(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】巻線装置及び巻線方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
H02K15/04 B
(21)【出願番号】P 2020118466
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】杉本 進司
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 敬之
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特公平06-012945(JP,B2)
【文献】特開2018-064404(JP,A)
【文献】特開2018-082554(JP,A)
【文献】特開2018-107983(JP,A)
【文献】実開昭62-048163(JP,U)
【文献】特開2005-080363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段(26)により回転する回転板(27)と、前記回転板(27)に回転中心を挟むように立設された一対の柱状部材(28,29)と、前記一対の柱状部材(28,29)に分割して取付けられた巻芯(36,37,38)を有し、前記回転板(27)の回転により前記一対の柱状部材(28,29)と共に回転する前記巻芯(36,37,38)に線材(16)を巻取る巻線装置において、
前記一対の柱状部材(28,29)が前記回転板(27)の回転中心を通過する直線上にそれぞれ移動可能に立設され、
前記回転板(27)の回転中心から前記一対の柱状部材(28,29)を等距離に保持する保持手段(43)が設けられ
、
前記保持手段(43)が、前記回転板(27)の回転中心を含み前記一対の柱状部材(28,29)の移動方向に直交して前記回転板(27)の回転軸に平行に移動可能に設けられた可動板(48)と、前記一対の柱状部材(28,29)に傾斜面が対向するように前記可動板(48)の両側に対称構造を成して設けられた一対の楔部材(44,44)と、前記一対の楔部材(44,44)を前記可動板(48)とともに移動させる楔移動手段(45)と、を有する
ことを特徴とする巻線装置。
【請求項2】
楔部材(44,44)が、可動板(48)に移動方向に延びて設けられた台形又は三角板(44a)と、前記台形又は三角板(44a)の柱状部材(28,29)に臨む傾斜面に設けられたレール(44b)とを有し、前記レール(44b)を移動可能な移動ブロック(28a,29a)が柱状部材(28,29)に取付けられた
請求項1記載の巻線装置。
【請求項3】
楔移動手段(45)が、回転軸(46a)の回転数を調整可能な操作用モータ(46)と、前記回転軸(46a)の回転により回転する雄ねじ(47)と、前記雄ねじ(47)が螺合し可動板(48)に連結された制御円板(49)とを有し、前記雄ねじ(47)の回転により移動する前記制御円板(49)により前記可動板(48)が一対の楔部材(44,44)とともに移動可能に構成された
請求項1又は2記載の巻線装置。
【請求項4】
駆動手段(26)により回転する回転板(27)と、前記回転板(27)に回転中心を挟むように立設された一対の柱状部材(28,29)と、前記一対の柱状部材(28,29)に分割して取付けられた巻芯(36,37,38)を有し、前記回転板(27)の回転により前記一対の柱状部材(28,29)と共に回転する前記巻芯(36,37,38)に線材(16)を巻取る巻線装置において、
前記一対の柱状部材(28,29)が前記回転板(27)の回転中心を通過する直線上にそれぞれ移動可能に立設され、
前記回転板(27)の回転中心から前記一対の柱状部材(28,29)を等距離に保持する保持手段(43)が設けられ、
前記巻芯
(36,37,38)が、
前記一対の柱状部材(28,29)の先端の回転半径外側に分割してそれぞれ取付けられた内巻芯(36)と、
前記一対の柱状部材(28,29)に分割してそれぞれ移動可能に設けられ前記内巻芯(36)を所定の隙間を空けて覆う1又は2以上の外巻芯(37,38)と、を有し、
前記1又は2以上の外巻芯(37,38)が前記内巻芯(36)を覆う巻位置と前記外巻芯(37,38)が前記内巻芯(36)から回転板(27)の回転軸方向にずれた待機位置との間で前記1又は2以上の外巻芯(37,38)を往復移動させる巻芯移動手段(55,65)を備えた
ことを特徴とする巻線装置。
【請求項5】
駆動手段(26)により回転する回転板(27)と、前記回転板(27)の回転中心を通過する直線上に移動可能に立設された一対の柱状部材(28,29)と、前記一対の柱状部材(28,29)に分割して取付けられた巻芯(36,37,38)を有する装置を用い
、
間隔を調整した前記一対の柱状部材(28,29)を前記回転板(27)の回転中心から等距離に保持し、
その後に前記回転板(27)を回転させて前記一対の柱状部材(28,29)と共に回転する前記巻芯(36,37,38)に線材(16)を巻取る
巻線方法において、
前記回転板(27)の回転軸に平行に移動可能に設けられた可動板(48)の両側に、前記一対の柱状部材(28,29)に傾斜面が対向するように一対の楔部材(44,44)を対称構造を成して設け、
前記一対の楔部材(44,44)を前記可動板(48)とともに移動させることにより前記一対の柱状部材(28,29)の間隔を調整する
ことを特徴とする巻線方法。
【請求項6】
駆動手段(26)により回転する回転板(27)と、前記回転板(27)の回転中心を通過する直線上に移動可能に立設された一対の柱状部材(28,29)と、前記一対の柱状部材(28,29)に分割して取付けられた巻芯(36,37,38)を有する装置を用い
、
間隔を調整した前記一対の柱状部材(28,29)を前記回転板(27)の回転中心から等距離に保持し、
その後に前記回転板(27)を回転させて前記一対の柱状部材(28,29)と共に回転する前記巻芯(36,37,38)に線材(16)を巻取る
巻線方法において、
前記一対の柱状部材(28,29)の先端の回転半径外側に分割してそれぞれ取付けられた内巻芯(36)と、前記内巻芯(36)を覆う巻位置と前記内巻芯(36)から前記回転板(27)の回転軸方向にずれた待機位置との間で往復移動可能な外巻芯(37,38)とを備えた巻芯を用い、
前記外巻芯(37,38)を待機位置に配した状態で前記回転板(27)を回転させて前記一対の柱状部材(28,29)と共に回転する前記内巻芯(36)に線材(16)を巻取り、
その後、前記外巻芯(37,38)を巻位置に配した状態で前記回転板(27)を回転させて前記一対の柱状部材(28,29)と共に回転する前記外巻芯(37,38)に線材(16)を巻取る
ことを特徴とする巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機やモータ等のステータコアのスロットに挿入されるコイルを作製するのに適した巻線装置及び巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発電機やモータの固定子は、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)及びその間に開口する複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、そのスロットにコイル辺部を納めることによりそのコアに組み付けられたステータコイルとを備える。このステータコイルの組み付けに関しては、ステータコイルをステータコアと別に予め作製し、その後に、このコイルをコアの各スロットに収容するいわゆるインサータ方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このインサータ方法に用いられるコイルにあっては、線材を環状に巻回してトラック状とし、両側における直線部分をステータコアのスロットに納めるようにすることが知られている。そして、スロットに挿入されたステータコイルは、スロットに納められた部分がコイル辺部となり、コイルのスロットに挿入されずにステータコアの端面から突出した残りの部分がコイルエンド部となる。
【0004】
そして、このインサータ方法に用いられるコイルを得る為の、巻線装置を用いた線材の巻回にあっては、その抵抗値を発電機やモータの設計値に収めるため、得られたコイルのステータコアの端面から突出する部分(コイルエンド)の長さを伸ばしたり縮めたりして、コイルを構成することになる線材の全長を増減させ、得られたコイルの抵抗値を設計値に収めるような調整が行われる。
【0005】
また、コイルを構成する線材は規格内でばらつきがあり、線材の製造時期などが変わる度に又は同じ製造時期であっても得られたコイルの抵抗値が変わる可能性がある。このため、線材を巻回する巻線装置では、得ようとするコイルの抵抗値に合わせて線材張力を変更することで対応を行っているけれども、線材の抵抗が大きく変わる場合は張力調整だけでは許容できなくなり、巻線装置において線材が巻回される巻芯の外形を変更する必要が出てくる場合がある。
【0006】
即ち、張力調整だけで線材の抵抗を許容できない場合には、巻線装置において線材が巻回される巻芯の外形を変更して、その巻芯に巻回される線材の長さを変更し、得ようとするコイルの抵抗値が大きく成ると予想される場合にはその巻芯に巻回される線材の長を短くして線材の抵抗を低減させ、得ようとするコイルの抵抗値が小さく成ると予想される場合にはその巻芯に巻回される線材の長を長くして線材の抵抗を増加させるようなことが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、巻線装置において線材が巻回される巻芯の外形を変更する場合、異なる外形を有する複数の巻芯を準備し、既に取付けられている巻芯を他の巻芯と交換する事で対応することになるけれども、巻芯を交換すると巻線位置が微妙に異なるため、整列巻線を行う場合には巻芯を交換する度に巻線プログラムを変更するなどして巻線調整をする必要があり、この巻線調整に比較的時間が係る不具合があった。
【0009】
本発明の目的は、巻回される線材の長さを容易に変更し得る巻線装置及び巻線方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、駆動手段により回転する回転板と、回転板に回転中心を挟むように立設された一対の柱状部材と、一対の柱状部材に分割して取付けられた巻芯を有し、回転板の回転により一対の柱状部材と共に回転する巻芯に線材を巻取る巻線装置の改良である。
【0011】
その特徴ある構成は、一対の柱状部材が回転板の回転中心を通過する直線上にそれぞれ移動可能に立設され、回転板の回転中心から一対の柱状部材を等距離に保持する保持手段が設けられところにある。
【0012】
保持手段は、回転板の回転中心を含み一対の柱状部材の移動方向に直交して回転板の回転軸に平行に移動可能に設けられた可動板と、一対の柱状部材に傾斜面が対向するように可動板の両側に対称構造を成して設けられた一対の楔部材と、一対の楔部材を可動板とともに移動させる楔移動手段と、を有することが好ましい。
【0013】
この場合、楔部材が、可動板に移動方向に延びて設けられた台形又は三角板と、台形又は三角板の柱状部材に臨む傾斜面に設けられたレールとを有し、レールを移動可能な移動ブロックが柱状部材に取付けられることが好ましく、楔移動手段が、回転軸の回転数を調整可能な操作用モータと、その回転軸の回転により回転する雄ねじと、その雄ねじが螺合し可動板に連結された制御円板とを有し、雄ねじの回転により移動する制御円板により可動板が一対の楔部材とともに移動可能に構成することが更に好ましい。
【0014】
また、巻芯が、一対の柱状部材の先端の回転半径外側に分割してそれぞれ取付けられた内巻芯と、一対の柱状部材に分割してそれぞれ移動可能に設けられ内巻芯を所定の隙間を空けて覆う外巻芯とを有する場合、外巻芯が内巻芯を覆う巻位置と外巻芯が内巻芯から回転板の回転軸方向にずれた待機位置との間で外巻芯を往復移動させる巻芯移動手段を備えことが好ましい。
【0015】
別の本発明は、駆動手段により回転する回転板と、回転板の回転中心を通過する直線上に移動可能に立設された一対の柱状部材と、一対の柱状部材に分割して取付けられた巻芯を有する装置を用いて巻線を行う巻線方法の改良である。
【0016】
その特徴ある点は、間隔を調整した一対の柱状部材を回転板の回転中心から等距離に保持し、その後に回転板を回転させて一対の柱状部材と共に回転する巻芯に線材を巻取るところにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の巻線装置及び巻線方法では、巻芯が分割して取付けられた一対の柱状部材を回転板の回転中心を通過する直線上にそれぞれ移動可能に立設したので、その一対の柱状部材の間隔を変更させることにより、巻芯を取り替えることなく、それらに分割して設けられた巻芯に巻回される線材の長さを変更させることが可能となる。
【0018】
そして、保持手段により回転板の回転中心から一対の柱状部材を等距離に保持することにより、それらに分割して設けられた巻芯の回転中心を回転板の回転中心と一致させることができ、迅速な巻線を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明実施形態における巻線装置の巻芯部の拡大正面図である。
【
図2】その一対の柱状部材の間隔が拡大された状態を示す
図1に対応する図である。
【
図3】その第一巻芯移動手段を示す
図6のC-C線断面図である。
【
図7】本発明実施形態における巻線装置の正面図である。
【
図8】その線材の端部を線材クリップに把持させた巻初めの状態を示す
図7に対応する図である。
【
図9】その線材が内巻芯に巻回されて内コイルが作製された状態を示す
図7に対応する図である。
【
図10】その線材が第一外巻芯に巻回されて中コイルが作製された状態を示す
図7に対応する図である。
【
図11】その線材が第二外巻芯に巻回されて外コイルが作製された状態を示す
図7に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1~
図7に、本発明の巻線装置20を示す。ここで、互いに直交するX、Y、Zの三軸を設定し、X軸が水平横方向、Y軸が水平前後方向、Z軸が垂直方向に延びるものとして本発明の巻線装置20について説明する。
【0022】
この実施の形態における巻線装置20は、巻線の対象が図示しない三相交流発電機の固定子に使用されるステータコイル12(
図14)を作製するものであって、ステータコイル12のコイル辺部13a,14a,15a(
図14)を図示しない固定子におけるスロットにそれぞれ挿通させる場合に有効なステータコイル12を作製するに適した巻線装置20である場合を示す。
【0023】
この実施の形態におけるステータコイル12は、1つの巻線層を形成するものではあるものの、それらのコイル辺部13a,14a,15a(
図14)を図示しない固定子の隣接する3つのスロットにそれぞれ挿通させるものであることから、コイル辺部間の間隔が異なる大中小3つの連続するコイル13,14,15から成るものを作製し得るものを示す。
【0024】
図1及び
図7に示す様に、このようなステータコイル12(
図14)を作製する本発明の巻線装置20は、駆動手段26により回転する回転板27と、回転板27にその回転中心を挟むように立設された一対の柱状部材28,29と、一対の柱状部材28,29に分割して取付けられた巻芯36,37,38を有するものであって、駆動手段26により一対の柱状部材28,29とともに回転する巻芯36,37,38に線材16を巻取ってステータコイル12(
図14)を作製するものである。
【0025】
この実施の形態における線材16は被覆導線であって、断面が円形を成すいわゆる丸線が用いられるものとする。なお、この線材16は断面が方形を成すいわゆる角線であっても良い。そして、線材16は線材繰出し部材31から繰出されるものとする。
【0026】
図示しないが、線材16はスプールに巻回されてそのスプールに貯線され、スプールから引出された線材16は図示しない伸張機により真っ直ぐにされ、その後に線材繰出し部材31にまで案内されるものとする。
【0027】
図7に示す様に、この実施の形態における線材繰出し部材31は、線材16を通過させる孔が形成された棒状部材であって、この線材繰出し部材31は、この線材繰出し部材31を3軸方向に移動可能な線材繰出し部材移動手段32を介して下部テーブル23に取付けられる。
【0028】
この実施の形態における線材繰出し部材移動手段32は、X軸、Y軸及びZ軸方向伸縮アクチュエータ33~35の組み合わせにより構成される。各伸縮アクチュエータ33~35は、サーボモータ33a~35aによって回動駆動されるボールネジ33b~35bと、このボールネジ33b~35bに螺合して平行移動する従動子33c~35cを備える。
【0029】
Z軸方向伸縮アクチュエータ35は、従動子35cが鉛直方向に移動可能に、そのハウジング35dがX軸方向伸縮アクチュエータ33の従動子33cに取付けられ、X軸方向伸縮アクチュエータ33は、従動子33cがX軸方向に移動可能に、そのハウジング33dがY軸方向伸縮アクチュエータ34の従動子34cに取付けられる。
【0030】
そして、Y軸方向伸縮アクチュエータ34は、従動子34cがY軸方向に移動可能に、そのハウジング34dがY軸方向に延びて下部テーブル23に取付けられ、Z軸方向伸縮アクチュエータ35の従動子35cに線材繰出し部材31がX軸方向に延びて取付けられる。
【0031】
なお、図示しないが、線材繰出し部材31には、線材繰出し部材31から繰出された線材16を咬持する咬持機構が設けられるものとする。
【0032】
図1に詳しく示す様に、この実施の形態において、回転板27を回転させる駆動手段は電動モータ26であって、回転板27はその中心が回転軸26aに同軸に取付けられて水平面内で回転するように構成される。また、一対の柱状部材28,29は、この回転板27の回転中心Cを挟むように、回転板27に回転板27の回転中心Cを通過する直線上にそれぞれ移動可能に立設される。
【0033】
即ち、この実施の形態における回転板27は円板状を成し、水平状態の中央が電動モータ26の回転軸26aに取付けられる。この回転板27には、その回転中心Cを通過する直径を示す直線に平行にレール41が取付けられる。
【0034】
一方、一対の柱状部材28,29は回転板27の鉛直方向に延びる回転中心に平行に設けられ。それらの上部には、レール41に係合してレール41の長手方向に往復移動可能な移動ブロック42がそれぞれ取付けられ、その移動ブロック42をレール41に移動可能に係止させることにより、一対の柱状部材28,29は、回転板27の回転中心を通過する直線上に移動可能に立設される。
【0035】
この巻線装置20には、一対の柱状部材28,29の間隔を可変可能であって、回転板27の回転中心から一対の柱状部材28,29を等距離に保持する保持手段43が備えられる。
【0036】
この実施の形態における保持手段43は、回転板27の回転中心Cを含み一対の柱状部材28,29の移動方向に直交して回転板27の回転軸に平行に移動可能に設けられた可動板48と、一対の柱状部材28,29に傾斜面が対向するように可動板48の両側に対称構造を成して設けられた一対の楔部材44,44と、その一対の楔部材44,44を可動板48とともに同時に同方向に同量移動させる楔移動手段45とを有する。
【0037】
図1及び
図5に示す様に、一対の楔部材44,44が両側に取付けられた可動板48の上端には回転板27の直径方向に延びる横材50aが設けられ、横材50aの両端には回転板27を移動可能に貫通する縦材50bの下端が取付けられる。回転板27の上方に突出する縦材50bの上端には、回転軸26aを包囲するドーナツ状の操作円板51が回転軸26aと同軸になるように取付けられる。
【0038】
図7に示すように、回転板27を包囲するように設けられて下部テーブル23を支持する複数の支柱21には、その回転板27の上方において上部テーブル22が水平に設けられ、この上部テーブル22に回転板27を回転させる駆動手段である電動モータ26が、その回転軸26aを下方に向けて取付けられる。
【0039】
図1~
図3に示す様に、この上部テーブル22の上面には、楔移動手段45を構成する操作用モータ46が設けられる。この操作用モータ46は、その回転軸46aの回転数を調整可能なものであって、電動モータ26を挟むように、その回転軸46aを下方に向けて一対設けられる。そして、それらの回転軸46aに雄ねじ47が同軸に設けられ、電動モータ26の回転軸26aを包囲するドーナツ状の制御円板49が操作円板51の上方においてその操作円板51と同軸にかつ平行に設けられる。そして、この制御円板49に雄ねじ47が螺合される。
【0040】
この制御円板49には、操作円板51の周囲に係合する係合部材52が設けられ、操作用モータ46が駆動して雄ねじ47を回転させると、その雄ねじ47が螺合する制御円板49が鉛直方向(Z軸方向)に昇降して、昇降する制御円板49とともに係合部材52が雄ねじ47の回転数に応じた量だけ昇降するように構成される。
【0041】
そして、制御円板49とともに係合部材52が昇降すると、その係合部材52を介してドーナツ状の操作円板51が可動板48と共に昇降し、その可動板48の両側に設けられた一対の楔部材44,44を同時に同方向に同角速度で昇降させるように構成される。
【0042】
可動板48は、回転板27の回転中心Cを含み一対の柱状部材28,29の移動方向に直交するように設けられ、一対の楔部材44,44は、この可動板48を対称面とする対称構造を成すように可動板48に取付けられる。
【0043】
この実施の形態における楔部材44は、三角板44aの傾斜面にレール44bが設けられたものを示し、このレール44bが下方に向かって互いに近づくように傾斜させた状態で、三角板44aが可動板48に取付けられるものとする。一方、一対の柱状部材28,29の楔部材44に臨む面には、そのレール44b上を移動する移動ブロック28a,29aが補助板28b,29bを介して取付けられる。
【0044】
このため、操作用モータ46が駆動して可動板48が一対の楔部材44,44とともに鉛直方向に移動すると、その傾斜するレール44bに従って移動ブロック28a,29aが設けられた一対の柱状部材28,29が、そのレール44bの傾斜に従って回転板27の直径方向に移動することに成り、一対の柱状部材28,29の間隔は変化することになる。
【0045】
例えば、可動板48が上昇した
図1に示す状態から、
図2に示す様に可動板48が実線矢印で示す様に下方に移動すると、その可動板48に設けられた楔部材44の下方に向かって互いに近づくように傾斜させたレール44bに沿って移動ブロック28a,29aが移動し、下方に移動することの無い移動ブロック28a,29aが設けられた一対の柱状部材28,29の間隔はレール44bの傾斜に従って拡大することになる。
【0046】
そして、一対の楔部材44,44は対称構造を有するので、回転板27の回転中心から一対の柱状部材28,29は等距離になり、操作用モータ46による可動板48の昇降を停止させると、一対の柱状部材28,29の移動も停止し、一対の柱状部材28,29の間隔を所定の値に保つように構成される。
【0047】
また、係合部材52はドーナツ状の操作円板51の周囲に係合して、その操作円板51の独立した昇降を禁止するけれども、その操作円板51の回転を許容するように構成され、その操作円板51と共に回転板27が回転することの障害となるようなことはない。そして、保持手段43により回転板27の回転中心Cから等距離に保持される一対の柱状部材28,29には巻芯36,37,38が分割して取付けられる。
【0048】
この実施の形態では、駆動手段26により一対の柱状部材28,29とともに回転して巻回される線材16により内コイル13(
図12及び
図14)を得る内巻芯36と、その内巻芯36を所定の隙間を空けて覆う2種類の外巻芯37,38を備える場合を示す。
【0049】
図1~
図5に示すように、内巻芯36は、一対の柱状部材28,29の下端に取付けられるものであって、この内巻芯36は、一対の柱状部材28,29の下端に水平になるようにそれぞれ取付けられた内台板36aと、それらの内台板36aにそれぞれ立設されて、掛け回される線材16により内コイル13(
図12)を作製する複数の内掛け回しピン36bとを備える。
【0050】
複数の内掛け回しピン36bは内台板36aの下面から下方に突出するように設けられ、それらの内台板36aに作製しようとする内コイル13の内周に沿って立設される。この実施の形態では、一対の内台板36aにそれぞれ2本の内掛け回しピン36bが立設されたものを示し、それら合計4本の内掛け回しピン36bは、得ようとする四角形状の内コイル13(
図12)の内周に沿って立設される場合を示す。
【0051】
このため、一対の柱状部材28,29を内巻芯36とともに回転させて、これら複数(4本)の内掛け回しピン36bに線材16を巻回させると、
図9及び
図12に示すように、一対の柱状部材28,29の下端におけるそれぞれの内掛け回しピン36bに掛け回された線材16がコイルエンド部13bを形成し、一対の柱状部材28,29との間に掛け渡される線材16がコイル辺部13aを形成する内コイル13を形成することになる。
【0052】
図1~
図5に戻って、その内巻芯36を所定の隙間を空けて覆う2種類の外巻芯37,38は、内巻芯36を包囲する第一外巻芯37と、その第一外巻芯37を更に包囲する第二外巻芯38を備える。
【0053】
第一外巻芯37は、内コイル13を包囲するような中コイル14(
図13)を得る為のものであって、
図1及び
図5に示す様に、この第一外巻芯37は、内台板36aの外周より大きな外周を有する中台板37aと、内台板36aの外周を超える中台板37aに立設されて掛け回される線材16により内コイル13を包囲する中コイル14を作製する複数の中掛け回しピン37bとを備える。
【0054】
また、第二外巻芯38は、中コイル14を更に包囲するような外コイル15(
図14)を得る為のものであって、この第二外巻芯38は、中台板37aの外周より大きな外周を有する外台板38aと、中台板37aの外周を超える外台板38aに立設されて掛け回される線材16により中コイル14を包囲する外コイル15を作製する複数の外掛け回しピン38bとを備える。
【0055】
図1~
図7に示すように、この実施の形態では、第一外巻芯37及び第二外巻芯38が一対の柱状部材28,29にそれぞれ移動可能に設けられる場合を示し、一対の柱状部材28,29には、回転板27の回転軸Cと平行に鉛直方向に延びて複数のレール53がそれぞれ設けられる。
【0056】
図3及び
図6に示す様に、中台板37aは、その内の一のレール41に昇降可能に取付けられた中可動体37dに取付けられ、中掛け回しピン37bは、その中台板37aの下面から下方に突出して、それらの中台板37aに作製しようとする中コイル14(
図13)の内周に沿って立設される。
【0057】
図1,
図2及び
図6に示す様に、外台板38aは、その他のレール41に昇降可能に取付けられた外可動体38dに取付けられ、外掛け回しピン38bは、その外台板38aの下面から下方に突出して、それらの外台板38aに作製しようとする外コイル15(
図14)の内周に沿って立設される。
図6に示す様に、この実施の形態における外可動体38dは、その断面がコ字状を成して、中可動体37dを包囲するようなものを例示する。
【0058】
この複数の中掛け回しピン37b及び外掛け回しピン38bは中台板37a及び外台板38aと共に昇降し、
図5に示すように、下降した状態で中台板37a及び外台板38aに立設された中掛け回しピン37b及び外掛け回しピン38bが内台板36aに立設された内掛け回しピン36bを周囲から覆う巻位置に至り、
図1~
図3に示すように、上昇した状態で中掛け回しピン37b及び外掛け回しピン38bが内台板36aに立設された内掛け回しピン36bから回転板27の回転軸方向にずれて、内巻芯36の回転半径外側を開放する待機位置との間を往復移動可能に構成される。
【0059】
図1~
図3に示すように、巻線装置20は、この第一外巻芯37及び第二外巻芯38を巻位置と待機位置との間を往復移動させる第一及び第二巻芯移動手段55,65を備える。この第一外巻芯37を往復移動させる第一巻芯移動手段55と、第二外巻芯38を往復移動させる第二巻芯移動手段65は同一構造であり、この第一巻芯移動手段55及び第二巻芯移動手段65は、回転板27の上方に位置して第一外巻芯37及び第二外巻芯38に連結されたドーナツ状の円板56,66と、上部テーブル22の上面に出没ロッド57a,67aを下方にして設けられたアクチュエータである流体圧シリンダ57,67をそれぞれ備える。
【0060】
回転板27には鉛直方向に延びる昇降棒58,68が中可動体37d及び外可動体38dに対応して貫通してそれぞれ設けられ、これら昇降棒58,68の下端には中可動体37d及び外可動体38dを回転板27の回転方向から挟む挟持板59,69がそれぞれ取付けられる。
【0061】
これらの挟持板59,69には回転板27の半径方向に延びる長孔59a,69a(
図1及び
図3)がそれぞれ形成され、中可動体37d及び外可動体38dには長孔59a,69aに進入可能な丸ピン37e,38eがそれぞれ設けられる。これにより、中可動体37d及び外可動体38dを含む第一外巻芯37及び第二外巻芯38が挟持板59,69と別に独立した昇降を禁止すると共に、この第一外巻芯37及び第二外巻芯38が一対の柱状部材28,29と共に、回転板27の回転半径方向への移動を許容するように構成される。
【0062】
昇降棒58,68の上端には電動モータ26における回転軸26a及びドーナツ状の操作円板51を同軸に包囲するドーナツ状の円板56,66が取付けられ、流体圧シリンダ57,67の出没ロッド57a,67aの下端には、円板56,66の周囲に係合する係合部材61,71が設けられる。
【0063】
そして、流体圧シリンダ57,67が出没ロッド57a,67aを出没させると、その下端に設けられた係合部材61,71を介して円板56,66を第一外巻芯37及び第二外巻芯38と共に昇降させ、第一外巻芯37及び第二外巻芯38を
図11に示す巻位置と
図7に示す待機位置との間を往復移動可能に構成される。
【0064】
ここで、係合部材61,71はドーナツ状の円板56,66の周囲に係合して、その円板56,66の独立した昇降を禁止するけれども、その円板56,66の回転を許容するように構成され、その円板56,66と共に回転板27が回転することを許容するように構成される。
【0065】
このため、
図10及び
図11に示すように、第一外巻芯37及び第二外巻芯38は、駆動手段である電動モータ26が駆動して回転板27が回転すると、その回転板27に立設された一対の柱状部材28,29とともに回転して、その第一外巻芯37及び第二外巻芯38におけるそれらの中掛け回しピン37bや外掛け回しピン38bに線材16が巻回されるように構成される。
【0066】
図7に示す様に、上部テーブル22を支持する支柱21の、一対の柱状部材28,29の下方において水平に設けられた下部テーブル23には、出没軸81aを上方に向けた流体圧シリンダ81が設けられる。流体圧シリンダ81の出没軸81aの上端には基台72が取付けられ、この基台72には回転軸77aを上方に向けた電動モータ77が設けられる。
【0067】
電動モータ77は、その回転軸77aが駆動手段26を構成する電動モータ26の回転軸26aと同軸になるように基台72に設けられ、その回転軸77aには回転テーブル73が水平面内で回転するように取付けられる。そして、回転テーブル73には、線材繰出し部材31から繰出される線材16の端部を把持する線材クリップ74が設けられる。
【0068】
この線材クリップ74は、回転テーブル73の外周近傍の上面に取付けられ、線材16が上方から進入可能なスリット74aが形成される。このスリット74aは、上端に開口して形成され、そのスリット74aに進入した線材16を拘持する図示しない拘持部材が内蔵される。
【0069】
この線材クリップ74には、その拘持部材を操作して、そのスリット74aに侵入した線材16を拘持する拘持状態と、そのスリット74aに侵入した線材16を拘持せずに解放する解放状態のいずれかに操作する操作レバー75が設けられる。そして、下部テーブル23には、この操作レバー75を操作するアクチュエータ76が設けられる。
【0070】
一方、流体圧シリンダ81は、この回転テーブル73をZ軸方向に昇降可能である点でテーブル移動手段を構成し、このテーブル移動手段である流体圧シリンダ81は、
図8に示すように、その回転テーブル73が上昇した状態で内巻芯36における内掛け回しピン36bの下端に上面が当接又は接近する近接位置と、
図7に示すように、下降した状態でその内掛け回しピン36bの下端との間に隙間を生じさせる離間位置との間で、その回転テーブル73を昇降可能に構成される。
【0071】
そして、駆動手段における電動モータ26は、各種の巻芯36,37,38が設けられた一対の柱状部材28,29を回転板27とともに回転させ、下部テーブル23における電動モータ77は、回転板27の回転中心を中心として回転する一対の柱状部材28,29とともに、このような線材クリップ74が設けられた回転テーブル73を同期して回転させるように構成される。これにより線材繰出し部材31から繰出される線材16を一対の柱状部材28,29に設けられた各種の巻芯36,37,38の周囲に巻取るように構成される(
図9,
図10及び
図11)。
【0072】
一方、線材繰出し部材移動手段32は、各種の巻芯36,37,38の回転とともに線材繰出し部材31を回転板27の軸方向に移動させて、線材繰出し部材31から繰出される線材16を、各種の巻芯36,37,38におけるそれぞれの掛け回しピン36b,37b,38bに螺旋状に整列させて巻回させるように構成される。
【0073】
次に、本発明の巻線方法について説明する。
【0074】
本発明の巻線方法は、駆動手段26により回転する回転板27と、その回転板27に回転中心を挟むように立設された一対の柱状部材28,29と、その一対の柱状部材28,29に分割して取付けられた巻芯36,37,38を有する装置を用いて巻線を行う巻線方法であって、その特徴有る点は、一対の柱状部材28,29を回転板27の回転中心Cを通過する直線上にそれぞれ移動可能に立設し、間隔を調整した一対の柱状部材28,29を回転板27の回転中心Cから等距離に保持した後に、回転板27の回転により一対の柱状部材28,29と共に回転する巻芯36,37,38に線材16を巻取るところにある。
【0075】
この巻線方法は、移動可能な一対の柱状部材28,29を備えた装置を用いることを前提とするので、この実施の形態では上述した巻線装置20を用い、
図14に示す様に、内コイル13と中コイル14と外コイル15が連続したステータコイル12を得るものとする。そして、その動作は、図示しないコントローラによって自動制御されるものとし、以下に各工程を詳説する。
【0076】
<準備工程>
上記巻線装置20を用いるため、先ず、線材16を線材繰出し部材31から繰出させる。具体的には、図示しないスプールに巻回されて貯線された線材16を準備し、そのスプールから線材16を引出し、図示しない伸張機により真っ直ぐにさせた線材16を線材繰出し部材31に挿通させ、図示しない咬持機構により咬持させる。
【0077】
図8に示すように、下部テーブル23に設けられた電動モータ77にあっては、回転テーブル73を回転させ、その外周近傍に取付けられた線材クリップ74を線材繰出し部材31に対峙させる。そして、線材繰出し部材移動手段32により線材繰出し部材31を移動させ、そこから突出する線材16の端部を線材クリップ74におけるスリット74aに進入させ、そこに内蔵された図示しない拘持部材により拘持させておく。
【0078】
<間隔保持工程>
この工程では、一対の柱状部材28,29の間隔を調整し、その一対の柱状部材28,29を回転板27の回転中心から等距離に保持する。この間隔の調整及び保持は保持手段43により行うことが出来る。
【0079】
具体的に、可動板48が上昇した
図1に示す状態であれば、保持手段43における操作用モータ46を駆動して、
図2の実線矢印で示す様に、可動板48を一対の楔部材44,44とともに鉛直方向下方に移動させ、その傾斜するレール44bに従って移動ブロック28a,29aが設けられた一対の柱状部材28,29を、実線矢印で示す様に回転板27の直径方向に移動させて互いの間隔を拡大させる。そして、一対の柱状部材28,29の間隔を所定の間隔にするとともに、回転板27の回転中心Cから一対の柱状部材28,29を等距離にさせる。
【0080】
ここで、所定の間隔とは、準備工程において用いられた線材16との関係において、得ようとするステータコイル12(
図14)の抵抗値を求められる設計値に収めるようにする為のものであり、用いられた線材16の抵抗値との関係において、予め算出された間隔である。
【0081】
一対の柱状部材28,29の間隔が所定の間隔に達したならば、操作用モータ46による可動板48の昇降を停止させる。すると、一対の柱状部材28,29の回転板27の直径方向への移動も停止し、一対の柱状部材28,29は、回転板27の回転中心Cから等距離であって、かつ、それらの間隔は所定の値に保持されることになる。
【0082】
この状態で、流体圧シリンダ81にあっては、
図8に示す様に、回転テーブル73を上昇させ、内巻芯36における複数の内掛け回しピン36bの下端面に回転テーブル73の上面を接触させて、一対の柱状部材28,29の間隔を所定の間隔に保つ。
【0083】
<巻線工程>
この工程では、回転板27の回転により一対の柱状部材28,29と共に回転する巻芯36,37,38に線材16を巻取る。この実施の形態では、内巻芯36と第一外巻芯37と第二外巻芯38を備える上記巻線装置20を用いるので、この巻線工程は、内巻芯36に線材16を巻取る内巻工程と、第一外巻芯37に線材16を巻取る中巻工程と、第二外巻芯38に線材16を巻取る外巻工程と、を含むものとなる。以下にこれらを分説する。
【0084】
≪内巻工程≫
この内巻工程では、内巻芯36に線材16を巻取る。そのため、
図8に示す様に、第一外巻芯37及び第二外巻芯38を上昇させておく。具体的に、第一巻芯移動手段55及び第二巻芯移動手段65は、それらの流体圧シリンダ57,67における出没ロッド57aをそれぞれ没入させて、第一外巻芯37及び第二外巻芯38を上昇させて待機位置とし、内巻芯36における内掛け回しピン36bの回転半径外側を解放させておく。
【0085】
その後、線材繰出し部材31の咬持機構により線材16の咬持を解消させ、駆動手段26における電動モータ26を駆動して、回転板27と共に内巻芯36を所定の回数回転させる。それとともに、下部テーブル23に設けられた電動モータ77を駆動して、線材16の端部を拘持する線材クリップ74が設けられた回転テーブル73も同期して同方向に同じ速度で所定の回数回転させる。
【0086】
図9に示すように、これにより線材繰出し部材31から繰出される線材16を内巻芯36の周囲に所定の回数において巻取る。この時、線材繰出し部材移動手段32は、内巻芯36の回転とともに線材繰出し部材31を回転板27の軸方向に移動させて、線材繰出し部材31から繰出される線材16を複数の内掛け回しピン36bの周囲に螺旋状に巻回させて、隣接する線材16が互いに平行にかつ密着するような整列巻きとすることが好ましい。
【0087】
そして、内掛け回しピン36bに直接掛け回された線材16からなる第一層のコイルが形成された後には、必要に応じて、その上に線材16を更に整列巻して第二層目以降のコイルを作製する。このようにして、
図12に示すように、この内巻工程において、内台板36aに立設された内掛け回しピン36bに掛け回された線材16から成るコイルエンド部13bと、一対の柱状部材28,29との間に掛け渡される線材16から成るコイル辺部13aを有する多角形状の内コイル13を作製する。
【0088】
≪中巻工程≫
この中巻工程では、第一外巻芯37における複数の中掛け回しピン37bに線材16を巻回させて、中コイル14を作製する。上記巻線装置20を用いるので、先の工程で得られた内コイル13を、第一外巻芯37における複数の中掛け回しピン37bにより包囲する。
【0089】
具体的には、
図10に示すように、第一巻芯移動手段55における流体圧シリンダ57から出没ロッド57aを突出させて、第一外巻芯37を待機位置から下方に移動させて、第一外巻芯37における複数の中掛け回しピン37bを、内巻芯36における内掛け回しピン36bを包囲する位置に移動させ、その内掛け回しピン36bに巻回された線材16から成る内コイル13を包囲する包囲位置にまで複数の中掛け回しピン37bを移動させる。
【0090】
この時、内コイル13から線材繰出し部材31に延びる線材16が、複数の中掛け回しピン37bの所望の間に進入するように、線材繰出し部材31の位置を線材繰出し部材移動手段32により調整して、線材16を内コイル13から複数の中掛け回しピン37bの外側にまで案内することになる。
【0091】
その後、内巻芯36とともに第一外巻芯37を回転させて、
図13に示す様に、線材繰出し部材31から繰出される線材16を第一外巻芯37における複数の中掛け回しピン37bの周囲に巻回させて中コイル14を作製する。
【0092】
即ち、
図10に示す様に、停止していた駆動手段26における電動モータ26を再び駆動して、回転板27や一対の柱状部材28,29と共に第一外巻芯37を更に所定の回数回転させる。それとともに、下部テーブル23に設けられた電動モータ77を駆動して、線材16の端部を拘持する線材クリップ74が設けられた回転テーブル73も同期して同方向に同じ速度で所定の回数回転させ、これにより線材繰出し部材31から繰出される線材16を第一外巻芯37における複数の中掛け回しピン37bの周囲に所定の回数において巻取る。
【0093】
そして、線材繰出し部材移動手段32は、第一外巻芯37の回転とともに線材繰出し部材31を回転板27の軸方向に移動させて、線材繰出し部材31から繰出される線材16を、複数の中掛け回しピン37bの周囲に螺旋状に巻回させて、隣接する線材16が互いに平行にかつ密着するような整列巻きとする。そして、中掛け回しピン37bに直接掛け回された線材16からなる第一層のコイルが形成された後には、必要に応じて、その上に線材16を更に整列巻して第二層目以降のコイルを作製する。
【0094】
このようにして、
図13に示すように、この中巻工程において、中台板37aに立設された中掛け回しピン37bに掛け回された線材16から成るコイルエンド部14bと、一対の柱状部材28,29との間に掛け渡される線材16から成るコイル辺部14aを有する多角形状の中コイル14を作製する。
【0095】
≪外巻工程≫
この外巻工程では、第二外巻芯38における複数の外掛け回しピン38bに線材16を巻回させて、外コイル15を作製する。上記巻線装置20を用いるので、先の工程で得られた中コイル14を、第二外巻芯38における複数の外掛け回しピン38bにより包囲する。
【0096】
具体的には、
図11に示す様に、第二巻芯移動手段65における流体圧シリンダ67から出没ロッド67aを突出させて、第二外巻芯38を
図7に示す待機位置から下方に移動させて、複数の外掛け回しピン38bを第一外巻芯37における中掛け回しピン37bを包囲する位置に移動させ、その中掛け回しピン37bに巻回された線材16から成る中コイル14(
図13)を包囲する包囲位置にまで複数の外掛け回しピン38bを移動させる。
【0097】
この時、中コイル14から線材繰出し部材31に延びる線材16が、複数の外掛け回しピン38bの所望の間に進入するように、線材繰出し部材31の位置を線材繰出し部材移動手段32により調整して、線材16を中コイル14から複数の外掛け回しピン38bの外側にまで案内することになる。
【0098】
その後、第一外巻芯37とともに第二外巻芯38を回転させて線材繰出し部材31から繰出される線材16を第二外巻芯38における複数の外掛け回しピン38bの周囲に巻回させて外コイル15を作製する。
【0099】
即ち、
図11に示すように、停止していた駆動手段26における電動モータ26を再び駆動して、第二外巻芯38を更に所定の回数回転させる。それとともに、線材16の端部を拘持する線材クリップ74が設けられた回転テーブル73も同期して同方向に同じ速度で所定の回数回転させ、これにより線材繰出し部材31から繰出される線材16を第二外巻芯38における複数の外掛け回しピン38bの周囲に所定の回数において巻取る。
【0100】
このとき、線材繰出し部材移動手段32は、第二外巻芯38の回転とともに線材繰出し部材31を回転板27の軸方向に移動させて、線材繰出し部材31から繰出される線材16を、複数の外掛け回しピン38bの周囲に螺旋状に巻回させて、隣接する線材16が互いに平行にかつ密着するような整列巻きとする。そして、外掛け回しピン38bに直接掛け回された線材16からなる第一層のコイルが形成された後には、必要に応じて、その上に線材16を更に整列巻して第二層目以降のコイルを作製する。
【0101】
このようにして、
図14に示すように、この外巻工程において、外台板38aに立設された外掛け回しピン38bに掛け回された線材16から成るコイルエンド部15bと、一対の柱状部材28,29との間に掛け渡される線材16から成るコイル辺部15aを有する多角形状の外コイル15を作製する。
【0102】
ここで、
図14に示す様に、第二外巻芯38における外掛け回しピン38bは、中コイル14のコイルエンド部14bを外側から覆う場所に位置し、第一外巻芯37における中掛け回しピン37bは、内コイル13のコイルエンド部13bを外側から覆う場所に位置するので、外コイル15は、所定の隙間を空けて中コイル14を外側から包囲するような大きさのものとなり、中コイル14は、所定の隙間を空けて内コイル13を外側から包囲するような大きさのものとなる。
【0103】
この結果、内コイル13と中コイル14と外コイル15の大きさはそれぞれ異なることになり、本発明では、コイルエンド部13b,14b,15bとなる線材16の長さが異なる3つの多角形状の内、中及び外コイル13,14,15が連続するステータコイル12を作製し得るものとなる。
【0104】
このようにして得られたステータコイル12の抵抗値は、予め算出された設計値に収めなければならないけれども、本発明の巻線装置及び巻線方法では、巻芯36,37,38が分割して取付けられた一対の柱状部材28,29を回転板27の回転中心を通過する直線上にそれぞれ移動可能に立設したので、その抵抗値の調整は間隔保持工程において、一対の柱状部材18,19の間隔を調整することにより、巻芯36,37,38を取り替えることなく、それらに分割して設けられた巻芯36,37,38に巻回される線材16の長さを変更させることが可能となる。
【0105】
そして、保持手段43は、回転板27の回転中心から一対の柱状部材28,29を等距離に保持するので、それらに分割して設けられた巻芯36,37,38の回転中心を回転板27の回転中心と一致させることができ、偏心することに起因する回転時のぶれは抑制されるので、迅速な巻線が可能となる。
【0106】
なお、内コイル13と中コイル14と外コイル15を作製した後には、これらを内巻芯36,第一外巻芯37及び第二外巻芯38から離脱させて搬送し、その後の工程において、従来から用いられているインサータ方法を用いて、それらのコイル辺部13a,14b,15aを図示しないコアのスロットに挿入することになる。
【0107】
ここで、内コイル13と中コイル14と外コイル15を内巻芯36、第一外巻芯37及び第二外巻芯38から離脱させる手順を説明すると、先ず、線材繰出し部材31における図示しない咬持機構により線材16を咬持させ、線材繰出し部材31から新たに線材16が繰出されることを禁止する。
【0108】
内巻芯36,第一外巻芯37及び第二外巻芯38に形成された内コイル13と中コイル14と外コイル15を図示しない形状維持具により把持し、それらの形状を維持させた状態で、線材繰出し部材から外コイル15に延びる線材16を切断装置等により切断する。これにより内コイル13と中コイル14と外コイル15を線材繰出し部材31から独立させる。
【0109】
この際、必要に応じて内コイル13や中コイル14や外コイル15を構成する線材16を粘着テープにおいて束ねることが好ましい。この粘着テープによる線材16の束ねにあっては、掛け回しピン36b,37b,38bの間において浮遊する線材16を束ねることが可能となる。
【0110】
また、流体圧シリンダ81にあっては、回転テーブル73を下降させ、内掛け回しピン36b、中掛け回しピン37b及び外掛け回しピン38bの下端面より下方を解放させる。その後、保持手段43にあっては、一対の柱状部材28,29の間隔を縮める。
【0111】
具体的には、保持手段43における操作用モータ46を駆動して、
図2の破線矢印で示す様に、可動板48を一対の楔部材44,44とともに鉛直方向に移動させ、その傾斜するレール44bに従って移動ブロック28a,29aが設けられた一対の柱状部材28,29を回転板27の直径方向に移動させる。それにより、一対の柱状部材28,29の間隔を縮める。
【0112】
保持手段43により一対の柱状部材28,29との間隔を減少させることにより、それらに設けられた各種の巻芯36,37,38における掛け回しピン36b,37b,38bを互いに近づける。
【0113】
これにより、内掛け回しピン36bと中掛け回しピン37bと外掛け回しピン38bに掛け回された線材16から成る
図14に示す内コイル13と中コイル14と外コイル15は緩み、内掛け回しピン36bと中掛け回しピン37bと外掛け回しピン38bから内コイル13と中コイル14と外コイル15を構成する線材16をそれぞれ離脱させる。
【0114】
その後、図示しない形状維持具により把持され、必要に応じて粘着テープにより束ねられて形状が維持された内コイル13と中コイル14と外コイル15を、その形状維持具と共に下方に移動して、内掛け回しピン36b、中掛け回しピン37b及び外掛け回しピン38bの解放された下端面より下方に抜き出す。
【0115】
そして、内コイル13と中コイル14と外コイル15を内巻芯36、第一外巻芯37及び第二外巻芯38から離脱させた後には、上述した間隔保持工程を再開することができる。これにより生産性を向上させることができる。
【0116】
なお、上述した実施の形態では、線材繰出し部材31が単一の線材16を通過させるようなものである場合を説明したけれども、この線材繰出し部材31は、複数の線材16を並列に密着させた状態で通過させるものであっても良い。線材繰出し部材31が複数の線材16を繰出すようなものである場合には、複数の線材16を通過させるような長穴が形成された棒状部材を用いることが好ましい。
【0117】
また、上述した実施の形態では、一対の柱状部材28,29に分割して取付けられた巻芯として、内巻芯36と第一外巻芯37と第二外巻芯38からなるものを用い、内コイル13と中コイル14と外コイル15を連続して作製する場合を説明した。けれども、図示しないが、単一のコイルを得る場合には、一対の柱状部材28,29に単一の巻芯を分割して取付けても良く、内コイル13と外コイル15の2つが連続するようなコイルを得る場合には、一対の柱状部材28,29に内巻芯36と第一又は第二外巻芯37又は38を分割して取付け、第二又は第一外巻芯37,38を取付けるようなことをしなくても良い。
【0118】
また、上述した実施の形態では、楔部材44が、可動板48に移動方向に延びて設けられた三角板44aを備える場合を説明した。けれども、柱状部材28,29に臨む傾斜面を有する限り、図示しないが、楔部材44は、三角板44aを備えるようなものでなくても良く、可動板48に移動方向に延びて設けられた台形板を有するものであっても良い。台形板を用いる場合には、その台形板の柱状部材に臨む傾斜面にレール44bを設けることができる。
【0119】
更に、上述した実施の形態では、内,中及び外台板36a,37a,38aにそれぞれ2本の内,中及び外掛け回しピン36b,37b,38bを立設し、合計4本の内,中及び外掛け回しピン36b,37b,38bに掛け回される線材16により四角形状の内,中及び外コイル13,14,15が作製される場合を説明した。
【0120】
けれども、必要な形状のコイル13,14,15が作製可能であれば、掛け回しピン36b,37b,38bの数は4本に限られず、六角形を成すコイルを得る為に合計6本の掛け回しピンを台板に立設させても良く、八角形を成すコイルを得る為に合計8本の掛け回しピンを台板に立設させても良い。また、それ以上の数の掛け回しピンをそれぞれの台板に立設させても良い。
【符号の説明】
【0121】
16 線材
20 巻線装置
26 電動モータ(駆動手段)
27 回転板
28,29 柱状部材
28a,29a 移動ブロック
36 内巻芯(巻芯)
37,38 外巻芯(巻芯)
43 保持手段
44 楔部材
44a 三角板
44b レール
45 楔移動手段
46 操作用モータ
46a 回転軸
47 雄ねじ
48 可動板
49 制御円板
55 第一巻芯移動手段
65 第二巻芯移動手段