(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】電力変換装置、変電所用電源装置および回生電力貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240422BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240422BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240422BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20240422BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240422BHJP
B60M 3/06 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02J7/00 P
H02J7/34 E
H02M3/155 U
H02M3/28 U
H02M7/48 E
B60M3/06 B
(21)【出願番号】P 2020104351
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】野木 雅之
(72)【発明者】
【氏名】真木 康次
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-78690(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208639(WO,A1)
【文献】特開2013-176174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02J 7/00
H02J 7/34
H02M 3/155
H02M 7/48
B60M 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直流電源と第2直流電源との間に電気的に接続される装置であって、
前記第2直流電源の正極端子に、リアクトルを介して、降圧出力端子が電気的に接続されたチョッパ回路と、
前記第1直流電源の正極端子と負極端子との間に第1直流主回路が電気的に接続された第1インバータと、
前記チョッパ回路の高圧回路側に第2直流主回路が電気的に接続された第2インバータと、
前記第1インバータの交流端と前記第2インバータの交流端との間に電気的に接続された変圧器と、
前記第1直流電源に対して並列に接続された第1コンデンサと、
前記第2インバータと前記チョッパ回路との間において前記第2直流主回路間に接続された第2コンデンサと、
双方向に電力融通するように前記第1インバータと前記第2インバータとの出力電圧位相を制御する制御回路と、
を備えた電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1インバータと前記第2インバータとの出力電圧の位相を変化させることにより、前記第2コンデンサの電圧値が目標値となるように制御する、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2直流電源に対して並列に接続された第3コンデンサを備えた、請求項1又は請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記チョッパ回路と、前記第1インバータと、前記第2インバータと、前記変圧器と、前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサと、を含む電力変換ユニットを複数備え、
前記制御回路は、前記チョッパ回路を制御することにより前記第3コンデンサの電圧を目標電圧に制御する、請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第2直流電源の正極端子と前記第3コンデンサの高電位側端との間に接続された第2リアクトルを備える、請求項3又は請求項4記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記チョッパ回路と、前記第1インバータと、前記第2インバータと、前記変圧器と、前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサと、を含む電力変換ユニットを複数備え、
複数の前記電力変換ユニットの前記チョッパ回路はカスケード接続されている、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項7】
複数の前記電力変換ユニットの前記第1コンデンサは、前記第1直流主回路間において直列に接続されている、請求項6記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1直流電源は中性点接地されている、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1直流電源は蓄電池であって、前記第2直流電源は直流き電回路である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第2直流電源の電圧変動幅は、最大電圧値が最低電圧値の少なくとも1.5倍以上である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記変圧器と前記第1インバータとの間、又は、前記変圧器と前記第2インバータとの間の少なくとも一方に配置された第3リアクトルを有している、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の電力変換装置と、
前記第1直流電源と、を備えた変電所用電源装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の電力変換装置と、
前記第1直流電源と、を備えた回生電力貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置、変電所用電源装置および回生電力貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電気鉄道の電力供給システムである直流き電システムは、負荷変動が激しく、き電線電圧変動が大きい特性になっている。また、ダイオード整流器を用いて直流を作ることが一般的であるため、交流電源系統への電源回生は、回生インバータを設置しなければ実施することができず、回生車の回生電流を吸収する十分な負荷が回生車周辺に存在しなければ、回生車は回生失効に陥ることになる。これらの電圧変動や回生失効に対応するため蓄電装置を設置することが行われている。
【0003】
例えば高出力な電車を導入した場合、架線電圧の低下や余剰回生電力の吸収をする必要が出てくるため、蓄電装置を設置することが考えられる。このような蓄電装置は蓄電池電圧を任意の電圧に変換して出力するための変換器を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の蓄電装置では、例えばき電回路と電池回路とを高周波トランス回路で絶縁し、電池の対地絶縁耐圧を下げることができ、任意の電力を架線と蓄電池の間で充放電することができる。その一方、架線電圧は、例えばDC1500Vき電の場合、900V-1800V程度まで変動するのが一般的であり、電池と架線電圧の差が大きいと、高周波トランス回路に流れるピーク電流値が大きくなる。これは結果として、高周波変圧器の大型化や、電力変換装置に用いるパワー半導体素子の電流定格を増大させる必要性が生じ蓄電装置の、大型化、高コスト化を招く可能性があった。
【0006】
例えば、き電回路側にき電回路側から見て昇圧チョッパを設置し、電池側とき電側の直流回路との間を共振型の高周波絶縁回路を構成することで、直流回路部の電圧変動を蓄電池の電圧変動程度に抑制し小型化を図る方法も考えられる。しかしながらこの手法では共振回路に共振コンデンサを設置する必要があり、装置の小型化が困難である。また、チョッパ回路と共振回路部との間の直流電圧が共振型回路であるが故に任意の電圧に制御することはできず、蓄電池の電圧変動を加味した場合、蓄電池のSOCが高い場合などは直流電圧が高くなり、チョッパ回路のスイッチングサージが大きくなることがあった。
【0007】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、蓄電池とき電回路との間を絶縁しつつ、小型な電力変換装置、変電所用電源装置および回生電力貯蔵装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態による電力変換装置は、第1直流電源と第2直流電源との間に電気的に接続される装置であって、前記第2直流電源の正極端子に、リアクトルを介して、降圧出力端子が電気的に接続されたチョッパ回路と、前記第1直流電源の正極端子と負極端子との間に第1直流主回路が電気的に接続された第1インバータと、前記チョッパ回路の高圧回路側に第2直流主回路が電気的に接続された第2インバータと、前記第1インバータの交流端と前記第2インバータの交流端との間に電気的に接続された変圧器と、前記第1直流電源に対して並列に接続された第1コンデンサと、前記第2インバータと前記チョッパ回路との間において前記第2直流主回路間に接続された第2コンデンサと、双方向に電力融通するように前記第1インバータと第2インバータとの出力電圧位相を制御する制御回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電力変換装置および電源装置の一構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1直流電源と第2直流電源とにおける電力供給の様子を説明するための図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す制御回路のインバータ制御部の一構成例を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す制御回路のテーブルの一例について説明するための図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す制御回路のチョッパ制御部の一構成例を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の電力変換装置および電源装置の一構成例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の電力変換装置、変電所用電源装置および回生電力貯蔵装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の電力変換装置および電源装置の一構成例を概略的に示す図である。
【0011】
本実施形態の電源装置は、例えば変電所や回生電力貯蔵装置(バッテリーポスト)に設置される装置であって、第1直流電源1と、抵抗器Rと、電力変換装置3と、を備え、第2直流電源2と電気的に接続されている。第2直流電源2は、直流き電回路を備えた直流電源であって、例えば架線である。第2直流電源2は、例えばDC1500Vき電である。第2直流電源2の電圧変動幅は、最大電圧値が最低電圧値の少なくとも1.5倍以上である。
【0012】
電力変換装置3は、少なくとも1つの電力変換ユニット4と、リアクトル6、8と、コンデンサ7と、制御回路CTRと、を備えている。また、電力変換装置3は、種々の検出器、例えば、電圧検出器24、25、26、および、電流検出器27を備え得る。
第1直流電源1は、例えば蓄電池を備えた直流電源である。なお、第1直流電源1は、交流電力を直流電力に変換して出力する電力変換器を備えていてもよい。
【0013】
本実施形態では、第1直流電源1は、高電位側電源1Pと低電位側電源1Nとの間(中性点)において抵抗器Rを介して接地されている。これにより、第1直流電源1の蓄電池の対地電位を下げることができる。このような接続方法をとることにより高電圧の出力が可能になるほか、第1直流電源1が蓄電池の場合には、対地電位を下げ絶縁設計時の電圧を低くして装置を小型化することが可能となる。なお、第1直流電源1の蓄電池の絶縁耐圧が十分であるときには、中性点接地ではなく第1直流電源1の低電位側にて接地してもよく、変圧器15よりも第1直流電源1側にある回路を電気的に浮いた状態としてもよい。
【0014】
電力変換ユニット4は、チョッパ回路5と、第1コンデンサ13と、第2コンデンサ12と、第1インバータINV1と、変圧器15と、第2インバータINV2と、を備えている。
【0015】
第1インバータINV1は、高電位側の第1直流主回路と低電位側の第1直流主回路との間に電気的に接続された2つのレグを備えたフルブリッジ回路である。第1インバータINV1の各レグは、上アームと下アームとを備えている。第1インバータINV1の上アームと下アームとのそれぞれは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子10を備えている。IGBT等のパワー半導体素子10を用いることにより、第1インバータINV1における導通損を抑制することが可能である。
【0016】
第1コンデンサ13は、第1インバータINV1の高電位側の直流端と低電位側の直流端との間に接続されている。換言すると、第1コンデンサ13は、第1直流主回路間に接続され、第1直流電源1と並列に接続されている。
【0017】
第2インバータINV2は、第2直流主回路間に電気的に接続された2つのレグを備えたフルブリッジ回路である。第2インバータINV2の各レグは、上アームと下アームとを備えている。第2インバータINV2の上アームと下アームとのそれぞれは、IGBT等のパワー半導体素子11を備えている。IGBT等のパワー半導体素子11を用いることにより、第2インバータINV2における導通損を抑制することが可能である。
【0018】
第2コンデンサ12は、第2インバータINV2の高電位側の直流端と低電位側の直流端との間に接続されている。換言すると、第2コンデンサ12は、第2直流主回路間に接続されている。
【0019】
変圧器15は、第1インバータINV1の交流端と第2インバータINV2の交流端との間に接続されている。変圧器15は、例えば高周波トランス回路であって、第1インバータINV1の2つのレグの交流端間に接続された第1巻線と、第2インバータINV2の2つのレグの交流端間に接続された第2巻線と、を備えている。変圧器15の第1巻線の巻数と第2巻線の巻数とは、第2コンデンサ12と第1コンデンサ13との電圧の比および第1直流電源1の電圧に応じて設定される。
【0020】
チョッパ回路5は、その高圧回路側が第2インバータINV2の第2直流主回路と電気的に接続されている。チョッパ回路5は、高電位側の第2直流主回路と低電位側の第2直流主回路との間に直列に接続された2つのスイッチング素子9を備えたハーフブリッジ回路である。チョッパ回路5のスイッチング素子9には、例えば、SiC(Silicon Carbide)-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等のワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子(ワイドバンドギャップ半導体素子)を適用することが望ましい。ワイドバンドギャップ半導体には、例えば、III-V族半導体が含まれる。チョッパ回路5はハードスイッチングするため、前述のワイドバンドギャップ半導体を用いることにより、チョッパ回路5におけるスイッチング損失を低減することが可能である。
【0021】
リアクトル(第2リアクトル)6とリアクトル8とは、第2直流電源2の正極端子と、最も高電位側の電力変換ユニット4の2つのスイッチング素子9間との間において、直列に接続されている。
【0022】
コンデンサ(第3コンデンサ)7は、第2直流電源2の正極端子と負極端子との間において、リアクトル6と直列に接続される。すなわち、コンデンサ7の高電位側端はリアクトル6の一端と電気的に接続されている。リアクトル6の他端は第2直流電源2の正極端子と電気的に接続されている。リアクトル6とコンデンサ7とは、LCフィルタを構成し、第2直流電源2に対して高調波電流が流れることを抑制する。
【0023】
なお、変圧器15と第1インバータINVとの間、および、変圧器15と第2インバータとの間の少なくとも一方にリアクトル(第3リアクトル)が更に配置されていても構わない。
【0024】
制御回路CTRは、例えば、CPU(central processing unit)やMPU(micro processing unit)などのプロセッサを少なくとも1つと、プロセッサにより実行されるプログラムを記録可能なメモリと、を備えた演算回路である。
【0025】
制御回路CTRは、チョッパ回路5の動作を制御してリアクトル8に流れる電流を制御し、コンデンサ7の電圧が所定の値となるように電圧制御を行う。なお、制御回路CTRは、必要に応じて、コンデンサ7の電圧を検出する電圧検出器26、リアクトル8に流れる電流を検出する電流検出器27および、電力変換装置3に含まれる種々の検出器(図示せず)により検出された値を取得し、演算に用いることが可能である。
【0026】
制御回路CTRは、第1直流電源1と第2直流電源2との間で双方向に電力供給が行われるように、チョッパ回路5、第1インバータINV1および第2インバータINV2の動作を制御する。
【0027】
図2は、第1直流電源と第2直流電源とにおける電力供給の様子を説明するための図である。
ここでは、
図2(A)に示すように変圧器15の一次側の電圧をVtr1とし、二次側の電圧をVtr2とする。電圧Vtr1および電圧Vtr2は、
図2(B)および
図2(C)に示すように、時刻Tに対して、交流パルス電圧となる。
【0028】
このとき、
図2(B)に示すように、変圧器15の一次側の電圧Vtr1に対し、二次側の電圧Vtr2の位相がδ[rad]遅れることにより、その位相差に基づいて第2直流電源2(一次側)から第1直流電源1(二次側)へ電力供給を行うことができる。また、
図2(C)に示すように、変圧器15の一次側の電圧Vtr1に対し、二次側の電圧Vtr2の位相がδ[rad]進むことにより、その位相差に基づいて第1直流電源1(二次側)から第2直流電源2(一次側)へ電力供給を行うことができる。ここで、第1インバータINV1および第2インバータINV2のそれぞれに基づいて、第2直流電源2(一次側)から第1直流電源1(二次側)へ出力される供給電力P
DCは、「P
DC=(E1×E2/ωL)×(δ-δ
2/π)」で表される。
【0029】
上述の供給電力PDCの式において、E1は、例えば、チョッパ回路5と第2インバータINV2との間に接続される第2コンデンサ12の電圧である。E2は、第1直流電源1に接続される第1インバータINV1の第1コンデンサ13の電圧である。ωは、角周波数であり、ω=2πfで表される。この場合、fは、制御回路CTRが変圧器15に印加する周波数である。また、Lは、変圧器15の漏れインダクタンスと、第1インバータINV1および第2インバータINV2から変圧器15までの導体インダクタンスを加算した値である。δは、第2直流電源2に接続される第2インバータINV2が、変圧器15に出力する交流を基準とした、第1直流電源1に接続される第1インバータINV1が出力する電圧の位相差[rad]である。
【0030】
制御回路CTRは、インバータ制御部C1と、チョッパ制御部C2と、テーブルTBLと、を備えている。
制御回路CTRは、第2コンデンサ12の電圧と第3コンデンサ7の電圧とが所定の値となるように蓄電池装置および電力変換装置制御する。
【0031】
具体的にはチョッパ回路5と第2インバータINV2との間にある第2コンデンサ12については、第1インバータINV1の出力電圧と第2インバータINV2の出力電圧との位相差δを制御する事で電力潮流を制御し電圧を任意の電圧に保つことができる。この回路部は、一般に、DAB(Dual Active Bridge)と呼ばれる回路となる。この時の制御目標の電圧値V*refは、少なくとも直流側の電源電圧よりも高くなる必要がある。
【0032】
図3は、
図1に示す制御回路のインバータ制御部の一構成例を概略的に示す図である。
インバータ制御部C1は、減算器C11と、PI制御器C12と、を備えている。
インバータ制御部C1には、目標電圧値V
*ref1と第2コンデンサ12の電圧値V
C2とを取得する。目標電圧値V
*ref1は、制御回路CTR内にて予め設定されていてもよく、制御回路CTRの外部から供給されてもよい。第2コンデンサ12の電圧値V
C2は、電圧検出器25により検出されて制御回路CTRに供給される。
【0033】
減算器C11は、目標電圧値V*ref1から第2コンデンサ12の電圧値VC2を引いた差を演算して出力する。PI制御器C12は比例積分制御器であって、減算器C11から入力された値がゼロとなるように、位相差δの値を演算して出力する。
【0034】
インバータ制御部C1は、PI制御器C12にて演算された位相差δが生じるように、第1インバータINV1および第2インバータINV2のスイッチング素子の動作を制御する。
【0035】
なお、第2実施形態で説明するが、電力変換ユニット4が複数段カスケード接続される場合は、き電電圧に対する変換器の電圧分担を等分にするため、n段であれば、制御目標の電圧値V*ref1がき電電圧/nよりも大きくなるように第2コンデンサ12の電圧を制御する。
【0036】
制御回路CTRは、第3コンデンサ7の電圧値VC3が所定の値となるとともに、リアクトル8に所定の電流が流れるようにチョッパ回路5の動作を制御する。一般には架線電圧が上昇した場合は、一定電圧を保とうとするため、き電回路側から畜電池側への充電電流が流れ、架線電圧が低下した場合は畜電池側からき電回路側への放電電流が流れる。蓄電池の放電時の目標電圧と充電時の目標電圧は必ずしも同一の値を用いる必要はなく、任意の電圧制御としては充電時の目標電圧≧放電時の目標電圧の関係が成り立っていればよい。
【0037】
図4は、
図1に示す制御回路のテーブルの一例について説明するための図である。
本実施形態の蓄電池装置および電力変換装置では、例えば、
図4に示すように、第1直流電源1のSOC(state of charge)に対して、充電時の目標電圧が放電時の目標電圧よりも大きくなるように、目標電圧V
*ref2の値がテーブルTBL格納されている。なお、
図4に示す目標電圧V
*ref2の数値は一例であって、これに限定されるものではない。
【0038】
図5は、
図1に示す制御回路のチョッパ制御部の一構成例を概略的に示す図である。
チョッパ制御部C2は、減算器C21、C23と、PI制御器C22、C24と、減算器C26と、PI制御器C27と、PWM制御器C28と、遅延器DLYと、否定回路C29と、を備えている。
【0039】
チョッパ制御部C2には、第3コンデンサ7の電圧値VC3と、リアクトル8の電流値ILと、第1直流電源1のSOCと、が供給される。チョッパ制御部C2には、例えば外部の電池管理部16から第1直流電源1のSOCが供給される。チョッパ制御部C2は、テーブルTBLを参照して、第1直流電源1のSOCに対応した目標電圧V*ref2を取得することができる。
なお、電池管理部16は、制御回路CTRに含まれていても構わない。電池管理部16は、第1直流電源1の電圧、電流、および温度を少なくとも検出することが可能であり、検出値に基づいて第1直流電源1のSOCを算出することが可能である。
【0040】
減算器C21は、充電時の目標電圧V*ref2から第3コンデンサ7の電圧値VC3を引いた差を演算して出力する。
PI制御器C22は比例積分制御器であって、減算器C21から入力された値がゼロとなるよう、リアクトル8に流れる電流の目標値を演算して出力する。なお、PI制御器C22は、第1直流電源1を充電する電流を負の値として、出力値を最小値Imin以上ゼロ以下となるように出力する。
【0041】
減算器C23は、放電時の目標電圧V*ref2から第3コンデンサ7の電圧値VC3を引いた差を演算して出力する。
PI制御器C24は比例積分制御器であって、減算器C23から入力された値がゼロとなるように、リアクトル8に流れる電流の目標値を演算して出力する。なお、PI制御器C24は、第1直流電源1を放電する電流を正の値として、出力値をゼロ以上最大値Imax以下となるように出力する。
【0042】
加算器C25は、PI制御器C22の出力値とPI制御器C24の出力値とを加算して出力する。すなわち、第1直流電源1の充電時にはPI制御器C22の出力値が電流目標値として出力され、第1直流電源1の放電時にはPI制御器C24の出力値が電流目標値として出力される。
【0043】
減算器C26は、加算器C25から出力された値からリアクトル8に流れる電流値ILを引いた差を演算して出力する。
PI制御器C27は比例積分制御器であって、減算器C26から入力された値がゼロとなるように、チョッパ回路5の電圧指令値を演算して出力する。
【0044】
PWM制御器C28は、PI制御器C27から出力された電圧指令値と、予め設定された搬送波(例えば三角波)とを比較して、例えばチョッパ回路5の上側のスイッチング素子9のゲート信号を生成する。
【0045】
遅延器DLYは、PWM制御器C28から出力されたゲート信号を所定の時間遅延させてチョッパ回路5の上側のスイッチング素子9のゲート信号を出力する。
否定回路C29は、PWM制御器C28から出力されたゲート信号の値を反転した信号を、チョッパ回路5の下側のスイッチング素子9のゲート信号として出力する。
【0046】
上記のように、本実施形態の電力変換装置および電源装置によれば、チョッパ回路5のコンデンサ7の電圧を制御することが出来るため、チョッパ回路5のコンデンサ7側の直流電圧を高めることなく制御することで、チョッパ回路5における損失を抑制することができるとともに、スイッチング素子9のスイッチング時のサージ電圧を低減することができる。また、例えば電力変換ユニット4にDAB回路ではなく共振型の高周波絶縁回路を用いる方式も考えられるが、本実施形態の電力変換装置および電源装置では共振型の高周波絶縁回路の共振コンデンサを用いる必要がないため、共振型の高周波絶縁回路を採用する場合よりも小型化を実現することが可能である。
すなわち、本実施形態によれば、蓄電池とき電回路との間を絶縁しつつ、小型な電力変換装置、変電所用電源装置および回生電力貯蔵装置を実現することができる。
【0047】
次に、第2実施形態の電力変換装置、変電所用電源装置および回生電力貯蔵装置について図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において上述の第1実施形態と重複する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図6は、第2実施形態の電力変換装置および電源装置の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電力変換装置3は、複数の電力変換ユニット4を備えている。なお、
図6に示した例では、電力変換装置3は3つの電力変換ユニット4を備えているが、電力変換ユニット4の数はこれに限定されるものではない。
【0049】
3つの電力変換ユニット4の第1コンデンサ13は、第1直流電源1の正極端子と負極端子との間に直列に接続されている。すなわち、最も高電位側の電力変換ユニット4の高電位側の第1直流主回路は、第1直流電源1の正極端子と電気的に接続されている。最も高電位側の電力変換ユニット4の低電位側の第1直流主回路は、次段の(低電位側に接続された)電力変換ユニット4の高電位側の第1直流主回路と電気的に接続されている。最も低電位側の電力変換ユニット4の高電位側の第1直流主回路は、前段の(高電位側に接続された)電力変換ユニット4の低電位側の第1直流主回路と電気的に接続されている。最も低電位側の電力変換ユニット4の低電位側の第1直流主回路は、第1直流電源1の負極端子と電気的に接続されている。
【0050】
3つの電力変換ユニット4のチョッパ回路5は、降圧出力端子において互いに電気的に接続されている。すなわち、電力変換ユニット4の低電位側の第2直流主回路は、次段の(低電位側に接続された)電力変換ユニット4の2つのスイッチング素子9の間に電気的に接続されている。最も高電位側の電力変換ユニット4のチョッパ回路5の2つのスイッチング素子9間は、リアクトル8およびリアクトル6を介して第2直流電源2の正極端子と電気的に接続されている。最も低電位側の電力変換ユニット4の低電位側の第2直流主回路は、第2直流電源2の負極端子と電気的に接続されている。つまり、3つの電力変換ユニット4のチョッパ回路5側は、
図6に示されるように、カスケード接続されている。
【0051】
リアクトル6とリアクトル8とは、第2直流電源2の正極端子と、最も高電位側の電力変換ユニット4の2つのスイッチング素子9間との間において、直列に接続されている。
コンデンサ7は、第2直流電源2の正極端子と負極端子との間において、リアクトル6と直列に接続される。リアクトル6とコンデンサ7とは、LCフィルタを構成し、第2直流電源2に対して高調波電流が流れることを抑制する。
【0052】
複数の電力変換ユニット4のそれぞれは、第1直流電源1側の第1コンデンサ13の電圧値を測定するための電圧検出器24と、チョッパ回路5と第2インバータINV2との間の第2コンデンサ12の電圧を検出するための電圧検出器25と、を備えている。
制御回路CTRは、上述の第1実施形態と同様に、電力変換ユニット4それぞれのチョッパ回路5、第1インバータINV1および第2インバータINV2の動作を制御することが出来る。制御回路CTRは、電力変換ユニット4が複数段カスケード接続される場合は、き電電圧に対する変換器の電圧分担を等分にするため、n段であれば、制御目標の電圧値V*ref1がき電電圧/nよりも大きくなるように第2コンデンサ12の電圧を制御する。
【0053】
また、制御回路CTRは、3つの電力変換ユニット4のチョッパ回路5のスイッチング位相を互いにずらすように、3つの電力変換ユニット4の動作を制御することが出来る。
本実施形態の電力変換装置および電源装置では、電力変換ユニット4のチョッパ回路5のスイッチング位相を互いにずらすことにより、変換器としての等価スイッチング周波数を高くすることが可能であり、リアクトル6やリアクトル8を小型化することが出来る。 また、上記のように接続された複数の電力変換ユニット4を含む電力変換装置および電源装置によれば、高電圧の出力が可能になるほか、第1直流電源1が蓄電池の場合に、対地電位を下げ絶縁設計時の電圧が低くなり装置を小型化することが可能になる。
【0054】
本実施形態によれば上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施形態によれば、蓄電池とき電回路との間を絶縁しつつ、小型な電力変換装置、変電所用電源装置および回生電力貯蔵装置を実現することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0056】
例えば上述の複数の実施形態において、複数の第1コンデンサ13が第1直流電源1の正極端子と負極端子との間において直列に接続されていたが、複数の第1コンデンサ13は第1直流電源1に並列に接続されてもよい。その場合であっても上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1…第1直流電源、1N…低電位側電源、1P…高電位側電源、2…第2直流電源、3…電力変換装置、4…電力変換ユニット、5…チョッパ回路、6…第2リアクトル、7…第3コンデンサ、8…リアクトル、12…第2コンデンサ、13…第1コンデンサ、15…変圧器、16…電池管理部、24…電圧検出器、25…電圧検出器、26…電圧検出器、27…電流検出器、C1…インバータ制御部、C11…減算器、C12…PI制御器、C2…チョッパ制御部、C21…減算器、C22…PI制御器、C23…減算器、C24…PI制御器、C25…加算器、C26…減算器、C27…PI制御器、C28…PWM制御器、C29…否定回路、INV1…第1インバータ、INV2…第2インバータ