(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】駆動力伝達機構及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
F16D 1/06 20060101AFI20240422BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F16D1/06 220
G03G21/16 180
G03G21/16 147
(21)【出願番号】P 2020142023
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 芙由子
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 雄一郎
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086065(JP,A)
【文献】特開2015-007709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00-9/10
G03G 13/00,15/00,21/16-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝達面を有し、第一の回転軸で回転する第一の回転部材と、
被伝達面を有し、前記第一の回転部材と共に回転する駆動伝達部材
であって、前記被伝達面が前記伝達面と当接することで、前記第一の回転部材から駆動力が伝達される駆動伝達部材と、
前記第一の回転軸と直交す
る方向に
おいて前記第一の回転部材と接触する
筒状軸であって、前記駆動伝達部材
と係合する係合
部を有し、
前記係合部において前記駆動伝達部材から伝達される駆動力によって前記第一の回転部材と同軸で回転する筒状軸と、
前記筒状軸から
伝達される駆動力により、前記第一の回転軸と軸方向に並んだ第二の回転軸で回転する第二の回転部材と、
を備える駆動伝達機構であって、
前記第一の回転部材は、前記第二の回転部材の外周面と接触する少なくとも1つ以上の接触部を有することを特徴とする駆動伝達機構。
【請求項2】
半径方向について、前記第一の回転軸と直交する方向における前記第一の回転部材と前記筒状軸との接触面は、前記
伝達面と前記
被伝達面より
も内側
に位置されることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達機構。
【請求項3】
前記
少なくとも1つ以上の接触部が第二の回転部材の
前記外周面と接触する位置は、前記軸方向において、前記筒状軸から第二の回転部材への駆動伝達点
と少なくとも一部重なることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動伝達機構。
【請求項4】
前記第二の回転部材に形成された貫通孔に挿入される連結部材であって、前記貫通孔に挿入された状態で前記筒状軸と係合することが可能な前記連結部材を備え、前記
少なくとも1つ以上の接触部が第二の回転部材の
前記外周面と接触する位置は、前記軸方向において、前記筒状軸と前記連結部材とが係合する位置と少なくとも一部重なることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の駆動伝達機構。
【請求項5】
前記筒状軸は金属板の両端部を突き合わせ
て形成
されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の駆動伝達機構。
【請求項6】
前記第一の回転軸と直交する方向における前記第一の回転部材と前記筒状軸との接触面は、前記金属板の前記両端部が突き合せられた合わせ目と接触しない位置に配置されることを特徴とする請求項5に記載の駆動伝達機構。
【請求項7】
前記第一の回転部材は、前記駆動伝達部材を係止する爪部を
更に有し、
前記爪部が前記駆動伝達部材を係止することで、前記第一の回転部材と前記駆動伝達部材と前記筒状軸が一体化されることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の駆動伝達機構。
【請求項8】
前記筒状軸は、周方向に切り込まれた切り込み形状と、
前記筒状軸の軸線と直交す
る方向に貫通する孔と、を
更に有し、
前記駆動伝達部材は、前記切り込み形状に嵌る突出部を
更に有し、
前記第一の回転部材は、前記孔に嵌る爪部を
更に有し、
前記突出部が前記切り込み形状に嵌り、前記爪部が前記孔に嵌ることで、前記第一の回転部材と前記駆動伝達部材と前記筒状軸が一体化されることを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の駆動伝達機構。
【請求項9】
前記駆動伝達部材は板金によって形成されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の駆動伝達機構。
【請求項10】
前記第一の回転部材は複数の前記伝達面を有し、前記駆動伝達部材は複数の前記被伝達面を有することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の駆動伝達機構。
【請求項11】
前記駆動伝達部材は、前記第一の回転部材が挿入される孔と、前記孔の内周面から前記駆動伝達部材の中心に向けて突出した突出部を有し、前記突出部は前記係合部と接触することを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の駆動伝達機構。
【請求項12】
回転
体と、
前記回転体に回転駆動力を伝達する、請求項1~
11のいずれか1項に記載の駆動伝達機構と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力の伝達を行う駆動力伝達機構及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、駆動力を伝達する為の駆動伝達部品として、中空構造の円筒軸が用いられる構成が知られている。特許文献1には、画像形成に関わる駆動ローラの駆動伝達機構として、駆動ローラの軸である中実軸とギアからの駆動力を伝達する中空構造の円筒軸とを連結するカップリング部材を設ける構成が開示されている。特許文献1の駆動伝達構成では、駆動伝達元の部材である円筒軸と駆動伝達先の部材である駆動ローラの軸との間にカップリング部材を設けることで、高精度な回転駆動の伝達を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成においても精度良い駆動伝達を達成することが可能であるが、近年、更に精度良い駆動伝達を達成することが可能な駆動伝達構成が求められている。
【0005】
本発明は、2つの回転軸間で駆動伝達を行う構成において、より精度の良い駆動伝達が可能な駆動伝達機構、及び該駆動伝達機構を含む画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明の駆動伝達機構は、
伝達面を有し、第一の回転軸で回転する第一の回転部材と、
被伝達面を有し、前記第一の回転部材と共に回転する駆動伝達部材であって、前記被伝達面が前記伝達面と当接することで、前記第一の回転部材から駆動力が伝達される駆動伝達部材と、
前記第一の回転軸と直交する方向において前記第一の回転部材と接触する筒状軸であって、前記駆動伝達部材と係合する係合部を有し、前記係合部において前記駆動伝達部材から伝達される駆動力によって前記第一の回転部材と同軸で回転する筒状軸と、
前記筒状軸から伝達される駆動力により、前記第一の回転軸と軸方向に並んだ第二の回転軸で回転する第二の回転部材と、
を備える駆動伝達機構であって、
前記第一の回転部材は、前記第二の回転部材の外周面と接触する少なくとも1つ以上の
接触部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2つの回転軸間で駆動伝達を行う構成において、より精度の良い駆動伝達が可能な駆動伝達機構、及び該駆動伝達機構を含む画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係る電子写真画像形成装置の一例を示す斜視図
【
図2】本発明の実施例に係る電子写真画像形成装置の一例を示す断面概略図
【
図3】本発明の実施例に係る中間転写ベルトユニットの一例を示す斜視図
【
図4】駆動ローラとベルト駆動伝達部の構成を示した斜視図
【
図5】実施例1の駆動伝達ユニットの構成を示す斜視図
【
図7】実施例1の駆動伝達ユニットの構成を示す断面図
【
図9】実施例1の駆動伝達ユニットの構成を示す断面図
【
図10】実施例1の駆動伝達ユニットの構成を示す断面図
【
図11】実施例1の駆動伝達ユニットの構成を示す断面図
【
図12】実施例2の駆動伝達ユニットの構成を示す斜視図
【
図13】実施例2の駆動伝達ユニットの構成を示す図
【
図14】実施例2の駆動伝達ギアの形状を示す斜視図
【
図15】実施例2の駆動伝達ユニットの構成を示す断面図
【
図17】実施例2の駆動伝達ユニットの構成を示す断面図
【
図18】実施例2の駆動伝達ユニットの構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0010】
(実施例1)
以下、本発明の実施例1について、図面を用いて説明する。なお、本実施例では、本発明の電子写真画像形成装置として、4個のプロセスカートリッジが着脱可能なフルカラー電子写真画像形成装置を例示している。しかしながら、電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置と称す)に装着するプロセスカートリッジの個数はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定されるものである。例えば、モノクロの画像を形成する画像形成装置の場合には、前記画像形成装置に装着されるプロセスカートリッジの個数は1個である。また、本実施例では、画像形成装置の一態様としてプリンタを例示するが、例えば、複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置にも本発明は適用可能である。
【0011】
図1、
図2に、本発明が適用される画像形成装置の外観斜視図と断面概略図をそれぞれ示す。この画像形成装置1は、電子写真プロセスを用いた4色フルカラーレーザプリンタであり、記録材としてのシートSにカラー画像形成を行う。画像形成装置1は、プロセスカートリッジ方式であり、プロセスカートリッジP(以下、カートリッジと称す)を装置本体2に取り外し可能に装着して、シートSにカラー画像を形成するものである。
【0012】
ここで、画像形成装置1に関して、装置開閉ドア3を設けた側を正面(前面)、正面と反対側の面を背面(後面)とする。また、画像形成装置1を正面から見て右側を駆動側、左側を非駆動側と称す。
【0013】
装置本体2には第1のカートリッジPY、第2のカートリッジPM、第3のカートリッジPC、第4のカートリッジPKの4つのカートリッジP(PY・PM・PC・PK)が水平方向に配置されている。第1~第4の各カートリッジP(PY・PM・PC・PK)は、それぞれ同様の電子写真プロセス機構を有しており、現像剤(以下トナーと称す)の
色が各々異なるものである。第1~第4のカートリッジP(PY・PM・PC・PK)には装置本体2のカートリッジ駆動伝達部(不図示)から回転駆動力が伝達される。また、第1~第4の各カートリッジP(PY・PM・PC・PK)には装置本体2からバイアス電圧(帯電バイアス、現像バイアス等)が供給される(不図示)。
【0014】
第1のカートリッジPYは、イエロー(Y)のトナーを収容しており、感光体ドラム30の表面にイエロー色のトナー像を形成する。第2のカートリッジPMは、マゼンタ(M)のトナーを収容してあり、感光体ドラム30の表面にマゼンタ色のトナー像を形成する。第3のカートリッジPCは、シアン(C)のトナーを収容してあり、感光体ドラム30の表面にシアン色のトナー像を形成する。第4のカートリッジPKは、ブラック(K)のトナーを収容しており、感光体ドラム30の表面にブラック色のトナー像を形成する。
【0015】
第1~第4のカートリッジP(PY・PM・PC・PK)の上方には、露光手段としてのレーザスキャナユニットLSが設けられている。このレーザスキャナユニットLSは、画像情報に対応してレーザ光Zを出力する。そして、レーザ光Zは、カートリッジPの露光窓部を通過して感光体ドラム30の表面を走査露光する。
【0016】
第1~第4のカートリッジP(PY・PM・PC・PK)の下方には、転写部材としての中間転写ベルトユニット11を設けている。この中間転写ベルトユニット11は、駆動ローラ13・テンションローラ17・アシストローラ15を有し、可撓性を有する転写ベルト12を掛け渡している。転写ベルト12は駆動ローラ13によって矢印C方向に回転駆動させられる。駆動ローラ13には、装置本体2のベルト駆動伝達部50(後述)から回転駆動力が伝達される。
【0017】
第1~第4の各カートリッジP(PY・PM・PC・PK)の感光体ドラム30は、その下面が転写ベルト12の上面に接している。その接触部が1次転写部である。転写ベルト12の内側には、感光体ドラム30に対向させて1次転写ローラ16を設けている。駆動ローラ13には転写ベルト12を介して2次転写ローラ14を当接させている。転写ベルト12と2次転写ローラ14の接触部が2次転写部である。
【0018】
中間転写ベルトユニット11の下方には、給送ユニット18を設けている。この給送ユニット18は、シートSを積載して収容した給紙カセット19、シート給送ローラ20を有する。
【0019】
図2における装置本体2内の左上方には、定着ユニット21と、排出ユニット22を設けている。装置本体2の上面は排出トレイ23としている。シートSは、定着ユニット21に設けられた定着手段によりトナー像が定着され、排出トレイ23へ排出される。
【0020】
図3は、画像形成手段の一部である中間転写ベルトユニット11の一例を示す斜視図である。なお、本図においては転写ベルト12の図示は省略している。駆動ローラ13の一端がベルト駆動伝達部50における駆動力を受ける受け部60となる。以下、ベルト駆動伝達部50の詳細について説明していく。
【0021】
図4は、駆動ローラ13とベルト駆動伝達部50の構成を示した斜視図である。本実施例におけるベルト駆動伝達部50は、駆動ローラ13に備えられた軸受け70、駆動力受け部60、駆動源(不図示)側に備えられ、駆動源からの駆動力を受けて回転する駆動伝達ユニット80(後述)とから構成されている。
【0022】
ここで、駆動伝達ユニット80は、第一の回転部材である駆動伝達ギア81と、駆動伝達部材(駆動伝達板金)である駆動伝達板82と、筒状軸である金属製の円筒軸83と、
から構成される。詳細は後述するが、駆動源からの駆動力は、駆動伝達ギア81、駆動伝達板82、円筒軸83の順に伝達される。なお、駆動源から駆動伝達ギア81までの間には、駆動伝達機構24が設けられている。駆動伝達ギア81から回転体である駆動ローラ13(第二の回転部材としてのシャフト131)までの回転駆動力の伝達構成が、本発明の駆動伝達機構に相当する。
【0023】
駆動ローラ13は、
図5に示すように、円柱状に形成されたシャフト131(軸部材の一例)と、シャフト131の外周面側に筒状に形成され転写ベルト12の内周面に接触配置される接触部132と、を備える。そして、シャフト131の一端部側が駆動力を受ける駆動力受け部60となる。駆動力受け部60では、シャフト131に形成された貫通孔にピン61(連結部材)が挿入されており、ピン61が円筒軸83と係合し、円筒軸83の駆動力がピン61に伝達される。本実施例においては、シャフト131の軸方向に関して、貫通孔が設けられている位置であって、ピン61と円筒軸83とが係合する位置を、円筒軸83からシャフト131に駆動を伝達するための駆動伝達点と称する。
【0024】
(駆動伝達ユニット)
駆動伝達ユニット80の構成について説明する。前述の通り、駆動伝達ユニット80は、ベルト駆動伝達部50内の駆動源(不図示)側に設けられ、駆動伝達ギア81は、駆動伝達機構24より駆動力を受け、駆動伝達板82を介して、円筒軸83へ回転駆動力を伝達する。回転駆動力は、駆動伝達ギア81の回転軸(第1の回転軸)と、駆動ローラ13(シャフト131)の回転軸(第2の回転軸)と、が軸方向に並んだ状態で伝達される。すなわち、駆動伝達ギア81と駆動ローラ13(シャフト131)は、略同一の回転軸線(略同軸)で回転する。
【0025】
図5は、ベルト駆動伝達部50の構成の正面図、
図6は本実施例における円筒軸の斜視図である。
図6に示す円筒軸83は、金属板に曲げ加工を施して略円筒形状に成形したプレス加工成形体とする。プレス加工によって製作された金属板の円筒軸83は、合わせ目として、軸線方向の一端から他端にかけて周方向に対向または当接する周方向端部を有しており、これを合わせ目830とする。本実施例では、一方の端部に周方向に凹む凹形状、それに対向するもう他端の部分に周方向に突出する凸形状を設け、この凹形状と凸形状が嵌合する構成とすることで、合わせ目830の両端面同士の軸方向のズレを抑制している。また、円筒軸83は、軸線方向の端部における略環状の端面において軸線方向に突出する凸部の端面(側端面あるいは周方向端面)として、端面831、端面832を有する。端面831、端面832は、それぞれ、ピン61、駆動伝達板82との駆動力受け渡し部となる。そして、円筒軸83は、駆動伝達ギア81に内包されている。
【0026】
図7は、
図5に示すA-A線における断面である。駆動伝達ギア81の内部には、
図7に示す通り、部分的に円筒軸83の外周面と接触する接触部815が設けられている。これにより、駆動伝達ギア81と円筒軸83は、回転軸と直交する径方向に互いに当接する構成となり、駆動伝達ギア81の中心軸と円筒軸83の中心軸を一致させている。本実施例の円筒軸83は、金属板円筒軸である為、金属板円筒軸のプレス加工時に寸法精度の出易い、円筒軸83の外周面と接触部815を嵌合させることにより、駆動伝達ギア81と円筒軸83の中心軸を一致させている。また、接触部815は、円筒軸83における金属板を突き合わせた合わせ目830の形状を考慮し、合わせ目830と接触しない位置に配置している。そしてこのように、駆動伝達板82と円筒軸83の中心軸が一致させて回転するので、回転ムラを抑えた精度の良い駆動伝達を可能としている。なお、駆動伝達ギア81と円筒軸83との接触面(接触部815)は、後述する駆動伝達ギア81と駆動伝達板82の回転方向の接触部(811a、821a)よりも半径方向内側に位置している。
【0027】
図8は、駆動伝達ユニット80を駆動伝達板82側から見た図である。駆動伝達ユニッ
ト80は、矢印Dの方向に回転する。
図8に示すとおり、駆動伝達ギア81の側面部には、ギアのピッチ円中心から一定距離離れた同一円周状に1個もしくは複数個の突起部811が設けられており。突起部811には、駆動伝達ギア81の回転方向Dの前方側に駆動伝達面811aが設けられる。一方、駆動伝達板82は、板状の部材であり、円形の最外周面に対して1個もしくは複数個の切欠き部821を持つ。切欠き部821には、切欠き部内の回転方向前方側に被駆動伝達面821aが設けられ、駆動伝達ギア81上に設けられた突起部811の駆動伝達面811aと周方向に接するように構成される。駆動伝達面811aおよび被駆動伝達面821aの接触面は、駆動伝達ギア81の任意の円周上の点と中心を結んだ線上に位置する。このことで、接触面で与える力の向きを回転方向と一致させることができ、駆動伝達ロスを抑制することが可能となる。
【0028】
駆動伝達板82の中心部には孔823を設けており、孔823の内周面から中心方向(径方向内向き)に突出するように1個もしくは複数個の突出部822が設けられる。突出部822は、円筒軸83における駆動伝達板82との係合部としての端面832と周方向(回転方向)に係合接触して駆動を伝達する為、突出部822の先端は、円筒軸83の外周半径よりも内側に入るよう構成されている。
【0029】
ここで、駆動伝達ギア81から円筒軸83への駆動伝達の詳細について説明する。まず、駆動伝達ギア81から駆動伝達板82への駆動伝達は、周方向(回転方向)に互いに当接する駆動伝達ギア81の駆動伝達面811aと駆動伝達板82の被駆動伝達面821aの間で行われる。このとき、駆動伝達面811aと被駆動伝達面821aの接触面は、駆動伝達ギア81中心から一定の距離をとって設けられることから、軸上でのトルクに対して、ギア中心からの距離に応じて接触面にかかる力を低下させることができる。さらに、駆動伝達面811aおよび被駆動伝達面821aを複数設けることによって、設けた個数に応じて、ギア上の駆動伝達面811a一箇所当たりにかかる負荷を分散させることができる。そして、駆動伝達板82から円筒軸83への駆動伝達は、前述のとおり、駆動伝達板82の突出部822と、円筒軸83の一方の端部に設けられた端面832と、の接触部で行われる。なお、駆動伝達ギア81には、駆動伝達ギア81の回転軸を中心軸とした曲面を持つ突起部817が備えられている。突起部817が駆動伝達板82の孔823に設けられた嵌合部824と嵌合することで、駆動伝達ギア81と駆動伝達板82の回転軸を一致させ、安定した回転が行えるようにしている。
【0030】
駆動伝達板82の回転軸方向の位置は、一方向は駆動伝達ギア81側面に突き当たることで規制されている。反対方向は、本実施例では、駆動伝達ギア81の突起部817の半径方向外側の領域で、駆動伝達板82を摺動可能に押圧する部材(不図示)によって、駆動力受け部60の方向に押圧される。駆動伝達板82を介して駆動伝達ユニット80全体が押圧されることで、円筒軸83は駆動力受け部60と係合するようになっている。
【0031】
図9は、ベルト駆動伝達部50のシャフト131の軸線とピン61の軸線を通る断面図である。
図9に示す通り、円筒軸83は駆動伝達ギア81に内包されており、駆動伝達ギア81に円筒軸83を挿入した後に、駆動伝達板82を取り付ける構成となっている。駆動伝達ギア81には、
図8、
図9に示すとおり、爪部814が設けられている。爪部814は、駆動伝達板82を駆動伝達ギア81に取り付ける際には、爪部の根元が半径方向内側に撓んで駆動伝達板82の取り付け軌跡から退避し、駆動伝達板82が駆動伝達ギア81に対しての正規の取り付け位置に到達すると、撓んだ状態から復帰する。これにより爪部814は駆動伝達板82を係止する状態となる。また、爪部814は、駆動伝達板82との間に隙間を設けている。駆動伝達板82が駆動伝達ギア81の中心軸方向で爪部814の係止側に最も寄った場合においても、駆動伝達板82が突起部811に乗り上げないよう、突起部811の高さは十分高く構成されている。これにより、円筒軸83及び、駆動伝達板82は、駆動伝達ギア81から外れることがなくなり、駆動伝達ギア81と円筒
軸83、駆動伝達板82は、ユニット化(一体化)される(駆動伝達ユニット80)。
【0032】
ここで、前述のとおり本実施例では、駆動伝達板82が不図示の押圧部材により押圧されることにより、駆動伝達ユニット80全体が押圧され、円筒軸83が駆動力受け部60と係合するよう構成されている。反対に、駆動伝達ユニット80を駆動力受け部60から離間させる場合には、駆動伝達ユニット80を駆動受け部60から離れる方向へ一定量移動させればよい。このとき、駆動伝達ユニット80を構成する、円筒軸83及び駆動伝達板82は、駆動伝達ギア81から互いに外れない構成になっている。これにより、離間や連結を繰り返した場合やイレギュラーな振動が加わった場合においても、各部品の正しい相互位置が保つことができる。また、ユニット化することで、駆動伝達ユニット80は単体のギアと同等に扱うことができ、ハンドリング性を向上することができている。
【0033】
なおこのとき、駆動伝達ギア81から駆動伝達板82、駆動伝達板82から円筒軸83までの駆動伝達が正しい接触部で行われるよう、駆動伝達ギア81、駆動伝達板82、円筒軸83は、回転方向において互いにガタを有して取り付けられる。
【0034】
駆動伝達ユニット80と駆動力受け部60の駆動伝達について説明する。
図10は、本体正面方向から見た、ベルト駆動伝達部50のシャフト131の軸線を通る断面図である。
【0035】
本実施例における駆動力受け部60では、前述のとおり、シャフト131に形成された貫通孔にピン61が挿入されており、ピン61が円筒軸83と係合し、円筒軸83の駆動力がピン61に伝達される。ここで、駆動力の受け渡し部材、挿入部材の一例としてのピン61は、円柱状に形成されており、シャフト131に形成された貫通孔に非圧入状態で挿入されるとともに両端部がシャフト131の外周面から突出した状態で配置される(
図9、
図10参照)。また、
図4、
図5に示すとおり、シャフト131は駆動力受け部60付近に、樹脂製の軸受け70を備えており、軸受け70はピン61の貫通孔内のスラスト方向への移動も規制する役割も果たしている。なお、本実施例では、ピン61がシャフト131に固定されていない為、軸受け70がピン61のスラスト方向への移動も規制する必要があった。しかしながら、ピン61が、シャフト131に設けられている貫通孔内に圧入される等の方法で固定されている場合には、ピン61の規制部材としての軸受け70は不要となる。
【0036】
そして前述のとおり、円筒軸83は駆動伝達ギアに内包されているが、
図5に示すとおり、円筒軸駆動伝達ギア81には溝818が設けられており、円筒軸83とピン61との接触面である円筒軸83に設けられた端面831が露出している。またピン61を端面831と溝818の回転方向上流の端面の間に挿入できるよう、端面831と凹溝818の回転方向上流の端面との距離はピン61の直径よりも大きくなるよう構成されている。駆動力は、端面831とピン61の接触点において、円筒軸83からピン61へ伝達され、シャフト131の貫通孔に挿入されたピン61が回転することにより、シャフト131、つまりは駆動ローラ13が回転する。
【0037】
図11は、
図5に示すB-B線における断面図であり、円筒軸83とピン61が係合する様子が示されている。
図10、
図11に示すとおり、駆動伝達ギア81には、駆動伝達ギア81の中心軸方向の、円筒軸83とピン61との接触部付近に、シャフト131の外周面と接触する接触部816が設けられている。接触部816は、駆動伝達ギア81の円周方向で、ピン61が挿入される溝818(
図5参照)を除いた部分に設けられている。すなわち、回転軸線方向において、接触部816がシャフト131の外周面と接触する位置と、ピン61が円筒軸83と係合する位置と、が略同じ位置、あるいは、少なくとも一部重なる位置となっている。2つの接触部816は、シャフト131の外周面よりわずか
に大きい曲面を持つ面で構成されており、シャフト131の先端部が接触部816と接触する。なお、本実施例では、2つの接触部816は、シャフト131の外周より若干大きい曲面を持つ面で構成したが、接触部は曲面ではなく、複数の平面で構成されても良い。その場合には複数の平面に内接する架空円の直径がシャフト131の軸径より若干大きく、シャフト131の先端部が接触部816と接触するよう構成すればよい。
【0038】
ここで、シャフト131と駆動伝達ユニット80の回転軸の間で芯ずれがあった場合でも、駆動伝達ユニット80が若干傾いてシャフト131と係合し、駆動の伝達が可能となるように構成するのが好ましい。そのため、接触部816の駆動伝達回転軸方向の長さは必要以上に長くならないことが好ましい。
【0039】
また、本実施例では、接触部816を、駆動伝達ギア81の中心軸方向で、円筒軸83とピン61との接触部、すなわち円筒軸83からシャフト131への駆動伝達点付近あるいは駆動伝達点と少なくとも一部重なる位置に配置する。こうすることで、駆動伝達点の振れを抑え、安定した駆動伝達を可能としている。
【0040】
このように本実施例では、ベルト駆動伝達部50において、駆動伝達ギア81に設けられた接触部816が、円筒軸83を介して駆動を伝達されるシャフト131の外周面と接触する構成を有し、駆動伝達ギア81から駆動ローラ13に回転駆動力が伝達される。これにより、円筒軸83とシャフト131との間の駆動伝達点の振れが抑えられるため、より精度の良い駆動伝達が可能となる。
【0041】
(実施例2)
図12~
図18を用いて、本発明の実施例2について説明する。なお、実施例2は、ベルト駆動伝達ユニットの構成のみが実施例1と異なり、その他の部分は実施例1と同様であり、説明を省略する。本実施例における駆動伝達部も、実施例1と同様に駆動伝達ユニットと駆動受け部から構成され、本実施例における駆動ユニットを駆動伝達ユニット280、駆動伝達部をベルト駆動伝達部250とする。
【0042】
図12は、本実施例におけるベルト駆動伝達部250の斜視図、
図13は、ベルト駆動伝達部250を本体正面から見た図、
図14は、駆動伝達ギア281の斜視図、
図15は、ベルト駆動伝達部250の
図13と同じ方向から見た断面図である。
【0043】
本実施例の駆動伝達ユニット280も、実施例1と同様に、ベルト駆動伝達部250内の駆動源(不図示)側に設けられ、駆動伝達ギア281は駆動伝達機構24より駆動力(回転力)を受け、駆動伝達板282を介して、円筒軸283へ駆動力を伝達する。
【0044】
図14及び
図15に示すように、駆動伝達ギア281の中心には、軸状の中心突起部2812が設けられており、中心突起部2812に円筒軸283が挿入される。中心突起部2812には爪部2814が設けられており、中心突起部2812の根元には溝2813が設けられている。ここで、中心突起部2812の外周面と円筒軸283の内周面が接触するように構成されており、駆動伝達ギア281の中心軸と円筒軸283の中心軸を一致させている。これにより、円筒軸283の回転ムラが低減し、精度の良い駆動伝達が可能としている。
【0045】
図16は、本実施例における円筒軸283の形状を示す図である。本実施例における、円筒軸も実施例1と同様に、金属板に曲げ加工を施して円筒形状に成形したプレス加工成形体である。
図16に示す通り、円筒軸283には、切り込み形状2834、孔2833、凹溝2831が設けられている。ここで、凹溝2831は、駆動受け部60に備えられたピン61との係合部である。本実施例においても実施例1と同様に、シャフト131の
軸方向に関して、貫通孔が設けられている位置であって、ピン61と円筒軸283とが係合する位置を、円筒軸283からシャフト131に駆動を伝達するための駆動伝達点と称する。
【0046】
図17は、ベルト駆動伝達部250の、駆動伝達板282の駆動受け部60側の面に沿って切った断面(
図13のA-A線における断面)である。
図17に示すように、駆動伝達ギア281の側面部には、ギアのピッチ円中心から一定距離離れた同一円周状に1個もしくは複数個の突起部2811が設けられている。突起部2811には、駆動伝達ギア281の回転方向C前方側に駆動伝達面2811aが設けられる。一方、駆動伝達板282は板状の部材であり、円形の最外周面に対して1個もしくは複数個の切欠き2821を持つ。切欠き2821には、切欠き内回転方向前方側に被駆動伝達面2821aが設けられ、駆動伝達ギア281上に設けられた突起部2811の駆動伝達面2811aと周方向に接するように構成される。接触面となる駆動伝達面2811aおよび被駆動伝達面2821aは、ギアの任意の円周上の点と中心を結んだ線上に位置する。このことで、接触面で与える力の向きを回転方向と一致させることができ、駆動伝達ロスを抑制することが可能となる。
【0047】
駆動伝達ギア281から駆動伝達板282への駆動伝達は、周方向に互いに当接する駆動伝達ギア281の駆動伝達面2811aと駆動伝達板282の被駆動伝達面2821aの間で行われる。このとき、駆動伝達面2811aと被駆動伝達面2821aの接触部は駆動伝達ギア281中心から一定の距離をとって設けられることから、軸上でのトルクに対して、ギア中心からの距離に応じて接触面にかかる力を低下させることができる。さらに、駆動伝達面2811aおよび被駆動伝達面2821aを複数設けることによって、設けた個数に応じて、ギア上の駆動伝達面2811a一箇所当たりにかかる負荷を分散させることができる。
【0048】
駆動伝達板282の中心部には略円形の孔2823を設けており、孔2823の内周面から中心方向(径方向内向き)に突出するように1個もしくは複数個の突出部2822が設けられる。そして、突出部2822は、円筒軸283に周方向に切り込まれたように形成された切り込み形状2834に嵌るように構成されている。
図18には、切り込み形状2834に突出部2822が嵌っている様子を示す。このように、切り込み形状2834内に突出部2822が嵌ることで、円筒軸283に対する駆動伝達板282の軸方向の位置を規制される。そして、切り込み形状2834の突き当たり2834aが突出部2822との接触部、つまりは駆動受け部となる。
【0049】
ここで、突出部2822は、円筒軸283の切り込み形状2834の突き当たりである端面2834aと接触して駆動を伝達する為、突出部2822の先端は、円筒軸283の外周半径よりも内側に入るよう構成されている。孔2823の突出部2822を除いた部分の直径は、円筒軸283の外周直径より大きくなるように構成されている。また、円筒軸283に軸線と直交する径方向に貫通するように設けられた孔2833には、駆動伝達ギア281の爪部2814が嵌り、円筒軸283の駆動伝達ギア281に対するスラスト方向、及び円周方向の位置を規制している。
【0050】
このように、切り込み形状2834に突出部2822が嵌った状態で、孔2833に駆動伝達ギア281の爪部2814が嵌ると、駆動伝達板282は、円筒軸283に対する軸線方向の位置が規制され、かつ、駆動伝達ギア281の突起部2811と切り込み形状2834内の端面2834aによって円周方向の位置が規制される。一方、円筒軸283も、駆動伝達ギア281に対しての軸線方向と円周方向の位置が規制されることとなり、駆動伝達ギア281と円筒軸283、駆動伝達板282は、ユニット化される(駆動伝達ユニット280)。また、この時、駆動伝達ギア281から駆動伝達板282、駆動伝達
板282から円筒軸283までの駆動伝達が正しい接触部で行われるよう、駆動伝達ギア281、駆動伝達板282、円筒軸283は、回転方向において互いにガタを有して取り付けられる。なお、駆動伝達ユニット280の少なくとも一部は、不図示の付勢部材によって駆動力受け部60側に向かって付勢されており、円筒軸283が駆動力受け部60と係合するようになっている。
【0051】
そして、駆動伝達ギア281の突起部2811の先端部、円筒軸283とピン61との接触部付近には、シャフト131の外周と接触する接触部2817を設けている。
図14には接触部2817の形状が、
図15にはシャフト131の先端部が接触部2817と接触する様子が示されている。本実施例では、接触部2817を、駆動伝達ギア281の中心軸方向で、円筒軸283とピン61との接触部付近に配置することで、駆動伝達点の振れを抑え、安定した駆動伝達を可能としている。
【0052】
このように本実施例では、ベルト駆動伝達部250において、駆動伝達ギア281に設けられた接触部2817が、円筒軸283を介して駆動を伝達されるシャフト131の外周面と接触する構成を有し、駆動伝達ギア281から駆動ローラ13に回転駆動力が伝達される。これにより、円筒軸283とシャフト131との間の駆動伝達点の振れが抑えられるため、より精度の良い駆動伝達が可能となる。
【符号の説明】
【0053】
13…駆動ローラ、61…ピン、80、280…駆動伝達ユニット、81、281…駆動伝達ギア、82、282…駆動伝達板、83、283…円筒軸、131…シャフト