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特許7476097イムノアッセイプラットフォームでの分析のための細胞ベースのアッセイを最適化するための分泌レポーターペプチド
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  • 特許-イムノアッセイプラットフォームでの分析のための細胞ベースのアッセイを最適化するための分泌レポーターペプチド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】イムノアッセイプラットフォームでの分析のための細胞ベースのアッセイを最適化するための分泌レポーターペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240422BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240422BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240422BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240422BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20240422BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20240422BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20240422BHJP
   G01N 33/542 20060101ALI20240422BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
C12N5/10
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12Q1/6897 Z
G01N33/531 A
G01N33/536 E
G01N33/542 A
G01N33/543 545A
G01N33/543 595
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020517522
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018079292
(87)【国際公開番号】W WO2019081643
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-03-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】17198818.1
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519113192
【氏名又は名称】スワール ライフ サイエンス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トービー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ラルマン、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】バレット、ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ルー
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】長井 啓子
【審判官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-525844(JP,A)
【文献】特開2015-126746(JP,A)
【文献】国際公開第2006/095654(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/108763(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C12P 1/00 - 41/00
C01K 1/00 - 19/00
C12Q 1/00 - 3/00
CAPLUS/WPIDS/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’から3’方向に、次のi)~iv)を含むポリヌクレオチド:
i)1つ又は複数の転写因子を結合でき、gal4上流活性化配列(UAS)の5倍タンデムリピートである応答要素、
ii)TATAボックス、
iii)レポーターペプチドをコードし、配列番号1~3に示される配列の任意の一つを含む又はからなる配列、
iv)ポリアデニル化配列、
ここで、i)における転写因子は、分泌レポーターペプチドのgal4 UASシス作用性調節配列に結合できる合成DNA結合ドメインに融合したElk‐1のトランス活性化ドメインを含むキメラ転写因子であり、
iii)におけるレポーターペプチドは、シグナルペプチド、互いに異なるアンカー配列及び検出配列を含み、該アンカー配列及び検出配列は、c-MYC、V5タンパク質、又はVSV-Gタンパク質から選択され、前記検出配列及び前記アンカー配列に対して抗体が結合するものである。
【請求項2】
細胞における前記ポリヌクレオチドの発現が、定量される分析物の活性に比例し、前記細胞が前記分析物と特異的に相互作用する細胞内又は細胞表面分子を有し、分析物の活性の定量化が、細胞上清へのレポーターペプチドの分泌の検出によって行われるものである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
レポーター/シグナルペプチドの検出が、ELISA又は一般に利用可能な免疫検出プラットフォームを使用することにより行われる、請求項1又は2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の1つ以上のポリヌクレオチドでトランスフェクトされた細胞。
【請求項5】
複数のポリヌクレオチドのそれぞれが異なる応答要素をコードし、前記異なる応答要素の各一つが異なる分析物によって活性化される、ただし、細胞は複数のポリヌクレオチドでトランスフェクトされている、請求項4に記載の細胞。
【請求項6】
前記細胞が、
CAR‐T細胞、又は
ヒトJurkat、Raji、HEK293、KHYG1、又はマウスRAW264.7から選択される当技術分野で公知の任意の細胞株、又は
DT‐40又はMSB‐1から選択される鳥類細胞株、又は
レポーター遺伝子を単独で又は他の組換え成分と一緒に含む細胞株から選択される、以前に確立された改変細胞株
から選択されるヒト又は動物起源の天然の又は組換えの、T又はBリンパ球、単球又はナチュラルキラー細胞から選択される細胞、
である、請求項4又は5に記載の細胞。
【請求項7】
自動化されたアッセイ又は自動化された診断設定における、請求項4~6のいずれか一項に記載の細胞の使用。
【請求項8】
以下を含むキット:
i)請求項4~6のいずれか一項に記載の本発明による細胞;及び
ii)ビオチン化されているか又はされていないアンカー配列に対する抗体;及び
iii)ELISAによる検出のためにHRPで標識された、又は分泌レポーターペプチドの検出を可能にするスルホタグで標識された検出配列に対する抗体;及び
iv)ストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート、又はストレプトアビジン被覆ビーズ、又はストレプトアビジン被覆SPRチップ。
【請求項9】
アンカー配列及び検出配列が異なる、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
検出が、ELISA又は一般に利用可能な免疫検出プラットフォームによって行われる、請求項8~9のいずれか一項に記載のキット。
【請求項11】
請求項4~6のいずれか一項に記載の細胞を、単独で又は前記アンカー及び検出配列に結合し得る抗体とともに含むか、或いは、
請求項4~6のいずれか一項に記載の細胞を、前記アンカー配列が凍結バイアルに含まれるストレプトアビジン結合タンパク質である場合、前記検出配列のみに結合し得る抗体とともに含む、
1つ以上のバイアルを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシステム、及び小さい化学物質及び大きいタンパク質ベースの生物医薬品を含む薬理学的に活性な分子の活性を決定する方法におけるその使用に関する。本発明によるシステムを使用して、小さい化学物質のライブラリをスクリーニングし、小さい合成薬、大きいタンパク質ベースのバイオ医薬品、アデノ随伴ウイルス(AAV)導入遺伝子、又はCAR‐T細胞を含む細胞療法の効力を定量化し、バイオ医薬品、AAVベクター、AAV導入遺伝子、又はCAR‐T細胞を含む細胞療法に対する中和抗体応答、及び容易に自動化できるイムノアッセイプラットフォームを使用した治療抗体又はFc融合タンパク質のエフェクター細胞機能を定量化することができる。本発明によるシステムは、診断の環境で使用され得るキット又はパーツのキットで使用され得る。重要なことに、本発明によるシステムは、小さい合成薬、大きい治療用タンパク質、組換え又は天然のAAV導入遺伝子、CAR‐T細胞を含む細胞療法の使用、又は治療用抗体又はFc融合タンパク質、又は治療用タンパク質、治療用抗体、AAVベクター、AAV導入遺伝子、又は養子療法で使用される細胞によって誘発される免疫応答に基づいて治療の有効性を決定するために使用でき、これはエフェクター細胞機能の誘導の場合に有利であり、又は免疫寛容の中断や抗薬物抗体の産生の場合には不利であり得る。
【背景技術】
【0002】
細胞ベースのアッセイは、小さい化学物質又は大きいタンパク質ベースのバイオ医薬品にかかわらず、薬理学的に活性な物質の活性を検出及び定量化するために必要である。したがって、細胞ベースのアッセイは、薬物発見、効力アッセイ、タンパク質ベースのバイオ医薬品に対する中和抗体、及び補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)などの抗体媒介エフェクター機能の評価に使用される。組換え生物医薬品の繰り返し投与は、免疫寛容の破壊(1)及び抗薬物抗体(ADA)の産生につながる。薬物動態、薬力学、バイオアベイラビリティ、及び有効性に悪影響を与えることに加えて、ADAは免疫複合体疾患、アレルギー反応、場合によっては重度の自己免疫反応も引き起こす可能性がある。特定のタイプのADAは、タンパク質治療薬の活性を中和する場合もある。中和抗体(NAb)は、タンパク質の活性部位内又は活性部位の近くのエピトープに直接結合するか、細胞表面受容体への薬物の結合を妨げるエピトープに結合することにより、生物医薬品の生物活性をブロックする。中和抗薬物抗体の開発は、特定の形態の癌及び自己免疫又は多発性硬化症又は関節リウマチなどの炎症性疾患を含む慢性疾患の治療において特に関心が持たれている。ADAは、患者が治療に反応しなくなる結果をもたらす可能性があり、EPOやトロンボポエチンなどの必須の非冗長内因性タンパク質と交差反応するNAbの場合、生命を脅かす可能性さえある(2,3)。薬物誘発性免疫グロブリンIgE抗体は、重篤なアナフィラキシ‐反応を引き起こす可能性もある(4)。ADAはまた、治療中止後も長期間持続する可能性があり、それにより同じ薬物によるその後の治療が制限される(5)。したがって、免疫原性の評価は、前臨床試験と臨床試験の両方における薬物安全性評価の重要な要素である。規制当局は、中和抗薬物抗体を検出及び定量化するために、研究中の薬物の作用機序を可能な限り密接に反映する細胞ベースのアッセイの使用を推奨している。しかし、細胞ベースのアッセイは標準化が難しく、自動化を容易に受け入れられない。
【0003】
例えば、国際公開第2015/108763号は、転写因子の結合に応答する応答要素、分泌酵素骨格、及び抗体の特異的結合の認識領域を含む少なくとも1つのレポーターを含むタンパク質レポーターシステムに関する。転写因子の結合、アッセイ及び活性の定量化のための多重化アッセイについても説明する。これらのアッセイは、必要な定量化を達成するために必要に応じて、セット、ライブラリ、又はその他のグループでタンパク質レポーターを使用する。この文献は、多重化アッセイの再現性、正確性、堅牢性を可能にしているようである。
【0004】
欧州特許第1862801号は、レポーター遺伝子アッセイ、具体的にはそれに関連する方法に関する。具体的には、この文献の方法は、第1エピトープ及び第2エピトープを有するエピトープタグをコードする遺伝子を含むレポーター遺伝子が転写因子の認識配列及び転写開始に必要なヌクレオチド配列に下流で連結されているベクターを有する細胞を、試験物質、第1のエピトープを認識する検出抗体、及び第2のエピトープを認識する抗体と接触させ;第1及び第2のエピトープに結合し、互いに接近する検出抗体の両方によって引き起こされる現象を検出し;検出された現象を転写調節機構に対する試験物質の効果と相関させることに関すると思われ、ここで第1のエピトープ及び第2のエピトープは、それらの認識検出抗体が結合すると、両方の検出抗体が互いに接近できるように配置される。この文献は、転写活性をより簡単に、迅速に、より正確に(つまり、より高い精度とより少ない干渉で)測定できるように思われる。
【0005】
Tannous, B. A., et al., Biotech. Adv. 2011, 29, pp. 997‐1003は、体液で検出される分泌レポーターの使用に関するものであり、生体内の生体プロセスのエクスビボ(ex vivo)リアルタイムモニタリングにおける明らかにシンプルで有用なツールである。文献によると、細胞溶解が検出に必要であると思われる。
【0006】
化学物質のスクリーニングライブラリ、医薬品開発と製造の両方における効力アッセイ、及び免疫原性研究では、多くの場合、自動化されたアッセイの使用を必要とする数百又は数千の個々のサンプルのテストが必要である。出願人は、レポーター遺伝子細胞株を再設計したり、機器を変更したりする必要がなく、創薬、化学及び製造管理(CMC)におけるバイオ医薬品の効力の定量化、中和抗薬物抗体の検出、又はCDC、ADCC、又はADCPなどの免疫媒介エフェクター細胞機能の定量化(EP17165502)(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に使用するための、Meso Scale Discovery電気化学発光(MSD‐ECL)、Luminex、SMC、Alpco、AlphaLISA、Gyros、又はSPR Biacoreなどのイムノアッセイプラットフォームでルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイを含む細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイを分析することを可能にする発明を以前に記載した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それにもかかわらず、細胞ベースのアッセイの使いやすさと性能をさらに改善したいという要望が常にある。複数の検体の同時分析を可能にし、単一の細胞培養から複数のサンプリングを可能にし、そして細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイの使用に比べて、ダイナミックレンジの拡大、感度の向上、コストの削減に加えて、自動化免疫検出プラットフォームでの分析の前に、細胞を溶解し、遠心分離によって細胞破片を除去する必要性を排除するアッセイを有することが望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その結果、本発明は、以下の技術的利点の少なくとも1つを提供する:
i)自動免疫検出プラットフォームでの分析の前に、細胞を溶解し、遠心分離によって細胞破片を除去する必要がなくなる、単一細胞培養からの複数サンプリングを可能にする複数の分析物の同時分析、
ii)ダイナミックレンジの拡大、
iii)感度の向上、
iv)細胞ベースのレポーター遺伝子アッセイの使用に比べてのコストの削減。
【0009】
一態様では、本発明は、
i)自動免疫検出プラットフォームでの分析の前に、細胞を溶解し、遠心分離によって細胞破片を除去する必要がなくなる、単一細胞培養からの複数サンプリングを可能にする複数の分析物の同時分析、
ii)ダイナミックレンジの拡大、及び
iii)感度の向上
を提供できるアッセイの提供の問題を解決することに関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】モデル分泌レポーターペプチド。 この図は一連のモデル分泌レポーターペプチドを示し、これらはシグナルペプチドに作動可能に連結されたTATAボックスの上流の応答要素を含み、それぞれは、個々のペプチドに固有の認識配列、各レポーターペプチドに共通であるか、又はペプチドごとに異なり得るアンカー配列、及びポリA配列を保持している。
【0011】
図2A】モデル分泌レポーターペプチド この図は本発明による2つのモデル分泌レポーターペプチドを示し、それぞれCMV構成的プロモーターの制御下にあり、それぞれインターフェロンα2をコードする遺伝子に由来し、2つのペプチドのそれぞれに特異的な認識配列に作動可能に連結されているシグナルペプチドを保持する。配列番号1によってコードされるペプチド番号1はc‐Myc認識配列を含み、配列番号2によってコードされるペプチド番号2は水疱性口内炎ウイルス(VSV)のGカプシドタンパク質に由来する認識配列を保持する。認識配列は、ブルータンウイルスのV5タンパク質に由来するアンカーペプチド(アンカータグ)とポリA鎖に作動可能に連結されている。アンカーペプチドに対する抗体は、ビオチン標識されており、ストレプトアビジン被覆ELISAプレートに付着する。検出ペプチドは、ELISAで検出するために西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識されている。
【0012】
図2B】モデルレポーターペプチドの発現の分析 HEK293細胞は、図2Aに示される、配列番号1及び配列番号2によってコードされる2つのペプチドで一時的にトランスフェクトされた。細胞上清を18時間後に回収し、2つのペプチドの発現をV5アンカー配列に特異的なビオチン標識抗体とc‐MYC又はVSV Gタンパク質に特異的なHRP標識検出抗体を使用した架橋ELISAで定量化した。
【0013】
図3】キメラプロモーターの制御下にある分泌レポーターペプチド この図は、gal4上流活性化配列(UAS)の5倍タンデムリピート及びインターフェロンα2をコードする遺伝子由来のシグナルペプチド、c‐Myc認識配列、ブルータンウイルスのV5タンパク質に由来するペプチド(アンカータグ)、及び(配列番号3)によってコードされるポリA鎖に作動可能に連結されたTATAボックスからなるシス作用性キメラ調節配列の制御下にある本発明によるレポーターペプチドを示す。
【0014】
図4】分泌レポーターペプチドを使用したFGF‐21活性の定量化。 HEK293細胞を、配列番号3によりコードされ、図3の凡例に記載される本発明による分泌レポーターペプチド、及び動物細胞に存在しない合成DNA結合ドメインに融合し、レポーターペプチドのgal4 UASシス作用性調節配列に結合できるElk‐1のトランス活性化ドメインを含むキメラ転写因子のための発現ベクター、並びにチロシンキナーゼFGFR1c受容体鎖及びβクロトー(β-Klotho)共受容体タンパク質をウミシイタケルシフェラーゼ正規化遺伝子とともに含む細胞表面結合ヘテロ二量体受容体タンパク質のための発現ベクターで同時トランスフェクトした。安定したクローン細胞株を単離し、FGF‐21の応答性について特徴付けした。分泌レポーターペプチドを含む組換え細胞をFGF‐21で処理し、細胞上清を18時間後に回収し、ストレプトアビジン被覆マイクロタイターアッセイプレートに結合したV5アンカー配列に特異的なビオチン標識付着抗体及びc‐Mycに特異的なHRP標識検出抗体を使用して、架橋ELISAでペプチドの発現を定量した。
【0015】
図5】分泌レポーターペプチドを使用したVEGF活性の定量。 HEK293細胞を、配列番号3によりコードされ、図3の凡例に記載される本発明による分泌レポーターペプチド、及び動物細胞には存在しない合成DNA結合ドメインに融合し、分泌レポーターペプチドのgal4 UASシス作用性調節配列に結合できるElk‐1のトランス活性化ドメインを含むキメラ転写因子のための発現ベクター、及びウミシイタケルシフェラーゼ正規化遺伝子とともに細胞表面結合VEGFR2受容体のための発現ベクターで同時トランスフェクトした。安定したクローン細胞株を単離し、VEGFの応答性について特徴付けした。分泌レポーターペプチドを含む組換え細胞をVEGFで処理し、18時間後に上清を回収し、ストレプトアビジン被覆アッセイプレートに付着したV5アンカー配列に特異的なビオチン標識付着抗体及びc‐Mycに特異的なHRP標識検出抗体を使用して架橋ELISAでレポーターペプチドの発現を定量した。
【0016】
図6A】レポーターペプチドの無標識検出を示すBiacoreセンサーグラム。 HEK293細胞は、配列番号1によりコードされ、図2Aに示されるペプチド番号1で一時的にトランスフェクトされた。18時間後に細胞上清を回収し、V5アンカー配列に特異的で、レポーターペプチドを含む細胞上清の注入後、Biacore 3000 SPR機器のストレプトアビジン被覆金センサー表面に固定したビオチン標識付着抗体を使用してレポーターペプチドの発現を定量した。
【0017】
図6B】レポーターペプチドの無標識検出を示すBiacoreセンサーグラムの拡大スケール。 図5Aに示すBiacoreセンサーグラムの一部のスケールを拡大して、ストレプトアビジン被覆金センサー表面に付着したビオチン標識抗V5抗体アンカー抗体へのレポーターペプチド番号1の特異的結合をより明確に示した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の概要
本発明は、上述の問題を解決し、容易に自動化できる免疫検出プラットフォームを使用した分析のための細胞ベースのアッセイの大幅な改善を提供し、複数の分析物の同時分析、単一細胞培養からの複数サンプリングを可能とし、自動化された免疫検出プラットフォームでの分析に先立って細胞を溶解し、遠心分離によって細胞破片を除去する必要を回避する。本発明はまた、細胞ベースのアッセイのダイナミックレンジ、感度を増加させ、コストを削減する手段を提供する。
【0019】
したがって、本発明は、特定の細胞内又は細胞表面分子との相互作用の後に、分析される薬理活性物質によって誘導される、1つ又は複数の転写因子によって活性化される応答要素を含む長さ15~150アミノ酸の小さい分泌レポーターペプチドに関する。レポーターペプチドの応答要素のすぐ下流には、細胞内のペプチド、シグナルペプチドの効率的な転写を可能にするTATAボックスがあり、これは、抗体を産生させることができるアンカー配列及び検出配列とともに、ペプチドの効率的な分泌を細胞内で発現したときに確実にするものであり、後者の3つの要素は細胞内の効率的な翻訳を確実にするために、ポリアデニル化配列(ポリA鎖)に機能的に結合している。アンカー配列(アンカータグ)はペプチドごとに異なる場合があるが、複数のレポーターペプチドに共通する場合もあるため、ELISAにより、又はMSD、Gyros、AlphaLisa、若しくはBiacoreなどの一般的に入手できる免疫検出プラットフォームの使用により、すべてのペプチドを同時に検出することができる。本発明のさらなる実施形態において、アンカー配列は、ペプチドがストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート又は他のストレプトアビジン被覆表面に直接付着することを可能にするストレプトアビジン結合タンパク質をコードし、抗体がアンカー配列に対して生じる必要性を排除している。検出シーケンス(検出タグ)はペプチドごとに異なるため、各検出シーケンスに特異的な抗体を使用して各ペプチドを同時に検出することができる。各検出抗体は、一般に入手可能な免疫検出プラットフォームの1つを使用して検出できるように標識されている。したがって、検出配列のそれぞれに対する抗体は、例えばMSDプラットフォームでペプチドの検出を可能にするスルホタグ(Sulfo‐Tag)、又はGyrosプラットフォームでの検出を可能にするAlexa、又はPerkinElmer AlphaLISAプラットフォームでの検出を可能にするジゴキシゲニンにより、Fc部分で標識されている。Biacoreシステムを使用したSPRの場合、検出抗体は必要ない。
【0020】
本発明は細胞にも関する。特に、本発明は、本発明によるレポーターペプチドを含む細胞に関する。細胞は、任意の起源のものであってよく、特に、哺乳類又は鳥類の細胞であり得る。重要なことに、細胞は、異なる調節配列及び認識配列を含む第2の又は複数のレポーターペプチドをさらに発現する場合がある。本発明による細胞は、動物又は鳥類を含む任意の起源のものであってよく、天然又は組換えの初代細胞、例えばCAR‐T細胞、又は例えばJurkat、Raji、HEK293、KHYG‐1、DT‐40細胞、又はMSB‐1のような当技術分野で知られている任意の細胞株であり得る。
【0021】
本発明は、キット又はパーツのキットにも関する。キットには以下が含まれる:
i)本発明による細胞;
及び
ii)ビオチン化されていてもいなくてもよいアンカー配列に対する抗体;及び
iii)MSDプラットフォームでのペプチドの検出を可能にするスルホタグ、又はGyrosプラットフォームでの検出を可能にするAlexa、又はPerkinElmer AlphaLISAプラットフォームでの検出を可能にするジゴキシゲニンで標識された又は標識されていない、又はBiacoreプラットフォームを用いるSPR若しくは他のSPRプラットフォームによる検出のために標識なしのままの、検出配列に対する抗体;
及び
iv)ストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート又はSPRチップなどの他のストレプトアビジン被覆表面。
【0022】
キットはまた、1つ又は複数のバイアル、例えばアッセイ準備が整った凍結細胞の2つ以上のバイアルなどを含むことができる。
【0023】
一態様では、本発明は、ペプチドがシグナルペプチド及び/又はアンカーとして作用する、本明細書に開示されるペプチドに関する。
【0024】
本発明のさらなる態様では、シグナルペプチドとアンカーは異なる。さらなる態様において、シグナルペプチド及び/又はアンカーペプチドは、本明細書に開示される配列によるものであり得る。なおさらなる態様において、シグナルペプチド及び/又はアンカーペプチドは、配列が異なるという条件で、本明細書に開示される配列によるものである。したがって、本発明によれば、上記の検出ペプチド及び/又はアンカーは、配列番号4~7のいずれか1つから選択することができる。
【0025】
上述のように、一態様では、検出ペプチドはアンカーペプチドとは異なる。したがって、シグナルペプチドは、配列番号4~7のいずれか1つから選択することができ、一方アンカーペプチドは、シグナルペプチドがアンカーペプチドとは異なるという条件で、配列番号4~7のいずれか1つから選択することができる。
【0026】
一態様では、検出及び/又はアンカーペプチドは、配列番号4に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を含む任意のペプチド配列、又は配列番号4と同一の配列を含む配列であり得る。
【0027】
一態様では、検出及び/又はアンカーペプチドは、配列番号5に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の同一性を含む任意のペプチド配列、又は配列番号5と同一の配列を含む配列であり得る。
【0028】
一態様では、検出及び/又はアンカーペプチドは、配列番号6に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を含む任意のペプチド配列、又は配列番号6と同一の配列を含む配列であり得る。
【0029】
一態様では、検出及び/又はアンカーペプチドは、配列番号7に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を含む任意のペプチド配列、又は配列番号7と同一の配列を含む配列であり得る。
【0030】
本発明はまた、ポリヌクレオチドに関する。
【0031】
一態様では、本発明は、配列番号1~3の配列のいずれか1つであり得るポリヌクレオチドに関する。
【0032】
一態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号1に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を含む任意のDNA配列、又は配列番号1と同一の配列を含む配列であり得る。
【0033】
一態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号2に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を含む任意のDNA配列、又は配列番号2と同一の配列を含む配列であり得る。
【0034】
一態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号3に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を含む任意のDNA配列、又は配列番号3と同一の配列を含む配列であり得る。
【0035】
本発明はまた、薬物、小分子、大型生物医薬品、AAV導入遺伝子、細胞療法の活性、又はタンパク質ベースの薬物、AAVベクター、AAV導入遺伝子、又は細胞療法に対する抗体応答、又は治療用抗体、Fc融合タンパク質、又は治療薬で治療された患者からの臨床サンプルにおけるエクスビボ(ex vivo)での細胞療法のエフェクター細胞機能を定量化する方法に関する。
【0036】
この方法は以下のステップを含むことができる:
a)治療を受けている患者から得られたサンプルを本発明による細胞と接触させるステップ、
b)本発明による細胞から培養上清を採取するステップ、
c)ELISA又は一般的に利用可能な免疫分析プラットフォームでサンプルを分析するステップ。
【0037】
本明細書で使用されるレポーターペプチドという用語は、応答要素(又は上流活性化配列)、TATAボックス、シグナルペプチド、アンカータグ及び検出タグの1つ又は複数を含むことを意図している。
【0038】
本明細書で使用するポリアデニル化配列(ポリA)という用語は、細胞内のペプチドの効率的な翻訳を保証するために必要であるが、一般的であり翻訳ペプチドの一部ではないアデニンの配列を意味することを意図している。ポリA配列は、SV40又は他のポリA配列、例えばhGH、BGH、又はrbGlobからのものであり得る。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、酵素活性を欠く小さい分泌レポーターペプチドに関し、したがって、細胞内で発現される場合、培養条件及び他の外部因子による影響が少なく、ルシフェラーゼレポーター遺伝子、他の酵素検出システム、例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β‐ガラクトシダーゼ、又はアルカリホスファターゼなどの従来のレポーター遺伝子とは対照的に、基質の活性の違いによる影響を受けない。本発明は、特定の細胞内又は細胞表面分子との相互作用の後に分析される薬理活性物質によって誘導され、細胞内でのペプチドの効率的な転写を可能にするTATAボックス、細胞内で発現されたときにペプチドの効率的な分泌を保証するシグナルペプチド、抗体を産生できるアンカー及び検出配列、及び細胞内の効率的な翻訳を保証するポリアデニル化配列に操作可能に連結された、1つ又は複数の転写因子によって活性化される応答要素を含む長さ15~150アミノ酸の小さい分泌レポーターペプチドに関する。アンカー配列は、細胞タンパク質と交差反応せず、ブルータンウイルス由来のV5タンパク質などの抗体が市販されているペプチドをコードするか、又は細胞タンパク質との配列相同性が最小限で、免疫原性があり、配列番号4から7に示すようなペプチドに対する抗体を産生できると予測される新規の独自のペプチドをコードし得る。検出配列は、VSV Gカプシドタンパク質などのペプチド又は抗体が容易に市販されているc‐Myc癌原遺伝子、又は細胞タンパク質との配列相同性が最小限で、免疫原性があり、配列番号4から7に示すようなペプチドに対する抗体を産生できると予測される新規の独自のペプチドをコードする。配列番号4から7に示す配列はアンカー配列又は検出配列のいずれかとして用いることができる。
【0040】
さらに、上記から明らかなように、レポーターペプチドは、上記の検出配列とアンカー配列の両方に関連する配列を含む。一態様では、検出配列及びアンカー配列は異なり、交換可能であり得る。すなわち、1つの配列に対する抗体をアンカー又は検出抗体として使用することができる。
【0041】
アンカー配列(アンカータグ)は、ペプチドごとに異なる場合があり、又は、ELISAによって、又はMSD、Gyros、AlphaLisa、又はBiacoreなどの一般的に利用可能な免疫検出プラットフォームの一つを使用して、すべてのペプチドを同時に検出できるように共通している場合がある。Gyrosプラットフォームテクノロジーは、ナノリットルのマイクロフルイディクスと、レーザー活性化蛍光に基づく検出システムを組み込むように設計されたCDを使用した、毛管作用の遠心制御の使用に基づいている。Gyrosプラットフォームを使用した免疫原性アッセイは架橋ELISAに基づいており、これは、ビオチンで標識された治療用抗体(モノクローナル又はポリクローナル)の1分子、及びAlexaなどの蛍光マーカーで標識された治療用抗体(モノクローナル又はポリクローナル)のもう一つの分子からなる薬物の2分子間の架橋の形成により抗薬物抗体が検出されるものである。サンプル中の抗薬物抗体の存在は、Alexa標識薬物分子をビオチン標識薬物分子に結合させる架橋を形成し、それが今度はストレプトアビジン被覆ビーズに結合する。Alexa標識結合薬物から放出される蛍光は、次いでレーザーによる活性化後に定量化される。あるいは、治療用抗体の効力は、治療用抗体に特異的な、ビオチンで標識された抗薬物抗体ペアと、2つの抗薬物抗体分子(モノクローナル又はポリクローナル)の間に架橋を形成する薬物を検出するAlexaを使用して定量化することができる。各Gyros ADAアッセイには、異なる二重標識薬物ペアが必要である。対照的に、本発明によれば、単一の共通アンカー配列を異なる分析物の検出用の複数のレポーターペプチドに使用して、単一の捕捉抗体、モノクローナル又はポリクローナル、を使用して、すべてのレポーターペプチドを固定することができる。本発明のさらなる実施形態において、アンカー配列は、ペプチドがストレプトアビジン被覆Gyrosビーズに直接付着することを可能にするストレプトアビジン結合タンパク質をコードし、抗体がアンカー配列に対して生じる必要性を排除する。検出配列のそれぞれに対する抗体は、PCR搭載プレートの異なるウェルを使用することにより、Gyrosプラットフォーム上の複数の分析物の検出を可能にするAlexaでFc部分に標識されている。
【0042】
MSDプラットフォームテクノロジーは、電気化学発光の使用と、捕捉抗体に結合した分析物を検出するスルホタグ標識抗体に基づいた検出システムに基づいており、この捕捉抗体が今度は埋設電極とともに炭素又は金被覆96ウェルプレートに結合する。MSDプラットフォームを使用した免疫原性アッセイは、2分子の薬物間の架橋の形成によって抗薬物抗体が検出される架橋ELISAに基づいている。ここで2分子の薬物の一つはビオチンで標識され、ストレプトアビジン被覆金プレートに結合しており、もう一つの薬物分子はスルホタグで標識されている。サンプル中の抗薬物抗体の存在は、スルホタグ標識薬物分子をビオチン標識薬物分子に結合させる架橋を形成し、それが今度はストレプトアビジン被覆プレートに結合する。次に、スルホタグで標識された結合薬物から発せられる光信号が定量化される。あるいは、治療抗体の効力は、ビオチン、及び2つの抗薬物抗体分子(モノクローナル又はポリクローナル)間の架橋を形成する薬物を検出するスルホタグで標識された、治療抗体に特異的な、抗薬物抗体ペアを使用して定量化することができる。各MSD ADAアッセイには、異なる二重標識薬物ペアが必要である。対照的に、本発明によれば、単一の抗体、モノクローナル又はポリクローナル、をすべての分泌レポーターペプチドに使用できるように、単一の共通アンカー配列を、異なる分析物の検出用の複数のレポーターペプチドに使用することができる。本発明のさらなる実施形態では、アンカー配列はストレプトアビジン結合タンパク質をコードし、ペプチドをストレプトアビジン被覆MSDプレートに直接付着させることを可能にし、アンカー配列に対して抗体を生じさせる必要性を排除する。各検出配列に対する抗体は、MSDアッセイプレートの異なるウェルを使用することにより、MSDプラットフォーム上の複数の検体の検出を可能にするスルホタグでFc部分に標識されている。
【0043】
PerkinElmer AlphaLISAソリューションELISAプラットフォームテクノロジーは、ストレプトアビジン被覆ドナービーズとジゴキシゲニン標識アクセプタービーズに基づく検出システムの使用に基づいており、ここでADAはストレプトアビジン被覆ドナービーズに付着したビオチン標識薬物とジゴキシゲニン標識アクセプタービーズとの間に架橋を形成する。標識薬物ADA複合体は、抗ジゴキシゲニン‐HRPコンジュゲートと発光シグナルの定量を使用して検出される。AlphaLISA ADAアッセイごとに、異なる二重標識薬物ペアが必要である。対照的に、本発明によれば、単一の抗体、モノクローナル又はポリクローナル、をすべての分泌レポーターペプチドに使用できるように、単一の共通アンカー配列を異なる分析物の検出用の複数の分泌レポーターペプチドに使用できる。本発明のさらなる実施形態では、アンカー配列はストレプトアビジン結合タンパク質をコードし、これがペプチドをストレプトアビジン被覆ドナービーズに直接付着させることを可能にし、アンカー配列に対して抗体を産生する必要性を排除する。検出配列のそれぞれに対する抗体は、AlphaLISAプラットフォームで複数の分析物を検出することを可能にするジゴキシゲニン‐HRPでFc部分に標識されている。
【0044】
Biacoreプラットフォームは、生体分子相互作用をリアルタイムで標識なしで検出できる表面プラズモン共鳴(SPR)の使用に基づいている。ビオチン標識アンカー抗体をBiacore機器のストレプトアビジン被覆金センサー表面に固定し、分泌レポーターペプチドでトランスフェクトした細胞の上清を含むサンプルを表面に注入する。次いで、偏光をセンサー表面に向け、最小強度の反射光の角度を検出する。これにより、プラズモンと呼ばれる電子電荷密度波が生成され、センサー表面の質量に比例して、共鳴角と呼ばれる特定の角度で反射光の強度が低下する。この角度は、分子が結合及び解離するにつれて変化し、したがって相互作用プロファイルはセンサーグラムにリアルタイムで記録される。例4に示された実験の結果は、レポーターペプチドの発現が、Biacore無標識検出システムを使用して容易に定量化できることを示している。
【0045】
本発明のさらなる実施形態では、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含むものなどの既存のレポーター遺伝子細胞株を、既存のレポーター遺伝子からの干渉なしにレポーターペプチドの1つ又は複数と同時トランスフェクトすることができる。これにより、既存のレポーター遺伝子細胞株、特に例3及び4に記載されているレポーター遺伝子細胞株などの複数の分子構築物を含むものを再設計する必要がなくなる。
【0046】
本発明のさらなる実施形態では、細胞は、異なる応答要素及び検出配列、並びに同じ又は異なるアンカー配列をそれぞれ含む複数のレポーターペプチドでトランスフェクトすることができ、したがって、複数の薬理学的に活性な物質を同時に検出し、生物活性を一般的に利用可能な免疫検出プラットフォームを使用して自動化された方法で分析することを可能にする。前記分泌レポーターペプチドはまた、併用療法で使用される異なる薬理学的に活性な物質間の相互作用を決定するために使用することができる。さらに、分泌レポーターペプチドは、一般的に利用可能な免疫検出プラットフォームを使用した自動化された方法で、適切な標的細胞の存在下で、抗体依存性細胞毒性(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、及び補体依存性細胞毒性(CDC)などの治療用抗体又はFc融合タンパク質のエフェクター細胞機能を定量化するためにも使用できる。前記ペプチドはまた、一般に利用可能な免疫検出プラットフォームを使用する自動化された方法で、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター及び1つ以上の特定のAAV導入遺伝子に対する効力及び中和抗体応答を定量化するために使用できる。
【0047】
本発明は細胞にも関する。特に、本発明は、本発明による分泌レポーターペプチドを含む細胞に関する。細胞は任意の起源のものであってよく、T又はBリンパ球などの初代細胞、単球又はナチュラルキラー細胞、又はCAR‐T細胞などの遺伝子改変初代細胞、特にヒト、動物、又は鳥類細胞のいずれかであってよい。重要なことに、細胞は、異なる調節配列及び認識配列を含む第2又は複数のレポーターペプチドをさらに発現する場合がある。本発明による細胞はまた、例えば、ヒト細胞株、Jurkat、Raji、HEK293、KHYG1、又はマウス細胞株RAW264.7、又はDT‐40やMSB‐1などの鳥類細胞株のような当該分野で公知の任意の細胞株であり得る。
【0048】
さらなる態様において、本発明は、アッセイにおける本発明による細胞の使用に関し、ここでアッセイは、自動化されたアッセイ又は任意の他の自動化された診断設定であり得る。
【0049】
本発明は、キット又はパーツのキットにも関する。キットは以下を含むことができる:
i)本発明による細胞;
及び
ii)ビオチン化されていてもいなくてもよいアンカー配列に対する抗体;
及び
iii)MSDプラットフォームでのペプチドの検出を可能にするスルホタグ、又はGyrosスプラットフォームでの検出を可能にするAlexa、又はPerkinElmer AlphaLISAプラットフォームでの検出を可能にするジゴキシゲニンで標識された又は標識されていない、又はBiacoreプラットフォームでのSPRによる検出のために標識なしのままの、検出配列に対する抗体;
及び
iv)ストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート又はストレプトアビジン被覆ビーズ、又はストレプトアビジン被覆SPRチップ。
【0050】
キットはまた、1つ又は複数のバイアル、例えばアッセイ準備が整った凍結細胞の2つ以上のバイアル等を含むことができる。
【0051】
本発明はまた、薬物、小分子、大型生物医薬品、AAV導入遺伝子、又はCAR‐T細胞などの細胞療法の活性;又はタンパク質ベースの薬物、又はAAVウイルスベクター又はAAV導入遺伝子、又はCAR‐T細胞などの細胞療法に対する抗体反応;又は治療用抗体又はFc融合タンパク質、又は治療用抗体、Fc融合タンパク質、又は細胞療法で治療された患者からの臨床サンプルにおけるエクスビボでの細胞療法のエフェクター細胞機能を定量化する方法に関する。
【0052】
この方法は以下のステップを含んでもよい:
a)治療を受けている患者から得られたサンプルを本発明による細胞と接触させるステップ
b)適切な時間の後に上清を回収するステップ
c)アンカー抗体及び検出抗体の追加のステップ
d)ELISAにより又は適切なイムノアッセイプラットフォームでのサンプルの分析のステップ。
【0053】
要約すると、本発明は、応答要素、TATAボックス、シグナルペプチド、抗体を生成できるアンカー配列及び検出配列、及びポリA鎖に機能的に連結された、特定の細胞内又は細胞表面分子との相互作用の後に分析される薬理活性物質によって誘導される1つ又は複数の転写因子によって活性化される、応答要素を含む、長さ15~150アミノ酸の小さい分泌レポーターペプチドに関する。アンカー配列はペプチドごとに異なり得るか、又は、複数の分泌レポーターペプチドに共通であることもあり、ELISAにより、又はMSD、Gyros、AlphaLisa、又はBiacoreなどの一般的に利用可能な免疫検出プラットフォームを使用して、すべてのペプチドを同時に分析することができる。検出配列は、各分泌レポーターペプチドに固有であり、MSDプラットフォームでペプチドの検出を可能にするスルホタグ、Gyrosプラットフォームでの検出を可能にするAlexa、又はPerkinElmer AlphaLISAプラットフォームでの検出を可能にするジゴキシゲニンで標識するか、又はBiacoreプラットフォームでのSPRによる検出のために標識なしのままにすることができる。本発明は、自動免疫検出プラットフォームを使用した分析のための細胞ベースのアッセイの大幅な改善を提供し、複数の検体の同時分析、単一細胞培養からの複数のサンプリングを可能とし、自動化された免疫検出プラットフォームでの分析前に細胞を溶解し、遠心分離によって細胞破片を除去する必要がなくなる。本発明はまた、細胞ベースのアッセイのダイナミックレンジ、感度を高め、コストを削減する手段を提供し、ルシフェラーゼレポーター遺伝子などのレポーター遺伝子を含む細胞などの既存の操作された細胞株に適用することができ、ルシフェラーゼ活性を定量化するためのルシフェラーゼ基質の必要性、及び複数の分子構築物を含む細胞株を広範囲に再設計する必要性がなくなる。
【実施例
【0054】
例1
HEK293細胞に、図2Aに示す2つの分泌レポーターペプチドを同時トランスフェクトした。各ペプチドは構成的プロモーターの制御下にあり、インターフェロンα2シグナルペプチドを保持する。また、各ペプチドは、ブルータンウイルスのV5タンパク質(アンカータグ)に由来するペプチドと、2つのペプチドの一方又は他方に特異的な認識配列を保持している。配列番号1によってコードされるペプチド番号1はc‐Myc認識配列を含み、配列番号2によってコードされるペプチド番号2は水疱性口内炎ウイルス(VSV)のGカプシドタンパク質に由来する認識配列を保持する。アンカーペプチドに対する抗体は、ビオチン標識されており、ストレプトアビジン被覆ELISAプレートに付着するようになっている。検出ペプチドに対する抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識されている。両方のペプチドによるHEK293細胞の一過性トランスフェクションの18時間後に培養上清を収集し、ストレプタビジン被覆マイクロタイターアッセイプレートに結合したブルータンV5タンパク質(AbCamカタログ番号ab18617)に対するビオチン標識モノクローナル抗体及びHRP標識抗c‐Myc(AbCam、カタログ番号ab1261)及びHRP標識抗VSV Gタンパク質(AbCamカタログ番号ab3556)検出抗体からなる架橋ELISAを使用して分析した。実験の結果は、各ペプチド間又は他の分泌ペプチド又はタンパク質との交差反応なしに、培養上清で両方のレポーターペプチドを容易に検出できることを明確に示している(図2B)。
【0055】
例2
HEK293細胞を、gal4上流活性化配列(UAS)の5倍タンデムリピート、及びインターフェロンα2をコードする遺伝子に由来するシグナルペプチド、c‐Myc認識配列、ブルータンウイルスのV5タンパク質に由来するペプチド(アンカータグ)、及びポリA鎖に作動可能に連結されたTATAボックスからなるシス作用性キメラ調節配列の制御下で、配列番号3によりコードされる本発明による分泌レポーターペプチドで同時トランスフェクトした(図3)。細胞は、分泌レポーターペプチドのgal4 UASシス作用性調節配列に結合できる合成DNA結合ドメインに融合したElk‐1のトランス活性化ドメインを含むキメラ転写因子の発現ベクター、及びウミシイタケルシフェラーゼ正規化遺伝子とともに、チロシンキナーゼFGFR1c受容体鎖とβクロトー共受容体タンパク質を含む細胞表面結合ヘテロ二量体受容体タンパク質の発現ベクターで同時トランスフェクトされた(図4)。安定したクローン細胞株を単離し、FGF‐21の応答性について特徴付けた。分泌レポーターペプチドを含む組換え細胞を組換えFGF‐21で処理し、18時間後に細胞上清を回収し、ストレプトアビジン被覆マイクロタイターアッセイプレートに結合されたV5アンカー配列に特異的なビオチン標識付着抗体、及びc‐Mycに特異的なHRP標識検出抗体を用いた架橋ELISAでペプチドの発現を定量した。
【0056】
例3
HEK293細胞を、gal4上流活性化配列(UAS)の5倍タンデムリピート、及びインターフェロンα2をコードする遺伝子に由来するシグナルペプチド、c‐Myc認識配列、ブルータンウイルスのV5タンパク質に由来するペプチド(アンカー配列)、及びポリA鎖に作動可能に連結されたTATAボックスからなるシス作用性キメラ調節配列の制御下で、本発明による分泌レポーターペプチドで同時トランスフェクトした。HEK293細胞はまた、レポーターペプチドのgal4 UASシス作用性調節配列に結合することができる合成DNA結合ドメインに融合したElk‐1のトランス活性化ドメインを含むキメラ転写因子の発現ベクター、及び細胞表面結合VEGFR2受容体タンパク質の発現ベクターで、ウミシイタケルシフェラーゼ正規化遺伝子とともに、同時トランスフェクトされた(図5)。安定したクローン細胞株を単離し、VEGFの応答性について特徴付けした。分泌レポーターペプチドを含む組換え細胞を、組換えVEGFで処理し、18時間後に上清を回収し、分泌レポーターペプチドの発現を、ストレプトアビジン被覆アッセイプレートに結合しているV5アンカー配列に特異的なビオチン標識付着抗体、及びc‐Mycに特異的なHRP標識検出抗体を用いた架橋ELISAで定量化した。
【0057】
例4
HEK293細胞を、図2Aに示される配列番号3によりコードされる分泌レポーターペプチド番号1で一時的にトランスフェクトした。細胞上清を18時間後に回収し、分泌レポーターペプチドの発現を、SPRを使用して定量化した。ビオチン標識抗V5抗体をBiacore 3000機器のストレプトアビジン被覆金センサー表面に固定し、分泌レポーターペプチドでトランスフェクトした細胞の上清を含むサンプルを表面に注入した。
【0058】
参考文献
1. Tovey, M.G., In Detection and Quantification of antibodies to biopharmaceuticals: Practical and Applied Considerations.(バイオ医薬品に対する抗体の検出と定量における:実用的及び応用上の考慮事項。)Editor, Michael G Tovey, John Wiley & Sons Inc; New York. pp 1‐11, 2011.
2. Casadevall, ., et al N. Eng. J. Med. 346 :469‐475, 2002
3. Li J. et al Blood, 98 :3241‐3248, 2001
4. Chung C.H. et al Eng. J. Med. 358 :1109‐1117, 2008
5. Philips, J.T. Arch. Neurol. 64:386‐387, 2010
【0059】
特定の実施形態では、本発明は以下の項目にも関する:
1.1つ以上の転写因子が結合でき、TATAボックスに作動可能に連結された応答要素、抗体を産生できるシグナルペプチド、アンカー及び検出配列、及びポリアデニル化配列を含むポリヌクレオチドであって、その発現が
分析物と特異的に相互作用する細胞内又は細胞表面分子を有する細胞において、細胞上清へのレポーターペプチドの分泌、及びELISA又は一般的に利用可能な免疫検出プラットフォームを使用した分析後の、定量化できる分析物の活性に比例し、ここで、免疫検出プラットフォームは
‐ELISA
‐MSD
‐ジャイロ(Gyros)
‐アルファライザ(AlphaLISA)
‐SPR-バイアコア(SPR-Biacore)
‐又は同様の免疫検出プラットフォーム
である、上記ポリヌクレオチド。
【0060】
2.各々が異なる応答要素をコードし、各々が細胞内又は細胞表面分子と分析物との相互作用に続いて、異なる薬理学的に活性な分析物によって活性化される項目1の1つ以上のポリヌクレオチド、及び各ポリペプチドに固有の検出配列でトランスフェクトされた細胞であって;
本発明による細胞は、T又はBリンパ球などの初代細胞、CAR‐T細胞などの天然又は組換えのヒト又は動物起源の単球又はナチュラルキラー細胞、又は当技術分野で知られている任意の細胞株、例えばヒトJurkat、Raji、HEK293、KHYG1、又はマウスRAW264.7、又はDT‐40やMSB‐1などの鳥類細胞株、又はレポーター遺伝子を単独で又は他の組換え成分と一緒に含有する細胞株のような以前に確立された改変細胞株である、上記細胞。
【0061】
3.各々が異なる応答要素をコードし、各々が細胞内又は細胞表面分子と分析物との相互作用に続いて、異なる薬理学的に活性な分析物によって活性化される本発明による1つ以上のポリヌクレオチド、及び各ポリペプチドに固有の検出配列でトランスフェクトされた細胞を含むキット。本発明は、キット又はパーツのキットにも関する。キットは以下を含むことができる:
i)本発明による細胞;
及び
ii)ビオチン化されていてもいなくてもよいアンカー配列に対する抗体;
及び
iii)ELISAによる検出のためにHRP又はMSDプラットフォームでの分泌レポーターペプチドの検出を可能にするスルホタグ、又はGyrosプラットフォームでの検出を可能にするAlexa、又はPerkinElmer AlphaLISAプラットフォームでの検出を可能にするジゴキシゲニンで標識された又は標識されていない、又はSPRによる分析用のために標識なしの、検出配列に対する抗体;
及び
iv)ストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート、又はストレプトアビジン被覆ビーズ、又はストレプトアビジン被覆SPRチップ
【0062】
キットはまた、1つ又は複数のバイアル、例えば本発明によるアッセイ準備の整った凍結細胞の2つ以上のバイアル等を単独で又は凍結バイアルに含まれるアンカー抗体及び検出抗体と一緒に含むこともできる。
【0063】
4.薬物、小分子、大型生物医薬品、AAV導入遺伝子、又はCAR‐T細胞などの細胞療法の活性;又は、タンパク質ベースの薬物、又はAAVウイルスベクター又はAAV導入遺伝子、又はCAR‐T細胞などの細胞療法に対する抗体反応;又は、治療用抗体又はFc融合タンパク質、又は治療用抗体、Fc融合タンパク質、又は細胞療法で治療された患者からの臨床サンプルにおけるエクスビボでの細胞療法のエフェクター細胞機能を定量化する方法;
‐ここで、該方法は以下のステップを含んでもよい;
‐治療を受けている患者から得られたサンプルを、本発明による細胞と接触させるステップ、
‐適切な時間後に上清を回収するステップ、
‐アンカー抗体及び検出抗体の追加のステップ、
‐ELISAによる又は適切なイムノアッセイプラットフォームでのサンプルの分析のステップ。
【配列表フリーテキスト】
【0064】
配列番号4:<223>人工配列
配列番号5:<223>人工配列
配列番号6:<223>人工配列
配列番号7:<223>人工配列
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
【配列表】
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