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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】作業ロボットの制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/661 20240101AFI20240422BHJP
【FI】
G05D1/661
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020144782
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039647
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 遥
(72)【発明者】
【氏名】石平 大祐
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187122(WO,A1)
【文献】特開2018-92401(JP,A)
【文献】特開2019-107400(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0187714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/661
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行する走行経路に沿って作業軌跡を形成する作業ロボットの制御装置であって、
前記作業ロボットの駆動源であるバッテリーへの充電を行う充電基地の位置を認識して、仮想的に区画した作業区画における作業用走行経路及び前記作業ロボットの現在位置と前記充電基地の位置間の充電用走行経路を設定する設定部を備え、
前記設定部は、
1つの作業区画の作業を開始する前に、設定されている作業条件で当該作業区画での作業途中で充電量が足りなくなることを予測した場合に、前記作業区画での作業を行うことなく、前記充電用走行経路を設定し、設定された前記充電用走行経路に沿って走行制御を行うことを特徴とする作業ロボットの制御装置。
【請求項2】
前記作業区画は、ラインストライプ状の作業軌跡を形成する際の1つの直線作業軌跡が形成される区画であることを特徴とする請求項1に記載された作業ロボットの制御装置。
【請求項3】
前記設定部は、
前記作業軌跡の側縁線と前記作業区画の境界線が一致するように、前記作業区画の境界線を変更することを特徴とする請求項2に記載された作業ロボットの制御装置。
【請求項4】
前記作業軌跡は、複数の作業モードから選択可能であることを特徴とする請求項1に記載された作業ロボットの制御装置。
【請求項5】
前記作業ロボットは、前記作業軌跡を形成する草刈り作業部を制御する作業制御部を備え、
前記作業制御部は、前記設定部が前記1つの作業区画の作業を開始する前に、当該作業区画での作業が完了するように、前記作業条件を設定することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載された作業ロボットの制御装置。
【請求項6】
前記作業条件は、刈り速度と刈り高さの一方又は両方であることを特徴とする請求項5に記載された作業ロボットの制御装置。
【請求項7】
自律走行する走行経路に沿って作業軌跡を形成する作業ロボットの制御方法であって、
前記作業ロボットの駆動源であるバッテリーへの充電を行う充電基地の位置を認識すると共に、仮想的に区画した作業区画の走行経路及び前記作業区画と前記充電基地間の走行経路を設定し、
1つの作業区画の作業を開始する前に、当該作業区画での作業途中で充電量が足りなくなることを予測した場合に、前記作業区画での作業を行うことなく、前記充電基地への移動を行う走行経路を設定することを特徴とする作業ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業ロボットの動作を制御する制御装置及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業領域内を自律走行しながら、走行経路に沿って草刈りなどの作業を行う作業ロボットが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。作業ロボットは、GPSなどの衛星測位システムを活用するか、或いは作業現場に設置された電子タグやワイヤなどの基準位置を検知して、設定された作業領域内にて自律走行を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5973608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した作業ロボットによって草刈りなどの作業を行う際には、作業領域内での走行経路に沿って作業軌跡が形成される。例えば、ラインストライプ状の作業軌跡を形成する場合には、作業領域内で一方向に沿って直線状に作業ロボットを走行させて、直線状の作業軌跡を形成し、領域端で作業ロボットの方向を90°変えて、形成された作業軌跡の隣の未作業領域に作業ロボットを移動させ、先の作業軌跡とは逆向きに作業ロボットを走行させることで、作業方向が異なる直線状の作業軌跡を並行して形成する。
【0005】
前述したように、作業軌跡を作業領域内に形成する場合、充電不足で作業が中断してしまうと、一旦充電基地まで作業ロボットを移動させることになるので、作業軌跡の連続性が途切れてしまうことになり、良好な外観の作業軌跡を形成することが難しくなる。
【0006】
例えば、ラインストライプ状の作業軌跡を形成する場合、作業途中で充電のために充電基地に作業ロボットが移動すると、戻ってきた作業ロボットの向きと作業再開位置を高い精度で制御しなければ、ラインストライプ状の作業軌跡の連続性は確保できない。このため、作業途中で充電を挟みながら作業軌跡の連続性を得ようとすると、作業ロボットの制御負荷が大きくなってしまう問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、設定された作業領域内で作業ロボットによって作業軌跡を形成するに際して、制御負荷を軽減しながら、良好な外観の作業軌跡を形成できるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
自律走行する走行経路に沿って作業軌跡を形成する作業ロボットの制御装置であって、前記作業ロボットの駆動源であるバッテリーへの充電を行う充電基地の位置を認識して、仮想的に区画した作業区画における作業用走行経路及び前記作業ロボットの現在位置と前記充電基地の位置間の充電用走行経路を設定する設定部を備え、前記設定部は、1つの作業区画の作業を開始する前に、設定されている作業条件で当該作業区画での作業途中で充電量が足りなくなることを予測した場合に、前記作業区画での作業を行うことなく、前記充電用走行経路を設定し、設定された前記充電用走行経路に沿って走行制御を行うことを特徴とする作業ロボットの制御装置。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴の本発明によると、設定された作業領域内で作業ロボットによって作業軌跡を形成するに際して、作業途中でバッテリー充電のための作業中断を避けることができるので、制御負荷を軽減しながら、良好な外観の作業軌跡を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】作業ロボットシステムの全体構成を示した説明図。
図2】作業ロボットの構成を示した説明図((a)が側面視の説明図、(b)が平面視の説明図)。
図3】作業ロボットの制御装置を示した説明図。
図4】作業ロボットの制御装置における制御機能(プログラム)を示した説明図。
図5】作業軌跡の作業モードを説明する説明図((a)がラインストライプ状軌跡、(b)が旋回ストライプ状軌跡、(c)がランダム軌跡)。
図6】作業ロボットの制御装置の制御フロー例を示す説明図。
図7】作業ロボットの制御装置の制御フロー例を示す説明図。
図8】作業ロボットの制御装置の制御フロー例を示す説明図。
図9】作業ロボットの制御装置の制御フロー例を示す説明図。
図10図9におけるステップS30とステップS31の説明図。
図11】作業ロボットの基本動作を示した説明図。
図12】作業区画の設定例を示した説明図。
図13】作業区画の設定例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1に示すように、作業ロボットシステム1Sは、作業ロボット1とこの作業ロボット1を管理する管理設備によって構成されている。管理設備としては、サーバー101、ユーザーが所持する携帯情報端末102、充電基地103などがあり、各設備は、ネットワークNTを介して作業ロボット1との信号送受信が可能になっている。
【0013】
作業ロボット1を制御する制御装置は、前述した作業ロボットシステム1S内で作業ロボット1を制御するものであり、制御信号の発信源は、作業ロボット1内、サーバー101内、携帯情報端末102内、充電基地103内などのいずれであってもよい。
【0014】
作業ロボット1は、機体10と自律走行可能な走行部2を備えており、機体10には、機体10の走行経路に沿って作業を行う作業部3が設けられている。また、作業ロボット1は、走行部2や作業部3を制御する制御部5を備えている。制御部5には、ネットワークNTを介して前述した管理設備と信号送受信を行うための通信部5Aが接続されている。
【0015】
制御部5には、一例として、GPSなどの衛星測位システム(GNSS;Global Navigation Satellite System)を活用して、機体10の現在位置を検知するために、GNSS衛星100から発信される電波信号を受信するGNSSセンサ6Aが接続されている。この場合に、RTK-GPSシステムを採用して、固定された充電基地103のような場所で電波信号を受信し、作業ロボット1の位置を決定すれば、移動する作業ロボット1の位置がより正確に測定可能である。
【0016】
図2に各作業ロボット1の一構成例を示す。図示の作業ロボット1の走行部2は、前輪走行部2Aと後輪走行部2Bを備えており、図1に示すように、作業現場内に設定される作業領域Waにおける任意の方向に向けて機体10を自律走行させることができるようになっている。図1における作業領域Waは、作業境界線Wbによって区画されており、作業境界線Wbは、作業ロボット1が地図情報上で認識することができる仮想線或いは作業ロボット1が物理的にセンシング可能なワイヤ線などで形成されている。
【0017】
作業ロボット1の機体10には、走行部2と作業部3を駆動する駆動部4が設けられている。図2に示した例では、駆動部4は、前輪駆動部4Aと後輪駆動部4Bをそれぞれ左右一対備えており、更に、作業部3を駆動する作業駆動部4Cを備えている。また、作業ロボット1は、駆動部4と制御部5などの電源となるバッテリー11を備えている。
【0018】
作業ロボット1の作業部3は、機体10の走行経路に沿って作業軌跡を形成するように、草刈り作業や散布作業や回収作業などの作業を行うものである。以下、草刈り作業を行う作業部3を例にして説明する。図2に示した例では、作業部3は、平面視で円形の作業範囲を有しており、図示省略した草刈り刃を鉛直軸周りに回転することで、作業部3の直下の草を刈払う。これにより、機体10を走行させながら作業部3を駆動すると、作業ロボット1の走行経路に沿って、作業部3における平面視の円形作業範囲の直径を横幅とする刈払い作業済みの作業軌跡が形成される。
【0019】
作業ロボット1の機体10には、センサ部6が設けられている。センサ部6には、走行部2を自律走行させるため、或いは作業部3の駆動を制御するために、前述したGNSSセンサ6A等、各種の検出手段が設けられている。センサ部6は機体10の前方に設けられており、センサ部6の検出信号は制御部5に送信される。
【0020】
作業ロボットシステム1Sの構成例(ブロック図)を図3に示す。作業ロボット1の制御部5には、前述した駆動部4とセンサ部6とバッテリー11が接続されていると共に、前述した通信部5A、制御部5に情報を入力する入力部5B、制御部5に入力された情報を記憶する記憶部5Cなどが接続されている。
【0021】
センサ部6には、前述したGNSSセンサ6Aが設けられると共に、機体10の進む方向を検出するための方位センサ6Bや、作業境界位置に設置された電子タグやワイヤを物理的に検知する境界検知センサ6Cなどが設けられている。
【0022】
サーバー101には、制御部50が設けられており、制御部50には、サーバー101をネットワークNTに接続するための通信部51と、制御部50に情報を入力するための入力部54、制御部50に入力された情報を記憶する記憶部52、制御部50或いは制御部5の制御状況等を表示する表示部53などが接続されている。なお、ユーザーが所持する携帯情報端末102は、サーバー101と同等の機能を有している。
【0023】
充電基地103は、バッテリー11に接続される充電装置103Aを備えている。充電装置103Aは、例えば、商用交流電力103Bを直流電力に変換してバッテリー11を充電する。また、充電基地103にも制御部60とこれに接続される通信部61を設けることができる。
【0024】
作業ロボット1の通信部5Aとサーバー101や携帯情報端末102の通信部51と充電基地103の通信部61がネットワークNTを介して接続されていることで、作業ロボット1に設けた制御部5とサーバー101や携帯情報端末102の制御部50と充電基地103に設けた制御部60は、互いに信号(情報)の送受信が可能な状態になっており、1つの統合された制御装置5Uを構成している。
【0025】
作業ロボットシステム1Sの制御は、制御装置5Uに、図4に示す機能のプログラムを組み込むことで実行される。制御装置5Uが実行するプログラムは、作業ロボット1に搭載した制御部5にその一部又は全部を組み込むことができ、また、サーバー101や携帯情報端末102の制御部50にその一部又は全部を組み込むことができ、また、充電基地103に設けた制御部60にその一部又は全部を組み込むことができる。なお、サーバー101、携帯情報端末102、充電基地103などの管理設備において、作業ロボットシステム1Sに必須のプログラムが組み込まれていない設備は、適宜省略することができる。
【0026】
制御装置5Uは、プログラム(ソフトウエア)として組み込まれる制御機能として、走行制御部P1、作業制御部P2、設定部P3を備えており、入力部5B(54)から入力される情報と記憶部5C(52)に記憶されている情報を活用して、各種の制御を行う。
【0027】
入力部5B(54)からは、作業区画の設定位置情報、作業条件の初期設定の情報、作業条件の変更指示の情報などが入力される。記憶部5C(52)には、作業領域Waの地図情報、充電基地103の位置情報などが記憶されており、これらの情報を取得することで、制御装置5Uは、作業領域Wa内の位置とそれに対する充電基地103の位置を把握している。
【0028】
制御装置5Uにおける走行制御部P1は、作業ロボット1の前輪駆動部4Aと後輪行動部4Bを制御することで、設定部P3にて設定された走行経路に沿って、作業ロボット1を自律走行させる。また、走行制御部P1は、前輪駆動部4Aと後輪行動部4Bを制御することで、作業ロボット1の作業速度(走行速度)を制御する。
【0029】
制御装置5Uにおける作業制御部P2は、作業ロボット1の作業駆動部4Cを制御することで、入力部5B(54)からの入力で初期設定されている作業条件で作業部3を制御する。また、作業制御部P2は、入力部5B(54)で入力された作業条件の変更指示、或いは設定部P3の設定に応じて変更される作業条件に応じて、作業部3を制御する。作業部3が草刈り作業部の場合には、刈り速度や刈り高さなどが、前述した作業条件になる。
【0030】
制御装置5Uにおける設定部P3は、作業区画設定手段P30と、走行経路設定手段P31と、充電不足予測手段P32を少なくとも備えている。
【0031】
作業区画設定手段P30によって設定される作業区画は、作業領域Wa内に仮想的に区画される小区画であって、1つの作業区画は、連続した(途切れのない)作業軌跡が形成される区画になっている。作業区画設定手段P30は、例えば、作業領域Wa内の何処に作業区画を設定するかの位置情報である設定位置情報に基づいて、1つ又は複数の作業区画を設定する。作業区画の設定は、作業開始毎に1つの区画を設定してもよいし、作業開始に先立って、複数の区画を、例えば作業領域Waを複数の作業区画に区分するように、設定してもよい。
【0032】
走行経路設定手段P31は、作ロボット1を自律走行させるための走行経路を設定するものであり、作業区画の設定を行った後に作業区画における走行経路を設定する作業用走行経路設定手段P31Aと、作業ロボット1の現在位置と充電基地103の位置間の走行経路を設定する充電用走行経路設定手段P31Bを備えている。
【0033】
作業用走行経路設定手段P31Aは、作業区画において、作業軌跡を形成するための走行経路を設定する。図5に示すように、走行経路Rrに沿って形成される作業軌跡Wtは、作業区画Ws毎に、複数の作業モードが設定可能になっている。作業モードとしては、例えば、図5(a)に示すように、隣接する直線経路の進行方向を交互に変えたラインストライプ状軌跡、図5(b)に示すように、直線経路の進行方向を90°変えて旋回しながら進む旋回ストライプ状(旋回の方向は、図示のように外から内に向けた旋回と内から外に向けた旋回が選択可能)軌跡、図5(c)に示すように、直線経路の進行方向を作業区画端でランダムに変えて進行するランダム軌跡などがある。
【0034】
充電用走行経路設定手段P31Bは、作業ロボット1の現在位置と充電基地103の位置間の往復の走行経路を設定する。設定例としては、作業ロボット1の現在位置と充電基地103の位置を直線で結んだ最短距離経路、位置が把握されている障害物(障害施設)や作業済みの作業区画を避ける迂回経路、などを適宜設定する。
【0035】
充電不足予測手段P32は、1つの作業区画の作業を開始する前に、設定されている作業条件で、その作業区画での作業途中で充電量が足りなくなることがあるか否かを予測する。予測に際しては、予測時点でのバッテリー残量Rを検出し、これから作業する作業区画で消費されるバッテリー消費量Cを計算して、C>Rの場合に、作業途中で充電量が足りなくなると予測し、C≦Rの場合に、作業区画での作業が完了可能であると予測する。なお、前述したバッテリー消費量Cを計算することなく、単純にバッテリー残量Rが設定された閾値を下回った場合に、作業途中で充電量が足りなくなると予測してもよい。
【0036】
充電不足予測手段P32が、作業途中で充電量が足りなくなると予測した場合には、1つの態様として、前述した走行経路設定手段P31における充電用走行経路設定手段P31Aにて、作業ロボット1の現在位置と充電基地103の位置間での走行経路Rr(図11参照)を設定し、その設定された走行経路Rrに沿って自律走行を行うように、走行制御部P1による制御を行う。
【0037】
充電不足予測手段P32が、作業区画での作業が完了可能であると予測した場合には、前述した走行経路設定手段P31における作業用走行経路設定手段P31Aで設定された走行経路Rrに沿って自律走行を行うように、走行制御部P1による制御を行い、作業区画に作業軌跡Wtを形成する(図5参照)。
【0038】
充電不足予測手段P32が、作業途中で充電量が足りなくなると予測した場合、他の態様としては、作業条件の変更によって、作業区画での作業完了が可能になるか否かの判断を行う。具体的には、作業部3が草刈り作業部の場合に、刈り速度と刈り高さの一方又は両方をバッテリー消費が少ない条件に変更し、変更した作業条件で、作業区画における走行経路の終端までの作業でのバッテリー消費量Cを計算し、C≦Rとなる作業条件の変更が可能な場合には、その作業条件に変更するように、作業制御部P2の制御を行う。その後は、作業用走行経路設定手段P31Aで設定された走行経路Rrに沿って自律走行を行い、作業区画に走行経路Rrに沿った作業軌跡Wtを形成する(図5参照)。
【0039】
図6図9は、制御装置5Uの制御フロー例を示している。図6及び図7に示した例は、作業毎に単独で作業区画の設定を行う例である。図6に示す例では、制御開始後に、作業条件の設定或いは入力がなされ(ステップS01)、作業区画設定手段P30が作業区画を設定する(ステップS02)。そして、設定された作業区画に基づいて、作業用走行経路設定手段P31Aが作業用走行経路を設定する(ステップS03)。この際、所望の作業軌跡を形成するために、前述した作業モードの選択がなされる。
【0040】
作業区画における作業用走行経路が設定されると、設定された作業条件に基づいて、充電不足予測手段P32が作業区画での作業途中で充電量が足りなくなるか否かの予測を行い(ステップS04)、そこで充電量が足りなくなる(充電不足有り)と予測した場合(ステップS04:YES)、充電用走行経路設定手段P31Bが充電用走行経路を設定する(ステップS05)。
【0041】
充電用走行経路が設定されると、走行制御部P1が充電基地への走行制御を行い(ステップS06)、充電基地103で作業ロボット1のバッテリー11への充電が行われ(ステップS07:NO)、充電が完了すると(ステップS07:YES)、設定された充電用走行経路に沿って、走行制御部P1が次に作業を行う作業区画への走行制御を行う(ステップS08)。
【0042】
ステップS08の後、又は、充電不足予測手段P32が作業区画で充電量が足りなくならない(充電不足無し)と予測した場合(ステップS04:NO)には、設定された作業条件で作業区画における作業が実行され(ステップS09)、作業区画に選択された作業モードの作業軌跡が形成される。その後、作業を継続する場合(ステップS10:YES)には、ステップS01に戻った処理が実行され、作業を継続しない場合(ステップS10:NO)には、制御を終了する。
【0043】
図7に示す例は、ステップS01~S10の各ステップが図6に示した例と共通している。図7に示した例では、ステップS04にて、作業区画での作業途中で充電量が足りなくなる(充電不足有り)と予測した場合(ステップS04:YES)、充電不足予測手段P32が作業条件の変更で対応可能か否かの判断を行う(ステップS11)。
【0044】
ステップS11では、前述したように、作業条件の変更によって、作業区画の作業完了が可能になるか否かの判断が行われ、具体的には、刈り速度と刈り高さの一方又は両方をバッテリー消費が少なくなる条件に変更することで、作業区画での作業が完了可能になるか否かが判断される。ここで、対応可能(ステップS11:YES)と判断された場合には、その条件で作業制御部P2が作業条件の変更を行い(ステップS12)、ステップS09の作業実行が行われる。対応不可能(ステップS11:NO)と判断された場合には、充電用作業経路の設定を行い、図6に示した例のステップS05~ステップS10の処理が行われる。
【0045】
図8に示した例は、図7に示した例におけるステップS02に替わって、ステップS20,S21が設けられている。すなわち、図8に示した例では、制御が開始されると、作業区画設定手段P30が、複数の作業区画を設定し(ステップS20)、走行経路設定手段P31は、設定された複数の作業区画の中から1つの作業区画を特定し(ステップS21)、特定された作業区画における作業用走行経路を設定する(ステップS03)。
【0046】
図8に示した例において、ステップS01、ステップS03~ステップS10、ステップS11、ステップS12は、図7に示した例と共通する。ここで、ステップS11とステップS12を除いた制御フローにすることも可能である。図8に示す例では、ステップS10にて作業継続する(ステップS10:YES)場合は、ステップS21にて、複数設定されている作業区画の中で別の(未作業の)作業区画が新たに特定される。
【0047】
図9に示した例は、図8に示した例において、ステップS09の後に、ステップS30とステップS31を追加したものである。この例において、ステップS20とステップS21は、図6に示した例のようにステップS02に替えることができる。また、この例において、ステップS11とステップS21は除くことができる。
【0048】
図9に示した例におけるステップS30は、最終的に作業区画に形成された作業軌跡の側縁線が、作業区画の境界線と一致しているか否かの判断を行う。図10に示すように、作業ロボット1で作業区画Wsに作業軌跡Wtを形成するに際して、例えば、ラインストライプ状の作業軌跡Wtを形成すると、作業部3の作業幅によって形成される作業軌跡Wtの側縁線Seが作業区画Wsの境界線Sbと一致しない場合がある。このような場合に、作業区画Wsの境界線Sbを変更することで、作業軌跡Wtの側縁線Seと作業区画Wsの境界線Sbとを一致させる。これによると、作業区画Wsにおいて形成されるラインストライプ状作業軌跡Wtのストライプ幅が綺麗に揃うことになり、より外観性良い作業軌跡Wtを形成することができる。ここで側縁線Seに変更された作業区画Wsの境界線Sbは、隣接する作業区画Wtの境界線Sbになり、隣接する作業区画Wsにおいて作業用走行経路設定時に反映される。
【0049】
図11は、制御装置5Uによって制御される作業ロボット1の基本動作を示している。作業ロボット1は、設定された作業区画Wsにおいて所望の作業モードで作業軌跡Wtを形成する。図示のように、作業区画Ws毎に異なる作業軌跡Wtを形成しても良いし、共通の作業軌跡Wtを形成しても良い。また、作業区画Ws毎に異なる作業条件を設定することができ、例えば、長い草が密集している場合など、草刈りの作業負荷が大きい作業区画Wsが存在する場合には、負荷の大きい作業区画Wsにおいて、刈り速度を下げるなど適正な作業条件を個別に設定することができる。
【0050】
そして、作業ロボット1が各作業区画Wsの作業を行う前に、前述した充電不足の予測が行われ、設定されている作業条件で、次に作業する作業区画Wsでの作業途中で充電量が足りなくなることを予測した場合に、作業条件の変更で対応できない場合には、作業ロボット1を充電基地103に向けて走行させ、充電を行った後に、次に作業を行う作業区画Wsの入り口に向けて作業ロボット1を走行させる。
【0051】
図12図13は、作業区画の設定例を示している。図12に示した例は、作業領域Waにおいて、ラインストライプ状の作業軌跡Wtを形成するに際して、一つの直線軌跡が形成される区画を作業区画Wsに設定している。この例では、一つの直線軌跡毎に作業区画Wsが設定されるので、1つの直線軌跡の作業に入る前に、前述した充電不足の予測が行われ、設定されている作業条件でこれから作業する直線軌跡の作業途中で充電量が足りなくなることを予測した場合に、作業条件の変更で対応できない場合には、作業ロボット1を充電基地103に向けて走行させ、充電を行った後に、次に作業を行う直線軌跡の作業を行う。
【0052】
図13に示した例では、作業区画を複数の分類に分けて設定し、どの作業区画を選択して作業を行うのが最適かのスケジューリングを可能にしている。図示の例では、1回の充電で1区画の作業が完了できる面積又は作業負荷を有する作業区画を「区画A」、1回の充電で2区画の作業が完了できる面積又は作業負荷を有する作業区画を「区画B」、1回の充電で3区画の作業が完了できる面積又は作業負荷を有する作業区画を「区画C」に分類している。
【0053】
このように作業区画を分類して、「区画A」の作業区画を1つ作業した後で充電を行い、「区画B」の作業区画を2つ作業した後で充電を行い、「区画C」の作業区画を3つ作業した後で充電を行うようにすることで、中途半端な充電残量で充電を行うことを避けることができ、効率的な充電回数で作業の最適なスケジューリングを行うことができる。
【0054】
以上説明したように、本発明の実施形態にかかる作業ロボット1の制御装置5U或いはこれによる制御方法によると、作業ロボット1の駆動源であるバッテリー11への充電を行う充電基地103の位置を認識すると共に、仮想的に区画した作業区画Wsの走行経路及び作業区画Wsと充電基地103間の走行経路を設定し、1つの作業区画Wsの作業を開始する前に、この作業区画Wsでの作業途中で充電量が足りなくなることを予測した場合に、充電基地103への移動を行う走行経路を設定したり、作業条件の変更を行ったりする。これによって、作業途中でバッテリー充電のために作業が中断するのを避けることができ、制御負荷を軽減しながら、設定した作業区画Wsにて良好な外観の作業軌跡を形成することができる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1:作業ロボット,1S:作業ロボットシステム,
10:機体,11:バッテリー,
100:GNSS衛星,101:サーバー,102:携帯情報端末,
103:充電基地,103A:充電装置,103B:商用交流電力,
2:走行部,2A:前輪走行部,2B:後輪走行部,3:作業部,
4:駆動部,4A:前輪駆動部,4B:後輪駆動部,4C:作業駆動部,
5,50,60:制御部,5A,51,61:通信部,
5B,54:入力部,5C,52:記憶部,6:センサ部,
6A:GNSSセンサ,6B:方位センサ,6C:境界検知センサ,
53:表示部,5U:制御装置,
P1:走行制御部,P2:作業制御部,P3:設定部,
P30:作業区画設定手段,P31:走行経路設定手段,
P31A:作業用走行経路設定手段,P31B:充電用走行経路設定手段,
P32:充電用走行経路設定手段,
Wa:作業領域,Wc:作業区画,Wt:作業軌跡,Rr:走行経路,
NT:ネットワーク
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