(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】シール材
(51)【国際特許分類】
F16J 15/14 20060101AFI20240422BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F16J15/14 B
F16J15/10 A
(21)【出願番号】P 2020203063
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】世良 範幸
(72)【発明者】
【氏名】許斐 和彦
(72)【発明者】
【氏名】草川 公一
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-002376(JP,A)
【文献】特開平11-204167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/14
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に連続した環状に形成された被覆部と、
発泡体によって形成されて前記被覆部に被覆されたシール材本体と、
を備え、
前記被覆部は、
軸方向一端が開口され、周方向に連続した環状の封入部を有し、前記シール材本体の長手方向が前記封入部の周方向に沿うように前記シール材本体が前記封入部内に配置される環状の被覆部本体と、
軸方向一方から前記封入部を閉止し、前記封入部の閉止状態では、前記シール材本体が前記封入部内に封入される閉止部と、
を含んで構成されるシール材。
【請求項2】
前記シール材本体は、周方向一部が途切れて、この途切れた部分で周方向に不連続となる周方向一部が欠けた環状とされた請求項1に記載のシール材。
【請求項3】
前記被覆部は、前記シール材本体の復元性に影響を与えない程度に柔軟とされた請求項1
又は請求項2に記載のシール材。
【請求項4】
前記シール材本体を形成する前記発泡体は、連続気泡構造を有する請求項1から
請求項3の何れか1項に記載のシール材。
【請求項5】
前記被覆部は、少なくとも一つの通気部を有する請求項1から
請求項4の何れか1項に記載のシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材間をシールするためのシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
部材間における気密性、防水性等のシール性の低下の抑制を必要とする施工箇所にはシール材が用いられ、この種のシール材には、ポリウレタン等の発泡体により形成されたものがある。また、この種の発泡体によって形成されたシール材には、発泡体の表面に被膜を形成されたものがある。
【0003】
このような被膜は、例えば、発泡体が被膜を構成する液状の合成樹脂材に浸漬され、発泡体の表面に塗布された液状の合成樹脂材を硬化させることによって得ることができる(一例として、下記特許文献1を参照)。また、例えば、発泡体の表面を加熱して溶融させることによって、発泡体の表面側に被膜を得ることができる(一例として、下記特許文献2を参照)。さらに、被膜を形成する合成樹脂材が発泡体の表面に膜状に積層されることで発泡体の表面に被膜を得ることができる(一例として、下記特許文献3を参照)。
【0004】
ところで、施工箇所によっては、環状のシール材が必要になることがある。シール材を環状とするには、例えば、シール材の長手方向に対して交差する方向へシール材を曲げてシール材の長手方向両端を突き合わせることでシール材を疑似的な環状にできる。しかしながら、このようにシール材を疑似的に環状にした構成では、突き合わせたシール材の長手方向両端間は連続しておらず、シール性の観点で改良の余地が多分にある。また、シール材を曲げる際に、シール材の曲部分の曲げの曲率中心側の部分に、シワ(折れ皺)が形成され、曲率中心軸方向の止水性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭53-16081号公報
【文献】特開2006-97790号公報
【文献】特開2008-138110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、シール性の低下を抑制できる環状のシール材を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のシール材は、周方向に連続した環状に形成された被覆部と、発泡体によって形成されて前記被覆部に被覆されたシール材本体と、を備え、前記被覆部は、軸方向一端が開口され、周方向に連続した環状の封入部を有し、前記シール材本体の長手方向が前記封入部の周方向に沿うように前記シール材本体が前記封入部内に配置される環状の被覆部本体と、軸方向一方から前記封入部を閉止し、前記封入部の閉止状態では、前記シール材本体が前記封入部内に封入される閉止部と、を含んで構成される。
【0008】
請求項1に記載のシール材では、シール材本体が周方向に連続した環状又は周方向一部が欠けて、この欠けた部分で不連続となる周方向一部が欠けた環状にされる。このようなシール材本体は、被覆部によって被覆される。被覆部は、周方向に連続した環状に形成される。このような構成のシール材が施工箇所に施工された状態では、被覆部の内周面及び外周面の少なくとも一方が施工箇所の壁面へ当接される。これによって、施工箇所における環状である被覆部の軸方向のシール性の低下を抑制できる。
また、本発明では、被覆部は、被覆部本体と、閉止部とを含んで構成される。被覆部本体には、封入部が形成される。封入部は、環状とされ、その軸方向一方へ開口されている。シール材本体は、その長手方向が封入部の周方向に沿うように撓曲された状態で封入部内に配置される。この状態で、封入部は、被覆部本体の軸方向一方の側、すなわち、封入部の開口側から閉止部によって閉止される。これによって、シール材本体は、封入部内に封入される。このような構成では、被覆部本体の封入部の開口端が閉止部によって閉止されることによって封入部内にシール材本体を良好に封入できる。
【0009】
ここで、本シール材では、上記のように、シール材本体が被覆部によって被覆されるため、シール材本体のシール性等が特に高くなくても、施工箇所における環状である被覆部の軸方向のシール性の低下を抑制できる。しかも、被覆部は、周方向に連続した環状である。このため、シール材本体が被覆部の周方向に連続していなくても、施工箇所における環状である被覆部の軸方向のシール性の低下を抑制できる。
【0010】
なお、本発明において『環状』とは、円形や楕円形のみならず、矩形等の多角形等であってもよく、すなわち、内周部と外周部とを有し、周方向に連続した形状であれば、その具体的な形状に限定されるものではない。
【0011】
請求項2に記載のシール材は、請求項1に記載のシール材において、前記シール材本体は、周方向一部が途切れて、この途切れた部分で周方向に不連続となる周方向一部が欠けた環状とされている。
【0012】
請求項2に記載のシール材では、シール材本体は、周方向一部が途切れた環状とされる。このため、シール材本体は、周方向一部の途切れた部分で周方向に不連続になる。シール材本体がこのような構成であっても、被覆部は、周方向に連続している。このため、施工箇所における環状である被覆部の軸方向のシール性の低下を抑制できる。
【0013】
また、シール材本体は、周方向一部が欠けた環状である。このため、例えば、シール材本体を直線的な長尺状に形成し、被覆部の周方向長さに応じた長さにシール材本体を切り、周方向一部が欠けた環状にシール材本体を撓曲させた状態でシール材本体を被覆部に被覆させることが可能になる。これによれば、必要な長さだけシール材本体を切ればよいため、シール材本体に無駄が生じることを抑制できる。
【0016】
請求項3に記載のシール材は、請求項1又は請求項2に記載のシール材において、前記被覆部は、前記シール材本体の復元性に影響を与えない程度に柔軟とされている。
【0017】
請求項3に記載のシール材では、被覆部は、シール材本体より柔軟とされる。このため、シール材本体を弾性変形させることができる程度の荷重によって被覆部を弾性変形させることができ、弾性変形されたシール材本体の復元力によってシール材本体と共に弾性変形された被覆部を復元させることができる。これによって、シール材の施工箇所への施工の作業性の低下を抑制できる。
【0018】
請求項4に記載のシール材は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のシール材において、前記シール材本体を形成する前記発泡体は、連続気泡構造を有する。
【0019】
請求項4に記載のシール材では、シール材本体が連続気泡構造を有する発泡体とされる。ここで、連続気泡構造を有する発泡体は、例えば、独立気泡構造を有する発泡体等に比べて容易に圧縮変形させることができる。また、シール材としての復元性に優れる。これによって、シール材の施工箇所への施工の作業性の低下を抑制できる。
【0020】
請求項5に記載のシール材は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載のシール材において、前記被覆部は少なくとも一つの通気部を有する。
【0021】
請求項5に記載のシール材では、被覆部が少なくとも一つの通気部を有するとされる。ここで、被覆部の少なくとも一部に通気部を設けることで、内部空気が放出できるような構造となり、通気部がない場合と比較して、シール材の圧縮および復元が容易になる。
【発明の効果】
【0022】
以上、説明したように、本発明に係るシール材では、環状とされてもシール性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施の形態に係るシール材の分解斜視図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るシール材の製造に用いられる第1シート部材、第2シート部材、シール材本体の分解斜視図である。
【
図3】(A)は、
図2の3A-3A線に沿って切った断面図で、(B)は、第1シート部材と第2シート部材とが重なった状態を示す(A)に対応する断面図、(C)は、シール材が形成された状態を示す(B)に対応する断面図である。
【
図4】第1の実施の形態に係るシール材の変形例を示す
図3(C)に対応する断面図である。
【
図5】第2の実施の形態に係るシール材の
図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の各実施の形態を
図1から
図5の各図に基づいて説明する。なお、
図1から
図5の各図において適宜示される矢印Lは、伸直状態でのシール材10の長手方向一方の側を示す。また、矢印Tは、シール材10の厚さ方向一方及びシール材10の中心軸線方向側を示す。さらに、矢印Wは、シール材10の幅方向一方の側を示し、矢印Cは、シール材10の径方向内側を示す。
【0025】
また、以下の各実施の形態を説明するにあたり、説明している実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0026】
<第1の実施の形態の構成>
(シール材10の構造)
図1に示されるように、第1の実施の形態に係るシール材10は、被覆部12を備えている。被覆部12は、比較的軟質で可撓性を有する合成樹脂材によって形成されている。被覆部12は、被覆部本体14を備えている。被覆部本体14は、底壁16を備えている。底壁16は、薄肉のシート状(又はフィルム状)とされ、底壁16の厚さ方向は、シール材10の厚さ方向(
図1の矢印T方向及びその反対方向)とされている。底壁16は、シール材10の厚さ方向側から見た平面視で円形の環状に形成されている。
【0027】
また、被覆部本体14は、内周壁18及び外周壁20を備えている。内周壁18及び外周壁20の各々は、薄肉の円筒形状とされている。内周壁18の外径寸法は、概ね、底壁16の内径寸法と同じ大きさとされている。内周壁18におけるシール材10の中心軸線方向他方(
図1の矢印Tとは反対方向)の端部は、底壁16の内周部で底壁16の周方向に連続して底壁16に繋がっている。
【0028】
これに対して、外周壁20の外径寸法は、概ね、底壁16の外径寸法と同じ大きさとされている。外周壁20におけるシール材10の中心軸線方向他方(
図1の矢印Tとは反対方向)の端部は、底壁16の外周部で底壁16の周方向に連続して底壁16に繋がっている。被覆部本体14において底壁16におけるシール材10の厚さ方向一方(
図1の矢印T方向)の側で内周壁18と外周壁20との間の空間は、封入部22とされる。
【0029】
封入部22の内側には、シール材本体24が配置される。シール材本体24は、例えば、連続気泡構造を有する発泡体によって形成されている。シール材本体24は撥水性を有していることが好ましい。また、シール材本体24の剛性は、被覆部12の剛性によって復元性に影響を受けない程度に高い。
図1の右側部分に示されるように、シール材本体24は、長尺状に形成される。また、
図3(A)に示されるように、本実施の形態では、シール材本体24の長手方向に対して直交する方向にシール材本体24を切った断面形状は、略矩形とされている。シール材本体24の厚さ寸法は、そのままの状態の厚さまたは圧縮された状態の厚さで被覆部12の被覆部本体14における封入部22の深さ寸法以下とされ、特に本実施の形態では、封入部22の深さ寸法に概ね等しく設定されている。
【0030】
シール材本体24の長手方向寸法は、被覆部本体14の内周壁18におけるシール材10の径方向外側の面と、被覆部本体14の外周壁20におけるシール材10の径方向内側の面との間の略中央を通る仮想円の円周長未満でも良いが、同じか同程度が好ましい。シール材本体24が被覆部本体14の封入部22の内側に配置された状態では、シール材本体24は、封入部22の形状に沿って略円形に撓曲されている。
【0031】
一方、シール材10の被覆部12は、閉止部26を備えている。閉止部26は、薄肉のシート状(又はフィルム状)とされ、閉止部26の厚さ方向は、シール材10の厚さ方向(
図1の矢印T方向及びその反対方向)とされている。閉止部26は、シール材10の厚さ方向側から見た平面視で円形の環状に形成されている。閉止部26の内径寸法は、被覆部本体14の内周壁18の内径寸法に概ね等しく設定されており。閉止部26の外径寸法は、被覆部本体14の外周壁20の外径寸法に概ね等しく設定されている。
【0032】
図3(C)に示されるように、閉止部26は、被覆部本体14におけるシール材10の厚さ方向一方(
図3(C)の矢印T方向)の側、すなわち、被覆部本体14の封入部22の開口側で被覆部本体14に対する同軸上に配置されている。被覆部本体14の内周壁18及び外周壁20の各々の底壁16とは反対側の端部は、シール材10の周方向に連続して閉止部26に接合されている。これによって、被覆部本体14と閉止部26は、一体とされ、被覆部本体14の封入部22は、閉止部26によって閉止され、シール材本体24は、被覆部本体14の封入部22内に封入される。
【0033】
(シール材10の製造方法)
次に、本シール材10の製造方法について説明する。
【0034】
図3(A)に示されるように、本シール材10の製造工程では、第1シート部材32及び第2シート部材34が用いられる。第1シート部材32及び第2シート部材34の各々は、被覆部12を構成する材料によって形成される。第1シート部材32は、被覆部本体14に相当する部分を備えている。
【0035】
図示は省略するが第1シート部材32には、被覆部本体14に相当する部分が複数設けられており、これらの被覆部本体14に相当する部分は、第1シート部材32の厚さ方向に対して直交する方向に行列状又は千鳥格子状に並んでいる。
図2及び
図3(A)に示されるように、第1シート部材32は、外側シート部36を備えている。複数の被覆部本体14に相当する部分において、被覆部本体14の外周壁20における第1シート部材32の厚さ方向一方の側の端部は、外側シート部36によって繋がっている。
【0036】
また、第1シート部材32は、内側シート部38を備えている。内側シート部38は、円形とされており、内側シート部38の外径寸法は、被覆部本体14の内周壁18の内径寸法に概ね等しい。内側シート部38は、第1シート部材32において被覆部本体14の内周壁18に相当する部分の内側に設けられている。
【0037】
内側シート部38の外周部は、第1シート部材32において内周壁18に相当する部分におけるシール材10の厚さ方向一方(
図2及び
図3(A)の矢印T方向)側の端部に内側シート部38の周方向に連続して繋がっている。このため、円筒状とされた第1シート部材32において内周壁18に相当する部分におけるシール材10の厚さ方向一方の端部は、内側シート部38によって閉止されている。
【0038】
以上の構成の第1シート部材32は、例えば、加熱されることで軟化されたシート状(フィルム状)の熱可塑性の合成樹脂材を金型に合わせて真空吸引する真空成形によって形成される。なお、第1シート部材32の製造方法としては、射出成形やブロー成形、圧縮成形であってもよく、上記の真空成形に限定されることなく、広く適用が可能である。
【0039】
一方、第2シート部材34は、薄肉のシート状(フィルム状)とされる。
図2及び
図3(A)に示されるように、第1シート部材32において被覆部本体14の封入部22に相当する部分に対応して略円形(略C字形状)に撓曲されたシール材本体24が、十分に長い長尺状に形成される。このようなシール材本体は、被覆部本体14の内周壁18におけるシール材10の径方向外側の面と、被覆部本体14の外周壁20におけるシール材10の径方向内側の面との間の略中央を通る仮想円の円周長以下の必要な長さで切断される。
【0040】
このように切断されたシール材本体24は、被覆部12の被覆部本体14の封入部22に倣うように略円形(略C字形状)に撓曲される。このように撓曲されたシール材本体24は、
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、シール材10の厚さ方向一方(
図3(A)及び
図3(B)の矢印T方向)側から第1シート部材32において封入部22に相当する部分の内側に配置される。
【0041】
さらに、シール材本体24が第1シート部材32において封入部22に相当する部分の内側に配置された状態で、第2シート部材34がシール材10の厚さ方向一方側から第1シート部材32上に配置される。この状態で、第1シート部材32と第2シート部材34とが溶着される(
図3(B)図示状態)。これによって、シール材本体24が封入部22に封入(密封)される。
【0042】
次いで、互いに溶着された第1シート部材32及び第2シート部材34においてシール材10に相当する部分と、それ以外の部分とが分離される。これによって、シール材10が形成される。
【0043】
このとき、被覆部で密封されたシール材10のまま圧縮すると、圧縮空気の逃げ道が無いため、容易に圧縮できないが、そのまま使うこともできる。しかし、被覆部の少なくとも一部に通気孔を設けることで、内部空気が放出できるような構造として使うこともでき、シール材10の圧縮および復元が容易になる。
【0044】
<第1の実施の形態の作用、効果>
以上の構成の本シール材10は、水等に対するシールが必要とされる施工箇所に配置される。シール材10は、厚さ方向に圧縮された状態で施工箇所に配置(施工)され、施工箇所を厚さ方向にシールする。これによって、施工箇所における水等に対するシール性を得ることができる。
【0045】
ここで、本シール材10は、シール材本体24が被覆部12によって被覆される。このため、シール材本体24そのものの水等に対するシール性が特に高くなくても、施工箇所における水等に対するシール性が低下することを抑制できる。しかも、被覆部12は、シール材10の周方向に連続した環状である。このため、シール材10の周方向に被覆部12を機械的に繋ぐような繋ぎ目や切れ目、連結部分等が形成されない。これによって、シール材10におけるシール材10の厚さ方向のシール性が、シール材10の周方向一部で低下することを抑制できる。
【0046】
さらに、シール材本体24がシール材10の周方向に連続した環状の被覆部12によって被覆される。このため、封入部22内のシール材本体24の長手方向両端の間に隙間等(略円形に撓曲されたシール材本体24において周方向一部が欠けて不連続となった部分)が形成されても、このような隙間等を水が通ることがない。これによって、シール材本体24に上記のような隙間等が形成されても、シール材10による水等に対するシール性の低下を抑制できる。また、本シール材10はあらかじめ環状に成形された被覆部12を有するため、従来の長尺状のシール材を環状にして使用するときのような皺の発生がなく、皺からの漏水や気密の低下を防止できる。
【0047】
また、このように、シール材本体24に上記のような隙間等が形成されても、シール材10による水等に対するシール性の低下を抑制できるため、シール材本体24そのものは、長尺状に形成しても、シール材10のシール性の低下を抑制できる。このため、シール材本体24は、長尺状の状態から被覆部本体14の封入部22内へ配置するための必要な長さ分だけ切断して略円形に撓曲させればよい。これにより、シール材本体24を被覆部本体14の封入部22内に配置に際して、シール材本体24に無駄が生じることを抑制できる。このため、シール材10の製造コストが高くなることを抑制できる。
【0048】
また、シール材本体24は、連続気泡構造を有する発泡体によって形成される。このような連続気泡構造を有する発泡体は、一般的に独立気泡構造を有する発泡体よりも柔軟である。しかも、被覆部12は、シール材本体24よりも柔軟である。
【0049】
さらに、被覆部本体14を形成するための第1シート部材32及び閉止部26を形成するための第2シート部材34は、第1シート部材32及び第2シート部材34を成形する際に、第1シート部材32及び第2シート部材34を構成する合成樹脂材に着色料を添加することで、第1シート部材32及び第2シート部材34を容易に所望の色に着色できる。このため、例えば、シール材10の施工箇所が外部へ露出しているような場合、シール材10を施工した後の施工箇所の意匠性を向上できる。
【0050】
(変形例)
図4は、第1の実施の形態の変形例を示したものである。この変形例では被覆部12の外周部に通気部28が設けられている。この構造によれば、被覆部12で覆われたシール材10の内部と外部が通気部28によって連通された状態となる。このため、第1の実施の形態のように密封されたシール材10の構造と比較して、シール材10を圧縮したり復元したりすることが容易となる。通気部28は外周部以外の場所に設けてもよいし、一つでなく複数設けても良い。
【0051】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0052】
図5(C)に示されるように、本実施の形態では、被覆部12は、一対の被覆部構成部材42を備えている。これらの被覆部構成部材42は、基本的に前記第1の実施の形態における被覆部本体14と同様に底壁16、内周壁18、外周壁20を備えている。一対の被覆部構成部材42の一方の封入部22の開口方向は、シール材10の厚さ方向(
図5(C)の矢印T方向及びその反対方向)の一方の側とされている。これに対して、一対の被覆部構成部材42の他方の封入部22の開口方向は、シール材10の厚さ方向の他方の側とされている。
【0053】
各々の被覆部構成部材42の封入部22の深さ寸法(封入部22におけるシール材10の厚さ方向寸法)は、シール材本体24におけるシール材10の厚さ方向寸法未満とされている。さらに、一方の被覆部構成部材42の封入部22の深さ寸法と他方の被覆部構成部材42の封入部22の深さ寸法との和は、シール材本体24におけるシール材10の厚さ方向寸法以上とされている。
【0054】
一対の被覆部構成部材42は、シール材10の厚さ方向に互いに対向配置されている。一方の被覆部構成部材42の内周壁18及び外周壁20の各々の底壁16とは反対側の端部と、他方の被覆部構成部材42の内周壁18及び外周壁20の各々の底壁16とは反対側の端部とは溶着されており、これによって、封入部22の内側にシール材本体24が封入(密封)されている。
【0055】
すなわち、本実施の形態では、一対の被覆部構成部材42の一方の封入部22の開口端は、他方の被覆部構成部材42によって閉止される。すなわち、一対の被覆部構成部材42の何れか一方が特許請求の範囲で言うところの「被覆部本体」に相当する構成になり、何れか他方が特許請求の範囲で言うところの「閉止部」に相当する構成になる。
【0056】
本実施の形態に係るシール材10の製造には、シート部材52が用いられる。シート部材52は、基本的に前記第1の実施の形態における第1シート部材32と同じ構造とされている。すなわち、シート部材52は、被覆部構成部材42に相当する部分、外側シート部36、内側シート部38を含んで構成される。
【0057】
本実施の形態に係るシール材10を形成する際には、
図5(A)及び
図5(B)に示されるように、一方のシート部材52において被覆部構成部材42の封入部22に相当する部分の内側にシール材本体24が配置される。この状態で、シール材本体24が他方のシート部材52において被覆部構成部材42に相当する部分により、一方のシート部材52における封入部22に相当する部分の開口側から覆われる。これによって、シール材本体24が他方のシート部材52における封入部22に相当する部分の内側に入る。
【0058】
この状態で、一対のシート部材52の互いに対向する側の面が溶着される。これによって、シール材本体24が、一対のシート部材52における封入部22に相当する部分に封入(密封)される。次いで、互いに溶着された一対のシート部材52のシール材10に相当する部分と、それ以外の部分とが分離され、これによって、シール材10が形成される。
【0059】
以上のような構成の本実施の形態に係るシール材10は、基本的に前記第1の実施の形態に係るシール材10と同様の作用を奏し、基本的に前記第1の実施の形態に係るシール材10と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、一対のシート部材52の各々を同じ構造とすることが可能である。このため、シール材10を製造するための部品点数の軽減が可能になり、コストの低減が可能になる。
【0061】
なお、第1の実施の形態では、第1シート部材32と第2シート部材34とが溶着によって一体にされ、第2の実施の形態では、一対のシート部材52が溶着によって一体にされた。この溶着は、熱溶着であってもよいし、超音波溶着であってもよく、溶着の具体的な態様に限定されず、広く適用できる。また、第1シート部材32と第2シート部材34とは接着剤等によって接着される構成であってもよい。更には、第1の実施の形態における第2シート部材34の厚さ方向第1シート部材32側の面に接着剤等が予め塗布された接着シートや接着フィルムを用いてもよい。
【0062】
また、上記の各実施の形態では、長尺状のシール材本体24を撓曲させて封入部22の内側に配置する構成であった。しかしながら、シール材本体24が予め封入部22の形状に対応した環状に成形されてもよいし、シール材本体24がシール材10の中心軸線方向、径方向、周方向に分割された状態で封入部22内に配置される構成であってもよい。
【0063】
さらに、上記の各実施の形態では、シール材本体24と被覆部12とが別体で構成された。しかしながら、例えば、予め環状に成形されたシール材本体24に対して、被覆部12を形成するコーティング剤を塗布する構成にしてもよい。すなわち、被覆部12は、周方向に連続した環状に形成されれば、その材質や製造方法に限定されることなく広く適用できる。
【0064】
また、上記の各実施の形態では、シール材10は、シール材10の厚さ方向側から見て円形の環状とされていた。しかしながら、シール材10は、楕円形であってもよいし、三角形や四角形等の多角形であってもよい。すなわち、本発明で言う「環状」は、円形に限定されることなく、周方向に連続した形状であれば広く適用できる。
【0065】
さらに、第2の実施の形態のようなシール材10に通気部28を設けることもでき、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0066】
10 シール材
12 被覆部
14 被覆部本体
16 底壁
18 内周壁
20 外周壁
22 封入部
24 シール材本体
26 閉止部
28 通気部
32 第1シート部材
34 第2シート部材
36 外側シート部
38 内側シート部
42 被覆部構成部材(被覆部本体、閉止部)
52 シート部材