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特許7475987NTCセラミック、突入電流制限用の電子デバイスおよび電子デバイスを製造するための方法
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  • 特許-NTCセラミック、突入電流制限用の電子デバイスおよび電子デバイスを製造するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】NTCセラミック、突入電流制限用の電子デバイスおよび電子デバイスを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/04 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
H01C7/04
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020109747
(22)【出願日】2020-06-25
(62)【分割の表示】P 2018531539の分割
【原出願日】2016-12-13
(65)【公開番号】P2020174189
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2020-07-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】102015121982.4
(32)【優先日】2015-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリュンビヒラー, ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァインツガー, マンフレッド
(72)【発明者】
【氏名】リンナー, フランツ
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】渡辺 努
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-59705(JP,A)
【文献】特表2015-504385(JP,A)
【文献】特開2001-143907(JP,A)
【文献】特開平7-37705(JP,A)
【文献】登録実用新案第3132750(JP,U)
【文献】国際公開第2015/181014(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C7/04
H01C17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突入電流制限用の電子デバイス(10)に使用されるNTCセラミックであって、
前記NTCセラミックは、25℃の温度及び/又は室温でmΩ領域の電気抵抗を有し、その比抵抗は、0.1Ωcm~2.0Ωcmとなっており、前記NTCセラミックは、La(1-x)EA(x)Mn(1-a-b-c)Fe(a)Co(b)Ni(c)(3±δ)の組成を備え、0<x≦0.1、且つ0≦(a+b+c)≦0.5であり、EAはマグネシウム、ストロンチウム、又はバリウムから選択されるアルカリ土類元素を表し、δは、化学当量的な酸素の比率からのずれを表す、ことを特徴とするNTCセラミック。
【請求項2】
前記δは、|δ|≦0.5となっていることを特徴とする、請求項に記載のNTCセラミック。
【請求項3】
電子デバイス(10)であって、少なくとも1つの機能層(3)を備え、当該機能層(3)は、請求項1または2に記載のNTCセラミックを備えることを特徴とする、電子デバイス。
【請求項4】
前記電子デバイス(10)は、1.0mm以下の厚さを有することを特徴とする、請求項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記電子デバイス(10)は1つのモノリシックなデバイスであることを特徴とする、請求項3または4に記載の電子デバイス。
【請求項6】
請求項に記載の電子デバイスにおいて、前記デバイス(10)は、丁度1つの機能層(3)を備え、前記機能層(3)は、1.0mm以下の厚さを有し、1つのメタライジング部が前記機能層(3)上に配設されている、ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項7】
前記メタライジング部は、銀、銅、または金を含んでいることを特徴とする、請求項に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記電子デバイス(10)は、1つの多層デバイスであることを特徴とする、請求項3または4に記載の電子デバイス。
【請求項9】
請求項に記載の電子デバイスにおいて、前記電子デバイス(10)は、1つの積層体となるように上下に重なって配設された複数の機能層(3),複数の第1の内部電極(1),および複数の第2の内部電極(2)を備え、前記第1の内部電極(1)および前記第2の内部電極(2)の各々は、2つの隣り合った機能層(3)の間に配設されており、複数の前記第1の内部電極(1)は、第1の外部接続部(11)と電気的に導通して接続されており、複数の前記第2の内部電極(2)は、第2の外部接続部(12)と電気的に導通して接続されており、複数の前記機能層(3)は、前記第1の外部接続部(11)および前記第2の外部接続部(12)が、前記電子デバイス(10)の初期状態においても、また高温状態においても、すなわち前記電子デバイス(10)の初期状態における温度よりも高い温度でも、前記機能層(3)を介して電気的に導通して互いに接続されているように構成されて形成されている、ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項10】
請求項3乃至9のいずれか1項に記載の電子デバイスにおいて、前記電子デバイス(10)は、当該電子デバイス(10)の動作中での当該電子デバイス(10)の加熱を制限するための少なくとも1つのヒートシンクに熱的に結合されており、前記ヒートシンクは、銅を含む、ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項11】
請求項3乃至9のいずれか1項に記載の電子デバイスを製造するための方法であって、セラミック粉末を準備するステップと、前記セラミック粉末をか焼するステップと、顆粒材を生成するために前記セラミック粉末を水及び結着剤と混合するステップと、前記顆粒材をプレスするステップと、前記顆粒材を焼結するステップと、焼結された基体を、銀ペーストを用いて接続するステップと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項3、4、8、および9のいずれか1項に記載の電子デバイスを製造するための方法であって、複数のグリーンシートを準備するステップと、複数の前記グリーンシートに複数の内部電極(1,2)を印刷するステップと、複数の前記内部電極(1,2)が設けられている複数の前記グリーンシートを1つの積層体となるように積層するステップと、前記積層体を焼結するステップと、前記積層体に複数の外部接続部(11,12)を設けるステップと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項13】
少なくとも1つの、請求項3乃至10のいずれか1項に記載の電子デバイス(10)を有するシステム(200)であって、前記電子デバイス(10)または前記構成体(100)に電気的に直列に回路接続されており、前記電子デバイス(10)と共に環境温度に曝される、1つの負荷装置(20)を備え、前記システム(200)は、加熱時間、すなわち前記負荷装置(20)の突入電流が前記電子デバイス(10)を定常状態の温度まで加熱する時間が、いつ前記突入電流が前記負荷装置(20)の公称電流まで低下するかを決定する、前記負荷装置(20)の電気的な立上り時間に合わせ込まれているように構成されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、3つの電子デバイス(10)を備え、前記3つの電子デバイスは互いに並列に回路接続されている、ことを特徴とするシステム。
【請求項15】
NTCセラミックの、突入電流制限用の電子デバイス(10)における使用であって、
前記NTCセラミックは、25℃の温度及び/又は室温でmΩ領域の電気抵抗を有し、その比抵抗は、0.1Ωcm~2.0Ωcmとなっており、前記NTCセラミックは、La(1-x)EA(x)Mn(1-a-b-c)Fe(a)Co(b)Ni(c)(3±δ)の組成を備え、0<x≦0.1、且つ0≦(a+b+c)≦0.5であり、EAはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、又はバリウムから選択されるアルカリ土類元素を表し、δは、化学当量的な酸素の比率からのずれを表す、ことを特徴とするNTCセラミックの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NTCセラミック、突入電流制限用の電子デバイスおよび電子デバイスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車分野(普通車、貨物自動車)における始動・停止システムは、燃料節約のための大きな可能性を示し、このため殆ど全ての新しい自動車に組込まれている。このシステムでは、車載電源電圧の低下を防ぐために、スターターの突入電流が制限されなければならず、これによって具体的には安全関連のアプリケーション(ABS,ESP)が十分に電源供給される。
【0003】
公知のスタート・ストップシステムでは、電源が改善されており(バッテリ強化)、そして車載電圧は過分なものとなり、そしてDC/DC変換器を用いて安定化されて高価なものとなる。ここでこのDC/DC変換器は、一方では大きなスペースを必要とし、他方では高価な半導体(リレーあるいはMosFET)を必要とする。
【0004】
このため安価でコンパクトな解決策が追及されており、たとえば前段抵抗または希土類磁石が使用されている。しかしながらこの際車載電圧の大きな低下が起こる。
【0005】
さらに、NTCセラミックをベースにした突入電流リミッタを用いて、電動モータのスタートの際の電圧降下を制限するアイデアが知られている。しかしながら、室温でミリオーム領域の抵抗を有するNTC単層素子は入手可能ではない。このため従来は、必要とされる導電率が多層構造を用いた層厚の低減および断面積の拡大によって実現されていたデバイスが好まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決すべき課題は、改善されたNTCセラミックおよび改善された電子デバイス、並びにこのデバイスを製造するための方法を提示することである。
【0007】
これらの課題は、請求項1に記載のNTCセラミック、請求項4に記載のデバイス、および請求項13あるいは請求項14に記載の方法によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様によれば、1つのNTCセラミックが提示される。このNTCセラミックは、1つの電子デバイス、たとえば多層NTCデバイスおよび/またはモノリシックなNTCデバイスにおけるアプリケーション用に開発されたものである。このデバイスは、好ましくは突入電流リミッタ(ICL)である。
【0009】
上記のNTCセラミックは、25℃の温度でmΩ領域の電気抵抗を有する。代替として、または追加的にこのNTCセラミックは、室温でmΩ領域の電気抵抗を有する。室温とは通常は居住空間に行き渡っている温度であると理解される。上述の電気抵抗は、好ましくは、25℃の環境温度での、無負荷の電子デバイスの外部接続部(複数)の間の電気抵抗を表している。
【0010】
たとえば上記のNTCセラミックは、上記の所定の温度では、30mΩ以下の電気抵抗を備え、好ましくは20mΩより小さく、たとえば14mΩ,15mΩ,16mΩ,または17mΩである。この結果このNTCセラミックは、室温あるいは25℃で極めて小さな電気抵抗を備え、そしこのため非常に高い導電率を備える。以上によりこのNTCセラミックは、高い電流負荷の突入電流リミッタにおける使用にとりわけ良く適合するものである。
【0011】
1つの実施形態例によれば、上記のNTCセラミックは、La(1-x)EA(x)Mn(1-a-b-c)Fe(a)Co(b)Ni(c)(3±δ)の組成を備える。ここで0≦x≦0.5、および0≦(a+b+c)≦0.5である。EAはアルカリ土類元素を表す。好ましくは、このアルカリ土類元素は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、またはバリウムから選択される。δは、化学当量的な酸素の比率からのずれ(酸素過多あるいは酸素不足)を表す。好ましくは|δ|≦0.5である。とりわけ好ましくは|δ|=0である。
【0012】
この組成により準備されるNTCセラミックは、特別に大きな導電率および充分なB定数を特徴とする。このセラミックの厚さおよび断面すなわち面積によって、抵抗および通電容量をさらに変化させそして制御することができる。
【0013】
1つの態様によれば、温度測定用の1つの電子デバイスが提示される。本電子デバイスは、好ましくは突入電流制限器である。本電子デバイスは、少なくとも1つの機能層または活性層を備える。この機能層は、上述のNTCセラミックから成っている。好ましくはこの機能層は、このNTC層から成っている。
【0014】
本デバイスは、このNTCセラミックにより、その高い導電率および充分なNTC効果(B定数)を特徴とする。以上により、突入電流の制限用の、簡単で、そして安価なデバイスを準備することができ、このデバイスは、これらのアプリケーションで要求されているように、低電圧かつ大電流で動作することができる。
【0015】
上記のmΩ領域の小さな電気抵抗によって、具体的には、たとえばそれぞれのアプリケーションにおいてこの電子デバイスと直列に回路接続されている電気的負荷の充分に大きな突入電流を供給することができ、ただしたとえば始動ステップの際の電圧が他の重要な電子部品の電源用になお充分に高くなる程度に、この突入電流が制限されるようになっている。このデバイスを用いて、好適に、この負荷の始動ステップの際の電圧低下が、このデバイスの無い負荷と比較して約1V低減される。
【0016】
これは本電子デバイスの自動車分野でのアプリケーション、具体的には自動車での電気スタータモータ(「スタート/ストップシステム」用の突入電流リミッタとして使用する際に有利であり、あるいは重要なものであり得る。この突入電流が充分にあるいは適切に制限されない場合、車載電源電圧は、ABSおよびESPのような他の安全に関連する用途に、期待される電圧をもはや供給することができない程度まで低下し得る。この観点において、本電子デバイスは、安全性の面に対して、および/または道路交通におけるエネルギー効率に対して貢献するものである。
【0017】
1つの実施形態例によれば、本電子デバイスの初期状態における少なくとも1つの機能層の電気比抵抗は、0.1Ωcm~2.0Ωcmとなっている。好ましくは、本電子デバイスの初期状態におけるこの少なくとも1つの機能層のこの電気比抵抗は、0.1Ωcm~1.0Ωcm、たとえば0.3Ωcmとなっている。
【0018】
ここでこの初期状態は、デバイスの温度が25℃および/または室温でのものを表している。初期状態とは、たとえばデバイスに電力が全く印加されていない、無負荷の状態であってよい。
【0019】
1つの実施形態例によれば、本デバイスは、1.0mm以下、たとえば0.5mmの厚さを有する。これによりコンパクトで小さなデバイスが提供され、このデバイスは様々な組込み状態のアプリケーションで使用することができる。
【0020】
1つの実施形態例によれば、本デバイスは1つのモノリシックなデバイスである。好ましくは本デバイスは、円盤形状または小板形状に形成されている。本デバイスは、1つの基盤の形態で形成されていてよい。好ましくは本デバイスは、丁度1つの機能層を備える。この機能層は、1.0mm以下、たとえば0.3mmの厚さを有する。この機能層上には、1つのメタライジング部が配設されている。このメタライジング部は、好ましくは銀を含んでいる。この代替としてこのメタライジング部は、銅または金を含んでいてもよい。好ましくは本デバイスの接続は、金属部材、たとえばリードを介して行われる。このリードは、たとえばこのデバイスの外側ではんだ付けされていてよい。以上により1つの突入電流リミッタをコンパクトで安価なモノリシックなデバイスの形態(小円盤、小板、等)で提供することができる。
【0021】
1つの実施形態例によれば、本デバイスは1つの多層デバイスである。たとえば本デバイスは、1つの積層体となるように上下に重なって配設された複数の機能層、たとえば10,30,または50の機能層を備える。さらに本デバイスは、複数の第1の内部電極および第2の内部電極を備え、ここでこれらの第1および第2の内電極の各々は、2つの隣接する機能層の間に配設されている。これらの第1の内部電極は、第1の外部接続部と電気的に導通して接続されており、これらの第2の内部電極は、第2の外部接続部と電気的に導通して接続されている。好ましくはこれらの外部接続部は、銀を含む。しかしながらこれらの外部接続部は、銅または金を含んでもよい。
【0022】
上記の機能層(複数)は、特に、上記の第1および第2の外部接続部が初期状態においても、また本電子デバイスの高温状態においても、これらの機能層を介して互いに電気的に導通して接続されているように、これらの機能層は小さな電気比抵抗を有するように構成されて形成されている。
【0023】
この高温状態とは、この電子デバイスのその初期状態よりも高い温度でのこのデバイスの状態を意味している。上記の初期状態と上記の高温状態との間の温度範囲は、たとえば-55℃~+180℃に渡るどのような温度範囲であってよく、すなわちこの範囲に渡るものであってよい。好ましくは、上記の初期状態と上記の高温状態との間の温度範囲は、-40℃~+150℃の範囲に渡っていてよい。さらに、本電子デバイスは、1つのNTCデバイスであり、すなわち負の温度係数を有する1つの高温導体デバイスである。この観点から、本電子デバイスの高温状態とは、好ましくはたとえば印加された電力によって加熱された本電子デバイスの1つの状態を表すものである。さらにこの高温状態とは、好ましくはこのデバイスの1つの一定した温度状態であってよい。
【0024】
上記の第1の外部接続部と上記の第2の外部接続部との間の電気的に導通した接続によって、特に本電子デバイスの上記の初期状態においては、たとえば25℃での初期状態においてΩまたはkΩ領域の電気抵抗を有する従来のNTCデバイスに対して、たとえば本電子デバイスに対して適宜直列に回路接続されて用いられる1つの電気的負荷の突入電流を、スイッチオン時の電圧が他の重要な電子部品の電源用にはまだ十分に高くなっている程度に制限することができる。
【0025】
1つの実施形態例によれば、本デバイスは少なくとも1つのヒートシンクに熱的に結合されている。これは本デバイスの動作中での本デバイスの加熱を制限するために寄与するものである。好ましくは以上により、始動および/またはピーク温度での加熱が制御あるいは制限される。以上により本デバイスの機能性および長寿命性が向上される。上記のヒートシンクは、たとえば銅を含む。たとえばこのヒートシンクは、銅板である。
【0026】
1つの態様によれば、1つの電子デバイスを製造するための方法が示される。好ましくは、この方法によって上述のデバイスが製造される。上記のデバイスおよび/または上記のNTCセラミックに関して記載された全ての特徴は、この方法に対しても適用されるものであり、またこの逆も成り立つものである。
【0027】
本方法は、以下の処理ステップを備える。
-セラミック粉末を準備するステップ。たとえばLa,SrCO,およびMnが準備され、そして化学等量的な量で計量される。しかしながらこのセラミック粉末用に他の材料も考えられる。
-このセラミック粉末をか焼するステップ。たとえばこの粉末は、か焼処理において6時間にわたって900°に加熱される。この際CO2が逃げ出すことができ、そして個々の原材料が反応して所望の化学結合となるようにすることができる。
-顆粒材を生成するために上記セラミック粉末を水と混合するステップ。この水との混合およびこれに続く粉砕は、充分な焼結活性を得るために用いられる。この水を蒸発させた後に、上記の顆粒材を生成するために、好ましくは結着剤が添加される。
-この顆粒材をプレスするステップ。たとえばこのステップにおいて、円柱形状のデバイスが乾燥プレスによって生成される。
-結着剤を燃やし尽くすステップ(脱炭)。この結着剤は、好ましくは400~500℃で燃やし尽くされる。
-上記の顆粒材を焼結するステップ。このステップにおいては、上記の顆粒材あるいはこの顆粒材からプレスされたデバイスは、たとえば1250℃で焼結される。
-この焼結された基体を銀ペーストを用いて接続するステップ。
【0028】
上記の方法によって、突入電流の制限用に使用することができる、コンパクトで安価なデバイスが製造される。このデバイス(NTCセラミック)の非常に大きな導電率によって、上記の突入電流リミッタは、安価でモノリシックなデバイス(小円盤、小板、等)として実現することができる。
【0029】
もう1つの態様によれば、1つの電子デバイスを製造するための方法が提示される。好ましくは、この方法によって上述のデバイスが製造される。上記のデバイスおよび/または上記のNTCセラミックに関して記載された全ての特徴は、この方法に対しても適用されるものであり、またこの逆も成り立つものである。
【0030】
本方法は、以下の処理ステップを備える。
-機能層を形成するためのグリーンシート(複数)を準備するステップ。これらのグリーンシートは、好ましくは上述のNTCセラミック材料を含む。具体的にはこれらのグリーンシートはNTCセラミックまたはNTCセラミック層の製造用である。これらのグリーンシートは、好ましくは、たとえば焼結されていない1つの原材料から成る層(複数)である。
-グリーンシート(複数)に内部電極(複数)を設けるステップ。これらのグリーンシートは、好ましくはそれぞれ少なくとも1つの内部電極または内部電極層によって印刷されている。これらの内部電極は、たとえばシルクスクリーン印刷によって、これらのグリーンシート上に印刷されてよい。
-これらの内部電極が設けられているグリーンシート(複数)を1つの積層体となるように積層するステップ。この積層は、好ましくは、上記の内部電極(複数)がそれぞれ2つの隣接するグリーンシートの間に配設されるように行われる。
-この積層体をプレスするステップ。好ましくはこの積層体は1つのブロックとなるようにプレスされる。この処理は、たとえばさらにこのブロックを部分ブロック(複数)に個々に分離することを含む。好ましくはこのブロックは、このブロックを個々に分離するために裁断される。
-1つの好ましい実施形態においては、上記の積層体あるいは上記のプレスされたブロックは、続いて熱的に処理される。この熱的処理は、たとえば上記の積層体あるいは上記のブロックの脱炭を含む。1つの好ましい実施形態においては、上記の積層体あるいはブロックは、この熱的処理の際に焼結される。この焼結は、好適には上記の脱炭の後に行われる。
-上記の積層体あるいは上記のブロックに外部接続部(複数)を設けるステップ。これらの外部接続部は、好ましくは銀、銅、または金を含む。
【0031】
上記の方法によって、突入電流を制限するために使用することができるデバイスを製造することができる。このデバイスの機能層(NTCセラミック)の非常に大きな導電率によって、とりわけ効果的な突入電流リミッタを提供することができる。
【0032】
もう1つの態様によれば、少なくとも1つの電子デバイスを有する1つのシステムが開示される。このデバイスは、好ましくは上述のデバイスに相当している。上記のデバイスに関して記載された全ての特徴は、このシステムに対しても適用されるものであり、またこの逆も成り立つものである。
【0033】
本システムは、2つ以上のデバイス、たとえば3つの電子デバイスを備えてもよい。これらの複数あるいは大部分のデバイスは、互いに並列に回路接続されている。さらに本システムは、1つの負荷装置を備え、この負荷装置は、上記の電子デバイスに対して直列に電気的に回路接続されており、上記の電子デバイスと共に環境温度に曝露されている。さらに本システムは適宜、1つの電力源を備えてよく、この電力源は、上述の突入電流を供給するように構成されている。
【0034】
本システムは、加熱時間、すなわち上記の負荷装置の突入電流が上記の電子デバイスを定常状態の温度まで加熱する時間が、この負荷装置の電気的な立上り時間に合わせられるように構成されている。この電気的な立上り時間は、いつ上記の突入電流が上記の負荷装置の公称電流まで低下するかを決定している。
【0035】
上記の定常状態の温度は、好ましくは本電子デバイスの上述の高温状態の温度となっている。さらに、上記の定常状態の温度は、好ましくは、代替としてまたは追加的に、本システムの1つの平衡温度および/または1つの動作温度を表している。上記の定常状態の温度は、好ましくは120℃となっている。
【0036】
上記の立上り時間への上記の加熱時間の合わせ込みによって、あるいはこの逆によって、たとえば上記の加熱時間が電気的な立上り時間に対して短か過ぎると評価されている場合に対して、電気的に本システムまたは上記の負荷装置と相互作用する、他の部品の損傷を防止することができる。さらに上述の合わせ込みによって、たとえば上記の加熱時間が電気的な立上り時間に対して長すぎると評価されている場合に対して、上記の負荷装置の適切な許容され得る動作を、たとえば上述の、本システムまたはこの負荷装置と相互作用する、他の部品と協働して実現することができる。上述した他の部品は、上記したように、ABSまたはESPシステム等の自動車の車載電源の電気部品であってよい。
【0037】
上記の加熱時間は、好ましくは、または好適には、上記の立上り時間に等しいかまたは僅かにこれより短くなっている。全体として、本電子デバイスおよび/または本システムは、好ましくは、上記の加熱時間および上記の立上り時間が少なくとも概ね等しくなるように構成されている。
【0038】
実施形態例とこれに付随する図を参照して、本発明を以下に詳細に説明する。
【0039】
以下に説明する図面は、寸法を正確に示すものではない。むしろより見易いように、個々の寸法は、拡大、縮小、または歪んで表示されていることがあり得る。
【0040】
互いに同じ要素、または同じ機能を担う要素は、同じ参照番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】1つの電子デバイスの概略断面図を示す。
図2】もう1つの実施形態による電子デバイスの概略側面図を示す。
図3図1または2に示す1つのデバイスおよび1つの負荷装置を備える1つのシステムの概略図を示す。
図4】本電子デバイスの回路接続有り/無しの場合の、1つの負荷装置の突入電流変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、1つの電子デバイス10の概略断面図を示す。本電子デバイスは、好ましくは1つのNTCデバイスである。電子デバイス10は、好ましくは突入電流リミッタとして使用され、具体的には自動車用の「スタート/ストップシステム」における電気スタータモータ用に使用される。
【0043】
この実施形態例においては、本デバイス10は1つの多層デバイスである。このデバイス10は、複数の第1の内部電極1を備える。このデバイス10は、複数の第2の内部電極2を備える。これらの第1および第2の内部電極1,2は、交互に重なって配設されている。これらの第1および第2の内部電極1,2は、好ましくは同様に形成されている。さらに第1の内部電極(複数)1は、この電子デバイス10を上面から見ると、たとえば1つの電気的に活性な領域である重なり領域を形成するために、第2の内部電極(複数)2と重なっている。
【0044】
さらにこの電子デバイス10は、1つの第1の外部接続部11を備える。この第1の外部接続部11は、この電子デバイス10の1つの第1の側面に配設されている。第1の内部電極(複数)1は、第1の外部接続部11と電気的に導通するように接続されている。好ましくはこの第1の外部接続部11は、銀を含む。
【0045】
さらにこの電子デバイス10は、1つの第2の外部接続部12を備える。この第2の外部接続部12は、この電子デバイス10の1つの第2の側面に配設されている。この第2の側面は、上記の第1の側面の反対側にある。第2の内部電極(複数)2は、第2の外部接続部12と電気的に導通するように接続されている。好ましくはこの第2の外部接続部12は、銀を含む。
【0046】
電子デバイス10は、複数の機能層すなわち活性層3を備える。これらの機能層3は、上下に重なって1つの積層体となるように配設されている。上記の内部電極1,2およびこれらの機能層3は、具体的には交互にあるいは交代して1つの積層体となるように配設されている。第1および第2の内部電極(複数)1,2の各々は、2つの隣り合う機能層3の間に配設されている。
【0047】
それぞれの機能層3は、1つのセラミック材料を含む。具体的には、機能層3は、1つのNTCセラミックを含む。 それぞれの機能層3は、上記のNTCセラミックからなっている。このNTCセラミックは以下の化学式の組成を備える。La(1-x)EA(x)Mn(1-a-b-c)Fe(a)Co(b)Ni(c)(3±δ)
【0048】
上式で0≦x≦0.5、および0≦(a+b+c)≦0.5である。EAは、アルカリ土類元素、たとえばMg,Ca,Sr,またはBaを表す。δは、化学当量的な酸素の比率からのずれ(酸素過多あるいは酸素不足)を表す。好ましくは|δ|≦0.5であり、とりわけ好ましくは|δ|=0である。たとえば、上記のNTCセラミックは、La0.95Sr0.05MnOの組成を備える。
【0049】
機能層(複数)3は、好ましくは同様に、または類似して形成されている。それぞれの機能層3は、厚みすなわち垂直方向の大きさ(以下では層厚と称する)を有する。機能層(複数)3の層厚は、好ましくは10μm~100μm,または10μm~50μmとなっており、たとえば40μmとなっている。それぞれの機能層3の層厚は、それぞれの機能層3が所定のあるいは特定の抵抗を備えるように設定されている。具体的にはこの機能層3の層厚によって、この機能層3の抵抗および通電容量を変化させ、そして調節することができる。
【0050】
それぞれの機能層3は、1つの決まった面積または1つの決まった断面積(以下では「水平方向の大きさ」と称する。)を備える。この水平方向の大きさは、この機能層3の幅および長さによって決定される。この幅は好ましくは、4.0~5.0mmとなっており、たとえば4.8mmである。この長さは好ましくは、5.0~6.0mmとなっており、たとえば5.6mmである。
【0051】
それぞれの機能層3の水平方向の大きさは、それぞれの機能層3が所定のあるいは特定の抵抗を備えるように設定されている。具体的にはこの機能層3の水平方向の大きさによって、この機能層3の抵抗および通電容量を変化させ、そして調節することができる。好ましくはこのそれぞれの機能層3の電気抵抗は、25℃の温度では、mΩ領域にあり、たとえば15mΩまたは20mΩとなっている。換言すれば、この機能層3は、好ましくは、25℃の温度で1つの非常に小さな電気抵抗を有し、これにより1つの非常に大きな導電率を有する。
【0052】
それぞれの機能層3の所定の水平方向および/または垂直方向の大きさを選択することにより、電流負荷容量および/または通電容量を、たとえば従来のNTCデバイスに対して、数百Aの電流値まで大きくすることができる。
【0053】
好ましくは、本電子デバイス10の第1および第1の外部接続部11,12が、本電子デバイスの初期状態においても、また高温状態(動作状態)においても、これらの機能層3を介して電気的に導通して互いに結合されているように、これらの機能層3は形成されている。
【0054】
本電子デバイス10のそれぞれの機能層3の初期状態における電気比抵抗は、たとえば25℃の温度で、好ましくは0.1Ωcm~0.2Ωcmとなっており、たとえば0.145Ωcmとなっている(ここで表1も参照)。
【0055】
機能層3のB定数(サーミスタ定数)は、好ましくは3000Kより小さくそして1500Kより大きくなっており、たとえば1650~1750K、好ましくは1700Kとなっている(ここで表1も参照)。
【0056】
上述の初期状態は、好ましくは本電子デバイスの温度が25℃および/または室温でのものを表している。上記の高温状態とは、好ましくは本電子デバイス10の温度が、上記の初期状態での本電子デバイス10の温度よりも高いことを表している。この高温状態は、好ましくは本電子デバイス10が動作温度にあると見做される動作状態である。この動作温度は、1つの定常的な温度、たとえば負荷時のデバイス10の定常状態の温度であってよい。これに対して上記の初期状態は、好ましくは本デバイス10の無負荷時の状態を表している。
【0057】
上記の初期状態と上記の高温状態との間の温度範囲は、たとえば-55°~+180℃の温度範囲に渡り得る。とりわけ好ましくは、上記の初期状態と上記の高温状態との間の温度範囲は、-40℃~+150℃の領域に渡っていてよい。
【0058】
デバイス10のその動作中の加熱を制限するために、このデバイス10は1つのヒートシンクに熱的に結合されていてよい。このヒートシンクは、たとえば銅板を備えてよい。このヒートシンクを用いて、始動時およびピーク温度での加熱を制御あるいは制限することができる。
【0059】
図1に示すものと異なり、本電子デバイス10は、1つのとりわけ好ましい実施形態例においては、1つの小円盤または1つの基板の形態で実装されていてよい(図2参照)。具体的にはこのデバイス10は、この実施形態例においては1つのモノリシックなデバイスである。
【0060】
本デバイス10は、この実施形態例においては、ただ1つの機能層すなわち活性層3を備える。この機能層3は、1つの外部メタライジング部を、たとえば1つの第1の外部接続部11および1つの第2の外部接続部12の形態で備える。これらの外部接続部11,12は、たとえばこの機能層3の対向している側面(複数)に配設されている。しかしながら代替としてこれらの外部接続部11,12は、図2に示すように、この機能層の上面および下面に配設されていてもよい。これらの外部接続部11,12は、好ましくは銀を含む。このデバイス10の電気的な接続は、たとえばはんだ付けされた導電性のリード(不図示)を用いて行われる。
【0061】
この実施形態例における機能層3は、たとえば15mmより小さい直径、たとえば10mmの直径を有する。この機能層3は、好ましくは0.5mmより小さい厚さ、たとえば0.1mm、とりわけ好ましくは0.3mmの厚さを有する。既に図1を参照して説明したように、この機能層3の厚さによって、この機能層3の抵抗および通電容量を変化させることができる。
【0062】
図2に示すデバイス10は、図1を参照して説明したデバイス10よりも小さな厚さすなわち垂直方向の大きさを備える。メタライジング部および接続部を有する完成したデバイス10は、たとえば0.5mm以下の厚さを備える。
【0063】
本電子デバイス10の初期状態における機能層3の電気比抵抗は、既に図1を参照して説明したように、好ましくは0.1Ωcm~0.2Ωcmとなっており、たとえば0.145Ωcmとなっている(ここで表1も参照)。以上によりこの機能層3は、室温あるいは25℃で、非常に小さな抵抗を備え、そしてこの結果非常に大きな導電性を備える。以上により、突入電流の制限用の、簡単で、そして安価なデバイスを実現することができ、このデバイスは、これらのアプリケーションで要求されているように、低電圧かつ大電流で動作することができる。
【0064】
本電子デバイス10の電流負荷容量および/または通電容量は、複数の図2に示すデバイス10の並列接続によって、さらに強化することができる。たとえば、通電容量をさらに大きくし、そして電気抵抗を下げるために、3つのデバイス10が並列に回路接続されてよい。
【0065】
図2に示すデバイス10の他の全ての特徴、具体的にはその機能性および機能層3の構成(NTCセラミック)は、図1を参照して説明した特徴と同様である。
【0066】
図2に示すデバイス10は、たとえば以下のように製造される。ここでは、例示的に、La0.95Sr0.05MnOの組成を備える機能層3を有するデバイス10を説明する。当然ながら、これに関しては、上記の式で示すNTCセラミック以外の組成も可能である。
【0067】
このデバイス10の製造は、いわゆる「混合酸化物処理」によって行われる。この処理では、まずLa,SrCO,およびMnが、化学等量的に計量され、そして湿式粉砕される。この粉砕は、遊星ボールミルで、ZrOから成る粉砕ビーズを用いて行われる。この粉砕の経過は、結晶粒サイズの分布を監視することによって制御され、そしてd(90%)<1.5μmの場合に終了する。
【0068】
続いてこのスラリーは乾燥され、そして篩過される。ここで得られた粉末は、か焼処理において6時間にわたって900°に加熱される。この際生成されたCO2が逃げ出すことができ、そして個々の原材料が反応して所望の化学結合となるようにすることができる。この反応が完全であることは、XRD分析を用いて検査されて確認される。
【0069】
充分な焼結活性を得るために、上記の粉末は新たに水と混合され、そして中程度の結晶粒サイズ0.5μmとなるまで粉砕される。水を蒸発させたのち、この粉末は、乾式プレスに適した顆粒材が生成されるように、適合した結着剤と混合される。ここで円柱形状のデバイスがタブレットプレスによって製造され、そして続いて加熱炉で1250℃で焼成される。
【0070】
高密度焼結されたデバイスは、この後適宜グラインディングされ、そして銀ペーストを用いて接続させられる。完成したデバイスについて、-30℃~+180℃の温度範囲で抵抗が測定される。
【0071】
上述の製造方法で製造された3つのデバイス10の測定結果が表1に示されている。この表1は、具体的にはそれぞれのデバイス10の焼結密度、25℃での比抵抗、ならびにB定数を示している。
【0072】
表1:上述の製造方法による3つのデバイスの測定結果
【0073】
以下に表2は、セラミック組成の他の実施例を示す。ここでは同様な製造条件下での様々なセラミック組成が検査されている。
表2:NTCセラミックの組成の範囲からの様々な処方のもの測定結果。
【0074】
図3は、1つのシステム200を示し、このシステムにおいては、本発明による電子デバイス10が、1つの電気的負荷装置20と直列に回路接続および/または配設されている。
【0075】
このシステム200においては、本電子デバイス10およびこの負荷装置20の1つの共通な環境温度では、上記の加熱時間、すなわちこの負荷装置20の突入電流が本電子デバイス10あるいは本構成体100を1つの定常的な温度に加熱するかまたは加熱した時間は、好ましくはこの負荷装置20の電気的立上り時間に合わせ込まれている。この電気的立上り時間は、この負荷装置20の突入電流がいつその公称電流まで低下するかを決定している。たとえばこの立上り時間は、約50msとなっている。上記の定常的な温度は、たとえば、本デバイス10に供給される電力が熱伝導および/または熱放射を介して外部環境に放出され、本デバイス10の温度がさらに上昇しないような状態であることを表している。
【0076】
本システム200の1つの例示的な実施形態においては、上記の加熱時間および上記の電気的な立上り時間は等しくなっている。本システム200のもう1つの例示的な実施形態においては、上記の加熱時間および上記の電気的な立上り時間は0.5~1.5の比で相互に密接に関連している。
【0077】
以上のような合わせ込みにより、具体的には本システム200の動作は、たとえば自動車における突入電流リミッタとして最適化することができる。
【0078】
以上より本システム200はさらに、1つの電力源(図には明示されていない)を備えてよく、この電力源は、好適には、上述の突入電流を提供するように構成されている。
【0079】
図4は、突入電流リミッタが有り/無しの場合の負荷装置20の電気的な突入電流変化を示す。この負荷装置20は、好ましくは自動車の1つの電気的なスタータモータである。ここでは例示的に、図2に示すデバイス10が負荷装置20に対して直列に回路接続されている。この結果、デバイス10は、例示的に上述のNTCセラミックから成る1つの機能層3を有する小円盤として実装されたデバイス10となっている。この機能層3は、ここでは10mmの直径および0.1mmの厚さを備える。当然ながら本デバイス10の他の直径および他の厚さあるいは他の構造も有り得、たとえば図1に示す構造もあり得る。
【0080】
図4には、電流(I)が、時間に対して記載されている(左側の縦軸参照)。ここで0秒の時刻は、スイッチオン時の瞬間に対応している。さらに、右側の縦軸には、本電子デバイス10に印加される電圧(U)が記載されている。
【0081】
点線はそれぞれ、突入電流リミッタとして本デバイス10が直列に接続されている場合の電流変化あるいは電圧変化を表し、これに対し連続した線は、本デバイス10の無い、すなわち突入電流の制限の無い場合に対応する負荷装置20の電圧変化を表している。
【0082】
突入電流Iがスイッチオンの直後に、すなわちたとえばスイッチオン後の最初の10msで、本デバイス10が突入電流リミッタとして直列に回路接続されている場合と比較すると、顕著に大きくなっていることが分る。
【0083】
これに対応して、スイッチオン直後の電圧降下が、たとえば最初の40ms内では、突入電流リミッタが無い場合は、突入電流リミッタがある場合よりも大きくなっている。具体的には電圧Uは、突入電流リミッタ無しでは、スイッチオン直後に12Vから約6.5Vに降下する。本デバイス10を用いて、始動ステップの際の電圧低下が、デバイス10の無い負荷装置20と比較して約1V低減される。デバイス10を用いることで、スイッチオン直後に、電圧Uは具体的には12Vから7.4Vに降下する。
【0084】
本発明は上記の実施形態例を参照した説明によって限定されない。むしろ本発明は、特に請求項中の特徴の組み合わせそれぞれが含むいかなる新規な特徴、並びにいかなる新規な特徴の組み合わせをも、たとえその特徴またはその組み合わせがそれ自体として請求項または実施例に明示されていなくとも、含むものである。
【符号の説明】
【0085】
1 : 第1の内部電極
2 : 第2の内部電極
3 : 機能層/活性層
10 : 電子デバイス
11 : 第1の外部接続部
12 : 第2の外部接続部
20 : 負荷装置
200 : システム

I : 電流変化
U : 電圧変化
図1
図2
図3
図4