(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】板状建材及び板状建材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E06B 3/72 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
E06B3/72
(21)【出願番号】P 2020120846
(22)【出願日】2020-07-14
(62)【分割の表示】P 2020089906の分割
【原出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】葭葉 司
(72)【発明者】
【氏名】早坂 広行
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-84376(JP,A)
【文献】特開平8-199919(JP,A)
【文献】特開平9-170380(JP,A)
【文献】特開2009-84780(JP,A)
【文献】特開2000-320264(JP,A)
【文献】特開2005-83013(JP,A)
【文献】特開2011-111737(JP,A)
【文献】特開平7-324559(JP,A)
【文献】特開平4-7485(JP,A)
【文献】特開平10-18721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/68-3/88
E04B 2/56
E04B 2/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の鏡板と、
該鏡板の一辺部を保持している保持部材と
を備える板状建材において、
前記保持部材は、
前記一辺部の端面に
向く凸部を周面に有し、前記端面に沿う直棒状の芯材
を含む枠体と、
夫々の一面同士の間に
、前記凸部及び前記一辺部が挟まれており、夫々の他面側から打ち込んである複数の固定用部材によって前記芯材に固定されている2枚の保持板と、
前記
枠体、前記2枚の保持板、及び前記固定用部材を前記夫々の他面側から覆うようにして、前記
枠体及び前記2枚の保持板に取り付けられている2枚の表面板と
を備えることを特徴とする板状建材。
【請求項2】
矩形状の鏡板と、
周面から長さ方向に直交する方向に突出しており、突出方向及び前記長さ方向夫々に直交する方向の長さが前記鏡板の厚さに等しい凸部を有する直棒状の芯材
を含む枠体と、
2枚の保持板と、
2枚の表面板と、
前記鏡板の厚さに等しい厚さを有する板状のスペーサと
を準備し、
前記2枚の保持板夫々の一面同士の間に
前記凸部及び前記スペーサを挟むと共に、前記2枚の保持板夫々の他面側から固定用部材を前記2枚の保持板及び前記芯材に打ち込むことによって、前記2枚の保持板を前記芯材に固定し、
前記
枠体、前記2枚の保持板、及び前記固定用部材を前記2枚の保持板夫々の他面側から前記2枚の表面板で覆うようにして、前記2枚の表面板を前記
枠体及び前記2枚の保持板に取り付け、
前記2枚の保持板の間から前記スペーサを取り去り、
前記鏡板の一辺部の端面を前記凸部に向けて前記2枚の保持板の間に前記鏡板を挿入することによって、前記2枚の保持板の間に前記一辺部を挟むことを特徴とする板状建材の製造方法。
【請求項3】
各矩形状の前記2枚の保持板を準備し、
前記2枚の保持板の前記芯材への固定の際、前記2枚の保持板夫々の第1辺部
同士の間に前記凸部を挟み、
前記2枚の保持板の間から前記スペーサを取り去る前に、前記2枚の保持板夫々の前記第1辺部に対向する第2辺部を、前記2枚の表面板及び前記スペーサごと所定の形状に切削加工することを特徴とする請求項2に記載の板状建材の製造方法。
【請求項4】
前記2枚の保持板の間に前記鏡板を挿入する前に、前記2枚の保持板の間に接着剤を注入することを特徴とする請求項2又は3に記載の板状建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、板状建材及び板状建材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁体の開口を開閉する建具、部屋を仕切る間仕切り壁等の板状建材が用いられている。
特許文献1に記載の板状建材(文中「ドア」)は、いわゆる四方框戸である。板状建材は、矩形枠状のドア框と、ドア框の内周を縁取る矩形枠状の額縁と、4辺部を額縁に保持されている矩形の鏡板とを備える。額縁の内側の開口が矩形状をなすので、鏡板の非端面が矩形状に露出する。
【0003】
特許文献1に記載の板状建材の場合、額縁はピンタッカー留め又はビス留めによってドア框の内周に固定されている。ピン釘又はビスは、額縁の内周側から額縁及びドア框に打ち込んであるので、目立たない。
【0004】
板状建材の意匠性を向上させるために、鏡板の露出部分を非矩形状にすることがある。
特許文献2に記載の板状建材(文中「扉」)は、いわゆる二方框戸である。板状建材は、各矩形板状の一対の縦框と、矩形状の鏡板とを備える。鏡板は対向する2辺部を一対の縦框に保持されており、鏡板の露出部分は矩形状をなす。板状建材は板状の覆い部材を更に備える。覆い部材は、鏡板の非端面を部分的に覆うようにして、鏡板に接着してある。この結果、鏡板の露出部分を非矩形状にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-199919号公報
【文献】特開2010-84376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の板状建材においては、互いに隣接する縦框及び覆い部材夫々の表面の意匠を略同一にすることによって、外観上の違和感を低減することがなされている。しかしながら、縦框と覆い部材との境界部分が目隠しされているわけではないので、意匠性を損なう虞がある。
特許文献1に記載の板状建材の場合、内側の開口が非矩形状をなす額縁を用いることによって、覆い部材を用いることなく、鏡板の露出部分を非矩形状にすることができる。
【0007】
ところが、額縁はドア框にピンタッカー留め又はビス留めされるので、額縁のピン釘又はビスが打ち込まれる方向の寸法が、ピン釘又はビスの寸法によって制限される。特許文献1に記載の板状建材においては、額縁の内周側から額縁にピン釘又はビスが打ち込まれるので、額縁の形状が限定される。故に、鏡板の露出部分の形状の自由度を向上させることが困難なので、意匠性の向上を図ることが困難である。
【0008】
本開示の目的は、意匠性を向上させることができる板状建材及び板状建材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る板状建材は、矩形状の鏡板と、該鏡板の一辺部を保持している保持部材とを備える板状建材において、前記保持部材は、前記一辺部の端面に向く凸部を周面に有し、前記端面に沿う直棒状の芯材と、夫々の一面同士の間に、前記凸部及び前記一辺部が挟まれており、夫々の他面側から打ち込んである複数の固定用部材によって前記芯材に固定されている2枚の保持板と、前記芯材、前記2枚の保持板、及び前記固定用部材を前記夫々の他面側から覆うようにして、前記芯材及び前記2枚の保持板に取り付けられている2枚の表面板とを備えることを特徴とする。
本開示に係る板状建材は、矩形状の鏡板と、該鏡板の一辺部を保持している保持部材とを備える板状建材において、前記保持部材は、前記一辺部の端面に向く凸部を周面に有し、前記端面に沿う直棒状の芯材を含む枠体と、夫々の一面同士の間に、前記凸部及び前記一辺部が挟まれており、夫々の他面側から打ち込んである複数の固定用部材によって前記芯材に固定されている2枚の保持板と、前記枠体、前記2枚の保持板、及び前記固定用部材を前記夫々の他面側から覆うようにして、前記枠体及び前記2枚の保持板に取り付けられている2枚の表面板とを備えることを特徴とする。
【0010】
本開示にあっては、保持部材が矩形状の鏡板の一辺部を保持している。保持部材は直棒状の芯材と各板状の2枚の保持板と各板状の2枚の表面板とを備える。
芯材は鏡板の一辺部の端面に沿う。芯材は周面に凸部を有し、凸部は鏡板の一辺部の端面に向く。
芯材の凸部及び鏡板の一辺部は、2枚の保持板夫々の一面同士の間に挟まれている。
【0011】
2枚の保持板は複数の固定用部材によって芯材に固定されている。
複数の固定用部材は2枚の保持板夫々の他面側から2枚の保持板及び芯材に打ち込んである。故に、保持板の一辺部に直交する方向の、保持板の寸法が、固定用部材の寸法によって制限されることはない。従って、保持板が鏡板を保持する範囲の設計の自由度を向上させることができる。この結果、保持板から鏡板が露出する部分の形状の自由度を向上させることができる。
【0012】
2枚の表面板は、芯材、2枚の保持板、及び複数の固定部材を、2枚の保持板夫々の他面側から覆っている。故に、芯材と保持板との境界部分も表面板によって目隠しされる。
以上の結果、板状建材の意匠性を向上させることができる。
【0013】
本開示に係る板状建材の製造方法は、矩形状の鏡板と、周面から長さ方向に直交する方向に突出しており、突出方向及び前記長さ方向夫々に直交する方向の長さが前記鏡板の厚さに等しい凸部を有する直棒状の芯材と、2枚の保持板と、2枚の表面板と、前記鏡板の厚さに等しい厚さを有する板状のスペーサとを準備し、前記2枚の保持板夫々の一面同士の間に前記凸部及び前記スペーサを挟むと共に、前記2枚の保持板夫々の他面側から固定用部材を前記2枚の保持板及び前記芯材に打ち込むことによって、前記2枚の保持板を前記芯材に固定し、前記芯材、前記2枚の保持板、及び前記固定用部材を前記2枚の保持板夫々の他面側から前記2枚の表面板で覆うようにして、前記2枚の表面板を前記芯材及び前記2枚の保持板に取り付け、前記2枚の保持板の間から前記スペーサを取り去り、前記鏡板の一辺部の端面を前記凸部に向けて前記2枚の保持板の間に前記鏡板を挿入することによって、前記2枚の保持板の間に前記一辺部を挟むことを特徴とする。
本開示に係る板状建材の製造方法は、矩形状の鏡板と、周面から長さ方向に直交する方向に突出しており、突出方向及び前記長さ方向夫々に直交する方向の長さが前記鏡板の厚さに等しい凸部を有する直棒状の芯材を含む枠体と、2枚の保持板と、2枚の表面板と、前記鏡板の厚さに等しい厚さを有する板状のスペーサとを準備し、前記2枚の保持板夫々の一面同士の間に前記凸部及び前記スペーサを挟むと共に、前記2枚の保持板夫々の他面側から固定用部材を前記2枚の保持板及び前記芯材に打ち込むことによって、前記2枚の保持板を前記芯材に固定し、前記枠体、前記2枚の保持板、及び前記固定用部材を前記2枚の保持板夫々の他面側から前記2枚の表面板で覆うようにして、前記2枚の表面板を前記枠体及び前記2枚の保持板に取り付け、前記2枚の保持板の間から前記スペーサを取り去り、前記鏡板の一辺部の端面を前記凸部に向けて前記2枚の保持板の間に前記鏡板を挿入することによって、前記2枚の保持板の間に前記一辺部を挟むことを特徴とする。
【0014】
本開示にあっては、製造者が、矩形状の鏡板、直棒状の芯材、2枚の保持板、2枚の表面板、及び板状のスペーサを準備する。
芯材は凸部を有する。凸部は芯材の周面から、凸部の長さ方向に直交する方向に突出している。凸部における、凸部の突出方向及び芯材の長さ方向夫々に直交する方向の長さは、鏡板の厚さに等しい。
スペーサの厚さは鏡板の厚さに等しい。
【0015】
製造者は、2枚の保持板夫々の一面同士の間に芯材の凸部及びスペーサを挟むと共に、2枚の保持板を芯材に固定する。このとき、製造者は、2枚の保持板及び芯材に、2枚の保持板夫々の他面側から固定用部材を打ち込む。
次に、製造者は、芯材及び2枚の保持板を2枚の保持板夫々の他面側から2枚の表面板で覆うようにして、2枚の表面板を芯材及び2枚の保持板に取り付ける。
2枚の保持板の間に芯材の凸部及びスペーサが挟まれているので、固定用部材による固定作業時及び表面板の取り付け作業時に、2枚の保持板の離間距離を維持することができる。
【0016】
次いで、製造者は2枚の保持板の間からスペーサを取り去り、2枚の保持板の間に鏡板を挿入する。このとき、製造者は、鏡板の一辺部の端面を芯材の凸部に向ける。
以上の結果、芯材、2枚の保持板、及び2枚の表面板は、本開示に係る板状建材が備える保持部材として機能する。保持部材は鏡板の一辺部を保持する。芯材は鏡板の一辺部の端面に沿う。
即ち、本開示に係る板状建材の製造方法は、本開示に係る板状建材を製造することができる。従って、板状建材の意匠性を向上させることができる。
矩形状の鏡板は非矩形状のものよりも入手し易く、取り扱いが容易である。
【0017】
本開示に係る板状建材の製造方法は、各矩形状の前記2枚の保持板を準備し、前記2枚の保持板の前記芯材への固定の際、前記2枚の保持板夫々の第1辺部同士の間に前記凸部を挟み、前記2枚の保持板の間から前記スペーサを取り去る前に、前記2枚の保持板夫々の前記第1辺部に対向する第2辺部を、前記2枚の表面板及び前記スペーサごと所定の形状に切削加工することを特徴とする。
【0018】
本開示にあっては、製造者が各矩形状の2枚の保持板を準備する。
製造者は、固定用部材による固定作業時に、2枚の保持板夫々の一面同士の間にスペーサを挟むと共に、2枚の保持板夫々の一面同士且つ2枚の保持板夫々の第1辺部同士の間に、芯材の凸部を挟む。
【0019】
製造者は、2枚の保持板の間からスペーサを取り去る前に、2枚の保持板夫々における第1辺部に対向する第2辺部を、2枚の表面板及びスペーサごと、所定の形状に切削加工する。2枚の保持板の間に芯材の凸部及びスペーサが挟まれているので、切削加工中に、2枚の保持板の離間距離を維持することができる。
【0020】
矩形状の保持板は非矩形状のものよりも入手し易く、取り扱いが容易である。
また、2枚の保持板及び2枚の表面板は、芯材、2枚の保持板、及び2枚の表面板が互いに固定された後で所定の形状に形成される。故に、2枚の保持板及び2枚の表面板夫々が所定の形状に形成された後で芯材、2枚の保持板、及び2枚の表面板が互いに固定される場合に比べて、保持部材の形状の精度を向上させることができる。
【0021】
更に、保持部材の切削加工前の仕掛品を複数準備しておき、各仕掛品を互いに異なる形状に切削加工することによって、一種類の仕掛品から多種類の保持部材を得ることができる。
【0022】
本開示に係る板状建材の製造方法は、前記2枚の保持板の間に前記鏡板を挿入する前に、前記2枚の保持板の間に接着剤を注入することを特徴とする。
【0023】
本開示にあっては、2枚の保持板の間に注入された接着剤が、2枚の保持板の間への鏡板の挿入に伴って、2枚の保持板夫々と鏡板との間に介在する。接着剤の接着力を利用して、2枚の保持板の間に挟まれている鏡板を確実に保持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の板状建材及び板状建材の製造方法によれば、板状建材の意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】
図1におけるII-II線による断面図である。
【
図3】
図1に示す左側の縦框において表面板を省略した図である。
【
図10】
図9におけるX-X線による断面図である。
【
図11】2枚の鏡板を備える板状建材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、図において矢符で示す上下、前後、及び左右を使用する。
【0027】
図1は、実施の形態に係る板状建材の正面図である。
図2は、
図1におけるII-II線による断面図である。
図中1は板状建材であり、板状建材1は一方向に長い矩形状をなす。板状建材1は、長さ方向を上下に向けて、開戸として用いられる。
【0028】
図1に示すように、板状建材1には把持部11が設けられている。把持部11は、板状建材1の前面(
図1に向かって手前側の面)における左辺部に配されており、上下方向の中央部に位置している。
図2に示すように、2つの把持部11が板状建材1の両面に1つずつ、前後方向に互いに対向する位置に設けられている。
板状建材1の右辺部には図示しない蝶番が設けられる。板状建材1は、壁体に設けられる開口を開閉可能に、蝶番を介して壁体に取り付けられる。
【0029】
図1及び
図2に示すように、板状建材1は二方框戸であり、鏡板2及び2つの縦框3,3(保持部材)を備える。
図1においては、図を見易くするために、鏡板2の部分にハッチングが描かれている。
鏡板2は一方向に長い矩形状をなし、長さ方向及び幅方向を上下及び左右に向けて用いられている。鏡板2は透光性を有していてもよく、非透光性を有していてもよい。透光性を有する鏡板2は、例えばガラス製又は合成樹脂製である。非透光性を有する鏡板2は、例えば木製(無垢材製又は木質材製)である。
各縦框3は一方向に長い矩形板状をなし、長さ方向及び幅方向を上下及び左右に向けて用いられている。
【0030】
鏡板2は板状建材1の左右方向の中央部に配されており、縦框3,3は板状建材1の左右両側に配されている。本実施の形態において、左側の縦框3は鏡板2の左辺部(一辺部)を保持している。一方、右側の縦框3は鏡板2の右辺部(一辺部)を保持している。
以下では、左側の縦框3について主に説明する。
【0031】
縦框3は、縦枠31(芯材)、2枚の保持板32,32、及び2枚の表面板33,33を備える。
図3は、
図1に示す左側の縦框3において表面板33,33を省略した図である。
図2及び
図3に示すように、縦枠31は直棒状をなし、矩形断面を有する。縦枠31は長さ方向を上下に向けて用いられている。
縦枠31は凸部311を有する。凸部311は、縦枠31の右側面(周面)から右方向(縦枠31の長さ方向に直交する方向)に突出している。凸部311は縦枠31の全長に亘る条状をなし、矩形断面を有する。凸部311の幅(凸部311の突出方向及び縦枠31の長さ方向夫々に直交する方向の長さ)は鏡板2の厚さに等しい。凸部311は縦枠31の右側面の前後方向の中心に位置している。
【0032】
図3に示すように、縦框3は、縦枠301及び2本の横枠302,302を更に備える。
縦枠31、縦枠301、及び横枠302,302は、縦枠31及び縦枠301夫々の長さ方向の両端部に、横枠302,302を架け渡すことによって、枠体30を構成している。本実施の形態においては、縦枠31は横枠302,302に対して横勝ちに配されており、縦枠301は横枠302,302に対して縦勝ちに配されている。
【0033】
枠体30は、縦枠31の長さ方向に長い矩形状をなし、横枠302を左右に向けて用いられている。
枠体30は複数本の横桟303,303,…を備える。横桟303,303,…夫々は、互いに適宜の間隔を置いて、縦枠31及び縦枠301夫々の長さ方向の中途に架け渡されている。
【0034】
図2及び
図3に示すように、各保持板32は、一方向に長い矩形状をなし、長さ方向及び幅方向を上下及び左右に向けて用いられている。保持板32においては、右辺部の両隅(
図3にて二点鎖線で示す部分)が滑らかな凹状に欠落している。保持板32は上下対称の形状をなす。
保持板32の長さと枠体30の長さとは互いに等しい。保持板32の左端面には縦枠31の右側面が接触している。
【0035】
保持板32,32は、前後方向に互いに対向している。前側の保持板32の後面と後側の保持板32の前面との間(保持板32,32夫々の一面同士の間)には、縦枠31の凸部311及び鏡板2の左辺部が挟まれている。縦枠31の凸部311は鏡板2の左端面(一辺部の端面)に向いており、保持板32,32夫々の左辺部の間に位置している。縦枠31は鏡板2の左端面に沿う。凸部311の縦枠31の右側面からの突出長さは、保持板32の幅よりも十分に小さい。
【0036】
鏡板2は、接着剤によって凸部311の先端面及び保持板32,32夫々の互いに対向している面に接着してある。
前側の保持板32の前面は枠体30の前面と面一に配されており、後側の保持板32の後面は枠体30の後面と面一に配されている。
【0037】
図2に示すように、縦枠31と保持板32,32とは、2つの固定用部材4,4によって互いに固定されている。各固定用部材4はタッカー用のコ字状の針(ステープル)である。
前側の保持板32においては、一の固定用部材4が、保持板32の前面と縦枠31の前側面とに、前方から(保持板32の前面側から)後向きに打ち込まれている。同様に、後側の保持板32においては、他の固定用部材4が、保持板32の後面と縦枠31の後側面とに、後方から前向きに打ち込まれている。
図示はしないが、前側の保持板32の前面側及び後側の保持板32の後面側夫々において、複数の固定用部材4,4,…が縦枠31の長さ方向に適長離隔して配されている。
【0038】
図1及び
図2に示すように、各表面板33は一方向に長い矩形状をなし、長さ方向及び幅方向を上下及び左右に向けて用いられている。表面板33の長さは保持板32の長さに等しい。表面板33においては、右辺部の両隅が滑らかな凹状に欠落している。表面板33の欠落部分の形状及び寸法は、保持板32の欠落部分の形状及び寸法に対応している。
表面板33,33は、枠体30、保持板32,32、及び固定用部材4,4,…を前後両側から全体的に覆っており、接着剤を用いて枠体30及び保持板32,32に貼り付けられている。
【0039】
図2に示すように、前側の保持板32及び表面板33夫々の右端面は、テープ状の化粧部材34(後述する
図8参照)で全体的に覆うことによって、化粧されている。化粧部材34は保持板32及び表面板33夫々の右端面に、接着剤を用いて貼り付けられている。
同様に、後側の保持板32及び表面板33夫々の右端面も、化粧部材34を用いて化粧されている。枠体30の左端面及び表面板33,33夫々の左端面も化粧されている。
【0040】
図1及び
図2に示すように、右側の縦框3は、左側の縦框3を左右に反転させたような構成を有する。ただし、右側の縦框3においては、保持板32及び表面板33夫々の左辺部の中央部分が欠落している。
【0041】
図1に示すように、縦框3,3夫々の上端部は、連結具12によって互いに連結されている。連結具12は左右に延びる金具である。連結具12は、各縦框3の枠体30の上端面から保持板32,32の上端面に亘って設けられている嵌込溝35(
図3参照)に嵌め込まれている。連結具12の左右方向の両端部は、縦框3,3の枠体30,30夫々にビス留め固定されている。鏡板2の上端部は、連結具12に設けられている図示しない挿入溝に挿入されている。鏡板2の上端部は連結具12に保持されていてもよい。
同様に、縦框3,3夫々の下端部も連結具12によって互いに連結されている。
【0042】
左側の縦框3の最右端の左右方向の位置と、右側の縦框3の最左端の左右方向の位置とは略等しい。
板状建材1の正面視において、左側の縦框3の右辺部の輪郭線は、上下に延びる直線と、この直線の両端に連続している曲線とを有する。この曲線は、左側の縦框3における表面板33(及び保持板32)の欠落部分に対応する。右側の縦框3の左辺部の輪郭線は、夫々上下に延び、互いに上下に並ぶ2本の直線と、この2本の直線の間にて夫々に連続している円弧とを有する。この円弧は、右側の縦框3における表面板33(及び保持板32)の欠落部分に対応する。
【0043】
左側の縦框3の直線と右側の縦框3の2つの直線とは、左側の縦框3の直線が中央に位置するように上下に並び、上下方向の一直線に見える。左側の縦框3の2つの曲線と右側の縦框3の円弧とは、右側の縦框3の円弧が中央に位置するように連なり、前述の上下方向の一直線を中心に左右に波打っているように見える。
【0044】
鏡板2は、左側の縦框3の右辺部の輪郭線と右側の縦框3の左辺部の輪郭線と上下2つの連結具12,12とに囲まれた領域にて露出している。鏡板2の露出部分は非矩形状をなす。
【0045】
鏡板2は、一見して上下に並ぶ3つの部分に分かれているように見える。一番上の部分は、左側の縦框3の曲線と右側の縦框3の直線と上側の連結具12とに囲まれている。同様に、一番下の部分は、左側の縦框3の曲線と右側の縦框3の直線と下側の連結具12とに囲まれている。中央の部分は、左側の縦框3の直線と右側の縦框3の円弧とに囲まれている。
【0046】
鏡板2は矩形状であるが、鏡板2の露出部分は複数に分かれて見え、しかも夫々が非矩形状なので、板状建材1の意匠性が向上されている。
【0047】
図4~
図9は、板状建材1の製造方法の説明図である。
図10は、
図9におけるX-X線による断面図である。
図4に示すように、製造者は、枠体30と、保持板32,32となすべき保持板320,320と、スペーサ5とを準備する。
各保持板320は一方向に長い矩形板である。
スペーサ5は一方向に長い矩形板である。スペーサ5の厚さは鏡板2の厚さに等しい。スペーサ5の長さは、保持板320の長さに等しい。スペーサ5の幅は、保持板320の幅よりも、縦枠31の凸部311の突出長さだけ短い(
図5参照)。
【0048】
枠体30は、凸部311が予め設けられている縦枠31と、縦枠301及び横枠302,302とを矩形枠状に組み立て、組み立てられた矩形枠に横桟303,303,…を取り付けることによって形成されたものである(
図3参照)。
【0049】
図5に示すように、製造者は、例えば作業台6を用いて枠体30への保持板320,320の固定作業を行なう。この場合、製造者は、保持板320,320及びスペーサ5夫々の両面を上下に向け、一方の保持板320、スペーサ5、及び他方の保持板320を、この順に作業台6の上面に積み重ねる。このとき、製造者は、保持板320,320及びスペーサ5夫々の長さ方向の各端面が互いに面一になり、且つ、保持板320,320及びスペーサ5夫々の幅方向の一端面が互いに面一になるように、夫々の位置を調整する。
【0050】
すると、保持板320,320夫々の一方の長辺部同士とスペーサ5の幅方向の他端面とに囲まれた空隙が生じる。製造者は、縦枠31の凸部311がスペーサ5の幅方向の他端面に向くようにして、縦枠31の凸部311を前述の空隙に挿入し、縦枠31の凸部311が設けられている側面を、保持板320,320夫々の端面に接触させる。枠体30の上面と上側の保持板320の上面とは互いに面一になる。
【0051】
以上の結果、保持板320,320の一面同士の間にスペーサ5が挟まれると共に、保持板320,320夫々の一面同士且つ保持板320,320夫々の第1辺部同士の間に、縦枠31の凸部311が挟まれる。
なお、製造者は、一方の保持板320を作業台6の上面に置き、次に、縦枠31の凸部311及びスペーサ5を一方の保持板320の上面に置き、更に、縦枠31の凸部311及びスペーサ5夫々の上面に他方の保持板320を置いてもよい。
【0052】
次いで、製造者は、上側の保持板320と縦枠31とを、固定用部材4を用いて互いにタッカー留めする。このとき、製造者は、保持板320及び縦枠31に固定用部材4を上方から(保持板320の上面側から)打ち込む。製造者は、複数の固定用部材4,4,…を縦枠31の長さ方向に互いに適長離隔させて打ち込む。
保持板320,320間に凸部311及びスペーサ5が挟まれているので、タッカー留めの際に外力が加わっても、保持板320,320の離間距離が維持され、枠体30の上面と上側の保持板320の上面とが互いに面一のままに保たれる。
【0053】
更に、製造者は、枠体30、保持板320,320、及びスペーサ5を上下反転させる。その後、製造者は、反転前に上側であった保持板320の場合と同様にして、反転後に上側になった保持板320と縦枠31とを、固定用部材4(
図5に二点鎖線で図示)を用いて互いにタッカー留めする。
以上の結果、保持板320,320が枠体30の縦枠31に固定される。
【0054】
図6に示すように、製造者は、表面板33,33となすべき表面板330,330を準備する。
各表面板330は一方向に長い矩形板である。表面板330の長さは、保持板320の長さに等しい。表面板330の幅は、保持板320の幅と枠体30の幅との和に等しい。
製造者は、枠体30の上面から上側の保持板320の上面に亘って接着剤を塗布する。次いで、製造者は、一方の表面板330の両面を上下に向ける。製造者は、枠体30及び上側の保持板320を上方から表面板330で全体的に覆い、表面板330の下面を枠体30の上面及び上側の保持板320の上面に貼り付ける。
【0055】
表面板330の接着の際に外力が加わっても、凸部311及びスペーサ5の介在により、保持板320,320の離間距離が維持され、枠体30の上面と上側の保持板320の上面とが互いに面一のままに保たれる。
更に、製造者は、枠体30、保持板320,320、表面板330、及びスペーサ5を上下反転させてから、一方の表面板330の場合と同様にして、他方の表面板330(
図6に二点鎖線で図示)を、反転後に上側になった保持板320と枠体30とに貼り付ける。
【0056】
以上のようにして、枠体30及び保持板320,320に表面板330,330が接着された仕掛品360が形成される(
図7参照)。
製造者は、左側の縦框3となすべき仕掛品360と、右側の縦框3となすべき仕掛品360とを準備する。左側の縦框3となすべき仕掛品360の構成と右側の縦框3となすべき仕掛品360の構成とは互いに同一である。
【0057】
図7に示すように、製造者は、各仕掛品360について、保持板320,320の一方の長辺部を、表面板330,330及びスペーサ5ごと、所定の形状に切削加工する。ここで、切削加工すべき長辺部は第2辺部であり、枠体30から遠い側の長辺部(縦枠31の凸部311が挟まれていない側の長辺部)である。切削加工によって、保持板320,320、表面板330,330、及びスペーサ5夫々の一部が除去される。
図7には、切削加工によって除去される部分をハッチングで示している。
【0058】
仕掛品360の切削加工の際に外力が加わっても、凸部311及びスペーサ5の介在により、保持板320,320の離間距離が維持される。故に、例えば切削加工中に保持板320が撓んで仕掛品360の切削精度が悪化すること、又は、枠体30から保持板320が脱落すること等の不都合が抑制される。
【0059】
仕掛品360の切削加工の完了後、
図8に示すように、製造者は、化粧部材34,34を用いた端面の化粧、及び嵌込溝35,35の形成を行なって、縦框3を形成する。
【0060】
図9及び
図10に示すように、製造者は鏡板2を準備する。
製造者は、縦框3の保持板32,32間からスペーサ5を取り去る。スペーサ5の抜去によって、縦枠31の凸部311及び保持板32,32に囲まれた領域は空隙321となる。
【0061】
次いで、製造者は、空隙321に接着剤を注入する。
更に、製造者は、鏡板2の一方の長辺部(一辺部)の端面を凸部311に向けて、空隙321に、鏡板2の端面が凸部311に当接するまで鏡板2を挿入する。空隙321に注入された接着剤は、空隙321への鏡板2の挿入に伴って、保持板32,32夫々と鏡板2との間に介在する。この結果、接着剤の接着力を利用して、保持板32,32の間に鏡板2を確実に保持することができる。
【0062】
縦框3,3による鏡板2の保持後、製造者は、連結具12,12を嵌込溝35,35に嵌め込み、縦框3,3にネジ留めすることによって、縦框3,3を互いに連結する(
図1参照)。
板状建材1を壁体に取り付ける施工現場において、左側の縦框3に把持部11,11が取り付けられ、右側の縦框3に蝶番が取り付けられる。
【0063】
以上のような板状建材1の製造方法によれば、固定用部材4は、上側の保持板320の上方から下方向に打ち込まれる。故に、保持板32の幅方向の寸法が、固定用部材4の寸法によって制限されることはない。従って、保持板32,32が鏡板2を保持する範囲の設計の自由度を向上させることができる。この結果、保持板32,32から鏡板2が露出する部分の形状の自由度を向上させることができる。
表面板33,33は、枠体30、保持板32,32、及び複数の固定用部材4,4,…を、前後両側から覆う。故に、枠体30と保持板32との境界部分も表面板33によって目隠しされる。
以上の結果、板状建材1の意匠性を向上させることができる。
【0064】
縦枠31を含む枠体30と、保持板320,320及び鏡板2(又は保持板32,32及び鏡板2)とは、本ざねはぎのような構成で互いに隣り合うので、板状建材1の製造過程で、部材同士が前後方向に相対的に位置ずれすることが抑制されている。
【0065】
各矩形状の鏡板2及び保持板320は、非矩形状のものよりも入手し易く、取り扱いが容易である。
また、保持板32,32及び表面板33,33には、枠体30、保持板32,32、及び表面板33,33が互いに固定された後で切削加工が施される。故に、保持板320,320及び表面板330,330夫々に切削加工が施された後で枠体30、保持板32,32、及び表面板33,33が互いに固定される場合に比べて、縦框3の形状の精度を向上させることができる。
【0066】
左右の縦框3,3夫々の形状は互いに異なるが、同一の構成を有する仕掛品360,360から製造することができる。
保持板320,320及び表面板330,330に対する切削加工の自由度は高い。故に、複数の仕掛品360,360,…を準備しておき、各仕掛品360を互いに異なる形状に切削加工することによって、多種類の縦框3,3,…を得ることができる。この結果、一種類の仕掛品360,360,…から多種類の板状建材1,1,…を得ることができる。
【0067】
なお、板状建材1は開戸に限定されず、例えば引戸、間仕切り壁、又は袖壁パネルとして構成されてもよい。
板状建材1は縦框3,3を備える二方框戸に限定されない。例えば板状建材1は2つの横框を備える框戸でもよい。ここで、2つの横框は縦框3,3を90°横転させたような構成である。板状建材1は縦框3を1つだけ備える構成でもよい。板状建材1は四方框戸でもよい。
【0068】
凸部311は縦枠31の全長に亘って設けられる構成に限定されない。例えば複数の凸部311が縦枠31の長さ方向に並設されてもよい。
固定用部材4はタッカー用のステープルに限定されない。例えば、固定用部材4はビスであり、保持板320が縦枠31の凸部311にビス留めされてもよい。或いは、固定用部材4は釘であり、保持板320から縦枠31に向けて斜め方向に打ち込まれてもよい。
【0069】
保持板320,320間に1枚のスペーサ5が挟まれる構成に限定されない。保持板320,320間に、保持板320の一面に沿って並べられた複数枚のスペーサ5,5,…が挟まれてもよい。
【0070】
縦枠31及び保持板32夫々は、固定用部材4の打ち込みが可能な素材製(例えば木製)であればよい。
保持板320、表面板330、及びスペーサ5夫々は、切削加工が可能な素材製(例えば木製)であればよい。ただし、スペーサ5は、保持板32,32間の離間距離を短縮するような外力に抵抗してこれを維持することが可能な剛性を有する素材でもある。更に、スペーサ5は、使い捨て可能な安価な素材であることが望ましい。
【0071】
板状建材1が備える鏡板2の枚数は1枚に限定されない。
図11は、2枚の鏡板2,2を備える板状建材1の断面図である。
板状建材1は、左右の縦框3,3の間に縦框3を更に備える。中央の縦框3は、前後に対向する保持板32,32の組を、左右両側夫々に備える。
鏡板2,2は左右に並んでいる。左側の鏡板2の左辺部は左側の縦框3に保持されており、右側の鏡板2の右辺部は右側の縦框3に保持されている。左側の鏡板2の右辺部と右側の鏡板2の左辺部とは、中央の縦框3に保持されている。
【0072】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 板状建材
2 鏡板
3 縦框(保持部材)
31 縦枠(芯材)
311 凸部
32 保持板
320 保持板
33 表面板
330 表面板
4 固定用部材
5 スペーサ