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特許7476041電気推進システムを使用して推進動作を実行するための方法および機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】電気推進システムを使用して推進動作を実行するための方法および機器
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/40 20060101AFI20240422BHJP
   B64G 1/26 20060101ALI20240422BHJP
   B64G 1/64 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B64G1/40 500
B64G1/26 B
B64G1/64 143
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020147995
(22)【出願日】2020-09-03
(62)【分割の表示】P 2013249017の分割
【原出願日】2013-12-02
(65)【公開番号】P2020203679
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2020-10-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】13/693,694
(32)【優先日】2012-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ペテルカ, ジェームズ ジェー. ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】キャプリン, グレン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】アストン, リチャード ダブリュ.
【合議体】
【審判長】藤井 昇
【審判官】筑波 茂樹
【審判官】久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0224105(US,A1)
【文献】特表2010-537880(JP,A)
【文献】米国特許第6402091(US,B1)
【文献】米国特許第6206327(US,B1)
【文献】特開昭50-150200(JP,A)
【文献】米国特許第5716029(US,A)
【文献】CLARK,Stephen,“Electric propulsion could launch new commercial trend”,SPACEFLIGHT NOW,2012年3月19日[令和2年1月22日検索],インターネット<URL:https://spaceflightnow.com/news/n1203/19boeing702sp/>
【文献】GOEBEL,D.M.,MARTINEZ-LAVIN,M.,BOND,T.A.,KING,A.M,“Performance of XIPS Electric Propulsion in On-orbit Station Keeping of the Boeing 702 Spacecraft”,AIAA paper 2002-4348,2002年 7月,p.1-4<38th AA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference & Exhibit,URL:https://doi.org/10.2514/6.2002-4348>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/00 - 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち上げビークルと、
前記打ち上げビークル内に位置決めされる複数の宇宙船とを備える機器であって、前記複数の宇宙船は、前記打ち上げビークルの中央長手方向軸に位置合わせされ、一致するように積み重ねられ、かつ前記複数の宇宙船の各々は、
円筒形を有するフレームと、
前記フレームに結合された電力供給装置と、
前記フレームに結合されたペイロードであって、データを受信または送信する、ペイロードと、
前記フレームに結合された電気推進システムとを備え、前記電気推進システムは、
前記フレームの第1の側に結合された第1のスラスタと、前記フレームの第2の側に結合され、前記フレームの長手方向軸について対称に、前記第1のスラスタと対向して配置された第2のスラスタとを備え
前記電気推進システムが、推進剤を受け入れる推進剤タンク及び前記推進剤タンクの一部分と係合するように適合されたタンク装着体をさらに含み、前記タンク装着体は、前記推進剤タンクの端部と係合するように適合された第1の端部と、打ち上げビークルインターフェースリングと係合するように適合された第2の端部とを有する円錐シェルを含み、
前記第1および第2のスラスタにより推進動作を実行することが可能となり、前記推進動作を可能にするための電気推進システム以外の推進システムが提供されない、機器。
【請求項2】
打ち上げビークルと、
第1のモジュールと、
第2のモジュールとを備える機器であって、前記第1のモジュールが前記第2のモジュールに取り外し可能に結合され、前記第1および第2のモジュールが前記打ち上げビークル内に位置決めされ、前記第1および第2のモジュールは前記打ち上げビークルの中央長手方向軸に位置合わせされ、一致するように積み重ねられ、前記第1及び第2のモジュールのそれぞれが、
円筒形を有するフレームと、
前記フレームに結合された電力供給装置と、
前記フレームに結合されたペイロードであって、データを受信または送信する、ペイロードと、
前記フレームに結合された電気推進システムとを備え、前記電気推進システムは、
前記フレームの第1の側に結合された第1の電気スラスタと、
前記フレームの第2の側に結合され、前記フレームの長手方向軸について対称に、前記第1の電気スラスタと対向して配置された第2の電気スラスタとを備え、
前記電気推進システムが、推進剤を受け入れる推進剤タンク及び前記推進剤タンクの一部分と係合するように適合されたタンク装着体をさらに含み、前記タンク装着体は、前記推進剤タンクの端部と係合するように適合された第1の端部と、打ち上げビークルインターフェースリングと係合するように適合された第2の端部とを有する円錐シェルを含み、
前記第1および第2の電気スラスタは、対応する前記第1または第2のモジュールの姿勢制御、運動量制御、及び軌道制御を可能にし、前記姿勢制御、前記運動量制御、または前記軌道制御を可能にするための電気推進システム以外の推進システムが提供されない、機器
【請求項3】
複数の宇宙船を含む打ち上げビークルにおける推進システムのパフォーマンスを改良する方法であって、
前記複数の宇宙船が前記打ち上げビークルの中央長手方向軸に位置合わせされ、一致するように積み重ねられるように、前記複数の宇宙船を位置決めすることと、
前記複数の宇宙船のそれぞれに電気推進システムを使用することであって、前記電気推進システムのそれぞれは、円筒形を有するフレームに結合され、かつ前記フレームの第1の側に結合された第1のスラスタと、前記フレームの第2の側に結合され、前記フレームの長手方向軸について対称に、前記第1のスラスタと対向して配置された第2のスラスタとを備え、前記電気推進システムを使用することが、前記フレームの長手方向軸に沿って位置決めされた推進剤タンク内に貯蔵された推進剤を使用することをさらに含み、前記推進剤タンクの一部分は、タンク装着体と係合するように適合されており、前記タンク装着体は、前記推進剤タンクの端部と係合するように適合された第1の端部と、打ち上げビークルインターフェースリングと係合するように適合された第2の端部とを有する円錐シェルを含む電気推進システムを使用することと、
前記第1及び第2のスラスタが、電気推進システム以外の推進システムを使用することなく姿勢制御及び軌道制御を可能にすることとを含み、
前記姿勢制御及び前記軌道制御を可能にする電気推進システム以外の推進システムが提供されない、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許は、発明者であるRichard W.Aston、Anna、M.Tomzynska、およびGlenn Caplinによる、連番13/604,050を有する2012年9月5日出願の表題「Multiple Space Vehicle Launch System」の米国特許出願、および発明者であるRichard W.Aston、Brett Cope、Michael J.Langmack、およびAnna M Tomzynskaによる、連番13/652,101を有する2012年10月15日出願の表題「Space Propellant Tank Mount」の米国特許出願の一部継続出願であり、またその優先権を主張し、その全体を参照により組み込むものであり、これら米国特許出願の各々は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本特許は、電気推進システム、より詳細には、電気推進システムを使用して推進動作を実行するための方法および機器に関する。
【背景技術】
【0003】
宇宙船および/または衛星は、宇宙において推進動作を実行し得る。これらの推進動作の一部は、姿勢および運動量の制御、軌道上昇、軌道への投入および維持、軌道再配置および/または軌道離脱操作を含むことができる。他の推進動作は、別の惑星、惑星間または太陽系外のミッションのために軌道を出ることおよび/または月などの周りの軌道を開始するための投入操作を含むことができる。推力は、推進剤の加速作用によって達成される。推進剤は、圧力差(低温または高温ガスシステム、(たとえば低温ガス))、化学反応(触媒分解、たとえばヒドラジン単元推進剤システム、自然発火二元推進剤反応、固体ロケットなどを含む)および電気および磁気相互作用(イオン推進システム、定常プラズマシステム、ホール効果スラスタ、磁気プラズマスラスタなど(たとえば電気推進)を含む)によって大幅に加速され得る。これらの推進動作を実行するために、一部の衛星は、低温ガスシステム、または化学システム、または低温ガスおよび化学システムの組み合わせ、または低温ガス、化学システムおよび電気推進システムの組み合わせを使用する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の教示による例となる機器は、フレームと、フレームに結合された電力供給装置と、フレームに結合されたペイロードとを含む。ペイロードは、データを受信または送信するものである。機器はまた、フレームに結合された電気推進システムも含む。電気推進システムは、機器の姿勢制御、運動量制御、および軌道制御を可能にするものである。
【0005】
別の機器は、打ち上げビークルと、打ち上げビークル内に配置される宇宙船とを含む。宇宙船は、フレームと、フレームに結合された電力供給装置と、フレームに結合されたペイロードとを含む。ペイロードは、データを受信または送信するものである。別の機器は、フレームに結合されてほぼすべての推進動作を別の推進システム無しで実行することを可能にする、電気推進システムを含む。
【0006】
別の機器は、打ち上げビークル、第1のモジュール、および第2のモジュールを含む。第1のモジュールは、第2のモジュールに取り外し可能に結合されるものである。第1および第2のモジュールは、打ち上げビークル内に配置されるものである。第2のモジュールは、フレームと、フレームに結合された電力供給装置と、フレームに結合されたペイロードとを含む。ペイロードは、データを受信または送信するものである。機器は、フレームに結合された電気推進システムを含む。電気推進システムは、第2のモジュールの姿勢制御、運動量制御、および軌道制御を可能にするものである。
【0007】
推進システムのパフォーマンスを改良する例となる方法は、フレームに結合された電気推進システムを使用することと、電気推進システムに姿勢制御および軌道制御を可能にさせることとを含む。
【0008】
本発明は、機器であって、フレームと、フレームに結合された電力供給装置と、フレームに結合されたペイロードであって、データを受信または送信する、ペイロードと、フレームに結合された電気推進システムであって、機器の姿勢制御、運動量制御、および軌道制御を可能にする、電気推進システムとを含むことができる、機器に関与する。軌道制御は、機器の軌道維持、軌道変更、軌道上昇、軌道への投入、軌道再位置決め、および軌道離脱操作を含むことができ、この場合運動量制御は、運動量管理を含むことができる。機器はまた、電気推進システムを制御するコントローラを含むこともできる。電気推進システムはスラスタを含むことができる。電気推進システムは、スラスタをフレームに対して移動させることを可能にするジンバル式プラットフォームを含むことができる。電気推進システムは複数のスラスタを含むことができる。スラスタは独立的に移動可能になり得る。電気推進システムは、推進剤を受け入れるタンクを含むことができる。タンクは、フレームの長手方向軸に沿って位置決めされ得る。電力供給装置は、固定されたまたは格納形態と展開形態の間で移動可能である太陽電池アレイを含むことができる。ペイロードは、格納形態と展開形態の間で少なくとも部分的に移動可能になり得る。格納形態では、機器は、打ち上げビークル内に位置決めされ得る。電気推進システムは、キセノンイオン推進システム、プラズマ推進システム、またはホール効果推進システムを含むことができる。
【0009】
本発明は、機器であって、打ち上げビークルと、打ち上げビークル内に位置決めされる宇宙船であって、フレームと、フレームに結合された電力供給装置と、フレームに結合されたペイロードであって、データを受信または送信する、ペイロードと、フレームに結合され、ほぼすべての推進動作を化学推進システム無しに実行することを可能にする電気推進システムとを備える、宇宙船とを含むことができる、機器に関与し得る。電気推進システムは、スラスタと、ジンバル式プラットフォームであって、スラスタをフレームに対して移動させることを可能にする、ジンバル式プラットフォームとを含むことができる。電気推進システムは複数のスラスタを含むことができる。電気推進システムは、推進剤を受け入れるタンクを含むことができる。タンクは、フレームの長手方向軸に沿って位置決めされ得る。推進動作は、機器の姿勢制御、運動量制御、および軌道制御を含むことができる。軌道制御は、宇宙船の軌道維持、軌道変更、軌道上昇、軌道への投入、軌道再位置決めおよび軌道離脱操作を含むことができる。
【0010】
本発明は、機器であって、打ち上げビークルと、第1のモジュールと、第2のモジュールとを含むことができ、第1のモジュールは第2のモジュールに取り外し可能に結合され、第1および第2のモジュールは打ち上げビークル内に位置決めされ、第2のモジュールは、フレームと、フレームに結合された電力供給装置と、フレームに結合されたペイロードであって、データを受信または送信する、ペイロードと、フレームに結合された電気推進システムであって、第2のモジュールの姿勢制御、運動量制御、および軌道制御を可能にする、電気推進システムとを備える、機器に関与することができる。電気推進システムは、推進剤を受け入れるタンクを含むことができる。タンクは、フレームの長手方向軸に沿って位置決めされ得る。
【0011】
本発明は、推進システムのパフォーマンスを改良する方法であって、フレームに結合された電気推進システムを使用することと、電気推進システムに姿勢制御および軌道制御を可能にさせることとを含むことができる方法に関与することができる。電気推進システムは、独立的に移動可能な複数のスラスタを使用することを含むことができる。電気推進システムの使用は、フレームの長手方向軸に沿って位置決めされたタンク内に貯蔵された推進剤を使用することを含むことができる。方法はまた、電気推進システムまたは姿勢制御システムに運動量制御を可能にさせることを含むこともできる。電気推進システムの使用は、キセノンイオン推進システム、プラズマ推進システム、またはホール効果推進システムを使用することを含むことができる。
【0012】
ここまで論じてきた特徴、機能、および利点は、さまざまな実施形態において独立的に達成可能であり、またはさらに別の実施形態において組み合わされてよく、そのさらなる詳細は、以下の説明および図を参照して見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の教示による例となる打ち上げビークルおよび例となる宇宙船を表す図である。
図2】本開示の教示による例となる打ち上げビークルおよび例となる第1および第2の宇宙船および/またはモジュールを表す図である。
図3図2の例となる第1および第2の宇宙船および/またはモジュールの等角図である。
図4図2の例となる第1および第2の宇宙船および/またはモジュールの横断面図である。
図5】展開形態にある図2の宇宙船および/またはモジュールの1つを表す図である。
図6】展開形態にある図2の宇宙船および/またはモジュールの別の1つを表す図である。
図7】本開示の教示による例となる推進ユニットの一部分を表す図である。
図8】本開示の教示による例となるタンク組立体を表す図である。
図9】本開示の教示による例となるタンク組立体を表す図である。
図10】本開示の教示による例となる姿勢制御システムを表す図である。
図11】本開示の多重宇宙ビークル打ち上げシステムの一例の概略の側部断面図である。
図12図11に描かれた2つの宇宙ビークルの概略斜視図である。
図13図11に描かれた宇宙ビークルの概略の側部断面図である。
図14】打ち上げビークルフェアリング内に装着されて示された、開示したタンク装着体を組み込む宇宙船の一例の側部断面図である。
図15】より大きい打ち上げビークルフェアリング内に組み込まれて示された、開示したタンク装着体を組み込む宇宙船の第2の例の側部断面図である。
図16図14の開示したタンク支持体の斜視図である。
図17図14の開示したタンク支持構造体の側部断面図である。
図18図17に示されたタンク支持構造体の一部分の拡大詳細断面図である。
図19図17に示されたタンク支持構造体の一部分の拡大詳細断面図である。
図20図17に示されたタンク支持構造体の一部分の拡大詳細断面図である。
図21図17に示されたタンク支持構造体の一部分の拡大詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
いくつかの例が、上記で特定された図において示され、以下で詳細に説明される。これらの例を説明する上で、同様のまたは同一の参照番号は、同じまたは類似の要素を特定するために使用される。図は必ずしも原寸通りではなく、図のいくつかの特徴およびいくつかの外観は、明確性および/または簡潔性のためにスケール的または図解的に誇張されて示されることがある。加えて、いくつかの例がこの明細書全体にわたって説明されている。任意の例からの任意の特徴は、他の例からの他の特徴と共に含まれても、その取り換えとなっても、または別の形で組み合わされてもよい。
【0015】
本明細書において開示した例は、すべての推進動作および/またはミッション要求事項のために、電気推進システム(たとえばイオン推進システム、定常プラズマ推進システムなどのプラズマ推進システム、ホール効果推進システムなど)および/または姿勢制御システムを使用する衛星モジュール、衛星および/または宇宙船に関する。推進操作または動作および/またはミッション要求事項は、姿勢および運動量の制御、軌道上昇、軌道への投入および維持、軌道再位置決め、軌道離脱操作などを含むことができる。姿勢および運動量の制御は、宇宙船のさまざまな要素の各々の軸周りの位置および速度、宇宙船要素間の運動量の交換、および外部トルクの利用および外部トルクに対する応答、運動量管理など制御することを含む。推進操作は、軌道の上昇および/または下降、傾斜変更などの軌道パラメータを変更および制御するために線形加速作用をもたらすことができる。
【0016】
そのようなイオン推進システムを用いることにより、打ち上げ時の衛星の質量を数100キログラム低減することができ、ミッション寿命を延ばすことができ、かつ/または加工、製造および/または打ち上げコストを低減することができる。たとえば、衛星の質量を低減することにより、打ち上げビークルのコストが低減される。加えて、そのような電気推進システムを用いることにより、化学および/または混合型推進システムが使用された場合より大幅に少ない推進剤を用いて、衛星を異なる軌道内および/または軌道スロット内に再位置決めすることが可能になる。
【0017】
対照的に、一部の知られている衛星は、推進動作のための化学反応制御において化学推進剤を使用する。他の知られている衛星は、化学推進剤および/または低温ガス推進システムと組み合わせて電気推進を用いる。しかし、例となる電気推進システムのコストは、これらの知られているシステム(たとえば、化学および電気推進システム)の一部のものと比べて大幅に少なく、これは、これら知られているシステムの複雑な設計および/または調達、組み立て、一体化、および/または試験のコストによるものである。
【0018】
化学推進システムを使用しないことにより、本明細書において開示した例の推進システムは、衛星設計時適格性検証(design qualification)、容認、ならびに/またはサブシステムレベルおよび/またはシステムレベルの打ち上げ前準備中の化学剤充填作業を解消する。したがって、通常不活性ガス推進剤を使用する電気推進システムは、衛星製造プロセスの初期(たとえば燃料タンクレベル)に、危険材料にさらされるリスクを有さずにかつ/またはいかなる州および/または国の危険材料処理法も侵害することなく従来の処理設備に設置され得る。
【0019】
加えて化学推進システムを使用しないことにより、本明細書において開示した例の推進システムは、人および/または環境に対して危険ではなく、コントロールされたエリア内の打ち上げ場所において装荷(load)されることは限定されない。一部の例では、化学推進システムは、腐食性、高反応性、爆発性および/または毒性である化学物質を使用する。したがって、化学推進システムの宇宙船燃料補給作業は、打ち上げ場所においては危険材料(HAZMAT)スーツおよび/または他の燃料補給装置を使用して行われる。たとえば、化学推進システムに燃料補給するとき、特別な燃料補給のスタンド、部屋、保護および/または燃料認可が使用および/または必要とされ得る。化学推進システムはまた、宇宙船のハードウエアを燃料補給作業中などにおいて危険材料にさらすこともあり、それによってたとえばハードウエアを再使用前に洗浄および/または修復することが要求される。
【0020】
図1は、宇宙船、無人宇宙船および/または衛星102がその格納形態で位置決めされた、例となる単一の打ち上げビークル100を描写している。この例では、宇宙船102は、電力供給装置104、ペイロード106、および電気推進システム108を含む。電力供給装置104は、太陽電池アレイ、放射性熱核発生器(RTG)、エネルギービーム発射または伝送機器、太陽熱、核熱などを含むことができる。ペイロード106は、アンテナ、無線(RF)受信機/送信機、光受信機/送信機、レーザ(LASER)受信機/送信機、光検出および測距(ライダ(LIDAR))受信機/送信機、レーダ(RADAR)受信機/送信機および/または撮像/検出システムを含むことができる。電気推進システム108は、運動量制御、軌道上昇、軌道への投入および維持、軌道再位置決め、軌道離脱操作などを含むすべての推進動作を実施するスラスタ(たとえば4つのイオンスラスタ)110を含む。したがって、宇宙船102は、化学または低温ガス推進システムなどの他の推進システムを含まない。
【0021】
図2は、第1および第2の例となる宇宙船、無人宇宙船、モジュール(たとえば再突入モジュール)、衛星モジュール、および/または衛星202、204がその格納形態で位置決めされた、例となる2機同時打ち上げビークル200を表している。打ち上げビークル200内には、第1および第2の宇宙船202、204が、例となるインターフェース206を使用して積み重ねられかつ/または結合される。インターフェース206は、たとえば宇宙船202、204が打ち上げビークル200から展開された後で宇宙船202、204を分離することを可能にする。図2は、2つの積み重ねられた宇宙船を例示しているが、3つ以上の宇宙船を積み重ねるかつ/または代替的にはこれらを隣り合わせの形態などの他の形態で配置することが可能である。
【0022】
宇宙船202、204は、アンテナ208、210用の収容設備および/または結合器を含むそれぞれのフレーム207、209を含む。宇宙船202、204はまた、一部またはすべての運動量制御、ならびにすべての軌道上昇、軌道への投入および維持、軌道再位置決め、軌道離脱操作などを実施するスラスタ(たとえば4つのキセノンイオンスラスタ、イオンスラスタ)216を有する電気推進システム212、214も含む。打ち上げビークル200から展開された後の宇宙船202、204の位置を制御するために、スラスタ216は、それぞれの宇宙船202、204および/またはフレーム207、209に対して独立的に移動可能および/または回転可能である。たとえば、第1の宇宙船202を前方に押し出すために、スラスタ216は、矢印218によって全体的に示された方向に位置決めされてよい。
【0023】
図3および4は、打ち上げビークル200から展開された積み重ねられた宇宙船202、204を表している。代替的には、この積み重ねを打ち上げビークル200から展開するのではなく、各々の宇宙船202、204を、上側宇宙船204が下側宇宙船202に先立って展開される状態で打ち上げビークル200から別々に展開してもよい。図4を参照すれば、例となる推進システム212、214は、宇宙船202、204の長手方向軸406に沿って配置され得るタンク(たとえばキセノンタンク)402、404を含む。動作においては、それぞれのタンク402、404は、さまざまな推進動作を実行するためにスラスタ216の1つまたは複数と結合されて推進剤を供給する。供給された推進剤は、キセノン、アルゴン、クリプトンなどの不活性ガス、または水銀などの他の種になり得る。例となる宇宙船202、204の各々は、単一のタンク402、404、任意の他の数のタンク(たとえば2基、3基、4基など)が使用されてよく、それぞれの宇宙船202、204内に同じようにまたは異なって置かれてよい。
【0024】
図5は、展開形態にある第2の宇宙船204を表している。第2の宇宙船204は、支持体502に枢動可能に装着されたスラスタ216と、支持体および/またはタンク支持体504に結合された、かつ/またはこの支持体によって支持されたタンク404とを含む。一部の例では、第2の宇宙船204は、第2の宇宙船204に対して姿勢制御および/または運動量貯蔵をもたらすように共働する、姿勢制御システムならびに/または反応および/または運動量制御ホイール503を含む。一部の例では、姿勢制御システム503は、磁気トルクロッド(複数可)、磁気トルクリング(複数可)などの電気的に動力供給される姿勢制御システムならびに/または制御ホイールおよび磁気ロッド/リングの組み合わせになり得る電気的に駆動される電気機械姿勢制御システムである。一部の例では、推進システム214および/またはスラスタ216は、キセノンイオン推進(XIP)スラスタ、電力コントローラ、タンク設備、流量制御およびクロスストラッピングユニットを含む。一部の例では、第2の宇宙船204はまた、電子装置モジュール506、ペイロード装置508、および電池および電力コントローラ510も含む。第2の宇宙船204はまた、アンテナ210、太陽電池パネルおよび/または太陽電池アレイ512、および熱放射体および/または装置パネル516を含むこともできる。
【0025】
電子装置モジュール506は、宇宙船制御電子装置、飛行ソフトウエアおよび/またはテレメトリおよびコマンド無線(RF)ユニットを含むことができる。姿勢制御システム503は、姿勢センサ(たとえば地球センサ、太陽センサ、スタートラッカ)、慣性航法装置(IRU)または他の姿勢センサ、反応ホイールまたは運動量ホイール、トルクロッドまたは磁気トルク発生装置などを含むことができる。電池および電力コントローラ510は、電池セル、たとえばリチウムイオンセルと、パックと、電力コントローラとを含むことができる。アンテナ210は、データを受信および/または送信することができ、アクティブおよびパッシブユニットと、アンテナ構造と、展開機構および/またはアンテナ位置決め機構とを含むことができる。太陽電池アレイ512は、太陽電池セルによって全体的にまたは部分的に覆われた1つまたは複数のパネルを含むことができる。熱放射体および装置パネル516は、単一の北に配向された放射体および/または装置と、単一の南に配向された放射体および/または装置と、ヒートパイプとを含むことができる。上記の例は、特定の要素および/または特定の数のこれらの要素を含むものとして第2の宇宙船204を説明しているが、第2の宇宙船204は、異なる要素および/または異なる数量の要素を含むことができる。
【0026】
図6は、展開形態の第1の宇宙船202を表している。第1の宇宙船202は、支持体602に枢動可能に装着されたスラスタ216を含む。一部の例では、推進システム214および/またはスラスタ216は、キセノンイオン推進(XIP)スラスタ、電力コントローラ、タンク設備、流量制御およびクロスストラッピングユニットを含む。一部の例では、第1の宇宙船202もまた、電子モジュール、姿勢制御システム、ならびに電池および電力コントローラ604を含む。第1の宇宙船202はまた、アンテナ208と、太陽パネルおよび/または太陽電池アレイ606と、熱放射体および装置パネル608とを含むこともできる。上記の例は、特定の要素および/または特定の数のこれらの要素を含むものとして第1の宇宙船202を説明しているが、第1の宇宙船202は、異なる要素および/または異なる数量の要素を含むことができる。
【0027】
図7は、本明細書において開示した例を実施するために使用可能である例となる推進ユニットの一部分700を表している。推進ユニットは、キセノンイオン推進スラスタ702、アダプタ704、ジンバル式プラットフォーム706、および支持構造体708を含む。動作においては、ジンバル式プラットフォーム706は、打ち上げビークル200からの展開後にスラスタ706がそれぞれの宇宙船202、204を移動させ、押し出しおよび/または回転させることを可能にするように、スラスタ702を独立的に回転させおよび/または位置決めすることを可能にする。
【0028】
図8および9は、本明細書で開示した例を実施するために使用可能である例となるタンク組立体800を表している。組立体800は、タンク支持パネル802、タンク804、および円錐支持構造体806を含む。一部の例では、軸方向スリップ継手および/またはモノボール807は、タンク支持パネル802をタンク804に結合させてタンクが膨張および/または収縮することを可能にする。一部の例では、モーメントフリーモノボール装着体808は、タンク804および支持構造体806を結合させる。
【0029】
図10は、推進システムと共に、ほぼすべての電気推進システムを実施するために使用され得る例となる宇宙船姿勢制御システム1000を表している。姿勢制御システム1000は、姿勢センサ1002(たとえば地球センサ、太陽センサ、スタートラッカ)、慣性速度センサ1004、コントローラ1006およびアクチュエータを含む。アクチュエータは、運動量貯蔵デバイス1008(たとえば運動量ホイール、反応ホイール)と、磁気トルク発生装置1010と、スラスタ702を含む推進ユニットとを含むことができる。スラスタ702は、ジンバル706に取り付けられ得る。他の例は、代替の姿勢感知および制御の機器および/または方法を含むことができる。
【0030】
一部の例では、姿勢制御システム1000は、姿勢および運動量制御などのために使用され得る。この例では、運動量は、本体(たとえば宇宙船本体)とホイールの間で交換されて(たとえばホイール内に貯蔵されて)、本体を所望の方向に向けるように本体の姿勢および速度を制御する。所望の方向は、センサ1002を介して現在の姿勢を、または慣性速度センサ1004を介して速度を感知し、コントローラ1006が運動量貯蔵デバイス1004にトルクをかけて所望の指向方向および速度を生み出すことによって達成され得る。所望の方向は、スラスタ702によって作り出された線形加速作用が、リクエストされたおよび/または必要な軌道変更(たとえば軌道上昇)を作り出すようなものになり得る。制御システム1000はまた、本体をペイロードに合わせた所望の方向に向けることもできる。一部の例では、軌道操作がペイロード操作と同時にリクエストされたおよび/または必要なとき、スラスタ702の位置および配向は、本体が所望のペイロード指向(たとえば地球指向の)姿勢にあるときにスラスタによって生み出された速度ベクトルを組み合わせて、リクエストされたおよび/または必要な軌道変更を作り出すことができるように選択される。一部の例では、ジンバル706は、推力ベクトルを、名目上宇宙船の質量中心を通り抜けるように位置決めするために使用される。代替的には、いくつかのスラスタは、適切な位置にジンバル支持され(gimbaled)、すべてのスラスタの正味トルクがゼロになるように同時に点火されてよい。
【0031】
外部トルクによって作り出された運動量は、推進システムを用い、ジンバル706を使用してスラスタ702を質量中心から外方に回転させて所望のトルクおよび/または太陽トルクとの相互作用を達成することによって、磁気トルク発生装置1010を介した地球の磁場などによってホイールから定期的に「捨てられ得る」。一部の例では、例となるスラスタ702およびジンバル706の配置構成は、同じセットのスラスタを、加速作用およびペイロード指向のリクエストされたおよび/または必要な方向に応じて異なる配向で使用する。他の例は、主に単一方向の加速作用を作り出すため専用の、ジンバル能力をほとんどまたは全く有さない追加のスラスタを含むことができる。他の制御システムは、運動量の交換による速度および指向ではなく、スラスタ702を使用して所望の宇宙船の速度および(「推力ベクトル操縦された」)指向を作り出すことができる。姿勢制御システム1002の他の例は、電気、機械、および/または磁気システムならびに/または任意の他の適切なシステムになり得る。
【0032】
本明細書で開示したように、例となる電気推進システムは、イオン化ガス排除、非イオン化ガス排除および/または低温ガス状態を使用するならびに/またはこれらに関連付けられ得る。たとえば、例となる電気推進システムは、機器を種のイオン化状態および/または非イオン化状態において推進するために使用され得る。電気推進システムが非イオン化ガスを使用する例では、ガスは、スラスタから排出および/または滴下されてよく、ならびに/または機器は、1つまたは複数の低温ガススラスタを含むことができる。低温ガススラスタは、機器の不定期の制御および/または偶発的な操作のために使用され得る。
【0033】
一部の例では、非イオン化ガスおよび/または低温ガススラスタは、ミッションの軌道離脱操作および/または他の段階に関連して使用され得る。たとえば、低温ガススラスタは、たとえばタンク402および/または404ならびに/または別のガスタンク(たとえばキセノンタンク)および供給システムならびに/または別の低温ガスタイプから推進剤を使用することができる。
【0034】
本明細書で記載したように、例となる機器は、フレームと、フレームに結合された電力供給装置と、フレームに結合されたペイロードとを含む。ペイロードは、データを受信または送信するものである。機器は、フレームに結合された電気推進システムを含む。電気推進システムは、機器の姿勢制御、運動量制御、および軌道制御を可能にするものである。一部の例では、軌道制御は、機器の軌道維持、軌道変更、軌道上昇、軌道への投入、軌道再位置決め、および軌道離脱操作を含む。一部の例では、運動量制御は、運動量管理を含む。一部の例では、機器はまた、電気推進システムを制御するコントローラも含む。一部の例では、機器はまた、スラスタを含む電気推進システムも含む。一部の例では、電気推進システムは、スラスタをフレームに対して移動させることを可能にするジンバル式プラットフォームを含む。一部の例では、電気推進システムは複数のスラスタを含む。一部の例では、スラスタの各々は独立的に移動可能である。一部の例では、電気推進システムは、推進剤を受け入れるタンクを含む。一部の例では、タンクは、フレームの長手方向軸に沿って位置決めされる。一部の例では、電力供給装置は、固定されたまたは格納形態と展開形態の間で移動可能である太陽電池アレイを含む。一部の例では、ペイロードは、格納形態と展開形態の間で少なくとも部分的に移動可能である。一部の例では、格納形態では、機器は打ち上げビークル内に位置決めされる。一部の例では、電気推進システムは、キセノンイオン推進システム、定常プラズマスラスタなどのプラズマ推進システム、またはホール効果推進システムを含む。
【0035】
別の例となる機器は、打ち上げビークルと、打ち上げビークル内に位置決めされる宇宙船とを含む。宇宙船は、フレームと、フレームに結合された電力供給装置と、フレームに結合されたペイロードとを含む。ペイロードは、データを受信または送信するものである。電気推進システムは、フレームに結合されて、ほぼすべての推進動作を別の推進システム無しに実行することを可能にする。一部の例では、電気推進システムは、スラスタおよびジンバル式プラットフォームを含む。ジンバル式プラットフォームは、スラスタをフレームに対して移動させることを可能にするものである。一部の例では、電気推進システムは複数のスラスタを含む。一部の例では、電気推進システムは、推進剤を受け入れるタンクを含む。一部の例では、タンクは、フレームの長手方向軸に沿って位置決めされる。一部の例では、ほぼすべての推進動作は、機器の姿勢制御、運動量制御、および軌道制御を含む。一部の例では、軌道制御は、宇宙船の軌道維持、軌道変更、軌道上昇、軌道への投入、軌道再位置決め、および軌道離脱操作を含む。
【0036】
別の機器は、打ち上げビークル、第1のモジュールおよび第2のモジュールを含む。第1のモジュールは、第2のモジュールに取り外し可能に結合されるものである。第1および第2のモジュールは、打ち上げビークル内に位置決めされるものである。第2のモジュールは、フレームと、フレームに結合された電力供給装置と、フレームに結合されたペイロードとを含む。ペイロードは、データを受信または送信するものである。機器は、フレームに結合された電気推進システムを含む。電気推進システムは、第2のモジュールの姿勢制御、運動量制御、および軌道制御を可能にするものである。一部の例では、電気推進システムは、推進剤を受け入れるタンクを含む。一部の例では、タンクは、フレームの長手方向軸に沿って位置決めされる。
【0037】
推進システムのパフォーマンスを改良する例となる方法は、フレームに結合された電気推進システムを使用することと、電気推進システムに姿勢制御および軌道制御を可能にさせることとを含む。一部の例では、電気推進システムを使用することは、独立的に移動可能な複数のスラスタを使用することを含む。一部の例では、電気推進システムを使用することは、フレームの長手方向軸に沿って位置決めされたタンク内に貯蔵された推進剤を使用することを含む。一部の例では、方法はまた、電気推進システムまたは姿勢制御システムに運動量制御を可能にさせることも含む。一部の例では、電気推進システムを使用することは、キセノンイオン推進システム、定常プラズマスラスタなどのプラズマ推進システム、またはホール効果推進システムを使用することを含むことができる。
【0038】
本明細書で開示した例は、第1の宇宙ビークルと、第2の宇宙ビークルであって、第1の宇宙ビークルに解放可能に取り付けられ、フェアリング内に置かれたとき、第1の宇宙ビークルからの打ち上げ負荷が第2の宇宙ビークルに伝えられ、第2の宇宙ビークルによって担持されるように第1の宇宙ビークルに対して配向される、第2の宇宙ビークルとを含むことができ、それによってシルダ(Sylda)または他の補強または支持構造体の必要性を解消する、多重宇宙ビークル打ち上げシステムに関する。一例では、第1および第2の宇宙ビークルの各々は、電気推進モータおよび混合型化学および電気推進モータのうち1つを含むことができる。電気推進モータを宇宙ビークル内で利用することにより、宇宙ビークルの合計質量を、化学推進モータを有する宇宙ビークルと比較したとき、大幅に低減することができ、それによってシルダなどの支持構造体を省略することが可能になり得る。
【0039】
一例によれば、多重宇宙ビークル打ち上げシステムは、第1の宇宙ビークルと、第2の宇宙ビークルであって、第1の宇宙ビークルに解放可能に取り付けられ、フェアリング内に置かれたとき、第1の宇宙ビークルからの打ち上げ負荷が第2の宇宙ビークルに伝えられ、第2の宇宙ビークルによって担持されるように第1の宇宙ビークルに対して配向される、第2の宇宙ビークルとを含むことができる。第1および第2の宇宙ビークルの各々は、電気推進ユニットおよび混合型化学および電気推進ユニットのうち1つを含むことができる。
【0040】
別の例では、宇宙船打ち上げシステムは、ペイロード領域を有するフェアリングを備えた打ち上げビークルと、ペイロード領域内に配設された複数の宇宙ビークルとを含むことができる。複数の宇宙ビークルは、上側宇宙ビークルの重力および打ち上げの負荷の少なくとも一部分が下側宇宙ビークルに伝えられ、下側宇宙ビークルによって担持されるように垂直に積み重ねられて配向され得る。宇宙ビークルの各々は、電気推進ユニットおよび混合型電気および化学推進ユニットのうち少なくとも1つを含むことができる。
【0041】
さらに別の例では、複数の宇宙ビークルを打ち上げる方法は、電気推進ユニットおよび混合型電気および化学推進ユニットのうち少なくとも1つを各々が含む複数の宇宙ビークルを提供することと、複数の宇宙ビークルを、複数の宇宙ビークルの上側のものの重力および打ち上げの負荷が、複数の宇宙ビークルの下側のものに伝えられ、下側のものによって担持されるように打ち上げビークルのフェアリングのペイロード領域内に積み重ねて配向することと、複数の宇宙ビークルを備えた打ち上げビークルを打ち上げることとを含むことができる。
【0042】
上記で説明した例および他のものでは、従来の打ち上げビークル間フェアリング、シルダおよびフェアリング間分離システムの使用が解消され得る。このため、収益を創出しないペイロード質量が低減され、収益を創出するペイロード用に利用可能な質量がより多く確保され得る。
【0043】
図11に示すように、全体を10と指定する例となる多重宇宙ビークル打ち上げシステムは、フェアリング14を有する打ち上げビークル12と共に使用される。システム10は、全体を16と指定する第1または上側の宇宙ビークルと、全体を18と指定する第2または下側の宇宙ビークルとを含むことができる。宇宙ビークルは、フェアリング14のペイロード領域20内に位置決めされる。図11は2つの宇宙ビークル16、18を有する宇宙ビークル打ち上げシステム10を示しているが、3つまたはそれ以上の宇宙ビークルを有する宇宙ビークル打ち上げシステムを提供することが本開示の範囲内であることに留意されたい。
【0044】
打ち上げシステムに採用される宇宙ビークル16、18の数に関係なく、フェアリング14内の宇宙ビークルの配置構成は、図11に示すように積み重ねられた垂直の形態になり得る。本明細書で使用する場合、用語「垂直」は、打ち上げビークルが垂直位置に配向されたときの、打ち上げビークル12を支持する打ち上げパッドに対する、積み重ねられた宇宙ビークル16、18の配向、または地球に対して垂直に積み重ねられた様子を指す。一例では、積み重ねられた宇宙ビークル16、18は、フェアリング14および/または打ち上げビークル12の中央長手方向軸に位置合わせされ、一致させてよい。下側宇宙ビークル18は、フェアリング14の一部になり得る基部22上に載置することができる。
【0045】
図12および13に示すように、宇宙ビークル16、18は衛星であり得る。さまざまな例では、宇宙ビークル16、18は、静止衛星、惑星間探査、これらの組み合わせ、または打ち上げビークル12(図11)によって打ち上げられる推進システムを有する任意のタイプの宇宙ビークルになり得る。
【0046】
宇宙ビークル16、18は、アンテナ反射体24、26それぞれと、展開可能な太陽電池アレイ28、30それぞれとを含むことができる。図13に最適に示すように、宇宙ビークル16、18は、コア構造体36、38それぞれ上に装着されたせん断負荷パネル32、34を含むことができる。
【0047】
コア構造体36、38は、円筒形の形状で中空のものになり得る。コア構造体は、他の形状のものでよいが、本開示の範囲からは逸脱しない。コア構造体36は、グラファイトなどの強度のある軽量材料から作製されてよく、1つの例では0.09インチの壁厚を有する。コア構造体38もまた、グラファイトなどの強度のある軽量材料から作製されてよく、1つの例では0.45インチの壁厚を有する。せん断パネル32、34は、宇宙ビークル16、18の太陽電池アレイ28、30をそれぞれ支持することができる。
【0048】
図12および13に示す例では、宇宙ビークル16、18の各々は、全体を40、42と指定する電気推進モータをそれぞれ含むことができる。電気推進モータ40、42は、コア構造体36、38内にそれぞれ位置決めされ得るタンク44、46内に貯蔵されたキセノンガスを推進剤として利用するイオン/プラズマモータを含むことができる。電気推進モータ40、42はまた、排出ノズル48、50をそれぞれ含むこともできる。
【0049】
図12および13に示す例では、宇宙ビークル16、18の各々は、その宇宙ビークル用の推進およびナビゲーションの唯一の供給源を構成することができる単一の電気推進モータ40、42を含むことができ、他の推進供給源は含まなくてよい。宇宙ビークル16、18の構成要素40、42はまた、他のタイプの電気推進モータ、ならびに混合型電気/化学推進モータを表すこともできる。電気推進モータ40を備えた宇宙ビークル16を提供し、混合型電気/化学推進モータ42を備えた宇宙ビークル18を提供することも本開示の範囲内である。電気推進モータ40、42、または混合型電気/化学推進モータを使用することが有利になることができ、その理由は、これらは、化学推進モータと比較して宇宙ビークル16、18の全体質量を低減するためである。
【0050】
1つの例では、上側宇宙ビークル16は、予張力式解放バンド52によって下側宇宙ビークル18に連結されてよく、この解放バンドは、上側ビークルのコア構造体36を下側ビークルのコア構造体38に連結する。図に示すように、下側ビークル18のコア構造体38は、下側ビークルの太陽電池アレイ30の上側縁の上方に上向きに延びコア構造体36と係合し、図示する例では、上側宇宙ビークルの太陽電池アレイ28の下側縁を超えて延びることはない。
【0051】
動作においては、上側および下側の宇宙ビークル16、18それぞれは、最初、事前に張力がかけられた解放バンド52によって互いに取り付けられ得る。組み合わされた宇宙ビークル16、18は、図14に示すように、下側宇宙ビークルがフェアリングの基部22上に載置するように打ち上げビークル12のフェアリング14内に置かれ得る。
【0052】
打ち上げビークルが打ち上げパッド上に立っているとき、打ち上げビークル12、フェアリング14および宇宙ビークル16、18は、地球に対して垂直に配向され得る。この形態では、上側宇宙ビークル16の下向きの重力は、すべて下側宇宙ビークル18に伝えられ、下側宇宙ビークル18によって担持され得る。図示する例では、この重力は、すべて上側宇宙ビークル16のコア構造体36から下側宇宙ビークル18のコア構造体38に伝えられ得る。
【0053】
打ち上げビークル12の打ち上げ中、上側宇宙ビークル16の加速力も同様に、コア構造体36を通り抜けて下側宇宙ビークル18のコア構造体38に伝えられ得る。図示する例では、上側および下側の宇宙ビークル16、18は、上側宇宙ビークル16の重力および打ち上げの負荷が、効率的に下側宇宙ビークル18に伝えられ下側宇宙ビークル18によってすべて担持されるように垂直に積み重ねられた形態で線形かつ垂直に位置合わせされ得る。
【0054】
結論として、開示した宇宙ビークル打ち上げシステムの2つの形態特徴が組み合わさって全体的な打ち上げシステムの質量の低減をもたらす。第1に、個々の宇宙ビークルは従来の化学推進剤を使用するのではなく、その代わりに、1つの例では、より高い効率性を有し、したがって大幅に少ない推進剤質量しか必要としない電気推進を使用する。別の例では、宇宙ビークルは、混合型電気/化学推進モータを使用することができる。第2には、宇宙ビークルは、上側宇宙ビークルからの打ち上げ負荷が下側宇宙ビークルを通り抜けることができるように上下に積み重ねられ得る。
【0055】
上側および下側の宇宙ビークルは、隣接する宇宙船を解放可能に装着するための互換性のある装着構造体を含むことができる。この構造は、さもなければ多重の公知の宇宙船に必要になるであろう内側フェアリング構造体、またはフェアリング分離システムの必要性を解消することができる。開示したビークル打ち上げシステムは、主な宇宙船ミッションを果たすのに必要とされない質量を大幅に解消することができ、それによって収益を創出するペイロードの利用可能な質量をより大きくすることを可能にする。さらに、推進剤の質量および打ち上げビークルからの非機能的構造の質量を最小限に抑えることで、全体のシステム質量が最適化される。
【0056】
本明細書で記載したように、例となる多重宇宙ビークル打ち上げシステムは、第1の宇宙ビークルと、第2の宇宙ビークルであって、第1の宇宙ビークルに解放可能に取り付けられ、フェアリング内に置かれたとき、第1の宇宙ビークルからの打ち上げ負荷が第2の宇宙ビークルに伝えられ、第2の宇宙ビークルによって担持されるように第1の宇宙ビークルに対して配向される、第2の宇宙ビークルとを含む。第1および第2の宇宙ビークルの各々は、電気推進ユニットおよび混合型化学および電気推進ユニットのうち1つを含む。一部の例では、第1および第2の宇宙ビークルは、積み重ねられた形態に配向される。一部の例では、第1および第2の宇宙ビークルは、打ち上げ中、垂直に積み重ねられた形態で配向される。一部の例では、例となる多重宇宙ビークル打ち上げシステムはまた、第1および第2の宇宙ビークルを封入するように成形されたフェアリングも含む。
【0057】
一部の例では、フェアリングは、第2の宇宙ビークルを支持するように成形された基部を含む。一部の例では、第2の宇宙ビークルは、第1の宇宙ビークルからの打ち上げ負荷がすべて第2の宇宙ビークルに伝えられ、第2の宇宙ビークルによってすべて担持されるように第1の宇宙ビークルに取り付けられる。一部の例では、第1の宇宙ビークルは第1のコア構造体を含む。第2の宇宙ビークルは第2のコア構造体を含み、第1のコア構造体は第2のコア構造体に取り付けられる。一部の例では、第1の宇宙ビークルからの打ち上げ負荷は、第1のコア構造体および第2のコア構造体を通って第2の宇宙ビークルに伝えられる。一部の例では、第1および第2の宇宙ビークルの各々は電気推進ユニットを含む。一部の例では、電気推進ユニットはイオン/プラズマ推進ユニットである。一部の例では、電気推進ユニットはキセノンガスを含む。一部の例では、第1および第2の宇宙ビークルの少なくとも1つは衛星である。
【0058】
別の例となる宇宙船打ち上げシステムは、ペイロード領域を有するフェアリングを含む打ち上げビークルと、ペイロード領域内に配設された複数の宇宙ビークルとを含む。複数の宇宙ビークルは、上側宇宙ビークルの重力および打ち上げの負荷の少なくとも一部分が、下側宇宙ビークルに伝えられ、下側宇宙ビークルによって担持されるように垂直に積み重ねられて配向される。宇宙ビークルの各々は、電気推進ユニットおよび混合型電気および化学推進ユニットのうち少なくとも1つを含む。一部の例では、宇宙ビークルの少なくとも1つは衛星である。一部の例では、宇宙ビークルの各々は電気推進ユニットを含む。
【0059】
複数の宇宙ビークルを打ち上げる例となる方法は、電気推進ユニットおよび混合型化学および電気推進ユニットのうち少なくとも1つを各々が含む複数の宇宙ビークルを提供することと、複数の宇宙ビークルを、複数の宇宙ビークルの上側のものの重力および打ち上げの負荷が、複数の宇宙ビークルの下側のものに伝えられ、下側のものによって担持されるように打ち上げビークルのフェアリングのペイロード領域内に積み重ねて配向することと、複数の宇宙ビークルを備えた打ち上げビークルを打ち上げることとを含む。
【0060】
一部の例では、複数の宇宙ビークルを提供することは、少なくとも1つの衛星を提供することを含む。一部の例では、複数の宇宙ビークルを提供することは、第1の宇宙ビークルを提供することと、第2の宇宙ビークルを提供することとを含む。一部の例では、複数の宇宙ビークルを配向することは、第1の宇宙ビークルの打ち上げ負荷が第2の宇宙ビークルに伝えられ、第2の宇宙ビークルによって担持されるように第1の宇宙ビークルを第2の宇宙ビークルに取り付けることを含む。一部の例では、第1の宇宙ビークルを第2の宇宙ビークルに取り付けることは、第1の宇宙ビークルのコア構造体を第2の宇宙ビークルのコア構造体に取り付けることを含む。
【0061】
打ち上げビークルのフェアリングのペイロード領域内に配設されるように適合され得る、例となる多重宇宙ビークル打ち上げシステムが、開示される。打ち上げシステムは、第1の宇宙ビークルと、第2の宇宙ビークルであって、第1の宇宙ビークルに解放可能に取り付けられ、フェアリング内に置かれたとき、第1の宇宙ビークルの打ち上げ負荷が第2の宇宙ビークルに伝えられ、第2の宇宙ビークルによって担持されるように第1の宇宙ビークルに対して配向される、第2の宇宙ビークルとを含むことができる。いくつかの例では、第1および第2の宇宙ビークルの各々は、電気推進ユニットおよび混合型化学および電気推進ユニットのうち1つを含むことができる。電気または混合型化学および電気推進ユニットの使用は、第2の宇宙ビークルが第1の宇宙ビークルの打ち上げ負荷のすべてまたは大部分を担持することを可能にし、それによって追加の支持構造体の必要性を解消する。
【0062】
本明細書で開示した例は、主要構造フレームおよび推進剤タンクを有する宇宙船であって、推進剤タンクの一部分と係合するように適合されたタンク装着体を含み、タンク装着体は、打ち上げ負荷を直接的に推進剤タンクから打ち上げビークルインターフェースリングに移すように構成される、宇宙船に関する。1つの態様では、推進剤タンク装着体は、推進剤タンクの端部と係合するように適合された第1の端部と、打ち上げビークルインターフェースリングと係合するように適合された第2の端部とを有する円錐シェルを含む。別の態様では、推進剤タンクを、主要構造フレームを有する宇宙船に装着する方法は、推進剤タンクの一部分と係合するように適合されたタンク支持体であって、打ち上げ負荷を直接的に推進剤タンクから打ち上げビークルインターフェースリングに移すように構成された、タンク支持体を提供することを含む。
【0063】
開示した宇宙船の一部の例では、推進剤タンク装着および方法は、推進剤タンクが、宇宙船の中央推力管から独立的に支持され得るものである。その結果、宇宙船および装着体は、多様な形状および直径の推進剤タンクに対応することができる。推進剤タンクの形状および直径は、中央推力管の内径によって決定付けられる必要はない。開示した宇宙船の一部の例では、推進剤タンク装着体および方法は、推進剤タンクの打ち上げ負荷が、推進剤タンクから直接的に打ち上げビークルインターフェースリングに移され、宇宙船の中央推力管によって担持されることはないものである。
【0064】
開示した設計は、推進剤タンク負荷(すなわち打ち上げ中、および打ち上げビークルおよび宇宙船の加速作用の結果打ち上げビークルが加速しているときに、推進剤タンクの質量によって及ぼされた力)が、宇宙船の主要構造を迂回し得るため、質量効率的な解決策を提供することができる。このため、簡易化された比較的軽い主要構造を使用することを可能にすることができ、それにより、宇宙船の利用可能な質量のより大きな部分が、計測機器および他の宇宙船ペイロードに割り当てられ得る。
【0065】
図14に示すように、全体をN10と指定する開示した宇宙船は、宇宙船のほぼ全長さを延びる円筒形の中央推力管N12の形になり得る主要構造フレームを含むことができる。推力管N12はまた、より堅固なパネルN14、太陽電池翼駆動装置N16およびスラスタN18を支持することもできる。スラスタN18は、姿勢制御および/または宇宙船N10を異なる軌道に移動させるために使用され得る。太陽電池翼駆動装置N16は、太陽パネルN20を支持することができる。
【0066】
スラスタN18は、推進剤タンクN22に連結された電気推進ユニットを含むことができる。例では、スラスタN18は、格子付き静電イオンスラスタまたはホール効果スラスタになり得る。推進剤タンクN22は、圧力下でキセノンガス推進剤を含有することができ、中央推力管N12の内面N24から離間されるように寸法設定され得る。図14では円筒形状を有して示されているが、例では、推進剤タンクN22は、球形、楕円形または長円形などの形状になり得る。一例では、推進剤タンクN22は、複合オーバーラップ補強材を備えた金属圧力容器になり得る。例では、推進剤タンクN22は、アルミニウムまたはチタンから作製されてよく、オーバーラップ補強材を有しても有さなくてもよい。
【0067】
図14および16に示すように、宇宙船N10は、全体をN26と指定するタンク装着体を含むことができる。タンク装着体N26は、宇宙船N10を打ち上げビークルN30の基部N28に取り付ける働きをすることができ、それにより、宇宙船N10は、打ち上げビークルのペイロード領域N32内に位置決めされ得る。タンク装着体N26は、軽量の強度のある複合材料から作製され得る円錐シェルN34を含むことができる。一例では、材料は、グラファイトまたは炭素繊維を含むことができ、ハニカム構造を有することができる。他の例では、円錐シェルN34は、チタン、鋼またはアルミニウム合金などの金属から作製され得る。円錐シェルN34は、打ち上げビークルN30の基部N28の一部になり得る打ち上げビークルインターフェースリングN36に取り付けられ得る。
【0068】
推進剤タンクN22の反対側の端部では、タンク装着体N26は、前方タンク支持パネルN38を含むことができる。前方タンク支持パネルN38は、中央推力管N12の内側周囲N24と係合するようにディスク成形されサイズ設定され得る。前方タンク支持パネルN38は、図示するように中実ディスクになることができ、または重量を低減するために空隙を有することができる。前方タンク支持パネルN38は、図示したモノボール軸受軸方向スリップ継手などの枢動装着体N40によって推進剤タンクN22に取り付けられ得る。他のタイプの枢動装着体が採用されてよい。前方タンク支持パネルN38は、溶接、ろう付け、接着剤または他の手段によって中央推力管N12の内側周囲N24に取り付けられ得る。
【0069】
図17および18に示すように、推進剤タンクN22は、モノボール軸受継手N40を通って延びることができ、モノボール軸受継手N40によって捕捉された軸方向に延びる前方タンクボスN42を含むことができる。モノボール軸受継手N40は、ボルトN44などの締結具によって前方タンク支持パネルN38に取り付けられ得る。他の例では、モノボール軸受継手N40は、適切な接着剤によって、溶接によって、リベットによって、または前述の組み合わせによって前方タンク支持パネルN38に取り付けられ得る。モノボール軸受継手N40は、アルミニウム合金またはチタンなどの金属から作製され得る。
【0070】
図17および19に示すように、円錐シェルN34の上側端部N44は、チタンまたは他の金属などの硬化された材料から作製され得るキャップN46に取り付けられ得る。取り付け機構は、接着剤、または図19に示すようなボルトN48によるものになり得る。図17および20に示すように、キャップN46は、図示するモーメントフリーモノボール軸受装着体などの枢動装着体N50を含むことができる。モノボール軸受装着体N50は、推進剤タンクN22の後部タンクボスN52を受け入れることができる。後部タンクボスN52は、ねじN54によって推進剤タンクに取り付けられてよく、モノボール軸受装着体N50を通って延びモノボール軸受装着体N50によって捕捉されたアダプタ管N56を含むことができる。管N56は中空であり、推進剤タンクN22の出口管N57を受け入れるように成形され得る。1つの例では、管N56は、推進剤タンクN22の膨張および収縮を可能にし、あらゆる公差外れ状態に対応するためにモノボール軸受装着体に対して摺動可能になり得る。同様に、前方タンクボス42(図18)は、モノボール軸受スリップ継手N40によって摺動可能に保持され得る。例では、継手N40およびN50の両方は、宇宙船N10、中央推力管N12および円錐支持体N34に対する推進剤タンクN22の軸方向(すなわち宇宙船10の長手方向軸の方向)および枢動の移動を可能にし得る。
【0071】
図17および21に示すように、円錐シェルN34の下側端部N58は、下側端部、およびインターフェースリングN36上に形成されたタブN62を通って延びるボルトN60によって打ち上げビークルインターフェースリングN36に取り付けられ得る。図21に示すように、インターフェースリングN36はまた、中央推力管N12の底部(図14)を受け入れるように成形された角度のある長穴N64を含むこともでき、継手は、接着剤、溶接もしくはろう付け、ねじなどの機械締結具、または前述の組み合わせなどの手段によって固定され得る。
【0072】
図15に示すように、宇宙船N10’は、より大きい推力負荷に対応するためにN66の底部で外向きに広げられた中央推力管N12’を含むことができ、その場合には、中央推力管N12’は、宇宙船N12と並行して打ち上げられる第2の宇宙船の推力管N68を支持することができる。この例では、推進剤タンクN22は、図14を参照して説明したものに類似するやり方で支持され得るが、円錐シェルN34’が、シェルN34より大きい角度で外向きに広がり、より大きいインターフェースリングN70と係合するように成形され得ることが異なる。
【0073】
開示した宇宙船N10、N10’およびタンク装着体N26、N26’は、低コストの装着システムをもたらし、このシステムは、打ち上げ負荷を下側推進剤タンクノズルN52から円錐シェルN34を通って打ち上げビークルインターフェースリングN36に移すことができる。したがって、推進剤タンクN22の打ち上げ負荷は、中央推力管N12に負荷を移すことなくインターフェースリング36に直接的に運ばれ得る。推進剤タンクN22と前方タンク支持パネル38の間の連結は、スリップ継手N40を用いるため、その場所において中央推力管N12に伝えられる推力負荷は存在しない。したがって、推進剤タンクの全推力負荷は、宇宙船N12、N12’の構造フレームではなくインターフェースリングN36によって担持され得る。さらに、推進剤タンクは、その上側端部および下側端部においてボスN42およびノズルN56によって宇宙船N12、N12’に取り付けられるため、支持システムは、多様な推進剤タンク寸法および直径に対応することになる。
【0074】
本明細書で記載したように、主要構造フレームおよび推進剤タンクを有する例となる宇宙船は、推進剤タンクの一部分と係合するように適合されたタンク装着体を含む。タンク装着体は、打ち上げ負荷を直接的に推進剤タンクから打ち上げビークルインターフェースリングに移すように構成される。一部の例では、タンク装着体は円錐の形状である。一部の例では、タンク装着体は円錐シェルを含む。一部の例では、タンク装着体は、推進剤タンクおよび円錐シェルに取り付けられた枢動装着体を含む。一部の例では、枢動装着体はモノボール軸受装着体を含む。
【0075】
一部の例では、円錐シェルは複合材料から形成される。一部の例では、円錐シェルは、グラファイト、炭素繊維、チタン、鋼およびアルミニウム合金の1つまたは複数から形成される。一部の例では、円錐シェルはハニカム構造を有する。一部の例では、円錐シェルは、打ち上げビークルインターフェースリングと係合するように成形された下側周囲縁を含む。一部の例では、下側周囲縁は、打ち上げビークルインターフェースリングに機械的に取り付けられる。一部の例では、タンク装着体は、下側周囲縁を打ち上げビークルインターフェースリングに機械的に取り付ける複数のボルトを含む。
【0076】
一部の例では、推進剤タンクは通常、球形、楕円形、円筒形、および長円形の形状の1つである。一部の例では、推進剤タンクは、キセノンガス推進剤を保持するように構成される。一部の例では、主要構造フレームは、円筒形の中央推力管を含み、推進剤タンクは、円筒形の中央推力管内に嵌合し、円筒形の中央推力管に直接的に接触しないように成形される。一部の例では、例となる宇宙船は、タンク支持体の反対側の推進剤タンクの端部を支持するための前方タンク支持パネルを含み、この前方タンク支持パネルは、主要構造フレームと係合するように成形される。一部の例では、前方タンク支持パネルは、推進剤タンクに取り付けられた枢動装着体を含む。一部の例では、枢動装着体はモノボール軸受を含む。一部の例では、推進剤タンクは、軸方向に延びる前方タンクボスを含み、モノボール軸受は、相対的に摺動可能な枢動移動のために前方タンクボスを受け入れるように成形される。
【0077】
宇宙船用の例となる推進剤タンク装着体は、推進剤タンクの端部と係合するように適合された第1の端部と、打ち上げビークルインターフェースリングと係合するように適合された第2の端部とを有する円錐シェルを含む。
【0078】
推進剤タンクを、主要構造フレームを有する宇宙船に装着する例となる方法は、推進剤タンクの一部分と係合するように適合されたタンク支持体を提供することを含み、タンク支持体は、打ち上げ負荷を直接的に推進剤タンクから打ち上げビークルインターフェースリングに移すように構成される。
【0079】
宇宙船は、主要構造フレームおよび推進剤タンクを有し、宇宙船は、推進剤タンクの一部分と係合するために採用されたタンク装着体を含むことができ、タンク装着体は、打ち上げ負荷を直接的に推進剤タンクから打ち上げビークルインターフェースリングに移すように構成される。
【0080】
さらには、いくらかの例となる製造の方法、機器、および物品が本明細書で説明されてきたが、本特許の対象の範囲はこれに限定されない。そうではなく、本特許は、文字通り、または均等論の下で付属の特許請求の範囲の範囲内に適正に含まれる製造のすべての方法、機器および製造物を対象とする。
また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
機器であって
フレームと、
前記フレームに結合された電力供給装置と、
前記フレームに結合されたペイロードであって、データを受信または送信する、ペイロードと、
前記フレームに結合された電気推進システムであって、前記機器の姿勢制御、運動量制御、および軌道制御を可能にする、電気推進システムとを備える、機器。
(態様2)
軌道制御が、前記機器の軌道維持、軌道変更、軌道上昇、軌道への投入、軌道再位置決め、および軌道離脱操作を含むことができ、運動量制御が、運動量管理を含むことができる、態様1に記載の機器。
(態様3)
前記電気推進システムを制御するコントローラをさらに備える、態様1に記載の機器。
(態様4)
前記電気推進システムが、スラスタを含むことができる、態様1に記載の機器。
(態様5)
前記電気推進システムが、前記スラスタを前記フレームに対して移動させることを可能にするジンバル式プラットフォームを含むことができる、態様4に記載の機器。
(態様6)
前記電気推進システムが、複数のスラスタを含むことができる、態様1に記載の機器。
(態様7)
前記スラスタの各々が、独立的に移動可能である、態様6に記載の機器。
(態様8)
前記電気推進システムが、推進剤を受け入れるタンクを含むことができる、態様1に記載の機器。
(態様9)
前記タンクが、前記フレームの長手方向軸に沿って位置決めされる、態様8に記載の機器。
(態様10)
前記電力供給装置が、固定されたまたは格納形態と展開形態の間で移動可能である太陽電池アレイを含むことができる、態様1に記載の機器。
(態様11)
前記ペイロードが、格納形態と展開形態の間で少なくとも部分的に移動可能である、態様1に記載の機器。
(態様12)
格納形態では、前記機器は、打ち上げビークル内に位置決めされるものである、態様1に記載の機器。
(態様13)
前記電気推進システムが、キセノンイオン推進システム、プラズマ推進システム、またはホール効果推進システムを含むことができる、態様1に記載の機器。
(態様14)
機器であって、
打ち上げビークルと、
前記打ち上げビークル内に位置決めされる宇宙船であって、
フレームと、
前記フレームに結合された電力供給装置と、
前記フレームに結合されたペイロードであって、データを受信または送信する、ペイロードと、
前記フレームに結合されて、ほぼすべての推進動作を化学推進システム無しに実行することを可能にする電気推進システムと
を備える、宇宙船とを備える、機器。
(態様15)
前記電気推進システムが、スラスタと、ジンバル式プラットフォームであって、前記スラスタを前記フレームに対して移動させることを可能にする、ジンバル式プラットフォームとを含むことができる、態様14に記載の機器。
(態様16)
前記電気推進システムが、複数のスラスタを含むことができる、態様15に記載の機器。
(態様17)
前記電気推進システムが、推進剤を受け入れるタンクを含むことができる、態様14に記載の機器。
(態様18)
前記タンクが、前記フレームの長手方向軸に沿って位置決めされる、態様17に記載の機器。
(態様19)
ほぼすべての推進動作が、前記機器の姿勢制御、運動量制御、および軌道制御を含む、態様17に記載の機器。
(態様20)
軌道制御が、前記宇宙船の軌道維持、軌道変更、軌道上昇、軌道への投入、軌道再位置決め、および軌道離脱操作を含むことができる、態様19に記載の機器。
(態様21)
機器であって、
打ち上げビークルと、
第1のモジュールと、
第2のモジュールとを備え、前記第1のモジュールが前記第2のモジュールに取り外し可能に結合され、前記第1および第2のモジュールが前記打ち上げビークル内に位置決めされ、前記第2のモジュールが、
フレームと、
前記フレームに結合された電力供給装置と、
前記フレームに結合されたペイロードであって、データを受信または送信する、ペイロードと、および
前記フレームに結合された電気推進システムであって、前記第2のモジュールの姿勢制御、運動量制御、および軌道制御を可能にする、電気推進システムとを備える、機器。
(態様22)
前記電気推進システムが、推進剤を受け入れるタンクを含むことができる、態様21に記載の機器。
(態様23)
前記タンクが、前記フレームの長手方向軸に沿って位置決めされる、態様22に記載の機器。
(態様24)
推進システムのパフォーマンスを改良する方法であって、
フレームに結合された電気推進システムを使用することと、および
前記電気推進システムに姿勢制御および軌道制御を可能にさせることとを含む、方法。
(態様25)
前記電気推進システムを使用することが、独立的に移動可能な複数のスラスタを使用することを含むことができる、態様24に記載の方法。
(態様26)
前記電気推進システムを使用することが、前記フレームの長手方向軸に沿って位置決めされたタンク内に貯蔵された推進剤を使用することを含むことができる、態様24に記載の方法。
(態様27)
前記電気推進システムまたは姿勢制御システムに運動量制御を可能にさせることをさらに含む、態様24に記載の方法。
(態様28)
前記電気推進システムを使用することが、キセノンイオン推進システム、プラズマ推進システム、またはホール効果推進システムを使用することを含むことができる、態様24に記載の方法。
【符号の説明】
【0081】
10 多重宇宙ビークル打ち上げシステム
12、100 打ち上げビークル
14 フェアリング
16 第1または上側の宇宙ビークル
18 第2または下側の宇宙ビークル
20 ペイロード領域
22 基部
24、26 アンテナ反射体
28、30 太陽電池アレイ
32、34 せん断負荷パネル
36、38 コア構造体
40、42 電気推進モータ
44、46、402、404、804 タンク
48、50 排出ノズル
102 宇宙船
104 電力供給装置
106 ペイロード
108、212、214 電気推進システム
110、216 スラスタ
200 2機同時打ち上げビークル
202、204 衛星
206 インターフェース
207、209 フレーム
208、210 アンテナ
218 矢印
406 長手方向軸
502、602 支持体
503 姿勢制御システム
504 タンク支持体
506 電子装置モジュール
508 ペイロード装置
510、604 電池および電力コントローラ
512、606 太陽電池アレイ
516、608 装置パネル
700 推進ユニットの一部分
702 キセノンイオン推進スラスタ
704 アダプタ
706 ジンバル式プラットフォーム
708 支持構造体
800 タンク組立体
802 タンク支持パネル
806 円錐支持構造体
807 モノボール
808 モーメントフリーモノボール装着体
1000 宇宙船姿勢制御システム
1002 姿勢センサ
1004 慣性速度センサ
1006 コントローラ
1008 運動量貯蔵デバイス
1010 磁気トルク発生装置
N10、N10’ 宇宙船
N12、N12’ 中央推力管
N14 パネル
N16 太陽電池アレイ板駆動装置
N18 スラスタ
N20 太陽パネル
N22 推進剤タンク
N24 中央推力管N12の内面
N26、N26’ タンク装着体
N28 基部
N30 打ち上げビークル
N32 ペイロード領域
N34、N34’ 円錐シェル
N36 打ち上げビークルインターフェースリング
N38 前方タンク支持パネル
N40、N50 枢動装着体
N42 前方タンクボス
N44、N48、N60 ボルト
N46 キャップ
N52 後部タンクボス
N54 ねじ
N56 アダプタ管
N58 円錐シェルN34の下側端部
N62 タブ
N64 長穴
N68 推力管
N70 より大きいインターフェースリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21