストークが低減される。
【0041】
図8(d)は、基準マーク22の近傍でのゲート信号Zgate、立ち上がりエッジ信号Prise、原点信号Zpulse(原点パルス)の波形を示している。原点信号Zpulse(原点パルス)の波形は、基準マークの中心位置(基準位置)を示しているのが分かる。本実施形態によれば、基準マークが回折レンズ構造である場合でも、基準位置を高精度に検出することが可能となる。
【0042】
次に、比較例として、2相の信号出力のみを用いて原点パルスを得る場合を示す。4つのIV変換アンプから出力される4相の信号S2(A+)、S2(B+)、S2(A-)、S2(B-)のうち、S2(A+)、S2(B+)だけを用いた例を説明する。比較例では、S2(A+)、S2(B+)を用いて、以下の式(13)の演算を行う。
【0043】
Zadd´=S2(A+)+S2(B+) …(13)
図9を参照して、比較例における基準マーク22の近傍での各信号波形について説明する。図9は、比較例における、基準マーク22からの光を受光素子アレイ12bで検出した場合の基準マーク22近傍における信号波形図である。図9(a)は、基準マーク22の近傍での2相の信号S2(A+)、S2(B+)の波形を示している。図9(b)は、基準マーク22の近傍での加算信号Zadd´および閾値Th2の波形を示している。
【0044】
図9(c)は、基準マーク22の近傍におけるゲート信号Zgateの波形を示している。加算信号Zadd´における基準マーク22の中心位置付近の信号901の値は、基準マーク22から離れた反射部23の位置における信号902の値と同等程度となっている。そのため、ゲート信号Zgateから基準マークの中心位置を高精度に求めることはできない。これは、基準マーク22の回折レンズ構造によって、集光位置以外の周辺部で光量が低下していることが原因であり、信号S2(A+)、S2(B+)のみを用いるだけでは不十分であることが分かる。
【0045】
基準マーク22の回折によって生じる影の幅は、基準マーク22の2倍拡大像となっているため、本実施形態では、A-およびB-の受光素子からの信号S2(A-)、S2(B-)を用いる。これにより、基準マークの基準位置を高精度に検出することが可能となる。つまり、回折レンズ構造の影となる領域を含む位置に配置された受光素子を減算に用いることで、基準マーク22付近の信号振幅を増大させることが可能となる。それにより、誤検出しにくい基準位置検出が実現できる。基準位置が高精度に検出されると、スケールトラック21aを用いて式5より求められる相対位置と組み合わせて、高精度にスケール(物体)の位置を求めることができる。
【0046】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態における位置検出装置200の構成図である。第1実施形態と異なる点は、センサユニット10内の光源11からの光が光源格子14を透過したのち、スケールトラック21bに照射される点である。
【0047】
図11を参照して、位置検出装置200における光路について説明する。図11は、位置検出装置200における光路の展開図であり、反射を透過のように展開した光路を示している。光源11から光源格子14までの実効光路長としての距離L0は0.3mmである。光源格子14から基準マーク22までの実効光路長としての距離L3は、0.7mm±0.3mmの範囲に設定される。基準マーク22から受光素子アレイ12bまでの実効光路長としての距離L4は、L4=L0+L2に設定される。
【0048】
基準マーク22には、基準マーク22の中心から数えてn番目の境界位置が、式(1)で表されるXnの位置に形成されている。本実施形態における回折レンズの焦点距離は、f=0.7mmである。すなわち、光源11からの発散光束は、受光素子アレイ面よりも遠い位置に収束するようになっている。こうすることで、光源格子14の周期像を受光面上に形成し、信号が不安定になるのを防ぐ効果が得られる。
【0049】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態における位置検出装置300の構成図である。第2の実施形態とは、スケールトラック21bから受光素子アレイ12bに至る光路中に原点検出格子19が設けられている点と、スケールトラック21b及び受光ICの構成、が異なる。原点検出格子19は、X方向に垂直な方向に交互に配列された透過部と遮光部とにより構成された透過型回折格子である。
【0050】
次に、図13を参照して、本実施形態におけるスケール20におけるスケールトラック21a、21bの構成について説明する。図13は、スケール20(スケールトラック21a、21b)の一部を拡大した平面図である。図13において、ドットで塗られた部分は段差パターンの凹部を示す。スケールトラック21aは、移動方向(X方向)において、周期すなわちピッチ(=4μm)ごとに、2μm幅の段差パターンが配置されたパターン列からなる。
【0051】
スケールトラック21aと並行して配置されているスケールトラック21bには、スケール20上の特定の位置(基準位置)で、凹部が移動方向(X方向)において不等間隔で配置された基準マーク22(基準位置格子)が形成されている。格子間隔は基準マーク22の中心から離れるに従って小さくなっており、光源11からの発散光束が、回折によって所定の距離で線状に収束する回折レンズ構造となっている。スケールトラック21bの基準マーク22以外の領域には、移動方向(X方向)において、周期すなわちピッチ(=4.9μm)ごとに、2.45μm幅の段差パターンが配置されたパターン列からなる格子領域24(第2回折格子)が形成されている。格子領域24の格子周期は、同じ点からの+1次回折光と-1次回折光が、概略逆相(256μm)の位置に分かれて入射するように設定されている。このようにすることで、スケール上に付着するゴミや、パターン欠陥の影響が、以下の演算によってキャンセルされ、誤検出しにくくなる。
【0052】
次に、図14を参照して、センサユニット10の構成について説明する。図14は、センサユニット10の平面図であり、センサユニット10をスケール20側から見た図を示している。光源格子14の格子パターン14aのピッチ(パターン周期)は4μmである。インクリメント検出格子15には、X方向において所定のピッチ(=4.069952μm)を有する格子パターン15が設けられている。原点検出格子19には、X方向に対して垂直な方向(Y方向)において、18μm幅の遮光部と2μm幅の開口部が交互に並べられている。この格子構造により、受光素子アレイ12bで受光する光量を減衰し、インクリメント信号との光量比を調整することができる。格子周期方向を位置検出方向に対して垂直な方向にすることで、移動方向の光量プロファイルには影響を与えないようにできる。
【0053】
光源11から光源格子14までの実効光路長としての距離L0は0.3mmである。光源格子14から基準マーク22までの実効光路長としての距離L3は、1.6mm±0.3mmの範囲に設定される。基準マーク22から受光素子アレイ12bまでの実効光路長としての距離L4は、L4=L0+L3に設定される。
【0054】
次に、図15を参照して、本実施形態の受光IC13aにおける受光素子アレイ12aの配列について説明する。図15は、本実施形態の受光素子アレイ12aの平面図であり、受光素子アレイ12aの受光面の配列をそれぞれ示している。受光素子アレイ12aは、複数(64個)の受光素子がX方向に沿って一列に配列されている。1個の受光素子に関し、X方向の幅Xpdは32μm、Y方向の幅Ypdは450μmである。受光素子アレイ12aのX方向の全体幅Wpdは2048μmである。
【0055】
64個の受光素子は、A+相、B+相、A-相、および、B-相の順に、一部、間をとばして循環的に割り当てられており、これら4つの相のそれぞれにおいて、12個の受光素子が1つの受光素子群を構成する。同一相の受光素子の周期Ppd(循環周期)は、受光素子8個分の幅に相当する256μmであり、受光素子面上の光強度分布の検出周期に相当する。各受光素子群を構成する12個の受光素子は、互いに電気的に接続されており、これらの出力(電流)は互いに足し合わされて後段に相ごとに設けられたIV変換アンプ(不図示)に入力される。4つのIV変換アンプは、4相の信号S1(A+)、S1(B+)、S1(A-)、および、S1(B-)をそれぞれ出力する。
【0056】
信号S1(A+)、S1(B+)、S1(A-)、S1(B-)は、スケール20の移動に応じてその値が正弦波状に変化する電圧信号(正弦波信号)となる。4つの相に対して設けられた4つのIVアンプの出力信号は、信号位相の0度、90度、180度、および、270度にそれぞれ対応している。さらに、4相の信号S1(A+)、S1(B+)、S1(A-)、S1(B-)に対して、式(3)、(4)で表される演算を行い、4相の信号から直流成分が除去された2相の正弦波信号S1(A)、S1(B)に変換する。
【0057】
センサユニット10から出力された2相の正弦波信号S1(A)、S1(B)は、信号処理回路101に送られる。信号処理回路101のインクリメント処理部102は、式(5)で表される演算により、位置信号の元となる位相信号Φ1を取得する。さらに、インクリメント処理部102は位相信号Φ1の変化量を累積することで位置情報を生成する。
【0058】
受光IC13bにおける受光素子アレイ12bの配列を図16に示す。受光素子アレイ12bでは、複数(32個)の受光素子がX方向に沿って一列に配列されている。1個の受光素子に関し、X方向の幅Xpdは32μm、Y方向の幅Ypdは450μmである。受光素子アレイ12bのX方向の全体幅Wpdは2048μmである。
【0059】
64個の受光素子は、A+相、B+相、A-相、および、B-相の順に、一部間をとばして循環的に割り当てられており、これら4つの相のそれぞれにおいて、12個の受光素子が1つの受光素子群を構成する。A+相の受光素子は、中央部に8個、周辺部の左側に4個あり、これらが1つの群を構成する。B+相の受光素子は中央部に8個、周辺部の右側に4個あり、これらが1つの群を構成する。A-相の受光素子は、中央部に8個、周辺部の右側に4個あり、これらが1つの群を構成する。B-相の受光素子は中央部に8個、周辺部の左側に4個あり、これらが1つの群を構成する。中央部において、A+相の受光素子とB+相の受光素子が互いに隣接している。A-相の受光素子とB-相の受光素子の間に、A+相の受光素子とB+相の受光素子が配置されている。この周期Ppd(循環周期)は、受光素子32個分の幅に相当する1024μmである。
【0060】
受光素子アレイ12bは、中央部の各8個の受光素子4群と、その両側に、中央部の受光素子と出力を足し合わせる複数の受光素子91を有している。各受光素子群を構成する12個の受光素子は、互いに電気的に接続されており、これらの出力(電流)は互いに足し合わされて後段に相ごとに設けられたIV変換アンプ(不図示)に入力される。4つのIV変換アンプは、4相の信号S2(A+)、S2(B+)、S2(A-)、および、S2(B-)をそれぞれ出力する。中央部のA+相の受光素子(第1受光素子)の出力と足し合わされる、受光素子アレイ12bは周辺部のA+相の受光素子(第5受光素子)を有する。周辺部のA+相の受光素子は、中央部のA+相の受光素子とB+相の受光素子との隣接部(中心)からの距離が、中央部のA-相の受光素子(第3受光素子)よりも遠い位置に配置されている。
【0061】
さらに、4相の信号S2(A+)、S2(B+)、S2(A-)、S2(B-)に対して、式(6)、(7)で表される演算を行い、2相の信号S2(A)、S2(B)に変換する。受光IC13bから出力された2相の信号S2(A)、S2(B)は、信号処理回路101の基準位置検出処理部103に送られる。
【0062】
基準マーク22の回折によって生じる影の中心からの距離Dは、以下の式14で計算できる。
【0063】
D=(Z1+Z2)/Z1×(w/2+Z2×tan(arcsin(λ/d))) …(14)
ここで、Z1は光源11からスケール20までの距離(本実施形態ではL0+L3)、Z2はスケール20から受光素子アレイ12bの面までの距離(本実施形態ではL4)である。λは光源11の波長、dは格子領域24の格子間隔、wは基準マーク22の幅である。
【0064】
本実施形態では、減算に用いられる受光素子(図16のA-およびB-)の少なくとも一部が、距離Dの範囲の内側に配置されている。つまり、A-相の受光素子とB-相の受光素子は、受光素子の中心からの距離Xが、X<(Z1+Z2)/Z1×(w/2+Z2×tan(arcsin(λ/d)))を満たす位置に配置されている。このように、回折レンズ構造の影となる領域を含む位置に配置された受光素子を減算に用いることで、基準マーク22付近の信号振幅を増大させることが可能となる。それにより、誤検出しにくい基準位置検出が実現できる。
【0065】
次に、図17を参照して、基準マーク22の近傍での各信号波形について説明する。図17は、基準マーク22からの光を受光素子アレイ12bで検出した場合の基準マーク22近傍における信号波形図である。図17(a)は、基準マーク22の近傍での2相の信号S2(A)、S2(B)の波形を示している。図17(b)は、基準マーク22の近傍での加算信号Zaddおよび閾値Th2の波形を示している。図17(c)は、基準マーク22の近傍での差動信号Zsub、閾値Th1の波形を示している。図17(d)は、基準マーク22の近傍でのゲート信号Zgate、立ち上がりエッジ信号Prise、原点信号Zpulse(原点パルス)の波形を示している。原点信号Zpulse(原点パルス)の波形は、基準マークの中心位置を示しているのが分かる。本実施形態によれば、基準マークが回折レンズ構造である場合でも、基準位置を高精度に検出することが可能となる。
【0066】
(第4実施形態)
図18を参照して、第4実施形態におけるスケール20におけるスケールトラック21a、21bの構成について説明する。図18は、スケール20(スケールトラック21a、21b)の一部を拡大した平面図である。図17において、ドットで塗られた部分は段差パターンの凹部を示す。スケールトラック21aは、移動方向(X方向)において、周期4μmごとに、2μm幅の段差パターンが配置されたパターン列からなる。また、スケールトラック21aと並行して配置されているスケールトラック21bには、スケール20上の特定の位置(基準位置)で、凹部がX方向において不等間隔で配置された基準マーク22(基準格子)が形成されている。格子間隔は基準マーク22の中心から離れるに従って小さくなっており、光源11からの発散光束が、回折によって所定の距離で線状に収束する回折レンズ構造となっている。スケールトラック21bの基準マーク22以外の領域には、X方向において、周期4.9μmごとに、2.45μm幅の段差パターンが配置されたパターン列からなる格子領域24(第2回折格子)が形成されている。パターン列からなる格子領域24は、間隔を置いて複数配列されている。基準マーク22の中心から両側に384~512μmの範囲、および、640~768μmの範囲には、格子の無い領域25(反射部)がある。
【0067】
受光素子12bの配置は第3実施形態のものと同じである。基準マーク22の中心から384~512μmの範囲からの反射光は、複数の受光素子91のプラス側(図16の受光素子91のA+、B+)に入射する。このようにすることで、原点位置でのZadd信号を増大することができ、誤検出を防止することができる。
【0068】
次に、図19を参照して、基準マーク22の近傍での各信号波形について説明する。図19は、基準マーク22の近傍での信号波形図である。図19(a)は、基準マーク22の近傍での2相の信号S2(A)、S2(B)の波形を示している。図19(b)は、基準マーク22の近傍での加算信号Zaddおよび閾値Th2の波形を示している。図19(c)は、基準マーク22の近傍での差動信号Zsub、閾値Th1の波形を示している。図19(d)は、基準マーク22の近傍でのゲート信号Zgate、立ち上がりエッジ信号Prise、原点信号Zpulse(原点パルス)の波形を示している。原点信号Zpulse(原点パルス)の波形は、基準マークの中心位置を示しているのが分かる。本実施形態によれば、基準マークが回折レンズ構造である場合でも、基準位置を高精度に検出することが可能となる。
【0069】
なお、上述の実施形態では、光源からの光を反射型スケール(スケール格子)にて反射して受光素子アレイで受光する反射型の位置検出装置について説明したが、これに限定されるものではない。各実施形態は、例えば、光源からの光に対して透過型スケールを透過させて受光素子アレイで受光する透過型の位置検出装置にも適用可能である。また、各実施形態において、リニアスケールを用いた位置検出装置(リニアエンコーダ)について説明したが、これに限定されるものではない。各実施形態は、例えばロータリースケールを用いたロータリーエンコーダにも適用可能である。ロータリーエンコーダの場合、スケールパターンを放射状に構成すればよい。なお、上述の実施形態では、スケール20のパターンを段差による位相パターンとしているが、それに限るものではない。同一の設計で、凹部、凸部の代わりに、反射、非反射によるパターンとしても同様の効果が得られる。
【0070】
(第5実施形態)
次に、図20を参照して、第5実施形態における露光装置について説明する。図20は、本実施形態における露光装置400の概略構成図である。露光装置400は、半導体ウエハに電子回路を露光するように構成され、例えば第1実施形態にて説明した位置検出装置100を搭載している。露光装置400は、位置検出装置100を用いて、半導体ウエハが搭載されて2次元方向に駆動可能なステージの位置を検出する。
【0071】
図20において、露光装置400は、動作可能な可動部としてのステージ50と、ウエハ53に対して不図示のマスクの光学像である電子回路像を投影(露光)する投影光学系51を有する。ステージ50上にはウエハ53が搭載されている。ステージ50は、駆動機構55によって、投影光学系51に対してX方向およびY方向に駆動される。これにより、ウエハ53上における電子回路像の投影位置が制御される。
【0072】
露光装置400は位置検出装置100を有する。位置検出装置100のスケール20は、ステージ50(可動部)に取り付けられている。位置検出装置100のセンサユニット10は、露光装置400の固定部である筐体54に取り付けられている。なお、本実施形態において、固定部と可動部の関係は逆でもよく、センサユニット10を可動部に取り付け、スケール20を固定部に取り付けることができる。すなわち、センサユニット10とスケール20とが相対的に移動可能であればよい。また、本実施形態において、位置検出装置100(センサユニット10)に代えて、第2~4の実施形態における位置検出装置を用いてもよい。
【0073】
露光装置400は位置検出装置100の検出結果、つまり、センサユニット10の受光素子アレイ12a、12bからの出力信号に基づいてステージ50の位置を演算し、駆動機構55を制御する制御部56を有する。
【0074】
位置検出装置によって高精度に基準位置を検出することにより、露光装置200のステージ50の位置を高分解能かつ安定的に検出し、ステージ50の移動(動作)を高精度に制御することができる。
【0075】
(第6実施形態)
図21は、ガルバノ走査装置(ガルバノスキャナ)を含むレーザー加工装置の例を示す図である。レーザー加工装置は、レーザー光源610と、ガルバノ走査装置620、630と、レンズ640を有する。レーザー光源610からのレーザー光を、ガルバノ走査装置620、630で、直交する2軸方向に偏向させる。レンズ640で集光されたレーザー光は、加工対象物650に照射される。
【0076】
ガルバノ走査装置620、630は回転可動部にミラーを備え、モータにより駆動される。ガルバノ走査装置620、630は、モータ及びミラーの回転軸に取り付けられた、上述の光学式エンコーダ(ロータリーエンコーダ)を有する。光学式エンコーダの出力を、CPU等の演算装置を内蔵した不図示の制御部に入力し、制御部はモータの回転角度制御を行う。上述のエンコーダを用いることで高精度に位置(回転角)を検出することができ、モータの回転角を高精度に制御することができる。
【0077】
なお、駆動制御装置における可動部としては第5実施形態や第6実施形態のようなステージやミラーに限られず、駆動変位可能なものであれば適用可能である。即ち、上述の光学式エンコーダを用いて可動部の変位量を測定し、測定された変位量に基づき前記可動部の動作を制御する駆動制御装置全般に適用できる。例えば、ロボットアームまたは組み立て対象物を搬送する搬送体を備えた工作機器と、この工作機器の位置または姿勢を検出する各実施形態のエンコーダとを有する工作装置を構成することにより、搬送体の位置を高精度に検出することができる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21