(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】自動分析装置、および自動分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
G01N35/00 F
(21)【出願番号】P 2020183765
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 峰
【審査官】目黒 大地
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-189259(JP,A)
【文献】特開2014-025812(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176295(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給タンクから液体貯留タンクに液体を供給する液体供給機構と、前記液体供給機構の駆動状態を判定する状態判定部とを備えた自動分析装置であって、
前記液体供給機構は、
一方の端部を分岐させた複数の分岐配管と、前記複数の分岐配管を他方の端部において合流させた合流配管とで構成された配管と、
前記合流配管に配置され、前記複数の分岐配管に接続された各液体供給タンクから前記合流配管に液体を供給するポンプと、
前記複数の分岐配管のそれぞれに設けられ、前記各分岐配管を自在に開閉する電磁弁と、
前記ポンプと前記電磁弁との間の
前記合流配管に設けられ前記配管内の圧力を測定する圧力計とを備え、
前記状態判定部は、
前記ポンプが停止しかつ前記複数の電磁弁の全てが閉じた基準状態と、前記ポンプが作動しかつ前記複数の電磁弁の全てが閉じた第1状態と、前記ポンプが作動しかつ前記複数の電磁弁のうちの一つが開いた第2状態と、前記ポンプが作動しかつ前記複数の電磁弁のうちの他の一つが開いた第3状態とにおいて前記圧力計で測定した各圧力に基づき、前記各状態が正常な状態であるか否かを個別に判定し、前記各状態における前記判定の結果の組み合わせに基づいて前記液体供給機構の異常要因を特定する
ものであり、
前記基準状態の圧力と前記第1状態の圧力との差分を、予め設定した閾値と比較し、前記第1状態が正常な状態であるか否かを判定し、
前記第1状態の圧力と、前記第2状態の圧力および前記第3状態の圧力との各差分を、前記各差分に対して予め設定した各閾値と比較し、前記2状態および前記第3状態が正常な状態であるか否かをそれぞれ判定する
自動分析装置。
【請求項2】
前記状態判定部は、
前記各状態において前記圧力計で測定された圧力のうちの何れかを基準圧力とし、前記基準圧力と前記各状態の圧力との差分を予め設定した閾値と比較することにより、前記各状態が正常な状態であるか否かを判定する
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記状態判定部は、
前記基準状態の圧力と、前記第1状態の圧力、前記2状態の圧力、および前記第3状態の圧力との各差分を、前記各差分に対して予め設定した各閾値と比較し、前記第1状態、前記2状態、および前記第3状態が正常な状態であるか否かをそれぞれ判定する
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記状態判定部は、
さらに前記各差分同士の比較により、前記液体供給機構の異常要因を特定する
請求項1に記載の自動分析
装置。
【請求項5】
前記状態判定部は、
前記各状態が正常な状態であるか否かの判定を複数回実施した結果において、所定回数連続して正常な状態ではないとの判定が含まれていた場合に、最後の判定の結果の組み合わせに基づいて前記液体供給機構の異常要因を特定する
請求項1
~4のうちの何れか1項に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記状態判定部は、
前記液体供給機構が駆動を開始してから所定回数の液体供給処理を実行した後に、前記の異常要因の特定を実施する
請求項1
~4のうちの何れか1項に記載の自動分析装置。
【請求項7】
一方の端部を分岐させた複数の分岐配管と、前記複数の分岐配管を他方の端部において合流させた合流配管とで構成された配管と、
前記合流配管に配置され、前記複数の分岐配管に接続された各液体供給タンクから前記合流配管に液体を供給するポンプと、
前記複数の分岐配管のそれぞれに設けられ、前記各分岐配管を自在に開閉する電磁弁と、前記ポンプと前記電磁弁との間
の前記合流配管に設けられ前記配管内の圧力を測定する圧力計とを備え、液体供給タンクから液体貯留タンクに液体を供給する液体供給機構を有する自動分析装置において実施される自動分析方法であって、
状態判定部が、
前記ポンプが停止しかつ前記複数の電磁弁の全てが閉じた基準状態と、前記ポンプが作動しかつ前記複数の電磁弁の全てが閉じた第1状態と、前記ポンプが作動しかつ前記複数の電磁弁のうちの一つが開いた第2状態と、前記ポンプが作動しかつ前記複数の電磁弁のうちの他の一つが開いた第3状態とにおいて前記圧力計で測定した各圧力に基づき、前記各状態が正常な状態であるか否かを個別に判定し、
前記各状態における前記判定の結果の組み合わせに基づいて前記液体供給機構の異常要因を特定する
際、
前記基準状態の圧力と前記第1状態の圧力との差分を、予め設定した閾値と比較し、前記第1状態が正常な状態であるか否かを判定し、
前記第1状態の圧力と、前記第2状態の圧力および前記第3状態の圧力との各差分を、前記各差分に対して予め設定した各閾値と比較し、前記2状態および前記第3状態が正常な状態であるか否かをそれぞれ判定する
自動分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置、および自動分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置として、血液や尿などの検体に含まれる生体成分を分析する生化学分析装置が知られている。このような自動分析装置は、検体、試薬、洗浄液などの液体を、所定量で供給する液体供給機構を備えている。
【0003】
このような自動分析装置に関して、下記引用文献1には次のような技術が開示されている。液体供給機構は、分注ノズルと分注用シリンジとを繋ぐ配管に設けられた圧力センサ、電磁弁、ギアポンプ、給水タンクを備え、ギアポンプと電磁弁のオンおよびオフのタイミングによって圧力センサの出力を測定することにより、電磁弁、ギアポンプ、給水タンクのいずれかの異常を検知し、異常要因の切り分けを行う。例えば、ギアポンプが駆動状態で、かつ、電磁弁が閉状態の場合において、圧力センサの圧力値が所定の閾値以上の場合には、電磁弁の動作不良であると判別する(以上、引用文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した判別方法では、異常要因を1つに特定することができず、特にポンプや電磁弁などの部品点数が増加するほど異常要因の特定が困難になる。
【0006】
そこで本発明は、液体供給機構に異常が発生した場合にその異常要因の特定が可能な自動分析装置、および自動分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明は、液体供給タンクから液体貯留タンクに液体を供給する液体供給機構と、前記液体供給機構の駆動状態を判定する状態判定部とを備えた自動分析装置であって、前記液体供給機構は、配管と、前記配管に設けられた液体用のポンプと、前記配管に設けられた電磁弁と、前記ポンプと前記電磁弁との間に設けられ前記配管内の圧力を測定する圧力計とを備え、前記状態判定部は、前記ポンプと前記電磁弁の駆動状態が異なる複数の状態において前記圧力計で測定した各圧力に基づき、前記各状態が正常な状態であるか否かを個別に判定し、前記各状態における前記判定の結果の組み合わせに基づいて前記液体供給機構の異常要因を特定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液体供給機構に異常が発生した場合にその異常要因の特定が可能な自動分析装置、および自動分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の各実施形態に係る自動分析装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の各実施形態に係る自動分析装置に設けられた液体供給機構を説明するための概略構成図である。
【
図3】第1実施形態の自動分析方法において実施される液体供給機構による薬液供給の手順を説明する図である。
【
図4】第1実施形態の自動分析方法において状態判定部が保持する情報(その1)を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態の自動分析方法において状態判定部が保持する情報(その2)を説明するための図である。
【
図6】第1実施形態の自動分析方法において各状態の判定結果を組み合わせた判定パターンと、異常要因とを説明する図(その1)である。
【
図7】第1実施形態の自動分析方法において各状態の判定結果を組み合わせた判定パターンと、異常要因とを説明する図(その2)である。
【
図8】第1実施形態の自動分析方法における異常要因の特定手順を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態の自動分析方法において実施される液体供給機構による薬液供給の手順を説明する図である。
【
図10】第2実施形態の自動分析方法において状態判定部が保持する情報(その1)を説明するための図である。
【
図11】第2実施形態の自動分析方法において状態判定部が保持する情報(その2)を説明するための図である。
【
図12】第2実施形態の自動分析方法において各状態の判定結果を組み合わせた判定パターンと、異常要因とを説明する図(その1)である。
【
図13】第2実施形態の自動分析方法において各状態の判定結果を組み合わせた判定パターンと、異常要因とを説明する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の自動分析装置および自動分析方法の各実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0011】
≪自動分析装置≫
図1は、本発明の各実施形態に係る自動分析装置を示す概略構成図であり、一例として血液や尿などの検体に含まれる生体成分を分析する生化学分析装置に本発明を適用した自動分析装置1の概略構成図である。
図1に示すように、自動分析装置1は、測定部1aと制御部1bとを備えている。
【0012】
このうち測定部1aは、例えば検体保持部2、希釈検体保持部3、第1試薬保持部4、第2試薬保持部5、および反応容器保持部6を備えている。また測定部1aは、希釈撹拌装置11、希釈洗浄装置12、第1反応撹拌装置13、第2反応撹拌装置14、多波長光度計15、および反応容器洗浄装置16を備えている。また測定部1aは、複数の分注ユニット20、洗浄ユニット30、および
図2に示す液体供給機構40と状態判定部50とを備えている。
【0013】
一方、制御部1bは、表示部61を備えたものであって、さらに以降に詳細に説明するように、ここでの図示を省略した操作部、および制御部を備えている。以下、これらの構成要素の詳細を、測定部1aおよび制御部1bの順に説明する。
【0014】
<測定部1a>
[検体保持部2]
検体保持部2は、例えばターンテーブル状のものであって、その周縁に沿って複数の検体容器P2を複数列で保持し、保持した検体容器P2を円周の双方向に搬送する構成である。この検体保持部2は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回転可能に支持されている。検体保持部2に保持される各検体容器P2は、分注液として、測定対象となる検体や精度管理用のコントロール検体が貯留されたものである。検体保持部2には、これらの各種の検体が、所定の位置に保持される構成となっている。
【0015】
なお、検体保持部2には、検体容器P2の他にも、希釈液が貯留された希釈液容器や、洗浄液が貯留された洗浄容器が、貯留容器として保持されてもよい。また以上のような検体保持部2は、保持した検体容器P2や他の容器を冷却する機能を有していてもよい。
【0016】
[希釈検体保持部3]
希釈検体保持部3は、例えばターンテーブル状のものであって、その周縁に沿って複数の希釈容器P3を保持し、保持した希釈容器P3を円周の双方向に搬送する構成である。この希釈検体保持部3は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回転可能に支持されている。
【0017】
希釈検体保持部3に保持される希釈容器P3は、検体保持部2に配置された検体容器P2から吸引されて希釈された検体(以下、「希釈検体」という)が分注されるか、または検体容器P2から吸引された検体がそのまま分注され、分注された希釈検体または検体を貯留するものである。なお、以降の説明の希釈検体は、検体も含む。なお、自動分析装置1は、希釈検体保持部3を備えていないものであってもよい。
【0018】
[第1試薬保持部4および第2試薬保持部5]
第1試薬保持部4は、例えばターンテーブル状のものであって、その周縁に沿って複数の第1試薬容器P4を保持する。また、第2試薬保持部5は、例えばターンテーブル状のものであって、その周縁に沿って複数の第2試薬容器P5を保持する。そして、それぞれ保持した第1試薬容器P4および第2試薬容器P5を円周の双方向に搬送する構成である。これらの第1試薬保持部4および第2試薬保持部5は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回転可能に支持されている。
【0019】
[反応容器保持部6]
反応容器保持部6は、希釈検体保持部3と、第1試薬保持部4と、第2試薬保持部5との間に配置される。この反応容器保持部6は、例えばターンテーブル状のものであって、その周縁に沿って複数の反応容器P6を保持し、保持した反応容器P6を円周の双方向に搬送する構成である。この反応容器保持部6は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回転可能に支持されている。
【0020】
反応容器保持部6に保持される反応容器P6は、希釈検体保持部3の希釈容器P3から採取した希釈検体、第1試薬保持部4の第1試薬容器P4から採取した第1試薬、さらに第2試薬保持部5の第2試薬容器P5から採取した第2試薬が、それぞれ所定量で分注されるものである。そして、この反応容器P6内において、希釈検体と第1試薬および第2試薬とが撹拌されてこれらの反応が行われるか、または希釈検体と第1試薬とが撹拌されてこれらの反応が行われる。
【0021】
以上のような反応容器保持部6は、不図示の恒温槽により、反応容器P6の温度を常時一定に保持するように構成されている。なお、自動分析装置1が希釈検体保持部3を備えていないものである場合、反応容器保持部6に保持される反応容器P6には、検体保持部2の検体容器P2から採取した検体が分注される。
【0022】
[希釈撹拌装置11]
希釈撹拌装置11は、希釈検体保持部3の周囲に配置されている。希釈撹拌装置11は、撹拌機構、および撹拌機構を駆動するための駆動機構を有し、不図示の撹拌子を希釈検体保持部3に保持された希釈容器P3内に挿入し、検体と希釈液を撹拌する。
【0023】
[希釈洗浄装置12]
希釈洗浄装置12は、希釈検体保持部3の周囲に配置されている。希釈洗浄装置12は、以降に説明する希釈検体分注ユニット20bによって希釈検体が吸引された後の希釈容器P3を洗浄する装置である。
【0024】
[第1反応撹拌装置13および第2反応撹拌装置14]
第1反応撹拌装置13および第2反応撹拌装置14は、反応容器保持部6の周囲に配置されている。第1反応撹拌装置13および第2反応撹拌装置14は、反応容器保持部6に保持された反応容器P6内において、希釈検体と、第1試薬または第2試薬とを撹拌する。このような第1反応撹拌装置13および第2反応撹拌装置14は、撹拌機構、および撹拌機構を駆動するための駆動機構を有し、不図示の撹拌子を反応容器保持部6の所定位置に保持された反応容器P6内に挿入し、希釈検体(または検体)と第1試薬または第2試薬とを撹拌する。これにより、希釈検体と、第1試薬と、第2試薬との反応を進める。
【0025】
[多波長光度計15]
多波長光度計15は、計測部であり、反応容器保持部6の周囲において反応容器保持部6の外壁と対向するように配置されている。多波長光度計15は、反応容器P6内において第1試薬および第2試薬と反応した希釈検体に対して光学的測定を行ない、検体中の様々な成分の量を吸光度として出力し、希釈検体の反応状態を検出するものである。
【0026】
[反応容器洗浄装置16]
反応容器洗浄装置16は、反応容器保持部6の周囲に配置されている。反応容器洗浄装置16は、検査が終了した反応容器P6内を洗浄する装置である。
【0027】
[分注ユニット20]
分注ユニット20は、ここでは例えば検体分注ユニット20a、希釈検体分注ユニット20b、第1試薬分注ユニット20c、および第2試薬分注ユニット20dの4つである。各分注ユニット20は、それぞれが分注プローブ21と、ここでの図示を省略した駆動機構とを備え、予め設定された測定プログラムにしたがって以下のように動作する。
【0028】
-検体分注ユニット20a-
検体分注ユニット20aは、検体保持部2と希釈検体保持部3の周囲に配置されている。検体分注ユニット20aは、検体保持部2に保持された検体容器P2内から所定量の検体を分注プローブ21内に吸引し、分注プローブ21内に吸引した検体と分注プローブ21内のシステム水とを、希釈検体保持部3の希釈容器P3内に吐出する。なお、自動分析装置1が希釈検体保持部3を備えていないものである場合、検体分注ユニット20aは、分注プローブ21内に吸引した検体とシステム水とを、反応容器保持部6の反応容器P6内に吐出する。
【0029】
-希釈検体分注ユニット20b-
希釈検体分注ユニット20bは、希釈検体保持部3と反応容器保持部6の間に配置されている。希釈検体分注ユニット20bは、希釈検体保持部3の希釈容器P3内から所定量の希釈検体を分注プローブ21内に吸引し、分注プローブ21内に吸引した希釈検体を、反応容器保持部6の反応容器P6内に反応容器P6内に吐出する。なお、自動分析装置1が希釈検体保持部3を備えていないものである場合、その自動分析装置1は希釈検体分注ユニット20bを備えている必要はない。
【0030】
-第1試薬分注ユニット20c-
第1試薬分注ユニット20cは、反応容器保持部6と第1試薬保持部4の間に配置されている。第1試薬分注ユニット20cは、第1試薬保持部4の第1試薬容器P4内から、所定量の第1試薬を分注プローブ21内に吸引し、吸引した第1試薬を反応容器保持部6の反応容器P6内に吐出する。
【0031】
-第2試薬分注ユニット20d-
第2試薬分注ユニット20dは、反応容器保持部6と第2試薬保持部5の間に配置されている。第2試薬分注ユニット20dは、第2試薬保持部5の第2試薬容器P5内から、所定量の第2試薬を分注プローブ21内に吸引し、吸引した第2試薬を反応容器保持部6の反応容器P6内に吐出する。
【0032】
[洗浄ユニット30]
洗浄ユニット30は、分注ユニット20における分注プローブ21の先端を洗浄するためのものであって、各分注プローブ21が移動する軌道上に配置されている。この洗浄ユニット30は、洗浄槽と、洗浄水供給管、洗浄液湧き出しポートを備えている。洗浄槽は、排液機能を備えたもので、各分注プローブ21が移動する軌道上において、分注プローブ21の下部に配置されている。また、洗浄水供給管は、洗浄槽の上部に配置された分注プローブ21の先端に対して、洗浄水貯留タンクから供給される洗浄液をシャワー状に供給することにより、分注プローブ21の外壁を洗浄するものである。また、洗浄液湧き出しポートは、各分注プローブ21が移動する軌道上において、分注プローブ21の下部に配置され、後述する液体貯留タンクに貯留された洗浄液を湧き出させる。分注ユニット20は、洗浄液湧き出しポートから湧き出した洗浄液を分注プローブ21内に吸引することにより、分注プローブ21の内壁を洗浄する。
【0033】
[液体供給機構40]
図2は、本発明の各実施形態に係る自動分析装置に設けられた液体供給機構40を説明するための概略構成図である。液体供給機構40は、液体供給タンク100内の液体を、別の液体貯留タンク30aに供給するためのものである。
【0034】
本実施形態において、液体供給機構40は、各洗浄ユニット30に対応して設けられたものであって、洗浄薬液タンク100a内の洗浄薬液、および希釈液タンク100b内の希釈液を、液体貯留タンク30aに供給する機構として用いられていることとする。なお、各液体貯留タンク30aに供給された洗浄液は、洗浄ユニット30の稼働により、洗浄水供給管を介して洗浄槽に供給される構成となっている。
【0035】
このような液体供給機構40は、各液体供給タンク100と液体貯留タンク30aとの間に配置される配管41と、配管41に設けられたポンプ42、電磁弁43、圧力計44、および駆動制御部45を備えている。これらは次のようである。
【0036】
-配管41-
配管41は、一方の端部を複数に分岐させた第1分岐配管41aおよび第2分岐配管41bを有し、第1分岐配管41aの先端において洗浄薬液タンク100aに接続され、第2分岐配管41bの先端において希釈液タンク100bに接続される。また配管41は、他方の端部において、第1分岐配管41aと第2分岐配管41bとを合流させた合流配管41cとして構成され、合流配管41cの先端において液体貯留タンク30aに接続される。
【0037】
-ポンプ42-
ポンプ42は、配管41における合流配管41cに設けられて、各液体供給タンク100内の液体を、液体貯留タンク30aに供給する。このようなポンプ42は、第1分岐配管41aに接続された洗浄薬液タンク100aから、合流配管41cを介して液体貯留タンク30aに洗浄薬液を供給する。またポンプ42は、第2分岐配管41bに接続された希釈液タンク100bから、合流配管41cを介して液体貯留タンク30aに希釈液を供給する。
【0038】
-電磁弁43-
電磁弁43は、配管41における第1分岐配管41aおよび第2分岐配管41bのそれぞれに配置された第1電磁弁43aと第2電磁弁43bとであり、第1分岐配管41aおよび第2分岐配管41bを自在に開閉する。すなわち第1電磁弁43aは第1分岐配管41aを自在に開閉し、第2電磁弁43bは第2分岐配管41bを自在に開閉する。
【0039】
-圧力計44-
圧力計44は、配管41における合流配管41cにおいて、電磁弁43とポンプ42との間に設けられ、配管41内の圧力を計測する。
【0040】
-駆動制御部45-
駆動制御部45は、ポンプ42、および電磁弁43に接続され、次に説明する制御部1bからの指示に基づいた所定の手順でポンプ42および電磁弁43を動作させる。このような駆動制御部45は、マイクロコンピューターなどの計算機によって構成されている。計算機は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶部を備え、記憶部に保存されたプログラムを実行することにより、ポンプ42および電磁弁43の動作を制御し、液体供給機構40による液体供給を実施する。このような駆動制御部45による各部の動作は、以降の自動分析方法において詳細に説明する。
【0041】
[状態判定部50]
状態判定部50は、液体供給機構40の圧力計44と駆動制御部45とに接続され、圧力計44で測定された配管41内の圧力に基づいて、液体供給機構40の異常を検知し、その異常要因を特定する。このような状態判定部50は、上述したマイクロコンピューターなどの計算機によって構成され、記憶部に保存されたプログラムを実行することにより、異常の検知と、その異常要因を特定するための処理を実施する。また状態判定部50は、異常要因を特定するために必要な情報を保持する。このような状態判定部50が保持する情報、および異常要因の特定は、以降の自動分析方法において詳細に説明する。なお、この状態判定部50は、次に説明する制御部1bの構成要素であってもよい。
【0042】
<制御部1b>
図1に戻り、制御部1bは、上述した測定部1aを構成する各構成要素の駆動制御部、および多波長光度計15に接続され、測定部1aの各部の駆動を制御するとともに、自動分析を実施する。このような制御部1bは、上述したマイクロコンピューターなどの計算機によって構成され、記憶部に保存されたプログラムを実行することにより各制御を実施する。また制御部1bは、表示部61を備え、多波長光度計15での測定値に基づく分析結果の表示や、液体供給機構40の状態判定部50から送信された判定結果を表示する。なお、液体供給機構40の状態判定部50は、制御部1bの計算機に組み込まれたものであってもよい。
【0043】
≪第1実施形態の自動分析方法≫
次に、上述した自動分析装置1による第1実施形態の自動分析方法として、液体供給機構40による液体供給の手順と、状態判定部50による異常要因の特定の手順とを、必要に応じた各図を参照して説明する。
【0044】
<液体供給について>
図3は、第1実施形態の自動分析方法において実施される液体供給機構40による液体供給の手順を説明する図である。この
図3は、
図2を用いて説明した液体供給機構40の駆動制御部45によって実施されるポンプ42および電磁弁43の動作手順とともに、各動作手順の状態において圧力計44で測定される配管41内の圧力を示している。
【0045】
液体供給機構40による液体供給において、先ず駆動制御部45は、ポンプ42をオフ、第1電磁弁43aおよび第2電磁弁43bをオフとして閉じた基準状態S0としておく。この基準状態S0において圧力計44で測定される配管41内の圧力[P0]は、ほぼ大気圧となる。ポンプ42は、オフの状態で徐々にリークするためである。
【0046】
次に、駆動制御部45は、ポンプ42のみをオンとし、第1電磁弁43aおよび第2電磁弁43bをオフとして閉じた第1状態S1とする。この第1状態S1において圧力計44で測定される配管41内の圧力[P]は、基準状態S0においての圧力[P0]よりも低くなる。
【0047】
次に、駆動制御部45は、ポンプ42をオンに保ち、第1電磁弁43aをオンとして開き、第2電磁弁43bをオフとして閉じた第2状態S2とする。駆動制御部45は、この第2状態S2において第1電磁弁43aをオンとして開くことにより、第1電磁弁43aが設けられた第1分岐配管41aを開通させ、第1分岐配管41aを介して洗浄薬液タンク100a内の洗浄薬液を、液体貯留タンク30aに供給する。この第2状態S2において圧力計44で測定される配管41内の圧力[Pa]は、基準状態S0においての圧力[P0]よりも低く、第1状態S1においての圧力[P]より大きくなる。
【0048】
次に、駆動制御部45は、ポンプ42をオンに保ち、第1電磁弁43aをオフとして閉じ、第2電磁弁43bをオンとして開いた第3状態S3とする。駆動制御部45は、この第3状態S3において、第2電磁弁43bを開くことにより、第2電磁弁43bが設けられた第2分岐配管41bを開通させ、第2分岐配管41bを介して希釈液タンク100b内の希釈液を、液体貯留タンク30aに供給する。この第3状態S3において圧力計44で測定される配管41内の圧力[Pb]は、第2状態S2の圧力[Pa]と同程度であり、基準状態S0においての圧力[P0]よりも低く、第1状態S1においての圧力[P]より大きくなる。その後、駆動制御部45は、基準状態S0に戻り、必要時応じて第1状態S1~第3状態S3を繰り返すことにより、液体貯留タンク30aに洗浄薬液および希釈液を順に供給し、液体貯留タンク30a内において洗浄液を調製する。洗浄液を調製した後は、基準状態S0に戻る。
【0049】
<異常要因の特定について>
次に、液体供給機構40の状態判定部50によって実施される液体供給機構40の異常要因の特定について説明する。ここでは先ず、異常要因の特定のために、状態判定部50が保持する保持情報(その1)および保持情報(その2)を説明する。
【0050】
図4は、第1実施形態の自動分析方法において状態判定部が保持する情報(その1)を説明するための図である。状態判定部50は、保持情報(その1)として、液体供給機構40の駆動が異常であるか否かを判定するための判定値の算出式と、判定値の正常範囲とを保持する。
【0051】
ここで判定値は、
図3に示した第1状態S1、第2状態S2、および第3状態S3において、配管41内の圧力が正常であるか否かを判定するための値である。このような判定値は、
図3に示した第1状態S1について判定するための第1判定値Jx1、第2状態S2について判定するための第2判定値Jx2、および第3状態S3について判定するための第3判定値Jx3である。これらの判定値は、基準状態S0においての圧力[P0]を基準圧力とし、この基準圧力と各状態で測定された圧力との差分である。
【0052】
状態判定部50が保持情報(その1)として保持する判定値の算出式は、基準状態S0においての圧力[P0]と、第1状態S1~第3状態S3の各状態において測定された圧力[P]、[Pa]、[Pb]との差分式である。すなわち状態判定部50は、判定値の算出式として、第1判定値Jx1=[P]-[P0]、第2判定値Jx2=[Pa]-[P0]、および第3判定値Jx3=[Pb]-[P0]を保持する。
【0053】
また状態判定部50が保持情報(その1)として保持する判定値の正常範囲は、液体供給機構40が正常に稼働していると判断される判定値Jx1、Jx2、Jx1の範囲である。判定値の正常範囲は、予め液体供給機構40が正常に稼働している場合の各状態において測定された圧力値に対し、許容範囲のズレ量を考慮した各閾値Tx1~Tx3によって示される範囲である。すなわち状態判定部50は、判定値の正常範囲として、[第1判定値Jx1<閾値Tx1]、[第2判定値Jx2>閾値Tx2]、および[第3判定値Jx3>閾値Tx3]を保持する。
【0054】
図5は、第1実施形態の自動分析方法において状態判定部が保持する情報(その2)を説明するための図である。状態判定部50は、保持情報(その2)として、第1判定値Jx1~第3判定値Jx3の判定結果を組み合わせた判定パターン(1)~(8)と、各判定パターン(1)~(8)に対して関連付けられた異常要因とを保持する。なお、判定パターン(1)~(8)は、第1判定値Jx1、第2判定値Jx2、第3判定値Jx3のそれぞれが、正常と判定された場合と異常と判定された場合との2つの判定結果を組み合わせた8通りである。
【0055】
図6および
図7は、第1実施形態の自動分析方法において各状態の判定結果を組み合わせた判定パターン(1)~(5)と、異常要因とを説明する図(その1)および(その2)である。これらの
図6、
図7および先の
図5に基づいて、各判定パターン(1)~(5)に対して関連付けられた異常要因を説明する。
【0056】
判定パターン(1)は、第1判定値Jx1…正常(Jx1<Tx1)、第2判定値Jx2…正常(Jx2>Tx2)、第3判定値Jx3…正常(Jx3>Tx3)の組み合わせであって全てが正常である。このため、液体供給機構40は正常に稼働していると判断され、異常要因の関連付けはない。
【0057】
判定パターン(2)は、第1判定値Jx1…正常(Jx1<Tx1)、第2判定値Jx2…正常(Jx2>Tx2)、第3判定値Jx3…異常(Jx3≦Tx3)の組み合わせである。異常と判定された第3判定値Jx3は、第3状態S3の判定値である。この第3状態S3は、第2電磁弁43bをオンとする動作がなされるため、第3判定値Jx3のみが異常と判定された判定パターン(2)には、「第2電磁弁43bが開かない不良」が、異常要因として関連付けされる。
【0058】
判定パターン(3)は、第1判定値Jx1…正常(Jx1<Tx1)、第2判定値Jx2…異常(Jx2≦Tx2)、第3判定値Jx3…正常(Jx3>Tx3)の組み合わせである。異常と判定された第2判定値Jx2は、第2状態S2の判定値である。この第2状態S2は、第1電磁弁43aをオンとする動作がなされるため、第2判定値Jx2のみが異常と判定された判定パターン(3)には、「第1電磁弁43aが開かない不良」が、異常要因として関連付けされる。
【0059】
判定パターン(4)は、第1判定値Jx1…正常(Jx1<Tx1)、第2判定値Jx2…異常(Jx2≦Tx2)、第3判定値Jx3…異常(Jx3≦Tx3)の組み合わせである。異常と判定された第2判定値Jx2は第2状態S2の判定値であり、第3判定値Jx3は第3状態S3の判定値である。第2状態S2および第3状態S3は、第1電磁弁43aまたは第2電磁弁43bを交互にオンとする動作がなされる。このため、第2判定値Jx2および第3判定値Jx3が異常と判定された判定パターン(4)には、「複数部品の故障」または、一例として「第1分岐配管41aおよび第2分岐配管41bの合流部から圧力計44までの配管41の不良」が異常要因として関連付けされる。
【0060】
判定パターン(5)は、第1判定値Jx1…異常(Jx1≧Tx1)、第2判定値Jx2…正常(Jx2>Tx2)、第3判定値Jx3…正常(Jx3>Tx3)の組み合わせである。この場合、判定パターン(5)は、さらに判定パターン(5)-1~(5)-4に分類される。
【0061】
判定パターン(5)-1は、第1判定値Jx1=第2判定値Jx2=第3判定値Jx3である。この場合、「ポンプ42が動作しない、または圧力計44の故障」が異常要因として関連付けされる。
【0062】
判定パターン(5)-2は、第1判定値Jx1<第2判定値Jx2、第3判定値Jx3である。この場合、「ポンプ42が停止しない」が異常要因として関連付けされる。
【0063】
判定パターン(5)-3は、第1判定値Jx1、第2判定値Jx2<第3判定値Jx3である。この場合、「第1電磁弁43aが閉じない」が異常要因として関連付けされる。
【0064】
判定パターン(5)-4は、第1判定値Jx1、第3判定値Jx3<第2判定値Jx2である。この場合、「第2電磁弁43bが閉じない」が異常要因として関連付けされる。
【0065】
判定パターン(6)~(8)についての
図6、
図7での図示は省略したが、これらは次のようである。
【0066】
判定パターン(6)は、第1判定値Jx1…異常(Jx1≧Tx1)、第2判定値Jx2…正常(Jx2>Tx2)、第3判定値Jx3…異常(Jx3≦Tx3)の組み合わせである。この判定パターン(6)は、単一部品の不具合で生じることはなく、「複数部品の故障」が異常要因として関連付けされる。このような判定パターン(6)が生じる要因は、一例として、第1電磁弁43aが閉じない故障により、第1判定値Jx1が異常となり、その後第2判定値Jx2が正常となり、さらに第2電磁弁43bが開かない故障により第3判定値Jx3が異常となる。状態判定部50は、判定パターン(6)に対して、このような詳細情報を関連付けして保持してもよい。
【0067】
判定パターン(7)は、第1判定値Jx1…異常(Jx1≧Tx1)、第2判定値Jx2…異常(Jx2≦Tx2)、第3判定値Jx3…正常(Jx3>Tx3)の組み合わせである。この判定パターン(7)は、単一部品の不具合で生じることはなく、「複数部品の故障」が異常要因として関連付けされる。このような判定パターン(7)が生じる要因は、一例として、先ず圧力計44からポンプ42間での配管41が詰まって、第1判定値Jx1が異常となり、その後詰まりが解消されたが、第1電磁弁43aが開かない故障により第2判定値Jx2が異常となり、その後第2電磁弁43bが開いて第3判定値Jx3が正常となることによる。状態判定部50は、判定パターン(7)に対して、このような詳細情報を関連付けして保持してもよい。
【0068】
判定パターン(8)は、第1判定値Jx1…異常(Jx1≧Tx1)、第2判定値Jx2…異常(Jx2≦Tx2)、第3判定値Jx3…異常(Jx3≦Tx3)の組み合わせである。この判定パターン(8)は、単一部品の不具合で生じることはなく、「複数部品の不具合」が異常要因として関連付けされる。このような判定パターン(8)が生じる要因は、一例として、先ず圧力計44からポンプ42間での配管41が詰まって第1判定値Jx1が異常となり、その後詰まりは解消されたが第1電磁弁43aが開かない異常により第2判定値Jx2が異常となり、その後第2電磁弁43bが開かない異常により第3判定値Jx3が異常となることによる。状態判定部50は、判定パターン(8)に対して、このような詳細情報を関連付けして保持してもよい。
【0069】
図8は、第1実施形態の自動分析方法における異常要因の特定手順を示すフローチャートであって、液体供給機構40の状態判定部50が、上述した動作手順で動作する液体供給機構40の異常の検出と、検出した異常要因を特定する手順を示す図である。この図に示す手順は、状態判定部50を構成するCPUが、ROMやRAMに保存されたプログラムを実行することによって実現される。以下、
図8のフローにしたがって、先の
図1~
図7を参照し、異常要因の特定の手順を説明する。
【0070】
[ステップS101]
ステップS101において、状態判定部50は、液体供給機構40による液体供給処理が開始されたか否かの判断を実施する。この判断は、駆動制御部45からの情報によって判断される。なお、液体供給機構40による液体供給処理は、例えば液体貯留タンク30aに設けた液量計により、液体貯留タンク30a内の液体が所定量よりも少なくなったことが検知されたことで開始される。
【0071】
状態判定部50は、液体供給処理が開始された(YES)と判断されるまで判断を繰り返し、開始された(YES)と判断した場合に、次のステップS102に進む。
【0072】
[ステップS102]
ステップS102において、状態判定部50は、圧力計44で測定した配管41内の圧力を取得する。この際、状態判定部50は、駆動制御部45からの各部の駆動の情報に基づいて、
図3を用いて説明した基準状態S0、第1状態S1、第2状態S2、および第3状態S3の各状態において、配管41内の圧力が安定したと考えられるタイミングにおいて圧力計44で測定された各圧力[P0]、[P]、[Pa]、[Pb]を取得する。
【0073】
[ステップS103]
ステップS103において、状態判定部50は、ステップS102で取得した各圧力[P0]、[P]、[Pa]、[Pb]と、状態判定部50が保持する保持情報(その1)の算出式(
図4参照)と基づいて、第1判定値Jx1、第2判定値Jx2、および第3判定値Jx3を算出する。
【0074】
[ステップS104]
ステップS104において、状態判定部50は、第1状態S1、第2状態S2、および第3状態S3の各状態が正常な状態であるか否かの判定処理を行う。この場合、状態判定部50は、ステップS103で算出した第1判定値Jx1、第2判定値Jx2、および第3判定値Jx3と、状態判定部50が保持する保持情報(その1)における判定値の正常範囲を示す閾値Tx1、Tx2、Tx3(
図4参照)とに基づいて、第1判定値Jx1、第2判定値Jx2、および第3判定値Jx3のそれぞれについて、正常値であるか異常値であるかを判定する判定処理を実施する。このステップS104において、状態判定部50は、例えば第1判定値Jx1…正常、第2判定値Jx2…正常、第3判定値Jx…異常との判定結果を得る。
【0075】
[ステップS105]
ステップS105において、状態判定部50は、ステップS104で得られた判定結果が、全て正常であるか否かの判断を実施する。状態判定部50は、全てが正常である(YES)と判断した場合にはステップS106に進み、1つでも異常と判断された場合には、全てが正常ではない(NO)と判断してステップS108に進む。
【0076】
[ステップS106]
ステップS106において、状態判定部50は、異常判定回数[n]=0回とする処理を実施し、次のステップS107に進む。
【0077】
[ステップS107]
ステップS107において、状態判定部50は、処理を終了させるか否かの判断を実施する。状態判定部50は、例えば自動分析装置1の電源がオフとなった場合、または駆動制御部45から処理の停止が指示された場合に、終了する(YES)と判断し、処理を終了させる。それ以外の場合には、ステップS101に戻る。
【0078】
[ステップS108]
一方、ステップS108において、状態判定部50は、異常判定回数[n]=[n]+1回とする処理を実施し、次のステップS109に進む。
【0079】
[ステップS109]
ステップS109において、状態判定部50は、異常判定回数[n]が、予め設定された[N]回(例えば5回)以上であるか否かの判断を実施し、[n]≧[N]である(YES)と判断された場合に、次のステップS110に進む。一方、[n]≧[N]ではないと判断した場合には、ステップS107に進む。
【0080】
ここで、予め設定される[N]回は、一例として、自動分析装置1の稼働開始の後に、液体供給機構40の動作が安定するまでの液体供給処理の回数であることとする。これにより、液体供給処理をN回実施するまでの液体供給機構40の動作が不安定な期間は、判定パターンの抽出による異常要因の特定を実施しない構成とすることができる。
【0081】
[ステップS110]
ステップS110において、状態判定部50は、ステップS104の判定処理で得られた第1判定値Jx1、第2判定値Jx2、および第3判定値Jx3の判定結果と、状態判定部50が保持する保持情報(その2)(
図5参照)に基づいて、判定パターンを抽出する。例えば、ステップS104において、第1判定値Jx1…正常、第2判定値Jx2…正常、第3判定値Jx…異常との判定結果が得られている場合、判定パターン(2)が抽出される。
【0082】
[ステップS111]
ステップS111において、状態判定部50は、状態判定部50が保持する保持情報(その2)(
図5参照)に基づいて、ステップS110で抽出した判定パターン(2)に関連付けされた異常要因の報知を、制御部1b(
図1参照)に指示し、処理を終了させる。これにより、制御部1bは、液体供給機構40の異常要因を、例えば表示部61に表示させることで報知することができる。
【0083】
<第1実施形態の効果>
以上説明した第1実施形態は、第1状態S1、第2状態S2、および第3状態S3についての個別の判定結果の組み合わせに基づいて液体供給機構40の異常要因を特定する構成である。このため、各状態での個別の判定結果のみに基づいて異常要因を特定する場合には、特定しきれていない異常要因であっても、異常要因を1つに特定することが可能である。また、このような構成とすることにより、部品点数の増加した場合であっても、判定結果の組み合わせが増加するため、異常要因の切り分けによる異常要因の特定が可能である。
【0084】
≪第2実施形態の自動分析方法≫
次に、上述した自動分析装置1による第2実施形態の自動分析方法を説明する。第2実施形態の自動分析方法が、第1実施形態の自動分析方法と異なるところは、液体供給機構40における異常要因を特定するための判定値の算出式と、判定パターン(1)~(8)と異常要因との関連付けとにあり、他の構成は同様である。このため、以下においては、第2実施形態の自動分析方法が第1実施形態の自動分析方法と異なるところを説明し、第1実施形態の自動分析方法との重複する説明は省略する。
【0085】
<液体供給について>
図9は、第2実施形態の自動分析方法において実施される液体供給機構40による液体供給の手順を説明する図である。この
図9は、
図2を用いて説明した液体供給機構40の駆動制御部45によって実施されるポンプ42および電磁弁43の動作手順とともに、各動作手順の状態において圧力計44で測定される配管41内の圧力を示している。
図9に示すように、駆動制御部45によるポンプ42および電磁弁43の動作手順は、第1実施形態において
図3を用いて説明した手順と同様である。
【0086】
<異常要因の特定について>
次に、液体供給機構40の状態判定部50によって実施される液体供給機構40の異常要因の特定について説明する。ここでは先ず、異常要因の特定のために、状態判定部50が保持する保持情報(その1)および保持情報(その2)を説明する。
【0087】
図10は、第2実施形態の自動分析方法において状態判定部が保持する情報(その1)を説明するための図である。状態判定部50は、保持情報(その1)として、液体供給機構40の駆動が異常であるか否かを判定するための判定値の算出式と、判定値の正常範囲とを保持する。
【0088】
ここで判定値は、
図9に示した第1状態S1、第2状態S2、および第3状態S3において、配管41内の圧力が正常であるか否かを判定するための値である。このような判定値は、
図9に示した第1状態S1について判定するための第1判定値Jy1、第2状態S2について判定するための第2判定値Jy2、および第3状態S3について判定するための第3判定値Jy3である。これらの判定値は、基準状態S0においての圧力[P0]、および第1状態S1においての圧力[P]を基準圧力とし、これらの基準圧力と各状態で測定された圧力との差分である。
【0089】
状態判定部50が保持情報(その1)として保持する判定値の算出式は、基準状態S0においての圧力[P0]と、第1状態S1においての圧力[P]との差分式、および第1状態S1においての圧力[P]と第2状態S2、第3状態S3の各状態において測定された圧力[Pa]、[Pb]との差分式である。すなわち状態判定部50は、判定値の算出式として、第1判定値Jy1=[P]-[P0]、第2判定値Jy2=[Pa]-[P]、および第3判定値Jy3=[Pb]-[P]を保持する。
【0090】
また状態判定部50が保持情報(その1)として保持する判定値の正常範囲は、液体供給機構40が正常に稼働していると判断される判定値Jy1、Jy2、Jy3の範囲である。判定値の正常範囲は、予め液体供給機構40が正常に稼働している場合の各状態において測定された圧力値に対し、許容範囲のズレ量を考慮した各閾値Ty1~Ty3によって示される範囲である。すなわち状態判定部50は、判定値の正常範囲として、[第1判定値Jy1<閾値Ty1]、[第2判定値Jy2>閾値Ty2]、および[第3判定値Jy3>閾値Ty3]を保持する。
【0091】
図11は、第2実施形態の自動分析方法において状態判定部が保持する情報(その2)を説明するための図である。状態判定部50は、保持情報(その2)として、第1判定値Jy1~第3判定値Jy3の判定結果を組み合わせ判定パターン(1)~(8)と、各判定パターン(1)~(8)に対して関連付けられた異常要因とを保持する。なお、判定パターン(1)~(8)は、第1判定値Jy1、第2判定値Jy2、第3判定値Jy3のそれぞれが、正常と判定された場合と、異常と判定された場合との2つの判定結果を組み合わせた8通りである。
【0092】
図12および
図13は、第2実施形態の自動分析方法において各状態の判定結果を組み合わせた判定パターン(1)~(8)と、異常要因とを説明する図(その1)および(その2)である。これらの
図12、
図13および先の
図11に基づいて、各判定パターン(1)~(8)に対して関連付けられた異常要因を説明する。
【0093】
判定パターン(1)は、第1判定値Jy1…正常(Jy1<Ty1)、第2判定値Jy2…正常(Jy2>Ty2)、第3判定値Jy3…正常(Jy3>Ty3)の組み合わせであって全てが正常である。このため、液体供給機構40は正常に稼働していると判断され、異常要因の関連付けはない。
【0094】
判定パターン(2)は、第1判定値Jy1…正常(Jy1<Ty1)、第2判定値Jy2…正常(Jy2>Ty2)、第3判定値Jy3…異常(Jy3≦Ty3)の組み合わせである。異常と判定された第3判定値Jy3は、第3状態S3の判定値である。この第3状態S3は、第2電磁弁43bをオンとする動作がなされるため、第3判定値Jy3のみが異常と判定された判定パターン(2)には、「第2電磁弁43bが開かない不良」が、異常要因として関連付けされる。
【0095】
判定パターン(3)は、第1判定値Jy1…正常(Jy1<Ty1)、第2判定値Jy2…異常(Jy2≦Ty2)、第3判定値Jy3…正常(Jy3>Ty3)の組み合わせである。異常と判定された第2判定値Jy2は、第2状態S2の判定値である。この第2状態S2は、第1電磁弁43aをオンとする動作がなされるため、第2判定値Jy2のみが異常と判定された判定パターン(3)には、「第1電磁弁43aが開かない不良」が、異常要因として関連付けされる。
【0096】
判定パターン(4)は、第1判定値Jy1…正常(Jy1<Ty1)、第2判定値Jy2…異常(Jy2≦Ty2)、第3判定値Jy3…異常(Jy3≦Ty3)の組み合わせである。異常と判定された第2判定値Jy2は第2状態S2の判定値であり、第3判定値Jy3は第3状態S3の判定値である。第2状態S2および第3状態S3は、第1電磁弁43aまたは第2電磁弁43bを交互にオンとする動作がなされる。このため、第2判定値Jy2および第3判定値Jy3が異常と判定された判定パターン(4)には、「複数部の故障」または、一例として「第1分岐配管41aおよび第2分岐配管41bの合流部から圧力計44までの配管41の不良」が異常要因として関連付けされる。
【0097】
判定パターン(5)は、第1判定値Jy1…異常(Jy1≧Ty1)、第2判定値Jy2…正常(Jy2>Ty2)、第3判定値Jy3…正常(Jy3>Ty3)の組み合わせである。異常と判定された第1判定値Jy1は第1状態S1の判定値である。第1状態S1は、ポンプ42をオンとする動作がなされる。このため、第1判定値Jy1が異常と判定された判定パターン(5)には、「ポンプ停止不良」が異常要因として関連付けされる。
【0098】
判定パターン(6)、(7)についての
図12、
図13での図示は省略したが、これらは次のようである。
【0099】
判定パターン(6)は、第1判定値Jy1…異常(Jy1≧Ty1)、第2判定値Jy2…正常(Jy2>Ty2)、第3判定値Jy3…異常(Jy3≦Ty3)の組み合わせである。この判定パターン(6)は、単一部品の不具合で生じることはなく、「複数部品の故障」が異常要因として関連付けされる。このような判定パターン(6)が生じる要因は、一例として、ポンプ42が停止しない故障により第1判定値Jy1が異常となり、その後第1電磁弁43aが開いて第2判定値Jy2が正常となり、さらに第2電磁弁43bが開かない故障により第3判定値Jy3が異常となる。状態判定部50は、判定パターン(6)に対して、このような詳細情報を関連付けして保持してもよい。
【0100】
判定パターン(7)は、第1判定値Jy1…異常(Jy1≧Ty1)、第2判定値Jy2…異常(Jy2≦Ty2)、第3判定値Jy3…正常(Jy3>Ty3)の組み合わせである。この判定パターン(7)は、単一部品の不具合で生じることはなく、「複数部品の故障」が異常要因として関連付けされる。このような判定パターン(7)が生じる要因は、一例として、先ずポンプ42が停止しない故障により第1判定値Jy1が異常となり、その後第1電磁弁43aを開かない異常により第2判定値Jy2が異常となり、その後第2電磁弁43bが開いて第3判定値Jy3が正常となることによる。状態判定部50は、判定パターン(7)に対して、このような詳細情報を関連付けして保持してもよい。
【0101】
判定パターン(8)は、第1判定値Jy1…異常(Jy1≧Ty1)、第2判定値Jy2…異常(Jy2≦Ty2)、第3判定値Jy3…異常(Jy3≦Ty3)の組み合わせである。この場合、判定パターン(8)は、さらに判定パターン(8)-1~(8)-3に分類される。
【0102】
判定パターン(8)-1は、第1判定値Jy1=第2判定値Jy2=第3判定値Jy3である。この場合、「ポンプ42が動作しない、または圧力計44の故障」が異常要因として関連付けされる。
【0103】
判定パターン(8)-2は、第1判定値Jy1、第2判定値Jy2<第3判定値Jy3である。この場合、「第2電磁弁が閉じない故障」が異常要因として関連付けされる。
【0104】
判定パターン(8)-3は、第1判定値Jy1、第3判定値Jy3<第2判定値Jy2である。この場合、「第1電磁弁が閉じない故障」が異常要因として関連付けされる。
【0105】
なお、第2実施形態において、液体供給機構40の状態判定部50によって実施される液体供給機構40の異常の検出と、検出した異常要因を特定する手順は、第1実施形態において
図8を用いて説明した手順と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0106】
<第2実施形態の効果>
以上説明した第2実施形態は、第1状態S1、第2状態S2、および第3状態S3についての個別の判定結果の組み合わせに基づいて液体供給機構40の異常要因を特定する構成であるため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに本第2実施形態では、第2状態S2および第3状態S3の第2判定値Jy2および第3判定値Jy3は、第1状態S1の圧力[P]との差分とした。これにより、第2判定値Jy2および第3判定値Jy3は、基準状態S0から第1状態S1への状態変化の影響を受けることがなく、第2判定値Jy2および第3判定値Jy3による判定の精度が向上する効果を得ることも可能である。
【0107】
なお、以上説明した第2実施形態の判定値および判定パターンは、第1実施形態の判定値および判定パターンと組み合わせて用いてもよい。
【0108】
また、以上説明した第1実施形態および第2実施形態においては、
図8のステップS105~ステップS109の実施により、設定回数だけ連続して異常判定を含んだ場合にのみ、判定パターンの抽出による異常要因の特定を実施する構成とした。しかしながら、これらのステップに替えて、またはこれらのステップに追加して、自動分析装置1の稼働開始の後に、液体供給処理の回数が液体供給機構40の動作が安定する回数に達した場合にのみ、判定パターンの抽出による異常要因の特定に進むステップを追加してもよい。このようなステップを追加した場合には、異常要因の特定を実施する判断を2段階で設定できる。
【符号の説明】
【0109】
1…自動分析装置
40…液体供給機構
41…配管
41a…第1分岐配管
41b…第2分岐配管
41c…合流配管
42…ポンプ
43a…第1電磁弁
43b…第2電磁弁
44…圧力計
50…状態判定部
100…液体供給タンク
100a…洗浄薬液タンク
100b…希釈液タンク
Jx1…第1判定値(差分)
Jx2…第2判定値(差分)
Jx3…第3判定値(差分)
Jy1…第1判定値(差分)
Jy2…第2判定値(差分)
Jy3…第3判定値(差分)
S0…基準状態
S1…第1状態
S2…第2状態
S3…第3状態
Tx1、Tx2、Tx3、Ty1、Ty2、Ty3…閾値