IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社の特許一覧

特許7476015運動強度算出装置、方法およびプログラム
<>
  • 特許-運動強度算出装置、方法およびプログラム 図1
  • 特許-運動強度算出装置、方法およびプログラム 図2
  • 特許-運動強度算出装置、方法およびプログラム 図3
  • 特許-運動強度算出装置、方法およびプログラム 図4
  • 特許-運動強度算出装置、方法およびプログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】運動強度算出装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/06 20060101AFI20240422BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240422BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A63B71/06 J
A61B5/0245 P
A61B5/11 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020122783
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019140
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】越野 剛
(72)【発明者】
【氏名】松田 康
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-235920(JP,A)
【文献】特開2016-031569(JP,A)
【文献】特開2018-126360(JP,A)
【文献】特開2018-000597(JP,A)
【文献】特開2018-000537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0272511(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/06
A63B 69/00
A61B 5/02- 5/03
A61B 5/06- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの胸部部位に装着されたセンサデバイスから、前記ユーザの心拍数データおよび前記胸部部位の動きに係る加速度データをそれぞれ取得する取得処理部と、
取得された前記心拍数データおよび前記加速度データに基づいて、前記ユーザの活動シーンを推定する推定処理部と、
推定された前記活動シーンに対応して予め設定されたモデル式により、前記ユーザの運動強度を計算し出力する運動強度計算処理部と
を具備し、
前記推定処理部は、
前記心拍数データにより表される心拍数が前記ユーザの安静状態における安静時心拍数に基づいて設定される第1の閾値より大きく、かつ前記加速度データにより表される加速度の過去の第1の時間における第1の平均値が予め設定された第2の閾値より小さいという判定条件を満たすか否かを判定する処理部と、
前記判定条件を満たすと判定された場合に、前記活動シーンを、前記胸部部位の動きを伴わない運動に対応する第1のシーンであると推定する処理部と
を備え、
前記運動強度計算処理部は、前記第1のシーンに対応して予め設定された、前記心拍数から前記安静時心拍数を差し引いた差分心拍数に基づく第1の計算式により、前記運動強度を算出し出力する
運動強度算出装置。
【請求項2】
前記推定処理部は、
前記判定条件を満たさないと判定された場合に、前記加速度の前記第1の時間より短い直近の第2の時間における第2の平均値が、前記第2の閾値以上であるか未満であるかを判定する処理部と、
前記加速度の前記第2の平均値が前記第2の閾値未満と判定された場合に、前記活動シーンを前記ユーザの座った状態に対応する第2のシーンであると推定する処理部と
を備え、
前記運動強度計算処理部は、前記第2のシーンに対応して予め設定された、前記加速度の前記第2の平均値に基づく第2の計算式により前記運動強度を算出し出力する
請求項1に記載の運動強度算出装置。
【請求項3】
前記推定処理部は、
前記加速度の前記第2の平均値が前記第2の閾値以上と判定された場合に、前記活動シーンを、軽度の運動を含む第3のシーンであると仮定する処理部と、
前記第3のシーンに対応して予め設定された、前記加速度の前記第2の平均値に基づく第3の計算式により、前記運動強度を試算する処理部と、
前記運動強度の試算値を予め設定された第3の閾値より大きいか否かを判定する処理部と、
前記試算値が前記第3の閾値より大きくないと判定された場合に、前記活動シーンを前記第3のシーンであると決定する処理部と
を備え、
前記運動強度計算処理部は、前記活動シーンが前記第3のシーンであると決定された場合に、前記試算値を前記運動強度として出力する
請求項2に記載の運動強度算出装置。
【請求項4】
前記推定処理部は、前記試算値が前記第3の閾値より大きいと判定された場合に、前記活動シーンを前記軽度の運動より前記運動強度が大きい運動を含む第4のシーンであると推定し、
前記運動強度計算処理部は、前記活動シーンが前記第4のシーンであると推定された場合に、前記第1の計算式により前記運動強度を算出し出力する
請求項3に記載の運動強度算出装置。
【請求項5】
前記取得処理部は、前記胸部部位の動きに係る前記加速度データに対し重力加速度成分を除去するフィルタリング処理を行い、前記フィルタリング処理された前記加速度データを出力する、請求項1に記載の運動強度算出装置。
【請求項6】
プロセッサを備える情報処理装置が実行する運動強度算出方法であって、
ユーザの胸部部位に装着されたセンサデバイスから、前記ユーザの心拍数データおよび前記胸部部位の動きに係る加速度データをそれぞれ取得する過程と、
取得された前記心拍数データおよび前記加速度データに基づいて、前記ユーザの活動シーンを推定する推定過程と、
推定された前記活動シーンに対応して予め設定されたモデル式により、前記ユーザの運動強度を算出し出力する運動強度計算過程と
を具備し、
前記推定過程は、
前記心拍数データにより表される心拍数が前記ユーザの安静状態における安静時心拍数に基づいて設定される第1の閾値より大きく、かつ前記加速度データにより表される加速度の過去の第1の時間における第1の平均値が予め設定された第2の閾値より小さいという判定条件を満たすか否かを判定する過程と、
前記判定条件を満たすと判定された場合に、前記活動シーンを、前記胸部部位の動きを伴わない運動に対応する第1のシーンであると推定する過程と
を備え、
前記運動強度計算過程は、前記第1のシーンに対応して予め設定された、前記心拍数から前記安静時心拍数を差し引いた差分心拍数に基づく第1の計算式により、前記運動強度を算出し出力する
運動強度算出方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の運動強度算出装置が備える前記各処理部による処理を、前記運動強度算出装置が備えるプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、例えばリハビリテーションや健康管理に使用される運動強度算出装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、心疾患や肺疾患等の治療を受けた患者がリハビリテーションを実施する際には、運動をどの程度の強度で行うかを適切に管理する必要がある。運動強度は、一般にMETs(Metabolic Equivalents)で表される。METsを算出するために、従来では例えば呼気ガス分析装置を使用した心肺運動負荷試験(Cardiopulmonary exercisetest:CPX)が実施されている。しかし、CPXは高価で取り扱いに熟練が必要な機器であるため、心臓リハビリテーション時の運動処方作成や、高血圧・糖尿病などで運動療法が必要な場合に医療機関等で用いられる場合が多く、患者が手軽に使用できるものではない。
【0003】
そこで、患者の運動時の加速度を計測し、その計測結果に基づいて患者のMETsを算出する方法が提案されている(例えば非特許文献1を参照)。また、患者の心拍数(Heart Rate:HR)から簡便にMETsを推定する方法も提案されている(例えば非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Kazunori Ohkawara et al, “Real-time estimation of daily physical activity intensity by a triaxial accelerometer and a gravity-removal classification algorithm”, British Journal of Nutrition (2011), 105, 1681-1691
【文献】山本周平ほか、「代謝当量は安静時ならびに運動時の心拍数から推定可能か?」、PTジャーナル 第52巻第4号、2018年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1に記載された技術では、例えば加速度センサの取着位置によっては患者の動きの加速度を計測できない場合があり、また非特許文献2に記載された技術では運動の種類や患者の体調などによって心拍のバラツキが大きくなるため、それのみでは患者の運動の強度を算出することが困難な場合がある。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、運動の種類やユーザの状態によらずユーザの運動強度を算出できるようにする技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係る運動強度算出装置または方法の一態様は、ユーザの胸部部位に装着されたセンサデバイスから、前記ユーザの心拍数データおよび前記胸部部位の動きに係る加速度データをそれぞれ取得し、取得された前記心拍数データおよび前記加速度データに基づいて前記ユーザの活動シーンを推定し、推定された前記活動シーンに対応して予め設定されたモデル式により、前記ユーザの運動強度を算出し出力する。
またこの発明の一態様は、前記ユーザの活動シーンを推定する際に、前記心拍数データにより表される心拍数が前記ユーザの安静状態における安静時心拍数に基づいて設定される第1の閾値より大きく、かつ前記加速度データにより表される加速度の過去の第1の時間における第1の平均値が予め設定された第2の閾値より小さいという判定条件を満たすか否かを判定し、前記判定条件を満たすと判定された場合に、前記活動シーンを、前記胸部部位の動きを伴わない運動に対応する第1のシーンであると推定するようにし、かつ前記運動強度を算出する際に、前記第1のシーンに対応して予め設定された、前記心拍数から前記安静時心拍数を差し引いた差分心拍数に基づく第1の計算式により、前記運動強度を算出し出力するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の一態様によれば、ユーザの心拍数と加速度とを組み合わせることで、加速度のみおよび心拍数のみでは推定が困難な活動シーン、例えば胸部の動きを伴わない運動に対応する活動シーンや座った状態に対応する活動シーンについても推定することが可能となり、これにより運動の種類やユーザの状態によらずユーザの運動強度を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る運動強度算出装置としての機能を備えたユーザ端末とその周辺の構成の一例を示す図である。
図2図2は、図1に示したユーザ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1に示したユーザ装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、図2および図3に示したユーザ端末による全体の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図5図5は、図4に示したフローチャートのうち活動シーン推定処理およびMETs計算処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
【0011】
[一実施形態]
(構成例)
(1)システム
図1は、この発明の一実施形態に係る運動強度算出装置の機能を備えるユーザ端末とその周辺の構成の一例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、例えば心臓リハビリテーションを実施するユーザ1の胸部には、センサデバイス2がバンドなどの装着具2aにより装着される。センサデバイス2は、例えばユーザ1の心電波形および加速度を計測し、心拍数データおよび加速度データを、例えば小電力無線データ通信規格を採用した無線インタフェースによりユーザ端末3に向け送信する。
【0013】
センサデバイス2としては、例えばhitoe(登録商標)と呼ばれる導電性高分子とナノファイバとの複合材料を用いた布帛型の生体電極を、トランスミッタと組み合わせたデバイスが用いられる。また、無線インタフェースとしては、例えばBluetooth(登録商標)等の小電力無線データ通信規格を採用した無線通信方式が用いられる。なお、センサデバイス2としては、電極が胸部部位に密着して心拍などを計測する例えばシャツ型のセンサデバイスのような他のタイプであってもよく、また身体へのセンサデバイスの装着手段についても、バンドなどに限るものではなく伸縮性を有するサポータや粘着剤などを使用するものなど、どのようなものであってもよい。
【0014】
ユーザ端末3には、例えばスマートフォンやウェアラブル端末等の、ユーザ1が携帯または身体に装着して持ち運びが可能な情報処理端末が用いられる。ユーザ端末3は、ブラウザおよびメーラを有し、さらに事前にインストールしたアプリケーションプログラムを有する。そして、これらを使用することで、上記センサデバイス2との間で、またネットワーク4を介してサーバ装置5および指導者端末6との間で、それぞれデータ通信が可能となっている。
【0015】
サーバ装置5は、クラウドまたはWeb上に配置され、ユーザ端末3から送信されるユーザ1の活動データを受信して、ユーザ単位で蓄積する。指導者端末6は、医師等の医療従事者が、上記サーバ装置5に蓄積された活動データを閲覧し、かつユーザ1に対し例えば電子メールまたはSNS(Social Network Service)を用いて適切なアドバイス情報を送信するために使用される。
【0016】
なお、ネットワーク4は、例えばインターネットを中核とする広域ネットワークと、当該広域ネットワークに対しアクセスするためのアクセスネットワークとから構成される。アクセスネットワークとしては、例えば無線LAN(Local Area Network)や通信事業者が提供する公衆移動通信ネットワークが用いられるが、これに限るものではない。
【0017】
(2)ユーザ端末3
図2および図3は、それぞれユーザ端末3のハードウェア構成およびソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0018】
ユーザ端末3は、例えば、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを有する制御部31を備え、この制御部31に対しバス36を介して、プログラム記憶部32、データ記憶部33、通信インタフェース部(通信I/F)34および入出力インタフェース部(入出力I/F)35およびを接続したものとなっている。
【0019】
通信I/F34は、例えばG4またはG5規格に基づく公衆移動通信ネットワークに対応する第1の無線インタフェースと、例えばBluetooth(登録商標)等の小電力無線データ通信規格に対応する第2の無線インタフェースとを備える。なお、第1および第2の無線インタフェースには、ほかに例えばWiFi(登録商標)等の他の無線通信規格を採用したインタフェースを用いてもよい。
【0020】
通信I/F34は、制御部31の制御の下、センサデバイス2から送信される心拍数データおよび加速度データを、上記第2の無線インタフェースにより受信する。また通信I/F34は、制御部31の制御の下、制御部31により生成されたリハビリテーション運動や生活状態等に係る活動データを、上記第1の無線インタフェースを用いてネットワーク4へ送信すると共に、指導者端末6からネットワーク4を介して送られるアドバイス情報を受信する。
【0021】
入出力I/F35には、入力デバイス37および表示デバイス38が接続されている。入力デバイス37および表示デバイス38は、例えば、液晶又は有機ELを用いたディスプレイパネル上に静電容量式又は感圧式の入力シートを配置したタブレット型のデバイスからなり、主としてユーザ1による操作データの入力と、表示データの表示を行うために使用される。
【0022】
プログラム記憶部32は、例えば、記憶媒体としてSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて構成したもので、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、この発明の一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムを格納する。
【0023】
データ記憶部33は、例えば、記憶媒体として、SSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリと組み合わせたもので、この発明の一実施形態を実施するために、心拍数データ記憶部331と、加速度データ記憶部332と、モデル式記憶部333と、活動データ記憶部334とを備えている。
【0024】
心拍数データ記憶部331は、上記センサデバイス2から受信した心拍数データを時系列に記憶するために使用される。加速度データ記憶部332は、上記センサデバイス2から受信した加速度データと、制御部31により算出される加速度平均値データを、時系列に記憶するために使用される。モデル式記憶部333は、ユーザ1のリハビリテーションまたは生活状態において想定される複数の活動シーンに対応して予め設定されたMETs値計算用のモデル式を記憶する。活動データ記憶部334は、制御部31により推定されるユーザ1の活動シーンを表すデータと、制御部31により計算されるMETs値を表すデータとを、計測時刻が同じもの同士で相互に関連付けて記憶するために使用される。
【0025】
制御部31は、この発明の一実施形態を実施するための処理機能として、心拍数データ受信処理部312と、加速度データ受信処理部313と、フィルタリング処理部314と、加速度平均値算出処理部315と、活動シーン推定処理部316と、METs算出処理部317と、活動データ出力処理部318とを備えている。これらの処理部312~318は、いずれもプログラム記憶部32に格納されたアプリケーションプログラムを、制御部31のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。
【0026】
心拍数データ受信処理部312は、センサデバイス2から送信される心拍数データを通信I/F34を介して受信し、受信された心拍数データをその計測時刻または受信時刻を示す情報と対応付けて、心拍数データ記憶部331に記憶させる処理を行う。
【0027】
加速度データ受信処理部313は、センサデバイス2から送信される加速度データを通信I/F34を介して受信し、受信された加速度データをその計測時刻または受信時刻を示す情報と対応付けて加速度データ記憶部332に記憶させる処理を行う。
【0028】
フィルタリング処理部314は、上記加速度データ記憶部332から加速度データを読み出し、読み出された加速度データから重力加速度の周波数成分を除去するためにハイパスフィルタリング処理を行う。
【0029】
加速度平均値算出処理部315は、上記フィルタリング処理部314によりフィルタリング処理された加速度データをもとに、加速度の時間平均値を算出する処理を行う。一例としては、過去の3分間における第1の加速度平均値と、直近の10秒間における第2の加速度平均値をそれぞれ算出する。加速度平均値算出処理部315は、算出された上記第1および第2の加速度平均値を、計測時刻または受信時刻を示す情報と対応付けて、加速度データ記憶部332に記憶させる処理を行う。
【0030】
活動シーン推定処理部316は、上記心拍数データ記憶部331および上記加速度データ記憶部332からそれぞれ心拍数および加速度平均値の各データを計測時間または受信時刻が対応するもの同士で読み出す。そして、読み出された心拍数および加速度平均値に基づいて、ユーザ1の活動シーンを推定する処理を行う。この活動シーンの推定処理については後に詳しく述べる。
【0031】
METs算出処理部317は、上記活動シーン推定処理部316により推定された活動シーンに対応するモデル式をモデル式記憶部333から選択し、選択されたモデル式に従い上記活動シーンに対応するMETs値を算出する。そしてMETs算出処理部317は、算出されたMETs値を、推定された活動シーンを示すデータと対応付けて、ユーザ1の上記計測時刻における活動データとして活動データ記憶部334に記憶させる処理を行う。
【0032】
活動データ出力処理部318は、上記活動データ記憶部334から活動データを読み出し、入出力I/F35を介して表示デバイス38に表示させる処理を行う。
【0033】
なお、活動データ出力処理部318は、例えばユーザ1のリハビリ活動の終了後に、それまでの活動期間中に得られた活動データを活動データ記憶部334から読み出し、読み出された活動データをユーザ1の識別情報と共に、通信I/F34からサーバ装置5に向け送信する処理機能を有していてもよい。
【0034】
(動作例)
次に、以上のように構成された装置の動作例を説明する。図4は、ユーザ端末3の動作の一例を示すフローチャートである。
【0035】
(1)心拍数データの取得
ユーザ1が入力デバイス37において、リハビリ活動支援のためのアプリケーションの起動操作を行うと、ユーザ端末3の制御部31は、ステップS11においてユーザ1のリハビリ活動が開始されたと判定する。
【0036】
リハビリ活動が開始されるとセンサデバイス2では、ユーザ1の心電波形と胸部の動きの加速度の計測が開始される。そして、計測された心電波形および加速度をもとにそれぞれの心拍数データおよび加速度データが生成され、生成された心拍数データおよび加速度データがユーザ端末3に向け送信される。
【0037】
ユーザ端末3の制御部31は、心拍数データ受信処理部312の制御の下、ステップS12において、センサデバイス2から送信された心拍数データを通信I/F34を介して受信する。そして、受信された上記心拍数データをその計測時刻または受信時刻を示す情報を付与して心拍数データ記憶部331に記憶させる。
【0038】
(2)加速度データの取得
上記心拍数データの取得処理と並行してユーザ端末3の制御部31は、加速度データ受信処理部313の制御の下、ステップS13において、センサデバイス2から送信された加速度データを通信I/F34を介して受信する。そして、受信された加速度データをその計測時刻または受信時刻を示す情報を付与して加速度データ記憶部332に記憶させる。
【0039】
続いてユーザ端末3の制御部31は、フィルタリング処理部314の制御の下、ステップS14において、受信された上記加速度データに対し重力加速度成分を除去するためのフィルタリング処理を行う。例えば、フィルタリング処理部314は、Java(登録商標)またはPython(登録商標)に備えられているButterworth High Pass Filterを使用し、例えばoder=2に設定することで、受信された上記加速度データから0.7Hz以下の重力加速度に相当する周波数成分を除去する。
【0040】
続いてユーザ端末3の制御部31は、加速度平均値算出処理部315の制御の下、ステップS15において、上記フィルタリング処理後の加速度データに基づいて、例えば過去3分間の加速度平均値と、直近の10秒間の加速度平均値をそれぞれ以下のように算出する。
【0041】
例えば、いま仮にセンサデバイス2において、3軸成分ax(ti),ay(ti),az(ti)(但しtiは計測時刻)の加速度データが40msecの周期で計測されるものとすると、1秒間では25組の加速度データが得られる。
【0042】
また、時刻ti における加速度の大きさは、
【数1】
により計算される。従って、(1) 式に示される加速度の大きさを例えば10秒間分(250組)加算し、組の数250で割ると、10秒間の加速度平均値ACCfil を算出できる。(2) 式はその計算式を示したものである。
【数2】
同様に、(1) 式を例えば3分間分加算して組の数で割れば、3分間の加速度平均値ACCfil も算出できる。
【0043】
加速度平均値算出処理部315は、算出された上記各加速度平均値ACCfil を、計測時刻を示す情報を付与した状態で順次加速度データ記憶部332に記憶させる。
【0044】
(3)活動シーンの推定
心拍数データ記憶部331および加速度データ記憶部332にそれぞれ一定期間分のデータが記憶されると、ユーザ端末3の制御部31は、活動シーン推定処理部316の制御の下、ステップS16において以下のように活動シーンの推定処理を実行する。
【0045】
図5は、活動シーン推定処理の処理手順と処理内容の一例を示すフローチャートである。なお、図5には、上記活動シーン推定処理に続いて実行されるMETs算出処理S17の一例も併記してある。
【0046】
(3-1)胸部の動きを伴わない比較的強度の高い運動をしている活動シーンの推定
活動シーン推定処理部316は、先ずステップS161において、心拍数データ記憶部331から過去3分間の心拍数(以後HRとも云う)のデータを読み出し、この心拍数が3分間連続して第1の閾値を超えているか否かを判定する。ここで、第1の閾値は、例えばユーザ1の安静時の心拍数HRmin に定数1.5を乗じた値であり、事前に計測され例えば心拍数データ記憶部331に記憶されている。またそれと共に活動シーン推定処理部316は、加速度データ記憶部332から過去3分間における加速度平均値ACCfilのデータを読み出し、この加速度平均値ACCfilが第2の閾値29.9mG未満であるか否かを判定する。
【0047】
そして、活動シーン推定処理部316は、上記心拍数が3分間連続して第1の閾値より大きく、かつ加速度平均値ACCfilが第2の閾値未満であると判定されると、ステップS162に移行し、過去3分間において心拍数は安静時より連続して多くなっているにもかかわらず、加速度平均値ACCfilは小さい、つまりユーザ1の胸部はほとんど動いていないと判断し、このときのユーザ1の活動シーンは胸部の動きを伴わない比較的強度の高い運動、または重心がぶれない運動であると推定する。
【0048】
(3-2)Sedentaryの推定
上記ステップS161において、上記心拍数が3分間連続して第1の閾値より多くならないか、あるいは加速度平均値ACCfilが第2の閾値以上であると判定されたとする。この場合、活動シーン推定処理部316は、続いてステップS163において、加速度データ記憶部332から直近の10秒間における加速度平均値ACCfilを読み出し、読み出された直近の10秒間における加速度平均値ACCfilが第2の閾値以上であるか未満であるかを判定する。このとき第2の閾値としては、例えば29.9mGが用いられる。
【0049】
そして、この判定の結果、直近の10秒間における加速度平均値ACCfilが第2の閾値未満だったとすると、活動シーン推定処理部316はステップS164に移行し、このときのユーザ1の活動シーンは、直近の10秒間にほとんど動いていない座った状態で行われる活動または座った状態に近い姿勢で行われる運動(Sedentary)であると推定する。
【0050】
(3-3)軽度の動きを伴う活動状態の推定
上記ステップS163において、直近の10秒間における加速度平均値ACCfilが第2の閾値以上と判定されたとする。この場合、活動シーン推定処理部316はステップS165に移行し、このときのユーザ1の状態は家事(Household)などの軽度の動きを伴う活動状態であると仮定する。そして、当該仮定した状態に対応して事前に設定されたモデル式をモデル式記憶部333から読み出し、このモデル式に上記直近の10秒間における加速度平均値ACCfilを代入することで、METs値を算出する。
【0051】
このときのモデル式には、例えば、
METs=1.3435+1.0196×ACCfil …(3)
に示される計算式が用いられる。
【0052】
続いて活動シーン推定処理部316は、ステップS166において、算出された上記METs値が第3の閾値より大きいか否かを判定する。第3の閾値としては、例えば“2.2”が用いられる。この判定の結果、METs値が第3の閾値より大きくはないと判定されると、活動シーン推定処理部316は、ステップS167において、このときのユーザ1の状態は家事などの軽度の動きを伴う活動状態であるとした仮定は正しいと判断する。
【0053】
(3-4)意識的な運動をしている活動状態の推定
上記ステップS166において、上記(3) 式により求められたMETs値が第3の閾値(2.2)より大きいと判定されると、活動シーン推定処理部316はステップS168に移行し、ユーザ1は例えば胸部の動きを伴う比較的強度の高い運動または活動を行っていると推定する。
【0054】
(4)METs値の算出
上記活動シーン推定処理部316による活動シーンの推定処理が終了すると、ユーザ端末3の制御部31は、続いてMETs算出処理部317の制御の下、ステップS17において以下のようにMETs値を算出する。
【0055】
すなわち、上記ステップS162において、ユーザ1の活動シーンが胸部の動きを伴わない比較的強度の高い運動、または重心がぶれない運動であると推定された場合、METs算出処理部317はステップS171において、胸部の動きを伴わない比較的強度の高い運動、または重心がぶれない運動に対応するモデル式をモデル式記憶部333から読み出す。このときのモデル式としては、例えば、
METs=0.05×HRnet+2.2 …(4)
に示される計算式が用いられる。なお、HRnetは、計測された心拍数から安静時心拍数を差し引いた心拍数である。
【0056】
また、上記ステップS164において、ユーザ1の活動シーンが座った状態で行われる活動または座った状態に近い姿勢で行われる運動(Sedentary)であると推定された場合には、METs算出処理部317はステップS172において、座った状態で行われる活動または座った状態に近い姿勢で行われる運動(Sedentary)に対応するモデル式をモデル式記憶部333から読み出す。このときのモデル式としては、例えば、
METs=0.8823+0.0351×ACCfil …(5)
に示される計算式が用いられる。ここで使用されるACCfilは、上記活動シーンの推定において用いた直近の10秒間における加速度平均値である。
【0057】
さらに、上記ステップS167において、ユーザ1の活動シーンが家事などの軽度の動きを伴う活動であると推定された場合には、METs算出処理部317はステップS173に移行し、先に活動シーン推定処理部316によりステップS165で算出された、軽度の動きを伴う活動に対応するMETs値をそのままこのときのMETs値とする。
【0058】
最後に、上記ステップS168において、ユーザ1の活動シーンが胸部の動きを伴う比較的強度の高い運動または活動を行っていると推定された場合には、METs算出処理部317はステップS174において、上記ステップS171で使用したHRnet を用いた計算式(4) を選択し、METs値を算出する。
【0059】
METs算出処理部317は、以上のように算出されたMETs値を、その算出の基礎となった活動シーンの推定結果と共に、対象期間の日時情報と紐付けた状態で活動データ記憶部334に記憶させる。
【0060】
(5)活動データの出力
上記活動データ記憶部334に記憶された活動データは、ユーザ端末3に表示される。ユーザ端末3の制御部31は、活動データ出力処理部318の制御の下、ステップS18において、活動データ記憶部334から対応する活動データを読み出し、読み出された活動データを入出力I/F35から表示デバイス38へ出力し表示させる。かくして、ユーザ1は活動直後の自身の活動のMETs値を活動シーンの推定結果と共に確認することができる。
【0061】
なお、活動データ出力処理部318は、例えば毎日1日の活動の終了時刻に相当する午前0時になったか否かを監視し、上記時刻になると未送信の活動データを活動データ記憶部334から読み出し、読み出された活動データを通信I/F34からサーバ装置5へ向け送信するようにしてもよい。このサーバ装置5に記憶された活動データは、医療従事者が指導者端末6において対象ユーザ1および対象期間を指定した上で、サーバ装置5にアクセスすることにより、任意に閲覧することが可能となる。
【0062】
上記監視対象の時刻は毎日の0時に限るものではなく、その他の時刻でもよく、また毎日ではなく毎週あるいは毎月の決められた曜日または日の決められた時刻に設定されてもよい。
【0063】
(作用・効果)
以上述べたように一実施形態では、ユーザ1の胸部に装着されたセンサデバイス2から心拍数データおよび加速度データを取得して記憶し、これらのデータをもとに得られる対象期間における上記心拍数および加速度平均値に基づいてユーザ1の活動シーンを推定し、推定された活動シーンに対応するモデル式を用いてMETs値を算出するようにしている。
【0064】
従って、ユーザの心拍数と加速度平均値とを組み合わせることで、加速度のみおよび心拍数のみでは推定が困難な活動シーン、例えば胸部の動きを伴わない比較的強度の高い運動、座った状態(Sedentary)で行われる活動または座った状態に近い姿勢で行われる運動(Sedentary)、家事などの軽度の動きを伴う活動、および胸部の動きを伴う比較的強度の高い運動をそれぞれ推定することが可能となり、これにより運動の種類やユーザの状態によらずユーザの運動強度を算出することが可能となる。
【0065】
また一実施形態では、hitoe(登録商標)とトランスミッタとを組み合わせたセンサデバイス2をユーザ1の胸部に例えば装着具2aにより装着し、上記センサデバイス2をユーザが所持するスマートフォン等のユーザ端末3に無線接続するだけで、ユーザ1の活動シーンの推定およびMETs値の算出を行うことができる。このため、ユーザ1の身体に複数のセンサデバイスを装着するなどの身体的および精神的な大きな負担を与えることなく簡易にユーザ1の活動シーン毎のMETs値を算出できる利点がある。
【0066】
[その他の実施形態]
前記一実施形態では、活動シーン推定処理機能およびMETs値算出処理機能をユーザ端末3に設ける場合を例にとって説明した。しかし、それに限定されるものではなく、上記活動シーン推定処理機能およびMETs値の算出処理機能をサーバ装置または医療従事者の端末等に設けるようにしてもよい。これは、センサデバイスにより計測された心電データおよび加速度データを、例えばユーザ端末を経由してサーバ装置または医療従事者の端末へ転送することにより実現可能である。
【0067】
また、センサデバイスにより得られる心電データをもとにユーザの呼吸活動を推定したり、加速度データをもとにユーザの姿勢(例えば上半身が起き上がっているのか俯せ状態であるのか)や歩容(総歩数、歩行ピッチ、歩幅、移動速度・距離)を推定してもよい。そして、これらの推定結果を心拍数および加速度平均値にさらに加味することで、さらに正確な活動シーンを推定するようにしてもよい。
【0068】
その他、運動強度算出装置の設置場所、機能構成および処理手順と処理内容については、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0069】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…ユーザ
2…センサデバイス
3…ユーザ端末
4…ネットワーク
5…サーバ装置
6…指導者端末
31…制御部
32…プログラム記憶部
33…データ記憶部
34…通信I/F
35…入出力I/F
36…バス
37…入力デバイス
38…表示デバイス
312…心拍数データ受信処理部
313…加速度データ受信処理部
314…フィルタリング処理部
315…加速度平均値算出処理部
316…活動シーン推定処理部
317…METs算出処理部
318…活動データ出力処理部
331…心拍数データ記憶部
332…加速度データ記憶部
333…モデル式記憶部
334…活動データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5