(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】見当制御システム
(51)【国際特許分類】
B41F 33/00 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B41F33/00 290
(21)【出願番号】P 2020197266
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】平山 大介
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-082553(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0096696(US,A1)
【文献】特開2003-072022(JP,A)
【文献】特開2005-004368(JP,A)
【文献】欧州特許第02135740(EP,B1)
【文献】特開2016-155331(JP,A)
【文献】特開2001-010026(JP,A)
【文献】特開平08-072226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多色刷印刷システムの印刷ユニットの見当調整を制御する見当制御システムであって、
前記印刷ユニットの生産条件を設定するための固定式制御盤であって、当該印刷ユニットの見当に関する見当情報を取得する機側制御ユニットと、
前記機側制御ユニットから前記見当情報を取得して表示可能な可搬制御ユニットと、
を備え、
前記可搬制御ユニットは、前記機側制御ユニットを操作可能に構成され
、前記見当情報に基づいて生成された波形を表示できる見当制御システム。
【請求項2】
前記可搬制御ユニットは、無線通信を通じて前記機側制御ユニットと情報を交換できる請求項1に記載の見当制御システム。
【請求項3】
前記可搬制御ユニットは、前記印刷ユニットの個別調整と前記多色刷印刷システムの全体調整とを行うことができる請求項1または2に記載の見当制御システム。
【請求項4】
前記可搬制御ユニットは、前記印刷ユニットのドクター調整を制御できる請求項1から
3のいずれか1項に記載の見当制御システム。
【請求項5】
前記可搬制御ユニットは、前記印刷ユニットの調整パラメータを変更できる請求項1から
4のいずれか1項に記載の見当制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見当制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
見当マークを用いて見当ずれを管理する印刷ユニットが知られている。特許文献1には、見当マーク検出装置を有する印刷ユニットを備えた印刷機が記載されている。ウェブ輪転印刷機では、各色の印刷ユニット間の紙パス長が張力や乾燥の影響で変動して見当がずれるので、印刷ユニットは見当ずれを調整しながら運用される。一例として、紙やフィルム等のウェブの幅方向の端部に予め付された見当マークを検出して見当ずれ量を算出し、印刷ユニットに設けられた見当合せ調整装置によって見当ずれを調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、複数の印刷ユニットを有する印刷装置の見当制御システムについて検討し、以下の認識を得た。例えば、印刷装置の各印刷ユニットの見当ずれを調整する見当調整のために、印刷ユニットから離れた位置の固定操作パネルを使用することが考えられる。見当調整は、印刷ユニットに設けられた見当合せローラ等の見当調整装置を操作して行い、固定操作パネルは、見当の良否を示す波形の表示機能を有する。
【0005】
したがって、オペレータは、印刷ユニットの見当調整装置を操作して調整し、そこでは見当の良否を確認できないため、固定操作パネルまで移動して、固定操作パネルで波形表示から見当の良否を確認する。この調整と確認の作業は、各印刷ユニットに対して繰り返し実施される。この場合、固定操作パネルと見当調整装置との間を往復する際、印刷装置全体が長いためオペレータの動線が長くなり、調整の作業工数が増大する。
これらのことから、特許文献1に記載の印刷機は、見当調整の作業工数を抑制する観点から課題がある。
【0006】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、見当調整の作業工数を抑制可能な見当制御システムを提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の見当制御システムは、多色刷印刷システムの印刷ユニットの見当調整を制御する見当制御システムであって、印刷ユニットの生産条件を設定するための固定式制御盤であって、当該印刷ユニットの見当に関する見当情報を取得する機側制御ユニットと、機側制御ユニットから見当情報を取得して表示可能な可搬制御ユニットと、を備える。可搬制御ユニットは、機側制御ユニットを操作可能に構成される。
【0008】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によれば、見当調整の作業工数を抑制可能な見当制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る見当制御システムを備えた多色刷印刷システムの構成図である。
【
図2】
図1の見当制御システムの機能および構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3(a)、(b)はそれぞれ、第1見当マーク検出部と、第2見当マーク検出部の検出結果の一例を示すグラフである。
【
図4】
図1の見当制御システムの見当誤差波形の一例を示すグラフである。
【
図5】
図1の可搬制御ユニットの表示の一例を示す模式図である。
【
図6】
図1の可搬制御ユニットの表示の一例を示す模式図である。
【
図7】
図1の可搬制御ユニットの表示の一例を示す模式図である。
【
図8】変形例の見当制御システムを備えた多色刷印刷システムの構成図である。
【
図9】
図8の見当制御システムの機能および構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付し、末尾にアルファベットを付して他と区別し、総称するときはこれらを省略する。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0013】
[実施形態]
図1、
図2を参照して、本発明の実施形態に係る見当制御システム20を説明する。
図1は、見当制御システム20を備えた多色刷印刷システム100の構成を示す図である。
図2は、見当制御システム20の機能および構成を示すブロック図である。多色刷印刷システム100は、第1印刷ユニット10A、第2印刷ユニット10Bと、見当制御システム20とを備え、ウェブ2に所定の多色印刷を施す。第1印刷ユニット10A、第2印刷ユニット10Bを総称するときは、印刷ユニット10という。複数の印刷ユニット10が連結されたものを印刷装置ということがある。
【0014】
第1印刷ユニット10Aおよび第2印刷ユニット10Bはそれぞれ、版胴11と、圧胴12と、ユニット制御部14と、を含む。ウェブ2は、ガイドロール4により所定の搬送路に沿って案内され、圧胴12により版胴11に圧接される。ウェブ2には版胴11に対応した色の絵柄および見当マークが印刷される。第1印刷ユニット10Aでは第1見当マーク6A(
図1では不図示)が印刷され、第2印刷ユニット10Bでは第2見当マーク6B(
図1では不図示)が印刷される。多色刷印刷システム100が対象とするウェブ2は、多様なレベルの透光性を有するウェブであってもよい。例えば、ウェブ2は、透明、半透明または不透明のウェブである。
【0015】
ユニット制御部14は、機側制御ユニット40および可搬制御ユニット42の制御に基づいて印刷ユニット10の各種調整パラメータを変化させる。特に、第1印刷ユニット10Aおよび第2印刷ユニット10Bは、それぞれ版胴11の表面の余分なインキを掻き取るドクターブレード52と、ドクターブレード52の位置等を調整するためのドクター調整部54を備える。また、第2印刷ユニット10Bは、見当調整部50を備える。
【0016】
(ドクター調整部)
図1を参照してドクター調整部54を説明する。ドクターブレード52の調整不良に起因して、ドクター筋や版かぶり等の印刷汚れが発生する。ドクター調整部54は、ドクターブレード52の調整をするための機構であり、ドクターブレード52の位置、角度、圧力等を変えることができる。本実施形態のドクター調整部54は、機側制御ユニット40および可搬制御ユニット42の制御に基づいてドクターブレード52の位置、角度、圧力等を変化させる。
【0017】
(見当調整部)
図1を参照して見当調整部50を説明する。見当調整部50は、見当ずれが生じている場合、この見当ずれを調整するための機構である。本実施形態の印刷ユニット10Bは、見当調整部50にオフセット調整部(不図示)を含む。見当調整部50は、見当の良否を示すアナログ波形(後述する見当信号波形A、B)によって検出された見当誤差(以下、「波形検出見当誤差」という)をゼロにする制御は見当誤差補償器(不図示)により自動的に実行される。オフセット調整部は、波形検出見当誤差と、実際の印刷物の見当ズレ(以下、「実体見当誤差」という)とのオフセットを調整する。本実施形態では、見当調整部50は、オフセットを調整するための操作部を有する。オペレータ3は、見当調整部50を操作してオフセットを調整できる。このオフセット調整により、見当は一層高精度に調整される。以下、見当調整部50からオフセットを調整することを「見当調整」という。
【0018】
図1、
図2、
図3を参照して見当制御システム20を説明する。見当制御システム20は、ウェブ2に印刷された見当マークを検出し、その検出結果に基づいて第1印刷ユニット10Aと第2印刷ユニット10Bとの間の見当ずれ(波形検出見当誤差)を特定し、見当誤差補償器によりこの誤差を補償する。また、見当制御システム20は、見当の良否を示すアナログ波形をオペレータ3に提供する。本実施形態では、オペレータ3は、第2印刷ユニット10Bの近傍において、提供されたアナログ波形に基づいて、見当調整部50から見当調整を実施できる。
【0019】
本実施形態の見当制御システム20は、見当検出部30と、機側制御ユニット40と、可搬制御ユニット42と、見当調整部50と、ドクター調整部54と、を備える。見当検出部30は、ウェブ2に印刷された見当マークを検出し、その検出結果を機側制御ユニット40に送信する。機側制御ユニット40は、複数の印刷ユニット10の生産条件を設定するための固定式制御盤である。機側制御ユニット40は、各印刷ユニット10と通信できる。機側制御ユニット40は、見当に関する見当情報を各印刷ユニット10から取得して表示できる。
【0020】
可搬制御ユニット42は、持ち運び可能な制御盤である。可搬制御ユニット42は、見当情報を機側制御ユニット40から取得して表示できる。機側制御ユニット40および可搬制御ユニット42については後述する。
【0021】
図2を参照して見当検出部30を説明する。見当検出部30は、第1印刷ユニット10Aで印刷された第1見当マーク6Aを検出する第1センサ30aと、第2印刷ユニット10Bで印刷された第2見当マーク6Bを検出する第2センサ30bと、を含む。
【0022】
第1センサ30aと第2センサ30bとは間隔Lで配置される。間隔Lは、見当ずれが生じていないときにおける第1見当マーク6Aと第2見当マーク6Bとの距離に相当する。第1センサ30aおよび第2センサ30bは、光学式のセンサであり、それぞれ光源32と、光学系33と、受光素子34と、を含む。
【0023】
光源32は、ウェブ2に向けて光を照射する。光源32は特に、見当マークが通過する領域に向けて光を照射する。光源32から照射された光は、見当マークに照射され、そこで反射して光学系33により集光され、受光素子34により受光される。あるいは、光源から照射された光は、ウェブ2を透過して背景部に照射され、反射板(不図示)で反射して再びウェブ2を透過し、光学系33により集光され、受光素子34により受光される。光学系33は公知の技術を用いて構成される。
【0024】
受光素子34は、例えばフォトダイオードである。受光素子34は、受光した光を電流信号に変換して出力する。この電流信号の大きさは、受光した光の強度と受光感度との乗算値を波長毎に積算した大きさである。つまり受光素子34は、受光した光に応じた電流信号を出力する。電流信号は、電流電圧変換回路(不図示)によって電圧信号に変換され、機側制御ユニット40に出力される。
【0025】
図2を参照して機側制御ユニット40を説明する。
図2に示す機側制御ユニット40および可搬制御ユニット42の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0026】
機側制御ユニット40は、第1見当マーク検出部44aと、第2見当マーク検出部44bと、見当ずれ検出部46と、パラメータ取得部40aと、操作入力部40bと、表示部40cと、パラメータ制御部40dと、ドクター制御部40eと、通信部40fとを含む。
【0027】
先ず、第1見当マーク検出部44a、第2見当マーク検出部44bおよび見当ずれ検出部46が、見当検出部30の検出結果に基づいて第1印刷ユニット10Aと第2印刷ユニット10Bとの間の見当ずれを検出するメカニズムを説明する。
【0028】
第1見当マーク検出部44aは、第1センサ30aから出力される信号に基づいて、第1見当マーク6Aを検出する。第1見当マーク検出部44aは、第1センサ30aから出力された信号の信号強度と所定の検出閾値とを比較し、例えば信号強度が検出閾値を超えたとき、そのタイミングで第1見当マーク6Aを検出した(検出領域に第1見当マーク6Aが到達した)と判定する。第2見当マーク検出部44bは、第2センサ30bから出力される信号に基づいて、第2見当マーク6Bを検出する。第2見当マーク検出部44bは、第1見当マーク検出部44aと同様に構成される。
【0029】
見当ずれ検出部46は、第1見当マーク検出部44aおよび第2見当マーク検出部44bのそれぞれから検出結果を取得する。見当ずれ検出部46は、これらの検出結果に基づいて各版胴11間で生じる印刷位置のずれ、すなわち見当ずれの有無を判定する。
【0030】
図3(a)、(b)はそれぞれ、第1見当マーク検出部44a、第2見当マーク検出部44bによる検出結果の一例を示すグラフである。
図3(a)のグラフg1は、第1見当マーク検出部44aによって検出された第1見当マーク6Aの信号波形(以下、「見当信号波形A」という)を示し、
図3(b)のグラフg2は、第1見当マーク検出部44aによって検出された第2見当マーク6Bの信号波形(以下、「見当信号波形B」という)を示す。
【0031】
上述したように、第1センサ30aと第2センサ30bは間隔Lで配置され、見当ずれが生じていないときは第1見当マーク6Aと第2見当マーク6Bも間隔Lで印刷されるため、見当ずれが生じていない場合、第1見当マーク6Aと第2見当マーク6Bは実質的に同一のタイミングで検出される。したがって、第1見当マーク検出部44aによって第1見当マーク6Aが検出された第1時刻t1と、第2見当マーク検出部44bによって第2見当マーク6Bが検出された第2時刻t2とが実質的に同一であるとき、見当ずれ検出部46は、見当ずれが生じていないと判定する。一方、第1時刻t1と第2時刻t2とが異なるとき、見当ずれ検出部46は、第1時刻t1と第2時刻t2との差分にウェブ2の送り速度を乗じた分だけ走行方向に見当ずれが生じていると判定する。
【0032】
また、見当ずれ検出部46は、見当信号波形Aおよび見当信号波形Bに基づいて見当ずれの大きさ(以下、「見当誤差」という)を検出し、見当誤差の時間変化を示す見当誤差波形を生成する。
図4のグラフg3は、見当誤差波形の一例を示すグラフである。見当誤差波形(グラフg3)を表示させることにより、オペレータ3は、実質的にリアルタイムに見当誤差の変化を確認することができる。
【0033】
図2を参照して機側制御ユニット40のその他の構成を説明する。パラメータ取得部40aは、ユニット制御部14を介して、各印刷ユニット10の調整パラメータを取得する。印刷ユニット10の調整パラメータとしては、見当誤差補償器の比例ゲイン、第1、第2センサの感度レベル等が挙げられる。操作入力部40bは、各印刷ユニット10および多色刷印刷システム100の生産条件の設定をするための操作入力を受け付ける。また、操作入力部40bは、各印刷ユニット10の見当信号波形A、見当信号波形Bおよび見当誤差波形等の各波形を表示させるための操作入力を受け付ける。表示部40cは、見当信号波形A、見当信号波形Bおよび見当誤差波形等の各波形を表示可能な液晶ディスプレイである。
【0034】
パラメータ制御部40dは、操作入力部40bの操作に基づいて各印刷ユニット10の調整パラメータを制御する。ドクター制御部40eは、操作入力部40bの操作に基づいてドクター調整部54を制御する。通信部40fは、無線通信を通じて可搬制御ユニット42と情報を交換する。機側制御ユニット40は、通信部40fを介して印刷ユニット10の調整パラメータ、各印刷ユニット10の見当信号波形A、見当信号波形Bおよび見当誤差波形に関する情報を可搬制御ユニット42に送信する。機側制御ユニット40は、通信部40fを介して可搬制御ユニット42で受け付けた操作入力に関する情報を受信する。
【0035】
(可搬制御ユニット)
図2、
図5、
図6、
図7を参照して可搬制御ユニット42を説明する。
図5、
図6、
図7は、可搬制御ユニット42の一例を示す模式図である。可搬制御ユニット42は、タッチパネル付きの液晶ディスプレイであり、動作モードに応じて表示画面が変化する。可搬制御ユニット42の画面の内、タッチ操作を受け付ける領域を操作入力部と表記し、主にグラフや画像を表示する領域を表示部と表記する。
図5は、見当調整モードにおける表示画面の一例を示す。
図6は、ドクター調整モードにおける表示画面の一例を示す。
図7は、パラメータ調整モードにおける表示画面の一例を示す。
【0036】
本実施形態の可搬制御ユニット42は、操作入力部42bと、表示部42dと、通信部42fとを含む。操作入力部42bは、各印刷ユニット10および多色刷印刷システム100の生産条件の設定をするための操作入力を受け付ける。操作入力部42bは、見当調整モード、ドクター調整モード、パラメータ調整モード等の動作モードを選択するためのモードセレクタ42sを含む。
【0037】
本実施形態の可搬制御ユニット42は、見当情報に基づいて生成された波形を表示できる。表示部42dは、
図5に示すように、印刷ユニット10の見当信号波形A(g1)、見当信号波形B(g2)を表示できる。また、表示部42dは、
図6に示すように、見当誤差波形(g3)を表示できる。なお、表示部42dの表示内容に制限はない。この構成によれば、オペレータ3は、各印刷ユニット10の近傍で見当情報に基づいて生成された波形を確認できるので、機側制御ユニット40に戻って確認する手間が省け、生産性が向上する。
【0038】
可搬制御ユニット42の通信部40fは、無線通信を通じて機側制御ユニット40と情報を交換する。送信情報に制限はないが、この例の可搬制御ユニット42は、通信部40fを介して操作入力部42bで受け付けた操作入力に関する情報を機側制御ユニット40に送信する。受信情報に制限はないが、この例の可搬制御ユニット42は、通信部40fを介して印刷ユニット10の調整パラメータ、各印刷ユニット10の見当信号波形A、見当信号波形Bおよび見当誤差波形等の情報を機側制御ユニット40から受信する。この構成によれば、オペレータ3は、各印刷ユニット10の近傍で機側制御ユニット40の情報を取得でき、操作情報を送信できるので、機側制御ユニット40に戻る手間が省け、生産性が向上する。
【0039】
本実施形態の可搬制御ユニット42は、機側制御ユニット40を遠隔操作できる。例えば、可搬制御ユニット42の操作入力部42bに操作を入力することにより、機側制御ユニット40の操作入力部40bに操作が入力されたときと同じ動作を機側制御ユニット40にさせることができる。この構成によれば、オペレータ3は、各印刷ユニット10の近傍でその状態を確認しながら遠隔操作できるので、機側制御ユニット40に戻って操作する手間が省け、生産性が向上する。
【0040】
本実施形態の可搬制御ユニット42は、各印刷ユニット10の個別調整と多色刷印刷システム100の全体調整とを行うことができる。つまり、可搬制御ユニット42は、機側制御ユニット40を介して各印刷ユニット10の個別調整を遠隔で調整できる。また、可搬制御ユニット42は、機側制御ユニット40を介して多色刷印刷システム100の全体調整を遠隔で調整できる。この構成によれば、オペレータ3は、各印刷ユニット10の近傍で印刷の状態を確認しながら、個別調整および全体調整を遠隔で調整できるので、機側制御ユニット40に戻って調整する手間が省け、生産性が向上する。
【0041】
本実施形態の可搬制御ユニット42は、各印刷ユニット10のドクターブレード52の姿勢を制御できる。ドクター調整する場合、可搬制御ユニット42をドクター調整モードに切り換えて、見当誤差波形(g3)を表示させる(
図6)。この状態で、オペレータ3は、印刷ユニット10の近傍において印刷汚れを目視もしくはこれらを検出する検出手段により確認しながら、可搬制御ユニット42の操作入力部42bを操作する。これによりドクター調整部54を制御し、ドクターブレード52の位置、角度、圧力等を変える調整を行う。この例では、ドクターブレード52の状態の良否は、表示部42dの見当誤差波形(g3)の周期変動の振幅として表示されるので、この振幅が小さくなるように操作入力部42bを操作する。この構成によれば、オペレータ3は、各印刷ユニット10の近傍でドクターブレード52の状態を確認しながら調整できるので、機側制御ユニット40に戻って調整する手間が省け、生産性が向上する。
【0042】
本実施形態の可搬制御ユニット42は、各印刷ユニット10の調整パラメータを変更できる。印刷ユニット10の調整パラメータを変更する場合、可搬制御ユニット42をパラメータ調整モードに切り換える(
図7)。
図7に示すように、パラメータ調整モードでは、表示部42dに、機側制御ユニット40の通信部40fを介して受信した印刷ユニット10の調整パラメータが表示される。この表示は、文字化された情報や画像化された情報を含む。また、このモードでは、調整パラメータを変更する操作入力を受け付けるための操作入力部42bが表示される。この状態で、オペレータ3は、調整パラメータを変更するように操作入力部42bに操作入力をする。この結果、印刷ユニット10の調整パラメータが変更される。換言すれば、このモードの操作入力部42bは調整パラメータの変更操作部42pとして機能する。この構成によれば、オペレータ3は、各印刷ユニット10の近傍で、印刷の状態を確認しながら、調整パラメータを変更できるので、機側制御ユニット40に戻って変更する手間が省け、生産性が向上する。
【0043】
図5を参照して見当調整を説明する。見当調整する場合、可搬制御ユニット42を見当調整モードに切り換える(
図5)。
図5に示すように、見当調整モードでは、表示部42dに、機側制御ユニット40の通信部40fを介して受信した印刷ユニット10の見当信号波形A(g1)と見当信号波形B(g2)とが表示される。波形検出見当誤差は、見当マーク6A、6Bの検出時刻の差分Δtであり、波形検出見当誤差をゼロにする制御は見当誤差補償器により自動的に実行される。この状態で、オペレータ3は、目視で実際の印刷物から実体見当誤差を確認しながら、実体見当誤差と波形検出見当誤差とのオフセットが小さくなるように見当調整部50のオフセット調整部を調整する。この構成によれば、オペレータ3は、各印刷ユニット10の近傍で、オフセットを確認しながら、見当調整部50を操作できるので、機側制御ユニット40で波形検出見当誤差を確認する手間が省け、生産性が向上する。
【0044】
以上のように構成された本実施形態の見当制御システム20の特徴を説明する。見当制御システム20は、多色刷印刷システムの印刷ユニット10の見当調整を制御する見当制御システムであって、印刷ユニット10の生産条件を設定するための固定式制御盤であって、当該印刷ユニット10の見当に関する見当情報を取得する機側制御ユニット40と、機側制御ユニット40から見当情報を取得して表示可能な可搬制御ユニット42と、を備え、可搬制御ユニット42は、機側制御ユニット40を操作可能に構成される。この構成によれば、オペレータ3は、印刷ユニット10の近傍で見当情報を確認しながら見当調整できるので、機側制御ユニット40に戻って見当情報を確認する手間が省け、生産性が向上する。
【0045】
以上が、多色刷印刷システム100の見当制御システム20の基本的な構成とその動作である。
【0046】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【0047】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0048】
実施形態では、ドクター調整部54が、機側制御ユニット40または可搬制御ユニット42に制御される例を説明したが、これには限定されない。
図8は、変形例の見当制御システム20の構成図であり、
図9は変形例の見当制御システム20のブロック図である。例えば、
図8に示すように、ドクター調整部54は、印刷ユニット10の機側に設けられ、ドクター調整部54の空圧バルブやハンドル(不図示)をオペレータ3が手動で調整する構成であってもよい。この構成では、
図6の表示画面は、手動でドクター調整した後の確認等に使用できる見当誤差変動の波形として機能する。また、この構成では、
図9に示すように、機側制御ユニット40は、ドクター制御部40eを備えなくてもよい。
【0049】
実施形態では、多色刷印刷システム100が第1印刷ユニット10Aと第2印刷ユニット10Bの2つの印刷ユニットを備える例を説明したが、これには限定されず、多色刷印刷システム100は、n(≧3)個の印刷ユニットを備えていてもよい。この場合、見当制御システム20は、第1センサ30aおよび第2センサ30bを(n-1)セット備えてもよい。
【0050】
実施形態では、1台の可搬制御ユニット42を使用する例を説明したが、複数の可搬制御ユニット42を使用してもよい。
【0051】
実施形態では、見当調整部50として、オフセット調整部を有する例を説明したが、これに限定されない。例えば、見当調整部として、ローラ位置を調整するで、ウェブと版胴の位置関係を補正する見当合わせローラ(コンペンセータローラ)を備えてもよい。
【0052】
上述した各実施形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0053】
6A 第1見当マーク、 6B 第2見当マーク、 10 印刷ユニット、 10A 第1印刷ユニット、 10B 第2印刷ユニット、 20 見当制御システム、 30 見当検出部、 40 機側制御ユニット、 42 可搬制御ユニット、 100 多色刷印刷システム。