(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】フルオロ酢酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/307 20060101AFI20240422BHJP
C07C 69/003 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C07C67/307
C07C69/003 B
(21)【出願番号】P 2020182707
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2020-10-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2019198220
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 淳
(72)【発明者】
【氏名】石原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】松浦 誠
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】木村 敏康
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-30330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/307
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
(式中、Rは、
C
1-4
アルキル基である。)
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
【化2】
(式中、Xは、フッ素以外のハロゲン、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、又はアリールスルホニルオキシ基であり、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物を、式(3):
MF
n (3)
(式中、Mは、カチオンであり、nは、カチオンの価数に対応する整数である。)
で表される化合物と反応する工程を含み、
前記式(3)で表される化合物が、NaF、KF、及びCsFから選択される少なくとも一種であり、
前記式(3)で表される化合物の使用量が、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、0.3モル以上0.9モル以下である製造方法。
【請求項2】
前記反応が、実質的に、前記式(2)で表される化合物及び前記式(3)で表される化合物のみで行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記式(3)で表される化合物の使用量が、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、0.3モル以上0.8モル以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記式(3)で表される化合物の使用量が、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、0.3モル以上0.7モル以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記式(3)で表される化合物の使用量が、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、0.3モル以上0.6モル以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記反応が、100~250℃の範囲内で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程により得られた生成物を蒸留する工程を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
Xが、塩素、又は臭素である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
Xが、塩素である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記式(3)で表される化合物が、KF、及びCsFから選択される少なくとも一種である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記式(3)で表される化合物の含水率が、1.0質量%以下である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロ酢酸エステルの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロ酢酸エステルは、医薬、農薬等の原料として有用な化合物である。フルオロ酢酸エステルの製造方法としては、添加剤の存在下でクロロ酢酸エステルをKFと反応させる方法が知られている。一方、添加剤を使用しない方法も知られている。その例として、非特許文献1には、クロロ酢酸エステルを1.2当量のKFと反応させた後、エーテルを添加して無機物をろ過し、蒸留により目的物を単離する方法が記載されている。また、非特許文献2には、クロロ酢酸エステルを1.1当量のKFと反応させた後、そのまま蒸留して有機物を抜き出した後、精留して目的物を単離する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Saunders, B.C.ら, Journal of the Chemical Society (1948) p.1773-1779
【文献】Gryszkiewicz-Trochimowski, E.ら, Rec. trav. Chim. (1947) 66, p.413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
添加剤を用いる方法は、経済性に劣るうえ、添加剤が不純物として目的物に混入する危険性があり、品質に懸念がある。一方、添加剤を用いない、非特許文献1及び2に記載の方法は、反応釜の中で湿った結晶状態となり、効率的に撹拌することができず、工業的に実施することは困難であり、生産性が低下する。
【0005】
本開示は、経済性、品質、生産性等に優れたフルオロ酢酸エステルの製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、次の態様を包含する。
項1.
式(1):
【化1】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
【化2】
(式中、Xは、フッ素以外の脱離基であり、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物を、式(3):
MF
n (3)
(式中、Mは、カチオンであり、nは、カチオンの価数に対応する整数である。)
で表される化合物と反応する工程を含み、
前記式(3)で表される化合物の使用量が、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、0.9モル以下である製造方法。
項2.
前記反応が、実質的に、前記式(2)で表される化合物及び前記式(3)で表される化合物のみで行われる、項1に記載の製造方法。
項3.
前記式(3)で表される化合物の使用量が、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、0.8モル以下である、項1又は2に記載の製造方法。
項4.
前記式(3)で表される化合物の使用量が、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、0.7モル以下である、項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
項5.
前記式(3)で表される化合物の使用量が、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、0.6モル以下である、項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
項6.
前記反応が、100~250℃の範囲内で行われる、項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
項7.
前記工程により得られた生成物を蒸留する工程を含む、項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
項8.
Rが、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基である、項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
項9.
Rが、アルキル基、フルオロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である、項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
項10.
Xは、フッ素以外のハロゲン、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、又はアリールスルホニルオキシ基である、項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
項11.
Xが、塩素、又は臭素である、項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
項12.
Xが、塩素である、項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
項13.
Mが、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアンモニウムイオンである、項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
項14.
Mが、水素イオン、又はアルカリ金属イオンである、項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
項15.
前記式(3)で表される化合物が、HF、NaF、KF、CsF、及びCaF
2から選択される少なくとも一種である、項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
項16.
前記式(3)で表される化合物が、KF、及びCsFから選択される少なくとも一種である、項1~15のいずれか一項に記載の製造方法。
項17.
前記式(3)で表される化合物の含水率が、1.0質量%以下である、項1~16のいずれか一項に記載の製造方法。
項18.
式(1):
【化3】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(2):
【化4】
(式中、Xは、フッ素以外のハロゲン、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、又はアリールスルホニルオキシ基であり、Rは、有機基である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(2)で表される化合物の含有量が、0.001質量%を超えて2.5質量%以下の範囲内である組成物。
項19.
式(1):
【化5】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(2):
【化6】
(式中、Xは、フッ素以外のハロゲン、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、又はアリールスルホニルオキシ基であり、Rは、有機基である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(2)で表される化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.001質量部を超えて2.5質量部以下の範囲内である組成物。
項20.
式(1):
【化7】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(4):
R-OH (4)
(式中、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(4)で表される化合物の含有量が、1.0質量%以下、又は1.1~2.5質量%の範囲内である組成物。
項21.
式(1):
【化8】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(4):
R-OH (4)
(式中、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(4)で表される化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、1.0質量部以下、又は1.1~2.5質量部の範囲内である組成物。
項22.
式(1):
【化9】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び2-フルオロ酢酸を含有する組成物であって、
2-フルオロ酢酸の含有量が、0.9質量%以下である組成物。
項23.
式(1):
【化10】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び2-フルオロ酢酸を含有する組成物であって、
2-フルオロ酢酸の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.9質量部以下である組成物。
項24.
式(1):
【化11】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(5):
【化12】
(式中、Xは、フッ素以外のハロゲン、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、又はアリールスルホニルオキシ基である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(5)で表される化合物の含有量が、0.001質量%以下、又は0.002~1質量%の範囲内である組成物。
項25.
式(1):
【化13】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(5):
【化14】
(式中、Xは、フッ素以外のハロゲン、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、又はアリールスルホニルオキシ基である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(5)で表される化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.001質量部以下、又は0.002~1質量部の範囲内である組成物。
項26.
式(1):
【化15】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(6):
CH
3COOR (6)
(式中、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(6)で表される化合物の含有量が、0.01質量%未満である組成物。
項27.
式(1):
【化16】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(6):
CH
3COOR (6)
(式中、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(6)で表される化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.01質量部未満である組成物。
項28.
式(1):
【化17】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(7):
【化18】
(式中、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(7)で表される化合物の含有量が、0.01質量%未満である組成物。
項29.
式(1):
【化19】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(7):
【化20】
(式中、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(7)で表される化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.01質量部未満である組成物。
項30.
式(1):
【化21】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(8):
【化22】
(式中、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(8)で表される化合物の含有量が、0.006~0.5質量%の範囲内である組成物。
項31.
式(1):
【化23】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、及び式(8):
【化24】
(式中、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物を含有する組成物であって、
前記式(8)で表される化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.006~0.5質量部の範囲内である組成物。
項32.
Rが、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基である、項18~31のいずれか一項に記載の組成物。
項33.
Rが、アルキル基、フルオロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である、項18~32のいずれか一項に記載の組成物。
項34.
Xが、塩素、又は臭素である、項18、19、24、及び25のいずれか一項に記載の組成物。
項35.
式(1):
【化25】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物、並びに、
式(3):
MF
n (3)
(式中、Mは、カチオンであり、nは、カチオンの価数に対応する整数である。)
で表される化合物、及び
式(3’):
MCl
n (3’)
(式中、M及びnは、前記と同意義である。)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の無機塩を含有する組成物。項36.
2-フルオロ酢酸メチル及び2-フルオロ酢酸エチルを含有する組成物。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、経済性、品質、生産性等に優れたフルオロ酢酸エステルの製造方法等が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の前記概要は、本開示の各々の開示された実施形態または全ての実装を記述することを意図するものではない。
本開示の後記説明は、実例の実施形態をより具体的に例示する。
本開示のいくつかの箇所では、例示を通してガイダンスが提供され、及びこの例示は、様々な組み合わせにおいて使用できる。
それぞれの場合において、例示の群は、非排他的な、及び代表的な群として機能できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられる。
【0009】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本開示が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味することができる。
本明細書中、表記「Cn-m」(ここで、n、及びmは、それぞれ、数である。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0010】
本明細書中、特に断りのない限り、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。
【0011】
本明細書中、「有機基」とは、有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」としては、例えば、
1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
アルデヒド基、
QO-、
QS-、
QCO-、
QSO2-、
QOCO-、及び
QOSO2-
(これらの式中、Qは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基である)
が挙げられる。
【0012】
「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルコキシ基、及びアルキルチオ基が挙げられる。なお、2個以上の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0013】
本明細書中、特に断りのない限り、「炭化水素基」としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、及びアラルキル基が挙げられる。
【0014】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル、及びヘキシル等の、直鎖又は分岐鎖状のC1-20アルキル基が挙げられる。
【0015】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(n-プロポキシ、イソプロポキシ)、ブトキシ(n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ)、ペンチルオキシ、及びヘキシルオキシ等の、直鎖状又は分岐鎖状のC1-20アルコキシ基が挙げられる。
【0016】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルキルチオ基」としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ(n-プロピルチオ、イソプロピルチオ)、ブチルチオ(n-ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ)、ペンチルチオ、及びヘキシルチオ等の、直鎖状又は分岐鎖状のC1-20アルキルチオ基が挙げられる。
【0017】
本明細書中、特に断りのない限り、「アリールオキシ基」としては、例えば、フェニルオキシ、及びナフチルオキシ等の、C6-18アリールオキシ基が挙げられる。
【0018】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルケニル基」としては、例えば、ビニル、1-プロペン-1-イル、2-プロペン-1-イル、イソプロペニル、2-ブテン-1-イル、4-ペンテン-1-イル、及び5-ヘキセン-1-イル等の、直鎖状又は分岐鎖状のC2-20アルケニル基が挙げられる。
【0019】
本明細書中、特に断りのない限り、「アルキニル基」としては、例えば、エチニル、1-プロピン-1-イル、2-プロピン-1-イル、4-ペンチン-1-イル、及び5-ヘキシン-1-イル等の、直鎖状又は分岐鎖状のC2-20アルキニル基が挙げられる。
【0020】
本明細書中、特に断りのない限り、「シクロアルキル基」としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチル等の、C3-10シクロアルキル基が挙げられる。
【0021】
本明細書中、特に断りのない限り、「シクロアルケニル基」としては、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、及びシクロヘプテニル等の、C3-10シクロアルケニル基が挙げられる。
【0022】
本明細書中、特に断りのない限り、「シクロアルカジエニル基」としては、例えば、シクロブタジエニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル、シクロノナジエニル、及びシクロデカジエニル等の、C4-10シクロアルカジエニル基が挙げられる。
【0023】
本明細書中、特に断りのない限り、「アリール基」は、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。
本明細書中、特に断りのない限り、「アリール基」は、C6-18アリール基であることができる。
本明細書中、特に断りのない限り、「アリール基」としては、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニル、3-ビフェニル、4-ビフェニル、及び2-アンスリルが挙げられる。
【0024】
本明細書中、特に断りのない限り、「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、2,2-ジフェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、5-フェニルペンチル、2-ビフェニルメチル、3-ビフェニルメチル、及び4-ビフェニルメチルが挙げられる。
【0025】
本明細書中、「非芳香族複素環基」とは、非芳香族複素環から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
本明細書中、特に断りのない限り、「非芳香族複素環基」は、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。
本明細書中、特に断りのない限り、「非芳香族複素環基」は、飽和、又は不飽和であることができる。
本明細書中、特に断りのない限り、「非芳香族複素環基」は、例えば、5~18員の非芳香族複素環基であることができる。
本明細書中、特に断りのない限り、「非芳香族複素環基」は、例えば、環構成原子として、炭素原子に加えて酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる1~4個のヘテロ原子を含有する非芳香族複素環基であることができる。
本明細書中、特に断りのない限り、「非芳香族複素環基」としては、例えば、テトラヒドロフリル、オキサゾリジニル、イミダゾリニル(例:1-イミダゾリニル、2-イミダゾリニル、4-イミダゾリニル)、アジリジニル(例:1-アジリジニル、2-アジリジニル)、ピロリジニル(例:1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル)、ピペリジニル(例:1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル)、アゼパニル(例:1-アゼパニル、2-アゼパニル、3-アゼパニル、4-アゼパニル)、アゾカニル(例:1-アゾカニル、2-アゾカニル、3-アゾカニル、4-アゾカニル)、ピペラジニル(例:1,4-ピペラジン-1-イル、1,4-ピペラジン-2-イル)、ジアゼピニル(例:1,4-ジアゼピン-1-イル、1,4-ジアゼピン-2-イル、1,4-ジアゼピン-5-イル、1,4-ジアゼピン-6-イル)、ジアゾカニル(例:1,4-ジアゾカン-1-イル、1,4-ジアゾカン-2-イル、1,4-ジアゾカン-5-イル、1,4-ジアゾカン-6-イル、1,5-ジアゾカン-1-イル、1,5-ジアゾカン-2-イル、1,5-ジアゾカン-3-イル)、テトラヒドロピラニル(例:テトラヒドロフラン-4-イル)、モルホリニル(例:4-モルホリニル)、チオモルホリニル(例:4-チオモルホリニル)、2-オキサゾリジニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、及びジヒドロキノリル等が挙げられる。
【0026】
本明細書中、特に断りのない限り、「ヘテロアリール基」は、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。
本明細書中、特に断りのない限り、「ヘテロアリール基」は、例えば、5~18員のヘテロアリール基であることができる。
本明細書中、特に断りのない限り、「ヘテロアリール基」は、例えば、環構成原子として、炭素原子に加えて酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる1~4個のヘテロ原子を含有するヘテロアリール基であることができる。
本明細書中、特に断りのない限り、「ヘテロアリール基」は、「単環性ヘテロアリール基」、及び「芳香族縮合複素環基」を包含する。
本明細書中、特に断りのない限り、「単環性へテロアリール基」としては、例えば、ピロリル(例:1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル)、フリル(例:2-フリル、3-フリル)、チエニル(例:2-チエニル、3-チエニル)、ピラゾリル(例:1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル)、イミダゾリル(例:1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル)、イソオキサゾリル(例:3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル)、オキサゾリル(例:2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、イソチアゾリル(例:3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル)、チアゾリル(例:2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,3-トリアゾール-3-イル、1,2,4-トリアゾール-4-イル)、オキサジアゾリル(例:1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)、チアジアゾリル(例:1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-5-イル)、テトラゾリル、ピリジル(例:2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリダジニル(例:3-ピリダジニル、4-ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル)、及びピラジニル等が挙げられる。
本明細書中、特に断りのない限り、「芳香族縮合複素環基」としては、例えば、イソインドリル(例:1-イソインドリル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル、5-イソインドリル、6-イソインドリル、7-イソインドリル)、インドリル(例:1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル)、ベンゾ[b]フラニル(例:2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル、4-ベンゾ[b]フラニル、5-ベンゾ[b]フラニル、6-ベンゾ[b]フラニル、7-ベンゾ[b]フラニル)、ベンゾ[c]フラニル(例:1-ベンゾ[c]フラニル、4-ベンゾ[c]フラニル、5-ベンゾ[c]フラニル)、ベンゾ[b]チエニル、(例:2-ベンゾ[b]チエニル、3-ベンゾ[b]チエニル、4-ベンゾ[b]チエニル、5-ベンゾ[b]チエニル、6-ベンゾ[b]チエニル、7-ベンゾ[b]チエニル)、ベンゾ[c]チエニル(例:1-ベンゾ[c]チエニル、4-ベンゾ[c]チエニル、5-ベンゾ[c]チエニル)、インダゾリル(例:1-インダゾリル、2-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル)、ベンゾイミダゾリル(例:1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル)、1,2-ベンゾイソオキサゾリル(例:1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-4-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-5-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-6-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-7-イル)、ベンゾオキサゾリル(例:2-ベンゾオキサゾリル、4-ベンゾオキサゾリル、5-ベンゾオキサゾリル、6-ベンゾオキサゾリル、7-ベンゾオキサゾリル)、1,2-ベンゾイソチアゾリル(例:1,2-ベンゾイソチアゾール-3-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-4-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-5-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-6-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-7-イル)、ベンゾチアゾリル(例:2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル)、イソキノリル(例:1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル)、キノリル(例:2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、8-キノリル)、シンノリニル(例:3-シンノリニル、4-シンノリニル、5-シンノリニル、6-シンノリニル、7-シンノリニル、8-シンノリニル)、フタラジニル(例:1-フタラジニル、4-フタラジニル、5-フタラジニル、6-フタラジニル、7-フタラジニル、8-フタラジニル)、キナゾリニル(例:2-キナゾリニル、4-キナゾリニル、5-キナゾリニル、6-キナゾリニル、7-キナゾリニル、8-キナゾリニル)、キノキサリニル(例:2-キノキサリニル、3-キノキサリニル、5-キノキサリニル、6-キノキサリニル、7-キノキサリニル、8-キノキサリニル)、ピラゾロ[1,5-a]ピリジル(例:ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-4-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-5-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イル)、イミダゾ[1,2-a]ピリジル(例:イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-7-イル、及びイミダゾ[1,2-a]ピリジン-8-イル)等が挙げられる。
【0027】
式(1)で表される化合物の製造方法
一実施態様において、式(1):
【化26】
(式中、Rは、有機基である。)
で表される化合物の製造方法は、
式(2):
【化27】
(式中、Xは、フッ素以外の脱離基であり、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物を、式(3):
MF
n (3)
(式中、Mは、カチオンであり、nは、カチオンの価数に対応する整数である。)
で表される化合物と反応する工程(以下、「工程A」と称する。)を含み、
前記式(3)で表される化合物の使用量が、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、0.9モル以下である製造方法である。
【0028】
<式(2)で表される化合物>
Rとしては、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基が好ましく、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基がより好ましく、1個以上の置換基を有していてもよいC1-4アルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいC6-12アリール基がさらに好ましく、1個以上の置換基を有していてもよいC1-4アルキル基が特に好ましい。
【0029】
Rが、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である場合、
該置換基は、好ましくは、
フッ素、アリール基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基からなる群より選択される少なくとも一種;
より好ましくは、
フッ素、C6-12アリール基、C1-4アルコキシ基、及びC6-12アリールオキシからなる群より選択される少なくとも一種;
さらに好ましくは、
フッ素、及びC6-12アリール基から選択される少なくとも一種;
特に好ましくは、
フッ素
であることができる。
【0030】
Rが、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である場合、
該置換基は、好ましくは、
フッ素、アルキル基、及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも一種;
より好ましくは、
フッ素、C1-4アルキル基、及びC1-4アルコキシ基からなる群より選択される少なくとも一種
であることができる。
【0031】
Rにおいて、アルキル基又はアリール基に置換する置換基の数は、0個以上置換可能な最大数以下の範囲から選択することができ、置換基の種類によっても異なるが、例えば、0、1、2、3、4、又は5個であることができる。
【0032】
Xで表される脱離基としては、反応により脱離可能な基である限り特に制限されないが、例えば、フッ素以外のハロゲン、アルキルスルホニルオキシ基、ハロアルキルスルホニルオキシ基、及びアリールスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0033】
アルキルスルホニルオキシ基としては、例えば、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ等の、C1-6アルキルスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0034】
ハロアルキルスルホニルオキシ基としては、例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ等の、ハロC1-6アルキルスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0035】
アリールスルホニルオキシ基としては、例えば、ベンゼンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ等の、C6-18アリールスルホニルオキシ基が挙げられる。
【0036】
Xは、好ましくは、
フッ素以外のハロゲン、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、又はノナフルオロブタンスルホニルオキシ基;
より好ましくは、
フッ素以外のハロゲン;
さらに好ましくは、
塩素又は臭素;
特に好ましくは、
塩素
であることができる。
【0037】
<式(3)で表される化合物>
Mで表されるカチオンとしては、フッ素イオンのカウンターイオンである限り特に限定されないが、例えば、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、及びアンモニウムイオン等の、1価又は2価のカチオンが挙げられる。
【0038】
アルカリ金属イオンとしては、例えば、Na+、K+、及びCs+が挙げられる。
【0039】
アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、Mg2+、及びCa2+が挙げられる。
【0040】
アンモニウムイオンは、NH4
+、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオン、及び第4級アンモニウムイオンを包含することができる。
【0041】
第1級アンモニウムイオンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン(n-プロピルアミン、イソプロピルアミン)、ブチルアミン等のC1-6アルキルアミン、アニリン等に由来する第1級アンモニウムイオンが挙げられる。
【0042】
第2級アンモニウムイオンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、ジプロピルアミン等のジC1-6アルキルアミン、ピロリジン、イミダゾール、ピペリジン、モルホリン等に由来する第2級アンモニウムイオンが挙げられる。
【0043】
第3級アンモニウムイオンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリC1-6アルキルアミン、ピリジン、キノリン等に由来する第3級アンモニウムイオンが挙げられる。
【0044】
第4級アンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン等のテトラC1-6アルキルアンモニウムイオンが挙げられる。
【0045】
Mは、好ましくは、
水素イオン、アルカリ金属イオン、又はアルカリ土類金属イオン;
より好ましくは、
水素イオン、又はアルカリ金属イオン
であることができる。
【0046】
nは、カチオンの価数に応じて適宜選択することができ、例えば、1又は2であることができる。
【0047】
式(3)で表される化合物は、好ましくは、
HF、NaF、KF、CsF、及びCaF2からなる群より選択される少なくとも一種;より好ましくは、
KF、及びCsFからなる群より選択される少なくとも一種
であることができる。
【0048】
式(3)で表される化合物の含水率の上限は、好ましくは1.0質量%、より好ましくは0.5質量%、さらに好ましくは0.2質量%であることができる。
式(3)で表される化合物の含水率の下限は、通常、0.01質量%であることができる。
式(3)で表される化合物の含水率は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.01~0.5質量%の範囲内であることができる。
【0049】
式(3)で表される化合物は、例えば、粉末であることができる。また、式(3)で表される化合物は、例えば、噴霧乾燥物(スプレードライ物)であることができる。
【0050】
粉末の平均粒子径は、例えば、0.5~300μmの範囲内から選択することができ、反応効率の点から、0.5~200μmの範囲内が好ましく、0.5~150μmの範囲内がより好ましく、0.5~100μmの範囲内がさらに好ましく、0.5~50μmの範囲内が特に好ましい。なお、平均粒子径は、通常、動的光散乱法、レーザー回折法、又は遠心沈降法により測定することができる。
【0051】
粉末の比表面積は、例えば、0.1~5.0m2/gの範囲内から選択することができ、反応効率の点から、0.5~5.0m2/gの範囲内が好ましく、1.0~5.0m2/gの範囲内がより好ましい。なお、比表面積の測定方法は、通常、透過法、気体吸着法、又は水銀圧投入法により測定することができる。
【0052】
式(3)で表される化合物の使用量は、式(2)で表される化合物1モルに対して、0.9モル以下であり、0.8モル以下が好ましく、0.7モル以下がより好ましく、0.6モル以下がさらに好ましい。また、式(3)で表される化合物の使用量は、式(2)で表される化合物1モルに対して、0.1モル以上が好ましく、0.2モル以上がより好ましく、0.3モル以上がさらに好ましい。
【0053】
工程Aの反応は、添加剤の存在下で行ってもよい。添加剤としては、例えば、触媒(例:相間移動触媒)が挙げられる。目的物に不純物が混入することを回避する点から、工程Aの反応は、触媒(例:相間移動触媒)の不存在下で行うことが好ましく、添加剤の不存在下で行うことがさらに好ましい。
【0054】
式(2)で表される化合物は、溶媒として使用することができる。工程Aの反応は、1種又は2種以上の更なる溶媒の存在下で行ってもよい。更なる溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素(例:ヘキサン)、芳香族炭化水素(例:トルエン、キシレン)、ハロゲン化炭化水素(例:ジクロロメタン、ジクロロエタン)、エーテル(例:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、ケトン(例:アセトン、メチルエチルケトン)、ニトリル(例:アセトニトリル)が挙げられる。精製の簡便性及び収率の点から、工程Aの反応は、更なる溶媒の不存在下で行うことが好ましい。
【0055】
工程Aの反応は、実質的に、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物のみで行うことが好ましい。
【0056】
工程Aの反応溶液の25℃における粘度の上限は、好ましくは3Pa・s、2Pa・s、又は1Pa・sであることができる。
工程Aの反応溶液の25℃における粘度の下限は、好ましくは0.01Pa・sであることができる。
工程Aの反応溶液の25℃における粘度は、好ましくは0.01~3Pa・s、0.01~2Pa・s、又は0.01~1Pa・sの範囲内であることができる。このような範囲にあると、固体析出量が少なく、撹拌効率に優れ、生産性を向上することができる。なお、上記粘度は、慣用の粘度計(例:株式会社エー・アンド・ディ製SV-10)を用いて測定することができる。
【0057】
工程Aの反応温度の下限は、好ましくは100℃、より好ましくは120℃、さらに好ましくは150℃であることができる。
工程Aの反応温度の上限は、好ましくは250℃、より好ましくは240℃、さらに好ましくは230℃であることができる。
工程Aの反応温度は、好ましくは100~250℃の範囲内、より好ましくは120~240℃の範囲内、さらに好ましくは150~230℃の範囲内であることができる。
【0058】
工程Aの反応時間の下限は、変換率の点から、好ましくは0.5時間、より好ましくは1時間、さらに好ましくは2時間、さらにより好ましくは5時間、特に好ましくは10時間であることができる。
工程Aの反応時間の上限は、選択率の点から、好ましくは48時間、より好ましくは36時間、さらに好ましくは24時間、特に好ましくは15時間であることができる。
工程Aの反応時間は、好ましくは0.5~48時間の範囲内、より好ましくは1~36時間、さらに好ましくは2~24時間の範囲内、特に好ましくは5~15時間の範囲内であることができる。
【0059】
式(1)で表される化合物の製造方法は、さらに工程Aにより得られた生成物を蒸留する工程(以下、「工程B」と称する場合がある。)を含むことが好ましい。本開示の方法によれば、工程Aにより得られた生成物を抽出等の操作に供することなく、そのまま蒸留しても、式(1)で表される化合物を高選択率で得ることができる。
【0060】
工程Bの蒸留は、減圧蒸留であることが好ましい。減圧蒸留の圧力は、通常、0.1~98kPaの範囲内、好ましくは0.1~70kPaの範囲内、さらに好ましくは0.1~40kPaの範囲内であることができる。減圧蒸留の温度は、式(1)で表される化合物の沸点よりも高い温度であればよく、好ましくは20~200℃の範囲内、さらに好ましくは60~200℃の範囲内であることができる。
【0061】
式(1)で表される化合物の製造方法は、さらに工程Bにより得られた生成物を精留する工程(以下、「工程C」と称する場合がある。)を含むことが好ましい。工程Cの精留は、精留塔を用いて行うことが好ましい。精留塔としては、例えば、プレート型カラム、同心円筒型カラム、回転バンド型カラム、充填カラム等を使用することができる。
【0062】
工程Cの精留は、常圧下又は減圧下で行うことができる。精留の圧力は、通常、0.1~98kPaの範囲内、好ましくは0.1~70kPaの範囲内、さらに好ましくは0.1~40kPaの範囲内であることができる。精留の温度は、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを沸点差により分離できる温度であればよく、好ましくは20~140℃の範囲内、さらに好ましくは60~140℃の範囲内であることができる。
【0063】
<組成物>
本開示の組成物は、式(1)で表される化合物と、
・式(2)で表される化合物;
・式(4):
R-OH (4)
(式中、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物;
・2-フルオロ酢酸;
・式(5):
【化28】
(式中、Xは、前記と同意義である。)
で表される化合物;
・酢酸;
・式(6):
CH
3COOR (6)
(式中、Rは、同意義である。)
で表される化合物;
・式(7):
【化29】
(式中、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物;
・式(8):
【化30】
(式中、Rは、前記と同意義である。)
で表される化合物;
・式(9):
【化31】
(式中、Xは、前記と同意義である。)
で表される化合物;並びに
・式(3)で表される化合物、及び式(3’):
MCl
n (3’)
(式中、M及びnは、前記と同意義である。)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の無機塩
(以下、単に「無機塩」と称する。)
からなる群より選択される少なくとも一種の化合物とを含有することができる。
【0064】
<式(1)で表される化合物、及び式(2)で表される化合物を含有する組成物a>
組成物aは、式(1)で表される化合物、及び式(2)で表される化合物を含有する限り、特に制限されない。式(2)で表される化合物は、例えば、工程Aの反応における未反応の原料であることができる。組成物aは、例えば、工程Aの反応後の組成物、工程Bの蒸留後の組成物、又は工程Cの精留後の組成物であることができる。
【0065】
組成物aにおいて、式(2)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは2.5質量%、より好ましくは2.2質量%、さらに好ましくは2.0質量%であることができ、0.001質量%、又は検出限界であってもよい。
組成物aにおいて、式(2)で表される化合物の含有量の下限は、好ましくは検出限界、0.001質量%、0.002質量%、又は0.003質量%であることができる。
組成物aにおいて、式(2)で表される化合物の含有量は、好ましくは0.001質量%を超えて2.5質量%以下の範囲内、より好ましくは0.002~2.5質量%の範囲内であることができる。
【0066】
式(2)で表される化合物の含有量の上限は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは2.5質量部、より好ましくは2.3質量部、さらに好ましくは2.2質量部であることができ、0.001質量%、又は検出限界であってもよい。
式(2)で表される化合物の含有量の下限は、好ましくは、検出限界であってもよく、式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.001質量部、0.002質量部、又は0.003質量部であってもよい。
式(2)で表される化合物の含有量は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部を超えて2.5質量部以下の範囲内、より好ましくは0.002~2.5質量部の範囲内であることができる。
【0067】
なお、組成物aにおける各化合物の含有量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析法により測定できる。ガスクロマトグラフィーの条件は、下記の条件であることができる。
(条件)
カラム: アジレント・テクノロジー株式会社製 J&W HP-1
(1.00μm、30m、0.32mmID)
カラムオーブン:40℃(5分間)→昇温(10℃/分)→300℃
(10分間)又は
40℃(5分間)→昇温(7℃/分)→280℃
(0分間)
気化室温度: 250℃
検出器: FID(水素炎イオン化型検出器)
【0068】
後述の組成物b~kにおける各化合物の含有量も同様に測定できる。
【0069】
組成物aは、
(a-1)他の成分をさらに含有する組成物;
(a-2)他の成分が式(4)で表される化合物を含有する、(a-1)に記載の組成物;
(a-3)他の成分が2-フルオロ酢酸を含有する、(a-1)又は(a-2)に記載の組成物;
(a-4)他の成分が式(5)で表される化合物を含有する、(a-1)~(a-3)のいずれかに記載の組成物;
(a-5)他の成分が酢酸を含有する、(a-1)~(a-4)のいずれかに記載の組成物;
(a-6)他の成分が式(6)で表される化合物を含有する、(a-1)~(a-5)のいずれかに記載の組成物;
(a-7)他の成分が式(7)で表される化合物を含有する、(a-1)~(a-6)のいずれかに記載の組成物;
(a-8)他の成分が式(8)で表される化合物を含有する、(a-1)~(a-7)のいずれかに記載の組成物;
(a-9)他の成分が式(9)で表される化合物を含有する、(a-1)~(a-8)のいずれかに記載の組成物;又は
(a-10)他の成分が無機塩を含有する、(a-1)~(a-9)のいずれかに記載の組成物
であることができる。
【0070】
組成物aにおいて、式(4)で表される化合物、2-フルオロ酢酸、式(5)で表される化合物、酢酸、式(6)で表される化合物、式(7)で表される化合物、式(8)で表される化合物、式(9)で表される化合物、及び無機塩の含有量は、それぞれ、後述の組成物b、c、d、e、f、g、h、i、及びjに記載の含有量と同一であることができる。
【0071】
<式(1)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物を含有する組成物b>
組成物bは、式(1)で表される化合物、及び式(4)で表される化合物を含有する限り、特に制限されない。式(4)で表される化合物は、例えば、工程Aの反応の副生成物であることができる。組成物bは、例えば、工程Aの反応後の組成物、工程Bの蒸留後の組成物、又は工程Cの精留後の組成物であることができる。
【0072】
組成物bにおいて、式(4)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは2.5質量%、より好ましくは2.3質量%、さらに好ましくは2.2質量%であることができ、1.0質量%、0.9質量%、又は検出限界であってもよい。
組成物bにおいて、式(4)で表される化合物の含有量の下限は、検出限界又は0.001質量%であってもよく、1.1質量%又は1.2質量%であってもよい。
組成物bにおいて、式(4)で表される化合物の含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下、又は1.1~2.5質量%の範囲内、より好ましくは1.2~2.5質量%の範囲内であることができる。
【0073】
式(4)で表される化合物の含有量の上限は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは2.5質量部、より好ましくは2.4質量部、さらに好ましくは2.3質量部であることができ、1.0質量部、0.9質量部、又は検出限界であってもよい。
式(4)で表される化合物の含有量の下限は、好ましくは、検出限界であってもよく、式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.001質量部、1.1質量部、又は1.2質量部であってもよい。
式(4)で表される化合物の含有量は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.9質量部以下、又は1.1~2.5質量部の範囲内、より好ましくは1.2~2.5質量部の範囲内であることができる。
【0074】
組成物bは、
(b-1)他の成分をさらに含有する組成物;
(b-2)他の成分が2-フルオロ酢酸を含有する、(b-1)に記載の組成物;
(b-3)他の成分が式(5)で表される化合物を含有する、(b-1)又は(b-2)に記載の組成物;
(b-4)他の成分が酢酸を含有する、(b-1)~(b-3)のいずれかに記載の組成物;
(b-5)他の成分が式(6)で表される化合物を含有する、(b-1)~(b-4)のいずれかに記載の組成物;
(b-6)他の成分が式(7)で表される化合物を含有する、(b-1)~(b-5)のいずれかに記載の組成物;
(b-7)他の成分が式(8)で表される化合物を含有する、(b-1)~(b-6)のいずれかに記載の組成物;
(b-8)他の成分が式(9)で表される化合物を含有する、(b-1)~(b-7)のいずれかに記載の組成物;又は
(b-9)他の成分が無機塩を含有する、(b-1)~(b-8)のいずれかに記載の組成物
であることができる。
【0075】
組成物bにおいて、2-フルオロ酢酸、式(5)で表される化合物、酢酸、式(6)で表される化合物、式(7)で表される化合物、式(8)で表される化合物、式(9)で表される化合物、及び無機塩の含有量は、それぞれ、後述の組成物c、d、e、f、g、h、i、及びjに記載の含有量と同一であることができる。
【0076】
<式(1)で表される化合物、及び2-フルオロ酢酸を含有する組成物c>
組成物cは、式(1)で表される化合物、及び2-フルオロ酢酸を含有する限り、特に制限されない。2-フルオロ酢酸は、例えば、工程Aの反応の副生成物、すなわち、式(1)で表される化合物の加水分解物であることができる。組成物cは、例えば、工程Aの反応後の組成物、工程Bの蒸留後の組成物、又は工程Cの精留後の組成物であることができる。
【0077】
組成物cにおいて、2-フルオロ酢酸の含有量の上限は、好ましくは0.9質量%、より好ましくは0.8質量%、さらに好ましくは0.7質量%、特に好ましくは0.6質量%であることができる。
組成物cにおいて、2-フルオロ酢酸の含有量の下限は、通常、検出限界、又は0.001質量%であることができる。
組成物cにおいて、2-フルオロ酢酸の含有量は、好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.001~0.8質量%の範囲内であることができる。
【0078】
2-フルオロ酢酸の含有量の上限は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.9質量部、より好ましくは0.8質量部、さらに好ましくは0.7質量部、特に好ましくは0.6質量部であることができる。
2-フルオロ酢酸の含有量の下限は、通常、検出限界、又は式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.001質量部であることができる。
2-フルオロ酢酸の含有量は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.9質量部以下、より好ましくは0.001~0.8質量部の範囲内であることができる。
【0079】
組成物cは、
(c-1)他の成分をさらに含有する組成物;
(c-2)他の成分が式(5)で表される化合物を含有する、(c-1)に記載の組成物;
(c-3)他の成分が酢酸を含有する、(c-1)又は(c-2)に記載の組成物;
(c-4)他の成分が式(6)で表される化合物を含有する、(c-1)~(c-3)のいずれかに記載の組成物;
(c-5)他の成分が式(7)で表される化合物を含有する、(c-1)~(c-4)のいずれかに記載の組成物;
(c-6)他の成分が式(8)で表される化合物を含有する、(c-1)~(c-5)のいずれかに記載の組成物;
(c-7)他の成分が式(9)で表される化合物を含有する、(c-1)~(c-6)のいずれかに記載の組成物;又は
(c-8)他の成分が無機塩を含有する、(c-1)~(c-7)のいずれかに記載の組成物
であることができる。
【0080】
組成物cにおいて、式(5)で表される化合物、酢酸、式(6)で表される化合物、式(7)で表される化合物、式(8)で表される化合物、式(9)で表される化合物、及び無機塩の含有量は、それぞれ、後述の組成物d、e、f、g、h、i、及びjに記載の含有量と同一であることができる。
【0081】
<式(1)で表される化合物、及び式(5)で表される化合物を含有する組成物d>
組成物dは、式(1)で表される化合物、及び式(5)で表される化合物を含有する限り、特に制限されない。式(5)で表される化合物は、例えば、工程Aの反応の副生成物、すなわち、式(2)で表される化合物の加水分解物であることができる。組成物dは、例えば、工程Aの反応後の組成物、工程Bの蒸留後の組成物、又は工程Cの精留後の組成物であることができる。
【0082】
組成物dにおいて、式(5)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは1質量%、より好ましくは0.5質量%、さらに好ましくは0.1質量%であることができ、0.001質量%、又は検出限界であってもよい。
組成物dにおいて、式(5)で表される化合物の含有量の下限は、好ましくは検出限界、0.002質量%、0.003質量%、又は0.004質量%であることができる。
組成物dにおいて、式(5)で表される化合物の含有量は、好ましくは0.001質量%以下、又は0.002~1質量%の範囲内であることができる。
【0083】
式(5)で表される化合物の含有量の上限は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは1質量部、より好ましくは0.5質量部、さらに好ましくは0.1質量部であることができ、0.001質量部、又は検出限界であってもよい。
式(5)で表される化合物の含有量の下限は、好ましくは、検出限界であってもよく、式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.002質量部、0.003質量部、又は0.004質量部であってもよい。
式(5)で表される化合物の含有量は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以下、又は0.002~1質量部の範囲内であることができる。
【0084】
組成物dは、
(d-1)他の成分をさらに含有する組成物;
(d-2)他の成分が酢酸を含有する、(d-1)に記載の組成物;
(d-3)他の成分が式(6)で表される化合物を含有する、(d-1)又は(d-2)に記載の組成物;
(d-4)他の成分が式(7)で表される化合物を含有する、(d-1)~(d-3)のいずれかに記載の組成物;
(d-5)他の成分が式(8)で表される化合物を含有する、(d-1)~(d-4)のいずれかに記載の組成物;
(d-6)他の成分が式(9)で表される化合物を含有する、(d-1)~(d-5)のいずれかに記載の組成物;又は
(d-7)他の成分が無機塩を含有する、(d-1)~(d-6)のいずれかに記載の組成物
であることができる。
【0085】
組成物dにおいて、酢酸、式(6)で表される化合物、式(7)で表される化合物、式(8)で表される化合物、式(9)で表される化合物、及び無機塩の含有量は、それぞれ、後述の組成物e、f、g、h、i、及びjに記載の含有量と同一であることができる。
【0086】
<式(1)で表される化合物、及び酢酸を含有する組成物e>
組成物eは、式(1)で表される化合物、及び酢酸を含有する限り、特に制限されない。酢酸は、例えば、工程Aの反応の副生成物であることができる。組成物eは、例えば、工程Aの反応後の組成物、工程Bの蒸留後の組成物、又は工程Cの精留後の組成物であることができる。
【0087】
組成物eにおいて、酢酸の含有量の上限は、好ましくは2.5質量%、より好ましくは1.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%であることができる。
組成物eにおいて、酢酸の含有量の下限は、通常、検出限界、又は0.001質量%であることができる。
組成物eにおいて、酢酸の含有量は、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは0.001~1.0質量%の範囲内であることができる。
【0088】
酢酸の含有量の上限は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは2.5質量部、より好ましくは1.5質量部、さらに好ましくは1.0質量部であることができる。
酢酸の含有量の下限は、通常、検出限界、又は式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.001質量部であることができる。
酢酸の含有量は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは0.001~1.0質量部の範囲内であることができる。
【0089】
組成物eは、
(e-1)他の成分をさらに含有する組成物;
(e-2)他の成分が式(6)で表される化合物を含有する、(e-1)に記載の組成物;
(e-3)他の成分が式(7)で表される化合物を含有する、(e-1)又は(e-2)に記載の組成物;
(e-4)他の成分が式(8)で表される化合物を含有する、(e-1)~(e-3)のいずれかに記載の組成物;
(e-5)他の成分が式(9)で表される化合物を含有する、(e-1)~(e-4)のいずれかに記載の組成物;又は
(e-6)他の成分が無機塩を含有する、(e-1)~(e-5)のいずれかに記載の組成物であることができる。
【0090】
組成物eにおいて、式(6)で表される化合物、式(7)で表される化合物、式(8)で表される化合物、式(9)で表される化合物、及び無機塩の含有量は、それぞれ、後述の組成物f、g、h、i、及びjに記載の含有量と同一であることができる。
【0091】
<式(1)で表される化合物、及び式(6)で表される化合物を含有する組成物f>
組成物fは、式(1)で表される化合物、及び式(6)で表される化合物を含有する限り、特に制限されない。式(6)で表される化合物は、工程Aの反応の副生成物であることができる。組成物fは、例えば、工程Aの反応後の組成物、工程Bの蒸留後の組成物、又は工程Cの精留後の組成物であることができる。
【0092】
組成物fにおいて、式(6)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.009質量%、さらに好ましくは0.008質量%であることができる。
組成物fにおいて、式(6)で表される化合物の含有量の下限は、通常、検出限界、又は0.001質量%であることができる。
組成物fにおいて、式(6)で表される化合物の含有量は、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.001~0.009質量%の範囲内であることができる。
【0093】
式(6)で表される化合物の含有量の上限は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部、より好ましくは0.009質量部、さらに好ましくは0.008質量部であることができる。
式(6)で表される化合物の含有量の下限は、通常、検出限界、又は式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.001質量部であることができる。
式(6)で表される化合物の含有量は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部未満、より好ましくは0.001~0.009質量部の範囲内であることができる。
【0094】
組成物fは、
(f-1)他の成分をさらに含有する組成物;
(f-2)他の成分が式(7)で表される化合物を含有する、(f-1)に記載の組成物;
(f-3)他の成分が式(8)で表される化合物を含有する、(f-1)又は(f-2)に記載の組成物;
(f-4)他の成分が式(9)で表される化合物を含有する、(f-1)~(f-3)のいずれかに記載の組成物;又は
(f-5)他の成分が無機塩を含有する、(f-1)~(f-4)のいずれかに記載の組成物
であることができる。
【0095】
組成物fにおいて、式(7)で表される化合物、式(8)で表される化合物、式(9)で表される化合物、及び無機塩の含有量は、それぞれ、後述の組成物g、h、i、及びjに記載の含有量と同一であることができる。
【0096】
<式(1)で表される化合物、及び式(7)で表される化合物を含有する組成物g>
組成物gは、式(1)で表される化合物、及び式(7)で表される化合物を含有する限り、特に制限されない。式(7)で表される化合物は、工程Aの反応の副生成物であることができる。組成物gは、例えば、工程Aの反応後の組成物、工程Bの蒸留後の組成物、又は工程Cの精留後の組成物であることができる。
【0097】
組成物gにおいて、式(7)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.009質量%、さらに好ましくは0.008質量%であることができる。
組成物gにおいて、式(7)で表される化合物の含有量の下限は、通常、検出限界、又は0.001質量%であることができる。
組成物gにおいて、式(7)で表される化合物の含有量は、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.001~0.009質量%の範囲内であることができる。
【0098】
式(7)で表される化合物の含有量の上限は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部、より好ましくは0.009質量部、さらに好ましくは0.008質量部であることができる。
式(7)で表される化合物の含有量の下限は、通常、検出限界、又は式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.001質量部であることができる。
式(7)で表される化合物の含有量は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部未満、より好ましくは0.001~0.009質量部の範囲内であることができる。
【0099】
組成物gは、
(g-1)他の成分をさらに含有する組成物;
(g-2)他の成分が式(8)で表される化合物を含有する、(g-1)に記載の組成物;
(g-3)他の成分が式(9)で表される化合物を含有する、(g-1)又は(g-2)に記載の組成物;又は
(g-4)他の成分が無機塩を含有する、(g-1)~(g-3)のいずれかに記載の組成物
であることができる。
【0100】
組成物gにおいて、式(8)で表される化合物、式(9)で表される化合物、及び無機塩の含有量は、それぞれ、後述の組成物h、i、及びjに記載の含有量と同一であることができる。
【0101】
<式(1)で表される化合物、及び式(8)で表される化合物を含有する組成物h>
組成物hは、式(1)で表される化合物、及び式(8)で表される化合物を含有する限り、特に制限されない。式(8)で表される化合物は、工程Aの反応の副生成物であることができる。組成物hは、例えば、工程Aの反応後の組成物、工程Bの蒸留後の組成物、又は工程Cの精留後の組成物であることができる。
【0102】
組成物hにおいて、式(8)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは0.5質量%、より好ましくは0.1質量%であることができ、0.005質量%、0.004質量%、又は検出限界であってもよい。
組成物hにおいて、式(8)で表される化合物の含有量の下限は、通常、0.006質量%、又は0.007質量%であることができる。
組成物hにおいて、式(8)で表される化合物の含有量は、好ましくは0.006~0.5質量%の範囲内、より好ましくは0.007~0.1質量%の範囲内であることができる。
【0103】
式(8)で表される化合物の含有量の上限は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.5質量部、より好ましくは0.1質量部であることができ、0.005質量部、0.004質量部、又は検出限界であってもよい。
式(8)で表される化合物の含有量の下限は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、通常、0.006質量部、又は0.007質量部であることができる。
式(8)で表される化合物の含有量は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.006~0.5質量部の範囲内、より好ましくは0.007~0.1質量部の範囲内であることができる。
【0104】
組成物hは、
(h-1)他の成分をさらに含有する組成物;
(h-2)他の成分が式(9)で表される化合物を含有する、(h-1)に記載の組成物;又は(h-3)他の成分が無機塩を含有する、(h-1)又は(h-2)に記載の組成物
であることができる。
【0105】
組成物hにおいて、式(9)で表される化合物、及び無機塩の含有量は、それぞれ、後述の組成物i、及びjに記載の含有量と同一であることができる。
【0106】
<式(1)で表される化合物、及び式(9)で表される化合物を含有する組成物i>
式(1)で表される化合物、及び式(9)で表される化合物を含有する限り、特に制限されない。式(9)で表される化合物は、例えば、工程Aの反応の副生成物であることができる。組成物iは、例えば、工程Aの反応後の組成物、工程Bの蒸留後の組成物、又は工程Cの精留後の組成物であることができる。
【0107】
組成物iにおいて、式(9)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは1.0質量%、より好ましくは0.9質量%、さらに好ましくは0.8質量%であることができる。
組成物iにおいて、式(9)で表される化合物の含有量の下限は、通常、検出限界、又は0.001質量%であることができる。
組成物iにおいて、式(9)で表される化合物の含有量は、好ましくは検出限界を超えて1.0質量%以下の範囲内、より好ましくは0.001~0.9質量%の範囲内であることができる。
【0108】
式(9)で表される化合物の含有量の上限は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは1.0質量部、より好ましくは0.9質量部、さらに好ましくは0.8質量部であることができる。
式(9)で表される化合物の含有量の下限は、通常、検出限界、又は式(1)で表される化合物100質量部に対して、0.001質量部であることができる。
式(9)で表される化合物の含有量は、好ましくは、検出限界を超えて、式(1)で表される化合物100質量部に対して、1.0質量部以下、より好ましくは0.001~0.9質量部の範囲内であることができる。
【0109】
組成物iは、無機塩をさらに含有する組成物であることができる。組成物iにおいて、無機塩の含有量は、後述の組成物jに記載の含有量と同一であることができる。
【0110】
<式(1)で表される化合物、並びに、式(3)で表される化合物及び式(3’)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する組成物j>
組成物jは、式(1)で表される化合物、並びに、式(3)で表される化合物及び式(3’):
MCln (3’)
(式中、M及びnは、前記と同意義である。)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の無機塩を含有する限り、特に制限されない。式(3)で表される化合物は、例えば、工程Aの反応の未反応原料であることができる。式(3’)で表される化合物は、例えば、工程Aの反応の副生成物であることができる。組成物jは、例えば、工程Aの反応後の組成物、工程Bの蒸留後の組成物、又は工程Cの精留後の組成物であることができる。
【0111】
組成物jにおいて、無機塩の含有量の上限は、好ましくは0.01質量%であることができる。
組成物jにおいて、無機塩の含有量の下限は、通常、検出限界であることができる。
組成物jにおいて、無機塩の含有量は、好ましくは検出限界を超えて0.01質量%以下の範囲内であることができる。
【0112】
無機塩の含有量の上限は、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部であることができる。
無機塩の含有量の下限は、通常、検出限界であることができる。
無機塩の含有量は、検出限界を超えて、式(1)で表される化合物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以下の範囲内であることができる。
【0113】
なお、組成物jにおける無機塩の含有量は、イオンクロマトグラフィー-質量分析法により測定できる。イオンクロマトグラフィーの条件は、下記の条件であることができる。(条件)
カラム: Thermo Fisher Scientific社製
Dionex IonPac AS4A-SC
4×250mm
カラムオーブン:45℃
溶離液: 4mM 炭酸ナトリウム 水溶液
溶離液流量: 0.8ml/min
検出器: 電気伝導度計
【0114】
<2-フルオロ酢酸メチル及び2-フルオロ酢酸エチルを含有する組成物k>
組成物kは、2-フルオロ酢酸メチル、及び2-フルオロ酢酸エチルを含有する限り、特に制限されない。
【0115】
組成物kにおいて、2-フルオロ酢酸エチルの含有量の上限は、好ましくは0.019質量%、より好ましくは0.015質量%、さらに好ましくは0.010質量%であることができる。
組成物kにおいて、2-フルオロ酢酸エチルの含有量の下限は、通常、検出限界、又は0.001質量%であることができる。
組成物kにおいて、2-フルオロ酢酸エチルの含有量は、好ましくは0.019質量%以下、より好ましくは0.001~0.015質量%の範囲内であることができる。
【0116】
2-フルオロ酢酸エチルの含有量の上限は、2-フルオロ酢酸メチル100質量部に対して、好ましくは0.019質量部、より好ましくは0.015質量部、さらに好ましくは0.010質量部であることができる。
2-フルオロ酢酸エチルの含有量の下限は、通常、検出限界、又は2-フルオロ酢酸メチル100質量部に対して、0.001質量部であることができる。
2-フルオロ酢酸エチルの含有量は、2-フルオロ酢酸メチル100質量部に対して、好ましくは0.019質量部以下、より好ましくは0.001~0.015質量部の範囲内であることができる。
【0117】
組成物kは、
(k-1)他の成分をさらに含有する組成物;
(k-2)他の成分が式(2)で表される化合物を含有する、(k-1)に記載の組成物;
(k-3)他の成分が式(4)で表される化合物を含有する、(k-1)又は(k-2)に記載の組成物;
(k-4)他の成分が2-フルオロ酢酸を含有する、(k-1)~(k-3)のいずれかに記載の組成物;
(k-5)他の成分が式(5)で表される化合物を含有する、(k-1)~(k-4)のいずれかに記載の組成物;
(k-6)他の成分が酢酸を含有する、(k-1)~(k-5)のいずれかに記載の組成物;
(k-7)他の成分が式(6)で表される化合物を含有する、(k-1)~(k-6)のいずれかに記載の組成物;
(k-8)他の成分が式(7)で表される化合物を含有する、(k-1)~(k-7)のいずれかに記載の組成物;
(k-9)他の成分が式(8)で表される化合物を含有する、(k-1)~(k-7)のいずれかに記載の組成物;
(k-10)他の成分が式(9)で表される化合物を含有する、(k-1)~(k-9)のいずれかに記載の組成物;又は
(k-11)他の成分が無機塩を含有する、(k-1)~(k-10)のいずれかに記載の組成物
であることができる。
【0118】
組成物kにおいて、式(2)で表される化合物、式(4)で表される化合物、2-フルオロ酢酸、式(5)で表される化合物、酢酸、式(6)で表される化合物、式(7)で表される化合物、式(8)で表される化合物、式(9)で表される化合物、及び無機塩の含有量は、それぞれ、組成物a、b、c、d、e、f、g、h、i、及びjに記載の含有量と同一であることができる。
【実施例】
【0119】
以下、実施例によって本開示の一実施態様を更に詳細に説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0120】
クロロ酢酸メチル及び1.0モル当量のフッ化カリウムからなる懸濁液(比較例の反応溶液に相当)、並びに、クロロ酢酸メチル及び0.5モル当量のフッ化カリウムからなる懸濁液(実施例の反応溶液に相当)について、25℃の粘度を粘度計(株式会社エー・アンド・ディ製SV-10)を用いて測定した。結果は、表1の通りである。
【表1】
0.5モル当量のフッ化カリウムを用いた場合の方が、1.0モル当量のフッ化カリウムを用いた場合よりも粘度を低減でき(固体析出量を低減でき)、撹拌効率に優れ、生産性を向上できることが分かった。
【0121】
オートクレーブにフッ化カリウム(30.7g、0.53mol)、クロロ酢酸メチル(116g、1.07mol)を添加した後、密閉した。撹拌しながら、内温を208℃まで昇温し、12時間反応させた。なお、反応開始から2時間、5時間、及び12時間経過した時点の変換率及び選択率は、表2の通りである。
【0122】
【0123】
冷却後、減圧蒸留にて粗体溶液を取り出した後、精留してフルオロ酢酸メチルを単離した。反応直後、減圧蒸留後、及び精留後の組成物の組成は、表3の通りである。
【0124】
【表3】
(表中、「%」は、「質量%」を意味し、「-」は、「検出限界以下」を意味する。)
(略語)
MFAc:フルオロ酢酸メチル
MCAc:クロロ酢酸メチル
MeOH:メタノール
FAA:フルオロ酢酸
CAA:クロロ酢酸
【0125】
(組成の分析方法)
KF及びKCl以外の各成分の含有率は、ガスクロマトグラフィー(下記条件)により分析した。
(条件)
カラム: アジレント・テクノロジー株式会社製 J&W HP-1
(1.00μm、30m、0.32mmID)
カラムオーブン:40℃(5分間)→昇温(10℃/分)→300℃
(10分間)又は40℃(5分間)→昇温(7℃/分)→
280℃(0分間)
気化室温度: 250℃
検出器: FID(水素炎イオン化型検出器)
【0126】
KFはFイオンとして、KClはClイオンとして、イオンクロマトグラフィー(下記条件)により含有率を分析した。
(条件)
カラム: Thermo Fisher Scientific社製
Dionex IonPac AS4A-SC
4×250mm
カラムオーブン:45℃
溶離液: 4mM 炭酸ナトリウム 水溶液
溶離液流量: 0.8ml/min
検出器: 電気伝導度計