(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】非破壊検査の支援装置、支援方法及び支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240422BHJP
【FI】
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2020188854
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 摂
(72)【発明者】
【氏名】落合 誠
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-517050(JP,A)
【文献】特開2013-109422(JP,A)
【文献】特開2017-009599(JP,A)
【文献】特開2019-095247(JP,A)
【文献】特開2019-194605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0207875(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0235112(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非破壊検査を実施する各種の試験方法による検査データを入力
しローカルネットワーク上のデータベースに保存させる入力部と、
前記検査データの別々のデータ形式を前記試験方法の種類に基づき共通化させた共通データ形式を登録する登録部と、
入力
された
前記検査データから前記試験方法の使用機器を自動判別し、前記検査データを前記共通データ形式で表した変換済検査データに変換する変換部と、
前記ローカルネットワークを介して転送した前記変換済検査データを、グローバルネットワークの公開サーバに蓄積させる転送部と、を備える非破壊検査の支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非破壊検査の支援装置において、
前記共通データ形式は、前記変換済検査データに付帯する付帯情報についても規定しており、
前記付帯情報の追加又は変更を行う情報編集部を、備える非破壊検査の支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の非破壊検査の支援装置において、
複数の前記ローカルネットワークのそれぞれに構築された複数の前記公開サーバに蓄積されている前記変換済検査データを、前記付帯情報に基づいて検索する検索部と、
前記検索に基づき要求した前記変換済検査データを蓄積する前記公開サーバから受信する受信部と、を備える非破壊検査の支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の非破壊検査の支援装置において、
複数の前記ローカルネットワークのそれぞれに構築された複数の前記公開サーバのうちいずれか一つがホストサーバに選定され、
前記ホストサーバに対し、前記グローバルネットワークを介して前記付帯情報を送信する送信部を備え、
前記検索部は、前記グローバルネットワークを介し、前記ホストサーバに対して、前記検索を実行し、
前記ホストサーバは、前記検索に基づき要求された前記変換済検査データを蓄積する前記公開サーバに対し転送命令を発令し、
前記受信部は、前記転送命令に基づき転送された前記変換済検査データを受信する、非破壊検査の支援装置。
【請求項5】
請求項2から
請求項4のいずれか1項に記載の非破壊検査の支援装置において、
前記付帯情報には、前記非破壊検査の実施時間のタイムスタンプに関連する情報が含まれる非破壊検査の支援装置。
【請求項6】
請求項2から
請求項5のいずれか1項に記載の非破壊検査の支援装置において、
前記付帯情報には、前記非破壊検査の検査員の情報が含まれる非破壊検査の支援装置。
【請求項7】
請求項2から
請求項6のいずれか1項に記載の非破壊検査の支援装置において、
前記付帯情報には、前記検査データ又は前記変換済検査データから検出された特徴量の情報が含まれる非破壊検査の支援装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の非破壊検査の支援装置において、
前記検査データは、
前記グローバルネットワークを介して前記入力される非破壊検査の支援装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の非破壊検査の支援装置において、
複数の前記変換済検査データを入力値とし、それぞれの特徴量の情報が出力値となるように機械学習させた学習モデルを保持する保持部と、
新規の前記変換済検査データを入力し、存在の有無に関する情報も含む前記特徴量の情報を出力する判定部と、を備える非破壊検査の支援装置。
【請求項10】
入力部が、非破壊検査を実施する各種の試験方法による検査データを入力
し、ローカルネットワーク上のデータベースに保存させるステップと、
登録部が、前記検査データの別々のデータ形式を前記試験方法の種類に基づき共通化させた共通データ形式を
、登録するステップと、
変換部が、入力
された
前記検査データから前記試験方法の使用機器を自動判別し、前記検査データを前記共通データ形式で表した変換済検査データに変換するステップと、
転送部が、前記ローカルネットワークを介して転送した前記変換済検査データを、グローバルネットワークの公開サーバに、蓄積させるステップと、を含む非破壊検査の支援方法。
【請求項11】
コンピュータに、
非破壊検査を実施する各種の試験方法による検査データを入力
し、ローカルネットワーク上のデータベースに保存させるステップ、
前記検査データの別々のデータ形式を前記試験方法の種類に基づき共通化させた共通データ形式を登録するステップ、
入力
された
前記検査データから前記試験方法の使用機器を自動判別し、前記検査データを前記共通データ形式で表した変換済検査データに変換するステップ、
前記ローカルネットワークを介して転送した前記変換済検査データを、グローバルネットワークの公開サーバに蓄積させるステップ、を実行させる非破壊検査の支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、構造物や材料等の傷や欠陥を非破壊で検査する非破壊検査の支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非破壊検査として、超音波探傷試験(UT)、放射線透過試験(RT)、磁粉探傷試験(MT)、浸透探傷試験(PT)、渦電流探傷試験(ET)等の試験方法が、従来から実施されている。また、これら非破壊検査の検査員の資格及び認証並びに試験方法が、各種の工業規格において規定されている。これら非破壊検査は、エネルギー、交通、プラント、社会インフラ、建築といったあらゆる産業分野に適用され、これらの健全性担保に大きな役割を果たしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非破壊検査の多くは、検査結果のみならず使用装置や検査員等の情報が、紙媒体もしくはローカルなデジタルデータとして保存されている。このため、それらデータは、特に系統立てて管理されることはなく、実施者(企業体や研究機関)が、アナログな手法を用いてローカルに参照するにとどまっていた。
【0005】
また非破壊検査の検査結果を表すデジタルデータのデータ形式は、試験方法の種類が異なれば相違するのは当然であるが、共通する試験方法であっても、使用装置の製造メーカや検査の実施者が異なれば相違する場合が多い。このため、非破壊検査の使用装置の製造メーカや検査の実施者が異なる複数の検査結果は、データ形式が共通化されていないことにより、これらを対比して分析することに障害があった。
【0006】
また上述した各種の非破壊検査は、多岐にわたる産業分野における検査対象物のそれぞれに適用される試験方法に関し、規格が規定されている。しかしながら、所定の検査対象物の所定の試験方法の最適条件について、その設定値や根拠といったノウハウ等に関する具体的な情報は、試験方法の実施者に帰属している。
【0007】
そのような具体的な情報は、学会発表や論文、一部特許等の公開文献を除き、異なる実施者の間で共有されることはない。このため、検査対象物に則した試験方法について、最適条件が既に見出されているにも関わらず、各々の実施者が自ら条件出しを行うことになり、社会全体として生産性の低下を招いている。
【0008】
また、多くの場合で非破壊検査は、TBM(Time Based Maintenance)として、ある期間ごとに検査対象物に対して実施されることになる。その場合、検査実施の頻度が、必要以上に多くなり不要なコスト要因となったり、逆に少なすぎることで健全性が十分に担保されなかったりする場合がある。
【0009】
また検査対象物である機器が同一であっても、その運転条件、運転環境、運転頻度及び運転年数等によって、疲労・劣化の度合いが異なってくる。このため、そのような運転情報及び前回の非破壊検査結果を考慮して、CBM(Condition Based Maintenance)を適用し、検査対象物の検査周期を適切に変化させることが合理的である。しかしながら、それら検査対象物において、運転情報と非破壊検査結果とは、必ずしも紐づいていないため、TBMに基づく運用を継続せざるを得なかった。
【0010】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、検査結果等のデータ形式を共通化し、これら情報を複数の実施者の間で共有することを可能とする。これにより、検査対象物に適用する試験手法の最適条件及びノウハウ等の情報並びに最適な検査周期等を、容易に入手することができる非破壊検査の支援技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態に係る非破壊検査の支援装置において、非破壊検査を実施する各種の試験方法による検査データを入力しローカルネットワーク上のデータベースに保存させる入力部と、前記検査データの別々のデータ形式を前記試験方法の種類に基づき共通化させた共通データ形式を登録する登録部と、入力された前記検査データから前記試験方法の使用機器を自動判別し、前記検査データを前記共通データ形式で表した変換済検査データに変換する変換部と、前記ローカルネットワークを介して転送した前記変換済検査データを、グローバルネットワークの公開サーバに蓄積させる転送部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態により、検査データのデータ形式を共通化し、複数の実施者の間で共有することが可能になる。これにより、検査対象物に適用する試験手法の最適条件及びノウハウ等の情報並びに最適な検査周期等を、容易に入手することができる非破壊検査の支援技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る非破壊検査の支援装置のブロック構成図。
【
図2】第2実施形態に係る非破壊検査の支援装置が適用されるネットワーク構成図。
【
図3】第2実施形態に係る非破壊検査の支援装置のブロック構成図。
【
図4】第3実施形態に係る非破壊検査の支援装置のブロック構成図。
【
図5】第1実施形態に係る非破壊検査の支援方法及びその支援プラログラムを説明するフローチャート。
【
図6】第2実施形態に係る非破壊検査の支援方法及びその支援プラログラムを説明するシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る非破壊検査の支援装置10(以下、単に「支援装置10」という)のブロック構成図である。このように第1実施形態の支援装置10は、非破壊検査を実施する各種の試験方法11(11a,11b…)による検査データ12を入力する入力部15と、この検査データ12の別々のデータ形式を試験方法11(11a,11b…)の種類に基づき共通化させた共通データ形式16を登録する登録部と、入力した検査データ12を共通データ形式16で表した変換済検査データ18に変換する変換部17と、を備えている。
【0015】
さらに支援装置10において、共通データ形式16は、変換済検査データ18に付帯する付帯情報21についても規定しており、この付帯情報21の追加又は変更を行う情報編集部22を、さらに備えている。
【0016】
非破壊検査の試験方法11としては、超音波探傷試験(UT)、放射線透過試験(RT)、磁粉探傷試験(MT)、浸透探傷試験(PT)、渦電流探傷試験(ET)等の代表的なものの他、ひずみ測定、漏れ試験、アコースティックエミッション(AE)、赤外線検査、目視検査、遠隔目視検査、寸法検査等が挙げられる。また、複数の試験方法11を組合せる場合も、同種の試験方法11で有る無しにかかわらず付帯情報21により区別できるようにする。また同種の試験方法11であっても、単プローブUTとフェーズドアレイUT等では付帯情報21で試験方法11の種類を区別できるように扱う。
【0017】
超音波探傷試験(UT)は、単プローブや二探触子法が適用可能なデジタル探傷器、フェーズドアレイやTFM(Total Focusing Method)等が可能なデジタルアレイ探傷器、板厚計等に分類することができるが、これらについても同様に付帯情報21でそれぞれの種類を区別できるように扱う。また、レーザ超音波法や、電磁超音波、ガイド波、空中超音波法、非線形超音波法のような、高度な(特殊な)試験方法11についても同様に付帯情報21でそれぞれの種類を区別できるように扱う。
【0018】
上述した試験方法11により得られる検査データ12は、UTであれば、超音波の波形データであったり、フェーズドアレイやTFM画像を形成するボクセル強度データであったり、画像化後の画像データであったりする。RTの検査データ12は、デジタルRTのように撮像結果がデジタル化されているものでもよいし、アナログフィルムをデジタル化したものでもよい。また、イメージ・インテンシファイヤー(Image Intensifier)のように、シンチレータ等で増幅し、デジタルカメラで撮像するものを用いてもよい。このようにして得られる検査データ12は、撮像後の画像データである。
【0019】
ETは、単プローブや複数プローブが適用可能なデジタル探傷器、アレイコイルを用いたアレイECT等が考えられ、その他に、一般的に渦電流探傷試験に用いられているものであれば全て対象となる。ETの検査データ12は、ある空間(時間)軸での波形データであったり、スキャナなどを用いてC-Scopeを得た場合はその強度データもしくは画像データであったりする。
【0020】
AEは、単プローブのものから複数プローブを用いるものでよく、複数プローブとその位置情報をもとに発生位置を特定する手法を用いてもよい。AEの検査データ12は、波形データであったり、カウント数であったり、カウントを空間上に分布させて表示したものであったりする。
【0021】
MT、PT、赤外線、目視検査、遠隔目視検査、寸法検査では、各々の試験方法11で何を用いたかに関わらず、検査データ12は、最終的には画像として得られるものであるため画像データとなる。また寸法検査のように、形状が得られるものであれば、検査データ12は、三次元の形状分布データとなる。
【0022】
また、例えばフェーズドアレイ超音波探傷の結果の検査データ12であれば、欠陥を表す指示やノイズを表す指示、形状を表す指示等、検査員が判定した結果も検査データ12に含まれる。また、非破壊検査を行った後に、破壊試験等を行った場合、試験片の設計値や、得られた真値に関する情報(位置や数値)も、検査データ12に含めてもよい。
【0023】
付帯情報21とは、ヘッド情報のように検査データ12に付帯させる情報である。そのような付帯情報21としては、試験方法11の種類を区別する情報以外に、非破壊検査の検査員の情報、非破壊検査の実施時間のタイムスタンプに関連した情報、検査データ12又は変換済検査データ18から検出される特徴量の情報、装置情報、及び環境情報等が挙げられ、これらのうち1つ以上が含まれていればよい。
【0024】
付帯情報21のうち検査員の情報は、検査員の名前、所属、資格、経験年数、年齢、性別等、本人が特定可能な情報が1つ以上含まれていればよく、検査員のスキルに結び付く情報が付されていることが望ましい。
【0025】
付帯情報21のうち装置情報は、例えば探傷器とプローブを接続して用いるUTやAE、ETの場合、型式、仕様、探傷設定(例えば、超音波であれば、周波数、繰り返し周波数、フェーズドアレイ送受信条件、プローブチャンネル数、印加電圧、サンプリング周波数、ゲイン等、探傷時に必要な設定の一部または全部)、等が挙げられ、その他の情報が加わる場合もある。プローブの装置情報としては、外形、周波数、チャンネル数、チャンネル配置、振動子形状、コイル形状、巻線数、振動子材料、コイル材料、シュー形状等が挙げられ、その他の情報が加わる場合もある。
【0026】
RTの装置情報としては、線源の種類、出力、距離、露光時間、フィルム仕様等が挙げられ、またその他の情報が加わる場合もある。PTの装置情報としては、浸透剤の種類、手法、現造材の種類、浸透時間、撮影したカメラの仕様等が挙げられ、その他の情報が加わる場合もある。MTの装置情報としては、使用装置の仕様、磁化条件、磁粉の種類、ブラックライトの仕様、脱磁条件等が挙げられ、その他の情報が加わる場合もある。赤外線、目視検査、遠隔目視検査、寸法検査の装置情報としては、各撮像装置の仕様、使用波長帯域、加熱を伴う場合は熱源の種類・仕様・および条件等が挙げられ、その他の情報が加わる場合もある。
【0027】
付帯情報21のうち環境情報は、検査実施時の日時、気温、天候、並びに検査対象物の場所(住所、フロア、GPS座標、構造物名等)、位置(例えば溶接線名や配管部品)等が挙げられ、その他の情報が加わる場合もある。さらに付帯情報21には、例えば検査対象物の位置情報を制御するためのスキャナ、ドローン等の機械的アクセス装置を用いた場合、当該アクセス装置の装置情報や、駆動条件、そこから得られた位置情報等を補助データとして加えることもできる。さらに検査対象物の名称やその特性となる設計図、形状、溶接部、溶接継手、溶接方法、板厚、材料、用途、供用中のものであれば年数等の情報が付加される場合もある。
【0028】
入力部15は、試験方法11の使用機器に装備される、USBメモリ、SDカード、外付けハードディスクのような取り外し可能な記録メディアの接続インターフェースであったり、ギガイーサやUSBケーブルのような有線通信インターフェースであったり、無線LANやBluetoothのような無線通信インターフェースであったりする。
【0029】
入力部15から入力された検査データ12を保存するデータ保存手段(図示略)は、SSDやHDDのような一般的な記録メディアでよく、またはローカルネットワーク25(
図2)を介して接続する大容量のデータベース29を用いてもよい。なお、データ保存手段は、検査データ12だけでなく変換済検査データ18やその他のデータを保存する機能も併せ持つ。
【0030】
変換部17は、検査データ12のデータ形式を、登録されている共通データ形式16に変換する機能をもつ。この共通データ形式16は、検査データ12だけでなくこれに付帯する付帯情報21についても規定している。試験方法11の使用機器においては、そのメーカや型番に固有のデータ形式によって、検査データ12が表される場合が多い。よって、変換部17は、入力した検査データ12の使用機器を自動判別し、共通データ形式16に自動変換する機能を持つ。このように全く異なるデータ形式で表されている複数の検査データ12を変換して共通データ形式16で表すことにより、これら複数の検査データ12を同一のアプリケーションツールで参照・解析することが可能になる。
【0031】
検査データ12に対するデータ形式の変換は、画像であれば具体的に、画素数、諧調、深度、画角等があり、それらを統一するために、画素数の増減を行ったり、例えばフルカラー諧調を一度リニアな強度データに戻した後にグレースケール諧調化したり、深度を変更したりすることができる。変換前の画像が変換後の形式に対して画素が足りない場合は、単に画素を再分割したり、再分割後の画素を補完したりする機能を有してもよい。また、画像の保存形式についても、TIFFやBMP、JPEG、PNG等、任意の規格に統一させることもできる。
【0032】
検査データ12に対するデータ形式の変換は、波形データであれば具体的に、縦軸分解能(Bit数)や時間軸分解能(サンプリング周波数)等を統一させることが挙げられる。変換前のデータ形式が変換後のデータ形式に対して情報量が多い場合はデシメートして中間点を除外してもよい。逆に、変換前のデータ形式が変換後のデータ形式に対して情報量が少ない場合は補完する機能を有し、線形補完でもよいしフィッティングを等行ってもよい。波形の保存形式についても、一般的なテキストデータだけでなく種々バイナリ形式を選択することもできる。
【0033】
検査データ12に対するデータ形式の変換は、その他にも、画像であればフィルタリング、色調補正、画素数変換、回転等、一般的な画像処理や、欠陥を表す位置を画像上で指定する等、評価結果のラベル付け等である。UTやETのような波形で表される検査データ12のデータ形式の変換は、波形単体へのフィルタリング、周波数解析、ゲイン調整、ゲートにおける強度読み取り、時間軸上の拡大等である。その他にも、一般的なデータ処理が可能であり、欠陥やノイズ、形状等のエコーの示す対象をラベル付けすることも可能である。
【0034】
情報編集部22は、付帯情報21の追加又は変更を行う。そして情報編集部22は、共通データ形式16への自動変換が不能であったり不十分であったりする変換済検査データ18に対し、その修正を行うこともできる。また、後述する第2実施形態のように、第三者に変換済検査データ18が公開される場合は、秘匿性の高い一部の付帯情報21についてはマスキングをかけて非公開にすることもできる。膨大な量の変換済検査データ18に対し、特定の付帯情報21について、まとめて匿名化したりマスキングをかけたりすることもできる。
【0035】
(第2実施形態)
次に
図2及び
図3を参照して本発明における第2実施形態について説明する。
図2は第2実施形態に係る非破壊検査の支援装置10(10a,10b,10c…)が適用されるネットワーク20の構成図である。
図3は第2実施形態に係る非破壊検査の支援装置10のブロック構成図である。なお、
図2及び
図3において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0036】
図3に示すように第2実施形態の支援装置10は、第1実施形態と共通する検査データ12の入力部15と、共通データ形式16を登録する登録部と、入力した検査データ12を変換済検査データ18に変換する変換部17と、付帯情報21の追加又は変更を行う情報編集部22とを備えている。
【0037】
さらに第2実施形態の支援装置10は、ローカルネットワーク25(25a,25b,25c…)を介して変換済検査データ18を転送しグローバルネットワーク26の公開サーバ27(27a,27b,27c…)に蓄積させる転送部28を備えている。
【0038】
ローカルネットワーク25は、いわゆるLANであり、コンピュータや通信機器、情報機器などをケーブルや無線電波などで接続し、相互にデータ通信できるようにしている。そしてローカルネットワーク25は、
図2に示すように、非破壊検査の実施者30(30a,30b,30c…)において、概ね室内あるいは建物内程度の限られた範囲内に構築された、局地的な情報通信網である。なお実施者30は、例えば企業体や大学等の研究機関等が挙げられる。他方で、グローバルネットワーク26は、いわゆるインターネットであり、複数のローカルネットワーク25(25a,25b,25c…)を相互接続する、地球規模の情報通信網である。
【0039】
公開サーバ27は、グローバルネットワーク26を介した外部から非公開にしている支援装置10やデータベース29とは異なり、所定の情報セキュリティ対策を施したうえで、外部に公開するよう構築したものである。それぞれの公開サーバ27(27a,27b,27c…)には、それぞれのローカルネットワーク25(25a,25b,25c…)に接続されている支援装置10(10a,10b,10c…)で作成された変換済検査データ18が蓄積されている。そして公開サーバ27は、支援装置10(10a,10b,10c…)からの要求に応じて、蓄積している変換済検査データ18を転送する。
【0040】
さらに第2実施形態の支援装置10は、複数のローカルネットワーク25(25a,25b,25c…)のそれぞれに構築された複数の公開サーバ27(27a,27b,27c…)に蓄積されている変換済検査データ18xを、付帯情報21に基づいて検索する検索部31と、この検索に基づき要求した変換済検査データ18xを蓄積する公開サーバ27(27a,27b,27c…)から受信する受信部32と、を備えている。
【0041】
図2に示すように第2実施形態では、複数のローカルネットワーク25(25a,25b,25c…)のそれぞれに構築された複数の公開サーバ27(27a,27b,27c…)のうちいずれか一つがホストサーバに選定されている。説明のため複数の公開サーバ27のうち選択した一つをホストサーバ27cとし、その他の公開サーバ27をゲストサーバ27a,27bとする。
【0042】
支援装置10(10a,10b,10c…)は、ホストサーバ27cに対し、ローカルネットワーク25及びグローバルネットワーク26を介して付帯情報21を送信する送信部35(
図3)を備えている。そして支援装置10aの検索部31は、ローカルネットワーク25及びグローバルネットワーク26を介し、ホストサーバ27cに対して、検索を実行する。そして、ホストサーバ27cは、検索に基づき要求された変換済検査データ18xを蓄積する公開サーバ27bに対し転送命令36を発令する。そして支援装置10aの受信部32は、転送命令36に基づき転送された変換済検査データ18xを受信する。
【0043】
このように複数の公開サーバ27(27a,27b,27c…)は、一つのホストサーバとその他のゲストサーバとに分類される。これにより、ホストサーバを管理する実施者30により、非破壊検査の支援ネットワーク20全体を統括させることができる。
【0044】
なお複数の公開サーバ27に対しホストサーバやゲストサーバの区別をしない場合もありうる。この場合、それぞれの支援装置10(10a,10b,10c…)の検索部31は、公開サーバ27(27a,27b,27c…)の各々に直接アクセスして検索し、所望する変換済検査データ18xを受信する。
【0045】
ここで、実施者30(30a,30b,30c…)が管理する支援装置10(10a,10b,10c…)の各々は、図示を省略するが、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行するCPUと、ROM及びRAMで構成される主記憶部と、ハードディスクなどで構成される補助記憶部と、ネットワークカードなどで構成される通信制御部と、キーボードやマウスなどの入力部と、モニタなどの出力部とで構成される。
【0046】
そして支援装置10の各機能は、CPUや主記憶部の上に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPUの制御の下で通信制御部や入力部、出力部などを動作させ、主記憶部や補助記憶部におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。処理に必要なデータ等は主記憶部や補助記憶部内に一時的に格納される。さらに支援装置10は、上述した検索サービスを利用する権利が付与されるよう適切にアクセス管理されている。また支援装置10は、具体的に、汎用のパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、スマートウォッチ、アイトラッカ等で実現される。
【0047】
ところで、入力部15から入力された検査データ12、及び変換部17で変換された変換済検査データ18は、支援装置10の内部ではなく、ローカルネットワーク25に構築されたデータベース29に保存される場合がある。この場合、変換部17はデータベース29から検査データ12を取得して変換後に変換済検査データ18を再びデータベース29に保存する。そして転送部28は、このデータベース29に保存されている変換済検査データ18を公開サーバ27に転送することになる。
【0048】
送信部35は、複数の公開サーバ27(27a,27b,27c…)のうち選定されたホストサーバ27cに対し、変換済検査データ18の付帯情報21のみを送信する。このように送信されホストサーバ27cに蓄積された付帯情報21は、それぞれの支援装置10(10a,10b,10c…)の検索部31から指定される検索キーに用いられる。
【0049】
検索部31は、付帯情報21のうち検査対象物に関する条件を検索キーに用いた場合、この検査対象物の検査履歴を追跡することを可能にする。また付帯情報21のうち装置情報に関する条件を検索キーに用いた場合、この使用装置の使用ノウハウに関する情報を取得することを可能にする。例えばUT技術について探傷事例をソートすることで、最適な検査条件を抽出することができる。
【0050】
またUTのみならず、RTやPT、MTといった表面探傷をソートして参照することで、内在欠陥と表面欠陥両方の傾向を調査することもできる。さらに、検査員でソートすることで、検査員に応じた判定の傾向や技量の判断等も可能となる。このように、ある実施者30にとって知見のない検査対象物であっても、他の実施者の知見を活かして探傷手法の選定、条件の抽出、得られる結果の期待値等を推定することが可能となる。
【0051】
また検査データ12(
図3)は、例えば非破壊検査の現場37(
図2)から、グローバルネットワーク26を介して支援装置10の入力部15(
図3)に入力させることができる。このようにすることで、検査対象物の検査データ12に対する結果判定をする検査員を現場37に派遣しなくても、遠隔で検査員に結果判定させることができる。
【0052】
このとき、検査員は実施者の中で遠隔化されることは当然だが、実施者間をまたいだ遠隔化も可能となる。例えば、ある実施者Aの検査員が、別の実施者Bの依頼を受けて、実施者Bが測定したデータを、実施者Aの検査員が評価するということも可能である。ここで、実施者は2者である必要はなく、実施者Aの検査員が複数の実施者のデータを評価してもよいし、逆に実施者Bは、実施者A以外の複数の実施者へ評価を依頼することもできる。なお、この遠隔化にあたっては、当然日本国外との繋がりも可能である。
【0053】
(第3実施形態)
次に
図4を参照して本発明における第3実施形態について説明する。
図4は第3実施形態に係る非破壊検査の支援装置10のブロック構成図である。なお、
図4において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0054】
このように第3実施形態の支援装置10は、第1実施形態と共通する検査データ12の入力部15と、共通データ形式16を登録する登録部と、入力した検査データ12を変換済検査データ18に変換する変換部17と、付帯情報21の追加又は変更を行う情報編集部22とを備えている。さらに図示を省略するが第2実施形態と共通する変換済検査データ18の転送部28(
図3)と、付帯情報21の送信部35と、グローバルネットワーク26上の公開サーバ27(27a,27b,27c…)に蓄積されている変換済検査データ18xの検索部31と、この検索に基づき要求した変換済検査データ18xの受信部32(
図3)と、を備える場合もある。
【0055】
そして、第3実施形態の支援装置10は、複数の変換済検査データ18xを入力値とし、それぞれの特徴量の情報が出力値となるように機械学習させた学習モデル38を保持する保持部と、新規の変換済検査データ18を入力し、存在の有無に関する情報も含む特徴量の情報を出力する判定部39と、を備えている。
【0056】
第3実施形態によれば、複数の実施者30(30a,30b,30c…)により共同作成された複数の変換済検査データ18xを教師データとして利用することで、任意の実施者30が新規に得た検査データ12を自動解析して検査対象物の特徴量を解析することができる。ここで特徴量とは、例えば波形で表される検査データ12に対し同定される欠陥サイズや形状等である。これら特徴量は超音波等であれば指示間の長さ測定結果から算出してもよいし、画像であれば画角から長さや面積を抽出することもできる。
【0057】
また、上述のように複数の実施者により得られた教師データを各々の実施者が機械学習に適用することも可能だが、公開サーバに登録された機械学習システムを実施者がユーザとして用い、自ら取得したデータを機械学習による判定のみに供することもできる。このとき、判定に供したデータを機械学習の新たな教師データとして登録し、各実施者が活用する領域に強みを持たせた機械学習システムに各々チューニングしていくことも可能である。斯様な機能を有することで、機械学習の知識をもたない実施者であっても、本装置およびプログラムを通して最新の評価技術の恩恵を受けることができる。
【0058】
(第4実施形態)
付帯情報21に検査対象物が含まれている場合、この検査対象物に紐づけられ別のシステムで管理されている関連情報についても、支援装置10において取得することができる。そのような関連情報としては、具体的に、検査対象物においていくつか存在する前過程に関する技術情報、検査対象物の名称や用途、検査対象物の特性を示す設計図、形状、溶接部、溶接継手形状、溶接方法、板厚、材料、検出に求められる欠陥クライテリア、検査が基づくべき規格、特別な資格が設けられている(例えばオーステナイト系ステンレス鋼溶接部に生じるSCC等)対象であればその認証内容、供用中のものであれば年数、運転履歴、これまでの検査結果、製造中のものであればその製造過程における情報例えば工程間の検査結果や補修履歴、他ロットでの検査結果等である。
【0059】
支援装置10において、検査対象物に紐づけられる関連情報をこのように取得できることで、次に示す(機能A)~(機能E)の実現が期待される。(機能A)同じ検査対象物の異なるロット、異なる個体間で検査データまたは特徴量を比較する機能。(機能B)複数の場所に分散して保存された特定の情報と、検索・抽出された検査データ又は特徴量とを比較する機能。(機能C)付帯情報21として存在する情報に基づいて、不特定の検査データまたは特徴量を検索・抽出し比較する機能。(機能D)異なる非破壊検査機器の間で得られた検査データ又は特徴量を比較する機能。(機能E)同一条件で検査された過去の検査データまたは特徴量と比較する機能。
【0060】
さらにこれら(機能A)~(機能E)により、検査対象物を単体で検査する場合に比べて、欠陥の生じやすい位置、欠陥の発生もしくは残留している確率、過去データとの差分による対象物の寿命評価等、様々な用途拡大が考えられる。また、これまでの事例から適切な検査データが得られるよう、検査手法や条件等をフィードバックすることも可能となる。
【0061】
また、検査対象物が、単体としてではなくより大きな上位システムの一部(例えば上位システムが原子力プラントで、その中の配管が検査対象物である等)として存在する場合、その上位システムのシステムデータの保存手段に、検査対象物の情報データを保存することができる。そのような情報データとしては、名称や用途、上位システム全体の設計図、運転履歴、上位システム運用にあたって検査対象物に生じると想定される負荷、他の非破壊検査機器から得られる検査データ、非破壊検査機器に依らないモニタリング結果(例えば、振動計、流量計等)、今後の運転スケジュール等が考えられる。さらに、支援装置10から出力される変換済検査データ18を上位システムへフィードバックすることで、検査で明らかとなった破損の度合いなどから、現状の運転条件の可否、次検査のタイミング、改良・補修の手法やタイミング等を提案することもできる。
【0062】
図5のフローチャートを参照して第1実施形態に係る非破壊検査の支援方法及びその支援プラログラムを説明する(適宜、
図1参照)。まず、検査データ12の別々のデータ形式を試験方法11(11a,11b…)の種類に基づき共通化させた共通データ形式16を登録する(S11)。次に、各種の試験方法11(11a,11b…)により実施された非破壊検査の検査データ12を入力する(S12)。そして、この入力した検査データ12を、共通データ形式16で表した変換済検査データ18に変換し出力する(S13,END)。
【0063】
次に
図6のシーケンス図を参照して第2実施形態に係る非破壊検査の支援方法及びその支援プラログラムを説明する(適宜、
図2参照)。まず、各々の支援装置10(10a,10b,10c…)は、第1実施形態で作成した変換済検査データ18を、ローカルネットワーク25(25a,25b,25c…)を介して転送し、公開サーバ27(27a,27b,27c…)に蓄積させる(S21)。
【0064】
さらに支援装置10(10a,10b,10c…)は、変換済検査データ18から分離した付帯情報21を、ローカルネットワーク25及びグローバルネットワーク26を介して送信し(S22)、ホストサーバ27cに保持させる。そしていずれかの支援装置10aにおいて、ローカルネットワーク25及びグローバルネットワーク26を介し、ホストサーバ27cに対して、検索が実行される(S23)。
【0065】
すると、ホストサーバ27cは、検索に基づき要求された変換済検査データ18xを蓄積する公開サーバ27bに対し、転送命令36を発令する(S24)。そして支援装置10aの受信部32は、転送命令36に基づき公開サーバ27bから転送された変換済検査データ18xを受信する(S25)。
【0066】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の非破壊検査の支援装置によれば、検査データを共通データ形式に変換することにより複数の実施者の間で共有することを可能とする。これにより、検査対象物に適用する試験手法の最適条件及びノウハウ等の情報並びに最適な検査周期等を、容易に入手することが可能となる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
10(10a,10b,10c)…非破壊検査の支援装置、12…検査データ、15…入力部、16…共通データ形式、17…変換部、18,18x…変換済検査データ、20…ネットワーク、21…付帯情報、22…情報編集部、25…ローカルネットワーク、26…グローバルネットワーク、27(27a,27b,27c)…公開サーバ、27b…ゲストサーバ、27c…ホストサーバ、28…転送部、29…データベース、30(30a,30b,30c)…実施者、31…検索部、32…受信部、35…送信部、36…転送命令、37…現場、38…学習モデル、39…判定部。