(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】石工用携帯用切断機
(51)【国際特許分類】
B28D 7/02 20060101AFI20240422BHJP
B28D 1/04 20060101ALI20240422BHJP
B28D 7/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B28D7/02
B28D1/04 A
B28D7/00
(21)【出願番号】P 2020122775
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2020047826
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河内 克己
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3192091(JP,U)
【文献】特開2013-169490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0251867(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 7/02
B28D 1/04
B28D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石工用携帯用切断機であって、
回転刃具と
、
前記回転刃具を回転可能に支持
しかつ前記回転刃具の軸方向一方側にモータを備えた切断機本体と、
前記切断機本体を傾動可能に支持するベースと、
前記切断機本体に設けられて後方に位置する使用者に把持されるハンドルと、
前記切断機本体に取付けられて前記回転刃具の周囲を覆う固定カバーを有し、
前記固定カバーは、切削液等の液体を切断部位に注水する注水口と、前記注水口と連通して前記液体を前記注水口に供給可能な着脱部と、前記着脱部を支持する支持部を有し、
前記着脱部は、
前記固定カバーの前方に設けられ、水道水用ホース
に連結されるノズルを
取付け用の他のツールを使用することなく着脱可能であ
り、
前記支持部は、上方へ向かうにしたがって後方に傾斜し、
前記切断機本体が前記ベースに対して反モータ側へ45度傾斜しているとき、前記着脱部に取付けられる前記ノズルの上端は、左右方向について前記ハンドルの上端よりも前記反モータ側へ突出する石工用携帯用切断機。
【請求項2】
請求項1に記載の石工用携帯用切断機であって、
前記切断機本体が前記反モータ側へ45度傾斜しているとき、前記着脱部に取付けられる前記ノズルの上端は、左右方向について最も前記反モータ側へ突出する石工用携帯用切断機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の石工用携帯用切断機であって、
前記着脱部は、前記ノズルと、前記液体が貯留されるタンクを選択的に連結できる石工用携帯用切断機。
【請求項4】
請求項3に記載の石工用携帯用切断機であって、
前記ノズルは、前記着脱部に着脱可能なノズル側着脱部を有し、
前記タンクは、前記着脱部に着脱可能なタンク側着脱部を有し、
前記ノズル側着脱部と前記タンク側着脱部が同一形状である石工用携帯用切断機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載した石工用携帯用切断機であって、
前記着脱部に対する前記ノズルの着脱方向と交差する方向に分かれる半割構造を有し、
前記着脱部は、前記支持部を半割状態に分解することで露出可能である石工用携帯用切断機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載した石工用携帯用切断機であって、
前記着脱部は、前記着脱部の径方向内方に突出しかつ前記着脱部の径方向に変位可能である係合爪と、前記係合爪を前記着脱部の径方向内方へ向けて付勢する付勢部材を有し、
前記ノズルの外周には、前記係合爪と凹凸係合する外周凹部と、前記外周凹部よりも前記ノズルの端部側に配置されたガイド面が設けられ、
前記ガイド面は、前記ノズルの端部側から基部側へ向かうにしたがって径方向外方へ向けて傾斜している石工用携帯用切断機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載した石工用携帯用切断機であって、
前記着脱部から前記注水口へと送水可能な送水経路と、前記送水経路を開閉する開閉コックと、前記開閉コックと連結されかつ前記着脱部の外部に露出した開閉レバーを有し、
前記開閉コックと前記開閉レバーは、前記送水経路と交差する軸を中心に回転可能であり、前記開閉コックを回転することで前記送水経路が開閉される石工用携帯用切断機。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載した石工用携帯用切断機であって、
前記切断機本体に前記切断部位を照らすライトを有する石工用携帯用切断機。
【請求項9】
請求項8に記載の石工用携帯用切断機であって、
ベースと、前記切断機本体を前記ベースに対して傾斜可能に支持する回転中心軸を有し、
前記ライトは、前記回転中心軸を挟んで前記回転刃具と反対側に配置される石工用携帯用切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石材等の被切断材を切断するための石工用携帯用切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
石工用携帯用切断機は、一般にカッタと称され、例えば石材等の被切断材の切断に用いられる。石工用携帯用切断機は、被切断材の上面に当接させるベースと、ベースの上面に支持されて電動モータを収容する切断機本体と、電動モータによって回転するダイヤモンドホイールと称される円形の回転刃具を備えている。被切断材の上面にベースを当接させた状態で作業者が石工用携帯用切断機を切断方向に移動させ、回転刃具を被切断材に切り込ませる。これにより被切断材の切断加工を行うことができる。石工用携帯用切断機の中には、切断加工の際に切断部位に水等の液体を注ぎながら被切断材を切断する湿式のものが提供されている。
【0003】
湿式の石工用携帯用切断機には、例えば水等を供給するためのタンクが取付けられる。特許文献1,2には、タンクを取付け可能な石工用携帯用切断機が開示されている。特許文献1に開示される石工用携帯用切断機のタンクは、ねじ止めによって切断機本体に取付けられている。そのため、タンクを着脱するツールを別途用意する必要があった。特許文献2に開示される石工用携帯用切断機のタンクは、ツールレスで切断機本体に対して着脱可能である。
【0004】
タンクに貯留できる水量は限られているため、タンクが空になるたびにタンクを取外して水等を補充する必要がある。そのため、水等を長時間あるいは多量に供給できる石工用携帯用切断機を求めるニーズがあった。特許文献3には、水道用ホースを取付け可能な石工用携帯用切断機が開示されている。しかしながら水道用ホースを着脱するためにツールを別途用意する必要があり、着脱性に改良の余地があった。また、例えば特許文献2に開示されるツールレスの着脱構造は、タンクの水量や開口形状等に合わせて設計されている。そのため水等を長時間あるいは多量に供給できる水道水用ホース等を容易に着脱できない構造であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-82104号公報
【文献】欧州特許出願公開第2236234号明細書
【文献】特開2017-217794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって切断部位に注がれる水等の供給源と容易に連結でき、また、供給源との連結を容易に解除できる石工用携帯用切断機が従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つの特徴によると石工用携帯用切断機は、回転刃具と、回転刃具を回転可能に支持する切断機本体と、切断機本体に取付けられて回転刃具の周囲を覆う固定カバーを有している。固定カバーは、切削液等の液体を切断部位に注水する注水口と、注水口と連通して液体を注水口に供給可能な着脱部と、着脱部を支持する支持部を有している。着脱部は、水道水用ホースと連結可能なノズルをツールレスで着脱可能である。
【0008】
したがって水等の液体を長時間あるいは多量に供給可能な水道水用ホースを固定カバーに容易に連結できる。さらに水道水用ホースを固定カバーからツールレスで容易に外すことができる。そのため水道水用ホースを石工用携帯用切断機から着脱する操作性が向上する。
【0009】
本開示の他の特徴によると着脱部は、ノズルと、液体が貯留されるタンクを選択的に連結できる。したがって用途に応じて水道水用ホースに連結されたノズルとタンクを選択できる。水等の液体を長時間あるいは多量に供給する際には、ノズルを着脱部に取付けて使用できる。水等の使用量が少ない際や水道水用ホースを延ばし難い作業場所である際には、タンクを着脱部に取付けて使用できる。これにより石工用携帯用切断機の使い勝手が良くなる。
【0010】
本開示の他の特徴によるとノズルは、着脱部に着脱可能なノズル側着脱部を有している。タンクは、着脱部に着脱可能なタンク側着脱部を有している。ノズル側着脱部とタンク側着脱部は、同一形状である。したがって取付けるためのツールや複雑な操作を必要とせず、用途に応じて水道水用ホースに連結されたノズルとタンクを選択して着脱部に着脱できる。
【0011】
本開示の他の特徴によると切断機本体は、後方に位置する使用者に把持される。着脱部は、固定カバーの前方に設けられている。したがって着脱部は、使用者から遠く、回転刃具が切断を開始する部位(切断開始部位)に近い位置に設けられる。そのため切断開始部位に水等を注水し易い。切断開始部位は、切粉が発生し易い。そのため切断開始部位に水等を注水することで回転刃具から切粉を効果的に除去できる。また切断開始部位は、切断時の抵抗が大きくなり易く発熱し易い。そのため切断開始部位に水等を注水することで回転刃具を効果的に冷却できる。
【0012】
本開示の他の特徴によると着脱部は、上方へ向かうにしたがって後方に傾斜した支持部を有している。したがって着脱部に取付けられたノズルまたはタンクは、上方が使用者側に向いて傾斜する。そのため使用者がノズルまたはタンクを着脱する際の操作性が良い。また、ノズルと連結された水道水用ホースを切断進行方向の妨げにならない後方に向けて延ばすことができる。
【0013】
本開示の他の特徴によると石工用携帯用切断機は、着脱部に対するノズルの着脱方向と交差する方向に分かれる半割構造を有する。着脱部は、支持部を半割状態に分解することで露出可能である。したがって、例えば切粉等が着脱部に進入した場合に、支持部を半割状態に分解して着脱部を露出させることができる。これにより着脱部を清掃し易く、切粉等が詰まることを防止できる。
【0014】
本開示の他の特徴によると着脱部は、着脱部の径方向内方に突出しかつ着脱部の径方向に変位可能である係合爪と、係合爪を着脱部の径方向内方へ向けて付勢する付勢部材を有する。ノズルの外周には、係合爪と凹凸係合する外周凹部と、外周凹部よりもノズルの端部側に配置されたガイド面が設けられる。ガイド面は、ノズルの端部側から基部側へ向かうにしたがって径方向外方へ向けて傾斜している。
【0015】
したがってノズルを着脱部に押し込むと、ガイド面が係合爪を付勢部材の付勢力に抗して着脱部の径方向外方へ退避させる。これによりノズルを着脱部にさらに進入させることができる。ガイド面が係合爪よりも着脱部の奥側へ進入すると、退避していた係合爪が付勢部材に付勢されて着脱部の径方向内方に突出する。これにより係合爪がノズルの外周凹部と凹凸係合する。かくしてノズルを着脱部に押し込む操作のみで、ノズルを着脱部に取付けることができる。
【0016】
本開示の他の特徴によると石工用携帯用切断機は、着脱部から注水口へと送水可能な送水経路と、送水経路の一部を形成する開閉コックと、開閉コックと連結されかつ着脱部の外部に露出した開閉レバーを有する。開閉コックと開閉レバーは、送水経路と交差して延びる軸を中心に回転可能である。送水経路は、開閉コックを回転することで開閉される。したがって開閉レバーを回転させる操作のみで、送水経路の開閉を切り替えることができる。さらに開閉レバーは着脱部の外部に露出する。そのため送水経路を着脱部の外側から開閉できる。これにより送水経路を開閉する操作の操作性が良い。
【0017】
本開示の他の特徴によると石工用携帯用切断機は、切断機本体に切断部位を照らすライトを有する。したがって回転刃具の被切断材への切込みが適切であるか否かを視認し易い。さらに注水口から切断部位への切削液のかかりが適切であるか否かを視認し易い。そのため切断部位に注水しながら被切断材を切断する作業の効率が向上する。
【0018】
本開示の他の特徴によると石工用携帯用切断機は、ベースと、切断機本体をベースに対して傾斜可能に支持する回転中心軸を有する。ライトは、回転中心軸を挟んで回転刃具と反対側に配置される。したがって、例えば回転中心軸を中心にして切断機本体を回転刃具側に傾斜させる。この傾斜姿勢の場合にライトは、回転中心軸を挟んで回転刃具と反対側である回転刃具の上方に位置する。そのためライトは、回転刃具の切断部位を上方から下方へと照射する。これにより傾斜姿勢の場合においても切断部位の視認性を良くできる。
【0019】
本開示の他の特徴によると石工用携帯用切断機は、回転刃具と、回転刃具を回転可能に支持する切断機本体と、切断機本体に取付けられて回転刃具の周囲を覆う固定カバーを有している。固定カバーは、切削液等の液体を切断部位に注水する注水口と、注水口と連通して液体を注水口に供給可能な着脱部と、着脱部を支持する支持部を有している。着脱部は、市販飲料用プラスチックボトルを着脱可能である。したがって注水される液体の供給源として、多くの家庭で消費される飲料用容器として安価で入手が容易な市販飲料用プラスチックボトルを利用できる。そのため切断機専用のボトルの入手が難しい場合でも、市販飲料用プラスチックボトルを用いて石工用携帯用切断機を湿式で使用できる。また、市販飲料用プラスチックボトルを利用することにより、種々多様な容量の中から使用状態に応じた好適な容量を選定できる。かくして安価で利便性の良い市販飲料用プラスチックボトルを着脱部に連結させて石工用携帯用切断機を使用できる。
【0020】
本開示の他の特徴によると石工用携帯用切断機は、市販飲料用プラスチックボトルを着脱部に着脱可能とするためのアタッチメントを有している。市販飲料用プラスチックボトルの開口部の外周に雄ねじが設けられている。アタッチメントには、雄ねじと螺合する雌ねじが設けられている。したがってアタッチメントを介して、市販飲料用プラスチックボトルを着脱部に対して容易に着脱できる。さらに雄ねじと雌ねじを螺合させることで市販飲料用プラスチックボトルをアタッチメントに容易に連結でき、また連結を容易に解除できる。
【0021】
本開示の他の特徴によるとアタッチメントは、着脱部と係合可能に設けられたキャップと、キャップと市販飲料用プラスチックボトルを連結させるアダプタに分離可能である。したがってアダプタを介することにより、種々多様な形状やサイズの市販飲料用プラスチックボトルをキャップと連結できる。さらにキャップを、例えば水道水用ホースの端部に取付けられるノズル側着脱部や、液体を貯留するタンクに取付けられるタンク側着脱部と同形状に設けることができる。これにより注水する液体の供給源を選定する幅が拡がる。そのため石工用携帯用切断機の使い勝手が良い。
【0022】
本開示の他の特徴によるとアダプタは、市販飲料用プラスチックボトルが取付けられるボトル取付部とキャップが取付けられるキャップ取付部を有している。ボトル取付部は、キャップ取付部よりも大径である。したがって開口径が比較的大きい市販飲料用プラスチックボトルの開口部を、アダプタを介してキャップと連結できる。
【0023】
本開示の他の特徴によると市販飲料用プラスチックボトルは、底部に孔を有している。したがって孔から市販飲料用プラスチックボトル内に空気を入れることができる。注水で市販飲料用プラスチックボトルから液体が出ていき水位が下がると、ボトル内の空気に負圧が発生する。この負圧は、注水速度を弱めるブレーキとして作用し得る。孔からプラスチックボトル内へ自由に空気が流入できることにより、プラスチックボトル内における負圧の発生を防止できる。これによりスムーズな注水が可能になる。
【0024】
本開示の他の特徴によるとタンクは、底部に孔を有している。したがって孔からタンク内に空気を入れることができる。そのため市販飲料用プラスチックボトルを利用する場合に限らず、タンクを利用する場合においてもスムーズな注水が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態に係る切断機のノズルが取付けられた全体斜視図である。
【
図2】ノズルが取付けられた切断機の左側面図である。
【
図3】タンクが取付けられた切断機の左側面図である。
【
図8】切断機本体を右方に傾動させた切断機の前面図である。
【
図9】充電式バッテリが外された切断機の後面図である。
【
図11】切断機の固定カバーとノズルの右側面図である。
【
図12】切断機の固定カバーとノズルの右側面図であって、支持部の右半割部を除いた側面図である。
【
図13】
図11中XIII-XIII線断面矢視図であって、開閉レバーが閉じ状態の際の着脱部とノズルの縦断面図である。
【
図14】
図11中XIII-XIII線断面矢視図に相当する図であって、開閉レバーが開き状態の際の着脱部とノズルの縦断面図である。
【
図15】
図11中XIII-XIII線断面矢視図に相当する図であって、着脱部と着脱部から取外した際のノズルの縦断面図である。
【
図16】集塵口を具備する固定カバーが取付けられた切断機の左側面図である。
【
図17】飲料用プラスチックボトルが取付けられた切断機の左側面図である。
【
図19】飲料用プラスチックボトルが取付けられた着脱部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の1つの実施形態を
図1~19に基づいて説明する。
図1,2に示すように切断機(石工用携帯用切断機)1は、一般にカッタと称され、例えば石材等の被切断材の切断に用いられる。切断機1は、例えば片手で持って切断作業を行うことができる携帯型である。湿式の切断機1は、切断部位に水等の液体を注ぎながら被切断材Wを切断する。被切断材Wは、主に石材であってコンクリート、アスファルト、レンガ等が含まれる。水等の液体は、切断時に生じる切粉の飛散を防止しかつ切断部位を冷却する。
【0027】
図2に示すように切断機1は、被切断材Wの上面に当接されるベース2と、ベース2の上方に支持される切断機本体10を有している。切断機本体10には、ダイヤモンドホイールと称される回転刃具11が設けられている。使用者は、
図2において右側に位置して切断機1を把持する。以下の説明では、切断が進行する方向を前方、その反対側である使用者側を後方とする。左右方向は使用者を基準として決定する。
【0028】
図1,2に示すように、切断機本体10は、前部に設けられた前側傾動支持部3と、後部に設けられた後側傾動支持部4を介してベース2の上面に支持されている。前側傾動支持部3と後側傾動支持部4は、前後方向に延出する左右傾動支軸(回転中心軸)5をそれぞれ有している。前側傾動支持部3の左右傾動支軸5と後側傾動支持部4の左右傾動支軸5は、互いに同軸である。切断機本体10は、左右傾動支軸5を中心に左右に傾動可能である。切断機本体10は、例えば
図8に示すように右方に約45°まで傾斜させることができる。切断機本体10を左右に傾動させることにより、ベース2の下面に対して回転刃具11が傾斜した傾斜切りを行うことができる。前側傾動支持部3には、左右傾動固定ねじ3aが設けられている。左右傾動固定ねじ3aをねじ緩め方向に操作することで、切断機本体10を左右に傾動させることができる。左右傾動固定ねじ3aをねじ締め方向に操作することで、切断機本体10を所定の左右傾動角度で固定できる。
【0029】
図2に示すように前側傾動支持部3の後部には、左右方向に延出する上下揺動支軸6が設けられている。切断機本体10は、上下揺動支軸6を中心に上下に揺動可能である。切断機本体10を上下に揺動させることで、被切断材Wに回転刃具11が切り込む切込み深さを調整できる。
【0030】
図2,5に示すように、ベース2の後部には、切り込み深さ調整用のデプスガイド7が設けられている。デプスガイド7は、上下揺動支軸6の周方向に沿って円弧状に延びている。デプスガイド7には、上下揺動固定レバー8が設けられている。上下揺動固定レバー8は、左右に延出するレバー軸8aを中心に回転可能である。上下揺動固定レバー8は、デプスガイド7と後述する固定カバー12を締結させる。上下揺動固定レバー8をねじ緩め方向に操作することで、切断機本体10を上下に揺動させることができる。上下揺動固定レバー8をねじ締め方向に操作することで、所定の切込み深さとなる上下揺動角度で切断機本体10を固定できる。
【0031】
図2に示すように、切断機本体10は、固定カバー12を有している。固定カバー12は、回転刃具11の上側半周の範囲を覆っている。回転刃具11の下側半周の範囲は、ベース2の下方へ突出して露出している。回転刃具11を回転させつつ切断機1を前方へ移動させることで、回転刃具11の突出部分によって被切断材Wを切断する。
【0032】
図5,7に示すように切断機本体10は、円筒状のモータハウジング20と、モータハウジング20に隣接するギヤハウジング22を有している。モータハウジング20には、DCブラシレスモータと称される電動モータ21が収容されている。電動モータ21のモータ軸21aは左右方向に延出している。モータハウジング20は、モータ軸21aの延出方向の端部に複数の吸気口20aを有している。複数の吸気口20aの周囲には、モータ軸21aの延出方向(右方)にわずかに突出したリブ20bが設けられている。例えばモータハウジング20側を下方にして切断機1を載置する際、リブ20bによって載置面と吸気口20aの間に隙間が形成される。これによりモータハウジング20が載置面に吸い付くことから生じる過大な吸引力によって多くの切粉が進入することを防ぐことができる。そのため吸気口20aからモータハウジング20内に切粉が進入することを抑制できる。
【0033】
図4,5に示すように切断機本体10は、電動モータ21の後方に収容されたコントローラ24を有している。コントローラ24は、底浅矩形のケースに制御基板を収容して樹脂モールドしたものである。コントローラ24は、厚み方向(短手方向)が上下方向に沿った姿勢で収容されている。コントローラ24には、制御回路、駆動回路、及びオートストップ回路等が搭載されている。制御回路は、主として電動モータ21の動作制御を行うためのマイコンからなる。駆動回路は、制御回路から受信した制御信号に基づいて電動モータ21の電流をスイッチングするFETからなる。オートストップ回路は、後述する充電式バッテリ41の状態の検出結果に応じて過放電又は過電流状態とならないように電動モータ21への電力供給を遮断する。
【0034】
図5,7に示すようにギヤハウジング22の前方には、複数の排気口22bが設けられている。複数の吸気口20aと複数の排気口22bは、モータハウジング20とギヤハウジング22の内部を通じて連通している。モータ軸21aには不図示の冷却ファンが取付けられている。モータ軸21aとともに冷却ファンが回転することで、複数の吸気口20aから複数の排気口22bへと風の流れが生じる。この風の流れによって電動モータ21等が冷却される。
【0035】
図7に示すようにギヤハウジング22には、減速ギヤ機構22aと、減速ギヤ機構22aによって回転するスピンドル(出力軸)16が収容されている。スピンドル16は、左右方向に延出しており、ギヤハウジング22に回転可能に支持されている。電動モータ21のモータ軸21aの回転出力は、減速ギヤ機構22aを介して減速されて、スピンドル16に伝達される。スピンドル16の左端側は、固定カバー12内に突き出されている。この突き出し部分に回転刃具11が取り付けられている。
【0036】
図6に示すように回転刃具11は、スピンドル16と直交した姿勢で、アウタフランジ14とインナフランジ15に面直方向(左右方向)で挟み込まれている。回転刃具11の挟み込み状態がスピンドル16の左端に締め込まれた固定ねじ13によりロックされている。これにより回転刃具11は、スピンドル16に対して軸方向変位不能かつ軸回りに回転不能に固定されている。
【0037】
図7に示すようにギヤハウジング22の前部には、シャフトロック23が設けられている。シャフトロック23をギヤハウジング22内に押し込むことで、スピンドル16が回転不能となる。これにより、固定ねじ13を六角棒スパナ42等によって回転させて、回転刃具11をスピンドル16から取外して交換することができる。
【0038】
図1に示すようにモータハウジング20とギヤハウジング22(
図5参照)の上方にハンドルハウジング30が設けられている。ハンドルハウジング30は、使用者が把持するハンドル部30aを有している。ハンドル部30aは、ループ状であって、切断機本体10の前上面から上方にかつ後方に延出し、切断機本体10の後部に連結されている。ハンドル部30aの表面には滑り止め用のエラストマ樹脂層が設けられている。
図4に示すようにハンドル部30aの後部には、六角棒スパナ42を装着できるスパナ取付部43が設けられている。
【0039】
図4に示すようにハンドル部30aの内周側には、スイッチレバー31が設けられている。スイッチレバー31は、使用者がハンドル部30aを把持した状態で、指を掛けて引き操作可能に設けられている。スイッチレバー31を引いて操作すると、電動モータ21が起動して回転刃具11が回転する。ハンドル部30aの上部には、ロックオフボタン32が設けられている。スイッチレバー31は、通常状態ではロックされており引き操作できない。スイッチレバー31は、ロックオフボタン32を右または左の方向に水平に押すことでオフ位置でのロック状態が解除されて引き操作が可能となる。スイッチレバー31は、引き操作を解除すると自動的にロックオフ状態に戻る。また、
図7に示すように左右のロックオフボタン32は、ハンドル部30aから左右へ突出する部位が円筒形状になっていて、その上側部分が下側部分に対して左右外方へ向けて切欠かれており、上側部分が傾斜した平面形状である。そのため使用者の指先の先端表面を無理なくロックオフボタン32の傾斜した平面部分に当接させ易い。また、左右のロックオフボタン32は、その中間部によって互いに一体になっており、左右方向に水平に移動可能である。使用者がロックオフボタン32の上側部分の傾斜した平面部分を押すことで、ロックオフボタン32を厳密に左右方向に水平に移動させずとも、少し下方へ力を入れながら左右方向に違和感なく移動させることができる。
【0040】
図7に示すようにハンドルハウジング30の前部には、ライト33が設けられている。ライト33は、例えば発光ダイオード(LED)である。ライト33は、スイッチレバー31を引いてオン状態にすることで点灯する。ライト33は、回転刃具11の切断部位を照射する。ライト33は、回転刃具11がベース2の下面に対して直交するいわゆる直角切りの姿勢において、左右傾動支軸5よりも右方に位置する。一方、回転刃具11は、直角切りの姿勢において左右傾動支軸5よりも左方に位置する。そのためライト33は、直角切りの際には左側下方に位置する回転刃具11の切断部位へ向けて照射する。また、ライト33は、
図8に示すように切断機本体10を左方へ傾斜させた傾斜切りの際には、上方から下方に位置する回転刃具11の切断部位へ向けて照射する。
【0041】
図4に示すように、ハンドルハウジング30の側部には、凹形状のアダプタ取付部34が設けられている。アダプタ取付部34には、通信アダプタ35を挿入して装着させることができる。通信アダプタ35は、他の付帯設備との間で無線通信が可能である。無線通信によって、切断機1と付帯設備の起動動作や停止動作を連動させることができる。通信アダプタ35によって、例えば切断機1とは別に設置される集塵機と切断機1を連動させることができる。
【0042】
図2,9に示すように、切断機本体10の後部には、バッテリ取付部40が設けられている。バッテリ取付部40の取付面は後方を向いている。バッテリ取付部40には、充電式バッテリ41をバッテリ取付部40の取付面に沿ってスライドさせて装着させることができる。充電式バッテリ41は、略矩形箱形を有している。充電式バッテリ41は、例えば出力電圧が18Vのリチウムイオンバッテリである。充電式バッテリ41は、繰り返し充電可能であって、バッテリ取付部40から取外して別途用意した充電器で充電できる。充電式バッテリ41は、ねじ締め機や電気ドリル等のその他の充電式電動工具との間で電源として使い回すことができる。
【0043】
図10に示すように固定カバー12は、ギヤハウジング22の側部に着脱可能である。ギヤハウジング22は、前後方向に延出する平板状のカバー取付部22cを有している。固定カバー12の左側部には、ねじ止め部12aが設けられている。
図11,12に示すように固定カバー12の右側部の周囲には、複数の鉤状に屈折した引掛部12bが設けられている。引掛部12bをカバー取付部22cに引き掛けて、ねじ止め部12aとカバー取付部22cをねじ締結させる。これにより固定カバー12がギヤハウジング22に固定される。
【0044】
図2,10に示すように固定カバー12の前部には、後述するノズル60またはタンク70を着脱可能な着脱部50が設けられている。着脱部50の上部には、着脱部50を外方から支持する円筒状の支持部50aが設けられている。支持部50aは、上方へ向かうにしたがって後方に傾斜して延出しており、上端が開口している。
図7に示すように支持部50aは、右半割部50dと左半割部50eに分けることができる左右半割構造を有している。右半割部50dと左半割部50eは、複数の取付ねじ50fによって互いに連結されている。右半割部50dと左半割部50eは、複数の取付ねじ50fを取外すことで分離できる。右半割部50dと左半割部50eを分離することで着脱部50の内部を露出させることができる。
図15に示すように着脱部50の内周側の底部には、給水口50bと、給水口50bの周囲を環状に囲む当接部50cが設けられている。給水口50bは、下方に管状に延出して水等の切削液を下方へ流すことができる。
【0045】
図13に示すように給水口50bの下方には、開閉コック53が設けられている。開閉コック53は、固定カバー12の外側に露出した開閉レバー52と一体に連結されている。開閉コック53と開閉レバー52は、左右方向に延びる軸回りに回転可能に固定カバー12に支持されている。開閉コック53の中央部を挿通孔53aが貫通している。開閉コック53の下方には、配水管51が設けられている。配水管51は、概ね下方へ向けて延びて配設されている。配水管51の端部には、注水口54が開口している。給水口50b、開閉コック53の挿通孔53a、及び配水管51によって、着脱部50の上部から注水口54へと切削液を送水可能な送水経路58が形成されている。
図6に示すように注水口54は、切断開始部位に相当する回転刃具11の前側下部の側面に向けて開口している。
【0046】
図13に示すように開閉レバー52を閉じ位置に回転させる。これにより挿通孔53aは、給水口50b及び配水管51の延出方向と交差する方向に延びる。そのため開閉コック53によって給水口50bと配水管51の間の送水経路58が遮断される。
図14に示すように開閉レバー52を開き位置に回転させる。これにより挿通孔53aは、給水口50b及び配水管51の延出方向に沿って延びる。これにより挿通孔53aは、給水口50bと配水管51の間の送水経路58を連結する。かくして給水口50bから挿通孔53aと配水管51を介して注水口54へと給水可能になる。
【0047】
図13に示すように着脱部50の内周側には、係合爪56が設けられている。着脱部50の外周側には、取外しボタン55が設けられている。係合爪56と取外しボタン55は、一体に連結されている。係合爪56は、着脱部50の径方向内方へ向けて突出した凸形状を有している。係合爪56の凸形状部分は、後述するノズル側着脱部61の外周凹部61aと係合する断面矩形状である。係合爪56は、着脱部50の径方向に移動可能に着脱部50に支持されている。係合爪56と着脱部50の内周壁の間には、圧縮ばね(付勢部材)57が設けられている。係合爪56は、圧縮ばね57によって着脱部50の径方向内方へ向けて付勢されている。
図15に示すように係合爪56は、取外しボタン55を押すことで、圧縮ばね57の付勢力に抗して着脱部50の径方向外方へ変位する。
【0048】
図1に示すように着脱部50には、水道水用ホース63と連結されるノズル60を取付けることができる。
図2,5に示すように着脱部50に取付けられたノズル60は、上方へ向かうにしたがって後方に傾斜している。
図3に示すように着脱部50には、水等の液体が貯留されたタンク70を取付けることができる。着脱部50に取付けられたタンク70は、上方へ向かうにしたがって後方に傾斜する方向に長手方向を有している。このように着脱部50には、
図10に示すノズル60とタンク70を適宜選択して取付けることができる。
【0049】
図1に示すようにノズル60は、着脱部50に着脱可能な円筒状のノズル側着脱部61と、水道水用ホース63の一端と連結可能なホース取付部62を有している。水道水用ホース63の他端は、例えば水道口64に連結されている。ノズル60の内部には、ホース取付部62の端部からノズル側着脱部61の端部まで延びており、水等の液体を流すことができる管路が形成されている。
図10に示すようにタンク側着脱部71は、水等の液体を貯留できるタンク70に取付けられている。ノズル側着脱部61とタンク側着脱部71は、同じ構成を有して同一形状に設けられている。以下の説明においては、ノズル側着脱部61の構成についてのみ詳細に説明する。
【0050】
図10に示すように円筒状のノズル側着脱部61(タンク側着脱部71)の外周面には、溝状の外周凹部61a(外周凹部71a)が設けられている。外周凹部61aは、ノズル側着脱部61の周方向に延びて全周にわたって凹設されている。外周凹部61aは、ノズル側着脱部61の端部から所定の距離を置いて設けられている。具体的には、
図13に示すように外周凹部61aは、ノズル側着脱部61の端部を当接部50cに当接させた際に、係合爪56と横並びになる位置に凹設されている。外周凹部61aは、係合爪56の凸形状部分と係合する断面矩形状に凹設されている。ノズル側着脱部61の端部の外周には、ガイド面61cが設けられている。ガイド面61cは、外周凹部61aよりもノズル側着脱部61の端部側(図示下側)に設けられている。ガイド面61cは、ノズル側着脱部61の端部側から基部側(図示上側)へ向けて径方向外方へ傾斜して円錐面状に延びている。
【0051】
図13に示すようにノズル側着脱部61の内部には、弁体65と圧縮ばね65bが設けられている。弁体65は、ノズル側着脱部61の長手方向に延びる柱状である。弁体65は、ノズル側着脱部61の基部側(図示上側)にOリング65aを有している。弁体65は、Oリング65aよりもノズル側着脱部61の端部側(図示下側)に径方向内方に窪んだ凹部65cを有している。圧縮ばね65bは、凹部65cよりも下方の弁体65の外周に配置されている。弁体65は、圧縮ばね65bによって下方へ向けて付勢されている。ノズル側着脱部61の内周部には小径部分が設けられている。この小径部分の上部には、Oリング65aと水密に当接可能な弁座61bが設けられている。
【0052】
図15に示すようにノズル側着脱部61が着脱部50に取付けられていない場合、弁体65のOリング65aが弁座61bと当接してノズル側着脱部61の開口を封止している。そのためホース取付部62に取付けられた水道水用ホース63(
図1参照)からノズル側着脱部61の端部への水の供給が遮断される。
図13に示すようにノズル側着脱部61を着脱部50に押し込んで進入させる。ガイド面61cは、係合爪56の側方を移動する際に、係合爪56を圧縮ばね57の付勢力に抗して着脱部50の径方向外方へ押し出す。ガイド面61cは、進入方向前方の端部側よりも進入方向後方の基部側の方が径方向外方へ張出すように傾斜している。そのため係合爪56は、ガイド面61cに沿って着脱部50の径方向外方へと退避する。
【0053】
さらにノズル側着脱部61を着脱部50に進入させると、ガイド面61cよりも進入方向後方の外周凹部61aが係合爪56の側方へと移動する。係合爪56は、圧縮ばね57によって着脱部50の径方向内方へ付勢されて外周凹部61aに進入する。これにより係合爪56と外周凹部61aが互いの凹凸形状で係合する。外周凹部61aと係合爪56の係合によって着脱部50に対するノズル側着脱部61の上下方向の変位が規制される。かくしてノズル側着脱部61が着脱部50に保持される。
【0054】
外周凹部61aと係合爪56が係合する際に、弁体65の端部が当接部50cに当接する。弁体65は、当接部50cによって上方へ押され、圧縮ばね65bの付勢力に抗して上方へ変位する。そのためOリング65aが弁座61bから離れ、弁座61bよりも小径の凹部65cが弁座61bと横並びになる。これにより水が凹部65cを通ってノズル側着脱部61の端部から外方へ流れることができる。
【0055】
図14に示すようにノズル側着脱部61を着脱部50に取付け、開閉レバー52を開き位置に回転させる。これにより給水口50bと挿通孔53aと配水管51で形成される送水経路58と、凹部65cが連通する。そのため水道水用ホース63からノズル60と着脱部50を介して供給される水を、注水口54から回転刃具11(
図6参照)の前側下部の側面の切断部位に向けて注ぐことができる。
【0056】
図15に示す取外しボタン55は、ノズル側着脱部61と着脱部50の係合を解除できる。取外しボタン55を圧縮ばね57の付勢力に抗して押すと、係合爪56が着脱部50の径方向外方へ変位する。これにより外周凹部61aと係合爪56の係合が解除される。この際に弁体65は、圧縮ばね65bの付勢力によって下方へ押される。これにより弁体65の端部が当接部50cを押し、その反作用によってノズル側着脱部61が上方へ押される。かくしてノズル側着脱部61は、着脱部50から自動的に外れる。弁体65が下方に変位することで、Oリング65aが弁座61bと当接し、ノズル側着脱部61の開口が封止される。
【0057】
図16に示すように切断機1は、固定カバー12(
図2参照)に代えて固定カバー80を取付けることができる。固定カバー80は、カバー取付部22c(
図10参照)に取付け可能とするねじ止め部80aを有している。固定カバー80の前部には、固定カバー80の内外を連通する筒状の集塵口81が設けられている。集塵口81には、例えば別途用意した集塵機に連結された集塵用ホースを取付けることができる。そのため切断機1は、固定カバー12と固定カバー80を選択して取付けることで湿式と乾式の両方で使用することができる。
【0058】
図17に示すように着脱部50には、ノズル60またはタンク70に代えて水等の液体が貯留されたプラスチックボトル90を着脱できる。プラスチックボトル90は、ペットボトルと称されてポリエチレンテレフタラート(略称PET)を材料とするプラスチック製の飲料用容器である。プラスチックボトル90は、多くの家庭で飲料用容器として消費され、飲料用として消費された後に水等の切削液を貯留する容器として利用できる。プラスチックボトル90は、開口部90aを下方にしかつ底部90dを上方にした姿勢で着脱部50に取付けられる。着脱部50に取付けられたプラスチックボトル90は、上方へ向かうにしたがってわずかに後方に傾斜している。
【0059】
図18に示すように開口部90aの外周には、雄ねじ90bが設けられている。底部90dには、プラスチックボトル90の内外を貫通する孔90cが設けられている。孔90cは、例えば電動ドリル等で削孔される。プラスチックボトル90内の液体の水位が下がる際、孔90cを通ってプラスチックボトル90内に空気が流入する。空気の流入によってプラスチックボトル90内での負圧の発生を防止できる。なお孔90cが設けられる底部90dは、プラスチックボトル90の底面であっても良いし、底面の周囲の側面であっても良い。
【0060】
図18に示すようにプラスチックボトル90だけでなく、タンク70の底部70dにも内外を貫通する孔70cが設けられている。孔70cを通ってタンク70内に空気が流入できる。なお孔70cが設けられる底部70dは、タンク70の底面であっても良いし、底面の周囲の側面であっても良い。タンク70の開口部70aの外周には、雄ねじ70bが設けられている。タンク側着脱部71の上部内周には、雄ねじ70bと螺合する雌ねじ71bが設けられている。雄ねじ70bと雌ねじ71bの螺合によってタンク70とタンク側着脱部71が連結される。
【0061】
図17に示すようにプラスチックボトル90は、アタッチメント91を介して着脱部50に取付けられる。
図18に示すようにアタッチメント91は、着脱部50側(下側)のキャップ92と、プラスチックボトル90側(上側)のアダプタ93で構成されている。キャップ92とアダプタ93は、互いに分離可能である。キャップ92とアダプタ93は、略円筒状であり内部を液体が通過可能である。キャップ92は、ノズル側着脱部61(
図10参照)またはタンク側着脱部71と同一の先端形状と内部構造を有している。
図19に示すように円筒状のキャップ92の先端外周には、溝状の外周凹部92aが設けられている。キャップ92は、外周凹部92aよりも端部側(下側)の外周に、円錐面状に傾斜したガイド面92cを有している。キャップ92の基部側(上側)の内周には、雌ねじ92bが設けられている。
【0062】
図18に示すようにアダプタ93は、キャップ92と対向する下部に円筒状のキャップ取付部93cを有している。また、アダプタ93は、プラスチックボトル90と対向する上部に円筒状のボトル取付部93dを有している。ボトル取付部93dは、キャップ取付部93cよりも大径に設けられている。キャップ取付部93cの外周には、雌ねじ92bと螺合する雄ねじ93aが設けられている。ボトル取付部93dの内周には、雄ねじ90bと螺合する雌ねじ93bが設けられている。雌ねじ92bと雄ねじ93a、及び雄ねじ90bと雌ねじ93bをそれぞれ螺合させることにより、アダプタ93を介してキャップ92とプラスチックボトル90が連結される。雌ねじ92bに対する雄ねじ93aの締付け方向と、雌ねじ93bに対する雄ねじ90bの締付け方向は、同じ方向である。
【0063】
図19に示すようにアダプタ93を介してプラスチックボトル90の開口部90aとキャップ92を連結させる。キャップ92を着脱部50に進入させる際、ガイド面92cが係合爪56を圧縮ばね57の付勢力に抗して着脱部50の径方向外方へ押し出す。キャップ92を着脱部50にさらに進入させると、圧縮ばね57によって着脱部50の径方向内方へ付勢された係合爪56が外周凹部92aに進入する。これにより係合爪56と外周凹部92aが互いの凹凸形状で係合する。かくしてキャップ92が着脱部50にツールレスで保持される。キャップ92を着脱部50から取り外す際には、取外しボタン55を圧縮ばね57の付勢力に抗して押し、係合爪56を着脱部50の径方向外方へ変位させる。キャップ92は、弁体65を端部側(下方)へ付勢する圧縮ばね65bの付勢力によって着脱部50から自動的に飛び出す。
【0064】
以上説明した本実施形態の切断機1によれば、回転刃具11と、回転刃具11を回転可能に支持する切断機本体10と、切断機本体10に取付けられて回転刃具11の周囲を覆う固定カバー12を有している。固定カバー12は、切削液等の液体を回転刃具11の切断部位に注水する注水口54と、注水口54と連通して液体を注水口54に供給可能な着脱部50と、着脱部50を支持する支持部50aを有している。着脱部50は、水道水用ホース63と連結可能なノズル60をツールレスで着脱可能である。
【0065】
したがって水等の液体を長時間あるいは多量に供給可能な水道水用ホース63を固定カバー12に容易に連結できる。さらに水道水用ホース63を固定カバー12からツールレスで容易に外すことができる。そのため水道水用ホース63を切断機1から着脱する操作性が向上する。
【0066】
また、切断機1によれば着脱部50は、ノズル60と、液体が貯留されるタンク70を選択的に連結できる。したがって用途に応じて水道水用ホース63に連結されたノズル60とタンク70を選択できる。水等の液体を長時間あるいは多量に供給する際には、ノズル60を着脱部50に取付けて使用できる。水等の使用量が少ない際や水道水用ホース63を延ばし難い作業場所である際には、タンク70を着脱部50に取付けて使用できる。これにより切断機1の使い勝手が良くなる。
【0067】
また、切断機1によればノズル60は、着脱部50に着脱可能なノズル側着脱部61を有している。タンク70は、着脱部50に着脱可能なタンク側着脱部71を有している。ノズル側着脱部61とタンク側着脱部71は、同一形状である。したがって取付けるためのツールや複雑な操作を必要とせず、用途に応じて水道水用ホース63に連結されたノズル60とタンク70を選択して着脱部に着脱できる。
【0068】
また、切断機1によれば切断機本体10は、後方に位置する使用者に把持される。着脱部50は、固定カバー12の前方に設けられている。したがって着脱部50は、使用者から遠く、回転刃具11が切断を開始する部位(切断開始部位)に近い位置に設けられる。そのため切断開始部位に水等を注水し易い。切断開始部位は、切粉が発生し易い。そのため切断開始部位に水等を注水することで回転刃具11から切粉を効果的に除去できる。また切断開始部位は、切断時の抵抗が大きくなり易く発熱し易い。そのため切断開始部位に水等を注水することで回転刃具11を効果的に冷却できる。
【0069】
また、切断機1によれば着脱部50は、上方へ向かうにしたがって後方に傾斜した支持部50aを有している。したがって着脱部50に取付けられたノズル60またはタンク70は、上方が使用者側に向いて傾斜する。そのため使用者がノズル60またはタンク70を着脱する際の操作性が良い。また、ノズル60と連結された水道水用ホース63を切断進行方向の妨げにならない後方に向けて延ばすことができる。
【0070】
また、切断機1によれば、着脱部50に対するノズル60の着脱方向と交差する左右方向に右半割部50dと左半割部50eに分かれる半割構造を有する。着脱部50は、支持部50aを半割状態に分解することで露出可能である。したがって、例えば切粉等が着脱部50に進入した場合に、支持部50aを半割状態に分解して着脱部50を露出させることができる。これにより着脱部50を清掃し易く、切粉等が詰まることを防止できる。
【0071】
また、切断機1によれば着脱部50は、着脱部50の径方向内方に突出しかつ着脱部50の径方向に変位可能である係合爪56と、係合爪56を着脱部50の径方向内方へ向けて付勢する圧縮ばね57を有する。ノズル60のノズル側着脱部61の外周には、係合爪56と凹凸係合する外周凹部61aと、外周凹部61aよりもノズル60の端部側に配置されたガイド面61cが設けられる。ガイド面61cは、ノズル60の端部側から基部側へ向かうにしたがって径方向外方へ向けて傾斜している。
【0072】
したがってノズル60のノズル側着脱部61を着脱部50に押し込むと、ガイド面61cが係合爪56を圧縮ばね57の付勢力に抗して着脱部50の径方向外方へ退避させる。これによりノズル側着脱部61を着脱部50にさらに進入させることができる。ガイド面61cが係合爪56よりも着脱部50の奥側へ進入すると、退避していた係合爪56が圧縮ばね57に付勢されて着脱部50の径方向内方に突出する。これにより係合爪56がノズル60の外周凹部61aと凹凸係合する。かくしてノズル60を着脱部50に押し込む操作のみで、ノズル60を着脱部50に取付けることができる。
【0073】
また、切断機1によれば、着脱部50から注水口54へと送水可能な送水経路58と、送水経路58を開閉する開閉コック53と、開閉コック53と連結されかつ着脱部50の外部に露出した開閉レバー52を有する。開閉コック53と開閉レバー52は、送水経路58と交差する左右方向に延びる軸を中心に回転可能である。送水経路58は、開閉コック53を回転することで開閉される。したがって開閉レバー52を回転させる操作のみで、送水経路58の開閉を切り替えることができる。さらに開閉レバー52は着脱部50の外部に露出する。そのため送水経路58を着脱部50の外側から開閉できる。これにより送水経路58を開閉する操作の操作性が良い。
【0074】
また、切断機1によれば、切断機本体10に切断部位を照らすライト33を有する。したがって回転刃具11の被切断材への切込みが適切であるか否かを視認し易い。さらに注水口54から回転刃具11の切断部位への切削液のかかりが適切であるか否かを視認し易い。そのため切断部位に注水しながら被切断材を切断する作業の効率が向上する。
【0075】
また、切断機1によれば、ベース2と、切断機本体10をベース2に対して左右方向に傾斜可能に支持する左右傾動支軸5を有する。ライト33は、左右傾動支軸5を挟んで回転刃具11と反対側に配置される。したがって、例えば左右傾動支軸5を中心にして切断機本体10を回転刃具11側に傾斜させる。この傾斜姿勢の場合にライト33は、左右傾動支軸5を挟んで回転刃具11と反対側である回転刃具11の上方に位置する。そのためライト33は、回転刃具11の切断部位を上方から下方へと照射する。これにより傾斜姿勢の場合においても切断部位の視認性を良くできる。
【0076】
また、切断機1によれば、回転刃具11と、回転刃具11を回転可能に支持する切断機本体10と、切断機本体10に取付けられて回転刃具11の周囲を覆う固定カバー12を有している。固定カバー12は、切削液等の液体を切断部位に注水する注水口54と、注水口54と連通して液体を注水口54に供給可能な着脱部50と、着脱部50を支持する支持部を有している。着脱部50は、プラスチックボトル90を着脱可能である。したがって注水される液体の供給源として、多くの家庭で消費される飲料用容器として安価で入手が容易なプラスチックボトル90を利用できる。そのため切断機専用のボトルの入手が難しい場合でも、プラスチックボトル90を用いて切断機1を湿式で使用できる。また、プラスチックボトル90を利用することにより、種々多様な容量の中から使用状態に応じた好適な容量を選定できる。かくして安価で利便性の良いプラスチックボトル90を着脱部50に連結させて切断機1を使用できる。
【0077】
また、切断機1によれば、プラスチックボトル90を着脱部50に着脱可能とするためのアタッチメント91を有している。プラスチックボトル90の開口部90aの外周に雄ねじ90bが設けられている。アタッチメント91には、雄ねじ90bと螺合する雌ねじ93bが設けられている。したがってアタッチメント91を介して、プラスチックボトル90を着脱部50に対して容易に着脱できる。さらに雄ねじ90bと雌ねじ93bを螺合させることにより、プラスチックボトル90をアタッチメント91に容易に連結でき、また連結を容易に解除できる。
【0078】
また、切断機1によればアタッチメント91は、着脱部50と係合可能に設けられたキャップ92と、キャップ92とプラスチックボトル90を連結させるアダプタ93に分離可能である。したがってアダプタ93を介することにより、種々多様な形状やサイズのプラスチックボトル90をキャップ92と連結できる。さらにキャップ92を、例えば水道水用ホース63の端部に取付けられるノズル側着脱部61やタンク70に取付けられるタンク側着脱部71と同形状に設けることができる。これにより注水する液体の供給源を選定する幅が拡がる。そのため切断機1の使い勝手が良い。
【0079】
また、切断機1によればアダプタ93は、プラスチックボトル90が取付けられるボトル取付部93dとキャップ92が取付けられるキャップ取付部93cを有している。ボトル取付部93dは、キャップ取付部93cよりも大径である。したがって開口径が比較的大きいプラスチックボトル90の開口部90aを、アダプタ93を介してキャップ92と連結できる。
【0080】
また、切断機1によればプラスチックボトル90は、底部90dに孔90cを有している。したがって孔90cからプラスチックボトル90内に空気を入れることができる。注水によってプラスチックボトル90から液体が出ていき水位が下がると、プラスチックボトル90内の空気に負圧が生じる。この負圧は、注水速度を弱めるブレーキとして作用し得る。孔90cからプラスチックボトル90内へ自由に空気が流入できることにより、プラスチックボトル90内における負圧の発生を防止できる。これによりプラスチックボトル90を利用してスムーズな注水が可能になる。
【0081】
また、切断機1によればタンク70は、底部70dに孔70cを有している。したがって孔70cからタンク70内に空気を入れることができる。そのためプラスチックボトル90を利用する場合に限らず、タンク70を利用する場合においてもスムーズな注水が可能になる。
【0082】
以上説明した本実施形態の切断機1には様々な変更を加えることができる。回転刃具11としてダイヤモンドホイールを例示した。これに代えて、回転刃具11として例えば円板状の砥石やチップソーを備えていてもよい。切断機本体10に着脱可能な固定カバー12を例示したが、固定カバー12が切断機本体10と一体に設けられていてもよい。回転刃具11の前側下部の側方に注水口54を配置する構成を例示した。これに代えて、例えば回転刃具11の後側下部の側方に注水口54を配置してもよい。また、例えば回転刃具11の周囲の複数箇所に注水口54を設けてもよい。互いに係合し、断面形状が矩形状の係合爪56と外周凹部61aを例示した。これに代えて、例えば断面形状がU字形状、くさび形状、鋸歯形状等で互いに係合する係合爪56と外周凹部61aとしてもよい。
【0083】
プラスチックボトル90は市販飲料用プラスチックボトルとしてペットボトルを例示したがポリエチレンテレフタラート以外のプラスチックを材料とするボトルであっても良い。孔70c,90cは、1個設けられていても良く、複数個設けられていても良い。タンク70、プラスチックボトル90に液体を注ぐ際に孔70c,90cから液体が漏れないように、孔70c,90cを封止可能な栓や弁を設けてもよい。キャップ92とアダプタ93に分離可能なアタッチメント91に代えて、一体に設けられたアタッチメントを用いても良い。プラスチックボトル90をツールレスで着脱部50に着脱可能な構成を例示したが、これに代えて、例えばドライバ等のツールを用いる構成であっても良い。
【符号の説明】
【0084】
1…切断機(石工用携帯用切断機)
2…ベース
3…前側傾動支持部、3a…左右傾動固定ねじ
4…後側傾動支持部、5…左右傾動支軸(回転中心軸)、6…上下揺動支軸
7…デプスガイド、8…上下揺動固定レバー、8a…レバー軸
10…切断機本体
11…回転刃具
12…固定カバー、12a…ねじ止め部、12b…引掛部
13…固定ねじ、14…アウタフランジ、15…インナフランジ
16…スピンドル
20…モータハウジング、20a…吸気口、20b…リブ
21…電動モータ、21a…モータ軸
22…ギヤハウジング、22a…減速ギヤ機構、22b…排気口、22c…カバー取付部
23…シャフトロック
24…コントローラ
30…ハンドルハウジング、30a…ハンドル部
31…スイッチレバー、32…ロックオフボタン、33…ライト
34…アダプタ取付部、35…通信アダプタ
40…バッテリ取付部、41…充電式バッテリ
42…六角棒スパナ、43…スパナ取付部
50…着脱部、50a…支持部、50b…給水口、50c…当接部
50d…右半割部、50e…左半割部、50f…取付ねじ
51…配水管
52…開閉レバー
53…開閉コック、53a…挿通孔
54…注水口
55…取外しボタン
56…係合爪
57…圧縮ばね(付勢部材)
58…送水経路
60…ノズル
61…ノズル側着脱部、61a…外周凹部、61b…弁座、61c…ガイド面
62…ホース取付部
63…水道水用ホース
64…水道口
65…弁体、65a…Oリング、65b…圧縮ばね、65c…凹部
70…タンク
70a…開口部、70b…雄ねじ、70c…孔、70d…底部
71…タンク側着脱部、71a…外周凹部、71b…雌ねじ
80…固定カバー、80a…ねじ止め部、81…集塵口
90…プラスチックボトル(市販飲料用プラスチックボトル、ペットボトル)
90a…開口部、90b…雄ねじ、90c…孔、90d…底部
91…アタッチメント
92…キャップ(ボトル側着脱部)
92a…外周凹部、92b…雌ねじ、92c…ガイド面
93…アダプタ
93a…雄ねじ、93b…雌ねじ、93c…キャップ取付部、93d…ボトル取付部
W…被切断材