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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240422BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B63/10 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020217503
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102649
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭司
(72)【発明者】
【氏名】仁平 直也
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186789(JP,A)
【文献】特開2020-82891(JP,A)
【文献】特開2016-68799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0159217(US,A1)
【文献】特開2018-1867(JP,A)
【文献】特開2007-168533(JP,A)
【文献】国際公開第2020/100584(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0297582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
A01B 63/00 - 63/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に設けられ且つ圃場内で農作業を行う作業装置を連結可能な昇降装置と、
前記作業装置を昇降させるリフトシリンダに供給される作動油の圧力を制御する制御弁と、
前記制御弁に接続されたリリーフ弁と、
前記車体に乗車した運転者が覚醒しているか否かを検出する覚醒検出装置と、
前記運転者が覚醒していない場合、前記制御弁の開度を全開に保持して、前記リリーフ弁の作動に伴って発生する音により、前記運転者の覚醒を促す覚醒制御を実行する制御装置と、
を備えている作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記運転者が覚醒するまで、前記運転者の覚醒を促すことを継続する請求項に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置に接続され、前記作業車両の位置を検出する測位装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記作業車両が圃場外にある場合には、前記覚醒制御を禁止する請求項1又は2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トラクタ、コンバイン、田植え機等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業機械を運転する運転者の覚醒を検出する技術として特許文献1が知られている。農業機械の操作支援システムでは、制御装置は、機械位置と圃場情報とに基づいて圃場の境界と機械位置との距離差を演算する第1演算部と、生体情報と距離差とに基づいて農業機械を制御する第1制御部と、を備え、第1制御部は、距離差が閾値以下で且つ、生体情報が、作業者が覚醒していないことを示している場合、農業機械を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-186789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の農業機械の操作支援システムでは、運転者(作業者)が覚醒していない場合は農業機械を停止していたため、農業機械によって作業を続けることができなかった。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、運転者の覚醒を促すことで、作業を続けることができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
作業車両は、車体と、前記車体に設けられ且つ圃場内で農作業を行う作業装置を連結可能な昇降装置と、前記作業装置を昇降させるリフトシリンダに供給される作動油の圧力を制御する制御弁と、前記制御弁に接続されたリリーフ弁と、前記車体に乗車した運転者が覚醒しているか否かを検出する覚醒検出装置と、前記運転者が覚醒していない場合、前記
制御弁の開度を全開に保持して、前記リリーフ弁の作動に伴って発生する音により、前記運転者の覚醒を促す覚醒制御を実行する制御装置と、を備えている
【0008】
前記制御装置は、前記運転者が覚醒するまで、前記運転者の覚醒を促すことを継続する。
作業車両は、前記制御装置に接続され、前記作業車両の位置を検出する測位装置をさらに備え、前記制御装置は、前記作業車両が圃場外にある場合には、前記覚醒制御を禁止する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転者の覚醒を促すことで、作業を続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】変速装置の構成図である。
図2】昇降装置の斜視図である。
図3】作業車両の制御ブロック図を示す図である。
図4A】制御装置から制御弁に出力する制御信号を示す図である。
図4B】作業装置を繰り返し昇降する状態を示す図である。
図5A】第1変速クラッチ、第2変速クラッチを作動させる際の制御信号を示す図である。
図5B】原動機回転数の変化を示す図である。
図6】運転者が覚醒しているときと覚醒していないときの動作フローである。
図7】設定画面M1を示す図である。
図8】作業車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図8は、作業車両の一例を示している。作業車両は、トラクタ、田植機、コンバイン等の農業機械である。
図8に示すように、作業車両1は、走行装置7を有する車体3と、原動機4と、変速装置5と、連結装置8と、操舵装置11とを備えている。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有する装置である。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。原動機4は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関、電動モータ等である。この実施形態では、原動機4は、ディーゼルエンジンである。
【0012】
変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切換可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切換が可能である。車体3にはキャビン9が設けられ、当該キャビン9内には運転席10が設けられている。
また、車体3の後部には、連結装置8が設けられている。連結装置8には、作業装置2が着脱可能である。この実施形態では、連結装置8は、装着された作業装置2を昇降する昇降装置である。
【0013】
作業装置2は、圃場(対地)、圃場に作付けした作物等に対して様々な作業を行う装置であり、作業車両1に連結される。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0014】
図1に示すように、変速装置5は、主軸(推進軸)5aと、シャトル部5bと、主変速部5cと、副変速部5dと、PTO動力伝達部5eと、前変速部5fと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケースに回転自在に支持され、当該推進軸5aには、原動機4のクランク軸からの動力が伝達される。
シャトル部5bは、シャトル軸5b1と、前後進切換部5b2とを有している。シャトル軸5b1には、推進軸5aからの動力が伝達される。前後進切換部5b2は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によってシャトル軸5b1の回転方向、即ち、作業車両1の前進及び後進を切り換える。
【0015】
主変速部5cは、入力された動力を無段に変更する無段変速機構である。無段変速機構は、油圧ポンプ5c1と、油圧モータ5c2と、遊星歯車機構5c3とを有している。油圧ポンプ5c1は、シャトル部5bの出力軸5b3からの動力により回転する。油圧ポンプ5c1は、例えば、斜板12を有する可変容量ポンプであって、斜板12の角度(斜板角)を変更することにより、当該油圧ポンプ5c1から吐出する作動油の流量を変更することができる。油圧モータ5c2は、配管等の油路回路を介して油圧ポンプ5c1から吐出された作動油によって回転するモータである。油圧ポンプ5c1の斜板角を変更したり、油圧ポンプ5c1へ入力する動力を変更することによって、油圧モータ5c2の回転数を変更することができる。
【0016】
遊星歯車機構5c3は、複数のギア(歯車)と、入力軸及び出力軸等の動力伝達軸とで構成された機構であって、油圧ポンプ5c1の動力が入力される入力軸13と、油圧モータ5c2の動力が入力される入力軸14と、動力を出力する出力軸15とを含んでいる。遊星歯車機構5c3は、油圧ポンプ5c1の動力と、油圧モータ5c2の動力とを合成して合成した動力を出力軸15に伝達する。
【0017】
したがって、主変速部5cによれば、油圧ポンプ5c1の斜板12の斜板角、原動機4の回転数等を変更することによって、副変速部5dに出力する動力を変更することができる。なお、主変速部5cは、無段変速機構で構成しているが、ギアによって変速を行う有段変速機構であってもよい。
副変速部5dは、動力を変速する有段の複数のギア(歯車)を有する変速機構であって、複数のギアの接続(噛合)を適宜変更することによって、遊星歯車機構5c3の出力軸15から当該副変速部5dに入力された動力を変更して出力する(変速する)。副変速部5dは、入力軸5d1と、第1変速クラッチ5d2と、第2変速クラッチ5d3と、出力軸5d4とを含んでいる。入力軸5d1は、遊星歯車機構5c3の出力軸15の動力が入力される軸であり、入力された動力を、ギア等を介して第1変速クラッチ5d2及び第2変速クラッチ5d3に入力する。第1変速クラッチ5d2及び第2変速クラッチ5d3のそれぞれの接合及び切断を切り換えることにより、入力された動力は変更され、出力軸5d4に出力される。出力軸5d4に出力された動力は、後輪デフ装置20Rに伝達される。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。
【0018】
PTO動力伝達部5eは、PTOクラッチ5e1と、PTO推進軸5e2と、PTO変速部5e3とを有している。PTOクラッチ5e1は、例えば、油圧クラッチ等で構成され、油圧クラッチの入切によって、推進軸5aの動力をPTO推進軸5e2に伝達する状態(接続状態)と、推進軸5aの動力をPTO推進軸5e2に伝達しない状態(切断状態)とに切り換わる。PTO変速部5e3は、変速クラッチと複数のギア等を含んでいて、PTO推進軸5e2からPTO変速部5e3へ入力された動力(回転数)を変更して出力する。
PTO変速部5e3の動力は、ギア等を介してPTO軸16に伝達される。
【0019】
前変速部5fは、第1前変速クラッチ5f1と、第2前変速クラッチ5f2とを有している。第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2は、副変速部5dからの動力が伝達可能であって、例えば、出力軸5d4の動力が、ギア及び伝動軸を介して伝達される。第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2からの動力は、前伝動軸22を介して前車軸21Fに伝達可能である。具体的には、前伝動軸22は、前輪デフ装置20Fに接続され、前輪デフ装置20Fは、前輪7Fが取り付けられた前車軸21Fを回転自在に支持している。
【0020】
第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2は、油圧クラッチ等で構成されている。第1前変速クラッチ5f1には油路が接続され、当該油路には油圧ポンプから吐出した作動油が供給される制御弁23に接続されている。第1前変速クラッチ5f1は、制御弁23の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。第2前変速クラッチ5f2には油路が接続され、当該油路には制御弁24に接続されている。第2前変速クラッチ5f2は、制御弁24の開度によって接続状態と切断状態とに切り換わる。制御弁23及び制御弁24は、例えば、電磁弁付き二位置切換弁であって、電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、接続状態又は切断状態に切り換わる。
【0021】
第1前変速クラッチ5f1が切断状態で且つ第2前変速クラッチ5f2が接続状態である場合、第2前変速クラッチ5f2を通じて副変速部5dの動力が前輪7Fに伝達される。これにより、前輪及び後輪が動力によって駆動する四輪駆動(4WD)で且つ前輪と後輪との回転速度が略同じとなる(4WD等速状態)。一方、第1前変速クラッチ5f1が接続状態で且つ第2前変速クラッチ5f2が切断状態である場合、四輪駆動になり且つ前輪の回転速度が後輪の回転速度に比べて速くなる(4WD倍速状態)。また、第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2が接続状態である場合、副変速部5dの動力が前輪7Fに伝達されないため、後輪が動力によって駆動する二輪駆動(2WD)となる。
【0022】
図2に示すように、連結装置(昇降装置)8は、作業装置2を連結する端部側が上昇又は下降する方向に車体3に設けられた連結部材と、伸縮によって連結部材の端部側を上昇又は下降させる油圧シリンダとを有している。
連結部材は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8dである。油圧シリンダは、リフトシリンダ8eである。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。図2に示すように、リフトシリンダ8eは、制御弁34を介して油圧ポンプと接続されている。制御弁34は、電磁弁等であって、リフトシリンダ8eに作動油を供給することによって当該リフトシリンダ8eを伸縮させる。
【0023】
ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0024】
図3に示すように、作業車両1は、複数の補助弁27を有している。複数の補助弁27は、油圧ポンプ28から作動油が供給される油圧切換弁である。複数の補助弁27は、出力ポートを有しており、任意の出力ポートに油圧ホース等が接続可能である。補助弁27の任意の出力ポートに接続した油圧ホースを、作業装置2の油圧アタッチメントに接続することにより、作業装置2に装着された様々な油圧アタッチメントを作動させることができる。
【0025】
図3に示すように、操舵装置11は、ハンドル(ステアリングホイール)11aと、ハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cと、を有している。補助機構11cは、制御弁35と、ステアリングシリンダ32とを含んでいる。制御弁35は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁35は、操舵軸11bの操舵によっても切換可能である。ステアリングシリンダ32は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)36に接続されている。したがって、ハンドル11aを操作すれば、当該ハンドル11aに応じて制御弁35の切換位置及び開度が切り換わり、当該制御弁35の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ32が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、上述した構成に限定されない。
【0026】
図3に示すように、作業車両1は、複数の検出装置41を備えている。複数の検出装置41は、作業車両1の状態を検出する装置であり、例えば、水温を検出する水温センサ41a、燃料の残量を検出する燃料センサ41b、原動機4の回転数を検出する原動機回転センサ(回転センサ)41c、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルセンサ41d、操舵装置11の操舵角を検出する操舵角センサ41e、リフトアーム8aの角度を検出する角度センサ41f、車体3の幅方向(右方向又は左方向)の傾きを検出する傾き検出センサ41g、車体3の車速(速度)を検出する速度センサ41h、PTO軸の回転数を検出するPTO回転センサ(回転センサ)41i、バッテリー等の蓄電池の電圧を検出するバッテリセンサ41j、車体3の位置を検出する測位装置41k、作業車両1の周囲をセンシングする監視装置41l等である。上述した検出装置41は一例であり、上述したセンサに限定されない。
【0027】
図3に示すように、測位装置41kは、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、測位装置41kは、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、作業車両1の位置(例えば、緯度、経度)、即ち、車体位置を検出する。なお、測位装置41kは、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等の慣性計測装置を搭載していてもよい。慣性計測装置は、加速度センサ、ジャイロセンサによって、車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができ、検出した車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角を用いて、車体位置を補正することができる。なお、慣性計測装置は、測位装置41kと別体に、作業車両1に設けてもよい。
【0028】
図3に示すように、作業車両1は、複数の操作部材(操作装置)42を備えている。複数の操作部材42は、車体3の前進又は後進を切り換えるシャトルレバー42a、原動機4の始動等を行うイグニッションスイッチ42b、PTO軸の回転数を設定するPTO変速レバー42c、自動変速及び手動変速のいずれかを切り換える変速切換スイッチ42d、変速装置5の変速段(変速レベル)を手動で切り換える変速レバー42e、車速を増減させるアクセル42f、連結装置(昇降装置)8の昇降を操作するポンパスイッチ42g、連結装置(昇降装置)8の上限を設定する高さ設定ダイヤル42h、車速を設定する車速レバー42i、油圧操作具42j、原動機回転数の上限を設定する回転設定具42k等である。
【0029】
変速切換スイッチ42d、高さ設定ダイヤル42h、回転設定具42kなどの設定具は、運転席10の側方に設けたコンソールボックスに設けられている。設定具(変速切換スイッチ42d、高さ設定ダイヤル42h、回転設定具42k)を運転者が操作することによって、車体3の動作を設定することができる。なお、上述した操作部材42は一例であり、上述したものに限定されない。
【0030】
図3に示すように、作業車両1は表示装置50を備えている。表示装置50は、作業車両1に関する様々な情報を表示する装置である。表示装置50は、液晶パネル、有機ELパネル等を有した装置であり、運転席10又は、当該表示装置50に設けられたハードウェアスイッチを操作することにより、画面切換、画面の操作を行うことができる。なお、表示装置50は、画面に表示したソフトウェアスイッチを操作することにより、画面切換、画面の操作を行うことができる装置であってもよく、限定されない。
【0031】
図3に示すように、作業車両1は、制御装置40と、記憶装置45とを備えている。制御装置40は、作業車両1の様々な制御を行う装置であり、CPU、電気電子回路等から構成されている。記憶装置45は不揮発性のメモリ等から構成され、様々な情報を記憶する。
制御装置40は、変速制御部40Aと、エンジン制御部40Bと、PTO制御部40Cと、昇降制御部40Dと、自動運転制御部40Eと、角度制御部40F、補助油圧制御部40Gとを含んでいる。
【0032】
制御装置40と、作業装置2とは、車載ネットワークN1に接続されている。即ち、変速制御部40A、エンジン制御部40B、PTO制御部40C、昇降制御部40D、自動運転制御部40E、角度制御部40F及び補助油圧制御部40Gと、作業装置2とは、車載ネットワークN1に接続されている。
なお、制御装置40は、変速制御部40A、エンジン制御部40B、PTO制御部40C、昇降制御部40D、自動運転制御部40E、角度制御部40F、補助油圧制御部40Gの全てを含んでいる必要はなく、作業車両1の仕様に応じて作業車両1に設けられている。また、変速制御部40A、エンジン制御部40B、PTO制御部40C、昇降制御部40D、自動運転制御部40E、角度制御部40F及び補助油圧制御部40Gは、統合した制御装置40に設けられていてもよい。
【0033】
変速制御部40Aは、変速制御を行う。変速制御では、自動変速機能が有効である場合、作業車両1の状態に応じて主変速部5c及び副変速部5dのいずれかを自動的に切り換え、変速装置5の変速段(変速レベル)を予め定められた変速段(変速レベル)に自動的に変更する。変速制御では、変速切換スイッチ42dを手動変速に切り換えた場合、変速レバー42eで設定された変速段(変速レベル)に応じて主変速部5c及び副変速部5dのいずれかを自動的に切り換え、変速装置5の変速段を変更する。
【0034】
変速制御部40Aは、走行装置7の走行駆動状態(走行装置7の動作)における制御(走行切換制御)を行う。走行切換制御では、シャトルレバー42aが前進に操作された場合、シャトル部5bの前後進切換部5b2を前進に切り換えることで、車体3を前進させる。また、進行切換制御は、シャトルレバー42aが後進に操作された場合、シャトル部5bの前後進切換部5b2を後進に切り換えることで、車体3を後進させる。
【0035】
走行切換制御では、4WDである場合、第1前変速クラッチ5f1を切断状態且つ第2前変速クラッチ5f2を接続状態にする。走行切換制御では、4WD倍速である場合、第1前変速クラッチ5f1を接続状態且つ第2前変速クラッチ5f2を切断状態にする。走行切換制御では、2WDである場合、第1前変速クラッチ5f1及び第2前変速クラッチ5f2を接続状態にする。
【0036】
エンジン制御部40Bは、エンジン制御を行う。エンジン制御では、イグニッションスイッチ42bがONに操作された場合、所定の処理を経て原動機4の始動を行い、イグニッションスイッチ42bがOFFに操作された場合、原動機4の駆動を停止させる。エンジン制御では、アクセル42fが操作された場合、当該アクセル42fの操作量に応じて原動機4の回転数(原動機回転数という)を変更することで、車体3の車速(速度)を変更する。
【0037】
PTO制御部40Cは、PTO制御を行う。PTO制御では、PTO変速レバー42cが操作された場合、変速装置5に内蔵されたPTO変速ギアを切り換えることでPTO軸の回転数(PTO回転数という)を変更する。
昇降制御部40Dは、昇降制御を行う。昇降制御では、手動昇降機能が有効である場合、ポンパスイッチ42gが上昇させる方向(上昇側)に操作された場合、制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。昇降制御では、手動昇降機能が有効である場合、ポンパスイッチ42gが下降させる方向(下降側)に操作された場合、制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを収縮させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を下降させる。連結装置(昇降装置)8によって作業装置2を上昇させている場合に、当該作業装置2の位置、即ち、リフトアーム8aの角度が高さ設定ダイヤル42hで設定された上限(高さ上限値)に達すると、連結装置(昇降装置)8における上昇動作を停止する。
【0038】
昇降制御では、バックアップ機能が有効である場合、車体3が後進した場合に自動的に制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。昇降制御では、オートアップ機能が有効である場合、操舵装置11の操舵角が所定以上になると、自動的に制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。
【0039】
自動運転制御部40Eは、自動運転の制御を行う。自動運転制御部40Eは、ライン型自動運転の制御と、自律型自動運転の制御とを行うことが可能である。ライン型自動運転の制御では、予め設定された走行予定ラインに沿って作業車両1(車体3)が移動するように、操舵装置11、変速装置5及び原動機4等の制御を行う。自律型自動運転の制御では、監視装置41l等によって作業車両1(車体3)の周囲をセンシングした結果に基づいて進行方向(操舵方向)及び車速(速度)等の設定を行い、設定された操舵及び車速になるように、操舵装置11、変速装置5及び原動機4の制御を行う。なお、ライン型自動運転の制御と、自律型自動運転の制御とをスイッチ等で切り換えることができるようにしてもよいし、自動運転制御部40Eは、ライン型自動運転の制御と、自律型自動運転の制御とのいずれかのうち一方を行うことができる装置であってもよく、限定されない。
【0040】
補助油圧制御部40Gは、複数の補助弁27のうち、油圧ホース等が接続された補助弁(作動制御弁)27を制御する。例えば、補助油圧制御部40Gは、揺動自在なレバー等の油圧操作具42jが操作された場合に所定の補助弁27から出力される作動油の流れを切り換える制御を行う。例えば、油圧操作具42jが左方向に操作されると、補助油圧制御部40Gは、所定の補助弁27のソレノイドを励磁して、所定の補助弁27のスプールを移動させることで作動油の流れる方向を一方向にする。また、油圧操作具42jが右方向に操作されると、補助油圧制御部40Gは、所定の補助弁27のソレノイドを励磁して、所定の補助弁27のスプールを移動させることで作動油の流れる方向を他方向にする。これにより、補助弁27によって、作業装置2の油圧アタッチメントを操作することができる。
【0041】
さて、図3に示すように、作業車両1は、覚醒検出装置41mを備えている。覚醒検出装置41mは、作業車両1、即ち、車体3に乗車した運転者が覚醒しているか否かを検出する装置である。覚醒検出装置41mは、運転席10、運転席10の周囲、ハンドル11aなどに設けられている。覚醒検出装置41mは、運転席10に着座した運転者を撮像するカメラ、運転者の状態を光学で検出する光学センサ、運転者の脈拍(心拍数)、血圧、呼吸数、体温等を検出するバイタルセンサ等である。覚醒検出装置41mが、カメラ、光学センサである場合、運転者の目の状態、顔の状態、運転姿勢等に基づいて、運転者が覚醒しているか否かを検出する。例えば、覚醒検出装置41mは、所定時間当たりの瞬きの回数、運転時の顔の表情、運転姿勢を検出し、瞬きの回数が低下したり、運転時の顔の表情が睡眠時のような状態に変化したり、運転姿勢が固定ではなく前後、左右に所定の度合いで揺れるなどの場合、運転者が覚醒していないと判断する。一方、覚醒検出装置41mは、所定時間当たりの瞬きの回数が閾値以上、運転時の顔の表情が睡眠時のような状態ではなく、運転姿勢が比較的安定している場合は、運転者が覚醒していると判断する。或いは、覚醒検出装置41mが、バイタルセンサである場合、脈拍(心拍数)、血圧、呼吸数、体温の変化に基づいて運転者が覚醒しているか否かを検出する。覚醒検出装置41mは、心拍数が徐々に低下したり、呼吸数が徐々に低下したり、体温が徐々に低下する場合、運転者が覚醒していないと判断する。一方、覚醒検出装置41mは、心拍数が所定範囲であり、呼吸数が所定範囲であり、体温が所定範囲である場合、運転者が覚醒していると判断する。覚醒検出装置41mは、運転者が覚醒しているか否かを検出する装置であればよく、運転者の覚醒を検出する方法は何でもよく限定されない。また、覚醒検出装置41mは、カメラ、光学センサ、バイタルセンサを組み合わせたものであってもよく、限定されない。
【0042】
制御装置40は、運転者が覚醒をしている場合、駆動装置を作業に対応して駆動させる第1駆動を実行する。駆動装置は、原動機4、変速装置5、連結装置(昇降装置)8等である。つまり、制御装置40は、運転者が覚醒をしている場合、原動機4、変速装置5、連結装置(昇降装置)8を第1駆動で駆動させる。
以下、運転者が覚醒をしている場合における原動機4、変速装置5、連結装置(昇降装置)8のそれぞれの第1駆動について説明する。
【0043】
制御装置40は、運転者が覚醒をしている場合、上述したように、エンジン制御部40Bによるエンジン制御を行うことで、アクセル42fの操作量に応じて原動機4の回転数(原動機回転数)を変更する。
制御装置40は、運転者が覚醒をしている場合、上述したように、変速装置5による変速制御を行うことで、変速段を自動的に変更したり、変速切換スイッチ42dの手動変速によって変速段を変更する。
【0044】
制御装置40は、運転者が覚醒をしている場合、上述したように、昇降制御部40Dによる昇降制御を行うことで、ポンパスイッチ42gの操舵に応じてリフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を昇降したり、リフトアーム8aの角度が高さ設定ダイヤル42hで設定された上限(高さ上限値)に達すると連結装置(昇降装置)8における上昇動作を停止したり、車体3が後進した場合に自動的にリフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。
【0045】
つまり、制御装置40は、圃場内などの作業(農作業)に対応できるように、原動機4の回転数の変更(設定)、変速装置5の変速、連結装置(昇降装置)8)の昇降を実行する。
制御装置40は、運転者が覚醒をしていない場合、駆動装置(原動機4、変速装置5、連結装置(昇降装置)8)の駆動を第1駆動とは異なる第2駆動によって、運転者の覚醒を促す。つまり、制御装置40は、運転者が覚醒をしていない場合、運転者の覚醒を促すように駆動装置を駆動させる。言い換えれば、制御装置40は、運転者が覚醒をしていない場合、運転者の覚醒を促す覚醒制御を行う。
【0046】
以下、運転者が覚醒をしていない場合における原動機4、変速装置5、連結装置(昇降装置)8のそれぞれの第2駆動、即ち、覚醒制御について説明する。
制御装置40は、運転者が覚醒をしていない場合、覚醒制御に移行して昇降装置の第2駆動を実行する。制御装置40は、覚醒制御において、リフトシリンダ8eに供給される作動油の圧力を増加させるように制御弁34を制御する。例えば、制御装置40は、制御弁34のソレノイドに電流等の制御信号を出力することで、当該制御弁34の開度を全開にし、リフトシリンダ8eのストロークが最大、即ち、リフトシリンダ8eが最大まで伸長した後も制御弁34の開度を全開に保持することで、作動油の圧力を増加させる。これによれば、図3に示すように、制御弁34に接続された排出油路36に設けられたリリーフ弁37が作動し、リリーフ弁37の作動によって大きな音が発生することで、運転者の覚醒を促すことができる。
【0047】
或いは、制御装置40は、運転者が覚醒をしていない場合、覚醒制御に移行して昇降装置の第2駆動を実行する。制御装置40は、覚醒制御において、リフトシリンダ8eが伸縮を繰り返すように制御弁34を制御する。図4Aに示すように、制御装置40は、運転者が覚醒をしていない場合(覚醒をしていない区間T1)において、制御弁34のソレノイドを励磁(ON)及び消磁(OFF)を繰り返すことで、図4Bに示すように、リフトシリンダ8eの昇降が繰り返され、作業装置2を昇降する。これによれば、リフトシリンダ8eを伸縮して作業装置2の昇降を繰り返すことで、車体3(運転席10)に振動が伝わり、運転者の覚醒を促すことができる。
【0048】
或いは、制御装置40は、運転者が覚醒をしていない場合、覚醒制御に移行して変速装置の第2駆動を実行する。制御装置40は、覚醒制御において、変速装置5の変速ショックを増加させる。図5Aに示すように、制御装置40は、図示省略の電磁弁に制御信号L1を出力することで、第1変速クラッチ5d2及び第2変速クラッチ5d3のいずれかを作動させる。ここで、クラッチ(第1変速クラッチ5d2、第2変速クラッチ5d3)において、接続状態(ON)、切断状態(OFF)の切り換えに着目した場合、制御装置40は、運転者が覚醒をしていない場合(覚醒をしていない区間T1)では、当該クラッチの切断状態(OFF)から接続状態(ON)にする第1時間を短くする。即ち、制御装置40は、覚醒をしていない区間T1の制御信号L1の立ち上がりを、運転者が覚醒をしている場合(覚醒をしている区間T2)の制御信号L1よりも急峻にする。
【0049】
なお、制御装置40は、覚醒をしていない区間T1では、当該クラッチの接続状態(ON)から切断状態(OFF)にする第2時間を短くしてもよい。即ち、制御装置40は、覚醒をしていない区間T1の制御信号L1の立下りを、覚醒をしている区間T2の制御信号L1よりも急峻にする。
制御装置40は、運転者が覚醒をしていない場合、制御信号L1に示すように、第1変速クラッチ5d2及び第2変速クラッチ5d3の接続及び切断を自動的に繰り返すことで、繰り返し変速ショックを発生させる。これによれば、変速装置5の変速ショックを大きくすることで、変速ショックが車体3(運転席10)に振動が伝わり、運転者の覚醒を促すことができる。
【0050】
或いは、制御装置40は、運転者が覚醒をしていない場合、覚醒制御に移行して原動機4の第2駆動を実行する。図5Bに示すように、制御装置40は、覚醒制御において、アクセル42fの操作量に関係なく、原動機4に制御信号を出力することで、原動機回転数を、例えば、最大まで増加させる。これによれば、原動機4の原動機回転数を増加させることによって、原動機4の駆動音を大きくすることができ、運転者の覚醒を促すことができる。
【0051】
なお、制御装置40は、トラクタ1(車体3)の走行場所が作業装置2等によって作業を行うことが可能な場所、例えば、圃場内であるときに、第2駆動を実行する。一方で、制御装置40は、トラクタ1(車体3)の走行場所が作業装置2等によって作業を行うことが不能な場所(作業を行えない場所)、例えば、車道(道路)、圃場以外であるときは、第2駆動を禁止する(第2駆動を行わない)。トラクタ1(車体3)の走行場所は、例えば、測位装置41kや図示しないカメラ(撮像装置)やLIDER(ライダー)で把握することができる。つまり、制御装置40は、測位装置41kで検出された位置(車体位置)を参照したり、カメラ(撮像装置)やLIDER(ライダー)で検出された車体3の周辺環境を参照し、トラクタ1(車体3)の走行場所が圃場内であるときは、第2駆動を実行し、圃場外(車道等)であるときは、第2駆動を行わない。
【0052】
また、制御装置40は、第2駆動を禁止する場合、駆動装置(原動機4、変速装置5、連結装置(昇降装置)8)とは異なる装置、例えば、車体3に設けられたスピーカ、ランプ等の装置に制御信号を出力して、スピーカから音を発生させたり、ランプを点灯/点滅させることによって運転者の覚醒を促す。
図6は、運転者が覚醒をしている場合と、運転者が覚醒をしていない場合の動作フローを示している。
【0053】
図6に示すように、作業車両1を圃場内で走行させているとき、制御装置40は、覚醒検出装置41mの検出を参照し(S1)、運転者が覚醒をしている場合(S2、Yes)、駆動装置(原動機4、変速装置5、連結装置(昇降装置)8)に第1駆動を実行させる(S3)。一方、運転者が覚醒をしている場合(S2、No)、制御装置40は、複数の駆動装置(原動機4、変速装置5、連結装置(昇降装置)8)のうち、少なくとも1つの駆動装置に第2駆動を実行させる(S4)。即ち、制御装置40は、覚醒制御を実行する(S4)。制御装置40は、駆動装置に第2駆動を実行させた後、即ち、覚醒制御を行った後、覚醒検出装置41mの検出を参照し(S5)、運転者が覚醒をした場合(S2、Yes)、覚醒制御を終了し、運転者が覚醒をしていない場合(S5、No)、S4の処理に戻り、覚醒制御を継続する。
【0054】
なお、作業車両1が圃場内に存在するか否かは、車体位置を参照することで把握することができる。
作業車両1は、車体3と、車体3に設けられた駆動装置と、車体3に乗車した運転者が覚醒しているか否かを検出する覚醒検出装置41mと、駆動装置の制御を行う制御装置40と、備え、制御装置40は、運転者が覚醒している場合、駆動装置を作業に対応して駆動させる第1駆動を実行し、運転者が覚醒していない場合、駆動装置を第1駆動とは異なる第2駆動を実行することにより運転者の覚醒を促す。これによれば、作業車両1に備えられた駆動装置を第2駆動するだけで、運転者の覚醒を促すことができる。即ち、作業車両1に運転者の覚醒のための装置を新たに設けなくても駆動装置によって覚醒することができ、運転者が覚醒していないときは駆動装置によって作業を行うことができる。
【0055】
制御装置40は、作業を行えない場所を車体3が走行している場合は、第2駆動を禁止する。これによれば、作業を行えない場所、例えば、車道(道路)等の圃場外を車体3が走行している場合は、駆動装置の第2駆動を禁止することで、走行性を高めることができる。
制御装置40は、第2駆動を禁止している場合は、駆動装置とは異なる装置によって運転者の覚醒を促す。これによれば、例えば、原動機4、変速装置5、連結装置(昇降装置)8を用いずに運転者の覚醒を行うことができる。
【0056】
駆動装置は、車体3に設けられ且つ作業装置を昇降可能な昇降装置を含み、制御装置40は、第1駆動として作業に応じて昇降装置の昇降を実行し、第2駆動として第1駆動とは異なる昇降を実行する。これによれば、運転者が覚醒しているときは昇降装置を作業に応じて昇降することにより作業を行うことができる一方、運転者が覚醒していないときは、昇降装置の昇降を作業とは別に行うことによって、昇降時の車体3(運転席10)に振動が伝わり、運転者の覚醒を促すことができる。
【0057】
昇降装置は、作業装置2を連結可能で且つ作業装置2を連結する端部側が上昇又は下降する方向に車体3に設けられた連結部材と、伸縮によって連結部材の端部側を上昇又は下降させる油圧シリンダ(リフトシリンダ8e)と、制御装置40によって制御される制御弁34であって且つ、油圧シリンダ(リフトシリンダ8e)に供給する作動油を制御する制御弁34と、を含み、制御装置40は、運転者が覚醒していない場合、油圧シリンダ(リフトシリンダ8e)に供給される作動油の圧力を増加させるように制御弁34を制御する。これによれば、、運転者が覚醒していないときは、油圧シリンダ(リフトシリンダ8e)に供給する圧力を増加させることにより、油圧シリンダ(リフトシリンダ8e)に作用する圧力を限界まで上昇させることができ、その結果、例えば、油圧シリンダ(リフトシリンダ8e)に連通するリリーフ弁を作動させることができる。リリーフ弁の作動によって音が発生するため、運転者の覚醒を促すことができる。
【0058】
制御装置40は、運転者が覚醒していない場合、油圧シリンダ(リフトシリンダ8e)が伸縮を繰り返すように制御弁34を制御する。これによれば、油圧シリンダ(リフトシリンダ8e)が伸縮を繰り返すことで簡単に、昇降装置を繰り返し昇降させることができる。
駆動装置は、走行装置の変速を行う変速装置5を含み、制御装置40は、第1駆動として作業に応じて変速装置5の変速を実行し、第2駆動として第1駆動とは異なる変速を実行する。これによれば、、運転者が覚醒しているときは変速装置5によって作業に応じて変速することにより作業を行うことができ一方、運転者が覚醒していないときは、変速装置5の変速を作業とは別に行うことで、変速ショック等により運転者の覚醒を促進することができる。
【0059】
制御装置40は、運転者が覚醒していない場合、変速装置5の変速ショックを増加させる。これによれば、変速ショックを増加させることでより運転者の覚醒を促すことができる。
駆動装置は、車体3に設けられた原動機4を含み、制御装置40は、運転者が覚醒していない場合、第1駆動として作業に応じて原動機4の回転数を設定し、第2駆動として第1駆動とは異なるように原動機の回転数を設定する。これによれば、運転者が覚醒しているときは作業に応じて原動機回転数を設定することにより作業を行うことができ一方、運転者が覚醒していないときは、原動機回転数を作業とは関係なく設定することで、原動機4の駆動音を大きくすることができ、駆動音により運転者の覚醒を促進することができる。
【0060】
さて、制御装置40は、作業装置2の作業に基づいて、覚醒制御を実行する。
制御装置40は、作業装置2による作業中であるときに、例えば、圃場内において、運転者が覚醒していない場合、圃場内において作業装置2によって作業を行わない位置に車体3を移動させてから、覚醒制御を実行する。作業装置2による作業中でないときに、例えば圃場内において運転者が覚醒していない場合、直ちに覚醒制御を実行する。
【0061】
図7に示すように、表示装置50に対して所定の操作を行うと、設定画面M1が表示される。設定画面M1では、作業装置2によって作業を行う第1領域A1と、作業装置2によって作業を行わない第2領域A2とを設定することが可能である。具体的には、設定画面M1には、圃場H1等を示すフィールドを示すフィールド部55が表示される。フィールド部55には、位置情報(緯度、経度)が割り当てられている。フィールド部55には、圃場H1を示す圃場マップMP1が表示される。圃場マップMP1に示された所定の圃場H1に対して、ポインタ56によって複数の位置を選択すると、複数の位置を結ぶ領域が第1領域A1として設定される。また、所定の圃場H1において、第1領域A1を除く領域が第2領域A2として設定される。設定画面M1において、第1領域A1と第2領域A2とが設定されると、第1領域A1及び第2領域A2が記憶装置45に記憶される。
【0062】
さて、第1領域A1及び第2領域A2を設定後、作業車両1を第1領域A1及び第2領域A2を設定した圃場H1aに移動させると、設定画面M1のフィールド部55には、測位装置41kで検出された位置(車体位置)P1が表示される。また、圃場H1aにおいて、作業車両1を走行させると、当該作業車両1の車体位置P1に応じて設定画面M1に表示される車体位置P1が変化する。
【0063】
制御装置40は、運転者が覚醒していないときの車体位置P1が第1領域A1である場合、自動運転制御部40Eの制御によって、作業車両1を第1領域A1から第2領域A2に移動してから覚醒制御を実行する。つまり、制御装置40は、第1領域A1において、運転者が覚醒していない場合は、まず、自動走行によって作業車両1を第2領域A2に移動させてから、第2領域A2にて作業車両1を停止させ、上述したように、駆動装置(原動機4、変速装置5、連結装置(昇降装置)8)の駆動を第2駆動にすることにより、運転者の覚醒を促進する。
【0064】
或いは、制御装置は、作業装置2による作業中であるとき、即ち、作業車両1(作業装置2)が第1領域A1に位置しているときに、運転者が覚醒していない場合、PTOクラッチ5e1を接続状態から切断状態に切り換えてから覚醒制御を実行する。即ち、制御装置40は、PTOクラッチ5e1を接続状態から切断状態に切り換えて、原動機4の動力が作業装置2に伝達しない状態で、上述したように、駆動装置(原動機4、変速装置5、連結装置(昇降装置)8)の第2駆動を行う。なお、制御装置40は、原動機4の動力が作業装置2に伝達しない状態で、駆動装置の第2駆動を行う場合、作業車両1を第1領域A1から第2領域A2に移動させてから第2駆動を行ってもよい。
【0065】
或いは、制御装置は、作業装置2による作業中であるとき、即ち、作業車両1(作業装置2)が第1領域A1に位置しているときに、運転者が覚醒していない場合、昇降装置によって作業装置2を上昇させてから覚醒制御を実行する。つまり、制御装置40は、駆動装置(原動機4、変速装置5)の第2駆動を、昇降装置を上昇させた状態で行う。
なお、上述した実施形態では、圃場内において運転者が覚醒していないときは、圃場内において作業装置2によって作業を行わない位置(場所)に移動してから覚醒を行っているが、車体3が圃場外の車道(道路)等を走行しているときは、圃場内とは異なるタイミングで運転者を覚醒させる。例えば、制御装置40は、車体3が圃場内であるときは、作業を行わない位置(場所)に移動してから覚醒制御を実行し、車体3が圃場外であるときは、即座に覚醒制御を行う。つまり、制御装置40は、車体3が走行している場所に応じて運転者の覚醒を促すタイミングを異ならせる。
【0066】
或いは、制御装置40は、車速が閾値以上であれば、車体3が圃場外を走行していると推定して直ちに覚醒制御を実行し、車速が閾値未満で遅いときは、車体3が圃場内を走行していると推定して車速が閾値以上であるときよりも覚醒制御の実行を遅くしてもよい。
作業車両1は、車体3と、車体3に設けられ且つ作業装置2を連結可能な昇降装置と、車体3に乗車した運転者が覚醒しているか否かを検出する覚醒検出装置41mと、運転者が覚醒していない場合、作業装置2の作業に基づいて、運転者の覚醒を促す覚醒制御を実行する制御装置40と、を備えている。これによれば、例えば、作業装置2によって作業を行っているときに運転者が覚醒しているときは作業装置2によって意図通りに正確な作業を行うことができ、作業装置2によって作業を行っているときに運転者が覚醒していないときは、運転者を覚醒させてから作業装置2による作業を再開させることができる。
【0067】
制御装置40は、車体3が走行している場所又は速度に応じて運転者の覚醒を促すタイミングを異ならせる。これによれば、制御装置40は、例えば、車体3が圃場外を走行している場合又は車速が速い場合は即座に覚醒制御を実行することで少しでも早く運転者を覚醒させる一方、車体3が圃場内である場合又は車速が遅い場合は、覚醒制御を実行するタイミングが遅くなるものの確実に覚醒させる。
【0068】
制御装置40は、作業装置2による作業中であるときに、運転者が覚醒していない場合、作業装置2によって作業を行わない位置に車体3を移動させてから、覚醒制御を実行する。これによれば、作業装置2によって作業を行わない位置で覚醒制御を行うことによって、作業を行う位置(場所)を荒らすことなく運転者の覚醒を促すことができる。言い換えれば、運転者が覚醒していないままで作業を行った場合のやり直しの作業を無くすことができる。一方、作業装置2による作業中でないときに運転者が覚醒していない場合は、直ちに覚醒制御を実行する。
【0069】
また、変形例として、作業装置2による作業中であるときに運転者が覚醒していない場合であっても、車体3が自動走行制御によって走行しているか否かに応じて、覚醒制御を実行するタイミングを変えてもよい。すなわち、作業装置2による作業中であるときに運転者が覚醒していないと判定された場合において、車体3が自動走行制御または自動操舵制御によって走行している場合は、作業装置2によって作業を行わない位置に車体3を移動させてから覚醒制御を実行し、一方で、車体3が手動操舵によって走行している場合は、直ちに覚醒制御を実行してもよい。
【0070】
作業車両1は、車体3の位置を測位する測位装置41kと、作業装置2によって作業を行う第1領域A1と、作業装置2によって作業を行わない第2領域A2とを記憶する記憶装置45と、を備え、制御装置40は、測位装置41kによって測位した車体3の位置である車体位置が第1領域A1である場合、第2領域A2に移動してから覚醒制御を実行する。これによれば、簡単に作業を行わない場所(第2領域A2)に作業車両1を移動させることができる。
【0071】
作業車両1は、車体3に設けられた原動機と、原動機の動力によって回転し且つ作業装置2に動力を伝達するPTO軸16と、作業装置2へPTO軸16の動力を伝達する接続状態と作業装置2へPTO軸16の動力を伝達しない切断状態とに切換え可能なクラッチ(PTOクラッチ5e1)と、を備え、制御装置40は、作業装置2による作業中であるときに、運転者が覚醒していない場合、クラッチ(PTOクラッチ5e1)を接続状態から切断状態に切り換えてから覚醒制御を実行する。これによれば、作業装置2に動力が伝達しない状態にしてから運転者の覚醒を促すことができる。
【0072】
作業車両1は、車体3に設けられ且つ作業装置2を昇降可能な昇降装置を備え、制御装置40は、運転者が覚醒していない場合、昇降装置によって作業装置2を上昇させてから覚醒制御を実行する。これによれば、作業装置2を上昇させて対地作業を行うことができない状態にしてから運転者の覚醒を促すことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 :作業車両
2 :作業装置
3 :車体
4 :原動機
16 :PTO軸
40 :制御装置
41 :検出装置
41k :測位装置
41m :覚醒検出装置
45 :記憶装置
A1 :第1領域
A2 :第2領域
P1 :車体位置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8